説明

画像処理装置、及び画像処理方法

【課題】文字や黒を主体とする線画において、鮮鋭さが抑圧されることを低減する画像処理装置、及び画像処理方法。
【解決手段】実施形態において、画像処理装置は、色調整情報を入力する入力手段と、入力手段から入力された色調整情報が反映される色変換手段と、を具備し、前記色変換手段は、前記入力手段にて得られる色調整情報と、予め求めた色材量と色彩値との対応関係を元に、第一の色の色材による無彩色色域の色材構成比率を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、黒(無彩色)と、減法混色によりカラー(有彩色)を再現するC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色材により、画像データに対応する可視像を形成し、シート媒体に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−262471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可視像は、例えば写真の出力等が考慮され、色再現性の優先、等の画像処理を伴う。
【0005】
反面、画像処理の結果、文字や黒を主体とする線画において、鮮鋭さが抑圧されることがある。
【0006】
このような背景から、可視像を出力する際に優先すべき画像処理内容を設定できる画像処理装置が提案されている。しかしながら、黒画像の再現性を高めるために、例えば写真向けと文字及び線画向けに、黒の色材を複数用意する、等の改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態において、画像処理装置は、色調整情報を入力する入力手段と、入力手段から入力された色調整情報が反映される色変換手段と、を具備し、前記色変換手段は、前記入力手段にて得られる色調整情報と、予め求めた色材量と色彩値との対応関係を元に、第一の色の色材による無彩色色域の色材構成比率を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態の一例を示す概略図。
【図2】実施形態の一例を示す概略図。
【図3】実施形態の一例を示す概略図。
【図4】実施形態の一例を示す概略図。
【図5】実施形態の一例を示す概略図。
【図6】実施形態の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示す画像形成装置(マルチファンクショナルプリフェラル、以下単にMFPと称する)1は、画像形成部3、データ管理部5、通信制御部7、及びシステム制御部9、を少なくとも、含む。なお、MFP1は、後段に説明する通信制御部を通じて任意数のクライアント(ユーザ)例えば、パーソナルコンピュータ(PC))101、・・・、Nと接続する。
【0011】
画像形成部3は、任意形式のデータに基づいて画像や文字を可視化し、シート媒体上に出力する。データ管理部5は、データを受けつけ、プリント出力や保存等のジョブの実行のためにデータを管理する。通信制御部7は、通信回線(ネットワーク網)との間のデータの送受信を管理する。システム制御部9は、画像形成部3、データ管理部5、通信制御部7すなわちMFP1の動作を制御する。
【0012】
画像形成部3は、電源ユニット31、スキャナユニット32、メモリユニット33、画像形成ユニット34、無彩色色変換調整ユニット35、色変換ユニット36、CPU(マイクロプロセッサ)を含み、画像形成部3の各ユニットを制御するプロセス制御ユニット(プロセスコントローラ)37、を少なくとも含む。
【0013】
電源ユニット31は、商用電源に接続し、1次側(入力)電圧からMFP1の動作に用いる2次側電圧を生成する。もちろん、1次側電圧については、入力許容電流値(上限)が管理される。
【0014】
スキャナユニット32は、画像形成ユニット34が可視化してシート媒体上に出力する画像や文字あるいは形状、色等の情報が非データ形式である場合、(その)情報を、画像データとして出力する。スキャナユニット32は、情報を含むシート状の原稿や立体物に光を当て、(その)光が情報で反射した光(画像光)の強度に対応する電気信号を取得し、画像データに変換する。
【0015】
メモリユニット33は、スキャナユニット32により得た<オリジナルの>画像データや、パーソナルコンピュータ(PC)からの出力データやファクシミリ受信データ等、の外部から入力される画像データ等を、保持する。メモリユニット33はまた、プログラムやアプリケーション(ソフトウェア)等を記憶する。
【0016】
画像形成ユニット34は、画像データを可視化し、シート媒体上に出力する。可視化の方法は、トナーを用いる静電転写式やインクを用いる直接記録式(インクジェット)が、多い。特別な色(金/銀)の出力のためのホットスタンプ等が併用されてもよい。
【0017】
なお、画像形成部3は、画像形成ユニット34が出力する画像を保持し、画像形成ユニット34に供給するシート媒体の供給機構を含む。
【0018】
無彩色色変換調整ユニット35は、以下に説明する色変換ユニット36が参照する色変換テーブルのうち、無彩色に対する一種の色変換である無彩色の調整量を設定するための無彩色調整量設定において参照される調整量設定テーブルを任意に調整するための無彩色調整情報を入力するために用いられる。
【0019】
色変換ユニット36は、無彩色色変換調整ユニット35が作成した色変換テーブル、すなわち無彩色の調整量に従って入力画像を色変換し、出力画像の出力に用いる無彩色画像データを出力する。
【0020】
データ管理部5は、データを受けつけるデータ入力ユニット51、データ入力ユニット51が受けつけたデータを、プリント出力や保存等のジョブの実行のために処理するデータ処理ユニット52、データ処理ユニット52が処理したデータを、ジョブにより特定される形式で出力するデータ出力ユニット53、および、データ入力ユニット51、データ処理ユニット52及びデータ出力ユニット53相互間のデータの受け渡しを制御するデータ制御ユニット(データコントローラ)54、を少なくとも含む。
【0021】
通信制御部7は、公衆通信回線と接続され、ファクシミリ(FAX)データを受け取り、または送信するファクシミリユニット71、外部ネットワーク、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)と接続され、ネットワーク網からデータを受け取り、または送信するLAN制御ユニット72、例えばUSB(ユニバーサルシリアルバス)規格に対応し、接続される相手方からデータを受け取り、または送信する拡張インタフェースユニット73、及びファクシミリユニット71、LAN制御ユニット72及び拡張インタフェースユニット73のそれぞれによる相手先との通信、データの入力と出力及び並列処理、等を制御する通信制御ユニット(通信コントローラ)74、を少なくとも含む。なお、MFP1は、上述した通り、LAN制御ユニット72を経由し、任意のクライアント(ユーザ)例えば、パーソナルコンピュータ(PC))101、・・・、Nと接続し、ネットワークプリンタとしても機能する。
【0022】
システム制御部9は、メイン制御ブロック(MPU)91、入力部(スイッチもしくはボタン群)あるいは入力パネル(タッチパネル)及び表示パネル(表示ユニット)92等が一体化されたユーザインタフェースユニット(操作ユニット)93を、少なくとも含む。MPU91は、上述した各部のプロセスコントローラ(CPU)37、データコントローラ54、及び通信コントローラ74と相互に接続し、各部を制御する。
【0023】
MPU91は、操作ユニット93と接続し、表示パネル92のタッチパネルから、各部の動作の開始や停止、条件設定、及び画像形成部3の画像形成ユニット34が出力する出力画像について、例えば黒画像の再現性を高めるための無彩色の調整量の設定等を受けつけ、指示入力に応じて、各部の動作を制御する制御信号を出力する。
【0024】
タッチパネル(表示パネル)92は、ユーザの指による指示(制御)入力を検出し、例えばコピー、スキャン開始、スキャンデータまたは着信したファクシミリデータの表示、等の起動をMPU91に入力(指示)する。
【0025】
MPU91または、タイマユニット94と接続する。タイマユニット94は、内蔵するクロック発生ユニット(CLK)が発生するクロックを基準に、年(yyyy)、月(mm)、日(DD)、時(HH)、分(MM)を、例えばファクシミリ原稿の受信日時、送信日時、スキャナによるスキャン日時の表示や、ファイルへの保存(ファイル名への添付)等に利用可能に保持する。クロック発生部(CLK)は、MPU91の動作のためにシステム制御部9内に設けられるものであってもよい。タイマユニット94による時間の計数あるいは時間データの保持は、例えば画像形成部3の電源ユニット31に入力する商用電源の周波数を利用しても良い/(空間波の)放送信号が含む時間データ(時報サービス信号)を直接受信してもよい。
【0026】
以下、図5に、クライアント(PC)101,・・・,Nが、MFP1が出力する画像に対して、PC(クライアント)側のプリンタドライバ画面にて、無彩色調整処理を実行する例を示す。なお、無彩色調整処理は、例えば、無彩色に対する一種の色変換である無彩色の調整量を設定するための無彩色調整量設定において参照される調整量設定テーブルを任意に調整するための『無彩色調整情報』を受けつけ、その設定に対する確定(設定)終了が入力された時点で、MFP1側の、例えばメモリユニット33内の所定の領域に格納し、MFP1が出力する画像の無彩色を調整するものである。
【0027】
詳細には、PC(クライアント)側のプリンタドライバ画面の表示において、調整バー92−023[A]、92−023[B]及び92−023[C]により、文字、図形、写真についてそれぞれ独立に、無彩色の再現性を、『色ずれ低減』/『色再現優先』のいずれかに設定し、その調整結果を、LAN制御ユニット72を経由してMFP1に入力することにより、MFP1が出力する画像について、無彩色調整処理が実行される。なお、MFP1においては、上述の調整結果に従い、画像形成部3の色変換ユニット36が、入力画像である加法混色のR(レッド)、G(グリーン)及びB(ブルー)からMFP1が出力可能な減法混色のC、M、Y及びKに、色変換テーブルの変更として、設定される。また、無彩色調整は、無彩色色変換調整ユニット35による上記入力の結果、色変換ユニット36が保持する色変換テーブルのうち、無彩色テーブルの内容が、変更(調整)される。
【0028】
より詳細には、プリンタドライバ画面は、図5に一例を示すが、黒画像の再現性を変更する(高める)ための無彩色の調整量の設定を入力可能な無彩色調整表示92−023を含み、無彩色調整表示92−023による入力/設定変更等は、無彩色調整情報一時保持ユニットが、一時的に保持する。無彩色調整情報一時保持ユニット111は、PC(クライアント)側/MFP側のどちらに設けられてもよい(図1に、便宜的にMFP1側が保持する例を示す)。
【0029】
無彩色調整情報一時保持ユニットが一時的に保持する「入力」/「設定変更」等は、設定変更/入力が確定された時点で、例えば(MFP1の)メモリユニット33に格納される。なお、無彩色調整情報一時保持ユニットは、メモリユニット33の書き込み/読み出し速度等により影響を受けない場合、メモリユニット33が兼用できる。もちろん、「入力」/「設定変更」等は、PC側のメモリに一時的に保存し、確定された時点でMFP1側に供給されるものであってもよい。
【0030】
無彩色調整表示92−023は、例えば文字について、黒(黒画像)の再現性の変更を設定可能な文字調整バー92−023[A]、例えば図形について、黒(黒画像)の再現性の変更を設定可能な図形調整バー92−023[B]及び例えば写真について、黒(黒画像)の再現性の変更を設定可能な調整バー92−023[C]、の項目について、Kトナーで出力される黒画像の周囲にCトナー、Mトナー、Yトナーがはみ出して滲んだように見えることを低減するための『色ずれ低減』制御と、黒画像を、Cトナー、Mトナー、Yトナー及びKトナーにより、色再現性の確保を優先して出力するための『色再現優先』制御と、の間で、任意に設定可能である。
【0031】
より詳細には、無彩色色変換調整ユニット35は、表示ユニット(タッチパネル)92から入力される上記調整バー92−023[A]、92−023[B]及び92−023[C]の操作量に対応する無彩色調整情報を受け取り、色変換テーブルのうち、無彩色用テーブルを調整することで、色ズレ発生時の黒再現を重視させるか、色再現を重視させるかを調整する。
【0032】
なお、それぞれの調整バー92−023[A]、92−023[B]及び92−023[C]は、例えば『色ずれ低減』/『色再現優先』のいずれかの側に、ユーザの指が触れることで、例えば中心値(プラスマイナス0(ゼロ))と、『色ずれ低減』側へ4ステップ、『色再現優先』側へ4ステップ、(合計で)9ステップ程度の制御信号を入力できることが好ましい。この場合、調整結果は、プレビュー表示領域[92−01]に表示される縮小(モニタ)表示に、逐次反映される(縮小(モニタ)表示の表示が変更の入力がある毎に逐次変更される)。
【0033】
なお、上述の『色ずれ低減』側への調整(指示)は、無彩色軸のCMYKデータ値のうち、CMYデータ値を小さくする制御に対応する。この制御により、色ずれ(黒の周囲の滲み)が発生した場合のCMYトナーのずれ量を小さくし、黒の周囲に滲みが生じることを抑制して、黒の再現性を高めるものである。また、『色再現優先』側への調整(指示)は、無彩色軸のCMYデータ値を大きくすることで、無彩色軸(Kトナー)の影響を抑制して、色再現性を高めるものである。
【0034】
図2〜図4は、図5により説明した、無彩色の再現性を、『色ずれ低減』/『色再現優先』のいずれかに調整する設定を、MFP1側で実現する例を示す。
【0035】
図2は、MFP1において、起動処理あるいは任意のジョブ(スキャン/プリント)が完了した時点で操作ユニットのディスプレイ(タッチパネル)が表示する待機画面表示の一例を示す。
【0036】
待機状態においては、コピーが可能な“BASIC”表示92−1,スキャナユニット32により取り込んだスキャンデータまたは着信したファクシミリデータに対する部分消去、等の編集モードの設定が可能な“EDIT”表示92−2,プログラムの追加や削除及びアップデート時に起動する“PROGRAM”表示92−3,あるいはユーザ及び管理者に対する動作条件(設定)の変更等が可能な“SETTING”表示92−4,等のモード選択ボタン表示が表示される。
【0037】
図2に示した各表示は、例えばメモリユニット33が保持するフォントデータ及びGUI(Graphical User Interface,グラフィカルユーザインタフェース)データ(表示規則を含む)、に基づいて表示される。各表示のためのデータ及び表示規則(GUIデータ)は、MPU91のファームウエアであってもよい。また、各表示のためのデータ及び表示規則は、例えば拡張インタフェースユニット73を通じてアップデート可能である。
【0038】
図3は、MFP1が待機状態(図2において“BASIC”表示92−1によりコピー可能であることが報知されている状態)において、“EDIT”表示92−2による指示(選択)入力により、編集モード(edit mode、エディットモード)が起動した状態を示す。なお、編集(エディット)モードの初期(デフォルト)表示は,例えば出力画像における黒画像の再現性を変更するために、カラーバランス(無彩色の調整量)の変更を入力可能な“BALANCE”表示92a,出力画像にページ表示を自動出力するページ表示モードを起動する“PAGE NUMBER”表示92b,複数(ページ分)の画像データを1枚の出力画像に纏めるマガジンソートモードを起動する“MUGAZINE SORT”表示92c,カバーシートを追加する表紙追加モードを起動する“COVER SHEET”表示92d,2枚以上の出力画像の任意の位置に別のシート媒体を追加するシート追加モードを起動する“SHEET INSERTION”表示92e,あるいはTAB付シートを追加するタブシート追加モードを起動する“TAB PAPER”表示92f,等を含む.
図4に、『無彩色調整情報』の設定を入力可能とする入力画面(表示)の一例を示す。
【0039】
MFP1において、図3に示した編集モードが起動した状態から、“BALANCE”表示92aにより、黒画像の再現性を変更するためのカラーバランス(無彩色の調整量)の変更を入力可能なモードが選択されると、画面表示92a内のタブ表示から選択可能な調整画面[92B]またはレイアウトの変更を入力可能なレイアウト画面[92A]が表示される。なお、図4は、調整画面[92B]が選択され、表示された状態を示す。
【0040】
図4に示す調整画面[92B]は、入力された調整値に対応する調整後の出力画像の例を表示するプレビュー表示領域[92−01]、調整値(変更量)の入力(指示)を受けつけるメニュー表示領域[92−02]、等を含む。
【0041】
メニュー表示領域[92−02]は、例えば原稿となる対象物の用紙の色が非白色(着色あり)である場合に、下地(原稿の用紙の)色の色成分を除去するための原稿種別の設定が可能な、原稿種別入力ボタン表示92−021、原稿となる対象物がハーフトーン画像、例えば写真領域等を含む場合に、出力画像の階調性を制御してハーフトーン画像の再現性を確保する設定が可能な、ハーフトーンボタン表示92−022、黒画像の再現性を変更する(高める)ための無彩色の調整量の設定を入力可能な無彩色調整表示92−023、等を含む。
【0042】
なお、無彩色調整は、原稿画像に含まれるオブジェクト(写真、細線領域、文字領域)のそれぞれの特性に従い、黒再現性を良好とするために、出力画像が含む黒成分の度合いを調整するもの、特に黒について、オブジェクトの色変換に関わらず、輪郭を強調したい(カラー成分によるにじみを除去したい)、という要求に答えるために有益である。例えば各オブジェクトが、文字は濃く出力したい、写真はモニタの色合いに合わせたい、図形は鮮やかな色合いで出したい、という、それぞれ異なる色変換特性を持つ(色変換が切り替えられている)場合、等において、上述の黒再現性を高めるためには、特別な色変換が必要である。
【0043】
その要因としては、出力画像中の黒成分は、画像形成部3の画像形成ユニット34が出力する黒画像を構成するトナーの種別、すなわち黒以外のトナーが黒画像に占める比率に起因する。
【0044】
詳細には、画像形成ユニット34は、黒(無彩色)単色(主として、第一の色の色材ので形成される)画像を出力するK(Bk)出力ユニット(以下、Kユニットと略称する)と、減法混色によりカラー(有彩色)を再現するためのC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色材を用いて3つの単色画像を出力するCユニット、Mユニット、Yユニットを含み、例えば、オブジェクトが写真である場合、Cユニット、Mユニット、Yユニットから供給されるCトナー、Mトナー、Yトナー(第一の色と異なる色の色材)の量が、単色の黒画像(すなわちKユニットによるKトナーのみで形成される)に比較して多く含まれる。
【0045】
すなわち、写真オブジェクトに対しては、階調性や色再現性を重視した色変換が用いられていることが多く、従って、Cトナー、Mトナー、Yトナーの量が、多いことから、プリント出力時に、色ズレが発生した場合、黒色と下地(C,M,Y)の境界において、Kトナーによる黒画像の周囲にCトナー、Mトナー、Yトナーがはみ出すことで、純粋な黒色が再現できなくなる場合がある。
【0046】
このような背景に基づき、図4が表示する黒画像の再現性を変更する(高める)ための無彩色の調整量の設定を入力可能な無彩色調整表示92−023を用い、黒画像を構成するトナーの種別、すなわち黒以外のトナーが黒画像に占める比率を変更することで、黒画像の再現性を、ユーザの希望に従い、高めることができる。
【0047】
以下、画像形成部34は、色変換ユニット36が保持する上記で作成した色変換テーブルを基に、入力画像に対して色変換を行い、出力画像を出力する。(色変換ユニット36は、無彩色色変換調整ユニットで作成された無彩色のテーブル値を調整した色変換テーブルを用いて、入力画像に対して色変換を施し、画像形成部34に供給する)。
【0048】
より詳細には、図6(a)、図6(b)及び図6(c)に示す通り、無彩色色変換ユニット35の色変換テーブルにおける出力CMYKテーブル値を調整するために、まず、出力CMYKテーブル値のうち、黒画像向けのKを除いたCMY値を抽出する。
【0049】
次に、この無彩色調整情報を基に、図6(a)に示すように、
デフォルト設定において、
RGB(20,20,20) → CMYK(10,10,10,10)
である<無彩色テーブル[デフォルト](6−1)>を、
RGB(20,20,20) → CMYK(20,20,20,10)
というように、CMYを増加して<無彩色テーブル[調整値](6−101)>
を得る。
【0050】
同様に、デフォルト設定において、
RGB(30,30,30) → CMYK(20,20,20,15)
である<無彩色テーブル[デフォルト](6−2)>を、
RGB(30,30,30) → CMYK(40,40,40,10)
というように、CMYを増加して<無彩色テーブル[調整値](6−102)>
を得る。
【0051】
このように、無彩色色変換ユニット35が保持するデフォルト色変換テーブル値からCMYテーブル値のみを増減させる。
【0052】
例えば、色ずれが少ないことを重視する『色ずれ低減』側では、CMYデータ値を小さくすることで、色ずれ発生時にCMYトナーが、Kトナーよりはみ出すトナー量を少なくし、色ずれに対する黒再現を高める。なお、黒画像は、通常が4色のトナーの集合体であることから、有彩色と無彩色の切り替わりも目立ちにくい。一方、色再現を重視する『色再現優先』側の場合は、CMYデータ量を増やすことで、無彩色(Kトナー)の影響を抑制して色再現性を高める。
【0053】
以下、上記で決まったCMYテーブル値を用い、図6(b)に示すように、CMYKテーブル値を求める。なお、Kテーブル値は、CMYKテーブル値が事前に決めた明度、例えば「用紙の白さ」を基準として、L a*b*の黒画像の明るさを正規化した値、となるように、設定される。これにより、無彩色の周辺と無彩色軸の境界に明度差が発生した場合、例えば写真画像において、擬似輪郭が発生して階調性が低下する、という懸念を抑止できる。また、CMYKデータから、事前に用意した「CMYK → L a*b*」変換テーブルにより、明度を求める。
【0054】
すなわち、Kについて、<無彩色テーブル[調整値](6−101)>を、
RGB(20,20,20) → CMYK(20,20,20,20)
というように、<無彩色テーブル(6−3)>に、
<無彩色テーブル[調整値](6−102)>を、
RGB(30,30,30) → CMYK(40,40,40,35)
というように、<無彩色テーブル(6−4)>に、それぞれ、調整する。
【0055】
続いて、上記で作成されたCMYKテーブル値に対し、図6(c)に示すように、CMYテーブル値を微調整する。これにより、CMYテーブル値を調整した結果、グレイバランスが崩れることを防止できる。実際には、a*b*座標平面の原点との色差がある閾値以下になるように、前記「CMYK→L a*b*」変換テーブルを用いてCMYデータ値を、微調整する。
【0056】
すなわち、<無彩色テーブル(6−3)>は、
RGB(20,20,20) → CMYK(22,21,19,20)
という<無彩色テーブル(6−30)>に、
<無彩色テーブル(6−4)>は、
RGB(30,30,30) → CMYK(41,41,42,35)
という<無彩色テーブル(6−40)>に、それぞれ、調整する。
【0057】
なお、上述した無彩色調整表示92−023により設定された設定値は、画面表示92a内の任意の位置に用意される『確定』ボタン表示92−024により確定され、画像形成部3のメモリユニット33の所定の領域に格納される。また、画面表示92a内の任意の位置に用意される『戻る』ボタン表示92−025により、1つ前の入力画面、例えばレイアウト画面[92A]に戻る。
【0058】
以上説明した実施の形態によれば、出力画像の出力に際して優先すべき処理内容を、黒画像について、黒画像の再現性を高めるために、優先して設定できる。
【0059】
また、黒画像のうち、特に文字部分について、黒画像を構成するトナーの種別、すなわち黒以外のトナーが黒画像に占める比率を変更することで、黒画像の再現性を、ユーザの希望に従い、高めることができる。
【0060】
また、設定は、プリンタドライバの表示もしくはタッチパネルに表示される調整バーにより、中心値を基準として、例えば『色ずれ低減』/『色再現優先』という変更の程度の入力でよく、操作性が煩雑となることもない。
【0061】
すなわち、色ずれにより、純粋な黒色として再現できないことに対して、ユーザが意図した印刷を行えるように無彩色を調整することが可能となる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…MFP(画像形成装置)、3…画像形成部、5…データ管理部、7…通信制御部、9…システム制御部、32…スキャナユニット、33…メモリユニット、34…画像形成ユニット、35…無彩色色変換調整ユニット、36…色変換ユニット、37…プロセス制御ユニット(プロセスコントローラ)、51…データ入力ユニット、52…データ処理ユニット、53…データ出力ユニット、72…LAN制御ユニット、73…拡張インタフェースユニット、74…通信制御ユニット(通信コントローラ)、91…メイン制御ブロック(MPU)、92…表示パネル(タッチパネル)、93…操作ユニット、101…PC(クライアント)、111…無彩色調整情報保持ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色調整情報を入力する入力手段と、
入力手段から入力された色調整情報が反映される色変換手段と、
を具備し、
前記色変換手段は、前記入力手段にて得られる色調整情報と、予め求めた色材量と色彩値との対応関係を元に、第一の色の色材による無彩色色域の色材構成比率を変更する画像処理装置。
【請求項2】
色調整情報は、前記入力手段が含むタッチパネル方式の入力装置により入力される請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
色調整情報は、前記入力手段に接続する外部装置により入力される請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記外部装置は、ネットワークを介して接続される請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
色調整情報は、前記入力手段において、中心値と、中心値から第一の特性を重視する変更の入力と、中心値から第一の特性と異なる第二の特性を重視する変更の入力と、により設定される請求項2〜4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
第一の特性は、第一の色を、主として第一の色の色材で再現する特性であり、第二の特性は、第一の色を、第一の色の色材及び第一の色と異なる色の色材の集合体として再現する特性である請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
第一の色の画像を、主として第一の色の色材で形成する第一の画像形成モードと、第一の色の画像を、第一の色の色材及び第一の色と異なる色の色材の集合体として形成する第二の画像形成モードと、のいずれかにより形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段に、第一の画像形成モード及び第二の画像形成モードのいずれの特性を優先するかを示す色調整情報を入力する入力手段と、
入力手段にて得られる色調整情報と、予め求めた色材量と色彩値との対応関係を元に、第一の色の色材の色材構成比率を変更する色変換手段と、
を具備する画像形成装置。
【請求項8】
第一の特性は、第一の色を、主として第一の色の色材で再現する特性であり、第二の特性は、第一の色を、第一の色の色材及び第一の色と異なる色の色材の集合体として再現する特性である請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
第一の色の画像を主として第一の色の色材で形成する第一の画像形成モードと、第一の色の画像を第一の色の色材及び第一の色と異なる色の色材の集合体として形成する第二の画像形成モードと、のいずれを優先するか及びその度合いを示す色調整情報を受けつけ、
受けつけた色調整情報に従い、予め求めた色材量と色彩値との対応関係を元に、第一の色の色材の色材構成比率を変更する
画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−166771(P2011−166771A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26102(P2011−26102)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】