説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム、記録媒体、および電子情報機器

【課題】分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタを備えた対数変換型の固体撮像素子で得られた撮像信号から、被写体の動きの部分のエッジに生じる色づきを抑制したカラー画像信号を再構成することができる画像処理装置を得る。
【解決手段】上記対数変換型の固体撮像素子から出力された撮像信号からカラー画像信号を再構成する画像処理装置において、該撮像信号の画素毎の時系列変化量を算出する時系列変化演算部22と、該演算部により算出された撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて、画素毎に該カラー画像信号の彩度を調整する彩度調整部25とを備え、該彩度調整が行われたカラー画像信号をモニタディスプレイ3に出力するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム、記録媒体、および電子情報機器に関し、特に、マトリックス状に設置された複数の光電変換素子と、該複数の光電変換素子上に規則的に配置された、分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタとを有し、入射光の光量を対数変換する固体撮像素子から出力された撮像信号からカラー画像信号を再構成する画像処理装置および画像処理方法、並びにこのような画像処理方法をコンピュータにより行うための画像処理プログラムおよびこのような画像処理プログラムを格納した記録媒体、並びに、上記のような画像処理装置を用いた電子情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ付き携帯電話を始め、ディジタル一眼レフカメラ、ムービーカメラ等にCMOSイメージセンサが広く用いられている。これらのCMOSイメージセンサは、画素内に設けられたフォトダイオードに一定時間蓄積された光電荷を画素内の増幅回路で電圧に変換することで、入射光量に比例した撮像信号を出力する。これらの線形応答型のCMOSイメージセンサは、フォトダイオードの容量に限界があるため、入射光のダイナミックレンジが狭く、得られた画像内に、被写体の白とびや黒つぶれなどが生じるおそれがある。これらの白とびや黒つぶれは、画像の品質を損ねるものであるため、できる限り生じないようにすることが好ましい。
【0003】
従来から、このような問題を改善する手法として、フォトダイオードとMOSトランジスタを直列接続することで、フォトダイオードで発生した光電流に対し、対数的な電圧応答が得られる対数変換型の固体撮像素子が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
図7はこのような対数変換型の固体撮像素子を説明する図であり、図7(a)は、対数変換型の固体撮像素子の画素内に設けられる、フォトダイオード61と対数変換トランジスタ62との接続関係を表わす回路図である。
【0005】
図7(a)に示すように、対数変換トランジスタ62は、そのゲート電極Gとドレイン電極Dが共通に接続されており、フォトダイオード61と対数変換トランジスタ62は直列に接続されている。ここでは、対数変換トランジスタ62としてNMOSトランジスタを用い、フォトダイオード61のアノードは基板電位Vssに、対数変換トランジスタ62のゲート電極Gとドレイン電極Dは電源電位Vddに、また対数変換トランジスタ62のバックゲート電位は基板電位Vssに設定されている。
【0006】
図7(a)に示す回路構成以外にも、フォトダイオードと対数変換トランジスタの接続関係を逆にしたタイプの回路構成や、対数変換トランジスタとしてPMOSトランジスタを用いた回路構成が考えられるが、いずれの回路構成を用いても原理的に同様の動作をするため、以下、図7(a)に示す回路構成の例を用いて、対数変換型の固体撮像素子において問題となる残像現象のメカニズムについて説明する。
【0007】
対数変換型の固体撮像素子の画素部に光が当たると、入射光量に応じた光電流Ipが各画素内のフォトダイオード61に発生する。熱的な平衡状態では、対数変換型トランジスタ62のドレイン電流Idと前記光電流Ipとは一致し、このとき対数変換トランジスタ62のドレイン電流Idに応じて、対数変換トランジスタ62のソース電極Sの電位が一意に定まる。フォトダイオード61に発生する光電流は、通常10nAにも満たない非常に小さな電流となるため、対数変換型トランジスタ62は弱反転領域(サブスレッショルド領域)で動作するようにバイアスされる。MOSトランジスタの弱反転領域では、ドレイン電流Idは、ゲート−ソース間電圧の指数関数で表わされる。図7(a)に示す回路構成では、フォトダイオード61に発生する光電流Ipに一致するように、ドレイン電流Idが流れ熱平衡状態に達するため、対数変換トランジスタ62のゲート−ソース間にドレイン電流Idの対数関数で表される電圧が生じる。このとき対数変換トランジスタ62のソース電位であり、フォトダイオード61のカソード電位でもある出力電圧Vpdは、光電流Ipの対数関数となり、ゲート電位は固定されていることから、光電流Ipが増加するに従ってソース電位は低下する。
【0008】
固体撮像素子の撮像面照度と光電流との関係は、量子効率による一定の比例関係があるため、広いダイナミックレンジの入射光に対して、撮像面照度の対数変換値がフォトダイオード61と対数変換トランジスタ62との接続ノードに出力電圧Vpdとして得られる。また前述のように固体撮像素子の撮像面照度と光電流とが比例関係にあることから、入射光の増加、即ち撮像面照度の増加に伴い、出力電圧Vpdは低下する。
【0009】
前述のように、熱平衡状態で出力電圧Vpdは、入射光量に応じた光電流Ipの対数関数となるが、実際には図7(a)に示すように、寄生デバイスである静電容量63がフォトダイオード61に対し並列に存在するため、熱平衡状態に達するまでに相当な時間を要する。特に光電流Ipdが非常に小さいときに、それは顕著となる。
【0010】
図7(a)に示す出力電圧Vpdが熱平衡状態に達するまでの振る舞いには、2つのモードがある。ひとつは増光時で、光電流Ipが小さい状態から大きい状態に変化する増光モード、もうひとつは減光時で、光電流Ipが大きい状態から小さい状態に変化する減光モードである。
【0011】
次に各モードでの出力電圧Vpdの振る舞いを、図7(b),図7(c)を用いて説明する。ここでは、便宜上、実線で示したG(グリーン)画素の応答のみを考える。
【0012】
増光モードでの出力電圧Vpdの応答特性を、図7(b)に示す。図7(b)では、時刻t1でステップ状にフォトダイオードの光電流Ipがi2からi1へ増加した場合の、出力電圧Vpdの時間軸上での軌跡を示す。ここでv2,v1は光電流Ipがそれぞれi2,i1であるときの、熱平衡状態での出力電圧Vpdの電位を表す。時刻t1以前では、出力電圧Vpdは電位v2であるが、時刻t1で光電流Ipがi2からi1に急激に増加し、対数変換トランジスタの熱平衡状態は破られ、出力電圧Vpdは時間の経過と共に下降する。
【0013】
上記出力電圧Vpdの下降曲線の勾配は、寄生容量63の放電電流(−Ic)と寄生容量63の静電容量(Cpd)との比に依存する。図7(a)に示すフォトダイオード61のカソードにおいて、光電流Ip、ドレイン電流Id、放電電流Icに関し、キルヒホッフの電流則が成り立つことから、放電電流−Ic=Ip−Idとなる。従って増光モードでの出力電圧Vpdの勾配は(Ip−Id)/Cpdとなる。また出力電圧Vpdの勾配を決めるドレイン電流Idは、対数変換トランジスタ62のゲート−ソース間電圧で決まり、ゲート−ソース間電圧の増加に伴い指数関数的に増加する。
【0014】
次に増光モードにおける、時間の経過に伴うVpdの勾配の変動を図7(b),(d)を用いて説明する。図7(b)において、時刻t1直後における出力電圧Vpdの勾配は(i1−i2)/Cpdである。このときのドレイン電流Idは、図7(d)において、ゲート−ソース間電圧がVdd−v2に、ドレイン電流がi2となるポイントP2にある。時間の経過と共にドレイン電流Idは、図7(d)に示す曲線に沿ってD2方向へ増加する。D2方向へのドレイン電流Idの増加に伴い、出力電圧Vpdの勾配は次第に減少し、ポイントP1で示す電流i1となった時点でゼロとなる。この時点でドレイン電流Id、光電流Ip共にi1に、静電容量Cpdの放電電流−Icはゼロになり、出力電圧Vpdは熱平衡状態に達する。このとき出力電圧Vpdの電位はv1となる。
【0015】
減光モードでの出力電圧Vpdの応答特性を、図7(c)に示す。図7(c)では、時刻t1でステップ状にフォトダイオードの光電流Ipがi1からi2へ減少した場合の、出力電圧Vpdの時間軸上での軌跡を示す。ここでv2,v1は、光電流Ipがそれぞれi2,i1であるときの、熱平衡状態での出力電圧Vpdを表す。時刻t1以前では、出力電圧Vpdはv1であるが、時刻t1で光電流Ipがi1からi2に急激に減少し、対数変換トランジスタの熱平衡状態は破られ、出力電圧Vpdは時間の経過と共に上昇する。
【0016】
この出力電圧Vpdの上昇曲線の勾配は、寄生容量63の充電電流Icと寄生容量63の静電容量Cpdとの比に依存する。図7(a)に示すフォトダイオード91のカソードにおいて、光電流Ip、ドレイン電流Id、充電電流Icに関し、増光時と同様にキルヒホッフの電流則が成り立つことから、充電電流Ic=Id−Ipとなる。従って増光モードでの出力電圧Vpdの勾配は(Id−Ip)/Cpdとなる。また出力電圧Vpdの勾配を決めるドレイン電流Idは、対数変換トランジスタ62のゲート−ソース間電圧で決まり、ゲート−ソース間電圧の減少に伴い指数関数的に減少する。
【0017】
次に減光モードにおける、時間の経過に伴うVpdの勾配の変動を図7(c),図7(d)を用いて説明する。図7(c)において、時刻t1直後におけるVpdの勾配は(i1−i2)/Cpdである。このときのドレイン電流Idは図7(d)において、ゲート−ソース間電圧がVdd−v1に、ドレイン電流がi1となるポイントP1にある。時間の経過と共にドレイン電流Idは、図7(d)に示す曲線に沿ってD1方向へ減少する。D1方向へのドレイン電流Idの減少に伴い、出力電圧Vpdの勾配は次第に減少し、ポイントP2で示す電流i2となった時点でゼロとなる。この時点でドレイン電流Id、光電流Ip共にi2に、静電容量Cpdの充電電流Icはゼロになり、出力電圧Vpdは熱平衡状態に達する。このとき出力電圧Vpdの電位はv2となる。
【0018】
図7(b)の増光時応答特性と図7(c)の減光時応答特性で、収束に要する時間が異なるのは、上記で説明した、増光モードと減光モードとの間で、出力電圧Vpdの勾配の減少速度に差異があるためである。時刻t1での増光モードでのVpdの勾配は、(i1−Id)/Cpdで、ドレイン電流Idはi2である。ドレイン電流Idは、時間の経過と共に、図7(d)のポイントP2から次第に増加する。一方、時刻t1での減光モードでのVpdの勾配は(Id−i2)/Cpdで、ドレイン電流Idはi1である。ドレイン電流Idは時間の経過と共に、図7(d)のポイントP1から次第に減少する。
【0019】
ポイントP1とポイントP2では図7(d)に示すように、対数変換トランジスタ92のゲート−ソース間電圧に対するドレイン電流Idの傾き(変化率)が大きく異なる。ポイントP1でのドレイン電流Idの傾きは、ポイントP2でのドレイン電流Idの傾きに比べて、相当大きいため、減光モードでの出力電圧Vpdの勾配の減少は、増光モードでのドレイン電流Idの増加に比べて、ドレイン電流Idの減少が急激なため、増光モードでのVpdの勾配の減少に比べて急速となる。
【0020】
従って、減光モードでの出力電圧Vpdの遷移時間は、勾配の減少がより急速であるため、増光モードでの遷移時間に比べて長時間となる。このような増光モードと減光モードとの非対称性により、出力電圧Vpdの応答時間は大きく異なる。対数変換型の固体撮像素子では前述のメカニズムにより、特に暗い環境で撮像したとき、被写体の動き部分のエッジに残像が生じる。中でも被写体の動きにより、画素に入射する光量が減少するとき、前述の減光モードとなり、より大きな残像が生じる。
【0021】
ところで、線形応答型のCMOSイメージセンサを搭載した、カメラ付き携帯電話を始め、ディジタル一眼レフカメラ、ムービーカメラ等、ほとんどの民生用の撮像機器は、カラー撮像を目的としている。カラー撮像は、イメージセンサの画素部にマトリックス状に配置されたフォトダイオードの上部に、分光特性の異なる複数種類のカラーフィルタを設けることで可能となり、このようなカラーフィルタの中でも、レッド、グリーン、ブルーの3種類のカラーフィルタを規則的に配置した、ベイヤー型とよばれるカラーフィルタアレイが最もよく用いられている。また、対数変換型の固体撮像素子においても同様に、マトリックス状に配置されたフォトダイオードの上部に、ベイヤー型のカラーフィルタアレイを配置することで、カラー撮像が可能となる。
【0022】
ここで、レッド、グリーン、ブルーの3種類のカラーフィルタの透過率は、フォトダイオードを形成するシリコンの吸収スペクトルと併せて、感度、波長の弁別性等、総合的なバランスを考慮して最適化される。最適化された結果、カラーフィルタとフォトダイオードの組み合わせによる分光感度特性上で、レッド、グリーン、ブルーの感度が異なるため、前述のメカニズムにより、画素出力信号の応答時間に長短が生じ、その結果、被写体の動き部分のエッジに色づきが生じる。このような色づきは、画像の品質を損ねるものであるため、なんらかの対策が求められる。
【0023】
このような被写体の動き部分のエッジに生じる色づきを解消する先行技術として、エッジ部分に対応する画像信号を取得し、この画像信号に対する信号処理として、エッジ部分にその色づきを解消する色(補色)を付加する手法が特許文献3に公開されている。
【0024】
この特許文献3に開示の技術は、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイの表示素子の応答時間が、各色の素子毎に異なることにより生じる、動画のエッジ部の色づきの解消を対象とするものであるが、これは、上述した対数変換型の固体撮像素子の残像の色づきの解消するのに適応可能なものである。
【特許文献1】特許第2836147号公報
【特許文献2】特許第3696234号公報
【特許文献3】特開2007−264123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
前述のように、画素部の上にベイヤー型のカラーフィルタアレイを設置した対数変換型の固体撮像素子では、レッド、グリーン、ブルーのそれぞれのカラーフィルタ間で透過率が異なるため、前述のメカニズムにより、画素出力信号の応答時間に長短が生じ、その結果、被写体の動き部分のエッジに色づきが生じる。
【0026】
以下、図7(a),(b),(c)を用いて、動き部分のエッジの色づきに関し、さらに詳細に述べる。
【0027】
図7(b),(c)は、図7(a)に示す各画素の出力電圧Vpdの応答特性を説明する図であり、レッド、グリーン、ブルーのカラーフィルタを上部に備えた対数変換型の固体撮像素子の画素に入射する光の光量がステップ関数状に変化した場合の応答特性を示している。図7(b),(c)中の粗い点線(R画素)、細かい点線(G画素)、一点鎖線(B画素)で示す曲線は、レッド、グリーン、ブルーのカラーフィルタを夫々上部に備えた画素の出力電圧Vpdの応答曲線を示す。また粗い点線(R画素)、細かい点線(G画素)、一点鎖線(B画素)で示す曲線は、入射光のスペクトルはフラット、即ち白色光が入射したときの、画素の出力電圧Vpdの応答曲線であり、白色光が入射したときに、R画素、G画素、B画素、各画素の出力電圧Vpdが等しくなるように、予めオフセット電圧を調整したものである。前記オフセット電圧の調整により、図7(a)に示す、対数変換トランジスタ62のスレッショルド電圧のばらつきのみならず、カラーフィルタとフォトダイオードの組み合わせによる分光感度特性上での、レッド、グリーン、ブルーの感度の差異によるオフセット電圧が自動的に補正され、ホワイトバランスを取ることができる。
【0028】
図7(b)は、画素に入射する光の光量が時刻t1でステップ関数状に増加して、光電流Ipがi2からi1へ増加した場合の、R画素、G画素、B画素、各画素の出力電圧Vpdの応答曲線を示す。ここでv2,v1は、光電流Ipがそれぞれi2,i1であるときの、熱平衡状態での出力電圧Vpdを表す。図7(b)では、G画素、R画素、B画素の順で感度が高く、G画素は、R画素とB画素に比較して、感度が突出して高いため、応答時間も早い。このため、時刻t2のように各画素が遷移状態にある時点で、出力電圧Vpdをサンプルした場合、G画素の出力電圧VpdがR画素やB画素の出力Vpdより低いため、再生された画像は緑色に色づいて見える。従って、被写体の動きにより、黒から白へと輝度が大きく変化する場合、動き部分のエッジでは緑色の偽色が発生する。
【0029】
図7(c)は、画素に入射する光の光量が時刻t1でステップ関数状に増加して、光電流Ipがi1からi2へ減少した場合の、R画素、G画素、B画素、各画素の出力電圧Vpdの応答曲線を示す。図7(b)と同様に、v2,v1は光電流Ipがそれぞれi2,i1であるときの、熱平衡状態での出力電圧Vpdを表す。時刻t2のように各画素が遷移状態にある時点で、出力電圧Vpdをサンプルした場合、R画素やB画素の出力電圧VpdがG画素の出力電圧Vpdより低いため、再生された画像はマゼンタ色に色づいて見える。従って、被写体に動きにより、白から黒へと輝度が大きく変化する場合、動き部分のエッジではマゼンタ色の偽色が発生する。
【0030】
図7(b),(c)で説明した、輝度が大きく変化する場合に見られる、被写体の動き部分のエッジに生じる偽色は、本来被写体には無かった色であり、非常に目に付き、画像の品質を損ねるものであるため、なんらかの対策が必要となる。特許文献3には、被写体の動き部分にエッジに生じる色づきに対し、エッジ部分を抽出し、同部分の色に対して補色関係にある色を付加することで色づきを解消する手法が開示されている。
【0031】
しかしながら、この特許文献3に開示の手法は補色を付加して色づきを解消するものであるため、エッジ部分の抽出が正しく行われないと、実際にはエッジ部分ではないところに、補色が付加されてしまい、別の偽色が発生するため、画像の品質を損ねてしまうという課題があった。
【0032】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタを備えた固体撮像素子で得られた撮像信号に基づいて、被写体の動きの部分のエッジに生じる色づきを抑制したカラー画像信号を再構成することができる画像処理装置および画像処理方法、この画像処理方法をコンピュータにより実行するための画像処理プログラム、および該画像処理プログラムを格納した記録媒体、並びに上記のような画像処理装置を用いた電子情報機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明に係る固体撮像装置は、マトリックス状に配列された複数の光電変換素子と、該光電変換素子上に規則的に配置され、分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタとを有する、入射光の光量を対数変換する固体撮像素子から出力された撮像信号からカラー画像信号を再構成する画像処理装置であって、該撮像信号の画素毎の時系列変化量を算出する時系列変化演算部と、該時系列変化演算部により算出された撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて、画素毎に該カラー画像信号の彩度を調整する彩度調整手段とを備えたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0034】
本発明は、上記画像処理装置において、前記時系列変化量は、各画素のフレーム間の色相距離であることが好ましい。
【0035】
本発明は、上記画像処理装置において、前記色相距離は、各画素のフレーム間の色相差の絶対値であることが好ましい。
【0036】
本発明は、上記画像処理装置において、前記色相距離は、複数種類の色相差の各々の絶対値の総和であることが好ましい。
【0037】
本発明は、上記画像処理装置において、前記色相距離は、時系列順に並んだ3枚以上のフレームのうちの隣接したフレーム間の色相距離の総和であることが好ましい。
【0038】
本発明は、上記画像処理装置において、前記カラーフィルタの配列は、ベイヤー型であり、前記色相は、レッド、グリーン、ブルーの3色のうちの、ひとつの色と他の2色との、2種類の色比で表わしたものであることが好ましい。
【0039】
本発明は、上記画像処理装置において、前記彩度調整手段は、前記時系列変化量の大きさに反比例する前記彩度の調整を行うことが好ましい。
【0040】
本発明は、上記画像処理装置において、前記カラー画像信号は、レッド、グリーン、ブルーの3色の原色信号で表わされ、前記彩度調整手段は、前記彩度の調整を下記の式を満たすよう行うことが好ましい。
【0041】
R’=k(R−Y)+Y ・・・(1a)
G’=k(G−Y)+Y ・・・(1b)
B’=k(B−Y)+Y ・・・(1c)
ここで、R,G,Bは、彩度調整前のレッド、グリーン、ブルーのカラー画像信号、Yは輝度信号、kは前記時系列変化量から求められた彩度調整係数、R’,G’,B’は彩度調整後のレッド、グリーン、ブルーのカラー画像信号である。
【0042】
本発明は、上記画像処理装置において、前記彩度調整係数kは、下記式で表わされることが好ましい。
【0043】
k=1/(1+Df・Hd) ・・・(2)
ここで、Hdは前記時系列変化量、Dfは彩度を落とす度合いを示す脱色化係数である。
【0044】
本発明は、上記画像処理装置において、前記時系列変化演算部は、画素毎の過去のフレーム間の色相の変化を前記色相距離として演算する色相距離演算部と、前記撮像信号から得られる色相信号が、予め定められた範囲内の色相を示すものであるか否かを判定する色相判定部と、該色相判定部の判定結果に応じて該色相距離から画素毎に彩度調整係数を演算する彩度調整係数演算部とを有することが好ましい。
【0045】
本発明は、上記画像処理装置において、前記時系列変化演算部は、前記彩度調整係数演算部により得られた彩度調整係数を空間的に平滑化して平滑化彩度調整係数を生成する彩度調整フィルタ部を有することが好ましい。
【0046】
本発明は、上記画像処理装置において、前記彩度調整係数kは、下記式で表わされることが好ましい。
【0047】
k=Em/(1+Df・Hd) ・・・(3)
ここで、Emは、彩度を強調する度合いを示す彩度強調係数、Hdは前記時系列変化量、Dfは彩度を落とす度合いを示す脱色化係数である。
【0048】
本発明は、上記画像処理装置において、前記時系列変化量Hdと、前記彩度調整係数kとの関係をテーブル化するテーブル演算部を備え、前記時系列変化演算部は、該テーブル演算部により得られたテーブルを参照して前記彩度調整係数kを求めることが好ましい。
【0049】
本発明は、上記画像処理装置において、前記時系列変化演算部は、画素毎の過去のフレーム間の色相の変化を前記色相距離として演算する色相距離演算部と、前記撮像信号から得られた色相信号が、予め定められた範囲内の色相を示すものであるか否かを判定する色相判定部と、彩度を強調する度合いを示す彩度強調係数、および彩度を落とす度合いを示す脱色化係数に基づいて、それぞれの係数の値の応じたテーブル用彩度調整係数を算出する彩度調整係数テーブル演算部と、該算出されたテーブル用彩度調整係数を含むテーブルを格納する彩度調整係数テーブル格納部と、該色相判定部の判定結果に応じて該色相距離に基づいて、該テーブルを参照して画素毎に彩度調整係数を求める彩度調整係数演算部とを有することが好ましい。
【0050】
本発明は、上記画像処理装置において、前記時系列変化演算部は、前記彩度調整係数演算部により求められた彩度調整係数を空間的に平滑化して、平滑化彩度調整係数を生成する彩度調整フィルタ部を有することが好ましい。
【0051】
本発明は、上記画像処理装置において、前記彩度調整手段は、前記色相が所定の範囲内にあるときのみ、前記彩度の調整を行うことが好ましい。
【0052】
本発明は、上記画像処理装置において、前記彩度調整手段は、前記色相が所定の範囲内にある画素に対して第1の彩度調整係数を求め、前記色相が前記所定の範囲外にある画素に対して第1の彩度調整係数を所定の値とし、前記第1の彩度調整係数の画素空間上の低域フィルタ出力を第2の彩度調整係数とし、該第2の彩度調整係数に基づいて前記カラー画像信号の彩度調整を行うことが好ましい。
【0053】
本発明に係る画像処理方法は、マトリックス状に配列された複数の光電変換素子と、該光電変換素子上に規則的に配置され、分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタとを有する、入射光の光量を対数変換する固体撮像素子から出力された撮像信号からカラー画像信号を再構成する画像処理方法であって、該撮像信号の画素毎の時系列変化量を算出する演算ステップと、該演算ステップで算出された撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて、画素毎に該カラー画像信号の彩度を調整する彩度調整ステップとを含むものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0054】
本発明に係る画像処理プログラムは、マトリックス状に配列された複数の光電変換素子と、該光電変換素子上に規則的に配置され、分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタとを有する、入射光の光量を対数変換する固体撮像素子から出力された撮像信号からカラー画像信号を再構成する画像処理方法を、コンピュータにより行うための画像処理プログラムであって、該撮像信号の画素毎の時系列変化量を算出する演算ステップと、該演算ステップで算出された撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて、画素毎に該カラー画像信号の彩度を調整する彩度調整ステップとを含むものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0055】
本発明に係る記録媒体は、コンピュータにより画像処理を行うための画像処理プログラムを格納した記録媒体であって、該画像処理プログラムは、上述した本発明に係る画像処理プログラムであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0056】
本発明に係る電子情報機器は、被写体の撮像を行う対数変換型の固体撮像素子と、該固体撮像素子により得られた撮像信号を処理する画像処理部とを備えた電子情報機器であって、該画像処理部は、上述した本発明に係る画像処理装置であり、そのことにより上記目的が達成される。
【0057】
以下、本発明の作用について説明する。
【0058】
本発明においては、撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて対数変換型の固体撮像素子により得られたカラー画像の彩度を画素毎に調整するので、動画像の動きのある部分の画素の彩度を落とすことができ、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の不自然な色づきを軽減することができる。
【0059】
本発明においては、各画素のフレーム間の色相距離に基づいて対数変換型の固体撮像素子により得られたカラー画像の彩度を調整するので、動画像の色相に変化がある部分の彩度を落とすことができ、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の不自然な色づきを軽減することができる。
【0060】
本発明においては、各画素のフレーム間の色相差の絶対値を色相距離とするので、各画素のフレーム間の色相距離を簡単な計算で求めることができることから、本発明の画像処理装置の回路規模および消費電力を小さくすることができる。
【0061】
本発明においては、複数種類の色相差の各々の絶対値の総和を前記色相距離としているので、各画素のフレーム間の色相距離を簡単な計算で求めることができることから、本発明の画像処理装置の回路規模および消費電力を小さくすることができる。
【0062】
本発明においては、時系列順に並んだ3枚以上のフレームの隣接したフレーム間の色相距離の総和をもって前記色相距離とするので、対数変換型の固体撮像素子の残像が3枚以上のフレームに渡る場合においても、色相の時系列変化量を確実に捕捉して彩度の調整を行うことができる。
【0063】
本発明においては、前記カラーフィルタの配列をベイヤー型とし、レッド、グリーン、ブルーの3色のうちの、ひとつの色と他の2色との、2種類の色比を色相とするので、対数変換型の固体撮像素子の出力信号が対数形式であることから、色比の計算をひとつの色の撮像信号と他の2色の撮像信号との差を求めることで行うことができ、このため、本発明の画像処理装置の回路規模および消費電力を小さくすることができる。
【0064】
また、本発明においては、撮像信号の画素毎の時系列変化量の大きさに反比例した前記カラー画像の彩度の調整を画素毎に行うので、撮像信号の画素毎の変化量が大きいときには彩度を大きく落とし、撮像信号の画素毎の変化量が小さいときには彩度を小さく落とすことで、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の色づきが大きいときには彩度を大きく落とし、色づきが小さいときには彩度を小さく落とすというように、適応的に残像の色づきを軽減することができる。
【0065】
本発明においては、彩度の調整前と彩度調整後で、レッド、グリーン、ブルーの各信号成分の総和が等しくなるため、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の色づきを軽減する際、処理前と処理後で、レッド、グリーン、ブルーの各信号のトータルの強度を等しくすることができる。
【0066】
本発明においては、前記彩度調整係数kを、彩度を落とす度合いを示す脱色化係数に基づいて求めるので、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の色づきの軽減度合いを調節可能となる。
【0067】
本発明においては、前記彩度調整係数kを、彩度を落とす度合いを示す脱色化係数と、彩度を強調する度合いを示す彩度強調係数とに基づいて求めるので、脱色化係数Dfにより、画素毎に対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の色づきの軽減度合いを調節できると共に、彩度強調係数Emにより、画面全体の彩度を強調することが可能となる。
【0068】
本発明においては、前記時系列変化量Hdと、前記彩度調整係数kとの関係をテーブル化し、テーブル参照により前記彩度調整係数kを求めるので、画素毎に彩度強調係数kを求めるために、演算式に従った演算を毎回行う必要が無くなり、画像処理装置の回路規模および消費電力を小さくすることが可能となる。
【0069】
本発明においては、前記色相が所定の範囲内にあるときのみ、前記撮像信号の画素毎のフレーム間の色相距離により、画素毎に前記カラー画像の彩度の調整を行うので、対数変換型の固体撮像素子で生じる特定の色相の残像の不自然な色づきを、選択的に軽減することができる。
【0070】
本発明においては、前記色相が所定の範囲内にある画素に対して第1の彩度調整係数を求め、前記色相が前記所定の範囲外にある画素に対して第1の彩度調整係数を所定の値とし、前記第1の彩度調整係数の画素空間上の低域フィルタ出力を第2の彩度調整係数とし、前記第2の彩度調整係数を前記彩度調整係数kとして彩度調整を行うので、前記色相が所定の範囲内外の境界に相当する画素領域で生じる、彩度調整処理の有無による色ノイズを平滑化して、対数変換型の固体撮像素子で生じる特定の色相の残像の不自然な色づきを、より自然に軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0071】
以上に説明したように、本発明によれば、対数変換型の固体撮像素子で得られた撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて、該撮像信号から得られるカラー画像の彩度を画素毎に調整するので、動画像の動きのある部分の画素の彩度を落とすことができ、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の不自然な色づきを軽減することができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0073】
(実施形態1)
図1〜図3は、本発明の実施形態1による画像処理装置を説明する図であり、図1は、本実施形態1による、固体撮像素子からの撮像信号を処理する画像処理装置2の詳細を示すブロック図であり、図2は、該固体撮像素子におけるベイヤー型のカラーフィルタアレイの配置(図2(a))、および画素の回路構成(図2(b))を示している。
【0074】
本実施形態1の画像処理装置2は、対数変換型の固体撮像素子である対数イメージャ1で得られた撮像信号に基づいてカラー画像信号を再構築してモニタディスプレイ3に出力するものである。つまり、この画像処理装置2は、該撮像信号に基づいて各画素に対応する輝度信号Yおよび色相信号Hue1およびHue2を作成するデモザイク処理部21と、上記色相信号Hue1およびHue2と、彩度を落とす度合いを示す脱色化係数Dfとに基づいて彩度調整係数kを算出する彩度調整係数演算部22と、輝度信号Yの濃淡の調子を変換するトーンマッピング部23と、トーンマッピング部23で処理された輝度信号Ymおよびデモザイク部21から出力された色相信号Hue1およびHue2に基づいてカラー画像信号Rs、Gs、Bsを生成するRGB再構成部24と、該カラー画像信号Rs、Gs、Bsの彩度を、彩度調整係数kに基づいて調整する彩度調整部25とを備えている。
【0075】
以下、図1に示す対数イメージャ1および画像処理装置2について詳述する。
【0076】
対数型イメージャ1は、画素をマトリックス状に配列してなる画素アレイと、該画素アレイ上に、分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタを、個々の画素に対応するよう配置してなるベイヤー型のカラーフィルタアレイ10とを有している。
【0077】
被写体の撮像を行う対数イメージャ1は、被写体の画像を表す撮像信号を生成して出力する対数変換型の固体撮像素子である。具体的には、対数イメージャ1は、被写体が発するもしくは被写体で反射する光がレンズ等の光学系を介して固体撮像素子面に入射する光量を輝度レベルに対数変換するものである。この対数イメージャ1の各画素は、図2(b)に示すように、電源電位Vddと基板電位Vssとの間に直列に接続されたフォトダイオード61およびMOSトランジスタ62と、該トランジスタのソース電圧Vpdがゲートに入力される増幅トランジスタ64と、該増幅トランジスタ64のソースと画素から撮像信号を読み出すための読み出し信号線Lとの間に接続された選択トランジスタ65とを有している。ここで、該増幅トランジスタ64のドレインは電源電位Vddに接続されている。
【0078】
また、該対数イメージャ1のマトリックス状に配置されたフォトダイオードの上部には、図2に示すベイヤー型と呼ばれる、レッド、グリーン、ブルーの3種類のカラーフィルタを規則的に配置したカラーフィルタアレイ10が設けられている。
【0079】
具体的には、このカラーフィルタアレイ10は、グリーンフィルタFg、レッドフィルタFr、およびブルーフィルタFbを、各画素を構成する光電変換素子であるフォトダイオード上に配置してなるものであり、このカラーフィルタアレイ10では、グリーンフィルタFgとレッドフィルタFrとを交互に配列してなる第1フィルタ行と、グリーンフィルタFgとブルーフィルタFbとを交互に配列してなる第2フィルタ行とが、隣接するフィルタ行間で、グリーンフィルタFg同士が隣接しないよう配置されている。
【0080】
つまり、ベイヤー型のカラーフィルタアレイ10では、各フォトダイオードの上部に、レッド、グリーン、ブルーの3種類のカラーフィルタのうち、いずれかひとつのカラーフィルタが設置されている。このようなベイヤー型の固体撮像素子の撮像信号から、ディスプレイ表示用の画像信号を合成するには、得られた撮像信号から、各画素に対応するRGBの3種の信号が得られるように、空間的な補間処理が必要となる。このようなRGB信号の合成処理はデモザイク処理と呼ばれる。
【0081】
上記画像処理装置2のデモザイク処理部21は、対数イメージャ1の撮像信号を受け、該撮像信号から各画素に対応するRGBの3種の信号を得る、前述のデモザイク処理を行うものである。このデモザイク処理の方法は、バイリニア法、バイキュービック法、STH(Smooth Hue Transition)法等、多岐に亘る手法があり、いずれかの方法を用いて画素毎にRGBの3種類の信号が合成される。また、デモザイク処理部21は、撮像信号に基づいて合成されたRGB信号を、各画素に対応する輝度信号Y及び色相信号Hue1,Hue2に変換して出力するものである。
【0082】
ここで、輝度信号Yは、式(4a)に示すように、レッド、グリーン、ブルーの各信号の線形結合として求められる。また色相信号Hue1,Hue2は、式(4b)、(4c)に示すように、それぞれレッドとグリーンの信号比、ブルーとグリーンの信号比として求めることができる。
【0083】
Y=0.33R+0.56G+0.11B ・・・(4a)
Hue1=R/G ・・・(4b)
Hue2=B/G ・・・(4c)
ここで、R、G、Bは、それぞれデモザイク処理部21で合成された画素毎のRGBの3種類の信号成分を示す。また0.33,0.56,0.11等の係数値は、人間の視感度特性に由来する係数であり、また色度座標系で基準となるレッド、グリーン、ブルーの色が変わればその係数値も様々な値となる。
【0084】
上記彩度調整係数演算部22は、デモザイク処理部21から出力された色相信号Hue1,Hue2、および上記外部から設定される脱色化係数Dfに基づいて彩度調整係数kを画素毎に演算して出力する。彩度調整係数演算部22の詳細な構成については後述する。
【0085】
トーンマッピング部23は、デモザイク処理部21から出力された輝度信号Yから、モニタディスプレイ3のダイナミックレンジ範囲内に収まり、且つ細部のコントラストが失われないようなマッピング手法で、輝度信号の濃淡の調子を変換した、輝度信号Ymを出力するものである。このようなマッピング手法として、レティネックス理論を応用した方法、バイラテラルフィルタを用いた方法等が知られている。
【0086】
RGB再構成部24は、デモザイク処理部21から出力された色相信号Hue1,Hue2と、トーンマッピング部23から出力された輝度信号Ymとから、式(5a)〜(5d)に従って、画素毎にRs、Gs、Bsの3種類の信号を合成して出力するものである。
【0087】
【数1】

上記彩度調整部25は、RGB再構成部24から出力されたRs、Gs、Bsの3種類の各信号に対して、彩度調整係数演算部22から出力された彩度調整係数kによって式(6a)〜(6d)に従って彩度の調整を行い、その結果であるRd、Gd、Bdの3種類の信号をモニタディスプレイ3に出力するものである。
【0088】
Rd=k・(Rs−Y+Yd) ・・・(6a)
Gd=k・(Gs−Y+Yd) ・・・(6b)
Bd=k・(Bs−Y+Yd) ・・・(6c)
Yd=0.33Rs+0.56Gs+0.11Bs ・・・(6d)
次に、彩度調整係数演算部22の内部構成について説明する。
【0089】
図3は、彩度調整係数演算部22の内部構成を示すブロック図である。
【0090】
この彩度調整係数演算部22は、画素毎の過去のフレーム間の色相の変化を、色相距離として演算する色相距離演算部221と、デモザイク処理部21から出力された色相信号Hue1、Hue2を格納するフレームメモリ222と、色相信号Hue1、Hue2が予め定められた色相の範囲内にあるかどうかを判定する色相判定部223と、色相判定部223の判定結果に応じて、脱色化係数Dfに基づいて色相距離から画素毎に第1の彩度調整係数k1を演算する第1の彩度調整係数演算部224と、第1の彩度調整係数k1を空間的に平滑化して、上記彩度調整係数演算部22の出力である第2の彩度調整係数(平滑化彩度調整係数)kを生成する彩度調整係数フィルタ部225とを備えている。
【0091】
次に動作について説明する。
【0092】
対数イメージャ1で被写体の撮像が始まると、つまり、被写体が発したもしくは被写体で反射した光が、レンズ等の光学系を介してその固体撮像素子面に入射すると、対数イメージャ1は、その入射光量を輝度レベルに対数変換する。これにより、対数イメージャ1は、被写体の画像を表す撮像信号を生成して出力する。
【0093】
画像処理装置2に対数イメージャ1からの撮像信号が入力されると、デモザイク処理部21は、対数イメージャ1の撮像信号を受け、該撮像信号に対して前述のデモザイク処理を施す。これにより、対数イメージャ1で得られた撮像信号から、各画素に対応するRGBの3種の信号(RGB信号)が得られる。また、デモザイク処理部21では、得られたRGB信号が、各画素に対応する輝度信号Y及び色相信号Hue1,Hue2に変換される。
【0094】
輝度信号Yは、上記式(4a)〜(4c)に示すように、レッド、グリーン、ブルーの各信号の線形結合として求められる。また色相信号Hue1,Hue2は、式(4b)および(4c)に示すように、それぞれレッドとグリーンの信号比、ブルーとグリーンの信号比として求められる。
【0095】
このとき、トーンマッピング部23は、デモザイク処理部21から出力された輝度信号Yから、モニタディスプレイ3のダイナミックレンジ範囲内に収まり、且つ細部のコントラストが失われないようなマッピング手法で、輝度信号の濃淡の調子を変換した、輝度信号Ymを出力する。
【0096】
RGB再構成部24では、デモザイク処理部21から出力された色相信号Hue1,Hue2と、トーンマッピング部23から出力された輝度信号Ymとから、式(5)に従って画素毎にRs、Gs、Bsの3種類の信号を合成して出力する。
【0097】
また、彩度調整係数演算部22は、デモザイク処理部21から出力された色相信号Hue1,Hue2と脱色化係数Dfとに基づいて、彩度調整係数kを画素毎に演算して出力する。
【0098】
以下、彩度調整係数演算部22の動作について詳述する。
【0099】
彩度調整係数演算部22では、色相距離演算部221が、図1に示すデモザイク処理部21から出力された色相信号Hue1、Hue2をフレームメモリ222に格納する。言い換えると、フレームメモリ222は、色相距離演算部221から出力された過去の複数のフレームの色相信号Hue1、Hue2を記憶する。色相距離演算部221は、過去の複数のフレームの色相信号Hue1、Hue2から、画素毎の過去のフレーム間の色相の変化を、色相距離として演算する。色相距離を演算する際は、時系列順に並んだフレーム(例えば3フレーム以上のフレーム)の隣接したフレーム間の色相の変化について演算を行い、その絶対値の総和を色相Hue1、Hue2について求める。また、色相距離演算部221は、色相Hue1、Hue2について求められた色相距離M(Hue1)と色相距離M(Hue2)との和を演算し、色相距離Mとして出力する。
【0100】
前述した色相距離Mの演算を式(7a)〜(7c)に示す。
【0101】
【数2】

これらの式(7a)〜(7c)において、(i,j)は画素空間上の二次元の座標を示す。frは時系列順に並んだフレームのインデックスであり、nは色相距離の演算に用いるフレームの数である。
【0102】
また、色相判定部223は、図1のデモザイク処理部21から出力された色相信号Hue1、Hue2が予め定められた色相の範囲内にあるかどうかを判定し、その判定結果を第1の彩度調整係数演算部224に出力する。このとき、前記色相の範囲は、対数イメージャ1で動きのある被写体を撮像した際、黒から白へと輝度が大きく変化する場合に動き部分のエッジに生じる緑色と、その撮像の際に白から黒へと輝度が大きく変化する場合に動き部分のエッジに生じるマゼンタ色とが含まれるように定める。
【0103】
第1の彩度調整係数演算部224は、色相判定部223の判定結果が真の場合、以下の式(8)に従って第1の彩度調整係数k1を演算する。
【0104】
k1=1/(1+Df・Hd)=1/(1+Df・M) ・・・(8)
ここで、Hdは撮像信号の画素毎の時系列変化量であり、式(8)に示すように色相距離演算部221の色相距離出力Mを用いる。またDfは脱色化係数であり、この値が大きいほど彩度を落とす度合いが大きくなる。
【0105】
一方、色相判定部223の判定結果が偽の場合、第1の彩度調整係数k1の値は1とする。第1の彩度調整係数演算部224は、前述のように、色相判定部223の判定結果に応じて画素毎に第1の彩度調整係数k1を演算し、彩度調整係数フィルタ部225へ出力する。
【0106】
彩度調整係数フィルタ部225は、第1の彩度調整係数演算部224の出力である、第1の彩度調整係数k1に対し、空間ローパスフィルタ処理を施すことにより、第1の彩度調整係数k1を空間的に平滑化し、図1の彩度調整係数演算部22の出力となる第2の彩度調整係数kとして図1の彩度調整部25に出力する。
【0107】
前述のように、彩度調整部25は、RGB再構成部24から出力されたRs、Gs、Bsの3種類の信号に対し、彩度調整係数演算部22から出力された彩度調整係数kによって式(6a)〜(6d)に従って彩度の調整を行う。
【0108】
その結果得られたRd、Gd、Bdの3種類の信号は、対数イメージャ1で動きのある被写体を撮像した際、黒から白へと輝度が大きく変化する場合に動き部分のエッジに生じる緑色と、白から黒へと輝度が大きく変化する場合に動き部分のエッジに生じるマゼンタ色とに対して選択的に、また式(8)から判るように、色相距離が大きいときには彩度の低下度合いが大きくなるように彩度調整係数が設定され、色相距離が小さいときには彩度の低下度合いが小さくなるように彩度調整係数が設定される。
【0109】
このように彩度調整部25は、RGB再構成部24から出力されたRs、Gs、Bsの3種類の信号に対し、彩度調整係数演算部22から出力された彩度調整係数kによって式(6a)〜(6d)に従って彩度の調整を行った後、彩度調整により得られたRd、Gd、Bdの3種類の信号をモニタディスプレイ3に出力する。
【0110】
このように本発明の実施形態1では、対数イメージャ1により得られた撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて、該撮像信号から得られるカラー画像の彩度を画素毎に調整するので、動画像の動きのある部分の画素の彩度を落とすことができ、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の不自然な色づきを軽減することができる。
【0111】
また、この実施形態1では、各画素のフレーム間の色相距離に基づいて対数イメージャ1により得られたカラー画像の彩度を調整するので、動画像の色相に変化がある部分の彩度を落とすことができ、対数イメージャ1で生じる残像の不自然な色づきを軽減することができる。
【0112】
また、この実施形態1では、各画素のフレーム間の色相差の絶対値を色相距離とするので、各画素のフレーム間の色相距離を簡単な計算で求めることができ、これによりこの実施形態1の画像処理装置2の回路規模および消費電力を小さくすることができる。
【0113】
また、この実施形態1では、複数種類の色相差の各々の絶対値の総和を前記色相距離としているので、各画素のフレーム間の色相距離を簡単な計算で求めることができ、この実施形態1の画像処理装置2の回路規模および消費電力を小さくすることができる。
【0114】
また、この実施形態1では、時系列順に並んだ3枚以上のフレームの隣接したフレーム間の色相距離の総和をもって前記色相距離とするので、対数イメージャ1の残像が3枚以上のフレームに渡る場合においても、色相の時系列変化量を確実に捕捉して彩度の調整を行うことができる。
【0115】
また、この実施形態1では、前記カラーフィルタの配列をベイヤー型とし、レッド、グリーン、ブルーの3色のうちの、ひとつの色と他の2色との、2種類の色比を色相とするので、対数変換型の固体撮像素子の出力信号が対数形式であることから、色比の計算を、ひとつの色の撮像信号と他の2色の撮像信号との差を求めることで行うことができ、このため、この実施形態1の画像処理装置2の回路規模および消費電力を小さくすることができる。
【0116】
また、この実施形態1では、撮像信号の画素毎の時系列変化量の大きさに反比例した前記カラー画像の彩度の調整を画素毎に行うので、撮像信号の画素毎の変化量が大きいときには彩度を大きく落とし、撮像信号の画素毎の変化量が小さいときには彩度を小さく落とすことで、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の色づきが大きいときには彩度を大きく落とし、色づきが小さいときには彩度を小さく落とすというように、適応的に残像の色づきを軽減することができる。
【0117】
また、この実施形態1では、彩度の調整前と彩度調整後で、レッド、グリーン、ブルーの各信号成分の総和を等しくすることにより、対数イメージャで生じる残像の色づきを軽減する際、処理前と処理後で、レッド、グリーン、ブルーの各信号のトータルの強度を等しくすることができる。
【0118】
また、この実施形態1では、前記彩度調整係数kを、彩度を落とす度合いを示す脱色化係数に基づいて求めるので、対数イメージャ1で生じる残像の色づきの軽減度合いを調節可能となる。
【0119】
また、この実施形態1では、前記色相が所定の範囲内にある画素に対して第1の彩度調整係数を求め、前記色相が前記所定の範囲外にある画素に対して第1の彩度調整係数を所定の値とし、前記第1の彩度調整係数の画素空間上の低域フィルタ出力を第2の彩度調整係数とし、前記第2の彩度調整係数を前記彩度調整係数kとして彩度調整を行うので、前記色相が所定の範囲内外の境界に相当する画素領域で生じる、彩度調整処理の有無による色ノイズを平滑化して、対数変換型の固体撮像素子で生じる特定の色相の残像の不自然な色づきを、より自然に軽減することが可能となる。
(実施形態2)
図4および図5は、本発明の実施形態2による画像処理装置を説明する図であり、図4は、本実施形態2の画像処理装置2aの構成を示すブロック図であり、図5は、該画像処理装置2aを構成する彩度調整係数演算部22aの内部構成を示すブロック図である。
【0120】
この実施形態2の画像処理装置2aは、実施形態1の画像処理装置2における彩度調整係数演算部22に代わる、色相信号Hue1、Hue2および脱色化係数Dfに加えて彩度強調係数Emに基づいて彩度調整係数kを算出する彩度調整係数演算部22aを備えたものである。この彩度調整演算部22aは、実施形態1の彩度調整係数演算部22の構成に加えて、彩度を強調する度合いを示す彩度強調係数Em、および彩度を落とす度合いを示す脱色化係数Dfに基づいて、それぞれの係数の値の応じたテーブル用彩度調整係数を算出する彩度調整係数テーブル演算部226と、該算出されたテーブル用彩度調整係数を含むテーブルを格納する彩度調整係数テーブル格納部227とを備え、さらに、実施形態1の彩度調整演算部22における第1の彩度調整係数演算部224に代えて、色相判定部223の判定結果に応じて、色相距離に応じた第1の彩度調整係数k1を彩度調整係数テーブル格納部227を参照して画素毎に求める第1の彩度調整係数演算部224aを備えたものである。
【0121】
次に動作について説明する。
【0122】
この実施形態2の画像処理装置2aの動作は、彩度調整係数演算部22aの動作のみ実施形態1のものと異なっている。つまり、色相距離演算部221、フレームメモリ222、色相判定部223の動作は実施形態1のものと同様なので説明を省略する。
【0123】
彩度調整係数演算部22aには、外部より、脱色化係数Dfと彩度強調係数Emとが与えられており、彩度調整係数演算部22aの彩度調整係数テーブル演算部226に提供されている。
【0124】
これらの脱色化係数Dfおよび彩度強調係数Emは、画像処理装置2aの外部から制御可能であり、その値が変わったときのみ、彩度調整係数テーブル演算部226は、テーブルを再作成し、再度作成したテーブルを彩度強調係数テーブル格納部227に格納する。
【0125】
ここで、彩度調整係数テーブル演算部226は、式(9)に従って、色相距離Mと彩度調整係数k1との関係を彩度調整係数テーブルとして演算して、再度調整係数テーブル格納部227に出力する。
【0126】
k1=Em/(1+Df・Hd)=Em/(1+Df・M) ・・・(9)
ここでDfは脱色化係数であり、この値が大きいほど彩度を落とす度合いが大きくなる。またEmは彩度強調係数で、この彩度強調係数Emは、全体的に彩度を強調したい場合には1以上の値を設定する。
【0127】
彩度調整係数テーブル格納部227は、彩度調整係数テーブル演算部226の出力である彩度調整係数テーブルを記憶する。
【0128】
第1の彩度調整係数演算部224aは、色相判定部223の判定結果が真の場合、色相距離Mに対応する彩度調整係数k1を彩度調整係数テーブル格納部227から参照する。一方色相判定部223の判定結果が偽の場合、第1の彩度調整係数演算部224aは、第1の彩度調整係数k1の値は1とする。第1の彩度調整係数演算部224aは、前述のように、色相判定部223の判定結果により、画素毎に第1の彩度調整係数k1を演算し、彩度調整係数フィルタ部225へ出力する。
【0129】
彩度調整係数フィルタ部225は、第1の彩度調整係数演算部224aの出力である、第1の彩度調整係数k1に対し、空間ローパスフィルタ処理を施すことにより、第1の彩度調整係数k1を空間的に平滑化し、図4の彩度調整係数演算部22aの出力となる第2の彩度調整係数kとして図4の彩度調整部25に出力する。
【0130】
彩度調整部25は、実施形態1と同様に、RGB再構成部24から出力されたRs、Gs、Bsの3種類の信号に対し、彩度調整係数演算部22から出力された彩度調整係数kによって式(6)に従って彩度の調整を行う。その結果得られたRd、Gd、Bdの3種類の信号は、対数イメージャ1で動きのある被写体を撮像した際、黒から白へと輝度が大きく変化する場合に動き部分のエッジに生じる緑色と、白から黒へと輝度が大きく変化する場合に動き部分のエッジに生じるマゼンタ色とに対して選択的に設定され、また式(9)から判るように、色相距離が大きいときには彩度の低下度合いが大きくなるように彩度調整係数が設定され、色相距離が小さいときには彩度の低下度合いが小さくなるように彩度調整係数が設定される。また同時に彩度強調係数Emにより、画面全体の彩度を強調できる。
【0131】
このように、本実施形態2の画像処理装置2aでは、撮像信号の画素毎の時系列変化量により、画素毎に前記カラー画像の彩度の調整を行うことによって、動画像の動きのある部分の画素の彩度を落とすことができ、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の不自然な色づきを軽減することができる。
【0132】
また色相距離Mと彩度調整係数k1との関係を彩度調整係数テーブルとして予め演算しておくことで、画素毎に式(9)を求める必要が無くなり、画像処理装置の回路規模および消費電力を削減できる。
【0133】
また、この実施形態2では、前記彩度調整係数kを、彩度を落とす度合いを示す脱色化係数と、彩度を強調する度合いを示す彩度強調係数とに基づいて求めるので、脱色化係数Dfにより、画素毎に対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の色づきの軽減度合いを調節できると共に、彩度強調係数Emにより、画面全体の彩度を強調することが可能となる。
【0134】
また、画面全体の彩度強調を行いたい場合にも、式(9)に示すように、彩度強調係数Emの効果を含めて色相距離Mと彩度調整係数k1との関係をテーブル化できるため、画像処理装置の回路規模および消費電力を削減できる。
【0135】
また、この実施形態2においても、前記色相が所定の範囲内にあるときのみ、前記撮像信号の画素毎のフレーム間の色相距離により、画素毎に前記カラー画像の彩度の調整を行うので、対数変換型の固体撮像素子で生じる特定の色相の残像の不自然な色づきを、選択的に軽減することができる。
【0136】
また、この実施形態2では、前記色相が所定の範囲内にある画素に対して第1の彩度調整係数を求め、前記色相が前記所定の範囲外にある画素に対して第1の彩度調整係数を所定の値とし、前記第1の彩度調整係数の画素空間上の低域フィルタ出力を第2の彩度調整係数とし、前記第2の彩度調整係数を前記彩度調整係数kとして彩度調整を行うので、前記色相が所定の範囲内外の境界に相当する画素領域で生じる、彩度調整処理の有無による色ノイズを平滑化して、対数変換型の固体撮像素子で生じる特定の色相の残像の不自然な色づきを、より自然に軽減することが可能となる。
【0137】
なお、上記画像処理装置は、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータを、上記画像処理装置の各部に機能を実行するよう動作させることにより、上記画像処理装置をコンピュータにて実現させる画像処理プログラム、およびその画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0138】
さらに、上記実施形態1および2では、特に説明しなかったが、対数変換型の固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いるとともに、該対数変換型の固体撮像素子で得られた撮像信号に基づいてRGB信号を再構成する信号処理部として用いた電子情報機器では、上記実施形態1および2の画像処理装置の少なくともいずれかを、上記信号処理部として用いることができる。このような電子情報機器としては、例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、画像入力カメラ、スキャナ、ファクシミリ、カメラ付き携帯電話装置などが挙げられる。
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3として、対数変換型の固体撮像素子とともに、該固体撮像素子により得られた撮像信号を処理する信号処理部として、上記実施形態1および2のいずれかの画像処理装置を用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【0139】
図6に示す本発明の実施形態3による電子情報機器90は、対数変換型の固体撮像素子を用いた固体撮像部91と、該固体撮像部の固体撮像素子にて得た撮像信号を信号処理する、上記実施形態1および2の画像処理装置の少なくとも1つを用いた信号処理部91aと、該信号処理部で処理した高品位なカラー画像信号を記録用に所定の信号処理した後に記録する記録メディアなどのメモリ部92と、このカラー画像信号を表示用に所定の信号処理した後に液晶表示画面などの表示画面上に表示する液晶表示装置などの表示手段93と、このカラー画像信号を通信用に所定の信号処理をした後に通信処理する送受信装置などの通信手段94と、このカラー画像信号を印刷(印字)して出力(プリントアウト)する画像出力手段95とのうちの少なくとも撮像部91および信号処理部91aを有している。
【0140】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、対数変換する固体撮像素子から出力された撮像信号からカラー画像信号を再構成する画像処理装置および画像処理方法、並びにこのような画像処理方法をコンピュータにより行うための画像処理プログラムおよびこのような画像処理プログラムを格納した記録媒体、並びに、上記のような画像処理装置を用いた電子情報機器の分野において、対数変換型の固体撮像素子で生じる残像の不自然な色づきを軽減することができる画像処理装置および画像処理方法を提供するものであり、対数変換型の固体撮像素子を用いたカメラ付き携帯電話を始め、ディジタル一眼レフカメラ、ムービーカメラ等の各種撮影装置に組み込んで利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、本発明の実施形態1による画像処理装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、上記実施形態1の画像処理装置の前段の固体撮像素子を説明する図であり、図2(a)は、該固体撮像素子で用いられているベイヤー型のカラーフィルタアレイを示し、図2(b)は、該固体撮像素子における画素の回路構成を示している。
【図3】図1に示す実施形態1の画像処理装置における彩度調整係数演算部22の詳細な内部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態2による画像処理装置の内部構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す実施形態2の画像処理装置における彩度調整係数演算部22aの詳細な内部構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態3として、本発明の実施形態1および2のいずれかの画像処理装置を、対数イメージャとともに用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【図7】図7は従来の対数変換型の固体撮像素子を説明する図であり、図7(a)は、その画素内に設けられるフォトダイオードと対数変換トランジスタの接続関係を示す回路図、図7(b)および図7(c)はそれぞれ、増光モードおよび減光モードにおける出力電圧Vpdの応答特性曲線をグラフで示す図、図7(d)は、該対数変換トランジスタのゲート−ソース間電圧Vgsとドレイン電流Idとの関係をグラフで示す図である。
【符号の説明】
【0143】
1 対数イメージャ
2 画像処理装置
3 モニタディスプレイ
10 ベイヤー型カラーフィルタアレイ
21 デモザイク処理部
22、22a 彩度調整係数演算部
23 トーンマッピング部
24 RGB再構成部
25 彩度調整部
61 フォトダイオード
62 対数変換トランジスタ
63 寄生容量
64 増幅トランジスタ
65 選択トランジスタ
90 電子情報機器
91 固体撮像部
91a 信号処理部
92 メモリ部
93 表示手段
94 通信手段
95 画像出力手段
221 色相距離演算部
222 フレームメモリ
223 色相判定部
224、224a 第1の彩度調整係数演算部
225 彩度調整係数フィルタ部
226 彩度調整係数テーブル演算部
227 彩度調整係数テーブル格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス状に配列された複数の光電変換素子と、該光電変換素子上に規則的に配置され、分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタとを有する、入射光の光量を対数変換する固体撮像素子から出力された撮像信号からカラー画像信号を再構成する画像処理装置であって、
該撮像信号の画素毎の時系列変化量を算出する時系列変化演算部と、
該時系列変化演算部により算出された撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて、画素毎に該カラー画像信号の彩度を調整する彩度調整手段とを備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記時系列変化量は、各画素のフレーム間の色相距離である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記色相距離は、各画素のフレーム間の色相差の絶対値である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記色相距離は、複数種類の色相差の各々の絶対値の総和である請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記色相距離は、時系列順に並んだ3枚以上のフレームのうちの隣接したフレーム間の色相距離の総和である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記カラーフィルタの配列は、ベイヤー型であり、
前記色相は、レッド、グリーン、ブルーの3色のうちの、ひとつの色と他の2色との、2種類の色比で表わしたものである請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記彩度調整手段は、前記時系列変化量の大きさに反比例する前記彩度の調整を行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記カラー画像信号は、レッド、グリーン、ブルーの3色の原色信号で表わされ、
前記彩度調整手段は、前記彩度の調整を下記の式を満たすよう行う請求項1に記載の画像処理装置。
R’=k(R−Y)+Y ・・・(1a)
G’=k(G−Y)+Y ・・・(1b)
B’=k(B−Y)+Y ・・・(1c)
ここで、R,G,Bは、彩度調整前のレッド、グリーン、ブルーのカラー画像信号、Yは輝度信号、kは前記時系列変化量から求められた彩度調整係数、R’,G’,B’は彩度調整後のレッド、グリーン、ブルーのカラー画像信号である。
【請求項9】
前記彩度調整係数kは、下記式で表わされる請求項8に記載の画像処理装置。
k=1/(1+Df・Hd) ・・・(2)
ここで、Hdは前記時系列変化量、Dfは彩度を落とす度合いを示す脱色化係数である。
【請求項10】
前記時系列変化演算部は、
画素毎の過去のフレーム間の色相の変化を前記色相距離として演算する色相距離演算部と、
前記撮像信号から得られる色相信号が、予め定められた範囲内の色相を示すものであるか否かを判定する色相判定部と、
該色相判定部の判定結果に応じて該色相距離から画素毎に彩度調整係数を演算する彩度調整係数演算部とを有する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記時系列変化演算部は、
前記彩度調整係数演算部により得られた彩度調整係数を空間的に平滑化して平滑化彩度調整係数を生成する彩度調整フィルタ部を有する請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記彩度調整係数kは、下記式で表わされる請求項8に記載の画像処理装置。
k=Em/(1+Df・Hd) ・・・(3)
ここで、Emは、彩度を強調する度合いを示す彩度強調係数、Hdは前記時系列変化量、Dfは彩度を落とす度合いを示す脱色化係数である。
【請求項13】
前記時系列変化量Hdと、前記彩度調整係数kとの関係をテーブル化するテーブル演算部を備え、
前記時系列変化演算部は、該テーブル演算部により得られたテーブルを参照して前記彩度調整係数kを求める請求項9または請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記時系列変化演算部は、
画素毎の過去のフレーム間の色相の変化を前記色相距離として演算する色相距離演算部と、
前記撮像信号から得られた色相信号が、予め定められた範囲内の色相を示すものであるか否かを判定する色相判定部と、
彩度を強調する度合いを示す彩度強調係数、および彩度を落とす度合いを示す脱色化係数に基づいて、それぞれの係数の値の応じたテーブル用彩度調整係数を算出する彩度調整係数テーブル演算部と、
該算出されたテーブル用彩度調整係数を含むテーブルを格納する彩度調整係数テーブル格納部と、
該色相判定部の判定結果に応じて該色相距離に基づいて、該テーブルを参照して画素毎に彩度調整係数を求める彩度調整係数演算部とを有する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記時系列変化演算部は、前記彩度調整係数演算部により求められた彩度調整係数を空間的に平滑化して、平滑化彩度調整係数を生成する彩度調整フィルタ部を有する請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記彩度調整手段は、前記色相が所定の範囲内にあるときのみ、前記彩度の調整を行う請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記彩度調整手段は、前記色相が所定の範囲内にある画素に対して第1の彩度調整係数を求め、前記色相が前記所定の範囲外にある画素に対して第1の彩度調整係数を所定の値とし、前記第1の彩度調整係数の画素空間上の低域フィルタ出力を第2の彩度調整係数とし、該第2の彩度調整係数に基づいて前記カラー画像信号の彩度調整を行う請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項18】
マトリックス状に配列された複数の光電変換素子と、該光電変換素子上に規則的に配置され、分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタとを有する、入射光の光量を対数変換する固体撮像素子から出力された撮像信号からカラー画像信号を再構成する画像処理方法であって、
該撮像信号の画素毎の時系列変化量を算出する演算ステップと、
該演算ステップで算出された撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて、画素毎に該カラー画像信号の彩度を調整する彩度調整ステップとを含む画像処理方法。
【請求項19】
マトリックス状に配列された複数の光電変換素子と、該光電変換素子上に規則的に配置され、分光特性が異なる複数種類のカラーフィルタとを有する、入射光の光量を対数変換する固体撮像素子から出力された撮像信号からカラー画像信号を再構成する画像処理方法を、コンピュータにより行うための画像処理プログラムであって、
該撮像信号の画素毎の時系列変化量を算出する演算ステップと、
該演算ステップで算出された撮像信号の画素毎の時系列変化量に基づいて、画素毎に該カラー画像信号の彩度を調整する彩度調整ステップとを含む画像処理プログラム。
【請求項20】
コンピュータにより画像処理を行うための画像処理プログラムを格納した記録媒体であって、
該画像処理プログラムは、請求項19に記載の画像処理プログラムである記録媒体。
【請求項21】
被写体の撮像を行う対数変換型の固体撮像素子と、該固体撮像素子により得られた撮像信号を処理する画像処理部とを備えた電子情報機器であって、
該画像処理部は、請求項1に記載の画像処理装置である電子情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−290795(P2009−290795A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143794(P2008−143794)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】