説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び記録媒体

【課題】 ハードウェア(HW)構成の描画処理手段を用いて行う予め用意された画像による同じ描画処理を何度も行う印刷ジョブの処理を高速化すること。
【解決手段】 地紋描画コマンドに応じHW描画処理部121’により描画処理し、処理した地紋画像を通常描画処理により得た原稿画像と合成し、バンドメモリ117に保存するとともに、処理した地紋画像を地紋用キャッシュメモリとして中間データメモリ113’に保存し、同じ地紋描画コマンドが挿入された後続するページに対し、描画処理を行うことなく地紋用キャッシュメモリに保存した画像により原稿画像に合成する処理を行うことで、地紋描画という付加機能によって処理時間が長期化することを避け、印刷速度を高速に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷データによって描画処理を行うプリンタ、複合機等の画像処理装置に関し、より詳しくは、通常の描画処理により得られる原稿画像に予め用意された画像による描画処理により得られる画像を合成する処理を行う画像処理装置、画像処理方法、上記画像処理方法を実行するためのプログラム及び該プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器や情報システムの進展により、画像情報の処理や交換が容易にできるようになり、画像情報の役割も大きくなっている。プリンタドライバを搭載したPC(Personal computer)等のホスト装置から送信されてくる印刷データをもとに記録用紙に画像を形成するプリンタ、複合機等の画像形成装置において、高解像度や処理速度向上の要求の高まりは、このような状況が背景にある。
画像形成装置における高解像度化は、不正コピーを防止する技術の必要性を喚起し、ページ一面に特定の地紋パターンを描画し、原稿画像と地紋画像の合成画像を生成する処理をすることが対策として提案されている(特許文献1、参照)。
また、処理速度向上は、画像形成装置の性能の評価に処理時間が大きく影響するということから、重要性がより高いと考えられている課題であり、描画処理において、ソフトウェアによるよりも処理を高速化し得るハードウェアアクセラレータを採用し、この方法の採用により性能を向上させる技術が既に知られている。
【0003】
ところで、地紋の描画は、予め用意された地紋パターンデータをもとに各ページに対する描画処理として普通行うことから、本来の出力対象である原稿画像とは別に発行される描画コマンド(以下、「地紋描画コマンド」という)の指示に従い処理され、原稿画像に合成されるものである。
従来から、地紋描画コマンドにより指示される地紋の描画処理は、原稿画像と共通のソフトウェア構成の描画処理部で行っていたため、プリンタのように限られたCPU(Central Processing Unit)の能力及びメモリ容量となっている現状では、処理速度の向上が困難であった。
この点は、例示した地紋の描画に限らず、予め用意された所定の画像を広い領域もしくは複数ページにわたって描画することが求められる画像処理における共通の問題である。
【0004】
そこで、地紋の描画処理を付加すると、その分多く掛かる処理時間を短くすることを解決課題とし、次に示す先行技術が提案された。
この先行技術は、原稿画像と合成する予め用意された地紋等の所定の画像の描画処理として、用意された地紋等の所定の画像を用いて行う描画処理にハードウェア構成の描画処理手段であるハードウェアアクセラレータを採用するものである。
この先行技術によれば、予め用意された地紋等の所定の画像による処理を指示する描画コマンドに応じハードウェアアクセラレータにより描画処理を行うことで、描画処理を従来よりも高速化できる。
【0005】
しかし、上述のハードウェアアクセラレータによる先行技術では、その描画処理をページ単位で行っており、複数ページよりなる印刷ジョブの各ページに描画コマンドが指示されていると、ページごとに所定の画像による描画を行わなければならない。前記先行技術はこの処理に時間を要する点で、なお改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、予め用意された画像の描画処理に要する時間を短縮することで予め用意された画像を原稿画像に合成する処理を従来よりも高速化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、異なる描画処理手段により原稿画像の描画処理と予め用意された画像の描画処理とをそれぞれ行い、得られた両処理画像の合成画像を生成する画像処理装置であって、少なくとも前記予め用意された画像による描画処理を行う手段はハードウェア構成の描画処理手段であるとともに、前記予め用意された画像の処理画像を保存する保存手段と、異なる原稿画像に対して前記保存手段に保存した処理画像と同じ用意された画像を基に前記合成画像を生成するとき、前記予め用意された画像による描画を行うことなく、前記保存手段に保存した処理画像をもとに前記合成画像を生成する処理を行う制御手段と、を有する画像処理装置である。
本発明は、異なる描画処理手段により原稿画像の描画処理と予め用意された画像の描画処理とをそれぞれ行い、得られた両処理画像の合成画像を生成する画像処理装置における画像処理方法であって、ハードウェア構成の描画処理手段で予め用意された画像の描画処理を行い、前記予め用意された画像の処理画像を保存手段に保存し、異なる原稿画像に対して前記保存手段に保存した処理画像と同じ用意された画像を基に前記合成画像を生成するとき、前記予め用意された画像による描画を行うことなく、前記保存手段に保存した処理画像をもとに前記合成画像を生成する処理を行う画像処理方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予め用意された画像の描画処理に要する時間を短縮できるため、予め用意された画像を原稿画像に合成する処理を従来よりも高速で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の画像処理装置の実施形態に係るプリンタのハードウェア構成を示す図である。
【図2】図1に示したプリンタに搭載したソフトウェアにより構成するコントローラを示すブロック図である。
【図3】図2に示した機能ブロック図のPDL部の通常描画処理に係る構成を示す図である。
【図4】図2に示した機能ブロック図のPDL部の地紋描画処理と原稿画像との合成処理に係る構成を示す図である。
【図5】地紋の描画、原稿画像への合成を手順とする出力画像処理(処理(1))を説明する概念図である。
【図6】地紋用キャッシュメモリへの保存を伴う地紋の描画、原稿画像への合成を手順とする出力画像処理(処理(2))を説明する概念図である。
【図7】地紋用キャッシュメモリに保存された地紋画像の原稿画像への合成を手順とする出力画像処理(処理(3))を説明する概念図である。
【図8】PDL部(図4)が描画コマンドに従って行う出力画像処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
以下に示す実施形態は、本発明の画像処理装置をプリンタ、即ち、印刷データをもとに描画されたCMYK、各色成分のプリント出力用画像データ(以下、単に「出力用データ」ともいう)によって所定解像度の画素ドットの出力をすることでカラー画像を形成する装置に実施した例を示す。
また、描画処理によって出力用データを生成する手段は、後記で詳述するが、ソフトウェア構成の処理手段のほか、併用するハードウェア構成の処理手段を用いて、地紋等の予め用意された画像による描画処理を行うことを前提とする。
【0011】
[ハードウェア構成の概要]
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタのハードウェア構成を示す図である。
同図に示す画像処理装置としてのプリンタ20は、プリンタ全体を制御するコントローラ10と、描画された出力用データをもとに用紙に画素ドットの出力をするプリンタエンジン23と、表示部と入力キー等の操作部を備えユーザーインターフェースとしての機能を提供する操作パネル24と、描画処理に併用する外付けのHWA(ハードウェアアクセラレータ)21を有する。
【0012】
コントローラ10は、ソフトウェアプログラムの命令を実行するためのCPU(Central Processing Unit)11と、コントローラ10を動作させるためにCPU11によって使用される制御プログラム、制御用データ等を格納するROM(Read Only Memory)12と、前記制御プログラムによって生成される描画された出力用画像データなどを一時的に保存するページ(フレーム)メモリ或いはソフトウェアプログラムの動作に必要なデータを保存するワークメモリとして利用するRAM(Random Access Memory)13と、機器に依存する処理条件等の設定データなどを保存しておく不揮発性メモリであるNVRAM(Non Volatile RAM)14を構成要素として有する。つまり、CPU11、ROM12、RAM13の各要素よりなるコンピュータをコントローラ10として機能させる。
【0013】
さらに、コントローラ10は、プリンタエンジン23との間でデータを交換するためのエンジンインタフェース(I/F)16と、操作パネル24との間でデータを交換するための操作パネルI/F17と、ネットワーク上に接続された、プリンタドライバ等の印刷データを作成する手段を搭載したホスト装置としてのPC(以下、「ホストPC」という)40との間でデータを交換するためのネットワークI/F15を構成要素として有する。
なお、コントローラ10を構成する上記の要素は、それぞれ内部バス19を介して接続されている。
また、ネットワークI/F15と通信手段(不図示)で接続したホスト装置としてのホストPC40と、画像処理装置としてのプリンタ20とにより構成するシステムを画像処理システムという。
【0014】
コントローラ10は、ホストPC40から受信したPDL(ページ記述言語)による印刷データにもとづいて、各種の変換処理を含む描画処理を内部で行うとともに、HWAI/F18を介してHWA21にも描画処理の一部を行わせ、また、描画処理により得られるプリント出力に用いる画像データをプリンタエンジン23に渡し出力を行わせる。RAM13は、ホストPC40からの印刷データ、該印刷データから生成される中間データ形式の画像データ、ラスタ形式のピクセルデータ、その後段の処理で生成される印刷出力に用いる画像データを記憶する。
プリンタ20は、ROM12やNVRAM14などの記憶装置に格納された制御プログラム及び制御や処理の動作条件に係る設定情報を読出し、CPU11の作業メモリ領域を提供するRAM13のメモリ領域に展開し、またRAM13を画像処理の作業領域として利用することによって、後述する図2〜図4に示す各機能を実現する手段を構成する。
【0015】
[ソフトウェア構成]
図2は、図1に示したプリンタ20に搭載したソフトウェアにより構成するコントローラ10を示すブロック図である。
ホストPC40は、所定のプリンタドライバを使用して、アプリケーションによって作成もしくは処理した文書を複数の描画コマンドからなる印刷データに変換して、プリンタ20に送信し、プリント出力(印刷)を要求する。上記描画コマンドは、通常、文字、イメージ、グラフィックの各描画を指示するコマンドである。また、上記印刷データは、PostScript(登録商標)、PCL(登録商標)、RPDL(登録商標)など、各種のPDLで記述されたデータで表現される。
【0016】
コントローラ10は、コントローラ全体を制御する機能ブロックとしてプリンタ制御システム部104を有する。また、コントローラ10内のモジュールの構成としては、プリンタ制御システム部104の制御下で、画像処理システムを構成するホストPC40とデータ交換を行うネットワークI/F部102と、操作パネル24とのデータ交換によりユーザーに対する表示を行いかつユーザーの操作による入力を受付ける操作パネルI/F部103と、受信した印刷データを解析して、解析結果として得られる描画コマンドに従いプリント出力用の画像データ等を生成するPDL部105,105’と、プリンタエンジン23に対しプリント出力を指示し、プリント出力に用いる画像データを含む各種出力条件の設定データなどを送信するエンジンI/F部106を有する。また、PDL部105,105’の制御下で描画処理を行う外付けのHWA(ハードウェアアクセラレータ)21を動作させるためのHWAI/F部107を有する。
【0017】
また、プリンタ制御システム部104は、現行の処理対象となっている印刷ジョブに対する処理の進行を管理し、設定が変更可能なプリンタの機器条件を管理する機能(不図示)を有する。また、この管理機能の一環として、把握している印刷ジョブの処理状況や機器の状態を必要に応じ操作パネル24の表示部等を通じてユーザーに報知する機能を持つ。
こうした印刷ジョブ等の管理機能は、画像処理装置としてのプリンタ20とホスト装置としてのホストPC40をネットワークで接続する画像処理システムを構成する場合にも機能することが必要である。なお、プリンタ等の画像処理装置とこれを利用するホストPC等の機器で構成する従来のクライアントサーバシステムにおいて、このような管理機能は、ユーザーインターフェースの基本機能として装備される技術である。
【0018】
[描画処理手段に係る構成]
この実施形態のプリンタ20は、本来の出力対象である原稿画像とは別に、予め用意された画像による描画処理を行い、両者の合成画像をプリント出力用の画像として生成する機能を有する。
この出力用画像の生成機能は、コントローラ10内のPDL部105,105’の持つ処理機能の一つとし、また、本実施形態ではハードウェア構成の外付けの描画処理手段を用いることにより実現する。なお、予め用意される上記画像は、例えば、不正コピーを防止するために用いられている地紋画像であり、以下では、地紋画像が地紋パターン及び抑止文字列(例えば、「NO COPY」の文字列)である場合を例にした実施形態について述べる。
【0019】
ただ、この地紋画像を合成する出力用画像の生成機能は、地紋描画コマンドを付加した印刷ジョブを受付けたときにPDL部105,105’に対応可能な処理手段を構成することにより実現できればよく、印刷データに付された処理対象画像によるだけの通常出力画像の描画(以下、「通常描画」という)コマンドに対しては、地紋描画に係る機能を常時構成する必要はない。
よって、本実施形態では、通常描画コマンドのみの印刷ジョブ、地紋描画コマンドを付加した印刷ジョブを受付けたときに、それぞれのジョブに対応して処理を行うことを可能とする描画処理用の手段(後述するPDL部)をソフトウェアにより構成する。
そこで、通常描画コマンドに対応する処理機能と地紋描画コマンドに対応する処理機能とに分けて、その構成例を次に示す。
【0020】
〈通常描画機能〉
図2に示したコントローラ10のプリンタ制御システム部104の制御下で動作するPDL部105,105’は、ホストPC40がプリント出力を要求して送信してくる上記したような各種PDLで記述された印刷データをもとに描画処理を行い、プリント出力用の画像データを生成する。
PDL部105,105’は、通常描画処理を行う際、従来の描画処理と同様に、外付けで備えたHWA(ハードウェアアクセラレータ)21(図2)を利用して、印刷データに付された処理対象画像の描画処理の一部を、ソフトウェアによる描画処理から分岐して行う(後記で詳述)。
【0021】
図3は、図2に示した機能ブロック図のPDL部の通常描画処理に係る構成を示す図である。
同図に示すPDL部105は、PDLで記述された印刷データの構文解析をPDLの種類ごとに行うPDLパーサ部108と、PDLの解析結果として得られる描画コマンドに従い、プリント出力用の画像データを生成する描画コアモジュール110を構成要素として有する。なお、PDLパーサ部108が受け付ける描画コマンドは、テキスト、イメージ、ベクターグラフィックスなどの描画オブジェクトが指示された通常出力画像の描画コマンドのほか、地紋等の描画コマンドを受付ける。
ただ、通常描画の場合、描画コアモジュール110がPDLパーサ部108から受け取る描画コマンドは、通常描画に必要なコマンドだけであり、また、描画コアモジュール110の構成も通常描画処理に必要なモジュールだけが用意される。
【0022】
よって、図3に示すように、描画コアモジュール110は、PDLパーサ部108から描画コマンドや描画設定情報を受け取るためのI/Fである描画モジュールI/F部111と、描画モジュールI/F部111を通して受け取った描画コマンド、描画設定情報(色や透過設定等)等を中間データとして保存する中間データ保存部112と、中間データの保存先のメモリである中間データメモリ113と、描画用の中間データにもとづいて、プリント出力用の画像データをレンダリングするソフトウェア構成の描画処理部114と、中間データ保存部112の指示に従い、上記HWAとしてのHW描画処理部121を制御するHW描画処理制御部118と、描画処理部114及びHW描画処理部121の描画結果のデータの保存先であるバンドメモリ117を有する。
【0023】
上記のように、通常描画処理に必要な要素を構成する描画コアモジュール110において、ホストPC40より入力された印刷データを解析するPDLパーサ部108により解析された描画コマンドを受け取る描画モジュールI/F部111は、受け取った描画コマンドを中間データ保存部112へと受け継ぐ。
中間データ保存部112は、受け継いだ描画コマンドのうち、HW描画処理部121を用いて処理をする所定コマンドとそれ以外のコマンドに描画処理を振り分ける。
前者の描画コマンドに対しては、HW描画処理制御部118を介してHW描画処理部121を制御することにより、所定の描画コマンドの指示に従って、ハードウェアによる描画処理を行うようにする。なお、通常描画においては、描画コマンドは、普通、RGB系のデータにより表現されるので、描画処理においては、出力画像を表現するCMYK系のデータに変換する処理を伴う。
【0024】
また、後者の描画コマンドに対しては、描画に必要な中間データを生成する処理を行い、生成した中間データを中間データメモリ113に保存し、この中間データをもとに描画処理部114がハードウェアによる描画処理を行うようにする。
なお、この実施形態では、中間データ保存部112は、描画処理を振り分ける前に、ハードウェアとソフトウェアによるものを含め全描画コマンドの中間データを生成し、中間データメモリ113に保存し、その後、バンド処理によるので、1バンド分描画するための中間データを保存した後、HW描画処理制御部118を介してHW描画処理部121によってバンドメモリ117にレンダリングすることで描画処理を行う。ハードウェアでレンダリングしたほうが性能がよいため、望ましくは、ソフトウェアによる描画処理部114の処理はできるだけ少なくする。ただ、ハードウェアによる処理は、単純な描画しかできないため、どうしてもハードウェアで描画できない場合は描画処理部114のソフトウェア処理によって通常描画時のレンダリングを行う。
【0025】
〈地紋描画機能〉
地紋描画コマンドに対応する処理機能に係る実施形態を述べる。
ここでは、地紋パターン等の予め用意された画像を本来の出力対象である原稿画像に合成することを指示する地紋描画コマンドを受け付けたときに、地紋パターン等の画像をハードウェア構成の描画処理手段により描画し、上記〈通常描画機能〉で説明した描画処理を経て得られる原稿画像と合成する処理を行う。
このため、本実施形態のPDL部では、上記〈通常描画機能〉において説明した所定の描画コマンドに対応して行っていたHW描画処理部及びこのHW描画処理部を利用する描画処理と関連する描画コアモジュール内のソフトウェア構成の処理モジュールにおいて、予め用意された地紋画像を描画し、原稿画像に合成する処理に必要な要素が加わる。
【0026】
図4は、図2に示した機能ブロック図のPDL部の地紋描画処理と原稿画像との合成処理に係る構成を示す図である。
同図に示すPDL部105’は、PDLで記述された印刷データの構文解析を行うPDLパーサ部108’と、PDLの解析結果として得られる各種描画コマンドに従い、プリント出力用の画像データを生成する描画コアモジュール110’を構成要素として有する。なお、PDLパーサ部108’が受け付ける描画コマンドは、テキスト、イメージ、ベクターグラフィックスなどの描画オブジェクトが指示された通常出力画像の描画コマンドのほか、地紋等の描画コマンドを受付ける。
【0027】
本実施形態では、PDLパーサ部108’が描画コマンドの1つとして受付ける地紋描画コマンドは、印刷データに指示されるコマンドの一部として挿入される形態をとるほか、印刷データに後付けでプリンタ側の操作により入力する形態をとってもよい。例えば、操作パネル24からユーザーの操作で地紋描画コマンドを入力する方法によって実施することができる。この場合、下記のように、地紋画像を予め用意し、その画像を用いて地紋描画を行う動作モードの設定操作を行えるようにすると、容易に実施が可能になる。
【0028】
また、地紋描画の動作をサポートするために、本実施形態のPDLパーサ部108’は、予め用意された地紋画像を管理する。地紋画像は、地紋描画コマンドに応じて提供される情報であり、複数種類のコマンドに対応する場合、各コマンドに対応付けて、例えば、ROM12に保存しておく。PDLパーサ部108’は、コントローラ10の起動時に、ROM12から保存された地紋画像を取得し、PDL部105’内で管理する。
PDLパーサ部108’は、地紋描画コマンドを解析し、そこに付随するデータにより指示される地紋画像を描画コマンドとともに描画コアモジュール110’に渡す。
なお、地紋画像が描画コマンドに直接付けられた形の印刷要求に対しては、PDLパーサ部108’は、描画コマンドに付随された地紋画像を描画コマンドとともに描画コアモジュール110’に渡す。
【0029】
描画コアモジュール110’は、PDLパーサ部108’から渡される地紋描画コマンドが挿入された印刷ジョブの処理に対応すべく、描画コアモジュール110’における構成も通常描画処理に必要なモジュールに加え、地紋描画と原稿画像との合成に必要なモジュールを用意する。
即ち、図4に示すように、描画コアモジュール110’は、PDLパーサ部108’から描画コマンドや描画設定情報を受け取るためのI/Fである描画モジュールI/F部111’と、描画モジュールI/F部111’を通して受け取った描画コマンド、描画設定情報(色や透過設定等)等を中間データとして保存する中間データ保存部112’と、中間データの保存先のメモリである中間データメモリ113’と、描画用の中間データにもとづいて、プリント出力用の画像データをレンダリングするソフトウェア構成の描画処理部114と、描画モジュールI/F部111’を通して受け取った地紋描画コマンド、描画設定情報等をもとに地紋用中間データを生成する地紋用中間データ生成部115と、地紋用中間データの保存先のメモリである地紋用中間データメモリ116と、中間データ保存部112’の指示に従い、上記HWAとしてのHW描画処理部121’を制御するHW描画処理制御部118’と、HW描画処理部121’と、描画処理部114及びHW描画処理部121’の描画結果のデータの保存先であるバンドメモリ117を要素とした構成で対応する。
【0030】
なお、図4に示した外付けのHWA21(図2)としてのHW描画処理部121’は、上記〈通常描画機能〉において説明した所定の描画コマンドの指示に従う描画処理と、地紋描画コマンドの指示に従う描画処理のそれぞれに対応して処理を行う。
つまり、HW描画処理部121’は、印刷データに付されたハードウェアによる描画処理を適用する所定の描画コマンドにより通常描画を行う際、中間データメモリ113’に保存されたデータをもとに当該描画コマンドに対応するとともに、地紋描画コマンドにより地紋等の描画を行う際、地紋用中間データメモリ116に保存されたデータをもとにハードウェアによる当該描画処理のコマンドに対応する。なお、地紋描画においては、描画に用いる地紋画像は、CMYK系のデータにより予め用意できるので、描画処理においては、通常描画におけるようにRGB系からCMYK系のデータに変換する処理は必要としない。
また、HW描画処理部121’により処理されたプリント出力用の画像データは、キャッシュメモリに保存することが可能で、本実施形態では、中間データメモリ113’を地紋用キャッシュメモリとして機能させ、中間データ保存部112’の管理下で地紋用キャッシュメモリを利用する動作を行う(下記[地紋用キャッシュメモリの利用]で詳述)。
【0031】
上記のように、地紋描画処理に必要な要素を付加し構成する描画コアモジュール110’において、ホストPC40より入力された印刷データを解析するPDLパーサ部108’により解析された描画コマンドを受け取る描画モジュールI/F部111’は、受け取った描画コマンドを中間データ保存部112’及び地紋用中間データ生成部115へと受け継ぐ。
中間データ保存部112’は、受け継いだ描画コマンドのうち、HW描画処理部121’を用いて処理をする所定コマンドとそれ以外のコマンドに、即ち、ハードウェアによる描画処理とソフトウェアによる描画処理へと処理を振り分ける。
地紋描画コマンドが挿入された印刷ジョブのうち、原稿画像の描画処理については、通常の描画処理であり、上記〈通常描画機能〉において説明した通り、描画コマンドによって振り分け、所定の描画コマンドに対しハードウェアによる描画処理を行い、それ以外に対しソフトウェアによる描画処理を行う。なお、この通常描画処理の詳細は、先の説明を参照することとし、ここでは、記載を省略する。
【0032】
また、原稿画像に合成する地紋の描画処理については、印刷ジョブに挿入された地紋描画コマンドに対応し、ハードウェアによる処理を行う。
地紋描画コマンドに対する描画処理は、次の手順に従う。
地紋用中間データ生成部115は、描画モジュールI/F部111’を通して受け取った地紋描画コマンド、描画設定情報等をもとに地紋用中間データを生成し、生成した地紋用中間データを地紋用中間データの保存先のメモリである地紋用中間データメモリ116に保存する。
他方、中間データ保存部112’は、描画処理を振り分ける前に、全描画コマンドについて、コマンドごとに、適用する処理を判断する。その際、地紋描画コマンドに対しては、地紋描画処理に必要な操作として、HW描画処理制御部118’へ地紋用中間データメモリ116に保存された地紋用中間データ(予め用意された地紋画像など)をアクセスするためのデータ等の制御用データを渡し、ハードウェアによる地紋画像の描画処理と原稿画像との合成処理を指示する。
【0033】
HW描画処理部121’は、HW描画処理制御部118’の制御下で、地紋用中間データメモリ116に保存された地紋画像等のデータを用いて地紋描画処理と原稿画像との合成処理を行う。なお、この処理の際、描画処理の結果として得られる地紋画像を中間データ保存部112’の指示の下に中間データメモリ113’の地紋用キャッシュメモリに保存する。
なお、地紋パターンの描画結果を地紋用キャッシュメモリへ保存する処理、及び地紋用キャッシュメモリの利用に係る処理は、中間データ保存部112’により管理される(下記[地紋用キャッシュメモリの利用]で詳述)。
【0034】
上記のように、印刷(PDL)データに含まれる各描画コマンドのうちHW描画処理部121’で処理が可能な地紋描画コマンドに従い、HW描画処理部121’が持つ上記の処理機能により、地紋パターンを原稿画像に合成したプリント出力データの生成が可能となり、従来技術においてソフトウェア構成の描画処理手段を用いて行う地紋描画処理に比べ、処理の高速化が実現できる。
【0035】
[地紋用キャッシュメモリの利用]
上記のように、予め用意された地紋画像をもとに、原稿画像に合成される画像をハードウェア構成の描画処理手段により処理することで、ソフトウェア構成の描画処理手段を用いて行う地紋描画処理に比べ、処理の高速化が実現できる。
しかし、印刷ジョブ中の全ページに同じ地紋描画コマンドが指示され、各ページの描画処理を行う場合、ページごとに上記地紋描画処理を行うと、相当の処理時間が掛かってしまう。
特に、背景の地紋パターンと抑止文字列(例えば、不正コピー禁止の文書であることを示す文字列「NO COPY」の文字列)を合わせて描画する地紋描画コマンドが指示されたときに行う処理(後記、図5の処理手順の説明、参照)において、処理時間の長期化の問題が顕著になる。
【0036】
そこで、地紋描画コマンドに応じ描画処理し、処理した画像を地紋用キャッシュメモリに保存し、同じ所定描画コマンドが挿入された後続するページに対し、描画処理を行うことなく地紋用キャッシュメモリに保存した画像により原稿画像に合成する処理を行う。
地紋用キャッシュメモリを利用するためには、地紋用キャッシュメモリを作成する過程で、処理対象の地紋画像のデータをキャッシュするためのメモリ容量を確保し、描画処理の際に確保したメモリに処理結果として得られた当該地紋画像を保存する処理を行い、また、地紋用キャッシュメモリを使用する過程で、キャッシュの対象となった地紋描画コマンドと同じコマンドに対し描画処理によらずに地紋用キャッシュメモリからの地紋画像を取得し、原稿画像に合成する処理を行う必要がある。
【0037】
上記地紋用キャッシュメモリを利用する過程で行う処理は、描画コアモジュール110’(図4)が受付けた印刷(PDL)データの描画コマンド全体を管理する中間データ保存部112’によって管理される。
中間データ保存部112’は、受付けた印刷データに付された描画コマンドに対する処理をページ単位で管理するが、地紋描画コマンドの挿入された描画コマンド群よりなる印刷データに対応する場合、地紋用キャッシュメモリ機能を利用するために必要な条件を確認しながら各描画コマンドに対する処理過程を管理する。
【0038】
地紋用キャッシュメモリを構成するために必要な条件の一つは、地紋用キャッシュメモリを作成するときに、地紋用キャッシュメモリに用いるメモリ容量があることで、描画処理に利用可能な所定容量のメモリ領域がRAM13(図1)の一部から割り当てられ、そのメモリ領域を通常描画の中間データ及び地紋用中間データに使用した上で、地紋用キャッシュメモリ用のメモリ領域が確保できることであり、この条件の有無を確認することが必要である。つまり、ページごとに中間データメモリ113’及び地紋用中間データメモリ116に保存しなければならない上記中間データのメモリ領域の確保を前提に、地紋用キャッシュメモリが作成できる上記条件の有無を確認する。
また、地紋用キャッシュメモリの地紋画像を使用するときには、先行するページで描画処理を行い地紋用キャッシュメモリにデータを保存しても、現行のページの中間データの保存に必要なメモリ容量を確保するために削除することがあり得るので、地紋用キャッシュメモリがあることが条件となり、この条件の有無を確認することが必要である。
【0039】
上記必要条件の有無をそれぞれ確認した結果に従って、異なるそれぞれの条件に適応する処理として、以下に示す処理(1)〜(3)を選択する。
処理(1): 地紋用キャッシュメモリが作成されていない状態にあって、地紋用キャッシュメモリ用のメモリ領域が確保できなければ、地紋用キャッシュメモリを作成できないので、地紋描画処理のみを行う(先行技術の動作)。
処理(2): 地紋用キャッシュメモリが作成されていない状態にあって、地紋用キャッシュメモリ用のメモリ領域が確保できれば、地紋描画処理を行うとともに、地紋用キャッシュメモリを作成し、そこに描画処理により得た地紋画像を保存する。
処理(3): 地紋用キャッシュメモリが作成されている状態にあって、地紋の描画処理を行うことなく地紋用キャッシュメモリに保存した地紋画像を使用する。
なお、上記処理(1)〜(3)により得られる地紋画像を原稿画像と合成する処理自体は、処理(1)〜(3)いずれに対しても変わらない。
【0040】
ここで、上記処理(1)〜(3)の処理に従って、予め用意される地紋画像をもとに描画処理し得られる地紋画像を原稿画像へ合成する出力画像処理の手順について、処理過程における画像の遷移図を参照して具体的に説明する。
なお、ここでは、地紋画像は、不正コピー時に浮き上がるページ全面に適用する、背景パターンともいわれる地紋パターン及び不正コピー禁止の文書であることを示す抑止文字列よりなる。
【0041】
〈処理(1)〉
処理(1)は、地紋用キャッシュメモリを作成できず、地紋描画処理のみを行うもので、先行技術の動作と同じである。
図5は、処理(1)における、地紋の描画、原稿画像への合成を手順とする出力画像処理を説明する概念図である。同図において、D1〜D4は、ページメモリ(バンド処理の場合、バンドメモリ)上の出力用データの画像を概念的に表したものである。また、処理は、同図中に記す(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(7)の手順で、以下に説明する処理を行う。
(1)描画処理を行う前は、図5のD1に示すように、ページメモリ上には画像がない状態である。ここで、処理対象の印刷データを解析し、得られた描画コマンドに従い本来の出力対象である原稿画像の描画処理を行い、図5のD2に示すように、ページメモリ上に画像を描画する。
(2)次に、地紋の描画コマンドに従い抑止文字列「NO COPY」を描画する領域以外の領域をクリップする。
(3)上記(2)でクリップした領域に対し、地紋描画コマンドに指示された背景の地紋パターンを描画する。
【0042】
(4)上記(3)で描画した背景の地紋パターンと上記(1)で描画した原稿画像をORで合成する。合成結果を図5のD3に示す。なお、D3中の抑止文字列を描画する領域は、白抜きの「NO COPY」となる。
(5)次に、描画コマンドに従い抑止文字列「NO COPY」を描画する領域をクリップする。
(6)上記(5)でクリップした領域に対し、抑止文字列「NO COPY」を描画する。つまり、D3中の白抜きの「NO COPY」の抑止文字列を描画する。
(7)上記(4)で合成した画像(図5のD3)と上記(6)で描画した抑止文字列「NO COPY」とをORで合成する。
図5のD4に示す合成結果が所期の出力画像として得られる。
【0043】
〈処理(2)〉
処理(2)は、地紋用キャッシュメモリが作成されていない状態で、地紋用キャッシュメモリ用のメモリ領域を確保し、地紋描画処理を行うとともに、描画した地紋画像を地紋用キャッシュメモリに保存する処理を行う。
図6は、処理(2)における、地紋の描画、原稿画像への合成を手順とする出力画像処理を説明する概念図である。同図において、D1,D2,D4は、ページメモリ(バンド処理の場合、バンドメモリ)上の出力用データの画像を概念的に表したもので、また、D11,D12,D13は、処理過程における背景の地紋パターンを表したものである。また処理は、下記〈1〉→〈2〉→〈3〉→〈4〉→〈5〉→〈6〉の手順で行う。
【0044】
〈1〉描画処理を行う前は、図6のD1に示すように、ページメモリ上には画像がない状態である。ここで、処理対象の印刷データを解析し、得られた描画コマンドに従い本来の出力対象である原稿画像の描画処理を行い、図6のD2に示すように、ページメモリ上に画像を描画する。
〈2〉次に、1ページ分のページキャッシュのメモリ領域D11の取得を試み、取得できれば、メモリ領域D11を確保する。
〈3〉上記〈2〉で確保したメモリ領域D11に地紋描画コマンドに指示された背景の地紋パターンを描画する。描画結果は、図6のD12のようになる。
〈4〉上記〈3〉で背景の地紋パターンを描画したメモリ領域D12に地紋の描画コマンドに指示された抑止文字列を描画する。このとき、下地に原稿画像が描画されていない状態なので背景の地紋パターン、抑止文字列ともに上書きの描画でよいためクリップは不要となる。描画結果は、図6のD13のようになる。
〈5〉上記〈1〉で描画した原稿画像(図6のD2)と上記〈4〉で描画した地紋画像(図6のD13)とをORで合成する。図6のD4に示す合成結果が所期の出力画像として得られる。
〈6〉上記〈4〉で描画した地紋画像(図6のD13)を地紋用キャッシュメモリに保存する。
【0045】
〈処理(3)〉
処理(3)は、地紋用キャッシュメモリが作成されている状態で、描画処理を行うことなく地紋用キャッシュメモリに保存した地紋画像を使用して原稿画像との合成画像を得る処理を行う。
図7は、処理(3)における、地紋用キャッシュメモリに保存された地紋画像の原稿画像への合成を手順とする出力画像処理を説明する概念図である。同図において、D1,D2,D4は、ページメモリ(バンド処理の場合、バンドメモリ)上の出力用データの画像を概念的に表したもので、また、D13は、地紋用キャッシュメモリに保存された地紋画像を表したものである。また処理は、下記〔1〕→〔2〕の手順で行う。
【0046】
〔1〕描画処理を行う前は、図7のD1に示すように、ページメモリ上には画像がない状態である。ここで、処理対象の印刷データを解析し、得られた描画コマンドに従い本来の出力対象である原稿画像の描画処理を行い、図7のD2に示すように、ページメモリ上に画像を描画する。
〔2〕次に、上記〔1〕で描画した原稿画像(図7のD2)と、先行するページの描画処理の際に地紋用キャッシュメモリを作成し、キャッシュとして保存された地紋画像(図6の〈6〉の説明、参照)、即ち、地紋描画コマンドに指示された背景の地紋パターンに抑止文字列を上書きで描画した画像(図7のD13)とをORで合成する。図7のD4に示す合成結果が所期の出力画像として得られる。
【0047】
[出力画像処理手順]
次に、印刷データの入力時にPDL部(図4)が描画コマンドに従って行う出力画像処理の手順について説明する。
以下に示す処理手順は、受付けた印刷データの描画コマンド群中に挿入された地紋描画コマンドに対応して出力画像処理を行う際、地紋用キャッシュメモリ機能を利用するために必要とする上述の条件、即ち、通常描画用中間データ及び地紋描画用中間データのメモリ領域の確保を前提とし、ページごとに使用し得る地紋用キャッシュメモリがあるか、或いは地紋用キャッシュメモリが作成可能であるか、といった条件を確認し、確認した結果に従って、それぞれに適応する処理として、上記処理(1)〜(3)を選択し、処理を実行する手順である。
【0048】
図8は、PDL部が描画コマンドに従って行う出力画像処理のフローを示す図である。
図8に示す処理フローは、プリンタ制御システム部104の制御下で動作するPDL部105,105’の描画コアモジュール110,110’が行う処理であり、印刷ジョブを受け付けたタイミング、或いは操作パネル24から受付けた印刷ジョブに対し地紋描画等の処理条件を設定できる機能を持つ機器であれば、操作パネル24で付加的にこの設定が行われ、処理の開始が指示されたタイミングで起動される。
【0049】
この処理フローが起動されると、先ず、印刷データを解析するPDLパーサ部108,108’により解析された描画コマンドを一つずつ描画モジュールI/F部111,111’が受け取り(ステップS101)、中間データ保存部112,112’及び地紋用中間データ生成部115へそれぞれが処理の対象とする描画コマンドを受け継ぐ。
中間データ保存部112,112’は、順次受け継ぐ、通常の描画コマンド又は地紋描画コマンドに対する処理として、描画に必要な中間データを生成する処理を行うが、その処理を行う前に、生成する中間データを保存する容量がメモリにあるか否かを確認する(ステップS102)。
【0050】
このメモリ容量の確認は、中間データと地紋用キャッシュデータを保存するために、両方に共通の所定容量のメモリ領域が割り当てられているからで、受付けた先行する描画コマンド、地紋用キャッシュデータによって既にこの領域が使用されている場合、現行の描画コマンドにより生成される中間データにより割り当てられた容量を越える危険性があり、越えないように管理するために行う。なお、本実施形態では、地紋用キャッシュメモリを作成しない場合には、割り当てられた所定のメモリ容量が足りなくなることはない、つまり、中間データを保存するために必要な容量は確保できる仕様となっているものとする。
ここで行うメモリ容量を確認する処理は、既にメモリ領域を使用しているデータ量は分かっているので、このデータ量に、現行の描画コマンドの種類等からこのコマンドにより生成される中間データの量を予測し、得られるデータ量を加え、加えたデータ量が割り当てられた所定のメモリ容量をもとに定めた許容量と比較することで、必要なメモリ容量の有無を判断することが可能である。
【0051】
ステップS102で中間データを保存する容量がメモリにない場合(ステップS102-NO)、作成されている地紋用キャッシュメモリを削除する(ステップS104)。本実施形態では、地紋用キャッシュメモリの削除により、中間データを保存するためのメモリ容量が確保できるので、地紋用キャッシュメモリの削除後、現行の描画コマンドによる描画に必要な中間データを生成する処理を行う(ステップS103)。
他方、ステップS102で中間データを保存する容量がメモリにある場合(ステップS102-YES)、直ちに現行の描画コマンドによる描画に必要な中間データを生成する処理を行う(ステップS103)。
ステップS103で現行の描画コマンドに対する中間データの生成処理を終えた後、現行ページの全描画コマンドの中間データの生成処理を終えたか否かを確認し、(ステップS105)、終えていなければ(ステップS105-NO)、ステップS101に戻し、次の描画コマンドに対する処理を行う。
【0052】
また、ステップS105で、現行ページの全描画コマンドの中間データの生成処理を終えたことが確認できれば(ステップS105-YES)、次に、地紋用キャッシュメモリを利用した地紋描画が可能な描画処理を行う出力画像処理に移行する。
移行後に先ず、地紋用キャッシュメモリが作成済みであるか否かを確認する(ステップS106)。
ここで、地紋用キャッシュメモリが作成済みであれば(ステップS106-YES)、上記〈処理(3)の処理、即ち、描画処理を行うことなく地紋用キャッシュメモリに保存した地紋画像を使用して原稿画像と合成し、得られる画像を描画結果としてページメモリに保存し(ステップS107)、この処理フローを終了する。
【0053】
他方、ステップS106で、地紋用キャッシュメモリが作成済みでなければ(ステップS106-NO)、地紋描画処理を行う際に地紋用キャッシュメモリを作成することを予定し、そのための条件として、次に、作成予定の地紋用キャッシュメモリ分の容量がメモリにあるか否かを確認する(ステップS108)。
ここで行うメモリ容量を確認する処理は、既にメモリ領域を使用している中間データの量は分かっているので、このデータ量に、作成予定の地紋用キャッシュメモリ分の容量を予測し、得られるデータ量を加え、加えたデータ量が割り当てられ所定のメモリ容量をもとに定めた許容量と比較することで、必要なメモリ容量の有無を判断することが可能である。
【0054】
ステップS108で地紋用キャッシュメモリを作成するだけの容量がメモリにある場合(ステップS108-YES)、上記〈処理(2)の処理、即ち、地紋描画処理を行い、描画した地紋画像を用いて原稿画像と合成し、得られる画像を描画結果としてページメモリに保存するとともに、描画した地紋画像を地紋用キャッシュメモリに保存し(ステップS109)、この処理フローを終了する。
他方、ステップS108で地紋用キャッシュメモリを作成するだけの容量がメモリにない場合(ステップS108-NO)、上記〈処理(1)の処理、即ち、地紋用キャッシュメモリを作成できないので、地紋描画処理のみを行い、描画した地紋画像を用いて原稿画像と合成し、得られる画像を描画結果としてページメモリに保存し(ステップS110)、この処理フローを終了する。
【0055】
上記のように、図8に例示した出力画像処理のフローによると、地紋描画コマンドに応じ描画処理し、処理した画像を地紋用キャッシュメモリに保存し、同じ所定描画コマンドが挿入された後続するページに対し、描画処理を行うことなく地紋用キャッシュメモリに保存した画像により原稿画像に合成する処理を行うことで、地紋描画という付加機能によって処理時間が長期化することをできるだけ避け、印刷速度を高速に保つという要求に応えることができる。
また、地紋描画コマンドに応じる描画処理をハードウェア構成の描画処理手段により行った上に、地紋用キャッシュメモリを利用することで、先行技術におけるよりさらに印刷速度の高速化を図ることができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、原稿画像に合成するパターン画像を地紋パターンとする描画処理を例にしたが、地紋パターンを描画する実施形態に限らず、予め用意された所定のパターン画像を広い領域もしくは複数ページにわたって描画することが求められる画像処理装置であれば、任意のパターン画像に適用し実施してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10・・コントローラ、11・・CPU、12・・ROM、13・・RAM、14・・NVRAM、15・・ネットワークI/F、16・・エンジンI/F、17・・操作パネルI/F、18・・HWAI/F、20・・プリンタ、21・・HWA、23・・プリンタエンジン、24・・操作パネル、40・・ホストPC、102・・ネットワークI/F部、103・・操作パネルI/F部、104・・プリンタ制御システム部、105,105’・・PDL部、106・・エンジンI/F部、107・・HWAI/F部、108,108’・・PDLパーサ部、110,110’・・描画コアモジュール、111,111’・・描画モジュールI/F部、112,112’・・中間データ保存部、113,113’・・中間データメモリ、114・・描画処理部、115・・地紋用中間データ生成部、116・・地紋用中間データメモリ、117・・バンドメモリ、118,118’・・HW描画処理制御部、121,121’・・HW描画処理部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2009−118324号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる描画処理手段により原稿画像の描画処理と予め用意された画像の描画処理とをそれぞれ行い、得られた両処理画像の合成画像を生成する画像処理装置であって、
少なくとも前記予め用意された画像による描画処理を行う手段はハードウェア構成の描画処理手段であるとともに、
前記予め用意された画像の処理画像を保存する保存手段と、
異なる原稿画像に対して前記保存手段に保存した処理画像と同じ用意された画像を基に前記合成画像を生成するとき、前記予め用意された画像による描画を行うことなく、前記保存手段に保存した処理画像をもとに前記合成画像を生成する処理を行う制御手段と、
を有する画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像処理装置において、
前記制御手段は、前記予め用意された画像の処理画像が前記保存手段に保存されていないことを条件に前記描画処理手段を作動させ、かつ前記保存手段が前記処理画像の保存に必要な保存容量を有することを条件に前記保存手段に保存動作をさせる画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された画像処理装置において、
前記制御手段は、前記原稿画像のページ毎に前記合成画像を生成する処理を行う画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された画像処理装置において、
前記予め用意された画像が地紋パターン及び抑止文字列である
画像処理装置。
【請求項5】
コンピュータを請求項1乃至4のいずれかに記載された画像処理装置が有する前記制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項7】
異なる描画処理手段により原稿画像の描画処理と予め用意された画像の描画処理とをそれぞれ行い、得られた両処理画像の合成画像を生成する画像処理装置における画像処理方法であって、
ハードウェア構成の描画処理手段で予め用意された画像の描画処理を行い、
前記予め用意された画像の処理画像を保存手段に保存し、
異なる原稿画像に対して前記保存手段に保存した処理画像と同じ用意された画像を基に前記合成画像を生成するとき、前記予め用意された画像による描画を行うことなく、前記保存手段に保存した処理画像をもとに前記合成画像を生成する処理を行う画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−12935(P2013−12935A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144751(P2011−144751)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】