説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】様々な処理を行った複数の画像データに対して、実施された画像処理内容を画像中身やマシンの使用状況などから推定して、画像の変換方法を求め、1つのテンプレートと差分データと変換方法のみで管理することにより、画像記憶装置の容量圧迫を軽減する。
【解決手段】CPU106は、HDD105の容量を低減するために、蓄積されている画像A、Bを領域分割し、エッジ画像を算出する。CPUは画像領域間でエッジ画像の第1のマッチング処理を行い、一致した画像領域に対しては、色情報の第2のマッチング処理を行い、一致した共通の画像領域を登録する。第1のマッチング処理で一致しない画像領域に対しては、マシンの使用履歴情報を参照して画像の変換方法を推定し、一方の画像を変換して再度、第1のマッチング処理を行い、一致しない場合、差分情報と、変換方法を登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像容量の圧迫を軽減した画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、MFP(複合機)にはHDDなどの記憶装置が内蔵され、画像データの蓄積が可能であるが、画像データはテキストファイルなどに比べて容量が大きく、大量の原稿画像を蓄積すると記憶装置の容量を圧迫する。
【0003】
そこで、このような容量不足を回避する方法として、リビジョン(版)管理などで原稿の履歴情報を全て保存する場合に、すべての履歴の画像データを蓄積するのではなく、一つの画像データとその画像データからの差分情報のみを管理するという方法がある(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した方法は、元が同一原稿の履歴情報を差分で管理しているので、フォーマットが同一で、その中身が異なる画像(例えばPPTのテンプレート、所定フォーマットの文書など)には適用できず、また、適用した場合でも以下のような問題がある。すなわち、
1.同一フォーマットであっても、フルカラー画像・2色画像・モノクロ画像・ネガポジ画像など、MFPに蓄積される画像が異なり、また原稿も、特定の色をドロップアウトした原稿、トナーセーブで出力した原稿、カラーユニバーサル(CUD)対応した原稿など種々ある。
【0005】
上記した場合、色に関係のないエッジ情報などは、テンプレートとのマッチングが取れるが、色情報は別プレーンで確保しなければならず、プレーン分の容量が多くなるという問題がある。
2.集約画像、変倍画像、一部をトリミングされた画像(部分コピーした画像)、パンチ穴のある画像などは、マッチングで一致しないので、複数のテンプレートを必要とし、容量が多くなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、様々な処理を行った複数の画像データに対して、実施された画像処理内容を画像中身やマシンの使用状況などから推定して、画像データの変換方法を求め、1つのテンプレートと差分データと変換方法のみで管理することにより、画像記憶装置の容量圧迫を軽減した画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、様々な処理を行った複数の画像データに対して、実施された画像処理内容を画像中身やマシンの使用状況などから推定し、画像データの変換方法を求めることで、1つのテンプレートと差分データと変換方法のみを保存する(複数のテンプレートを持たない)ことを要点とする。
【0008】
本発明の概要を説明する(図1を参照)。HDDなどに蓄積されている画像に対して、まず画像領域分割を行う(S1)。次に、分割された領域ごとに同じテンプレートであるか否かをエッジ成分でパターンマッチングを行う(S2)。エッジ情報でマッチングが不一致である場合は、マシンの使用履歴情報や画像配置情報をもとに推定を行い、画像を変換してから再度、マッチング処理をトライする(S4)。S4→S2で再マッチングを行っても、エッジ情報のマッチング処理の不一致の回数が、所定の閾値を超える画像領域に対しては、画像領域そのものと画像フレームに対する画像領域の位置座標を蓄積する(S6、S10)。
【0009】
S2で一致した画像領域に対しては、エッジ以外でのマッチング処理(例えば対象となる二つの画像の色差でマッチング)を行う(S3)。S3で、マッチングが不一致である場合は、マシンの使用履歴情報や色情報などをもとに推定を行い、画像を変換して再度、マッチング処理をトライする(S5)。
【0010】
S3で一致した場合は、共通フォーマットとして一方の画像領域そのものと画像フレームに対するフォーマットの位置座標を蓄積する。また、S4、S5で画像変換を行って一致した場合は、その変換内容も併せて記憶する。すなわち、共通フォーマット情報、共通フォーマットへの画像変換方法の情報、共通フォーマット以外の差分情報、画像フレームに対する各々の領域の位置情報が蓄積される(S9)。
【0011】
S5→S3で再マッチングを行っても、エッジ情報以外のマッチング処理の不一致の回数が、所定の閾値を超える画像領域に対しては、S3のマッチング処理で最も結果が良かった画像変換後の画像領域で、S3の基準よりも緩い色情報のマッチング処理を行う(S7、S8)。S8のマッチングでも不一致であれば、比較した2つの画像領域は全く異なった色情報をもっているものとして、エッジ情報のマッチングが不一致の場合と同様に、差分情報として画像領域そのものと画像フレームに対する画像領域の位置座標を蓄積する(S10)。また、S8のマッチングで一致した場合は、おおよそ両者の色情報が合っているので、S9と同様に共通フォーマットとして一方の画像領域と画像フレームに対するフォーマットの位置座標を蓄積する。ただし、S9との違いは色情報のマッチングを補助するための補助データも併せて蓄積する(S11)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共通フォーマット情報(テンプレート情報)と変換情報のみを保存することで、編集や加工されているテンプレートなどに対して別々に保存する必要がなくなり、記憶装置の容量圧迫を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例の処理フローチャートを示す。
【図2】本発明に係るデジタル画像処理装置(MFP)の全体構成を示す。
【図3】第1、第2の画像処理部の構成を示す。
【図4】実施例1の処理を説明する画像例を示す。
【図5】実施例1のマッチング処理を説明する図である。
【図6】画像Aの色相分布情報の例を示す。
【図7】パラメータによる変換方法を説明する図である。
【図8】HDDに蓄積する情報を示す。
【図9】実施例2の処理を説明する画像例を示す。
【図10】マシンの使用履歴情報を示す。
【図11】実施例2のマッチング処理を説明する図である。
【図12】画像の一部を切り出して蓄積する処理を説明する図である。
【図13】HDD容量低減動作時の操作表示装置の画面例を示す。
【図14】実施例3の処理を説明する画像例を示す。
【図15】色情報に関する編集履歴情報を示す。
【図16】実施例3のマッチング処理を説明する図である。
【図17】類似している画像同士をマップ化した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
デジタルカラー複写機をベースにFAX(ファクシミリ)機能、プリンタ機能、スキャナ機能、ドキュメントボックス機能などを複合したMFP(複合機)に、本発明の画像処理装置を適用した実施例を以下に示す。
【0016】
図2は、本発明に係るデジタル画像処理装置(MFP)の全体構成を示す。MFPは、図2に示すように、読取り装置101と、第1の画像処理部102と、バス制御装置103と、第2の画像処理部104と、HDD105と、CPU106と、メモリ107と、プロッタI/F装置108と、プロッタ装置109と、操作表示装置110と、回線I/F装置111と、外部I/F装置112と、S.B.113と、ROM114と、汎用バス115等を備えている。このMFPは、外部装置であるFAX116やPC117とデータ通信可能に構成されている。
【0017】
読取り装置101は、CCD光電変換素子からなるラインセンサとA/Dコンバータとそれら駆動回路を具備し、セットされた原稿をスキャンして得られる原稿の濃淡情報に基づいて、RGB各8ビットのデジタル画像データを生成して第1の画像処理部102に出力する。
【0018】
第1の画像処理部102は、読取り装置101から入力されるデジタル画像データに対して、予め定めた特性に統一する処理を施して出力する。統一する特性は画像データをMFP内部に蓄積し、その後再利用する場合に、出力先の変更に適する特性であり、その詳細は後述する。本実施例では上記画像処理をDSPで実行する。
【0019】
バス制御装置103は、画像処理装置内で必要な画像データや制御コマンド等の各種データの送受信を行うデータバスの制御装置であり、複数種のバス規格間のブリッジ機能を有している。本実施例では、バス制御装置103は、第1の画像処理部102、第2の画像処理部104、CPU106とはPCI−Expressバスで接続し、また、HDD105とはATAバスで接続してASIC化している。
【0020】
第2の画像処理部104は、第1の画像処理部102で予め定めた特性を統一された画像データに対し、ユーザーから指定される出力先に適した画像処理を施して出力する。その詳細は後述する。
【0021】
HDD(蓄積装置)105は、デスクトップパソコンにも使用されている電子データを保存するための大型の記憶装置であり、主に画像データを蓄積する。また本実施例では、IDEを拡張して規格化されているATAバス接続のハードディスクを使用する。画像データは、通常のテキストファイルなどに比べて大容量であるため、膨大な画像データを蓄積すると、記憶装置の容量が一杯となり、新たに画像データを蓄積できないばかりでなく、マシンのパフォーマンスにも影響を与える。
【0022】
CPU106は、デジタル画像処理装置の制御全体を司るマイクロプロセッサである。本実施例では、近年普及してきたCPUコア単体に+αの機能を追加したIntegrated CPUを使用し、例えば、PMC社のRM11100で、汎用規格I/Fとの接続機能や、クロスバースイッチを使ったこれらバス接続機能がインテグレートされたCPUを使用する。
【0023】
メモリ107は、複数種のバス規格間をブリッジする際の速度差や、接続された部品自体の処理速度差を吸収するために、一時的にデータを記憶し、CPU106が本デジタル画像処理装置の制御を行う際に、プログラムや中間処理データを一時的に記憶する揮発性メモリである。CPU106は、高速処理が求められるため、通常起動時にROM114に記憶されたブートプログラムにてシステムを起動し、その後は高速にアクセス可能なメモリに展開されたプログラムによって処理を行う。本実施例では、メモリ107として、規格化されパーソナルコンピュータに使用されているDIMMを使用する。
【0024】
プロッタI/F装置108は、CPU107にインテグレートされた汎用規格I/Fを経由して送出されてくるCMYKの画像データを受け取ると、プロッタ装置109の専用I/Fに出力するバスブリッジ処理を行う。本実施例では、汎用規格I/Fとして、例えば、PCI−Expressバスを使用する。
【0025】
プロッタ装置109は、CMYKからなる画像データを受け取ると、レーザービームを用いた電子写真プロセスを使用して、転写紙に受け取った画像データを出力する。S.B.113は、パーソナルコンピュータに使用されるチップセットのひとつであり、South Bridgeと呼ばれる汎用の電子デバイスである。S.B.113は、主にPCI−ExpressとISAブリッジを含むCPUシステムを構築する際によく使用されるバスのブリッジ機能を汎用回路化したもので、本実施例ではROM114との間をブリッジしている。ROM114は、CPU106が本デジタル画像処理装置の制御を行う際のプログラム(ブートプログラムを含む)が格納されるメモリである。
【0026】
操作表示装置110は、本デジタル画像処理装置とユーザーのインターフェースを行う部分であり、LCD(液晶表示装置)とキースイッチから構成され、装置の各種状態や操作方法をLCDに表示し、ユーザーからのキースイッチ入力を検知する。本実施例では、PCI−Expressバスを介してCPUと接続する。回線I/F装置111は、PCI−Expressバスと電話回線を接続する装置であり、この装置により本デジタル画像処理装置は電話回線を介して各種データのやり取りを行うことが可能になる。外部I/F装置112は、PCI−Expressバスと外部装置を接続する装置であり、この装置により本デジタル画像処理装置は外部装置と各種データのやり取りを行うことが可能になる。本実施例では、その接続I/Fにネットワーク(イーサネット(登録商標))を使用する。すなわち、本デジタル画像処理装置は、外部I/F装置112を介してネットワークに接続されている。FAX116は、通常のファクシミリであり、電話回線を介してMFPと画像データの送受信を行う。PC117はパーソナルコンピュータであり、インストールされたアプリケーションソフトやドライバを介して、ユーザーは本デジタル画像処理装置に対して各種制御や画像データの入出力を行う。
【0027】
以下に、基本となる通常のコピー動作処理・送信動作(容量低減を行わない場合)を説明し、次いで、容量低減の動作を説明する。
(コピー動作)
ユーザーは原稿を読取り装置101にセットし、所望するモード等の設定とコピー開始の入力を操作表示装置110により行う。操作表示装置110は、ユーザーから入力された情報を、機器内部の制御コマンドデータに変換して発行する。発行された制御コマンドデータは、PCI−Expressバスを介してCPU106に通知される。
【0028】
CPU106はコピー開始の制御コマンドデータに従って、コピー動作プロセスのプログラムを実行し、コピー動作に必要な設定や動作を順に実行する。以下に動作プロセスを説明する。
【0029】
#1.読取り装置101で原稿をスキャンして得られたRGB各8ビットの画像データは、第1の画像処理部102で予め定めた特性に統一され、バス制御装置103に送られる。
【0030】
#2.バス制御装置103は第1の画像処理部102からのRGB画像データを受け取ると、CPU106を介してメモリ107に蓄積する。
【0031】
#3.次に、メモリ107に蓄積されたRGB画像データは、CPU106及びバス制御装置103を介して、第2の画像処理部104に送られる。
【0032】
#4.第2の画像処理部104は、受け取ったRGB画像データを、プロッタ出力用のCMYK画像データに変換して出力する。
【0033】
#5.バス制御装置103は、第2の画像処理部104からのCMYK画像データを受け取ると、CPU106を介してメモリ107に蓄積する。
【0034】
#6.次に、メモリ107に蓄積されたCMYK画像データは、CPU106及びプロッタI/F装置108を介して、プロッタ装置109に送られる。
【0035】
#7.プロッタ装置109は、受け取ったCMYK画像データを転写紙に出力し、原稿のコピーが生成される。
【0036】
図3(a)は、第1の画像処理部102の構成を示し、図3(b)は、第2の画像処理部104の構成を示す。
【0037】
図3(a)の第1の画像処理部102において、像域分離処理部201は、読取装置101から受け取ったRGB画像データを1画素ごとに、文字領域であるか、絵柄(網点)領域であるかを判定し、その領域情報を後述のフィルタ処理などで利用する。地肌除去処理部202は、読取装置101から受け取ったRGB画像データの地肌部をラインごとに追従しながら算出し、適切な地肌値を除去する処理を行う。通常の白い紙の原稿だけでなく、新聞紙や色紙などの地肌を除去し、白い原稿として出力する効果もある。
【0038】
γ変換部203は、読取り装置101から受け取ったRGB画像データの明るさを予め定めた特性に統一する。本実施例では、明度リニアな特性に変換し、主に階調性の補正、グレーバランスの補正などを行う。孤立点除去処理部204は、画像データ中の孤立点を検出し、削除する。
【0039】
フィルタ処理部205は、像域分離処理で得られる像域分離情報に応じて、RGB画像データの文字部に対しては、鮮鋭性を向上させる処理を施し、RGB画像データの絵柄部(網点部)に対しては平滑処理を行い、滑らかな階調性を重視する処理を施す。
【0040】
色変換部206は、RGB画像データの色を予め定めた特性に統一する。本実施例では、色空間がAdobe(登録商標)−RGBのような色空間になるように変換する。変倍処理部207は、RGB画像データのサイズ(解像度)を予め定めた特性に統一する。本実施例では、サイズ(解像度)を600dpiに変換する。
【0041】
図3(b)の第2の画像処理部104において、フィルタ処理部301は、RGB画像データの鮮鋭性を、プロッタ装置109に出力する場合の再現性が良くなるように補正する。具体的には所望するモード情報に従って鮮鋭化/平滑化処理を施す。例えば文字モードでは文字をハッキリ/クッキリとするために鮮鋭化処理を施し、写真モードでは滑らかに階調性を表現するため平滑化処理を施す。
【0042】
色変換部302は、RGB各8ビットのデータを受け取るとプロッタ装置用の色空間であるCMYK各8ビットに変換する。このとき、ユーザーが所望するモード情報に従って彩度もあわせて調整する。変倍処理部303は、CMYK画像データのサイズ(解像度)を、プロッタ装置109の再現性能に従ってサイズ(解像度)変換を行う。本実施例では、プロッタ109の性能が600dpi出力であるため、特に変換は行わない。
【0043】
階調処理部304では、CMYK各8ビットを受け取るとプロッタ装置109の階調処理能力に従った階調数変換処理を行う。本実施例では、CMYK各2ビットに疑似中間調処理の一つである誤差拡散法を用いて階調数変換する。マスク処理部305では、階調変換したCMYKデータに対して、原稿の影などを消去するために、画像データの周辺部のデータを白データで上書きする。
【0044】
図1は、本発明の実施例の処理フローチャートである。以下に、図1を参照して、本発明の特徴である容量圧迫動作を説明する。なお、画像蓄積動作とは、上記したコピー動作の#1〜#2までの動作の後、#2でメモリ107に蓄積された画像データをCPU106がバス制御装置103を介して、HDD105に蓄積する動作のことである。
【0045】
HDD105の容量を低減するために、画像蓄積動作でHDD105に蓄積された画像Aと画像Bの容量低減を行う場合を説明する。以下説明する容量低減動作のトリガは、HDD105が所定の容量をオーバーした場合、例えば、容量が500GBのHDD105を搭載したMFPの場合、使用容量が480GBに達すると、容量低減動作が実施される。このような容量低減動作は、特に夜間や休日中などMFPを長時間使用しない場合に行うことが望ましい。
【0046】
#10.HDD105に蓄積されている画像A、画像Bをバス制御装置103を介して、メモリ107に展開する。
【0047】
#11.CPU106は画像A、画像Bに対して、画像領域分割を行う(S1)。画像領域を分割する方法としては、特許文献2、3に記載されたレイアウト解析を用いる。画像領域分割された全ての画像領域の左上X1、Y1座標と、画像領域の右下X2、Y2座標を、メモリ107に記憶する。図4(a)は、画像データA(フルカラー画像)、(b)は画像データB(モノクロ画像)を示し、(c)は、領域分割後の画像データA、(d)は領域分割後の画像データBを示す。
【0048】
#12.さらに、画像データA、画像データBの2値のエッジ画像(輪郭画像)を算出する。この処理は、CPU106が行っても良いし、メモリ107からバス制御装置103を介して、第2の画像処理部104のフィルタ処理部301の機能などを使用してもよい。
【0049】
CPU106は、それぞれの画像領域同士でエッジ画像のパターンマッチング処理を総当りにより行う(S2)。画像データA、Bは共にスキャナ画像であるので、元のテンプレートが同じであったとしても、完全に一致することはありえない。そのため、画像領域のサイズが例えば±5%以内であれば、変倍処理を行って、二つの画像領域を同じ大きさにしてから、エッジ情報でのマッチングを行う(5%という数値は任意であり、ユーザーが適宜、選択してもよい)。
【0050】
マッチング処理は、画像領域の総画素数に対して、マッチング不一致の画素数が所定の閾値以内であれば、二つの画像領域は一致したものとする。例えば、10000画素の2値のエッジ画像領域同士でマッチングを行った結果、そのうちの300画素がマッチング不一致(お互いの画素が白と黒)であり、所定の閾値が5%であれば、10000×5%=500画素以下であるので、この画像領域同士は一致しているものと判定する。エッジ情報のマッチングで一致した画像領域のみ、#13以降の処理を行う。図4(e)、(f)は、エッジ情報で一致した、画像データA、Bの画像領域を示す。すなわち、画像データAの絵11と画像データBの絵21が一致し、画像データAの絵12と画像データBの絵22が一致し、画像データAの絵13と画像データBの絵23が一致している。
【0051】
#13.前述した#12で、エッジ情報が一致した画像領域に対して、CPU106は、色情報のマッチング処理を行う(S3)。例えば、画像データA、BがAdobe(登録商標)−RGBの色空間で定義されたRGBデータであれば、RGB空間をLab空間に変換して、色差を比較する。色差は、Lab空間における2点間のユークリッド距離であり、人間の見た目の違いと距離にある程度の相関性がある。また、ユークリッド距離に対して、所定の重み付けをして補正を行うΔE94色差で評価しても良い。
【0052】
色差を比較する2つの画像領域において、1画素毎の色差を求め、その領域内の平均色差・最大色差が所定の閾値以内であれば、2つの画像領域同士の色情報が一致していると判定する。色情報のマッチング処理で平均色差・最大色差が所定の閾値以内で一致した画像領域に対しては、後述する#18の処理に進む。
【0053】
しかし、実際には画像Aがフルカラー画像であり、画像Bがモノクロ画像であるから、単純に色情報を比較しても一致しない。色情報を比較しても一致しない場合は、エッジ情報が一致するため元は同じ色情報であったが、何か画像処理や編集処理を行って色情報が一致しなくなったと判断し、その処理内容を推測して、画像Aから画像Bに変換する方法(もしくは画像Bから画像Aに変換する方法)を推定し、推定処理・画像変換・色情報マッチング処理によるマッチング処理で一致するか、不一致の回数が所定の閾値に達するまで繰り返し行う(S3、S5)。
【0054】
図5は、色情報が一致しないときのマッチング処理を説明する図である。
【0055】
#14.色情報が一致しないときの処理内容を推定する推定処理について説明する。
「色情報推定処理」(S5の前半処理)
まず、色差の比較情報結果を基に、CPU106は画像に対する処理内容を調べる。
【0056】
色相ごとの色差の比較
色相毎に色差の不一致の程度が発生しているか調べる。まず、Lab空間で存在する範囲の広い画像Aに注目して、画像Aの画像領域の各画素に対して、a、b値より例えば6色相に分割し、その12色相のうち、どの色相で不一致となっているかを確認する。
【0057】
画像Aと画像Bの場合は、フルカラー画像とモノクロ画像の違いであるので、全色相で色差が異なる。全色相の色差が異なる場合は、両方の画像の色相分布を確認する。そうすると、図6(a)、(b)のように、画像Aでは、全色相でかつ、ある程度の彩度をもった画像が存在するが、画像Bでは全画素ともa、bの値が0に近く、低彩度であるので、画像Aはフルカラー画像であり、画像Bはモノクロ画像であると推定できる。
【0058】
図6に示す色相ごとの画素数は理想的な値であるが、実際にはスキャナで読み取った画像であるので、モノクロ画像であっても低彩度の画素としてカウントされない画素もあり、また、同一の原稿を読み取っても全く同一の画素数分布をとらないことから、所定の閾値を設定し、閾値未満であればモノクロ画像である判定することになる(以下の説明では、全て理想的な場合で示している)。
【0059】
その他、全色相の色が異なる場合は、2つの画像の色相の分布を基に、種々推定することができる。以下にその一例を示す。
・図6(a)、(c)のような補色の関係にある画像に対しては、ネガポジ(白黒)変換を行ったと推定できる。
・図6(a)、(d)のように画像Aに対して、同じ割合ずつ各色相から画素が減少している(色相の多い順番などはかわらない)ので、彩度変換(淡い/濃い)を行っている、原稿が出力される際にトナーセーブされているなどと推定できる(複数の候補のうち、何れか一つの候補に絞る方法は、実施例3で説明する)。
・図6(a)、(e)のように色相分布が移動している場合((a)のR=(e)のY、(a)のY=(e)のG)は、色相に関する編集を行っていると推定することができる。
【0060】
また、全色相ではなく、ある特定の色相のみ色差が異なっている場合も推定可能であり、以下に一例を示す。
・図6(a)、(f)のように、画像Aでは全色相の画素があるのに対し、一方の画像はR色相しかない場合は、二色カラー変換していると推定することができる。
・画像Aでは全色相の画素があるのに対して、一方の画像はある特定の色相が存在しない場合は、ドロップカラー(色消し)処理を行っていると推定することができる。
【0061】
以上のように、色情報を基に、二つの画像の変換方法を推定する。
【0062】
#15.上記した#14で推定した変換方法を用いて画像を変換する(S5の後半処理)。
【0063】
画像Aと画像Bの場合では、前述の通り、画像Aから画像Bへは、モノクロ変換を行ったと推定できるので、画像Aを実際にモノクロ変換する。モノクロ変換は、CPU106または第2の画像処理部104で行う。画像Aをモノクロ変換した画像を画像A’と呼ぶ。
【0064】
#16.#15で変換した画像に対して、色情報のマッチング処理を行う。すなわち、画像A’と画像Bのうち、エッジ情報でマッチングした画像領域同士を再度、色情報のマッチング処理を行い、平均色差、最大色差が所定の閾値内である否かを確かめる。ここで、マッチング処理が不一致であれば、さらに#14の推定処理、#15の変換処理を繰り返し、再度、マッチング処理を行う。そして、不一致の回数が所定の閾値を超えた画像領域では、以下の#17の処理を行い、不一致の回数が所定の閾値未満で、色情報のマッチングが一致した画像領域では、#18の処理を行う(S7)。
【0065】
#17.色情報のマッチングが不一致の場合の処理を説明する。まず、平均色差がマッチングの基準よりも大きい(緩い)第二の閾値内にあるか否かを判断する(S8)。例えば、図4(c)、(d)の画像領域「絵11」と「絵21」同士を比較した場合に、画像変換を数回行った内、最も良かった結果が平均色差4.5、最大色差7であり、色情報のマッチングで一致となる基準の閾値が、平均色差で3、最大色差で5であるとする。このときの「絵11」を画像変換した画像領域を「絵11’」と呼ぶことにする。この場合、画像領域同士のマッチングでは平均色差、最大色差ともに閾値以上の値であるので、マッチングは不一致となる。不一致の回数が所定の閾値を超えた場合、画像変換を行った中で最も結果の良かった平均色差、最大色差の値と第二の閾値との比較を行う。第二の閾値を平均色差5、最大色差8とすると、画像領域「絵11」と「絵21」のマッチングは第二の閾値内である。
【0066】
第二の閾値を超える場合は、2つの画像領域において、全く色情報が異なり、2つの画像領域間の変換が困難であるため、2つの画像領域の色情報を別々にHDD105に保存することにする。一方、第二の閾値以内であれば、一部の画素の変換が難しいが、多くの画素の変換が可能であると判断し、その一部の画素のみ変換を補助するための情報を合わせてHDD105に保存する。
【0067】
補助するための情報の具体例として、以下に2例を挙げる。
(1)まず、第一の最大色差の閾値5を超える箇所が許容できない箇所であるので、「絵11」の画像変換を行った「絵11’」と「絵21」の最大色差5以上の画素を抽出する。そして、その最大色差5以下の領域内の画素のみで、平均色差が基準の3以下となるか否かを確認する。
【0068】
その結果、平均色差が3以下となるのであれば、抽出した最大色差5以上の画素データのみをそのまま別プレーンとして保存し、「絵11’」と「絵21」はマッチングしたものとして扱う。3を超えた場合は、色差5以上ではなく、色差4.5以上のものを除いた状態で、再度、平均色差が3以下であるか否かを確認する。それでも平均色差が3を超える場合は、色差4以上、それでも超える場合は、色差3.5以上と徐々に取り除く色差の値を小さくして、平均色差が3以下となるまで上記処理を繰り返す。ただし、第二の閾値をある程度低い値にしておけば、最大色差の閾値(=5)を取り除けば、平均色差の閾値以内に入るようになる。これは、最大色差の閾値(=5)を超えている高々、数画素のために、画像領域全体の色情報を別プレーンで保存するよりも最大色差の閾値(=5)を超えている数画素のみ別プレーンで保存し、それ以外は変換方法のみ保存する場合の方が、HDD107の容量が小さくなるからである。
【0069】
例えば、トナーの異なる二つのプリンタで同じ原稿を出力し、その2枚を色情報でマッチング処理する場合、プリンタの再現できるガマットが異なるため、ガマット外の色のみが大きく最大色差を超えてしまい、それにより平均色差が大きな値となることがある。そのような場合は、ガマット外の色域のみを別プレーンで保存しておき、それ以外はマッチングが一致、すなわち共通フォーマットとして保存することで、よりHDDの容量圧迫を低減することが可能となる。
(2)パラメータでの変換方法
(1)と同様に、平均色差を高くしている画素(主に最大色差の閾値(=5)を超えている画素)を抽出する。その抽出した画素に対して、色相ごとに(例えば12色相分割の)一次変換式で「絵11’」から「絵21」に変換するパラメータを求める。「絵21」の抽出した画素をそれぞれ目標値とし、それに対応する「絵11’」のそれぞれの一次変換の入力値として、回帰演算(最小二乗法)などで最適なパラメータを求める。図7は、パラメータでの変換方法を説明する図である。
【0070】
そのパラメータ(係数)を用いて、「絵11’」の画素値より一次変換を行った結果と「絵21」の画素値との色差を求め、その平均色差が閾値3よりも小さく、かつ最大色差が閾値5より小さければ、そのパラメータを補助データとして蓄積する。もし、平均色差が閾値よりも小さい場合であっても、最大色差の閾値を上回っている場合は、最大色差に制約をかけた最適化などを行うことで、平均色差と最大色差の両方の閾値をクリアするようにパラメータを算出する。最大色差に制約をかけた最適化とは、通常、色差を最小にする評価関数として、これを最小にするパラメータを算出するが、この評価関数に最大色差がある閾値を超えるとペナルティを課し、イテレーションで評価関数を小さくするよう最適化を行うことで、最大色差に制約をかけた最適化を行うことができる。この最適化を行っても、平均色差もしくは最大色差のどちらかでも閾値を満たさない場合は、その色相のみ二次変換を行うようにしてもよい。
【0071】
また、この1次変換は、第1、第2の画像処理部の色変換処理中に、色相分割線形マスキング処理として実行されるので、実際に1次変換のパラメータより絵21を求める場合は、絵11’の最大色差が閾値5を超えた画素を、メモリ107からバス制御装置103を介して、第2の画像処理部104に送信する。また、記憶したパラメータも第2の画像処理部104の色変換処理のマスキングパラメータのレジスタに設定する。このように第2の画像処理部104を用いることで、CPU106の負荷分散がなされ、処理が高速化する。また、第2の画像処理部104がASICなどであれば、CPU106で処理するよりも圧倒的に処理が早い。
【0072】
#18.色情報のマッチング処理で一致した画像領域については、より情報の多い一方の画像領域のみを共通フォーマットとして、HDD107に保存する。また、各々の画像領域の位置座標も合わせて記憶する(S9、S11)。さらに、画像変換推定方法により、変換してマッチングを行い一致した場合には、その変換方法も合わせてHDD107に蓄積する。また、#17で、色情報をマッチング処理させるために、一部補助データが必要であった場合は、その補助データも共通フォーマットと合わせて蓄積する。色情報のマッチング処理で一致しなかった画像領域については、その画像領域そのものと位置情報を合わせて蓄積する。
【0073】
図8は、画像A、Bの場合に、HDDに蓄積する情報を示す。画像データAと画像データBを蓄積するよりも、図8のように、共通フォーマット情報、差分情報、変換情報を蓄積する方が冗長的なデータがなくなるため、HDD107の容量圧迫が一層低減される。また、図8のHDD107に蓄積されているデータから画像データBを作成するには、共通フォーマット情報をまずモノクロ変換したものに、文字21、文字22を、記憶した位置座標の箇所に合成することで画像データBとなる。
【0074】
本実施例では、画像変換方法を共通フォーマットデータとその差分データに加え、共通フォーマットへの変換方法(及び変換後データに対しての補助データ)を合わせて蓄積することで、従来よりも容量圧迫を低減することが可能となる。また、色情報の変換が不可で、第二のマッチング処理で不一致の箇所がある場合は、不一致箇所のみ補正する情報を合わせて保存することで、テンプレート情報の色情報を別プレーンで保存するよりも容量を小さくすることが可能となる。また、補正情報を変換対象データとの差分データとすることで、容易に補正情報を求めることができ、かつ、必ず所定の不一致の許容範囲に収まることが可能となる。また、補正情報を1次式や2次式の変換式とすることで、不一致箇所の画素数が多い場合には、画像データを持つよりも容量を小さくすることが可能となる。また、色情報を利用することで、色に関する画像変換方法の推定を行うことが可能となる。例えば、2色変換、モノクロ変換、ネガポジ変換、指定色消去変換、CUD(カラーユニバーサルデザイン)対応変換、トナーセーブ変換などが挙げられる。さらに、エッジ情報でマッチングするもの、すなわち形状が同一であるものに対して、色情報のマッチングを行うことで、画像変換方法を効率よく推定することが可能となる。
【実施例2】
【0075】
図9は、実施例2の処理を説明する図である。HDD105の容量を低減するために、画像蓄積動作でHDD105に蓄積された画像C(図9(a))と画像D(図9(b))の容量低減を行う処理を説明する。以下、実施例1と相違している処理を中心に説明する。
【0076】
#20.#21.実施例1の#10、#11の処理と同様である。
【0077】
#20.#21.実施例1と同様に、エッジ情報でのマッチング処理を行う(S2)。画像Cと画像Dの場合は、全ての画像領域で不一致となるため、CPU106はメモリ107にマシンの編集情報や使用履歴情報を呼び出す(1つでも画像領域が一致する場合は、#23のステップに進む)。
【0078】
図10は、マシンの使用履歴情報を示す。図10の編集情報のうち、使用している確率の高い編集情報から順に、画像C、画像Dの何れに対して編集を行っているかを推定する。図10を参照すると、2in1の集約印刷とステープルの使用率が高いため、その二つの処理が行われていることを推定する。画像Cもしくは画像Dが集約印刷を行っているか否かは、画像領域の配置位置(位置情報)・集約画像の境界部の空白・文字の大きさなどの情報から、推定する(例えば、特許文献4を利用する)。そうすると、画像Dが2in1の集約印刷を行っている可能性が高いことがわかる。
【0079】
また、ステープルを行っているか否かは、画像の左右、上下の周辺部のみにステープル跡があるか否かを探索すればよい。パンチ穴探索なども同様である。ステープル跡検索を行っても画像C、画像Dにその跡がみられないため、ステープル跡に関する画像変換は行わない。
【0080】
#23.そのため、図11のように、画像Cを1/2変倍して、改めてエッジ情報でのマッチング処理を行う。また、画像Cはそのままの大きさで、画像Dを2倍に変倍して、マッチング処理を行っても問題ない(何れの処理を行うかは、後述する)。
【0081】
このように、編集情報と画像領域の位置関係などをヒントに推定を行い、画像変換し、エッジ情報のマッチング処理を繰り返す。このマッチング処理の不一致回数が所定の閾値を超えるような画像領域は、差分情報として、画像領域そのものとその位置座標を保存する(S6)。また、マッチング処理で一つの画像領域も一致しない場合は、画像Cと画像Dを組み合わせても容量圧迫の低減に効果がないので、他の画像の組み合わせを行う。図9(c)、(d)のマッチング処理では、絵31=絵41=絵44、絵32=絵42=絵45、絵33=絵43=絵46の結果となる。
【0082】
上記した処理を採る理由は、入力した原稿は元々、同一のMFPで出力したという想定にあるが、仮に他のMFPで出力したとしても、編集機能の使用履歴が、例えば同一部署内や社内であれば類似している場合が多いためである。
【0083】
また、本実施例では、編集履歴は出力した際の編集履歴を使用しているが、当然、画像蓄積時の編集設定を利用する場合もある。画像蓄積時には、編集をすることなく、冗長的なデータを蓄積するのが基本であるが、画像のトリミングなどでは削除することが望ましい場合もあり、その場合はトリミング位置などの情報を用いて、マッチング処理を行う。
【0084】
例えば、図12のように、画像Aの一部を抜き出した点線部の画像と画像A自体をエッジ情報でマッチング処理する場合、文字12、文字13の画像領域は、エッジ情報でのマッチング処理で一致するが、絵12の一部は切れているため(絵12’とする)、エッジ情報でのマッチング処理で一致しない。そこで、点線部の画像蓄積を行う際に、切り抜く箇所の位置座標と切り抜く前の画像サイズを記憶する。そして、容量圧迫の低減動作時に、画像Aとマッチングをする際に、切り抜いた位置座標を用いて、画像Aを切り抜くことで、絵12’とのマッチング処理も一致することが可能となる。
【0085】
#24.以降の処理は、実施例1と同様である。ただし、実施例2では、共通フォーマット情報として、「絵31、絵32、絵33」と「画像Dへの変換方法:1/2変倍する」(共通フォーマットAと呼ぶ)でもよいし、「絵41(絵44)、絵42(絵45)、絵43(絵46)」と「画像Cへの変換方法:2倍変倍する」(共通フォーマットBと呼ぶ)でもよい。
【0086】
基本は、画像Dを2倍にした状態で色情報のマッチング処理を行う。そこで、マッチング処理の判定基準である平均色差・最大色差の閾値で余裕があれば、画像Cを1/2にしたものと画像Dとで色情報のマッチング処理を行う。そこでも平均色差・最大色差の閾値を満たすのであれば、共通フォーマットとしては、上記したA、Bの何れでもよい。ただし、共通フォーマットとしては、Aの方がサイズ(もしくは解像度)が大きいため、Bよりも画像情報が多く含まれており、高画質となる。一方、Bを選択するとその分、容量の低減化を大きくできる。
【0087】
また、共通フォーマットBのとき(画像Cを1/2、画像Dはそのままのサイズ)の色情報マッチング処理でも、平均色差の閾値、最大色差の閾値よりもあきらかに余裕がある場合は、マッチング処理の結果が平均色差、最大色差の閾値に達するまで、画像Cの画像領域の解像度を小さくする(例えば1/4)。そして、その解像度を小さくした画像Cの画像領域(解像度1/4のデータ)を共通フォーマットとして蓄積することで、共通フォーマットの容量をできる限り低減化することも可能となる。
【0088】
図13は、HDD容量低減動作時の操作表示装置の画面例を示し、高画質化と容量の低減化の何れを優先すべきかを、管理者が操作表示装置110により選択することができる。また、低画質化を選択するのであれば、平均色差・最大色差の閾値を大きくしてもよい。
【0089】
本実施例では、容量と画像データの変換精度(マッチング率)とのバランス(トレードオフ)を選択できることで、利便性が向上する。また、容量と画像データの変換精度(マッチング率)とのバランス(トレードオフ)を多段階に選択できることで、利便性が向上する。画像領域の位置情報や大きさなどを利用することで、編集機能に関する画像変換方法の推定を行うことが可能となる。例えば、集約機能(2in1、4in1など)、変倍機能、トリミング機能、パンチ穴/ステープル跡、ミラー機能などが挙げられる。さらに、画像データを入力する際に、画像データが編集されている場合に効率よく画像変換方法を推定することが可能となる。基本的に、画像変換方法を推定するシステムとしては、できる限り画像処理を施さないで冗長的な画像データのまま画像蓄積手段に保存しておくのが、ベストであるが(すなわち、画像データを入力する際になるべく画像処理を行わない)、例えば画像データのある一部分しか必要でない場合などは、そのほかの余分な部分を保存しておいても容量の無駄遣いであり、セキュリティの観点からもよくないので、編集を行ってから画像データを蓄積したほうがよい。
【実施例3】
【0090】
図14は、実施例3の処理を説明する図である。HDD105の容量を低減するために、画像蓄積動作でHDD105に蓄積された画像E(図14(a))と画像F(図14(b))の容量低減を行う処理を説明する。画像Fは、画像Eよりも色が薄い(彩度が低く、明度が高い)。#14の推定処理以外は、実施例1と同様であるので、実施例3の推定処理のみを以下、説明する。
【0091】
実施例1のように色相分布のみを比較しても、画像データE、Fは全色相に画素が分布し、色相分布のみでは、変換処理を推定することができない。そのため、CPU106はメモリ107に色情報に関する編集履歴情報を展開する。
【0092】
図15は、色情報に関する編集履歴情報を示す。図15に示す編集履歴情報の内、使用率の高い処理から順番に、推定処理を行う。図15より、トナーセーブモードの使用率が最も高いので、一方の画像でトナーセーブを行っていたという観点で、画像Eと画像FのLab空間における分布を詳細に見る。
【0093】
すなわち、トナーセーブを行った原稿では、絵柄部などへのトナーが通常よりも少ないため、低彩度で、白い紙であれば明度が高くなる。画像Eと画像Fの画素全体で比較すると、画像FがEよりも低彩度で明度も高い傾向にあるため、画像Fがトナーセーブモードを行った画像であると推定し、画像EをトナーセーブモードのRGB画像に変換する(図16を参照)。
【0094】
具体的には、メモリ107に展開されている画像Eを、第2の画像処理部104にバス制御装置103を介して転送し、そこで通常のプロッタ出力用の処理(トナーセーブ処理も含む)を行い、CMYK画像に変換し、再びメモリ107に蓄積する。CPU106は、白い紙に出力されたCMYK画像をスキャナで読み込んだときのRGB値を求め(スキャナ自動キャリブレーション機能などを利用する)、そのRGB値と画像Fとで、色情報のマッチング処理を行う(図16を参照)。
【0095】
このマッチング処理で不一致となる場合は、編集履歴のうち、次に使用率の高い処理を候補に挙げる。また、Lab空間の画素の比較結果と編集処理での画素の傾向が合致するようであれば、またその画像に変換し、色情報のマッチング処理を行う。この処理ループを、画像領域が一致するか、不一致回数が所定の閾値に達するまで繰り返す。
【0096】
トナーセーブの次に編集履歴の高いCUD(Color Universal Design)対応は、隣り合った色の組み合わせの視認性が悪い組み合わせである場合に、視認性の良い色へと変換するものである。そこで、画像Eと画像Fともに、各画素で隣接する色同士の色差を求め、画像EとFの色差の大きさを比較する。極端に色差が大きいところが多いようであれば、CUD対応を行っている画像と推定して、CUD対応を行っていない画像をCUD対応に変換を行い、色情報のマッチング処理を行う。
【0097】
本実施例では、使用者の編集履歴を使用することにより、色情報や位置情報などのみで画像変換方法を推定するよりも効率良く推定を行うことが可能となる。
【実施例4】
【0098】
実施例1〜3では、すでに選択された二つの画像に対して、共通フォーマットと差分情報に変換する実施例であるが、本実施例では、その二つの画像を選択する方法に関する実施例である。
【0099】
前述したように、実施例1〜3の動作では、HDD105に多数の画像データが蓄積され、容量が圧迫気味になったときに実施される。そのため、HDD105に蓄積されている多数の画像データの中から、共通フォーマットとなりそうな二つの画像を選択することで、HDD圧迫低減動作の処理時間が短縮される。以下、画像蓄積時とHDD圧迫低減動作時に処理を分けて、実施例4を説明する。
【0100】
(画像蓄積動作時)
前述の通り、コピー動作の#1、#2を行う。#2でメモリ107に蓄積された画像データに対して、CPU106は以下の情報の幾つか(少なくとも1つ以上)をHDD105に併せて記憶させておく。
・作成者情報
操作表示装置110により、使用者情報を入力させるようにしても良いし、バイオメトリクス情報を読み取る読取装置などを拡張バスに取り付けて、バイオメトリクス認証で個人を特定しても良い。また、使用者の名前だけでなく、その使用者が所属しているグループ(チームや課・部など)を併せて記憶してもよい。
・画像中の文字情報
メモリ107に蓄積されている画像データに対して、前述したレイアウト解析とOCR処理などを利用して、タイトルやフッダ/ヘッダなどの文字を抽出し、それをキーワードとして、記憶する。
・画像の種類情報
操作表示装置110により、写真原稿モードや地図モード、蛍光ペンモードなど蓄積する原稿の種類がある程度特定できる情報を記憶する。また、操作表示装置110からの情報でなくても、スキャナから読み取られた、色の使い方(有彩が多いか)、絵柄が多いのか、文字が多いのか、レイアウト情報、空間周波数などの画像がもっている特徴量を用いる。例えば、図17のように類似している画像同士をマップ化しておく。
【0101】
(圧迫低減動作時)
HDDの容量(使用容量)が95%を超えるなど、圧迫低減動作のトリガがCPU106に伝えられると、CPU106は上記したように画像蓄積動作で蓄積した情報をメモリ107に展開し、その情報を基に二つの画像を選択する。
・作成者情報
同じ作成者は同一フォーマットを使用している可能性が高いため、作成者が同一である画像同士で圧迫低減動作を行なうことにする。また、同じ作成者だけでなく、同一チームや同一の課でも同様のフォーマットなどを使用する可能性が高いため、それを優先させる。
・画像中の文字情報
タイトルやフッダ・ヘッダなどが同一であれば、その分、同一のフォーマットである可能性が高いので、同一である画像同士で圧迫低減動作を行なうことにする。
・画像の種類情報
画像の種類が類似であるほど、同一フォーマットである可能性が高いので、同一である画像同士で圧迫低減動作を行なうことにする。すなわち、フォーマットが同じであれば、文書の中身も類似しているという可能性が高い。例えば、図17のように、マップ化していれば、座標の近いもの同士で圧迫低減動作を行なうようにする。CPU106は、上記した3種類の情報を複数、参照できるのであれば、3種類の内、できるだけ共通点が多い画像同士に対して、優先順位を高くして、圧迫低減動作を行なうようにする。
【0102】
画像蓄積手段に蓄積された画像データの数が多い場合、全ての画像データに対して総当り的にマッチング処理を行うと時間がかかる。本実施例では、マッチング処理を行う対象の画像を選択することで、処理時間を短縮することができる。また、タイトルやヘッダ・フッダなどの画像データの文字情報が同じ、もしくは類似語などであれば、同一のテンプレートやフォーマットなどを使用している可能性が高いため、効率良いマッチング処理を行うことが可能となる。また、画像のデータの特徴量が近ければ、同一のテンプレートやフォーマットなどを使用している可能性が高いため、効率よいマッチング処理を行うことが可能となる。さらに、同じ作成者が作成しているドキュメントや、同じグループに所属している人が作成しているファイルであれば、同一のテンプレートやフォーマットなどを使用している可能性が高いため、効率よいマッチング処理を行うことが可能となる。
【0103】
本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明の実施例の機能等を実現するためのプログラムは、ネットワークを介した通信によってサーバから提供されるものでも良い。
【符号の説明】
【0104】
101 読取り装置
102 第1の画像処理部
103 バス制御装置
104 第2の画像処理部
105 HDD
106 CPU
107 メモリ
108 プロッタI/F装置
109 プロッタ装置
110 操作表示装置
111 回線I/F装置
112 外部I/F装置
113 S.B.
114 ROM
115 汎用バス
116 FAX
117 PC
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】特開2008−146104号公報
【特許文献2】特開2008−146104号公報
【特許文献3】特許第3278471号公報
【特許文献4】特開2009−71630号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を入力する画像入力手段と、前記画像を蓄積する画像蓄積手段と、前記画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、前記画像蓄積手段に蓄積された複数の画像間における画像の変換方法を推定する推定手段と、前記領域分割手段により分割された画像領域同士をパターンマッチング処理するマッチング処理手段とを備えた画像処理装置において、前記推定手段は、前記蓄積された第1の画像と第2の画像間における画像の変換方法を推定し、前記第1の画像を前記推定された変換方法により変換し、前記マッチング処理手段は、前記推定された変換方法により変換された前記第1の画像の画像領域と、前記第2の画像の画像領域とをマッチング処理し、マッチング処理で一致した共通の画像領域情報、前記共通の画像領域情報以外の差分情報および前記推定された変換情報を前記画像蓄積手段に蓄積することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記マッチング処理手段は、前記第1、第2の画像の第1の要素同士をマッチング処理する第1のマッチング処理と、前記第1のマッチング処理により一致した画像領域に対して、前記第1、第2の画像の第2の要素同士をマッチング処理する第2のマッチング処理を実行し、前記第2のマッチング処理で不一致である場合に、不一致箇所のみを補正するための補正情報を作成し、前記第1のマッチング処理で一致した共通の画像領域情報、前記共通の画像領域情報以外の差分情報、前記推定された変換情報および前記補正情報を前記画像蓄積手段に蓄積することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2のマッチング処理で不一致の場合に、前記推定された変換方法で変換された第1の画像と、前記第2の画像との不一致箇所の差分情報を前記補正情報とすることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2のマッチング処理で不一致の場合に、前記推定された変換方法で変換された第1の画像を、前記第2の画像に変換する変換式のパラメータを前記補正情報とすることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記マッチング処理手段は、前記第1の画像と第2の画像をマッチング処理した結果に応じて、前記蓄積手段に蓄積する共通の画像領域情報として、前記第1の画像または第2の画像の何れかを選択することを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記マッチング処理手段による処理結果において、マッチング許容範囲よりも余裕がある場合に、前記画像蓄積手段に蓄積する前記共通の画像領域情報を、前記許容範囲内に収まる程度に劣化させることにより、前記画像蓄積手段の容量をさらに低減させることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記推定手段は、色情報を利用して画像の変換方法を推定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記推定手段は、画像領域の位置および/または大きさを利用して画像の変換方法を推定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項9】
使用者の編集履歴情報を蓄積する編集履歴情報蓄積手段を備え、前記推定手段は、前記蓄積された使用者の編集履歴情報を利用して画像の変換方法を推定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記推定手段は、画像を入力するときの編集情報を利用して画像の変換方法を推定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記第1のマッチング処理は、エッジ情報のマッチング処理であり、前記第2のマッチング処理は、色情報のマッチング処理であることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記マッチング処理手段が前記画像蓄積手段に蓄積された画像からマッチング処理対象となる画像を選択する画像選択手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記画像選択手段は、画像の一部の文字情報を利用して選択することを特徴とする請求項12記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記画像選択手段は、画像の原稿種類情報を利用して選択することを特徴とする請求項12記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記画像選択手段は、画像の作成者情報を利用して選択することを特徴とする請求項12記載の画像処理装置。
【請求項16】
画像を入力する画像入力工程と、前記画像を蓄積する画像蓄積工程と、前記画像を複数の領域に分割する領域分割工程と、前記画像蓄積工程に蓄積された複数の画像間における画像の変換方法を推定する推定工程と、前記領域分割工程により分割された画像領域同士をパターンマッチング処理するマッチング処理工程とを備えた画像処理方法において、前記推定工程は、前記蓄積された第1の画像と第2の画像間における画像の変換方法を推定し、前記第1の画像を前記推定された変換方法により変換し、前記マッチング処理工程は、前記推定された変換方法により変換された前記第1の画像の画像領域と、前記第2の画像の画像領域とをマッチング処理し、マッチング処理で一致した共通の画像領域情報、前記共通の画像領域情報以外の差分情報および前記推定された変換情報を前記画像蓄積工程に蓄積することを特徴とする画像処理方法。
【請求項17】
請求項16記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項18】
請求項16記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−180984(P2011−180984A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46674(P2010−46674)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】