説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び記憶媒体

【課題】 二つの異なる画像(例えば、超音波画像とMRIなどの医用画像)の位置合わせの精度をあげる。
【解決手段】 第一の画像における被検体の弾性に関する情報と、第二の画像における被検体の弾性に関するとの少なくともいずれか一方に基づいて、第一の画像と第二の画像の位置合わせを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の撮像装置で撮像した画像の位置合わせ処理する技術に関し、特に、被
検体の弾性情報を用いた画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、医師は、被検体を撮像した医用画像をモニタに表示し、表示された医用画像を読影して病変部の状態や経時変化を観察する。この種の医用画像を撮像する装置(モダリティ)としては、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT)、核磁気共鳴映像装置(MRI)、核医学診断装置(SPECTやPET)、超音波画像診断装置(US)等が挙げられる。上記のモダリティの夫々は、そのモダリティに特有な物理量を計測することで、被検体の内部組織を画像化している。夫々のモダリティで取得される画像は夫々が異なる性質を有しているので、医師は一般的に、複数のモダリティを併用して診断を行っている。例えば、MRIと超音波画像診断装置の夫々で被検体を撮像し、得られた情報を総合的に判断することで診断が行われる。
【0003】
しかし、複数のモダリティで同一の被検体を撮像したとしても、夫々の画像は基準となる座標系が異なっている。従って、被検体の上のある地点は、夫々の画像では異なる位置に写し出されることになる。従来は、夫々のモダリティで撮像した画像は幾何学的な関連付けがなされた上で医師に提示されるわけではなく、夫々のモダリティで独立に得た画像の情報を医師が思考の過程で関連付け統合しているに過ぎなかった。そのため、異なるモダリティで得た画像の対応関係が直感的に理解しにいという課題があった。
【0004】
そこで、複数のモダリティで得た画像同士の位置合わせを行い、その対応関係を直感的に理解できる形で医師に提示する試み、特に、対話的に撮像される超音波断層像に他のモダリティで得た三次元医用画像を対応付けて提示する試みがなされている。例えば、特許文献1では、被検体のMRI画像を事前に撮像しておいて、撮像中の超音波断層像に対応するMRIの断層像を生成して、それを超音波断層像と並べて表示するアプリケーションが提案されている。これによると、超音波断層像とMRI画像の対応関係がわかりやすく、診断の効率や精度の向上への貢献が期待できる。また、超音波画像診断装置では描出されにくい情報(例えばある種の腫瘍の位置)がMRIでは描出されているような状況下において情報を相補的に補うことが出来る。これにより穿刺ガイド等の精度をあげて行うことが可能となる。
【0005】
超音波断層像と他の三次元医用画像との位置合わせを行うためには、超音波断層像が切り出している断面の位置を何らかの手段によって取得しなくてはならない。この課題に対するアプローチの一つに、外部センサを用いて超音波プローブの位置と姿勢を計測する方法がある。例えば特許文献1では、磁場によって位置と姿勢を計測するセンサを超音波プローブに取り付けることで、その位置と姿勢を計測している。
【0006】
一方、超音波断層像と三次元医用画像との画像情報を利用して、これら二つのモダリティの位置合わせを行うことが従来から検討されている。例えば、非特許文献1に開示されている手法では、事前に取得したCT画像に基づいて、超音波のシミュレーション画像が生成される。そして、実際に超音波画像診断装置で撮像した超音波断層像と前記シミュレーション画像との対応付けを画像情報に基づいて行うことで、モダリティ間の位置合わせが実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特登録03871747号広報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】W. Wein,B.Roper,and N.Navab,“Automatic registration and fusion of ultrasound with CT for radiotherapy,”Proc.MICCAI 2005,vol.2,pp.303−311,2005.
【非特許文献2】T.J.Carter,C.Tanner,W.R.Crum,and D.J.Hawkes,“Biomechanical model initialized non−rigid registration for image−guided breast surgery”,Proc.MICCAI 2006 Workshop on Computational Biomechanics for Medicine,pp.104−112,2006.
【非特許文献3】T.W.Sederberg,“Free−form deformation of solid geometric models,”Proc.SIGGRAPH’86,vol.20,no.4,pp.151−160,1986.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、外部センサに基づく方法の場合、被検体は剛体であって変形はしないという仮定が必要である。しかし、被検体が剛体であるという仮定は、診療部位によっては成り立ち難い場合がある。例えば、乳腺科領域において乳がんの検査を行う場合には、被検体である乳房を剛体と仮定することは困難である。特に、MRIの撮像を伏臥位(うつ伏せ)で行い、超音波による撮像を仰臥位(あお向け)で行うという通常の検査フローにおいては、重力の影響で乳房の形状が大きく変化してしまう。また、超音波の撮像はプローブを被検体の表面に押し当てて行うため、プローブによる圧力で被検体が変形することもある。
【0010】
一方、画像情報に基づいて位置合わせを行う従来技術では、被検体が非剛体であることを考慮した上で、画像間における変形の補正を含めた位置合わせを行うことが可能である。しかし、変形には非常に多くの自由度が存在するために局所解に陥ってしまい、正しい位置合わせ結果が得られない場合があるという課題があった。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、二つの異なる画像間の位置合わせの精度を上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための、本発明の一態様によるによる画像処理装置は以下の構成を備える。すなわち、
第一の画像と第二の画像との位置合わせを行う画像処理装置であって、
前記第一の画像における被検体の弾性に関する情報を取得する第一の弾性情報取得手段と、
前記第二の画像における被検体の弾性に関する情報を取得する第二の弾性情報取得手段と、
前記第一の弾性情報と前記第二の弾性情報との少なくともいずれか一方に基づいて、前記第一の画像と前記第二の画像の位置合わせを行う位置合わせ手段と、
を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成により、二つの異なる画像間の位置合わせの精度をあげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る画像処理装置10と接続される機器の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る画像処理装置10の機能構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る画像処理装置10の各部をソフトウェアにより実現することのできるコンピュータの基本構成を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る画像処理装置10の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る位置合わせ処理部250の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る画像処理装置600の機能構成を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る画像処理装置600の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第3実施形態に係る画像処理装置800の機能構成を示す図である。
【図9】第3実施形態に係る位置合わせ処理部850の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第4実施形態に係る位置合わせ処理部1050の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明に係る画像処理装置及び方法の好ましい実施形態について詳説する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されるものではない。
【0016】
[第1実施形態]
本実施形態における画像処理装置は、事前に撮像した被検体のMRI画像と、操作者(技師や医師)が対話的に撮像している当該被検体の超音波断層像の夫々を取得し、超音波断層像に対応するMRIの断層像を生成して表示する機能を提供する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置10と接続される機器の構成図である。図1に示すように、画像処理装置10は、超音波画像診断装置20、核磁気共鳴映像装置30、及び位置姿勢センサ40とをしめす。これらの装置は、イーサネット(登録商標)等によるLAN(ローカルエリアネットワーク)50を介して接続されている。なお、これらの機器との接続方式はこれに限るものではなく、例えば、USBやIEEE1394等のインターフェイスを介して行ってもよい。
【0018】
超音波画像診断装置20には、1次元アレイの超音波探触子群からなる超音波プローブ25が接続されており、超音波画像診断装置20は被検体の2次元の超音波断層像を撮像する。超音波断層像の計測は、超音波プローブ25を不図示の被検体に接触させ、超音波プローブ25から超音波信号を送信し、その反射信号を当該超音波プローブ25で受信することによって行われる。本実施形態に係る超音波画像診断装置20は、断層像として、被検体における第一の画像としてのBモード像、及び第一の弾性情報としての弾性画像を生成する。この弾性画像(以下、「超音波弾性画像」と呼ぶ場合がある)は、Bモード画像に撮像されている被検体の弾性に関する情報を表している。超音波弾性画像の生成方法は、超音波プローブ25から与えた圧力による画像の変形量に基づく方式や、拍動等を利用する方式等が提案されているが、何れの方法を用いてもよい。超音波画像診断装置20が生成した夫々の断層像は、LAN50を介して画像処理装置10へと送信される。
【0019】
核磁気共鳴映像装置30は、被検体の内部組織の磁気共鳴現象に係る物理特性を3次元的に画像化し、第二の画像としての三次元のMRI画像を生成する。ここで、核磁気共鳴映像装置30によって撮像する画像は、例えばT1強調画像である。また、読影の必要性に応じてT2強調画像やその他のモードで得た画像を撮像してもよいし、造影を行ってもよい。また、複数のモードで撮像を行ってもよい。共鳴映像装置30が生成したMRI画像は、LAN50を介して画像処理装置10へと送信される。
【0020】
位置姿勢センサ40は、超音波プローブ25の位置と姿勢を計測し、LAN50を介してこれを画像処理装置10へと送信する。ここで、位置姿勢センサ40としては何れの方式のセンサを用いてもよい。例えば、磁場を利用する磁気式のセンサや、マーカとカメラからなる光学式のセンサを用いることができる。
【0021】
次に、図2を用いて、本実施形態に係る画像処理装置10の機能構成を説明する。図2は、画像処理装置10の機能ブロック図である。図2に示す通り、画像処理装置10は、超音波断層像取得部210、プローブ位置姿勢取得部220、MRI画像取得部230、弾性情報推定部240、位置合わせ処理部250、MRI断層像生成部260、及び表示部270を備えて構成される。
【0022】
第一の画像取得手段及び第一の弾性情報取得手段としての超音波断層像取得部210は、超音波画像診断装置20によって撮像される超音波断層像(Bモード像及び弾性画像)を取得する。
【0023】
プローブ位置姿勢取得部220は、位置姿勢センサ40によって計測される超音波プローブ25の位置と姿勢の計測値を取得する。
【0024】
第二の画像取得手段としてのMRI画像取得部230は、核磁気共鳴映像装置30によって撮像されるMRI画像を取得する。
【0025】
第二の弾性情報取得手段としての弾性情報推定部240は、MRI画像取得部230が取得したMRI画像に基づいて、第二の弾性情報としてMRI画像に係る被検体の弾性に関する情報を推定し、MRI弾性画像を生成する。
【0026】
位置合わせ処理部250は、超音波断層像取得部210が取得した超音波断層像と、MRI画像取得部230が取得したMRI画像との非剛体変形位置合わせを行う。具体的には、MRI画像の変形パラメータと、MRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢を導出し、これをMRI断層像生成部260へと出力する。なお、位置合わせ処理部250における処理の詳細については、図5のフローチャートを用いて後に説明する。
【0027】
MRI断層像生成部260は、位置合わせ処理部250によって得られた位置合わせ結果に応じて、超音波断層像に対応するMRIの断層画像を生成する。つまり予め撮像されたMRI画像から超音波断層像に対応する領域の画像を取得する。
【0028】
また、表示部270は、超音波断層像取得部210が得た超音波のBモード画像と、MRI断層像生成部260で生成したMRIの断層画像を、モニタ上の左右または上下に並べた状態で表示する。
【0029】
なお、図2に示した画像処理装置10の各部は、コンピュータのCPUにより実行することでその機能を実現するソフトウェアとして実現してもよい。本実施形態では、画像処理装置10の各部は夫々ソフトウェアにより実現されており、同一のコンピュータにインストールされているものとする。
【0030】
図3は、画像処理装置10の各部の機能をソフトウェアで実現するためのコンピュータの基本構成を示す図である。
【0031】
CPU301は、RAM302やROM303に格納されたプログラムやデータを用いてコンピュータ全体の制御を行う。また、画像処理装置10の各部に対応するソフトウェアの実行を制御して、各部の機能を実現する。
【0032】
RAM302は、外部記憶装置304からロードされたプログラムやデータを一時的に記憶するエリアを備えると共に、CPU301が各種の処理を行うために必要とするワークエリアを備える。ROM303は、一般にコンピュータのBIOSや設定データなどが格納されている。外部記憶装置304は、ハードディスクドライブなどの大容量情報記憶装置として機能する装置であって、ここにオペレーティングシステムやCPU301が実行するプログラム等を保存する。また本実施形態の説明において既知としている情報はここに保存されており、必要に応じてRAM302にロードされる。
【0033】
モニタ305は、液晶ディスプレイなどにより構成されている。例えば、表示部270が出力する内容を表示することができる。キーボード306、マウス307は入力デバイスであり、操作者はこれらを用いて、各種の指示を画像処理装置10に与えることができる。
【0034】
インターフェイス308は、画像処理装置10と外部の機器との間で各種データのやりとりを行うためのものであり、IEEE1394やUSB、イーサネット(登録商標)ポート等によって構成される。インターフェイス308を介して取得したデータは、RAM302に取り込まれる。超音波断層像取得部210やプローブ位置姿勢取得部220、MRI画像取得部230等の機能は、インターフェイス308を介して実現される。
【0035】
上述した各構成要素は、バス309によって相互に接続される。
【0036】
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施形態の画像処理装置10が実行する具体的な処理の手順を説明する。なお、本実施形態における画像処理装置10の各部の機能は、各部の機能を実現するプログラムをCPU301が実行し、コンピュータ全体を制御することで実現される。なお、以下の処理を行う前段で、同フローチャートに従ったプログラムコードは、例えば外部記憶装置304からRAM302に既にロードされているものとする。
【0037】
(ステップS410)
ステップS410において、MRI画像取得部230は、核磁気共鳴映像装置30によって撮像されるMRI画像を取得する。そして、取得したMRI画像を、弾性情報推定部240、位置合わせ処理部250、及びMRI断層像生成部260へと送信する。なお、MRI画像取得部230によるMRI画像の取得は、核磁気共鳴映像装置30から直接行ってもよい。あるいは、核磁気共鳴映像装置30が撮像した画像を不図示の医用画像記録装置に記録し、医用画像記録装置から所望の画像を読み出して取得してもよい。
【0038】
(ステップS420)
ステップS420において、弾性情報推定部240は、ステップS410で取得したMRI画像に画像処理を施し、当該MRI画像に係る被検体の弾性に関する情報(第二の弾性情報)を推定し、MRI弾性画像を生成する。そして、生成したMRI弾性画像を位置合わせ処理部250へと送信する。
【0039】
本ステップにおける処理は、例えば、非特許文献2に開示されている方法によって行うことができる。すなわち、取得したMRI画像に画像処理を施し、弾性率の異なる組織(例えば被検体が乳房である場合には、脂肪、乳腺、胸筋等)を表す領域に画像を分割する。そして、統計情報として予め保持している各組織の弾性パラメータを夫々の領域に代入した3次元画像を生成し、これをMRI弾性画像とする。
【0040】
(ステップS430)
ステップS430において、超音波断層像取得部210は、超音波画像診断装置20によって撮像される超音波断層像(Bモード像及び弾性画像)を取得する。そして、取得したBモード画像を位置合わせ処理部250及び表示部270へと送信する。また、取得した超音波弾性画像を、位置合わせ処理部250へと送信する。なお、超音波断層像取得部210による超音波断層像の取得は、超音波画像診断装置20の撮像と同期して直接行ってもよい。あるいは、超音波画像診断装置20が過去に撮像した断層像を不図示の医用画像記録装置に記録し、当該医用画像記録装置から所望の断層像を読み出して取得してもよい。
【0041】
(ステップS440)
ステップS440において、プローブ位置姿勢取得部220は、位置姿勢センサ40によって計測される超音波プローブ25の位置と姿勢の計測値を取得する。そして、取得した計測値を、MRI座標系(ステップS410で取得したMRI画像を定義する座標系)における超音波断層像の位置と姿勢に変換し、これを位置合わせ処理部250へと送信する。
【0042】
なお、本実施形態においては、位置姿勢センサ40が定めるセンサ座標系とMRI座標系との関係は予め校正されており、その変換式は既知の情報としてプローブ位置姿勢取得部220に保持されているものとする。また、超音波プローブ25と超音波断層像との間の関係も予め校正されており、その変換式は既知の情報としてプローブ位置姿勢取得部220に保持されているものとする。センサ座標系におけるプローブの位置と姿勢をMRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢に変換する処理は、これらの変換式を用いた座標変換によって公知の方法で行うことが可能であるので、詳細な説明は省略する。
【0043】
ここで、MRI撮像時の被検体の姿勢と超音波プローブ25を使用して撮像している際の被検体の姿勢は異なる。そのため、被検体は弾性であるため重力の影響を受けており、被検体の形状は完全に一致しない。また、ステップS440で得られるMRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢は、被検体の弾力により誤差が含まれたものとなる。すなわち、この位置と姿勢を用いてMRI断層像を生成したとしても、超音波断層像に完全に対応する断層像を得ることは困難である。ステップS450で行う位置合わせ処理の一つの目的は、夫々の画像を有する情報を利用して補正することにある。
【0044】
(ステップS450)
ステップS450において、位置合わせ処理部250は、上記のステップで取得した情報に基づいて、ステップS410で取得したMRI画像と、ステップS430で取得したBモード画像との非剛体変形位置合わせを行う。具体的には、MRI画像の変形パラメータ(本実施形態では、MRI座標系上にグリッド状に設定した制御点の変位)と、MRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢を導出する。そして、これをMRI断層像生成部260へと出力する。なお、本ステップにおける処理の詳細については、図5のフローチャートを用いて後に説明する。
【0045】
(ステップS460)
ステップS460において、MRI断層像生成部260は、ステップS450で得たMRI画像の変形パラメータと、MRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢に基づいて、超音波断層像に対応するMRIの断層画像を生成する。具体的には、まず始めに、夫々の制御点の変位に応じて、B−Spline等の公知の補間手法を利用して、変形後のMRI画像をボリュームデータとして生成する。そして、超音波断層像の位置と姿勢に基づいてMRI座標系上における超音波断層像上の各点の座標を求め、それらの点の画素値を、その近傍における変形後のMRI画像の画素値の内挿によって算出する。なお、変形後のMRI画像をボリュームデータとして生成せずに、必要な点の座標についてのみ変形後のMRI画像の画素値を算出してもよい。
【0046】
なお、MRI断層像生成部260が生成する画像は超音波断層像の位置と姿勢に対応するMRIの断層像そのものでなくてもよい。例えば、表示に必要な強調処理やノイズ除去処理をMRI断層像に施したものであってもよい。また、当該断面に直交する一定範囲のMRI画像の値を積算した画像を生成してもよい。また、当該断面に対するMRI画像のMIP(Maximum Intensity Projection:最大輝度投影像)を生成してもよい。その他、MRI画像から生成可能な当該断面に関連する画像であれば、何れの画像であってもよい。
【0047】
(ステップS470)
ステップS470において、表示部270は、ステップS430で取得した超音波のBモード画像と、ステップS460で生成したMRI断層画像を、モニタ305上の左右または上下に並べた状態で表示する。
【0048】
(ステップS480)
ステップS480において、画像処理装置10は、処理を終了する指示が操作者から入力されたか否かを判定する。処理を終了する指示を取得した場合には、全ての処理を終了する。一方、処理を終了する指示を取得しなかった場合には、ステップS430へと処理を戻す。そして、新たな超音波断層像(超音波断層像が時系列的に撮像されている場合には、次フレームの超音波断層像)に対してステップS430からステップS470までの処理を実行する。なお、操作者からの指示の入力は、例えばキーボード306を介して行うことができる。
【0049】
以上によって、画像処理装置10の処理が行われる。
【0050】
次に、図5のフローチャートを参照して、ステップS450で位置合わせ処理部250が実行する非剛体変形位置合わせ処理の手順を説明する。以下の処理において、位置合わせ処理部250は、位置合わせの未知パラメータであるs1及びs2の推定を行う。ここでs1は、MRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢の推定値を表している。s1は例えば、位置を表す3自由度の値と、姿勢を表す3自由度の値(オイラー角や四元数など)からなる。一方s2は、MRI画像の変形パラメータの推定値を表している。本実施形態では、MRI座標系上にグリッド状に設定した制御点の変位を変形パラメータとする。
【0051】
(ステップS505)
ステップS505において、位置合わせ処理部250は、ステップS420で生成したMRI弾性画像に基づいて、重力に基づくMRI画像の変形パラメータを推定する。
【0052】
本実施形態では、MRI撮像時の被検体の姿勢と超音波撮像時の被検体の姿勢が、異なる場合がある。これにより、重力方向の差異によって生じる被検体の変形が位置合わせに有効となる場合がある。そのため、超音波撮像時の被検体の姿勢で仮想的に撮像したMRI画像を、ステップS410で得たMRI画像を変形することによって生成する。そのための変形パラメータを、重力方向に関する情報とMRI画像の弾性情報から推定する。例えば、公知の有限要素法等を用いたシミュレーションによって、重力に基づく変形パラメータ(制御点の変位)を推定する(非特許文献2を参照)。すなわち、ステップS420で得た被検体の弾性情報を用いて、超音波撮像時の被検体の姿勢である場合に被検体にかかる重力を想定してMRI画像を変形する。なお、同様に超音波撮像時の画像を変形することもできる。
【0053】
(ステップS510)
ステップS510において、位置合わせ処理部250は、位置合わせの未知パラメータに初期値を設定する。具体的には、s1の初期値として、ステップS440で得たMRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢の計測値を設定する。また、s2の初期値として、ステップS505で求めた重力に基づく変形パラメータを設定する。
【0054】
(ステップS515)
ステップS515において、位置合わせ処理部250は、ステップS510で設定した
初期値に基づく位置合わせの整合性を評価する。すなわち、変形パラメータs2に基づく
変形を施したMRI画像に対する、s1に位置する超音波断層像の位置合わせの整合性し
て、その評価値を算出する。
【0055】
ここで、位置合わせの整合性は、MRI画像と超音波断層像の整合性のみではなく、MRI弾性画像と超音波弾性画像との整合性も考慮して評価する。弾性情報はモダリティに依らずに被検体に固有の情報を表しているので、整合性評価の精度の向上が期待できる。
つまり、画像だけで位置あわせする場合には、局所解に収束する場合がある。これに弾性情報を加えることで真値の値に収束を近づけることが出来る。
【0056】
本実施形態では、整合性の評価値eを次式によって算出する。
【0057】
【数1】

【0058】
ここで、FUS、FMRI、IUS、IMRIは夫々、超音波弾性画像、MRI弾性画像、超音波断層像、及びMRI画像を表している。また、eFは、パラメータとしてs1,s2を仮定した場合の、超音波弾性画像とMRI弾性画像の整合性を表す評価値である。また、eIは、パラメータとしてs1,s2を仮定した場合の、超音波断層像とMRI画像の整合性を表す評価値である。また、αは、eFとeIの混合比率を表すパラメータであり、0から1の間の値をとる。位置合わせ処理部250は、被検体の弾性情報の値に基づいてαの値を変える。予め定められる範囲のいずれの範囲に被検体の弾性があるかでαの値を変える。これにより、αは被検体の部位により適応的に定められる。例えば乳房のように軟部組織でできている場合には弾性が高い範囲にあるのでαの値を上げる。手足のように骨部が主とした構成となる場合には、弾性が低い範囲を含むのでαの値を下げる。また、被検体の弾性情報の、平均値、中間値、モード等の統計量によりαの値を変更してもよい。これにより弾性により変形が大きい場合には超音波弾性画像とMRI弾性画像の整合性を表す評価値の比率を上げることが出来る。また、位置合わせ処理部250は、超音波弾性画像、MRI弾性画のそれぞれの姿勢に応じてもαの値を変更する場合がある。つまり両画像における被写体の撮影時の姿勢が近い場合にはαの値を下げ、異なる場合にはαの値を上げる。そこで、位置合わせ処理部250は、両画像における被写体の撮影時の姿勢の相関を数値化しておき、その値に応じてαの値を変更する。例えば被検体の姿勢を水平から垂直までの角度で数値化しておき、両画像おける被検体の角度、及び両画像における被検体の角度の差でαの値を変更する。
【0059】
なお、αの値は固定値として予め定めておいてもよいし、画像処理装置10の操作者が必要に応じて設定できるような構成であってもよい。
【0060】
なお、超音波弾性画像とMRI弾性画像との整合性eFは、次式によって算出される。
【0061】
【数2】

【0062】
ここでF’MRIは、位置合わせのパラメータをs1,s2と仮定して超音波断層像の断面に対応する断面を切り出した、MRI弾性画像の断層像を表している。この断層像の生成は、ステップS460と同様な処理によって行うことができる。また、e’Fは、超音波弾性画像と、MRI弾性画像から切り出した断層像との整合性を表す評価値である。
e’Fの算出は、例えば平均二乗誤差基準に基づいて、次式によって算出する。
【0063】
【数3】

【0064】
ここで、Ωは超音波弾性画像上の各点の座標を表している。また、Mは加算した画素数を表している。なお、e’Fを算出する方法としては、これ以外にも、絶対値誤差基準や相互相関基準、相互情報量基準、正規化相互情報量基準といった、画像間の整合性や類似度を評価するための公知の評価基準を用いてもよい。また、これ以外にも、画像から勾配等の画像特徴量を抽出した後に整合性を評価するなど、様々な方法が考えられる。また、上記のいずれかの基準に類する他の基準を用いてもよいし、上記の基準を加重和などによって組み合わせて用いてもよい。
【0065】
同様に、超音波断層像とMRI画像との整合性eIは、次式によって算出される。
【0066】
【数4】

【0067】
ここでI’MRIは、位置合わせのパラメータをs1,s2と仮定して超音波断層像の断面に対応する断面を切り出した、MRI画像の断層像を表している。この断層像の生成は、ステップS460と同様な処理によって行うことができる。また、e’Iは、超音波弾性画像と、MRI画像から切り出した断層像との整合性を表す評価値である。なお、e’Iの算出は、e’Fの算出と同様な方法で行うことが可能であるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
(ステップS520)
ステップS520において、位置合わせ処理部250は、ステップS515で算出した位置合わせの整合性の評価値が十分か否かを判定する。そして、評価値が予め定めた閾値よりも大きい場合には、位置合わせが十分なされているものとして、ステップS560へと処理を進める。一方、評価値が予め定めた閾値未満の場合には、ステップS525へと処理を進め、以降の位置合わせ処理を実行する。
【0069】
以下のステップにおける位置合わせの処理は、s1の推定とs2の推定を交互に繰り返すことによって実現される。まず、ステップS525からステップS535の処理によって、超音波断層像の位置と姿勢の推定値s1に補正を加えることで、変形後のMRI画像と超音波断層像との間の剛体位置合わせを行う。
【0070】
(ステップS525)
ステップS525において、位置合わせ処理部250は、超音波断層像の位置と姿勢の現在の推定値s1に異なる微小変化を加え、位置と姿勢の幾つかの仮説を生成する。そして、夫々の位置と姿勢の仮説について、変形パラメータs2(ここでは固定値として扱う)に基づく変形を施したMRI画像に対する超音波断層像の位置合わせの整合性を評価し、その評価値を算出する。ここで、位置合わせの整合性の評価値の算出は、ステップS515と同様の方法によって行う。
【0071】
(ステップS530)
ステップS530において、位置合わせ処理部250は、ステップS525で算出した評価値の最大値を選択する。そして、その最大値を与える仮説(最善の仮説)を、超音波断層像の位置と姿勢の新たな推定値s1とする。ただし、求めた最大値が現在の推定値に対する評価値と比べて小さい場合には、推定値の更新は行わない。
【0072】
(ステップS535)
ステップS535において、位置合わせ処理部250は、超音波断層像の位置と姿勢の推定値の更新が収束しているか否かを判定する。そして、推定値の更新が収束していないと判定した場合には、ステップS525へと処理を進めて仮説の生成と選択を再度実行する。一方、推定値の更新が収束していると判定した場合には、ステップS540へと処理を進める。例えば、ステップS530における評価値の値が一定値よりも小さい場合に、推定値の更新が収束していると判断する。あるいは、更新前後における推定値の差分が閾値以下の場合に、推定値の更新が収束していると判断してもよい。その他、何れの方法によって収束を判定してもよい。また、この判定は、例えば繰り返し処理を行った回数をカウントし、そのカウント値が予め設定した回数以上になった場合に繰り返し処理を終了させることができる。この方法によれば、ある一定時間以内に一連の繰り返し計算が終了することを期待でき、システム全体の実時間性の確保ができるなどの効果がある。
【0073】
次に、ステップS540からステップS550の処理によって、MRI画像の変形パラメータs2(夫々の制御点の変位)に補正を加えることで、変形後のMRI画像と超音波断層像との間の非剛体位置合わせを行う。
【0074】
(ステップS540)
ステップS540において、位置合わせ処理部250は、変形パラメータの推定値s2に異なる微小変化を加え、変形パラメータの幾つかの仮説を生成する。そして、夫々の仮説に基づく変形を施したMRI画像に対する、s1(ここでは固定値として扱う)に位置する超音波断層像の位置合わせの整合性を評価し、その評価値を算出する。ここで、位置合わせの整合性の評価値の算出は、ステップS515と同様の方法によって行う。
【0075】
なお、仮説の生成は、現在のパラメータの整合性の評価の際に、夫々の制御点付近の局所領域における位置合わせの整合性を夫々算出しておいて、その整合性に応じて変位を操作するような構成であることが望ましい。すなわち、局所領域における位置合わせの整合性がとれている(評価値が小さい)場合には、その領域に影響を及ぼす制御点の変位は正しいとする。そして、修正が必要な制御点の変位にのみ微小変化を与える。あるいは、評価値に応じて微小変化の大きさを調整する。これによると、仮説の組み合わせ爆発を防ぎ、処理時間の高速化を図ることができる。
【0076】
また、変形パラメータである各制御点の変位の微小変化の範囲を、夫々の制御点付近におけるMRI弾性画像の値に応じて調整してもよい。すなわち、制御点付近の弾性が大きい場合には制御点が変位しうる範囲を広く設定し、弾性が小さい場合には制御点が変位しうる範囲を狭く設定するという調整を行ってもよい。
【0077】
(ステップS545)
ステップS545において、位置合わせ処理部250は、ステップS540で算出した評価値の最大値を選択する。そして、その最大値を与える仮説(最善の仮説)を、変形パラメータの新たな推定値s2とする。ただし、求めた最大値が現在の推定値に対する評価値と比べて小さい場合には、推定値の更新は行わない。
【0078】
(ステップS550)
ステップS550において、位置合わせ処理部250は、変形パラメータの推定値の更新が収束しているか否かを判定する。そして、推定値の更新が収束していないと判定した場合には、ステップS540へと処理を進めて仮説の生成と選択を再度実行する。一方、推定値の更新が収束していると判定した場合には、ステップS555へと処理を進める。
例えば、ステップS545における評価値の改善度合いが閾値以下の場合に、推定値の更新が収束していると判断する。あるいは、更新前後における変形パラメータの差分が閾値以下の場合に、推定値の更新が収束していると判断してもよい。その他、何れの方法によって収束を判定してもよい。また、この判定は、例えば繰り返し処理を行った回数をカウントし、そのカウント値が予め設定した回数以上になった場合に繰り返し処理を終了させることができる。この方法によれば、ある一定時間以内に一連の繰り返し計算が終了することを期待でき、システム全体の実時間性の確保ができるなどの効果がある。
【0079】
(ステップS555)
ステップS555において、位置合わせ処理部250は、上記の処理を反復して行うか否かを判定する。処理を反復して行う場合には、ステップS525へと処理を進め、現在のパラメータのさらなる更新を実行する。一方、反復しない場合には、ステップS560へと処理を進める。判定は、例えば、処理の最大反復回数を予め定めておいて、ステップS525からステップS550までの処理をその回数だけ反復したか否かによって行えばよい。このとき、位置合わせの整合性の評価値が十分な場合には、反復回数に係らずに処理を終了するような構成であってもよい。また、ステップS530とステップS545の何れにおいても推定値が更新されなくなるまで、処理を反復するような構成としてもよい。
【0080】
(ステップS560)
ステップS560において、位置合わせ処理部250は、以上の工程で求めたMRI画像の変形パラメータs2と超音波断層像の位置と姿勢s1を、位置合わせの結果としてMRI断層像生成部260へと出力する。
【0081】
以上によって、ステップS450における非剛体変形位置合わせの処理が実行される。
【0082】
以上の処理によって、本実施形態における画像処理装置10によれば、位置合わせのパラメータを推定する過程において夫々のモダリティから得た弾性情報の整合性を勘案することで、MRI画像と超音波断層像との位置合わせを高精度に行うことが可能となる。
【0083】
[第2実施形態]
本実施形態に係る画像処理装置は、被検体のMRI画像と3次元超音波画像の夫々を取得し、これらの画像を位置合わせして表示する機能を提供する。
【0084】
本実施形態に係る画像処理装置は、第1実施形態と異なる第二の弾性情報取得手段を有している。第1実施形態では、MRI画像から組織構造を推定し、統計値に基づいてMRI画像の弾性情報を推定していた。一方、本実施形態では、複数の姿勢で取得したMRI画像を利用して当該MRI画像に関する被検体の弾性情報を推定する。これによると、被検体の実際の変形に基づいた弾性情報が取得できるので、より高い精度の弾性情報を取得できる。
【0085】
また、第1実施形態では、第一のモダリティとして、超音波プローブ25が1次元アレイの超音波探触子群からなり、2次元の超音波断層像を撮像する超音波画像診断装置20を用いていた。一方、本実施形態では、第一のモダリティとして、超音波プローブ25が2次元アレイの超音波探触子群からなり、3次元の超音波画像を撮像する超音波画像診断装置20を使用する。これによると、位置合わせに用いる情報量が増加するので、位置合わせの曖昧さが減少し、正確な位置合わせが可能となる。
【0086】
本実施形態に係る画像処理装置600と接続される機器の構成図は、図1と同様である。すなわち、第1実施形態に係る画像処理装置10と同様に、超音波画像診断装置20、核磁気共鳴映像装置30、及び位置姿勢センサ40が、LAN50を介して接続されている。
【0087】
超音波画像診断装置20には、2次元アレイの超音波探触子群からなる超音波プローブ25が接続されており、超音波画像診断装置20は被検体の3次元超音波画像(Bモード像及び超音波弾性画像)を撮像する。超音波画像診断装置20が生成した夫々の画像は、LAN50を介して画像処理装置600へと送信される。
【0088】
核磁気共鳴映像装置30は、第1実施形態と同様に、被検体のMRI画像を撮像する。
ただし、本実施形態においては、被検体の撮像を複数の姿勢(以下の説明では、伏臥位と伏臥位とする)において行うことが、第1実施形態とは異なっている。それぞれの姿勢で撮像したMRI画像は、LAN50を介して画像処理装置600へと送信される。
【0089】
位置姿勢センサ40は、第1実施形態と同様に、超音波プローブ25の位置と姿勢を計測し、LAN50を介してこれを画像処理装置600へと送信する。
【0090】
図6は、画像処理装置600の機能ブロック図である。図6に示す通り、画像処理装置600は、超音波画像取得部610、プローブ位置姿勢取得部620、MRI画像取得部630、弾性情報推定部640、位置合わせ処理部650、表示画像生成部660、及び表示部670を備えて構成される。
【0091】
超音波画像取得部610は、超音波画像診断装置20によって撮像される3次元超音波画像(Bモード像及び弾性画像)を取得する。
【0092】
プローブ位置姿勢取得部620は、位置姿勢センサ40によって計測される超音波プローブ25の位置と姿勢の計測値を取得する。
【0093】
MRI画像取得部630は、核磁気共鳴映像装置30によって撮像される複数姿勢のMRI画像を取得する。
【0094】
弾性情報推定部640は、MRI画像取得部630が取得した複数姿勢のMRI画像に基づいて、一方のMRI画像(以下の説明では、伏臥位とする)を基準とした被検体の弾性に関する情報(第二の弾性情報)を推定し、MRI弾性画像を生成する。
【0095】
位置合わせ処理部650は、超音波画像取得部610が取得した超音波画像と、MRI画像取得部630が取得したMRI画像の一方(以下の説明では、伏臥位とする)との非剛体変形位置合わせを行う。具体的には、伏臥位のMRI画像の変形パラメータと、MRI座標系における超音波画像の位置と姿勢を導出し、これを表示画像生成部660へと出力する。
【0096】
表示画像生成部660は、位置合わせ処理部650によって得られた位置合わせ結果に応じて表示画像を生成する。また、表示部670は、表示画像生成部660が生成した表示画像をモニタに表示する。
【0097】
なお、図6に示した画像処理装置600の各部は、コンピュータのCPUにより実行することでその機能を実現するソフトウェアとして実現してもよい。本実施形態では、画像処理装置600の各部は夫々ソフトウェアにより実現されており、同一のコンピュータにインストールされているものとする。なお、画像処理装置600の各部の機能をソフトウェアで実現するためのコンピュータの基本構成は図3と同様であるので、説明を省略する。
【0098】
次に、図7のフローチャートを参照して、本実施形態の画像処理装置600が実行する具体的な処理の手順を説明する。なお、本実施形態における画像処理装置600の各部の機能は、各部の機能を実現するプログラムをCPU301が実行し、コンピュータ全体を制御することで実現される。なお、以下の処理を行う前段で、同フローチャートに従ったプログラムコードは、例えば外部記憶装置304からRAM302に既にロードされているものとする。
【0099】
(ステップS710)
ステップS710において、MRI画像取得部630は、核磁気共鳴映像装置30によって撮像される複数姿勢のMRI画像を取得する。そして、取得したMRI画像を、弾性情報推定部640、位置合わせ処理部650、及び表示画像生成部660へと送信する。
なお、MRI画像取得部630によるMRI画像の取得は、核磁気共鳴映像装置30から直接行ってもよい。あるいは、核磁気共鳴映像装置30が撮像した画像を不図示の医用画像記録装置に記録し、医用画像記録装置から所望の画像を読み出して取得してもよい。
【0100】
(ステップS720)
ステップS720において、弾性情報推定部640は、ステップS710で取得した複数姿勢(ここでは仰臥位と伏臥位)のMRI画像の位置合わせを行う。そして、その結果に基づいて、一方のMRI画像(ここでは伏臥位のMRI画像)を基準とした被検体の弾性に関する情報を推定し、MRI弾性画像を生成する。そして、生成したMRI弾性画像を位置合わせ処理部650へと送信する。
【0101】
具体的には、まず、伏臥位のMRI画像と仰臥位のMRI画像の非剛体変形位置合わせを、輝度情報の類似性に基づく公知の方法を用いて行う。例えば、伏臥位のMRI画像上にグリッド状の画素間の対応点を設定し、輝度情報の類似性を利用して、仰臥位のMRI画像上における対応点の位置を推定する。この処理には、例えばFFD(Free Form Deformation)法(例えば非特許文献3を参照)を利用することができる。そして、夫々の対応画素間について、近傍の制御点までの距離の平均を求め、この値を同地点における弾性率を表す数値(弾性係数。この値は、大きいほど柔らかいことを表す)とする。最後に、対応画素点以外の座標における弾性係数を補間によって算出することで、MRI弾性画像を生成する。なお、ここでの位置合わせの対象は同一モダリティであるので、輝度情報のみを用いた場合であっても比較的良好に行うことができる。
【0102】
(ステップS730)
ステップS730において、超音波画像取得部610は、超音波画像診断装置20によって撮像される3次元超音波画像(Bモード像及び弾性画像)を取得する。そして、取得したBモード画像を位置合わせ処理部650及び表示画像生成部660へと送信する。また、取得した超音波弾性画像を、位置合わせ処理部650へと送信する。なお、超音波画像取得部610による3次元超音波画像の取得は、超音波画像診断装置20の撮像と同期して直接行ってもよい。あるいは、超音波画像診断装置20が過去に撮像した画像を不図示の医用画像記録装置に記録し、当該医用画像記録装置から所望の画像を読み出して取得してもよい。
【0103】
(ステップS740)
ステップS740において、プローブ位置姿勢取得部620は、第1実施形態におけるステップS440と同様に、位置姿勢センサ40によって計測される超音波プローブ25の位置と姿勢の計測値を取得する。そして、取得した計測値を、MRI座標系(ステップS710で取得した伏臥位のMRI画像を定義する座標系)における3次元超音波画像の位置と姿勢に変換し、これを位置合わせ処理部650へと送信する。
【0104】
(ステップS750)
ステップS750において、位置合わせ処理部650は、一方のMRI画像(ここでは伏臥位のMRI画像)を処理対象として、ステップS730で取得した3次元超音波画像との非剛体変形位置合わせを行う。具体的には、伏臥位のMRI画像の変形パラメータ(本実施形態では、MRI座標系上にグリッド状に設定した制御点の変位)と、MRI座標系における3次元超音波画像の位置と姿勢を導出する。そして、これを表示画像生成部660へと出力する。
【0105】
なお、本ステップにおける位置合わせの処理は、第1実施形態のステップS450の処理(詳細は図5のフローチャートに示されている)と同様に行うことができる。ただし、超音波画像が3次元データであることに対応して、ステップS515、ステップS525、及びステップS540における整合性の評価値の算出方法が異なっている。具体的には、式3における弾性画像上の各点を表すΩを、二次元平面から三次元空間へと拡張すればよい。
【0106】
また、第1実施形態では、MRI弾性画像を利用して変形パラメータs2の初期値を求めていた(ステップS505)。しかし、本実施形態では、ステップS505の処理を行わずに、ステップS720における位置合わせの結果から得られる伏臥位から仰臥位への変形パラメータをs2の初期値として用いてもよい。これによると、仰臥位のMRI画像を取得した際の被検体の姿勢が超音波画像取得時の被検体の姿勢に近い場合には、より正確な初期値を得ることができる。
【0107】
(ステップS760)
ステップS760において、表示画像生成部660は、ステップS750で得たMRI画像の変形パラメータと、MRI座標系における3次元超音波画像の位置と姿勢に基づいて表示画像を生成する。具体的には、超音波画像の座標系を基準とした3次元超音波画像の3断面画像と、これに対応するMRI画像の3断面画像を生成する。MRI画像の3断面画像は、夫々の制御点の変位に応じて伏臥位のMRI画像を変形させた後に、3次元超音波画像の位置と姿勢に基づいて、変形後のMRI画像から超音波画像の各断面に対応する断面を切り出すことで生成する。なお、表示画像は3断面画像に限るものではなく、例えば、それぞれの画像のMIP画像などであってもよい。なお、何れの表示形態を選択するかを、例えばキーボード306等を介したユーザインタフェースによって切り替えられる構成であってもよい。
【0108】
(ステップS770)
ステップS770において、表示部670は、ステップS760で生成した表示画像をモニタ305に並べて表示する。
【0109】
(ステップS780)
ステップS780において、画像処理装置600は、処理を終了する指示が操作者から入力されたか否かを判定する。処理を終了する指示を取得した場合には、全ての処理を終了する。一方、処理を終了する指示を取得しなかった場合には、ステップS730へと処理を戻す。そして、新たな3次元超音波画像(3次元超音波画像が時系列的に撮像されている場合には、次フレームの3次元超音波画像)に対してステップS730からステップS770までの処理を実行する。なお、操作者からの指示の入力は、例えばキーボード306等を介して行うことができる。
【0110】
以上によって、画像処理装置600の処理が行われる。
【0111】
なお、本実施形態では、MRI画像を変形させることで位置合わせを行っていたが、双方のモダリティの画像が3次元で与えられている場合には、何れのモダリティの画像を変形させて位置合わせを行ってもよい。
【0112】
なお、本実施形態では、2次元アレイの超音波プローブを用いて3次元超音波画像を得ていたが、3次元超音波画像の取得方法はこれに限定されるものではない。例えば、1次元アレイの超音波プローブを利用して、複数の地点で撮像した2次元の超音波断層像を統合することで3次元超音波画像を取得してもよい。また、超音波の三次元データは密である必要は無く、離散的な複数の地点で撮像した超音波断層像群と、MRI画像との位置合わせを行うこともできる。この場合、複数の地点で撮像した超音波断層像群を疎な3次元超音波画像と考えて、ステップS750の処理において、超音波断層像群上の点をΩと定義すればよい。
【0113】
[第3実施形態]
本実施形態に係る画像処理装置は、事前に撮像した被検体のMRI画像と、操作者(技師や医師)が対話的に撮像している当該被検体の超音波断層像の夫々を取得し、超音波断層像に対応するMRIの断層像を生成して表示する機能を提供する。
【0114】
本実施形態に係る画像処理装置800と接続される機器の構成図は、図1と同様である。すなわち、第1実施形態に係る画像処理装置10と同様に、超音波画像診断装置20、核磁気共鳴映像装置30、及び位置姿勢センサ40が、LAN50を介して接続されている。なお、これらの機器に関する説明は、第1実施形態と同様であるので省略する。
【0115】
図8は、画像処理装置800の機能ブロック図である。図8に示す通り、画像処理装置800は、超音波断層像取得部210、プローブ位置姿勢取得部220、MRI画像取得部230、弾性情報推定部240、位置合わせ処理部850、MRI断層像生成部260、及び表示部270を備えて構成される。なお、位置合わせ処理部850以外の各部の機能は第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0116】
位置合わせ処理部850は、第1実施形態に係る位置合わせ処理部250と同様に、超音波断層像取得部210が取得した超音波断層像と、MRI画像取得部230が取得したMRI画像との非剛体変形位置合わせを行う。具体的には、MRI画像の変形パラメータと、MRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢を導出し、これをMRI断層像生成部260へと出力する。なお、本実施形態に係る位置合わせ処理部850は、弾性情報推定部240から入力したMRI画像に関する弾性情報を、変形パラメータの推定工程において更新していくことが、第1実施形態に係る位置合わせ処理部250とは異なっている。
【0117】
位置合わせ処理部850は、仮定した変形パラメータに基づいてMRI画像に係る被検体の弾性に関する情報(第二の弾性情報)を更新する弾性情報更新部852(第二の弾性情報推定手段)を有している。また、弾性情報の整合性を利用して位置合わせの評価を行う評価部854を有している。なお、これら各部の機能を含む位置合わせ処理部850における処理の内容は、図9のフローチャートを用いて後に説明する。
【0118】
なお、図8に示した画像処理装置800の各部は、コンピュータのCPUにより実行することでその機能を実現するソフトウェアとして実現してもよい。本実施形態では、画像処理装置800の各部は夫々ソフトウェアにより実現されており、同一のコンピュータにインストールされているものとする。なお、画像処理装置800の各部の機能をソフトウェアで実現するためのコンピュータの基本構成は図3と同様であるので、説明を省略する。
【0119】
本実施形態の画像処理装置800が実行する具体的な処理の手順は、図4のフローチャートと同様であるので、説明を省略する。ただし、本実施形態では、ステップS450で位置合わせ処理部850が実行する位置合わせ処理の内容が、第1実施形態とは異なっている。
【0120】
以下、図9のフローチャートを参照して、ステップS450で位置合わせ処理部850が実行する位置合わせ処理の手順を説明する。なお、本実施形態における位置合わせ処理は、上記の実施形態と同様に、MRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢s1と、MRI画像の変形パラメータs2の導出によって実現される。
【0121】
(ステップS905)
ステップS905において、位置合わせ処理部250は、ステップS420で生成したMRI弾性画像に基づいて、重力に基づくMRI画像の変形パラメータを推定する。なお、ステップS905の処理は、第1実施形態におけるステップS505の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0122】
(ステップS910)
ステップS910において、位置合わせ処理部850は、位置合わせの未知パラメータに初期値を設定する。ステップS910の処理は、第1実施形態におけるステップS510の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0123】
第1実施形態と同様に本実施形態においても、位置合わせの処理は、s1の推定とs2の推定を交互に繰り返すことによって実現される。
【0124】
まず、ステップS915からステップS925の処理によって、超音波断層像の位置と姿勢の推定値s1に補正を加えることで、MRI画像と超音波断層像との間の剛体位置合わせを行う。なお、ステップS915,ステップS920,及びステップS925の夫々の処理は、第1実施形態におけるステップS525、ステップS530、及びステップS535の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0125】
次に、ステップS930からステップS950の処理によって、MRI画像の変形パラメータs2(夫々の制御点の変位)に補正を加えることで、MRI画像と超音波断層像との間の非剛体位置合わせを行う。
【0126】
(ステップS930)
ステップS930において、弾性情報更新部852は、変形パラメータの推定値s2に異なる微小変化を加え、変形パラメータの幾つかの仮説を生成する。
【0127】
なお、この操作は、現在のパラメータの整合性の評価の際に、夫々の制御点付近の局所領域における位置合わせの整合性を夫々算出しておいて、その整合性に応じて変位を操作するような構成であることが望ましい。すなわち、局所領域における位置合わせの整合性がとれている(評価値が小さい)場合には、その領域に影響を及ぼす制御点の変位は正しいとする。そして、修正が必要な制御点の変位にのみ微小変化を与える。あるいは、評価値に応じて微小変化の大きさを調整する。これによると、仮説の組み合わせ爆発を防ぎ、処理時間の高速化を図ることができる。
【0128】
(ステップS935)
ステップS935において、弾性情報更新部852は、ステップS930で生成した夫々の変形の仮説に基づいて、MRI画像の弾性情報を推定(現在のMRI弾性画像を更新)する。例えば、夫々の制御点について、近傍の制御点までの距離の平均を求め、この値を同地点における弾性率を表す数値(弾性係数。この値は、大きいほど柔らかいことを表す)とする。そして、制御点以外の座標における弾性係数を補間することで、MRI弾性画像を生成する。
【0129】
(ステップS940)
ステップS940において、評価部854は、ステップS930で生成した夫々の変形の仮説に基づいて、s1(ここでは固定値として扱う)に位置する超音波断層像の位置合わせの整合性を評価し、その評価値を算出する。ここで、位置合わせの整合性の評価値の算出は、第1実施形態におけるステップS515と同様の方法によって行う。評価値の算出に用いるMRI弾性画像として、夫々の仮説に応じてステップS935で生成した画像を利用することが、本実施形態の特徴である。
【0130】
(ステップS945)
ステップS945において、評価部854は、ステップS940で算出した評価値の最大値を選択する。そして、その最大値を与える仮説(最善の仮説)を、変形パラメータの新たな推定値s2とする。ただし、求めた最大値が現在の推定値に対する評価値と比べて小さい場合には、推定値の更新は行わない。
【0131】
(ステップS950)
ステップS950において、位置合わせ処理部850は、変形パラメータの推定値の更新が収束しているか否かを判定する。そして、推定値の更新が収束していないと判定した場合には、ステップS930へと処理を進めて仮説の生成と選択を再度実行する。一方、推定値の更新が収束していると判定した場合には、ステップS955へと処理を進める。
ステップS950の処理は、第1実施形態におけるステップS550の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0132】
(ステップS955)
ステップS955において、位置合わせ処理部850は、上記の処理を反復して行うか否かを判定する。処理を反復して行う場合には、ステップS915へと処理を進め、現在のパラメータのさらなる更新を実行する。一方、反復しない場合には、ステップS960へと処理を進める。ステップS955の処理は、第1実施形態におけるステップS555の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0133】
(ステップS960)
ステップS960において、位置合わせ処理部850は、以上の工程で求めたMRI画像の変形パラメータs2と超音波断層像の位置と姿勢s1を、位置合わせの結果としてMRI断層像生成部260へと出力する。
【0134】
以上によって、ステップS450における非剛体変形位置合わせの処理が実行される。
【0135】
なお、本実施形態では弾性情報推定部240で推定した弾性画像を弾性画像の初期値として用いていたが、この弾性画像は必ずしも必要ではない。例えば、被検体の平均的な弾性係数が統計的に得られている場合には、その値を初期値として用いてもよい。また、弾性に関する事前知識がない場合には、弾性情報推定部240の処理とステップS905の処理を省き、変位パラメータの初期値(各制御点の変位)を0として以降の処理を実行してもよい。
【0136】
以上の処理によって、本実施形態における画像処理装置800によれば、位置合わせのパラメータを推定する過程において弾性情報の整合性を勘案することで、MRI画像と超音波断層像との位置合わせを高精度に行うことが可能となる。本実施形態ではさらに、変形の推定に応じて弾性画像を更新することで、弾性情報の比較をより高精度に行うことが可能となる。
【0137】
従来の方法では、位置合わせの対象である二つの画像間には変形が無いことが望ましい。一方、本実施形態では、二つの画像間に変形があることを利用して、位置合わせの過程でそこから導き出される弾性の情報を位置合わせに活用する。この点が、本実施形態の特徴といえる。
【0138】
[第4実施形態]
本実施形態に係る画像処理装置は、事前に撮像した被検体のMRI画像と、操作者(技師や医師)が対話的に撮像している当該被検体の超音波断層像の夫々を取得し、超音波断層像に対応するMRIの断層像を生成して表示する機能を提供する。
【0139】
本実施形態に係る画像処理装置1000と接続される機器の構成図は、図1と同様である。すなわち、第1実施形態に係る画像処理装置10と同様に、超音波画像診断装置20、核磁気共鳴映像装置30、及び位置姿勢センサ40が、LAN50を介して接続されている。なお、これらの機器に関する説明は、第1実施形態と同様であるので省略する。
【0140】
本実施形態に係る画像処理装置1000の機能ブロック図は、図8と同様である。但し、位置合わせ処理部の動作が第3実施形態とは異なっている(本実施形態ではこれを位置合わせ処理部1050と呼ぶ)。なお、位置合わせ処理部1050以外の各部の機能は第3実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0141】
位置合わせ処理部1050は、第3実施形態に係る位置合わせ処理部850と同様に、超音波断層像取得部210が取得した超音波断層像と、MRI画像取得部230が取得したMRI画像との非剛体変形位置合わせを行う。具体的には、MRI画像の変形パラメータと、MRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢を導出し、これをMRI断層像生成部260へと出力する。
【0142】
位置合わせ処理部1050は、仮定した弾性情報(第二の弾性情報)に基づいて変形パラメータを推定する弾性情報更新部1052(第二の弾性情報推定手段)と、弾性情報の整合性を利用して位置合わせの評価を行う評価部1054を有している。なお、これら各部の機能を含む位置合わせ処理部1050における処理の内容は、図10のフローチャートを用いて後に説明する。
【0143】
なお、画像処理装置1000の各部は、コンピュータのCPUにより実行することでその機能を実現するソフトウェアとして実現してもよい。本実施形態では、画像処理装置10000の各部は夫々ソフトウェアにより実現されており、同一のコンピュータにインストールされているものとする。なお、画像処理装置1000の各部の機能をソフトウェアで実現するためのコンピュータの基本構成は図3と同様であるので、説明を省略する。
【0144】
本実施形態の画像処理装置1000が実行する具体的な処理の手順は、図4のフローチャートと同様であるので、説明を省略する。ただし、本実施形態では、ステップS450で位置合わせ処理部1050が実行する位置合わせ処理の内容が、第1実施形態及び第3実施形態とは異なっている。
【0145】
以下、図10のフローチャートを参照して、ステップS450で位置合わせ処理部1050が実行する位置合わせ処理の手順を説明する。なお、本実施形態における位置合わせ処理は、上記の実施形態と同様に、MRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢s1と、MRI画像の変形パラメータs2の導出によって実現される。
【0146】
(ステップS1005)
ステップS1005において、位置合わせ処理部250は、ステップS420で生成したMRI弾性画像に基づいて、重力に基づくMRI画像の変形パラメータを推定する。なお、ステップS1005の処理は、第1実施形態におけるステップS505の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0147】
(ステップS1010)
ステップS1010において、位置合わせ処理部850は、位置合わせの未知パラメータに初期値を設定する。ステップS1010の処理は、第1実施形態におけるステップS510の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0148】
本実施形態においても、位置合わせの処理は、s1の推定とs2の推定を交互に繰り返すことによって実現される。
【0149】
まず、ステップS1015からステップS1025の処理によって、超音波断層像の位置と姿勢の推定値s1に補正を加えることで、MRI画像と超音波断層像との間の剛体位置合わせを行う。なお、ステップS1015、ステップS1020、及びステップS1025の夫々の処理は、第1実施形態におけるステップS525、ステップS530、及びステップS535の処理と同様であるので、説明は省略する。
【0150】
次に、ステップS1030からステップS1050の処理によって、MRI画像の変形パラメータs2(夫々の制御点の変位)に補正を加えることで、MRI画像と超音波断層像との間の非剛体位置合わせを行う。
【0151】
(ステップS1030)
ステップS1030において、弾性情報更新部1052は、現時点でのMRI画像弾性画像に対して幾つかの補正の仮説を生成する。具体的には、弾性画像上に設定されている制御点の弾性係数に微小な変化を加える。そして、補間によって画像全体の弾性係数を得る。
【0152】
なお、この操作は、現在のパラメータの整合性の評価の際に、夫々の制御点付近の局所領域における位置合わせの整合性を夫々算出しておいて、その整合性に応じて変化量を操作するような構成であることが望ましい。すなわち、局所領域における位置合わせの整合性がとれている(評価値が小さい)場合には、その領域に影響を及ぼす制御点の弾性係数は正しいとする。そして、修正が必要な制御点の弾性係数のみに新たな仮説を生成する。
あるいは、評価値の大きさに応じて仮説を生成する際の変化量を調整する。これによると、仮説の組み合わせ爆発を防ぎ、処理時間の高速化を図ることができる。
【0153】
(ステップS1035)
ステップS1035において、弾性情報更新部1052は、ステップS1030で生成した夫々の仮説に基づいて、ステップS1005と同様な処理によって、重力による変形パラメータを推定する。そして、得られた変形パラメータをs2の候補群とする。
【0154】
(ステップS1040)
ステップS1040において、評価部1054は、ステップS1035で求めた変形パラメータの候補群に基づいて、s1(ここでは固定値として扱う)に位置する超音波断層像の位置合わせの整合性を評価し、その評価値を算出する。ここで、位置合わせの整合性の評価値の算出は、第1実施形態におけるステップS515と同様の方法によって行う。
評価値の算出に用いるMRI弾性画像として、ステップS1030で生成した仮説を利用することが、本実施形態の特徴である。
【0155】
(ステップS1045)
ステップS1045において、評価部1054は、ステップS1040で算出した評価値の最大値を選択する。そして、その最大値を与えるs2の候補を、変形パラメータの新たな推定値s2とする。ただし、求めた最大値が現在の推定値に対する評価値と比べて小さい場合には、推定値の更新は行わない。
【0156】
(ステップS1050)
ステップS1050において、位置合わせ処理部1050は、変形パラメータの推定値の更新が収束しているか否かを判定する。そして、推定値の更新が収束していないと判定した場合には、ステップS1030へと処理を進めて仮説の生成と選択を再度実行する。
一方、推定値の更新が収束していると判定した場合には、ステップS1055へと処理を進める。ステップS1050の処理は、第1実施形態におけるステップS550の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0157】
(ステップS1055)
ステップS1055において、位置合わせ処理部1050は、上記の処理を反復して行うか否かを判定する。処理を反復して行う場合には、ステップS1015へと処理を進め、現在のパラメータのさらなる更新を実行する。一方、反復しない場合には、ステップS1060へと処理を進める。ステップS1055の処理は、第1実施形態におけるステップS555の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0158】
(ステップS1060)
ステップS1060において、位置合わせ処理部1050は、以上の工程で求めたMRI画像の変形パラメータs2と超音波断層像の位置と姿勢s1を、位置合わせの結果としてMRI断層像生成部260へと出力する。
【0159】
以上によって、ステップS450における非剛体変形位置合わせの処理が実行される。
【0160】
なお、本実施形態では弾性情報推定部240で推定した弾性画像を弾性画像の初期値として用いていたが、この弾性画像は必ずしも必要ではない。例えば、被検体の平均的な弾性係数が統計的に得られている場合には、その値を初期値として用いてもよい。また、弾性に関する事前知識がない場合には、弾性情報推定部240の処理とステップS1005の処理を省き、変位パラメータの初期値(各制御点の変位)を0として以降の処理を実行してもよい。
【0161】
なお、本実施形態では重力に基づく変形のみを仮定していたが、実際の変形がそれ以外の要因を含んでいる場合には、重力に基づく変形以外の変形を考慮してもよい。例えば、ステップS1045の処理の後に、第1実施形態のステップS540及びステップS545に相当する処理を実行してもよい。これによると、重力変形では表現できない変形パラメータを推定することができる。
【0162】
本実施形態によっても、第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0163】
(変形例1)
第1及び第2実施形態では、図5に示したフローチャートに従って非剛体変形位置合わせの処理を行っていた。しかし、位置合わせ処理部250(650)が実行する処理の手順は上記に限定されるものではない。また、第3、第4実施形態についても同様である。
【0164】
例えば、変形が重力のみに基づいていると仮定できる場合には、被検体に対するMRI撮像時の重力方向と超音波撮像時の重力方向を、変形パラメータs2として推定してもよい。ここで、既知の値として与えられている重力方向は、s2の初期値として利用する。
そして、非剛体位置合わせに係る処理(ステップS540からステップS550の処理)のうちのステップS540を、次のように変更すればよい。まず、現在のs2(すなわち、重力方向の推定値)に異なる微小変化を加え、幾つかの仮説を生成する。そして、夫々の仮説について、ステップS505と同様な処理によって制御点の変位を推定する。そして、推定した変位に基づく変形を施したMRI画像に対する、s1(ここでは固定値として扱う)に位置する超音波断層像の位置合わせの整合性を評価し、その評価値を算出する。以下、仮説の選択(S545)と収束の判定(S550)は、前記と同様に行えばよい。
【0165】
なお、重力の方向と、重力方向では表現できない制御点の変位とを、二段階の変形パラメータとしてそれぞれ推定する構成としてもよい。この場合、ステップS535とステップS540の間に、重力方向を推定する上記の処理を追加すればよい。
【0166】
また、被検体の姿勢を正確に制御できる場合には、変形パラメータの推定はステップS505でのみ行い、それ以降は剛体位置合わせのみを行う(すなわち、ステップS540からステップS550の処理は実行しない)という構成であってもよい。また、重力による被検体の変形が小さい場合には、ステップS505の処理を省略してもよい。また、変形がほとんど生じない被検体の場合には、被検体を剛体であると仮定して、ステップS505及びステップS540からステップS550の処理を省略してもよい。この場合、実行される位置合わせの処理は剛体位置合わせとなる。すなわち、推定されるパラメータはMRI座標系における超音波断層像の位置と姿勢のみとなる。
【0167】
また、複数の仮説を生成して夫々の評価値を求め、最善の仮説を選択していくという上記のアプローチ以外の方法であってもよい。例えば、以下のような方法で位置合わせを行ってもよい。まず、超音波断層像(及び超音波弾性画像)を複数のブロックに分割する。
次に、夫々のブロックと、当該ブロックの近傍に設定した探索範囲内から切り出したMRI画像(及びMRI弾性画像)の夫々との整合性を評価する。次に、最も整合するMRI画像(及びMRI弾性画像)を選択して、その位置(対応点)をブロックごとに取得する。そして、得られた対応点の集合に基づいて、超音波断層像の位置と姿勢を更新する。このとき、整合性の評価には、MRI弾性画像と超音波弾性画像の整合性と、MRI画像と超音波断層画像の整合性を用いればよい。
【0168】
なお、位置合わせ処理部250が実行する処理の手順は上記に限定されるものではなく、位置合わせのパラメータを推定する過程において夫々のモダリティから得た弾性情報の整合性を勘案する方法であれば、何れの方法であってもよい。
【0169】
(変形例2)
第1,第3,第4実施形態では、弾性情報推定部240はMRI画像から組織構造を推定し、それに基づいてMRI画像の弾性情報を推定していた。また、第2実施形態では、複数の姿勢で取得したMRI画像を利用して当該MRI画像に関する被検体の弾性情報を推定していた。しかし、弾性情報の取得方法はこれに限るものではなく、他の何れの方法で取得してもよい。例えば、ある姿勢で撮影したMRI画像から抽出した組織構造に基づいて弾性情報を推定した後に、それを利用して他の姿勢で得たMRI画像との位置合わせを行い、さらに、その位置合わせ結果から弾性情報を推定しなおしてもよい。また、核磁気共鳴映像装置30がMRI弾性画像を生成する機能を有している場合には、画像処理装置10が核磁気共鳴映像装置30からMRI弾性画像を取得する構成であってもよい。
【0170】
(変形例3)
上記の実施形態では、位置合わせの結果を利用して超音波断層像に対応するMRI断層像を生成してこれを超音波断層像と並べて表示していたが、必ずしもこの処理を行う必要はない。例えば、生成したMRI断層像を外部記憶装置304に記録する構成であってもよい。また、インターフェイス308を介して外部に出力する構成であってもよい。また、生成したMRI断層像と超音波断層像とを重ね合わせて表示してもよい。
【0171】
また、MRI断層像を生成するのではなく、MRI画像上で同定されている注目部位(例えば腫瘍)の位置を3次元的に保持しておいて、超音波断層像上における当該注目部位の位置を求めるのに位置合わせの結果を利用してもよい。そして、得られた情報を超音波断層像上に重畳表示するようなアプリケーションを構成してもよい。また、位置合わせの結果であるMRIの変形パラメータと超音波断層像の位置と姿勢を、他のアプリケーションから利用可能な形態でRAM302や外部記憶装置304に保存する構成であってもよい。また、インターフェイス308を介してこれらを外部に出力する構成であってもよい。
【0172】
(変形例4)
上記の実施形態では、三次元医用画像を取得する第二のモダリティとしてMRIを用いていたが、第二のモダリティはこれに限定されるものではない。例えば、X線CTやSPECT、PETなどの三次元医用画像を生成するその他のモダリティであってもよい。同様に、第一のモダリティも超音波画像診断装置以外であってもよい。例えば、レーザー光源と超音波探触子を有するプローブを用いて被検体を撮像する光音響トモグラフィ(PAT:Photo−acoustic Tomography)装置であってもよい。また、第一のモダリティと第二のモダリティは必ずしも異なるモダリティで無くてもよく、異なる条件下において同一のモダリティによって取得した画像であってもよい。例えば、同一モダリティの別機種(例えば複数のメーカーの機器)で取得した画像同士であってもよいし、単一の機器によって異なる条件で撮影した画像同士であってもよい。
【0173】
(その他の実施形態)
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0174】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0175】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0176】
本発明を上記記録媒体に適用する場合、その記録媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【0177】
なお、上述した本実施の形態における記述は、本発明に係る好適な画像処理装置の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0178】
10 画像処理装置
20 超音波画像診断装置
25 超音波プローブ
30 核磁気共鳴映像装置
40 位置姿勢センサ
210 超音波断層像取得部
220 プローブ位置姿勢取得部
230 MRI画像取得部
240 弾性情報推定部
250 位置合わせ処理部
260 MRI断層像生成部
600 画像処理装置
610 超音波画像取得部
620 プローブ位置姿勢取得部
630 MRI画像取得部
640 弾性情報推定部
650 位置合わせ処理部
800 画像処理装置
850 位置合わせ処理部
852 弾性情報更新部
854 評価部
1000 画像処理装置
1050 位置合わせ処理部
1052 弾性情報更新部
1054 評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の画像と第二の画像との位置合わせを行う画像処理装置であって、
前記第一の画像における被検体の弾性に関する情報を取得する第一の弾性情報取得手段と、
前記第二の画像における被検体の弾性に関する情報を取得する第二の弾性情報取得手段と、
前記第一の弾性情報と前記第二の弾性情報との少なくともいずれか一方に基づいて、前記第一の画像と前記第二の画像の位置合わせを行う位置合わせ手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
位置合わせ手段は、前記第二の弾性情報に基づいて重力に応じた変形を前記第二の画像に対してすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第二の弾性情報取得手段は、複数の姿勢で被検体を撮像した複数の画像における対応画素間の距離に基づいて、被検体の弾性に関する情報を前記第二の弾性情報として推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第一の弾性情報と前記第二の弾性情報との整合性を評価する評価手段とを更に備え、
前記位置合わせ手段は、前記評価手段で算出した値が一定値に達するまで、前記第一の画像と前記第二の画像の少なくとも一方を変形することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記評価手段は、前記第一の弾性情報と前記第二の弾性情報との整合性を評価するとともに、前記第一の画像と前記第二の画像との整合性をも評価し、弾性情報の整合性と画像の整合性との評価の比率を被検体の弾性情報に基づいて変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記評価手段は、前記第一の弾性情報と前記第二の弾性情報との整合性を評価するとともに、前記第一の画像と前記第二の画像との整合性をも評価し、弾性情報の整合性と画像の整合性との評価の比率を被検体の撮影時の姿勢に基づいて変更することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第一の画像は超音波画像診断装置で撮像されたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第二の画像はMRIで撮像されたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
第一の画像と第二の画像との位置合わせを行う画像処理方法であって、
前記第一の画像における被検体の弾性に関する情報を取得する第一の弾性情報取得工程と、
前記第二の画像における被検体の弾性に関する情報を取得する第二の弾性情報取得工程と、
前記第一の弾性情報と前記第二の弾性情報との少なくともいずれか一方に基づいて、前記第一の画像と前記第二の画像の位置合わせを行う位置合わせ工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の画像処理方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記憶した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−59658(P2013−59658A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−261307(P2012−261307)
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【分割の表示】特願2008−296698(P2008−296698)の分割
【原出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】