説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび印刷システム

【課題】視覚上でコントラストを強くした画像を低コストで印刷する。
【解決手段】画像処理装置100は、単色画像の背景領域と、背景領域に重畳された前景であって、背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度を背景領域およびパターン領域の何れの濃度よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー画像データをモノクロ画像データに変換するため、下記の式(1)に従ってカラー画像データのRGB値からグレー値を算出し、グレー値で表されるモノクロ画像データを得る手法が広く用いられている。グレー値には、元のカラー画像の明度情報が反映されるため、この手法によれば、元のカラー画像の明度が反映されたモノクロ画像の画像データを得ることができる。なお、式(1)の「R」,「G」,「B」は、それぞれ、カラー画像データのレッドの階調値、グリーンの階調値、ブルーの階調値であり、「Gray」はグレー値、すなわち黒単色の濃度である。
Gray=0.3R+0.59G+0.11B ・・・(1)
【0003】
また、式(1)に従うグレー変換によってカラー画像データをモノクロ画像データに変換した場合、例えば、(R,G,B)=(255,0,0)、(0,128,0)などの複数のRGB値は同等のグレー値に変換される。このように、変換前のカラー画像においては異なっていた2つの色が、モノクロ画像においては同じグレー値で表現されることとなり、変換後のモノクロ画像から変換前の元のカラー画像の色を区別できなくなることがあった。
【0004】
そこで、特許文献1には、カラー画像をシアン、マゼンタ、イエローの各色画像に変換し、各色画像に対して異なるパターンを生成させるディザマトリクスを適用することによって各色のドットパターンを生成し、各色のドットパターンを合成することによりモノクロ画像データを得る手法が提案されている。特許文献1に記載の手法によれば、シアン、マゼンタ、イエローの各色についての互いに異なるパターンを重畳したモノクロ画像が得られるので、例えば、(R,G,B)=(255,0,0)、(0,128,0)など、グレー値に変換した場合には同等の値となる色であっても、元のカラー画像における色の違いが、異なるパターンの模様となってモノクロ画像に反映される。したがって、変換前のカラー画像に、グレー変換した場合には区別がつかなくなる色が用いられていたとしても、元のカラー画像における色の違いを区別可能なモノクロ画像の画像データに変換できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−23895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、モノクロのドットパターンを各色に応じて生成するため、カラー画像で多くの色が使われている場合には、さまざまなドットパターンを生成する必要があり、これらのドットパターンを印刷する際には、ドットパターンの識別を容易にすべくコントラストが強い画像を印刷する必要があった。この結果、例えば、印刷手段が黒色のトナーを使うレーザープリンターの場合、コントラストを強くして印刷するためにトナーの消費量が増加し、印刷コストが上昇した。
そこで本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、視覚上でコントラストを強くした画像を低コストで印刷することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる画像処理装置は、単色画像の背景領域と、前記背景領域に重畳された前景であって前記背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度を、前記背景領域および前記パターン領域の何れの濃度よりも小さくする濃度決定部を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、単色画像の背景領域と、背景領域に重畳された前景であって背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度は、背景領域およびパターン領域の何れの濃度よりも小さくなるため、色の対比効果によりコントラストが強い単色画像として視覚され、このような単色画像を印刷する場合、境界領域はパターン領域と背景領域よりも明るく印刷されるため、トナー等の使用を抑制でき、印刷コストの軽減が図れる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記濃度決定部は、更に、前記背景領域の濃度および前記パターン領域の濃度の何れか大きい方の濃度を小さくすることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、所望のコントラストを確保しつつ、背景領域の濃度およびパターン領域の濃度のいずれか大きい濃度を小さくできるため、印刷のためのトナーの使用を更に抑制できる。
【0012】
[適用例3]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記濃度決定部は、前記背景領域の濃度、前記パターン領域の濃度および前記境界領域の濃度の少なくとも1つが規定されたテーブルを参照することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、それぞれの濃度を迅速に取得できる。
【0014】
[適用例4]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記単色画像はハッチパターンであっても良い。
【0015】
[適用例5]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記単色画像は、前記パターン領域の濃度が前記背景領域の濃度よりも大きくても良い。
【0016】
[適用例6]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記単色画像は、前記背景領域の濃度が前記パターン領域の濃度よりも大きくても良い。
【0017】
[適用例7]
本適用例にかかる画像処理方法は、単色画像の背景領域と、前記背景領域に重畳された前景であって前記背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度を、前記背景領域および前記パターン領域の何れの濃度よりも小さくする濃度決定工程を備えることを特徴とする。
【0018】
このような方法によれば、単色画像の背景領域と、背景領域に重畳された前景であって背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度は、背景領域およびパターン領域の何れの濃度よりも小さくなるため、色の対比効果によりコントラストが強い単色画像として視覚され、このような単色画像を印刷する場合、境界領域はパターン領域と背景領域よりも明るく印刷されるため、トナー等の使用を抑制でき、印刷コストの軽減が図れる。
【0019】
[適用例8]
本適用例にかかる画像処理プログラムは、単色画像の背景領域と、前記背景領域に重畳された前景であって前記背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度を、前記背景領域および前記パターン領域の何れの濃度よりも小さくする濃度決定機能を備えることをコンピューターに実行させることを特徴とする。
【0020】
このような機能によれば、単色画像の背景領域と、背景領域に重畳された前景であって背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度は、背景領域およびパターン領域の何れの濃度よりも小さくなるため、色の対比効果によりコントラストが強い単色画像として視覚され、このような単色画像を印刷する場合、境界領域はパターン領域と背景領域よりも明るく印刷されるため、トナー等の使用を抑制でき、印刷コストの軽減が図れる。
【0021】
[適用例9]
本適用例にかかる印刷システムは、カラー画像の色に対応する模様を単色の濃度で表す単色パターンを決定し、前記単色パターンの画像領域のうち前記模様の背景となる背景領域の濃度と前記模様に重畳された前景であるパターン領域の濃度を決定し、前記カラー画像に対応する画像領域に、決定した濃度を有する前記背景領域および前記パターン領域を含む単色画像を生成し、生成した前記単色画像を印刷する印刷システムであって、前記背景領域と、前記背景領域との濃度差が一定値を超える前記パターン領域と、の境界となる境界領域の濃度を、前記背景領域および前記パターン領域の何れの濃度よりも小さくする濃度決定部を備えることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、単色画像の背景領域と、背景領域に重畳された前景であって背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度は、背景領域およびパターン領域の何れの濃度よりも小さくなるため、色の対比効果によりコントラストが強い単色画像として視覚され、このような単色画像を印刷する場合、境界領域はパターン領域と背景領域よりも明るく印刷されるため、トナー等の使用を抑制でき、印刷コストの軽減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る印刷システムの概略構成を示す図。
【図2】画像処理装置のソフトウェア構成を示す図。
【図3】パターン選択テーブルの一例を示す図。
【図4】ハッチパターンの一例を示す図。
【図5】色相環上の色相とハッチパターンの対応例を示す図。
【図6】画像処理装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
(実施形態)
【0026】
図1は、本実施形態に係る印刷システムの概略構成を示した図である。図1に示すように、印刷システム1は、ホストコンピューター10と、プリンター20と、を備え、ホストコンピューター10とプリンター20とは相互にデータ通信可能に接続されている。
【0027】
プリンター20は、用紙などの媒体に印刷する印刷エンジン21と、印刷エンジン21の動作などを制御するコントローラー22と、を備えている。プリンター20は、コントローラー22の制御により、ホストコンピューター10から印刷ジョブを受信する処理、印刷ジョブに従う印刷を印刷エンジン21に実行させる処理などを行う。尚、本実施形態では、プリンター20はレーザー光を利用して感光体にトナーを付着させ、それを熱と圧力で紙に転写して印刷を行うレーザープリンターを想定する。
【0028】
ホストコンピューター10は、プリンター20に対応するプリンタードライバー40(図2)が予めインストールされた汎用のパーソナルコンピューターであり、プリンター20に対して印刷ジョブを送信するプリンター20のホスト装置である。このホストコンピューター10は、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、ハードディスクドライブ14と、データ取得装置15と、通信I/F16と、を備えている。ホストコンピューター10のこれらの構成は、バス17に接続されており、バス17を介してデータ通信可能になっている。
【0029】
CPU11は、ホストコンピューター10の各構成を制御する制御装置である。ROM12はホストコンピューター10を制御するための所定のプログラムなどが記録された不揮発性のメモリー、RAM13はワーキングメモリーなどとして用いられる汎用のメモリーである。
【0030】
データ取得装置15は、CD−ROM等の記録媒体の読み取りや、外部のサーバーとのネットワーク通信等を介して、プリンター20のドライバープログラムDP、後述するパターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDB等のデータを取得する。
ハードディスクドライブ14には、データ取得装置15が取得したドライバープログラムDP、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDB等が格納される。
【0031】
通信I/F16は、ケーブルまたは無線通信によってプリンター20と接続するインターフェイス部分である。プリンター20とホストコンピューター10との通信は、通信I/F16を介して行われる。
【0032】
また、ホストコンピューター10のCPU11は、ハードディスクドライブ14に格納されたドライバープログラムDPのデータをインストール処理することで、ホストコンピューター10を画像処理装置100として機能させる。以下、画像処理装置100について説明する。
【0033】
図2は、画像処理装置100のソフトウェア構成を示した図である。図2に示すように、画像処理装置100は、アプリケーション30と、プリンタードライバー40と、を有している。
【0034】
アプリケーション30は、文書作成ソフトウェアやウェブブラウザーなど、プリンター20に対する印刷要求元となるソフトウェアである。アプリケーション30は、印刷要求および印刷の対象とするカラー画像データを生成してプリンタードライバー40に受け渡す。
本実施形態では、アプリケーション30は、ホストコンピューター10の基本動作を制御するソフトウェアであるオペレーティングシステム(OS)のグラフィック処理機能(GDI)に対して印刷処理を行い、これを受けて、GDIがプリンタードライバー40に対して描画命令を送ることで、プリンタードライバー40は印刷要求および印刷の対象とするカラー画像データを取得するが、これには限定されない。
【0035】
プリンタードライバー40は、プリンター20による印刷を制御するためのソフトウェアである。このプリンタードライバー40は、アプリケーション30から受け取った印刷要求およびカラー画像データから、プリンター20が処理可能なデータ形式の印刷データ(ジョブデータ)を生成し、通信I/F16を介してプリンター20に印刷データを送信する。これにより、プリンタードライバー40は、プリンター20に印刷を実行させる。
【0036】
また、本実施形態のプリンタードライバー40は、カラー画像データを、ハッチ模様付きのモノクロ画像(単色画像)データに変換することにより、元のカラー画像における色の違いをハッチングの模様によって区別可能とするモノクロ画像をプリンター20に印刷させる機能を有している。このハッチ模様付きモノクロ印刷の機能を実現するため、プリンタードライバー40は、パターン決定部41、パターン濃度決定部42およびモノクロ画像データ生成部43を有している。尚、これらの機能は、上述したハードウェアとドライバープログラムDP等のソフトウェアが協働することで実現している。
【0037】
パターン決定部41は、カラー画像データのカラー画像の色、特に色相に応じて、カラー画像データの画像領域に対して適用するハッチパターンを決定する処理を行う。なお、本実施形態では、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線などのハッチ模様を単色の濃度で表した複数種類のハッチパターン(単色パターン)が用いられる。パターン決定部41は、パターン選択テーブルPTを参照して複数種類のハッチパターンの中から、カラー画像に適用するハッチ模様のハッチパターンを選択する。
【0038】
パターン濃度決定部(濃度決定部)42は、カラー画像データのカラー画像の色、特に明度に応じて、ハッチパターンの濃度を決定する処理を行う。尚、本実施形態のハッチパターンは、ハッチ模様の背景となる背景領域と、背景領域に重畳して描かれ背景に対しての前景となるハッチ模様自体のパターン領域と、背景領域とパターン領域の境界領域と、を有する。また、パターン濃度決定部42は、背景領域とパターン領域の濃度差が一定値を超える場合、境界領域の濃度を背景領域およびパターン領域の何れの濃度よりも小さくするように決定する機能を備える。
本実施形態では、パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTやパターン画像データベースPDBを参照して領域毎の濃度を決定する。即ち、パターン選択テーブルPTは、図3に示すように、背景領域における単色の濃度(以下、「背景濃度」という)、パターン領域における単色の濃度(以下、「前景濃度」という)、および境界領域における単色の濃度(以下、「境界濃度」という)を含んでいる。
【0039】
尚、本実施形態では、図3に示すように、背景濃度と前景濃度との差は予め決められた一定値以上になると共に、境界濃度は背景濃度および前景濃度の何れよりも小さく、即ち、明るくなるように規定されている。従って、何れのパターンであっても、背景領域とパターン領域との間に一定値以上の濃度差を有し、境界領域は背景領域およびパターン領域よりも明るい。従って、モノクロ画像を視認する人物は、色の対比効果(明度対比)により、背景領域およびパターン領域の何れか暗い領域がより暗く感じる錯覚を受ける。
モノクロ画像データ生成部43は、パターン決定部41によって決定されたハッチ模様を有するとともに、パターン濃度決定部42によって決定された濃度を有するハッチパターンを、カラー画像の画像領域に適用する処理を行う。これにより、モノクロ画像データ生成部43は、ハッチ模様付きのモノクロ画像データを生成する。尚、本実施形態では、単色画像として黒をベースとしたモノクロ画像を想定するが、これには限定されない。赤色や青色等をベースとした画像も想定できる。
【0040】
次に、カラー画像データをハッチ模様付きのモノクロ画像データに変換する手法を説明するため、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBについて説明する。なお、以下の説明においては、カラー画像データは、カラー画像の各画素について、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色を8ビットの階調値「0〜255」で表すRGB値を有するものとする。モノクロ画像データは、モノクロ画像の各画素について、K(ブラック)の色を8ビットの階調値「0〜255」で表したK値、すなわちK単色の濃度を有するものとする。さらに、カラー画像データのRGB値に関して、(R,G,B)=(255,255,255)が白、(R,G,B)=(0,0,0)が黒に対応し、K値に関して、K=255が黒、K=0が白に対応するものとする。
【0041】
図3は、パターン選択テーブルPTの一例を示した図である。図3に示すように、パターン選択テーブルPTは、カラー値であるRGB値に対して、パターン種類、背景濃度、前景濃度および境界濃度が予め対応付けられている。
【0042】
パターン選択テーブルPTのパターン種類の欄には、上述したように、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線などの複数種類のハッチパターンのうちから、カラー値に対応させるハッチパターンの種類が指定されている。背景濃度の欄には、カラー値に対応させる背景濃度の値が指定されている。前景濃度の欄には、カラー値に対応させる前景濃度の値が指定されている。また、境界濃度の欄には、カラー値に対応させる境界濃度の値が指定されている。
【0043】
このパターン選択テーブルPTにより、カラー画像のRGB値に対応するハッチ模様のハッチパターンと、背景濃度、前景濃度および境界濃度が定まる。具体的には、カラー画像データをモノクロ画像データに変換する際、パターン決定部41は、パターン選択テーブルPTを参照して、カラー画像データの画像領域に対して、パターン選択テーブルPTのパターン種類の欄に指定されたハッチ模様のハッチパターンを選択する。パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTを参照して、ハッチパターンの背景濃度を、パターン選択テーブルPTの背景濃度の欄によって指定された濃度に決定するとともに、ハッチパターンの前景濃度を、パターン選択テーブルPTの前景濃度の欄に指定された前景濃度に決定する。更に、パターン濃度決定部42は、ハッチパターンの境界領域の境界濃度を、パターン選択テーブルPTの境界濃度の欄に指定された境界濃度に決定する。
【0044】
パターン画像データベースPDBには、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線などのパターン種類ごとに、該当するハッチパターンの画像データが予め格納されている。ハッチパターンは、例えば、32×32画素などの所定サイズの画像であり、少なくとも、ハッチパターンの画像領域における背景の領域と前景の領域とを示す情報が含まれている。したがって、後述するように、パターン濃度決定部42は、パターン画像データベースPDBを参照することにより、画像領域に対してハッチパターンを適用した場合に、その画像領域において注目する画素(例えば、1画素分)が、背景領域とパターン領域とのいずれに該当するかの判断が可能になっている。
更に、パターン濃度決定部42は、注目する画素が背景領域であって、パターン領域の境界から所定の画素数以内である場合、境界領域に該当すると判断する。所定の画素数は、1画素固定であっても良く、また、印刷の解像度に応じて決定されても良い。例えば、600dpi(dot per inch)では1画素分を境界領域とし、1200dpiでは2画素分を境界領域としても良い。
【0045】
次に、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBを用いた処理の概要について、ハッチパターンの一例を示す図4を参照して説明する。ここでは、画像全域に(R,G,B)=(239,0,0)のカラー値を有するカラー画像CPを例にして説明する。
【0046】
図4に示すように、ハッチパターンは、カラー画像CPの画像領域を、ハッチパターンと同じサイズで区画した単位領域UAごとに割り当てられる。単位領域UAに割り当てるハッチパターンの種類は、パターン選択テーブルPTに従って決められる。図3に示したパターン選択テーブルPTによれば、カラー画像のRGB値、すなわち(R,G,B)=(239,0,0)であって色相角が0度から30度未満のカラー値に対応するパターン種類は「格子」であるため、カラー画像CPに対して格子線のハッチパターンP1(図5)が適用される。したがって、図4に示すように、カラー画像CPを変換したモノクロ画像MPには、パターン画像データベースPDBに登録された格子線のハッチパターンP1が単位領域UAごとに適用される。
【0047】
また、図3に示したパターン選択テーブルPTによれば、(R,G,B)=(239,0,0)に対応する背景濃度はK=177、前景濃度はK=222、境界濃度はK=168に決定されるので、モノクロ画像MPの背景濃度はK=177、前景濃度はK=222となる。更に、背景領域とパターン領域との境界である1画素分の境界濃度はK=168となる。
従って、1つの格子線パターンにおいて、格子線を示すパターン領域が最も暗く、格子線のエッジと隣接する1画素分の境界領域が最も明るくなり、背景領域は中間の明るさとなる。従って、このモノクロ画像MPを視認する人物は、境界領域の存在により錯覚が生じ、格子線がより暗く感じると共に、格子線パターンが強いコントラストであるように視覚する。また、プリンター20でモノクロ画像MPを印刷する場合、境界領域は他の2領域よりも明るいため、境界領域の印刷に要するトナー量を軽減できる。
このようにして、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBにより定まる格子線のハッチパターンP1は、カラー画像CP全面に対して単位領域UAごとに適用される。本実施形態では、背景濃度よりも濃い前景濃度(K=222)は、境界領域が無い場合と略同一なコントラストとして視覚されるように、境界領域が無い場合(例えば、K=232)よりも小さく決定される。従って、プリンター20でモノクロ画像MPを印刷する場合、前景濃度の印刷に要するトナー量は軽減される。
【0048】
尚、本実施形態では、パターン選択テーブルPTからハッチパターンを選択する基準は、図5に示すような色相環上の色相とハッチパターンP1〜12の対応例に従い、以下の要件を満たすように予め設定されているが、これに限定されるものではない。
【0049】
(1)色相に応じたハッチ模様の割り当てに関する要件
(2)カラー値の明度に応じた背景濃度の変化に関する要件
(3)明度に応じたハッチ模様の線密度に関する要件
(4)補色の関係となる色間におけるハッチ模様の割り当てに関する要件
(5)隣りあう色領域となる色間におけるハッチ模様の割り当てに関する要件
また、本実施形態では、前景濃度が背景濃度よりも濃い(暗い)場合を想定したが、これには限定されない。即ち、パターン領域のハッチ模様が非白色のグレー色であって、ハッチ模様の背景領域がハッチ模様よりも濃い場合であっても適用できる。この場合、境界領域と背景領域との間で色の対比効果が生じ、背景領域がより暗く感じるような錯覚を与える。
【0050】
次に、以上に説明した画像処理装置100が行う処理<画像処理方法および画像処理プログラム>について図6のフローチャートに従って説明する。
【0051】
例えば、プリンタードライバー40が、アプリケーション30からカラー画像データのモノクロ印刷の印刷指示を受け取ると、図6の処理が開始される。処理を開始すると、パターン決定部41は、カラー画像データの画像領域に対して注目画素を設定し(ステップS10)、カラー画像データから注目画素のRGB値を取得する(ステップS11)。パターン決定部41は、パターン選択テーブルPTを参照して、取得したRGB値に対応するパターン種類を決定する(ステップS12)。
次に、パターン濃度決定部42は、注目画素の座標がハッチパターンの境界位置か否かを判定する(ステップS13)。
【0052】
前述したように、ハッチパターンは、カラー画像の画像領域のうち、所定サイズの単位領域UAに対して割り当てられるので、ここでは、注目画素が、単位領域UAごとに割り当てられるハッチパターンにおいて背景に該当する位置にあるのか、前景に該当する位置にあるのかを判定する。具体的には、注目画素の座標を(a,b)、ハッチパターンの大きさをN×N画素とすると、ハッチパターンにおける注目画素の相対座標(x、y)は、次式(2)、(3)により求められる。なお、下記の式において、「mod」は除算した余りを返す演算子である。パターン濃度決定部42は、パターン画像データベースPDBに登録されたハッチパターンの画像データを参照して、相対座標(x、y)がハッチパターンにおける背景と前景のいずれに該当するかを判断する。
【0053】
x=a mod N ・・・(2)
y=b mod N ・・・(3)
【0054】
ここで、注目画素の相対座標(x、y)がハッチパターンにおける背景であって、更に、前景との距離を算出してハッチパターンの境界位置か、否かを判断する。
判断の結果、注目画素が境界位置の場合(ステップS13でYes)、パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTを参照して、注目画素のRGB値に対応する境界濃度のK値を取得し(ステップS14)<濃度決定工程、濃度決定機能>、ステップS18に進む。
他方で、注目画素が境界位置でない場合(ステップS13でNo)、パターン濃度決定部42は、注目画素がハッチパターンの背景であるか、否かを判定する(ステップS15)。ここでは、ステップS13の判定結果を使っても良い。
【0055】
注目画素が背景に対応する場合(ステップS15でYes)、パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTを参照して、注目画素のRGB値に対応する背景濃度のK値を取得し(ステップS16)、ステップS18に進む。
他方で、注目画素がパターン領域に対応する場合(ステップS15でNo)、パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTを参照して、注目画素のRGB値に対応する前景濃度のK値を取得し(ステップS17)、ステップS18に進む。
ステップS18では、モノクロ画像データ生成部43は、モノクロ画像の画像領域のうち注目画素に対応する画素に、取得した濃度のK値を適用する。これにより、モノクロ画像における注目画素に対応する画素は、ステップS12にて決定した種類のハッチパターンに対応する濃度のK値を有することとなる。
【0056】
次に、モノクロ画像データ生成部43は、カラー画像の全画素についてステップS10〜S18の処理を行ったか否かを判断する(ステップS19)。全画素について処理を終えていない場合(ステップS19でNo)、モノクロ画像データ生成部43はステップS10に戻って、例えば、注目画素をラスター方向にスキャンすることにより新たな注目画素を設定し、新たな注目画素に対してステップS11以降の処理を行う。
他方で、全画素について処理を終えると(ステップS19でYes)、モノクロ画像の全画素について、ステップS12にて決定された種類のハッチパターンに対応する濃度のK値を有した状態となり、モノクロ画像データ生成部43は、このモノクロ画像のモノクロ画像データを生成する(ステップS20)。生成されたモノクロ画像データは、プリンタードライバー40によってジョブデータとしてプリンター20に出力される(ステップS21)。この結果、プリンター20は、ジョブデータに従い、アプリケーション30から受け渡されたカラー画像データのモノクロ印刷として、カラー画像の色に応じたハッチ模様付きのモノクロ画像を印刷する。
【0057】
以上述べた実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)カラー画像データから、カラー画像の色相に応じたモノクロのハッチパターンに置き換えたモノクロ画像データを生成する際、ハッチパターンのパターン領域と背景領域との境界に境界領域を付加し、その境界領域の明るさをパターン領域および背景領域の何れよりも明るく設定することで、境界領域のトナー等の使用量を軽減できる。更に、このモノクロ画像を視認する人物に対して、ハッチパターンのコントラストを境界領域がない場合よりも強く視覚させることができる。
(2)更に、パターン領域および背景領域の何れか濃い方の濃度を小さくしても、境界領域がない場合と同程度のコントラストが得られるため、印刷に要するトナー量を更に軽減できる。
(3)ハッチパターンの前景濃度、背景濃度および境界濃度のそれぞれの値は、色相により決定されるハッチパターン毎にテーブルで規定され、これを参照して濃度を決定するため、それぞれの濃度を算出する場合と比較して、濃度決定に要する時間が高速であることから、印刷に要する時間の短縮を図れる。
【0058】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、境界濃度はテーブルで規定したが、境界領域の設定の可否を含め、プリンタードライバー40のユーザーインターフェイスを介してユーザーが設定しても良い。また、印刷モードや印刷用紙等に基づいてプリンタードライバー40が決定しても良い。この場合、ハッチパターンの背景濃度および前景濃度に基づき、境界濃度を決定しても良い。即ち、背景濃度と前景濃度との差が一定量を越えない場合には境界領域を設定せず、一定量を超えた場合、2つの領域の境界に所定の大きさを有する境界領域を設定し、背景濃度と前景濃度に基づいて境界濃度を算出して割り当てても良い。
【0059】
また、以上のような手法を実施する装置は、単独の装置によって実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、ホストコンピューター10側にプリンタードライバー40を組み込んだ様態には限定されず、プリンター20側でプリンタードライバー40を保持し、プリンター20単体で印刷の設定や指示が可能な、所謂、スタンドアローンな様態も想定できる。
【符号の説明】
【0060】
1…印刷システム、10…ホストコンピューター、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…ハードディスクドライブ、15…データ取得装置、16…通信I/F、17…バス、20…プリンター、21…印刷エンジン、22…コントローラー、30…アプリケーション、40…プリンタードライバー、41…パターン決定部、42…パターン濃度決定部、43…モノクロ画像データ生成部、100…画像処理装置、P1…格子線のハッチパターン、PT…パターン選択テーブル、PDB…パターン画像データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単色画像の背景領域と、前記背景領域に重畳された前景であって前記背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度を、前記背景領域および前記パターン領域の何れの濃度よりも小さくする濃度決定部を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記濃度決定部は、更に、前記背景領域の濃度および前記パターン領域の濃度の何れか大きい方の濃度を小さくすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記濃度決定部は、前記背景領域の濃度、前記パターン領域の濃度および前記境界領域の濃度の少なくとも1つが規定されたテーブルを参照することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置において、
前記単色画像はハッチパターンであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、
前記単色画像は、前記パターン領域の濃度が前記背景領域の濃度よりも大きいことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置において、
前記単色画像は、前記背景領域の濃度が前記パターン領域の濃度よりも大きいことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
単色画像の背景領域と、前記背景領域に重畳された前景であって前記背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度を、前記背景領域および前記パターン領域の何れの濃度よりも小さくする濃度決定工程を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
単色画像の背景領域と、前記背景領域に重畳された前景であって前記背景領域との濃度差が一定値を超えるパターン領域と、の境界となる境界領域の濃度を、前記背景領域および前記パターン領域の何れの濃度よりも小さくする濃度決定機能を備えることをコンピューターに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項9】
カラー画像の色に対応する模様を単色の濃度で表す単色パターンを決定し、前記単色パターンの画像領域のうち前記模様の背景となる背景領域の濃度と前記模様に重畳された前景であるパターン領域の濃度を決定し、前記カラー画像に対応する画像領域に、決定した濃度を有する前記背景領域および前記パターン領域を含む単色画像を生成し、生成した前記単色画像を印刷する印刷システムであって、
前記背景領域と、前記背景領域との濃度差が一定値を超える前記パターン領域と、の境界となる境界領域の濃度を、前記背景領域および前記パターン領域の何れの濃度よりも小さくする濃度決定部を備えることを特徴とする印刷システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−81014(P2013−81014A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218983(P2011−218983)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】