説明

画像処理装置、画像処理方法、放射線撮影システム及びプログラム

【課題】 複数の画像を合成する際につなぎ目を目立たせず、かつ各画像の白とび、黒つぶれを起こさないように各画像の画素値を補正する。
【解決手段】 画像入力部101は、検出器等により得られた複数枚の部分画像を入力する。オフセット値取得部102は、複数枚の部分画像間の重なりのある領域の画素値の差をオフセット値として算出する。画素値取得部103は、複数枚の部分画像のそれぞれの画素値の範囲を示す値として、最小画素値と最大画素値を算出する。補正値算出部104は、複数枚の部分画像の補正値を算出する。補正部105は、複数枚の部分画像の階調補正を行う。合成部106は複数枚の部分画像を合成し合成画像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の部分画像を合成する画像処理装置、画像処理方法、放射線撮影システム及び画像処理をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部分画像を一つの画像に合成する際には、画像間のつなぎ目を目立たせないように各部分画像の画素値をシフトさせる補正が行われる。特許文献1にはある特定の画像を基準として、順次補正を実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−57506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある画像に合わせて画素値のシフトをさせる場合、画素値が出力の帯域を超えてしまい画像に白つぶれや黒つぶれが起こってしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、複数の画像を合成する画像処理装置であって、前記複数の画像のそれぞれにおいて対応する領域の画素値の差と、前記複数の画像のそれぞれの画素値の範囲を取得する取得手段と、前記取得される画素値の範囲を所定の範囲内に収めかつ前記取得される画素値の差が小さくなるように、前記画素値の範囲を補正する補正手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
かかる構成を有することにより、部分画像のつなぎ目を目立たせずかつ白つぶれや黒つぶれを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】放射線撮影システム10の構成図である。
【図2】画像処理装置100の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】画像処理装置100による補正値算出の一例を示す図である。
【図4】画像処理装置100による補正値算出の一例を示す図である。
【図5】画像処理装置100による補正値算出の一例を示す図である。
【図6】放射線撮影システム60の構成図である。
【図7】画像処理装置600の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を適宜参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0009】
放射線撮影システム10に対して本発明を適用した例を図1乃至3に基づき説明する。このシステムは画像を合成する画像処理装置100と、放射線を検出して画像を得る検出器110と、被写体120へ向けて放射線を発生させる放射線源130と、合成された画像が出力される外部装置140を有する。また、放射線源130と検出器110の駆動を制御し、被写体120を複数の撮影範囲に分けて撮影させる制御部150(撮影制御部)を有する。
【0010】
まず画像処理装置100の構成を図1に基づき説明する。画像入力部101は、検出器110により得られた複数の部分画像を入力する。この複数の部分画像は被写体120を複数の撮影範囲に分けて撮影することで得られる。オフセット値取得部102は、入力された各部分画像において互いに対応する領域の画素値の差をオフセット値として取得する。このオフセット値は検出器への入射露光量の違い等による部分画像毎の画素値の違いを示す。このオフセット値が部分画像を貼り合わせた際につなぎ目が目立つ要因である。
【0011】
画素値取得部103は、複数枚の部分画像のそれぞれの画素値の範囲を示す値として最小画素値と最大画素値を取得し、その差を画素値範囲の幅を示す値とする。補正値取得部104はこのオフセット値を用いて、画素値の範囲が所定の出力階調の範囲に収まりかつオフセット値が目立たせないようにシフト補正値を算出する。具体的な処理については後述する。補正部105は、算出された補正値分だけ部分画像の画素値の範囲をシフトさせる補正を行う。ここでいう画素値のシフトとは、例えば部分画像の画素値の範囲が(最小値,最大値)=(400,2800)であり補正値が−400である場合に(0,2400)とする処理をいう。画素値のシフト補正処理には画素値の範囲すなわちダイナミックレンジを拡大または縮小させる補正処理は含まない。
【0012】
合成部106は、複数枚の部分画像を合成して合成画像(長尺画像)を作成する。出力部107は、合成部106により合成された合成画像を外部装置140に出力する。外部装置140は画像を表示する表示装置である。外部装置140はこの他にも記録媒体上に合成画像を形成する画像形成装置、画像データを記録するサーバ型記録装置または階調処理を行う画像処理装置であっても、これらをすべて含むこととしてもよい。
【0013】
次に、図2に従い上述の画像処理装置100が実行する処理の流れを説明する。
【0014】
ステップS201において、画像入力部101は一つの被写体を分割して撮影して得られた複数枚の部分画像を入力する。入力された画像はオフセット値取得部102、画素値取得部103、補正部105に送られる。
【0015】
ステップS202において、オフセット値取得部102は、画像間の重なりのある領域の画素値の差をオフセット値として算出する。オフセット値の算出方法として、重なり合っている領域の平均値の差を取る方法を用いる。算出方法のその他の例としては、重なり合っている領域のヒストグラムの差分値が最小になるシフト値を算出する方法も適用可能である。要は重なり合っている画像の画素値の傾向または画素レベルの差が算出できる処理を行えばよい。
【0016】
ここで画素値の幅を示す値として、飽和画素や欠陥画素の画素値を除いて最大画素値を算出することで、精度よく被写体の画素値の範囲を示す値が得られる。なお飽和画素とは、検出器で測定できる最大の露出量を超えた画素を意味する。
【0017】
またここで画像において被写体が存在しない領域がある場合には、画像において被写体の領域を設定した上で、各部分画像で互いに重複する領域かつ被写体の領域内における画素値の差を算出する。被写体の領域の設定は周知のアルゴリズムによって抽出した領域を用いるが、ユーザが不図示の表示部に表示された画像上で指定した領域を用いることもできる。放射線画像においては観察対象である被写体の領域が注目すべき領域であり、かかる領域の画素値の差を得ることにより、注目すべき領域の画像のつなぎ目を目立たせなくすることができる。
【0018】
更に被写体の領域が抽出されている場合には、各画像において解剖学的構造が同一である領域を対応する領域とすることができる。また、経験的に放射線画像において同一画素値として画像化されることが分かっている各画像における領域を対応する領域とすることができる。これにより重複する領域がなくともオフセット値を取得することができる。
【0019】
ステップS203において、画素値取得部103は画像の画素値の幅を示す値を算出する。本ステップでは、画素値取得部103は画像の最小画素値と最大画素値を抽出し、その差を算出して画素値の幅を示す値とする。
【0020】
またここでもステップS202と同様に、画像において被写体が存在しない領域がある場合には、画像において被写体の領域を設定した上で、被写体の領域内における画素値の最大値及び最小値を算出する。
【0021】
ステップS204において、補正値取得部104は、オフセット値算出部102で算出されたオフセット値と、画素値取得部103で算出された最小画素値・最大画素値を用いて、シフト補正に用いる補正値を取得する。ここで補正値は、シフト補正を行った際に、最小画素値と最大画素値が所定の範囲に含まれるように計算する。ここで所定の範囲は、外部装置140である表示装置の表示階調の範囲とする。画素値の幅が表示階調の範囲に収まるように補正値を算出する事によって、画素の黒つぶれや白つぶれを防ぐ事が可能となり、ダイナミックレンジも縮めることなく合成画像を生成することができる。
【0022】
図3に補正値取得部104での算出例を示す。図3は、3枚の部分画像(それぞれ部分画像1、部分画像2、部分画像3とする)の補正値の算出過程を説明する具体例である。各部分画像のオフセット値はそれぞれ(0,−600,−700)である。また、各部分画像の画素値の最小値と最大値はそれぞれ(500,2500)、(500,2400)、(300,2900)である。これらオフセット値と最小画素値及び最大画素値との和を計算すると(500,2500)、(−100,1800)、(−400,2200)となる。ここで、表示階調の範囲を0〜4095とすると部分画像1と部分画像3が範囲外となるため、オフセット値と、最小画素値・最大画素値の和の最小値である(−400)を差分し、補正値とする。このようにすることで表示階調の範囲内に収めることできる。
【0023】
ステップS205において、補正部105は補正値分だけ画素値の範囲をシフトさせる補正をする。ここでは、各画像に補正値を加算する事によってシフト補正を行う。図3の例でいえば、取得された補正値によってシフト補正した後の部分画像のそれぞれの最小画素値・最大画素値はそれぞれ(900,2900)、(300,2200)、(0,2600)となる。なお、本実施例では3つの部分画像を得ることとしたが、4つ以上の撮影範囲に分けて撮影された4つ以上の部分画像に対しても、2つの部分画像にも適用可能である。
シフト補正を行うことにより各部分画像の画素値の差を小さくすることが可能となり、同じ撮影条件で得られたような画像を作成できる。
【0024】
ここで、画素値の幅の閾値である所定の範囲は、表示階調の範囲だけでなく種々の値として設定することができる。表示装置に表示する場合には、表示装置の入出力特性を取得し、入出力特性上最も出力のコントラストがよい入力画素値の範囲を所定の範囲として採用する。かかる値を表示装置毎に不図示の記憶部に記憶しておき、所定範囲の設定に用いることで、表示装置に応じた適切な合成画像を得ることができる。同様に画像形成装置の入出力特性に合わせて所定の範囲を定めることができる。これにより、表示装置やプリンタ等の画像形成装置の入出力特性に応じた合成画像を作成することができる。
【0025】
またサーバ装置等の記録装置に記録しておく場合で、記録のフォーマットが定まっている場合には、フォーマットで定める階調数を用いて所定範囲とすることができる。同様に外部装置140が画像処理装置100とは異なる画像処理装置である場合に、当該装置で行われる画像処理で既定の階調数を所定と範囲することができる。これにより記録装置のフォーマットや画像処理装置の設定に応じた合成処理を行い、合成画像を生成することができる。このように、出力の範囲を変えることで目的に応じた画素値の範囲である合成画像を得ることができる。
【0026】
ステップS206において、合成部は部分画像を合成して合成画像を作成する。合成処理は任意の2枚の画像の互いに重なり合い共通する領域において、各画像の周縁部分からの距離に応じて各画像の寄与を変えつつ合成することにより行う。なお、その他周知のアルゴリズムを適用して画像を貼り合わせてもよい。なお部分画像同士が重なり合わない場合には、周知の補間方法により部分画像同士を繋ぎ合わせることで画像の貼り合わせを行う。
【0027】
ステップS207において、出力部は合成画像を表示用ディスプレイに出力する。ここで合成画像の各部分画像に対応する部分についてシフト補正値を表示する。ユーザはもとの画像に対してどれだけ画素値がシフトされたかを表示画面上で確認することができる。
なお、レーザーイメージャ等の出力機器や、HDD等の保存危機に出力してもよい。また、別途階調処理等を行う画像処理システムへ出力しても良い。
【0028】
このように部分画像を表示階調の範囲内に収める事により、最終的な合成画像の画素値も所定の範囲内に収める事が可能とる。これにより適正なダイナミックレンジをもった視覚的に見やすい画像を作成することができる。
また各画像を補正することで部分画像毎の画素値の違いを補正する事が可能となり、画像合成時にあたかも1回の撮影で得たかのような画像を得る事が可能となる。特に、X線画像等では通常の一枚撮影時と同様の処理を合成画像にも適用する事が可能となる。一枚撮影の画像と合成画像とで処理態様に起因する特性が揃うこととなる。そのため診断者は両画像を同様の基準で観察することができる。これは診断の際に非常に有用である。
【実施例2】
【0029】
第二の実施例について図1、図2、図4を用いて説明する。本実施例では、1つの部分画像のシフト補正値が他の部分画像の画像情報に応じて決定される。
【0030】
補正値取得部104は各部分画像の信号とノイズ量の比の変化が小さくなるようにシフト補正値の計算を行う。以下、画像処理装置100の構成及び処理の流れについて、実施例1と異なる補正値取得部104による補正値の取得方法を説明する。
ステップS204にて、補正値取得部104はオフセット値取得部102で算出されたオフセット値と、画素値取得部103で算出された最小画素値・最大画素値を用いて、階調補正時に用いる補正値を算出する。ここで補正値は、シフト補正を行った際に、最小画素値・最大画素値が所定の範囲に含まれ、かつ各部分画像の補正値の和の絶対値が最小になるように計算する。これによりSN比の変化を小さくすることができる。
【0031】
補正値によりSN比の変化を説明する。SN比の計算式を以下に示す。SN比は信号とノイズ量の比を示す。
【0032】
【数1】

【0033】
なおAveは画像の平均値、Stdは標準偏差であり、以下の式で表される。
【0034】
【数2】

【0035】
【数3】

【0036】
ここで、Piは画素値、nは画素数である。
【0037】
次に、補正値をαとした場合
シフト補正後の画像のシフト補正後の平均値Ave(correct)、標準偏差Std(correct)は
【0038】
【数4】

【0039】
【数5】

【0040】
となり、平均値はシフト補正によって変化するが、標準偏差は変わらない。
ここで、シフト補正後のSN比(補正後)は
【0041】
【数6】

【0042】
となる。これは、部分画像の画素値をシフト補正した場合にはSN比が変化する。
【0043】
このため、特定の部分画像を大きく補正した場合には、SN比の変化も大きくなってしまい、部分画像ごとに見え方が大きく変化してしまう。そこで本発明では、全ての部分画像を少しずつ補正する事によって、画像一枚ごとのSN比の変化を小さくし、違和感の少ない画像を作成する事が可能である。
【0044】
図4には、補正値取得部104での補正値の算出過程を示す。図4は、3枚の部分画像(それぞれ部分画像1、部分画像2、部分画像3とする)の補正値を算出した例である。各部分画像のオフセット値はそれぞれ(0,−600,300)とする。また、各部分画像の最小画素値、最大画素値はそれぞれ(500,2500)、(400,2400)、(300,2900)とする。ここで、オフセット値に応じて、補正値の和の絶対値が最小になるように仮の補正値を計算すると、(100,−500,400)となる。これは全てのオフセット値の平均値を算出し、オフセット補正値にその平均値を減算する事によって、計算出来る。次に、これらの仮の補正値と最小画素値・最大画素値の和を計算すると(600,2600)、(−100,1900)、(700,3300)となる。ここで、画素値の範囲を0〜4095とすると部分画像3が範囲外となるため、これに範囲外となった−100の分の値を加算し、補正値とする(+200、−400、+500)。
【0045】
このように補正値の差を小さくする事で、SN比の変化を小さくする事ができるため、違和感の少ない画像を作成する事が可能となる。
【0046】
また、予め階調変換を施した後の部分画像を合成するといった場合でも、変化量を最小にする事で画素の変化を小さくする事が可能となり、合成画像の明るさの変化を小さくする事が可能となる。
【0047】
[変化例1]上述の実施例2に記載の処理において、補正値取得部104での補正値算出方法は、各オフセット値の最大値と最小値の中間値を算出し、各オフセット補正値にその中間値を減算する事によって、計算する。この方法により、各オフセット補正値の絶対値の内から最大になる値を小さくする事が可能となる。
【実施例3】
【0048】
第3の実施例は、画像処理装置100は、補正値の計算結果が所定の範囲を超えた場合は、所定の範囲を超えた補正値を持つ部分画像の補正を行わない例である。本実施例について図1、図2、図5を用いて説明する。以下、画像処理装置100の構成及び処理の流れについて、実施例1と異なる補正値取得部104による補正値の取得方法及び補正部105の処理を説明する。
【0049】
ステップS204にて、補正値取得部104はオフセット値取得部102で算出されたオフセット値と、画素値取得部103で算出された最小画素値・最大画素値を用いて、階調補正時に用いる補正値を算出する。ここで補正値は、階調補正を行った際に、最小画素値・最大画素値が所定の範囲に含まれない場合は、補正値を0とする。
【0050】
このように、所定の範囲に含まれない場合に補正値を0とする事で、何らかのエラーによってオフセット値が異常に大きくまたは小さく計算された際にも、画像を極端に補正する事なく合成する事が可能となる。例えば重複する領域が全くない画像を合成する際などは、オフセット値は以上に大きくまたは小さく計算される場合が多い。特に手動で部分画像の位置合わせをした場合、どのような配置でも合成処理の指示が可能である。この様な場合には階調補正には意味がなく、かえって画像情報を失ってしまう可能性が高いため本発明は非常に有用である。また、本発明は出力媒体等の画素値の幅が非常に大きい場合には特に有用である。所定の画素値の幅が非常に大きいにも関わらず、これを超える補正値が計算される場合はほとんどの場合何らかのエラーが起きていると考えられるためである。
【0051】
また、各部分画像毎の平均値の差や各部分画像毎のヒストグラムの差が最も小さくなるシフト値が所定の範囲を超えた場合に、その値を0にするという方法を用いる事も可能である。
【0052】
オフセット値は、各シフト値を加算する事によって、オフセット値を計算する。部分画像1と部分画像2のシフト値をshift1,部分画像2と部分画像3のシフト値をshift2とする。部分画像1のオフセット値offset1をAと仮定すると,offset2,offset3は以下の様に計算する。
【0053】
【数7】

【0054】
【数8】

【0055】
【数9】

【0056】
ここで部分画像1と部分画像2に重複領域がなく、部分画像2と部分画像3に重複領域がある場合、部分画像1と部分画像2のシフト値が異常となる。シフト値を0にせず、そのまま計算すると、部分画像2及び部分画像3のオフセット値が両方とも異常となる。そこで、部分画像1と部分画像2のシフト値を0とすると、部分画像2と部分画像3は正しく画素値を合わせる事が可能となり、最適な画像を得る事が可能となる。
【0057】
このように、補正値がある所定の範囲を超える場合に、階調補正を行わない事で、同一部分のない画像の合成等による影響を小さくする事が可能となる。これは手動で部分画像の配置を自由に設定できる場合等は特に有用である。
【実施例4】
【0058】
第4の実施例について図6、図7を用いて説明する。
【0059】
第4の実施例では、画像処理装置600は、合成画像の画素値の幅が所定の範囲を超えないように、各画像のダイナミックレンジ補正を行う。
【0060】
以下、本実施例に係る画像処理装置の構成を説明するが、実施例1と同様の部分については説明を省略する。
【0061】
放射線撮影システム60は検出器610の表面または内部に線量計650を有する。線量計650は放射線源630が発生させて被写体に照射した放射線であって被写体を透過した放射線を検出し、検出した値を制御部660に出力する。なお検出器610が蛍光体を有するいわゆる間接型のX線イメージセンサである場合には、蛍光体と光電変換素子との間に可視光の光量を計測する線量計650を設けてもよい。制御部660は被写体を複数の撮影範囲に分割して撮影するよう検出器610及び放射線源630を制御する撮影制御部である。加えて本実施例では、線量計650からの計測結果を受けて、放射線源が発生する放射線の線量を制御する線量制御部である。この制御機構は一般にAEC(Auto Exposure Control)と呼ばれる。かかる制御機構をもちいたシステムから得られる複数の部分画像は線量が画像ごとに異なるため、部分画像ごとに見え方が大きく異なることがある。このような場合に本発明の合成処理を適用すると有用である。また放射線撮影システム60の画像処理装置600はダイナミックレンジ補正部606を有する。ダイナミックレンジ補正部606は、画像のダイナミックレンジを変換する。
【0062】
ステップS706で、ダイナミックレンジ補正部606はダイナミックレンジ補正を行う。ここでは部分画像のそれぞれについての最小画素値の最小値と、部分画像のそれぞれについての最大画素値の最大値とを出力画素値の範囲内に収めるように変換される。この変換方法として、入力画素値が設定された出力画素値となり、かつ特定の入力画素値近辺のコントラストが一定になるように階調曲線を生成し、その階調曲線を全ての部分画像に適用する方法を用いる。この入力画素値は最小画素値内の最小値及び最大画素値内の最大値であり、この出力画素値は出力媒体や画像の用途等によって定まる画素値の範囲である。このように、各部分画像に同じ階調曲線を用いる事で、合成画像を生成する際に違和感のない画像を生成する事が可能となる。
なおダイナミックレンジ補正はこれに限らず、各部分画像の最小画素値・最大画素値を所定の画素値に範囲内に収めるような処理を行っても良い。この場合は各部分画像毎に最適化されたダイナミックレンジを持つ画像を得る事が可能となり、部分画像毎に最適化された後の合成画像を得たい場合には有用である。
【0063】
これにより、オフセット補正値の最適化のみでは画素値の範囲を出力階調の範囲に収めることができない画像も、各部分画像のダイナミックレンジを出力階調の範囲に収めることができる。特にダイナミックレンジが狭いディスプレイやプリンタ等の出力媒体に出力する際には、本発明は非常に有用である。
【0064】
本実施例における出力部107の処理を説明する。出力部107は合成画像の各部分画像に対応する部分に関連付けてシフト補正値を表示させる。また出力部107はこのシフト補正値を表示画面上で変更できるよう、変更用のアイコンを表示する。シフト補正値の変更量はユーザが不図示のマウスやキーボードを用いて画面上のアイコンをクリックすることで行われる。補正部105は変更された補正値に基づいてこの部分画像をシフト補正する。出力部107はこの画像を表示する。この一連の処理は、特定の部分画像に注目したい場合に、シフト補正によって注目したい部分画像が観察しにくくなってしまう場合に対応する処理である。
【0065】
さらに補正値取得部104は、ユーザにより変更された一の部分画像の補正値に合わせて他の部分画像の補正値を再取得する。この処理は、ユーザにより変更された補正値に合わせて他の補正値を決定することで行う。この際に、いずれかの部分画像が出力階調の範囲を超えてしまう場合には、ダイナミックレンジの変更処理を行い出力階調に合わせる。これにより、特定の部分画像に合わせて他の部分画像を補正し、かつ出力階調の範囲に収めることができる。
【0066】
(その他の実施例)
上述の実施例において、画素値取得部103による最小画素値・最大画素値の算出を省略してもよい。この場合には、補正値取得部104はオフセット値のみを用いて、補正値の和の絶対値が最小になるように計算する。これにより所定の画素値の幅が十分に大きい場合は、最適な補正値を簡素化した処理を用いて計算する事が可能である。
また別の例として、画像処理装置100または画像処理装置600で行われている処理を複数の装置で分散させ画像処理システムとして実現してよい。あるいは1つの機能ブロックとしてまとめられている処理を複数の回路または機能ブロックで分散させて実現してもよい。
【0067】
上述の実施例で回路として実装されている画像処理装置の各部位を、ソフトウェアとコンピュータのハードウェアとの協働により各ブロックに対応する機能を実装してもよい。具体的には、ハードウェアは例えばCPU、ROM、RAM、HDD、マウス、キーボード、ネットワークI/F、表示部を有するコンピュータである。ここで、ROMまたはHDDにはプログラムが格納される。このプログラムは、画像処理装置100または画像処理装置600の各ハードウェアと協働して図1または図6に示す機能を発揮し、図4または図7に示される処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。このプログラムが、RAMに展開され、CPUがその命令を実行することで、画像処理装置100または画像処理装置600は図1または図6に示す機能が発揮し、図4または図7に示す処理を実現する。
【0068】
CPUは1つのコンピュータ内に複数含まれていてもよく、この場合複数のCPUで分散させて本発明を実現することとしてもよい。
【0069】
また本発明をコンピュータのハードウェアとソフトウェアの協働により実現する場合、電子計算機が読み出したプログラムコードを実行させる。コンピュータ上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も本発明の範囲に含まれる。更にこの場合には、プログラムまたはプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成する。
【0070】
なお、上述した本実施の形態における記述は、本発明に係る好適な診断支援装置の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
100 画像処理装置
101 入力部
102 オフセット値算出部
103 画素値取得部
104 補正値算出部
105 補正部
106 合成部
107 出力部
606 ダイナミックレンジ補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像を合成する画像処理装置であって、
前記複数の画像のそれぞれにおいて対応する領域の画素値の差と、前記複数の画像のそれぞれの画素値の範囲を取得する取得手段と、
前記取得される画素値の範囲を所定の範囲内に収めかつ前記取得される画素値の差が小さくなるように、前記画素値の範囲を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記複数の画像それぞれのSN比の変化が小さくなるように前記画素値の範囲を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の画像の画素値の範囲のシフトさせる量である補正値を算出する算出手段を更に有し、
前記補正手段は補正値がある所定の範囲を超えた場合は、補正を行わない
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記取得される前記画素値の差が所定の値を超える場合には、前記画素値の差の値を該所定の値を超えない値として前記画素値の範囲を補正する
事を特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記複数の画像の少なくとも1つについて、前記画素値の範囲をシフトさせる補正と、ダイナミックレンジを変える補正の少なくともいずれかを行う
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記複数の画像は被写体を複数の撮影範囲に分けて撮影することで得られる複数の部分画像であり、
前記部分画像を合成する合成手段と、
前記合成された画像を出力する出力手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
被写体に放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源が発生させる放射線の線量を制御する線量制御手段と、
前記制御された線量の放射線を検出し画像を生成する検出器と、
前記被写体を複数の撮影範囲に分けて撮影することで得られる複数の画像が生成されるように前記放射線源及び前記検出器を制御する撮影制御手段と、
前記複数の画像における前記被写体の領域を設定する設定手段と、
前記複数の画像のそれぞれにおいて他の画像と重複する領域の画素値の差と、前記複数の画像のそれぞれにおける前記被写体の領域の画素値の範囲を取得する取得手段と、
前記取得される画素値の範囲を所定の範囲に収めかつ前記取得される画素値の差が小さくなるように、前記画素値の範囲を補正する補正手段と、
前記補正された画像を合成する合成手段と、
前記合成された画像を出力する出力手段と、
前記出力された画像を表示する表示装置、前記出力された画像を記録する記録装置、または前記出力された画像を記録媒体上に形成する画像形成装置の少なくともいずれかである外部装置と、
を有することを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項8】
複数の画像のそれぞれにおいて対応する領域の画素値の差を取得するステップと、前記画像のそれぞれにおける画素値の範囲を取得するステップと、
前記取得される画素値の範囲を所定の範囲に収めかつ前記取得される画素値の差が小さくなるように、前記画素値の範囲を補正する補正ステップと、
前記複数の画像を合成するステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
複数の画像のそれぞれにおいて対応する領域の画素値の差を取得する処理と、
前記画像のそれぞれにおける画素値の範囲を取得する処理と、
前記取得される画素値の範囲を所定の範囲に収めかつ前記取得される画素値の差が小さくなるように、前記画素値の範囲を補正する処理と、
前記複数の画像を合成する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−45232(P2012−45232A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191320(P2010−191320)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】