説明

画像処理装置、画像処理システム及びソフトウェア

【課題】正確な混雑度、使用時の快適性の情報をユーザが容易に把握できるようにした画像処理装置を提供する。
【解決手段】ネットワークを介して複数のユーザで共同使用する画像処理装置において、ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する第1の管理部11と、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する第2の管理部12と、第1の管理部11及び前記第2の管理部12の情報に基づいて、混雑度、使用時の快適性を判断する判断部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理システム及びソフトウェアに関し、特に、混雑度や使用時の快適性の情報をユーザに提供する画像処理装置、画像処理システム及びソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のユーザと共有するプリンタ等の画像処理装置をあるユーザが利用する場合、他者のジョブの実行や画像処理装置の調整等によって、すぐに自分のジョブを実行できないことがある。そこで、画像処理装置が提供する情報からジョブの混雑状況を把握できるようにした技術が提案され、周知となっている。
例えば、特許文献1では、印刷処理する文書の各印刷情報と作成した学習データとに基づいて、予測印刷時間表示プログラムが文書に対する印刷処理の第1の印刷時間を予測する構成とすることで、使用者が印刷指示してからの実際の印刷所要時間を算出することができ、印刷中の文書が既にある場合でも、該先行の印刷処理が終わるまでの時間も考慮した印刷時間を予測するとしている。
【特許文献1】特開2004−185048公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、画像処理装置の混雑具合や待ち時間を判断するための情報は複数存在し、それらの情報のうち、いくつかは従来技術によってもユーザに提供されているが、それらの情報を個別に参照してユーザが判断する作業は面倒であり、また、正確に判断することが困難であった。
そこで、本発明は、上述した実情を考慮してなされたもので、正確な混雑度、使用時の快適性の情報をユーザが容易に把握できるようにした画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ネットワークを介して複数のユーザで共同使用する画像処理装置において、ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する第1の管理部と、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する第2の管理部と、前記第1の管理部及び前記第2の管理部の情報に基づいて、混雑度、使用時の快適性を判断する判断部とを備えた画像処理装置を最も主要な特徴とする。
また、請求項2に記載の発明では、前記判断部は、前記第1の管理部に基づく情報と前記第2の管理部に基づく情報のうち、任意の比率でいずれか一方の情報を優先させて、混雑度、使用時の快適性を判断することを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明では、ネットワークを介して複数のユーザで共同使用する画像処理装置において、ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する第1の管理部と、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する第2の管理部と、前記第2の管理部の情報に基づいて、平均混雑度、使用時の平均的な快適性を判断する判断部とを備えた画像処理装置を主要な特徴とする。
また、請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像処理装置と、該画像処理装置が接続されたネットワークにおいて前記画像処理装置に対する制御及び情報収集が可能なコンピュータ端末を有することを特徴とする。
【0005】
また、請求項5に記載の発明では、ネットワークを介して複数のユーザで共同使用し、第1の管理部、第2の管理部及び判断部を備えた画像処理装置に、前記第1の管理部が、ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する手順と、前記第2の管理部が、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する手順と、前記判断部が、前記第1の管理部及び前記第2の管理部の情報に基づいて、混雑度、使用時の快適性を判断する手順とを実行させるソフトウェアを主要な特徴とする。
また、請求項6に記載の発明では、前記判断部における手順は、前記第1の管理部からの情報と前記第2の管理部からの情報のうち、任意の比率でいずれか一方の情報を優先させて、混雑度、使用時の快適性を判断する手順である請求項5記載のソフトウェアを主要な特徴とする。
また、請求項7に記載の発明では、ネットワークを介して複数のユーザで共同使用し、第1の管理部、第2の管理部及び判断部を備えた画像処理装置に、前記第1の管理部が、ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する手順と、前記第2の管理部が、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する手順と、前記判断部が、前記第2の管理部の情報に基づいて、平均混雑度、使用時の平均的な快適性を判断する手順とを実行させるソフトウェアを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、印刷指示を含むアクセスをした時点で画像処理装置のジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する場合に、第1管理部において、次のユーザのジョブを即時に実行可能かどうかの判断を数値化した情報と、次のジョブ(ユーザのジョブ)を実行可能となる時間の算出を行いその長さを数値化した情報を取得し、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する場合に、第2管理部において、ユーザがユーザのジョブ実行までに平均して待たされる時間の期待値を算出してその期待値を数値化した情報を取得し、これらの情報に基づいて判断部が混雑度、使用時の快適性を判断することにより、正確な混雑度、使用時の快適性の情報をユーザが容易に把握することが可能となり、ネットワーク上に画像処理装置が複数ある場合は、ユーザはより混雑度の少ない、快適性の高いプリンタを正確かつ容易に選択することが可能となる。また、コピー、ファックス、スキャナー等の機能を含む画像処理装置であれば、それらの機能を快適に利用することが可能となる。
また、第2の管理部の情報のみを判断部で用いた場合は、平均混雑度又は使用時の平均的な快適性が得られるので、管理者を含むユーザは、平均的により待ち時間の少ないプリンタを把握することができる。また、これにより、業務の効率化を考慮したレイアウトやプリンタの設置等が可能となる。また、第1の管理部からの情報と第2の管理部からの情報のうち、任意の比率でいずれか一方の情報を必要に応じて優先させて、混雑度又は使用時の快適性を判断できるようにすることで、使用環境に応じたより細かい設定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1は本発明に係る複数の画像処理装置(プリンタ1)とこれらに対する制御及び情報収集が可能な複数のコンピュータ端末2〜5がネットワーク上で接続された画像処理システムの概略構成図である。また、図2はプリンタ1を制御するマイコン(図示せず)における所定動作を実行させるためのソフトウェアの機能ブロック図である。なお、図1の例では、画像処理装置としてプリンタを用いた場合について示しているが、画像処理装置としては複写機や画像形成機能を備えたファクシミリ装置などであってもよい。
プリンタ1(図1)は、マイコンが行う所定動作によってネットワークを通じてユーザに対して快適に使用するための情報を提供するため、図2のように、第1の管理部11、第2の管理部12、判断部13の各機能ブロックをソフトウェア内に備えており、各部における手順の実行をマイコンの処理により実現している。
第1の管理部11により、ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する手順が実行される。具体的には、ユーザがプリンタ1(図1のどちらか一方のプリンタ)に対して、印刷指示を含むアクセスをした時点でプリンタ1のジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態(プリンタ1におけるジョブの蓄積状態)から、即時に次のユーザのジョブを実行可能かどうかの判断を数値化する。すなわち、図3のフローチャートにおける動作を行う。
【0008】
図3のフローチャートを説明すると、ステップS2での判定をするために、まず、ステップS1で、ユーザのジョブを実行可能かどうかの判断を示す値iを初期値にする。初期値とは、変数iを任意の値で初期化したもので、例えば0としてもよい。次に、ステップS2でジョブを実行中であるかどうかを判断し、実行中でなければステップS4へ移り、実行中であれば、ステップS3へ進んで、ステップS2の時点で変数iに格納されている値にXを足した値(i+X)をステップS3の時点のiとして格納し直す。これにより、ユーザのジョブが可能かどうかが数値化される。数値化されたデータはステップS4にて、メモリに保存される。
また、第1の管理部11は次のジョブ(ユーザのジョブ)を実行可能となる時間の算出を行いその長さを数値化する。すなわち、図4のフローチャートにおける動作を行う。なお、次のジョブが実行可能となる時間の算出は、例えば、印刷中のジョブaと印刷待ちのジョブbがある状態と考えると、下記の式によって得られる。
(印刷中ジョブaの残りの出力枚数×1枚の出力にかかる時間)+(印刷待ちジョブbの処理開始までの事前処理にかかる時間−印刷待ちジョブbの処理開始までの事前処理にかかる時間のうちジョブa実行中に並行して行える処理にかかる時間)+(印刷待ちジョブbの出力枚数×1枚の出力にかかる時間)=(今からbの次のジョブ(これがユーザのジョブになるはず)開始までの時間)
【0009】
図4のフローチャートを説明すると、まず、ステップS11で各値を初期化し、ステップS12、S13で時間Xを取得する。その後、ステップS14からステップS17において、時間Xを数値化する。ステップS14〜ステップS16において、Aは時間を格納するための変数であり、Aには、初め、初期値(例えば0)がセットされている。
Aの値は、評価する度にjずつ増やしていって、AがXの値を超えるまで、又はAmaxを超えるまで加算動作が繰り返される。ステップS16に示すkは点数であり、Aをj増加させる毎に点数もmだけ増加する。そして、点数kが得られると、ステップS17へ移って変数iの初期値にkを加えて新たに変数iを得る。ここで得た数値はステップS18でメモリに保存される。
また、第2の管理部12により、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する手順が実行される。具体的には、印刷指示を含むアクセスをした時点から過去の任意の時点までの単位時間あたりの画像処理装置の稼働時間より、ユーザがユーザのジョブ実行までに平均して待たされる時間の期待値を算出し、その期待値を数値化する。すなわち、図5のフローチャートにおける動作を行う。なお、期待値は、印刷指示を含むアクセス時から任意の時点まで(例えば10日前まで)に実行された全てのジョブについて、ジョブの受信時から印刷開始までの時間を合計し、これをジョブ数で除算して得られる値である。
【0010】
図5のフローチャートでは、まず、ステップS21で各値を初期化し、ステップS22、S23で時間の期待値Xを取得する。その後、ステップS24からステップS27において、時間の期待値Xを数値化する。ステップS24〜ステップS27の動作は図4のステップS14〜ステップS17の動作と同じであるため、説明は省略する。ステップS27で得た数値はステップS28でメモリに保存される。
そして、判断部13により、第1の管理部11及び第2の管理部12の情報に基づいて、混雑度、使用時の快適性を判断する手順が実行される。具体的には、第1の管理部11及び第2の管理部12で数値化した情報からプリンタ1(図1)の混雑度又は使用時の快適性を判断する。ここで、混雑度が高ければ、使用時の快適性は低くなり、混雑度が低ければ、使用時の快適性は高くなり、両者は同様の意味の判断基準となるので、判断部13の出力としては、どちらの指標を採用してもよい。
【0011】
判断部13における計算について説明する。判断部13は、上述したように、第1の管理部11及び第2の管理部12からの情報に基づいて計算する。そして、第1の管理部11の情報とは、ユーザのジョブを実行可能かどうかの判断を数値化した値(これをαとする。)と、次のジョブを実行可能となる時間の算出を行いその長さを数値化した値(これをβとする。)であり、第2の管理部12の情報とは、ユーザがジョブ実行までに平均して待たされる時間の期待値を算出してその期待値を数値化した値(これをγとする。)である。
α、β、γに任意の比率を掛けた値を合計した数値が判断部13の出力値になる。この場合、情報の重要度が高いほど高い比率の数値を掛ける。そして、例えば、第1の管理部11からの情報と第2の管理部12からの情報のうち、任意の比率でいずれか一方の情報を優先させて、混雑度又は使用時の快適性を判断してもよい。これにより、判断部13の判断を必要に応じて調整できるので、使用環境に応じたより細かい設定が可能となる。
例えば、α、β、γの重要度に対応した比率がそれぞれ、50%、25%、25%だとすると、判断部13における計算値は、α×0.5+β×0.25+γ×0.25によって与えられる。また、判断部13においては、第2の管理部12の情報のみを用いてもよく、この場合には、判断部13から得られる出力は平均混雑度又は使用時の平均的な快適性となる。これにより、管理者を含むユーザは、平均的により待ち時間の少ないプリンタを把握することができる。また、業務の効率化を考慮したレイアウトやプリンタの設置等が可能となる。
【0012】
以上、説明したように、プリンタ1では、印刷指示を含むアクセスをした時点でプリンタ1のジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する場合に、第1管理部11において、次のユーザのジョブを即時に実行可能かどうかの判断を数値化した情報と、次のジョブ(ユーザのジョブ)を実行可能となる時間の算出を行いその長さを数値化した情報を取得し、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する場合に、第2管理部12において、ユーザがユーザのジョブ実行までに平均して待たされる時間の期待値を算出してその期待値を数値化した情報を取得し、これらの情報に基づいて判断部13が混雑度、使用時の快適性を判断することにより、正確な混雑度、使用時の快適性の情報をユーザが容易に把握することが可能となり、ネットワーク上にプリンタ1が複数ある場合は、ユーザはより混雑度の少ない、快適性の高いプリンタを正確かつ容易に選択することが可能となる。また、コピー、ファックス、スキャナー等の機能を含む画像処理装置であれば、それらの機能を快適に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る画像処理装置とコンピュータ端末がネットワーク上で接続された画像処理システムの概略構成図である。
【図2】図2は本画像処理装置に所定動作を実行させるためのソフトウェアの機能ブロック図である。
【図3】ユーザのジョブを実行可能かどうかの判断を数値化する処理を説明するフローチャートである。
【図4】次のジョブが実行可能となる時間の長さを数値化する処理を説明するフローチャートである。
【図5】ユーザがジョブ実行までに平均して待たされる時間の期待値を数値化する処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0014】
1 プリンタ、2〜5 コンピュータ端末、11 第1の管理部、12 第2の管理部、13 判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して複数のユーザで共同使用する画像処理装置において、
ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する第1の管理部と、
過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する第2の管理部と、
前記第1の管理部及び前記第2の管理部の情報に基づいて、混雑度、使用時の快適性を判断する判断部と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記第1の管理部に基づく情報と前記第2の管理部に基づく情報のうち、任意の比率でいずれか一方の情報を優先させて、混雑度、使用時の快適性を判断することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
ネットワークを介して複数のユーザで共同使用する画像処理装置において、
ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する第1の管理部と、
過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する第2の管理部と、
前記第2の管理部の情報に基づいて、平均混雑度、使用時の平均的な快適性を判断する判断部と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像処理装置と、該画像処理装置が接続されたネットワークにおいて前記画像処理装置に対する制御及び情報収集が可能なコンピュータ端末を有することを特徴とする画像処理システム。
【請求項5】
ネットワークを介して複数のユーザで共同使用し、第1の管理部、第2の管理部及び判断部を備えた画像処理装置に、
前記第1の管理部が、ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する手順と、
前記第2の管理部が、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する手順と、
前記判断部が、前記第1の管理部及び前記第2の管理部の情報に基づいて、混雑度、使用時の快適性を判断する手順と、を実行させることを特徴とするソフトウェア。
【請求項6】
前記判断部における手順は、前記第1の管理部からの情報と前記第2の管理部からの情報のうち、任意の比率でいずれか一方の情報を優先させて、混雑度、使用時の快適性を判断する手順であることを特徴とする請求項5記載のソフトウェア。
【請求項7】
ネットワークを介して複数のユーザで共同使用し、第1の管理部、第2の管理部及び判断部を備えた画像処理装置に、
前記第1の管理部が、ジョブの実行状態、実行待ち状態、蓄積状態を把握する手順と、
前記第2の管理部が、過去の任意の時点までにおける単位時間あたりの稼働時間を把握する手順と、
前記判断部が、前記第2の管理部の情報に基づいて、平均混雑度、使用時の平均的な快適性を判断する手順と、を実行させることを特徴とするソフトウェア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−316817(P2007−316817A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143967(P2006−143967)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】