説明

画像処理装置、投射型表示装置および画像処理方法

【課題】安価で高精度に投射画像の色付きを補正することが可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】プロジェクターPJを用いてスクリーン1に表示される投射画像が所望の色となるように、表示すべき画像を示す元データの色を補正した投射画像の画像データを作成する画像処理装置10であって、スクリーン1の分光反射率を記憶する記憶部12と、スクリーン1の設置環境における外光OLの種類を指定する指定部と、分光反射率および外光OLの分光分布から求められる、反射光RL1の分光分布を用いて、反射光RL1に重畳することで無彩色を呈する分光分布を有する光が反射光RL2である補正光CLを決定する補正光決定部と、元データと補正光の分光分布のデータとを用いて画像データを作成する色補正部17と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、投射型表示装置および画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、展示会や学会、会議等のプレゼンテーションや、あるいはホームシアター等の映像視聴のための拡大画像の投射装置として、プロジェクター(投射型表示装置)が用いられている。
【0003】
通常、プロジェクターの被投射面として用いるスクリーンは、例えば反射型スクリーンの場合、プロジェクターからの投射光を反射して投射画像を表示すると同時に、照明の光や窓から入る太陽光など使用環境に由来する外光をも反射してしまう。そのため、プロジェクターを明るい場所で用いると、「白(最大輝度)」と「黒(最小輝度)」の輝度比であるコントラストが低くなり、鮮明な画像表示が難しいという課題があった。
【0004】
この課題を解決するために、太陽光、照明光等、コントラスト低下の原因となる外光の影響を抑制して最小輝度を下げることにより、明室での高コントラスト化を実現することを目的としたスクリーンの開発が進められている。このようなスクリーンとして、光を吸収する染料や顔料を含む光吸収層を設け、不要な外光を吸収する構成のスクリーンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、プロジェクターは、スクリーンや壁など種々の被投射面に投射画像を表示可能であるという特長を有するが、被投射面が異なると、被投射面の表面の色や色の濃淡、凹凸状態などを含む表面状態によって投射画像の色が変化してしまい、観察者が感じる見え方が変わってしまう。
【0006】
例えば、プロジェクターから、白いスクリーンに対して投射表示したときの投射画像と、学校の教室にあるような黒板に対して投射表示したときの投写画像と、では、見え方が変わってしまっていた。また、暗室で投射画像の色を調節した後に照明光(外光)の元で画像表示をおこなうと、設定から色ずれてしまい、色再現性が悪いという問題もあった。
【0007】
この課題を解決するために、色情報センサーを用いてスクリーンにおける投射画像の色情報を測定し、測定値に基づいて投射画像が所望の色や明度となるように補正をするプロジェクターの構成が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−107828号公報
【特許文献2】特開2008−165231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献に記載された発明には、次の様な課題がある。特許文献1に記載されているような特定の波長の光を吸収するスクリーンは、例えば、蛍光灯を外光として用いることを想定して設計されている場合、蛍光灯の光を良好に吸収して外光の影響を低減した無彩色スクリーンとすることができる。
【0010】
ところが、このような設計がされているスクリーンを、蛍光灯とは異なる外光(例えば、白色LED照明)のもとで用いる場合を考えると、外光の種類によって外光に含まれる光成分の分布(分光特性)が異なるため、特定の波長の光を吸収した後の外光により着色してしまい、結果、無彩色のスクリーンとはならないことが考えられる。
【0011】
このような場合に、特許文献1と同じく外光の存在下における投射画像の色ズレの解決を課題とした特許文献2に記載の発明を用いて、色ズレを補正することが考えられる。しかし、特許文献2の発明では、補正のためには外光吸収後のスクリーンの色付きを色情報センサーで測定した後、測定結果をもとに補正値を決定する必要がある。
【0012】
このような補正を可能とするためには、画像投射を行っていないスクリーンがどの波長の光を多く反射し、どの波長の光はあまり反射していないために色付きが生じているといった、分光学的な測定が必要となるが、このような測定を可能とするために色情報センサーは非常に高価であり、汎用的に用いるプロジェクターに採用することは現実的ではない。また、精度が悪いセンサーを用いた場合には、良好な色補正ができず、目的とする色ズレの補正ができない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、安価で高精度に投射画像の色付きを補正することが可能な画像処理装置を提供することを目的とする。また、このような画像処理装置を有することにより安価で高精度に投射画像の色付きを補正することが可能な投射型表示装置を提供することをあわせて目的とする。さらに、高精度な投射画像の色付きの補正を容易に行うことを可能とする画像処理方法を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明の画像処理装置は、投射型表示装置を用いて被投射面に表示される投射画像が所望の色となるように、表示すべき画像を示す元データの色を補正した前記投射画像の画像データを作成する画像処理装置であって、前記被投射面の分光反射率を記憶する記憶部と、前記被投射面の設置環境における外光の種類を指定する指定部と、前記分光反射率および前記外光の分光分布から求められる、前記被投射面における前記外光の反射光の分光分布を用いて、前記外光の反射光に重畳することで無彩色を呈する分光分布を有する光が前記被投射面における反射光である補正光を決定する補正光決定部と、前記元データと前記補正光の分光分布のデータとを用いて前記画像データを作成する補正部と、を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、予め被投射面の分光反射率を記憶させておくことで、高価な測定機器を搭載することなく、高精度な補正を行うことが可能な画像処理装置とすることができる。すなわち、記憶された分光反射率を用いることで、良好な色補正を可能とする補正光を求めることができ、このような補正光を付加するように元データを補正することで、良好な色補正を行った投射画像の画像データを作成することができる。
【0016】
本発明において、補正光の光量の過不足がある場合、外光の反射光と重畳させたとしても無彩色とはならず良好な補正を行うことができない。そのため、本発明においては以下のような構成を採用することにより、光量を測定することで補正に適した補正光の光量を決定し、より高精度な補正を行うことができる。
【0017】
まず本発明においては、前記補正光決定部は、前記被投射面に配置され、前記被投射面に入射する前記外光の光量と、前記被投射面に入射する前記補正光の光量と、を測定する光量測定手段と、前記外光の光量と前記分光反射率と前記外光の分光分布とから求められる前記外光の反射光の光量、および前記補正光の光量と前記分光反射率と前記補正光の分光分布とから求められる前記補正光の反射光の光量と、に基づいて、前記外光の反射光と前記補正光の反射光とを重畳することで無彩色を呈するような前記補正光の光量を決定する光量決定部と、を有することが望ましい。
投射型表示装置(プロジェクター)から射出される補正光の光量は、プロジェクターと被投射面との距離や、投射表示におけるズーム、光源光量の経時変化などによって変化する。そのため、光量測定手段を被投射面上に配置することで、被投射面上での外光および補正光の光量を直接測定し、適切な補正光の光量を決定することが可能となる。
【0018】
また、前記補正光決定部は、前記投射型表示装置に配置され、前記被投射面に入射する前記外光の反射光の光量と、前記被投射面に入射する前記補正光の反射光の光量と、を測定する光量測定手段と、前記外光の反射光の光量と前記補正光の反射光の光量とに基づいて、前記外光の反射光と前記補正光の反射光とを重畳することで無彩色を呈するような前記補正光の光量を決定する光量決定部と、を有することとすることもできる。
被投射面上に光量測定手段が配置されると、光量測定手段が投射画像の観察の邪魔に成り得るが、この構成によればそのような不具合が無く好ましい。
【0019】
さらに、本発明においては、前記補正光決定部は、前記補正光を用いて形成され且つ前記補正光の光量を異ならせた複数のサンプル画像のサンプル画像データを作成するサンプル画像作成部と、使用者に前記複数のサンプル画像のうち特定のサンプル画像を選択させる選択部と、前記特定のサンプル画像を形成する前記補正光の光量を前記補正光の光量として決定する光量決定部と、を有することとしても良い。
この構成によれば、サンプル画像を使用者に選択させることにより、補正に適した補正光の光量を選ぶことができる。具体的には、サンプル画像データに基づいて光量の異なる補正光を用いて形成された複数のサンプル画像を被投射面に投射し、被投射面上で無彩色となるサンプル画像を選択することで、どの程度の光量の補正光であれば、色付きを補正できるかの判断を行うことができ、補正光の光量を決定することができる。
【0020】
本発明では、被投射面に照射される外光の種類が変わったときに起こりうる色ずれの補正を課題として挙げている。この外光の種類は、次の様にして決定することができる。
【0021】
まず本発明において、前記記憶部は、前記外光を識別するための外光固有の特性値を、前記外光として想定される複数種の光について各々記憶し、前記指定部は、前記特性値を測定する特性値測定手段と、前記特性値測定手段の測定結果を用い前記記憶部に記憶された前記特性値を参照して前記外光の種類を推定する推定部と、を有することが望ましい。
【0022】
ここで、「固有の特性値」とは、外光の分光分布や外光の点滅状態など、外光の種類を特定するために用いられる外光の種類に固有の特性値のことである。
【0023】
この構成によれば、記憶部に記憶された複数種の光の特性値を、外光の種類を判断するための参照値として用いることができる。したがって、特性測定手段よる測定が簡易的なものであっても外光の種類の推定は可能となり、種類が特定された外光の分光分布を用いて補正が可能となる。
【0024】
また本発明においては、前記記憶部は、前記外光として想定される複数種の光の分光分布を記憶し、前記指定部は、前記複数種の光の中から、使用者に前記被投射面の設置環境における前記外光の種類を選択させ入力させる入力部を有することとしても良い。
この構成によれば、外光の種類が分かっている場合、無用の測定を行うことなく使用者が外光の種類を指定することで適切な補正値の設定を行うことが可能となる。
【0025】
また、本発明の投射型表示装置は、上述の画像処理装置と、前記画像処理装置で作成される画像データが入力され、該画像データに基づいて投射画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部で形成された前記投射画像を投射表示する投射光学系と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、画像処理装置で形成される補正後の画像データに基づいて画像表示を行うことができるため、安価で高精度に投射画像の色付きを補正することが可能な投射型表示装置を提供することが可能となる。
【0026】
また、本発明の画像処理方法は、投射型表示装置を用いて被投射面に表示される投射画像が所望の色となるように、表示すべき画像を示す元データの色を補正した前記投射画像の画像データを作成する画像処理方法であって、前記被投射面の分光反射率と、前記被投射面の設置環境における外光の分光分布と、から、前記被投射面での前記外光の反射光の分光分布を求め、前記外光の反射光に重畳することで無彩色を呈する分光分布を有する光が、前記被投射面における反射光となる補正光を算出し、前記元データに前記補正光のデータを付加した前記画像データを作成することを特徴とする。
この方法によれば、予め測定された被投射面の分光反射率を用いることで、高精度な補正を容易に行うことが可能な画像処理装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターを用いる様子を示す斜視図である。
【図2】等色関数を示すグラフである。
【図3】第1実施形態の画像処理装置による補正を説明する模式図である。
【図4】第1実施形態の画像処理装置およびプロジェクターを説明する説明図である。
【図5】第1実施形態の画像処理装置における処理を示したフローチャートである。
【図6】第2実施形態の画像処理装置およびプロジェクターを説明する説明図である。
【図7】第2実施形態の画像処理装置における処理を示したフローチャートである。
【図8】第3実施形態の画像処理装置およびプロジェクターを説明する説明図である。
【図9】サンプル画像の例を示す模式図である。
【図10】第3実施形態の画像処理装置における処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
以下、図1〜図5を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る画像処理装置10およびプロジェクターPJについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0029】
図1は、本実施形態のプロジェクターPJを用いる様子を示す斜視図である。本実施形態の画像処理装置10はプロジェクターPJに内蔵されている。図に示すように本実施形態のプロジェクターPJは、反射型のスクリーン1の被投写面1aに投射光Lを投射する投射型表示装置であり、本実施例ではスクリーン1の正面側前方の斜め下に配置された近接投写型のプロジェクターである。
【0030】
プロジェクターPJが備える画像処理装置10は、信号源である画像入力装置9から入力される画像データから、プロジェクターPJが投射表示する画像に対応した画像データを作成する。
【0031】
用いるスクリーン1は、外光に含まれるピーク波長の光を選択的に吸収する色素を有し、スクリーンにおける外光の反射光量を低減させることにより、投射画像のコントラスト向上を図るように設計されたスクリーンである。スクリーン1は、例えば、外光を吸収する色素を含む色素層2と、色素層2の裏側(視認側とは反対側)に設けられた反射層3と、を有している。以下の説明において、このような機能を有するスクリーンを必要に応じて波長選択スクリーンと称することがある。
【0032】
このようなスクリーン1は、色素層2に含まれる色素が良好に吸収することができる外光のもとで用いる場合には、観察者Xが良好な投射画像を観察可能である。しかし、例えば、色素層2が白色LED光源の元で用いることを想定して設計されている場合に、スクリーン1を蛍光灯照明である室内照明LSのもとで用いると、室内照明LSに由来する外光OLのうち、白色LED光源のピーク波長に対応する光を吸収した後に、残分が反射光RL1として反射される。
【0033】
色素層2を白色LED光源の元で用いることを想定して設計されている場合、通常、白色LED光源由来の光を吸収した後の残分が無彩色となるように、各色素の吸収波長や吸収光量が設計されている。スクリーンの色付きを抑制するためである。すなわち、特定の外光に対して吸収後の残分が無彩色となるように設計されているため、上述のように設計とは異なる外光環境下でスクリーン1のような波長選択スクリーンを用いると、反射光RL1に色付きが生じ、投射画像の画質の劣化を引き起こしてしまう。
【0034】
本実施形態のプロジェクターPJは、上述のように波長選択スクリーンを設計とは異なる外光環境下で用いる場合に、生じる色付きを想定し、当該色付きの補色となる色の光を投射画像と同時に射出して画像の色を補正することで、投射画像の画質の劣化を防ぎ、観察者Xが良好な画像を観察可能とするものである。以下、順に説明する。
【0035】
(原理説明)
まず、本実施形態の画像処理装置10による色補正について原理を説明する。以下の説明においては、必要に応じて図1で示した符号を用いることとする。
【0036】
まず、プロジェクターPJが射出する赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)について、発光波長の分光分布をそれぞれfpj-red(λ),fpj-green(λ),fpj-blue(λ)、スクリーン1の分光反射率をfscreen(λ)とすると、プロジェクターPJから射出された光がスクリーン1で反射されて観察者Xに届くときの光の分光分布は、プロジェクターPJの発光波長の分光分布とスクリーン1の分光反射率との積gで表される。例えば、プロジェクターPJから赤色光を射出したときに観察者Xに届く赤色光の分光分布gpj-red(λ)は以下の式(1)で表される。
【0037】
【数1】

【0038】
例として、プロジェクターPJから射出され観察者Xに届く赤色光は、三刺激値XYZで表すと、以下の式(2)〜(4)のようになる。式中x、y、zは図2に示す等色関数であり、kは式(5)で示される係数である。また、式(2)〜(4)の積分範囲は可視光領域を示す。
【0039】
【数2】

【0040】
【数3】

【0041】
【数4】

【0042】
【数5】

【0043】
上式では、添え文字である「red」が赤色光であることを示しており、緑色光を示す場合には「green」、青色光を示す場合には「blue」と取り替えることで同様に、緑色光または青色光を三刺激値で示すことができる。
【0044】
このようにして求めた三刺激値を用いてxyY表色系における色度座標x、yを算出することにより、プロジェクターPJとスクリーン1とを用いて表示することが可能なxy色度図を求めることができる。
【0045】
次いで、上述の三刺激値を用いて、図1に示すように外光OLの存在下でスクリーン1に表示される投射画像を示す三刺激値XALL,YALL,ZALLを示すと、以下の式(6)のようになる。式中、外光OLのスクリーン1上での強度をIGAIKOU、外光OLによるスクリーン1上での色付きを示す三刺激値をXIRO,YIRO,ZIRO、プロジェクターPJから射出される赤色光の強度をR、緑色光の強度をG、青色光の強度をBとして表す。また、プロジェクターPJから赤色光のみを射出したときの赤色光の三刺激値をXとし、同様に緑色光の三刺激値をX、青色光の三刺激値をXとする。
【0046】
【数6】

【0047】
式(6)は、変形すると以下の式(7)のように表すことができる。
【0048】
【数7】

【0049】
式(7)から、外光によって投射画像に色付きが生じていても、スクリーン1に表示される投射画像を示す三刺激値XALL,YALL,ZALLを表示させたい色の三刺激値として設定すると、対応するプロジェクターPJの射出光の強度R,G,Bが算出できることが分かる。具体的には、式(7)における右辺第二項に含まれる各値が分かれば、投射画像が所望の色(所望の色の三刺激値)となるようにプロジェクターPJの射出光の強度R,G,Bが算出できることが分かる。
【0050】
図3は、このような補正の様子を説明する模式図であり、プロジェクターPJで黒表示を行う場合の補正前の様子(図3(a))、および補正後の様子(図3(b))を示す図である。横軸に示すR,G,Bは、それぞれ赤色光、緑色光、青色光の各色光成分を示し、縦軸は各色光の明るさ(強度)を示す。図では、赤色光、緑色光、青色光の各色光の強度が同じ(縦軸方向の高さが同じ)場合に無彩色となることして示している。
【0051】
すなわち、スクリーン1での外光OLの反射光において色光成分の量がずれている(色光成分の高さが異なる)ため、色付きが生じているところ(図3(a))、本実施形態の画像処理装置10では、色付きを生じさせている各色光成分のずれを補うように色補正を行った画像データを作成し、スクリーン1が無彩色に見えるように補正する(図3(b))。色光成分は、三刺激値で置き換えて表現することが可能なものである。
【0052】
具体的には、(i)外光OLの強度IGAIKOU、(ii)上記式(6)の右辺第2項として表される、プロジェクターPJから各色光のみを射出したときの各色光の三刺激値、(iii)外光OLによるスクリーン1上での色付きを示す三刺激値XIRO,YIRO,ZIROが分かれば、図3(b)のようなプロジェクターPJによる補正量が分かるため、色補正を行うことができる。
【0053】
しかしながら、三刺激値を正確に測定可能な分光器は非常に高価な装置であるため、汎用的に用いる画像処理装置10やプロジェクターPJに搭載することは現実的ではない。そのため、本実施形態の画像処理装置10では、個別に入手するスクリーン1の分光反射率fscreen(λ)の情報と、プロジェクターPJの発光波長の分光分布や外光OLの分光分布と、から上述の(ii)(iii)を算出することで代用して用いる。
【0054】
(装置構成)
図4は、本実施形態の画像処理装置10およびプロジェクターPJを説明する説明図である。
【0055】
図に示すように、本実施形態のプロジェクターPJは、画像入力装置9から投射画像の元データが入力される画像処理装置10と、画像処理装置10によって形成された画像データが入力されるライトバルブ(L/V、画像形成部)の駆動部4と、駆動部4により駆動される画像形成部5と、画像形成部5で形成された画像を投射表示する投射光学系6とを有している。画像処理装置10で形成された画像データは、不図示の光源装置にも供給され、画像の光量の制御を行うこととしても良い。
【0056】
画像処理装置10は、外光OLを受光するセンサー11と、種々のデータを記憶する記憶部12と、記憶部12に記憶されたデータを用い外光OLの種類を推定する外光種類推定部(推定部)13と、記憶部12と外光種類推定部13とから供給されるデータを用いて補正光CLの種類を決定する補正光種類決定部14と、スクリーン1で反射する光を受光するセンサー15と、補正光種類決定部14とセンサー15とから供給されるデータを用いて補正光CLの光量を決定する補正光量決定部(光量決定部)16と、種類および光量が定まった補正光CLを用いて元データを補正し画像データを作成する色補正部17と、を有している。
【0057】
センサー11と外光種類推定部13とは、本発明における指定部を構成している。また、補正光種類決定部14とセンサー15と補正光量決定部16とは、本発明における補正光決定部を構成している。
【0058】
まず、センサー11は、外光取り込み部11aを介して外光OLを受光する。センサー11としては、いわゆる色センサーを用いることができる。色センサーは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーなどの受光素子にRGB三色のカラーフィルターが設けられたものであり、各カラーフィルターの透過率と受光素子の波長感度との積に依存した電圧を出力値として出力する。
【0059】
このようなRGBの3色フィルターを用いた色センサーでは、3つの帯域の光強度を求めることができる。吸収波長(透過波長)を異ならせたn種のカラーフィルターを用いれば、n個の帯域の光強度を算出することができる。また、カラーフィルターを用いるかわりに、回折素子を用いて色分離を行っても良い。
【0060】
また、センサー11では、出力値が周期的に変動しているか否かによって、外光OLが連続的に発光しているのか、点滅発光しているのかを検出することもできる。
【0061】
記憶部12では、外光として想定される複数種の光の分光分布データ、およびスクリーン1の分光反射率など、外光の種類に応じた固有の特性値を記憶している。例えば、想定される外光として、蛍光灯、白色LED、白熱灯、太陽光などが挙げられる。
【0062】
また、外光OLが蛍光灯であれば、50Hzから60Hzの周期で点滅している。そのため、点滅の有無や点滅周期も固有の特性値として記憶している。
【0063】
さらに、記憶部12は、プロジェクターの分光分布や、プロジェクターが射出する色光の三刺激値X,X,Xを記憶していることとし、後述の補正光の計算のために該色光の三刺激値を用いることとしても構わない。
【0064】
外光種類推定部13では、記憶部12に記憶された外光の分光分布データを参照しながら、センサー11による受光結果から外光OLの種類を推定する。センサー11によって、分析機器である分光器ほどの精度は望めないとしても、外光OLの分光分布または分光分布の傾向を検出することができる。そのため、センサー11による受光結果に最も近似した分光分布を示す外光の種類を、記憶部12に記憶された外光の分光分布データから選択し、外光OLの種類を推定する。例えば、ピーク波長の位置や点滅の有無や点滅周期を元に推定する。
【0065】
補正光種類決定部14では、記憶部12に記憶されたスクリーン1の分光反射率と、外光種類推定部13で推定した外光OLの種類と、から、補正光CLの種類を決定する。すなわち、推定した外光OLの分光分布データと、スクリーン1の分光反射率と、から反射光RL1の分光分布を求めることができるため(上記、式(1))、色付きを生じている反射光RL1に重畳させることで無彩色となるような補正光CLを決定することができる。補正光CLは、プロジェクターPJから射出される赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の比率で示される。
【0066】
一方、センサー15では、スクリーン1で反射する光を、反射光取り込み部15aを介して受光し、該反射する光の強度を求める。センサー15は、反射する光の強度を求めるために設けられる明るさセンサーであり、反射光RL1の強度(IGAIKOU)および補正光CLの適正な光量を決定するために、スクリーン1で反射する光(外光OLの反射光RL1および補正光CLの反射光RL2)を受光する。
【0067】
補正光量決定部16では、補正光種類決定部14で決定された補正光CLの種類と、センサー15で求められる反射光RL1の強度と、から、補正光CLの光量を決定する。すなわち、補正光種類決定部14では、補正光CLの種類が決定されたのみであって、反射光RL1に対してどの程度の量を重畳させると無彩色となるのかは決定できていない。そのため、センサー15で求められる反射光RL1の強度を参照し、補正光CLの光量を決定する。決定される補正光CLの値は、後述の色補正部17で画像データの作成に用いるが、補正光CLのデータを、入力される元データで規定される画素値に対する補正光CLを付加した補正値のテーブルとして有することとしても良い。
【0068】
ここで、必要とする補正光CLの光量は、プロジェクターPJとスクリーン1との距離や、投射表示におけるズーム、光源光量の経時変化などによって変化する。そのため、まずはRGB比率を固定した状態で、補正光CLの光量を仮設定する。その後、補正光CLをプロジェクターPJから射出し、補正光CLの反射光量をセンサー15で受光して補正光CLの光量を再設定するという処理を繰り返し、反射光RL1と重畳することで無彩色になる補正光CLの光量の計算値を目標値として、該目標値をセンサー15が受光した場合に、補正光CLの光量として決定する。
【0069】
色補正部17では、種類および光量が定まった補正光CLを用いて、画像入力装置9から入力される元データを補正し、投射画像の画像データを作成する。
【0070】
(画像処理フロー)
図5は、本実施形態の画像処理装置10およびプロジェクターPJにおける処理を示したフローチャートである。以下の説明においては、必要に応じて図4で示した符号を用いることとする。
【0071】
波長選択スクリーンであるスクリーン1に対しプロジェクターPJを用いて画像表示を行う場合、まず、プロジェクターPJを起動した後に、プロジェクターPJを黒表示とし(ステップS101)、プロジェクターPJからの光が無い状態で、センサー15を用いて外光OLの反射光RL1の光量を検出する。また、センサー11で外光OLを受光する(ステップS102)。
【0072】
次いで、センサー11での受光結果から、外光種類推定部13において、分光分布や点滅状態などの外光OLの特徴を抽出し(ステップS103)、記憶部12のデータを参照して、外光の種類を推定する(ステップS104)。
【0073】
次いで、補正光種類決定部14において、記憶部12に記憶されたスクリーン1の分光反射率と、外光種類推定部13で推定した外光OLの種類と、から、補正光CLのRGB比率を決定する(ステップS105)。そして、RGB比率を固定した状態で、任意の光量の補正光CLをプロジェクターPJからスクリーン1に投射する(ステップS106)。
【0074】
次いで、センサー15を用いて外光OLの反射光RL1と、補正光CLの反射光RL2とを合わせた光を受光して光量を検出し(ステップS107)、補正光CLにより適切に補正ができているか否かの判定を行う(ステップS108)。判定は、例えば、測定される補正光CLの光量が、同じく測定される光量を有する反射光RL1と重畳することにより、計算の上で無彩色になる光量(目標値=図3(b)でのRGBを足した光量)に対して、所定の誤差範囲内であるか否かを判断基準として判定する。
【0075】
測定される補正光CLの光量が、目標値に対して大きくずれていなければ、補正光量決定部16は、当初定めた補正光CLの光量を補正に用いる光量として決定する(ステップS109)。
【0076】
また、補正光CLの光量が適切でなければ、補正光量決定部16は、センサー15による検出結果より補正光CLの光量が大きいか否かを判定する(ステップS110)。補正光CLの光量が大きければ、プロジェクターPJからの補正光CLの出力を下げるように補正光量を再設定し(ステップS111)、また光量が小さければ、プロジェクターPJからの補正光CLの出力を上げるように補正光量を再設定する(ステップS112)。
【0077】
補正光CLの出力を調整した後は、再度プロジェクターPJからスクリーン1に補正光CLを投射し、補正光CLにより適切に補正ができているか否かの判定を再度行って(ステップS108)、適切な補正光CLの光量を決定する(ステップS109)。
【0078】
本実施形態の画像処理装置10では、以上のようにして画像処理を行い、プロジェクターPJ得られた画像データを用いて画像表示を行う。
【0079】
以上のような構成の画像処理装置10によれば、予めスクリーン1の分光反射率を記憶させておくことで、高価な測定機器を搭載することなく、高精度な補正を行うことができる。すなわち、記憶された分光反射率を用いることで好適な補正を可能とする補正光の種類を特定することができ、このような補正光を付加するように元データを補正することで、良好な色補正を行った投射画像の画像データを作成することができる。
【0080】
また、以上のような構成のプロジェクターPJによれば、画像処理装置10で形成される補正後の画像データに基づいて画像表示を行うことができるため、安価で高精度に投射画像の色付きを補正することが可能なプロジェクターPJとなる。
【0081】
さらに、以上のような方法の画像処理方法によれば、予め測定された被投射面の分光反射率を用いることで、高精度な補正を容易に行うことが可能な画像処理装置とすることができる。
【0082】
なお、本実施形態においては、プロジェクターPJがセンサー15を有し、反射光RL1,RL2を測定することとしたが、センサー15がスクリーン1に設けられ、光照射面における外光OL及び補正光CLの光量を直接測定することとしても構わない。
【0083】
プロジェクターPJから射出される補正光CLの光量は、プロジェクターPJとスクリーン1との距離や、投射表示におけるズームなどによって変化する。そのため、センサー15をスクリーン1上に配置することで、スクリーン1上での外光および補正光の光量を直接測定して適切な補正光CLの光量を決定することが可能となる。
【0084】
また、本実施形態においては、記憶部12が外光固有の特性値を記憶しており、記憶された特性値を用いて補正光種類決定部14においてスクリーン1上での色付きを示す三刺激値XIRO,YIRO,ZIROを算出することとしているが、これに限らず、記憶部12が、外光の種類とスクリーンの種類とを対応させて予め求めた三刺激値XIRO,YIRO,ZIROを記憶していることとしても良い。
【0085】
[第2実施形態]
図6,7は、本発明の第2実施形態に係る画像処理装置20およびプロジェクターPJの説明図である。本実施形態の画像処理装置20およびプロジェクターPJは、多くの点が第1実施形態の第1実施形態の画像処理装置10およびプロジェクターPJと共通している。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0086】
図6は、本実施形態の画像処理装置20およびプロジェクターPJを説明する説明図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。
【0087】
本実施形態の画像処理装置20およびプロジェクターPJは、第1実施形態の画像処理装置10およびプロジェクターPJと比べ、画像処理装置10が備えていたセンサー11を有さず、外光の種類を観察者が任意に選択し外光種類推定部13に入力する入力装置(入力部)21を有している点が異なっている。入力装置21と外光種類推定部13とは、本発明における指定部を構成している。
【0088】
入力装置21は、観察者が判断した外光OLの種類を外光種類推定部13に入力するために用いる。スクリーン1の使用環境における外光OLの種類が分かっている場合に、観察者が外光OLの種類の情報を入力することにより、画像処理装置10の計算負荷を下げることができる。入力装置21としては、例えばキーボードや入力ボタン、あるいは記憶部12に記憶された複数種類の外光を示すGUI(Graphical User Interface)を表示し、観察者に選択させるタッチパネルのような入力手段を用いることができる。
【0089】
図7は、本実施形態の画像処理装置20およびプロジェクターPJにおける処理を示したフローチャートであり、第1実施形態の図5に対応する図である。以下の説明においては、必要に応じて図1,6で示した符号を用いることとする。
【0090】
まず、プロジェクターPJを起動した後に、プロジェクターPJを黒表示とし(ステップS201)、プロジェクターPJからの光が無い状態で、センサー15を用いて外光OLの反射光RL1の光量を検出する(ステップS202)。これにより、黒表示時に外光により色付いた反射光の明るさを知ることができる。検出する明るさは、外光により色付いた反射光の各色光成分の明るさの総和に対応する。
【0091】
次に、観察者Xは入力装置21を用いて、外光OLの種類の情報を入力して種類を指定する(ステップS203)。例えば、スクリーン1の使用環境では蛍光灯を照明として用いていることが分かっている場合など、外光OLの種類が分かっている場合に、外光の種類を指定する。
【0092】
次いで、補正光種類決定部14において、記憶部12に記憶されたスクリーン1の分光反射率と、外光種類推定部13に入力された外光OLの種類と、から、補正光CLのRGB比率を決定する(ステップS204)。
【0093】
以下、画像処理装置20では、第1実施形態のステップS106からステップ112と同様の操作をステップS205からステップ211として行い、適切に色補正がされた画像データを作成する。
【0094】
すなわち、外光の種類を指定することで、外光の分光分布とスクリーンの分光反射率とから、色付いた外光の各色光の比率が分かり、当該比率と、当初に測定したPJを黒表示時としたときの反射光の光量と、から反射光の各色成分の光量が分かる。ステップS205からS211では、このように求めた反射光の各色成分の光量に対して適切に色補正がされた画像データを作成する。
【0095】
また、プロジェクターPJでは、形成された画像データを用いてスクリーン1に対して投射表示を行う。
【0096】
以上のような構成の画像処理装置20およびプロジェクターPJにおいても、波長選択スクリーンの使用環境が異なることで生じ得る色付きを、安価で高精度に補正することが可能となる。
【0097】
[第3実施形態]
図8〜図10は、本発明の第3実施形態に係る画像処理装置30およびプロジェクターPJの説明図である。本実施形態の画像処理装置30およびプロジェクターPJは、多くの点が第2実施形態の第2実施形態の画像処理装置20およびプロジェクターPJと共通している。したがって、本実施形態において第2実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。また、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素についても同様とする。
【0098】
図8は、本実施形態の画像処理装置30およびプロジェクターPJを説明する説明図であり、第1実施形態の図4および第2実施形態の図6に対応する図である。
【0099】
本実施形態の画像処理装置30およびプロジェクターPJは、第2実施形態の画像処理装置20およびプロジェクターPJと比べ、画像処理装置20が備えていたセンサー15を有さず、外光の光量を観察者が選択し補正光量決定部16に入力する選択部34を有している点、および、補正光CLの光量を決定するために用いるサンプル画像を作成するサンプル画像作成部39を有している点が異なっている。
【0100】
選択部34は、観察者が判断した外光OLの光量を補正光量決定部16に入力するために用いる。選択部34としては、例えばキーボードや入力ボタン、タッチパネルのような入力手段を用いることができる。
【0101】
サンプル画像作成部39は、補正光種類決定部14で決定された補正光CLのRGB比率を固定し光量を互いに異ならせた複数種のサンプル画像の画像データを作成する。複数種のサンプル画像に対応した複数の光量の情報は、補正光量決定部16に供給される。プロジェクターPJは、作成されるサンプル画像の画像データに基づいて駆動部4を駆動させ、スクリーン1に画像を投射表示する。
【0102】
例えば、図9に示すように、光量が異なる複数種のサンプル画像SPを一画面内に表示するような画像データを作成する。図では、スクリーン1上に条件1から条件6まで段階的に光量を異ならせた複数種のサンプル画像SPを表示する例を示している。または、一画面内に1種のサンプル画像SPを表示する画像データを複数作成し、時間的に異ならせて表示することとしても良い。
【0103】
図10は、本実施形態の画像処理装置30およびプロジェクターPJにおける処理を示したフローチャートであり、第1実施形態の図5および第2実施形態の図7に対応する図である。
【0104】
まず、第2実施形態のステップS201と同様に、観察者Xは入力装置21を用いて、外光OLの種類の情報を入力して種類を指定する(ステップS301)。
【0105】
次いで、第2実施形態のステップS203と同様に、補正光種類決定部14において、記憶部12に記憶されたスクリーン1の分光反射率と、外光種類推定部13に入力された外光OLの種類と、から、補正光CLのRGB比率を決定する(ステップS302)。
【0106】
次いで、サンプル画像作成部39において、RGB比率が決定された補正光CLの光量を互いに異ならせた複数種のサンプル画像SPの画像データを作成し、プロジェクターPJから投射表示する(ステップS303)。サンプル画像SPは、色付きが生じているスクリーン1上に表示されることで、補正光CLのRGB発光比率は固定したまま、光量を異ならせた複数の補正条件(図9では条件1から条件6)を提示することとなる。
【0107】
次いで、観察者Xは、表示された複数種のサンプル画像SPのうち、無彩色に見えるサンプル画像SPを選択し、選択部34を用いて補正光量決定部16に入力する(ステップS304)。
【0108】
補正光量決定部16では、選択されたサンプル画像SPの光量を補正光の光量として採用し決定する(ステップS305)。
【0109】
以上のような構成の画像処理装置30およびプロジェクターPJにおいても、波長選択スクリーンの使用環境が異なることで生じ得る色付きを、安価で高精度に補正することが可能となる。
【0110】
なお、本実施形態では、一度のサンプル画像SPの表示により補正光の適切な光量が分かることとして例を記載したが、無彩色となるサンプル画像SPがすぐに表示されるとは限らない。そのため、選択したサンプル画像SPの光量をすぐに補正光の光量として採用するのではなく、次の様な制御を行うこととしても良い。
【0111】
例えば、図9に示したように段階的に光量を異ならせた複数のサンプル画像SPから、所望の光量(無彩色となる光量)よりも光量が多いサンプル画像SPと少ないサンプル画像SPとの2種を選択して、第1段階の光量選択とする。次いで、選択した2つのサンプル画像SPの光量の情報から、2つのサンプル画像SPの補正光量の間で、補正光量を段階的に異ならせた複数のサンプル画像SPを再設定して表示し、再度観察者に選択させることで第2段階の光量選択とする。以下、スクリーン1上で無彩色となるサンプル画像SPが選択されるまでサンプル画像SPの表示と選択とを繰り返すことで、補正光の光量を設定することとしても良い。
【0112】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0113】
1…スクリーン(被投射面)、5…画像形成部、6…投射光学系、10,20,30…画像処理装置、11…センサー(特性値測定手段、指定部)、12…記憶部、13…外光種類推定部(推定部、指定部)、14…補正光種類決定部(補正光決定部)、15…センサー(光量測定手段)、16…補正光量決定部(光量決定部、補正光決定部)、17…色補正部(補正部)、21…入力装置(入力部)、34…選択部、39…サンプル画像作成部、OL…外光、PJ…プロジェクター(投射型表示装置)、RL1…外光の反射光、RL2…補正光の反射光、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射型表示装置を用いて被投射面に表示される投射画像が所望の色となるように、表示すべき画像を示す元データの色を補正した前記投射画像の画像データを作成する画像処理装置であって、
前記被投射面の分光反射率を記憶する記憶部と、
前記被投射面の設置環境における外光の種類を指定する指定部と、
前記分光反射率および前記外光の分光分布から求められる、前記被投射面における前記外光の反射光の分光分布を用いて、前記外光の反射光に重畳することで無彩色を呈する分光分布を有する光が前記被投射面における反射光である補正光を決定する補正光決定部と、
前記元データと前記補正光の分光分布のデータとを用いて前記画像データを作成する補正部と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正光決定部は、前記被投射面に配置され、前記被投射面に入射する前記外光の光量と、前記被投射面に入射する前記補正光の光量と、を測定する光量測定手段と、
前記外光の光量と前記分光反射率と前記外光の分光分布とから求められる前記外光の反射光の光量、および前記補正光の光量と前記分光反射率と前記補正光の分光分布とから求められる前記補正光の反射光の光量と、に基づいて、前記外光の反射光と前記補正光の反射光とを重畳することで無彩色を呈するような前記補正光の光量を決定する光量決定部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補正光決定部は、前記投射型表示装置に配置され、前記被投射面に入射する前記外光の反射光の光量と、前記被投射面に入射する前記補正光の反射光の光量と、を測定する光量測定手段と、
前記外光の反射光の光量と前記補正光の反射光の光量とに基づいて、前記外光の反射光と前記補正光の反射光とを重畳することで無彩色を呈するような前記補正光の光量を決定する光量決定部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正光決定部は、前記補正光を用いて形成され且つ前記補正光の光量を異ならせた複数のサンプル画像のサンプル画像データを作成するサンプル画像作成部と、
使用者に前記複数のサンプル画像のうち特定のサンプル画像を選択させる選択部と、
前記特定のサンプル画像を形成する前記補正光の光量を前記補正光の光量として決定する光量決定部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記外光を識別するための外光固有の特性値を、前記外光として想定される複数種の光について各々記憶し、
前記指定部は、前記特性値を測定する特性値測定手段と、
前記特性値測定手段の測定結果を用い前記記憶部に記憶された前記特性値を参照して前記外光の種類を推定する推定部と、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記外光として想定される複数種の光の分光分布を記憶し、
前記指定部は、前記複数種の光の中から、使用者に前記被投射面の設置環境における前記外光の種類を選択させ入力させる入力部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置で作成される画像データが入力され、該画像データに基づいて投射画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成された前記投射画像を投射表示する投射光学系と、を有することを特徴とする投射型表示装置。
【請求項8】
投射型表示装置を用いて被投射面に表示される投射画像が所望の色となるように、表示すべき画像を示す元データの色を補正した前記投射画像の画像データを作成する画像処理方法であって、
前記被投射面の分光反射率と、前記被投射面の設置環境における外光の分光分布と、から、前記被投射面での前記外光の反射光の分光分布を求め、
前記外光の反射光に重畳することで無彩色を呈する分光分布を有する光が、前記被投射面における反射光となる補正光を算出し、
前記元データに前記補正光のデータを付加した前記画像データを作成することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8461(P2012−8461A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146292(P2010−146292)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】