説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】複数の光源が混在する場合であっても、適正な色味の画像データを生成する。
【解決手段】画像処理装置は、撮像された画像データにおける第1の光源に対応する第1のホワイトバランス補正値と、前記画像データにおける第2の光源に対応する第2のホワイトバランス補正値とを決定する(S402、S403)。画像処理装置は、第1のホワイトバランス補正値に基づいて、画像データから第1の画像データを現像するとともに、第2のホワイトバランス補正値に基づいて、画像データから第2の画像データを現像する(S404、S405)。画像処理装置は、画像データの色評価値を算出し、画像データの色評価値と第2の光源下の白の色評価値との差分に基づいて、第1の画像データと第2の画像データとの合成比率を決定する(S407、S408)。画像処理装置は、当該合成比率に従って、第1の画像データと第2の画像データとを合成する(S409)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに対するホワイトバランス制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像素子から出力された信号に基づいてホワイトバランスを調整する方法が知られている。その一例として、オートホワイトバランス処理が知られている。オートホワイトバランス制御は、撮影した画像データから白色と思われる部分を自動検出し、画面全体の各色成分の平均値からホワイトバランス係数を算出し、算出したホワイトバランス係数を画面全体に適用する。
【0003】
しかし、このようなオートホワイトバランス制御には次のような問題があった。画面内に異なる複数の光源が存在するシーンでは、算出したホワイトバランス係数を画面全体に適用するため、各光源をともに適正な色味とするホワイトバランス制御を行うことが困難であった。例えば、夜景シーンにおいて主被写体は水銀灯で照らされているが、背景となるビル群の光源は蛍光灯であることが想定される。このようなシーンにおいて、水銀灯光源下の主被写体のホワイトバランスを適正にすると、背景の蛍光灯光源部分は赤みを帯びてしまう。同様に、背景のホワイトバランスを適正にすると、主被写体の水銀灯光源部分のホワイトバランスが適正から外れてしまう。また、それぞれの光源が適正となるホワイトバランスの中間に合わせてホワイトバランス制御をすると、どちらの光源も色味が残る結果となってしまう。
【0004】
さらに付け加えると、水銀灯光源下における各ブロックの色評価値は通常光源下の白検出範囲では検出できない場合が多く、水銀灯の単一光源のシーンであったとしても、適正なホワイトバランスを求めることは困難である。
【0005】
ここで、特許文献1には次のような技術が開示されている。即ち、特許文献1に開示される技術は、第1の白検出範囲で白と判定されたブロックが一定数より少ない場合、低色温度光源下での撮影か否かを判別し、低色温度光源下での撮影と判別された場合に低色温度側の白検出範囲を広げて第2の白検出範囲とする。そして、第2の白検出範囲によって白と判定されるブロックが一定数以上である場合、白と判定されたブロックに基づいてホワイトバランス補正係数を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−212641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、低色温度光源下での撮影である場合に白検出範囲を広げ、新たに白と判定されたブロックに基づいてホワイトバランス補正係数を算出するものであり、結局複数の光源が存在した場合には対応できない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、複数の光源が混在する場合であっても、適正な色味の画像データを生成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像処理装置は、撮像された画像データにおける第1の光源に対応する第1のホワイトバランス補正値と、前記画像データにおける第2の光源に対応する第2のホワイトバランス補正値とを決定する補正値決定手段と、前記第1のホワイトバランス補正値に基づいて、前記画像データから第1の画像データを現像するとともに、前記第2のホワイトバランス補正値に基づいて、前記画像データから第2の画像データを現像する現像手段と、前記画像データの色評価値を算出する色評価値算出手段と、前記画像データの色評価値と前記第2の光源下の白の色評価値との差分に基づいて、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの合成比率を決定する合成比率決定手段と、前記合成比率決定手段により決定された前記合成比率に従って、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成する合成手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の光源が混在する場合であっても、適正な色味の画像データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】第1のホワイトバランス補正値(第1のWB補正値)の算出方法を示すフローチャートである。
【図3】白検出の際に使用されるグラフを示す図である。
【図4】画像処理回路による画像データの合成処理を示すフローチャートである。
【図5】合成比率算出の際に用いられる色評価値の関係を示す図である。
【図6】顔検出時における合成比率算出の際に用いられる色評価値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、飽くまでも本発明の一適用例である。即ち、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。図1において、100は画像処理装置である。10は撮影レンズである。12は絞り機能を備えるシャッタである。14は光学像を電気信号に変換する撮像素子である。16は撮像素子14から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器である。18は、撮像素子14、A/D変換器16及びD/A変換器26にクロック信号や制御信号を供給するタイミング発生回路であり、メモリ制御回路22及びシステム制御回路50により制御される。
【0014】
20は、画像処理回路であり、A/D変換器16からのデータ或いはメモリ制御回路22からのデータに対して所定の画素補間処理や色変換処理を行う。また、画像処理回路20においては、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてシステム制御回路50が露光制御部40及び測距制御部42に対して制御を行う、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理及びEF(フラッシュプリ発光)処理を行っている。さらに、画像処理回路20においては、撮像した画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてTTL方式のAWB(オートホワイトバランス)処理も行っている。
【0015】
22はメモリ制御回路であり、A/D変換器16、タイミング発生回路18、画像処理回路20、画像表示メモリ24、D/A変換器26、メモリ30及び圧縮伸長回路32を制御する。A/D変換器16のデータは、画像処理回路20及びメモリ制御回路22を介して、或いは、直接メモリ制御回路22を介して、画像表示メモリ24或いはメモリ30に書き込まれる。
【0016】
24は画像表示メモリである。26はD/A変換器である。28はTFT LCD等から成る画像表示部であり、画像表示メモリ24に書き込まれた表示用の画像データはD/A変換器26を介して画像表示部28により表示される。画像表示部28を用いて撮像した画像データを逐次表示すれば、電子ファインダ機能を実現することが可能である。また、画像表示部28は、システム制御回路50の指示により任意に表示をON/OFFすることが可能であり、表示をOFFにした場合には画像処理装置100の電力消費を大幅に低減することができる。
【0017】
30は、撮影された静止画像データや動画像データを格納するためのメモリであり、所定の枚数の静止画像データや所定時間の動画像データを格納するのに十分な記憶量を備えている。これにより、複数枚の静止画像データを連続して撮影する連射撮影やパノラマ撮影の場合にも、高速かつ大量の画像書き込みをメモリ30に対して行うことが可能となる。また、メモリ30はシステム制御回路50の作業領域としても使用することが可能である。
【0018】
32は、適応離散コサイン変換(ADCT)等により画像データを圧縮伸長する圧縮・伸長回路であり、メモリ30に格納された画像を読み込んで圧縮処理或いは伸長処理を行い、処理を終えたデータをメモリ30に書き込む。
【0019】
40は絞り機能を備えるシャッタ12を制御する露光制御部であり、ストロボ(フラッシュ)48と連携することによりフラッシュ調光機能も有するものである。42は撮影レンズ10のフォーカシングを制御する測距制御部である。44は撮影レンズ10のズーミングを制御するズーム制御部である。46はバリアである保護手段102の動作を制御するバリア制御部である。
【0020】
48はストロボであり、AF補助光の投光機能、フラッシュ調光機能も有する。ストロボ48は一つでもよいし、閃光発光用にXe管、微小長秒発光用にLED等のように複数個用意してもよい。露光制御部40及び測距制御部42は、TTL方式を用いて制御されており、システム制御回路50は、撮像した画像データを画像処理回路20によって演算した結果に基づいて、露光制御部40及び測距制御部42に対して制御を行う。
【0021】
システム制御回路50は、画像処理装置100全体を制御する。メモリ52はシステム制御回路50の動作用の定数、変数、プログラム等を記憶する。また、メモリ52はAEで用いるプログラム線図も格納している。プログラム線図は、露出値に対する絞り開口径とシャッタ速度の制御値との関係を定義したテーブルである。
【0022】
54は、システム制御回路50でのプログラムの実行に応じて、文字、画像、音声等を用いて動作状態やメッセージ等を表示する液晶表示装置28等の表示部である。表示部54は、画像処理装置100の操作部近辺の視認し易い位置に単数或いは複数個所設置され、例えばLCDやLED、発音素子等の組み合わせにより構成されている。
【0023】
また、表示部54の一部の機能は光学ファインダ104内に設置されている。表示部54の表示内容のうち、LCD等に表示するものとしては、シングルショット/連写撮影表示、セルフタイマ表示、圧縮率表示、記録画素数表示、記録枚数表示、残撮影可能枚数表示、シャッタスピード表示、絞り値表示、露出補正表示、フラッシュ表示、赤目緩和表示、マクロ撮影表示、ブザー設定表示、時計用電池残量表示、電池残量表示、エラー表示、複数桁の数字による情報表示、記録媒体200及び210の着脱状態表示、通信I/F動作表示、日付け・時刻表示等がある。
【0024】
また、表示部54の表示内容のうち、光学ファインダ104内に表示するものとしては、合焦表示、手振れ警告表示、フラッシュ充電表示、シャッタスピード表示、絞り値表示、露出補正表示、等がある。
【0025】
56は、電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリであり、例えばEEPROM等が用いられる。60、62、64及び66は、システム制御回路50の各種の動作指示を入力するための操作手段であり、スイッチやダイアル、タッチパネル、視線検知によるポインティング、音声認識装置等の単数或いは複数の組み合わせで構成される。
【0026】
ここで、これらの操作手段の具体的な説明を行う。60はモードダイアルスイッチであり、電源オフ、自動撮影モード、撮影モード、パノラマ撮影モード、再生モード、マルチ画面再生・消去モード、PC接続モード等の各機能モードを切り替え設定することができる。62はシャッタスイッチSW1であり、不図示のシャッタボタンの操作途中でONとなり、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理等の動作開始を指示する。
【0027】
64はシャッタスイッチSW2であり、不図示のシャッタボタンの操作完了でONとなり、撮像素子14から読み出した信号をA/D変換器16、メモリ制御回路22を介してメモリ30に画像データを書き込む露光処理、画像処理回路20やメモリ制御回路22での演算を用いた現像処理、メモリ30から画像データを読み出し、圧縮・伸長回路32で圧縮を行い、記録媒体200或いは210に画像データを書き込む記録処理という一連の処理の動作開始を指示する。
【0028】
66は、各種ボタンやタッチパネル等からなる操作部であり、メニューボタン、セットボタン、マクロボタン、画像表示ON/OFFボタン、マルチ画面再生改ページボタン、フラッシュ設定ボタン、単写/連写/セルフタイマ切り替えボタン、メニュー移動+(プラス)ボタン、メニュー移動−(マイナス)ボタン、再生画像移動+(プラス)ボタン、再生画像−(マイナス)ボタン、撮影画質選択ボタン、露出補正ボタン、日付/時間設定ボタン等がある。
【0029】
80は電源制御部であり、電池検出回路、DC−DCコンバータ、通電するブロックを切り替えるスイッチ回路等により構成されており、電池の装着の有無、電池の種類、電池残量の検出を行い、検出結果及びシステム制御回路50の指示に基づいてDC−DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記録媒体を含む各部へ供給する。
【0030】
82、84はコネクタである。86はアルカリ電池やリチウム電池等の一次電池やNiCd電池やNiMH電池、Li電池等の二次電池、ACアダプタ等からなる電源手段である。90及び94はメモリカードやハードディスク等の記録媒体とのインタフェースである。92及び96はメモリカードやハードディスク等の記録媒体と接続を行うコネクタである。98はコネクタ92或いは96に記録媒体200或いは210が装着されているか否かを検知する記録媒体着脱検知部である。
【0031】
なお、本実施形態では、記録媒体を取り付けるインタフェース及びコネクタを2系統持つものとして説明している。もちろん、記録媒体を取り付けるインタフェース及びコネクタは、単数或いは複数、何れの系統数を備える構成としても構わない。また、異なる規格のインタフェース及びコネクタを組み合わせて備える構成としても構わない。インタフェース及びコネクタとしては、PCMCIAカードやCF(コンパクトフラッシュ(登録商標))カード等の規格に準拠したものを用いて構成して構わない。
【0032】
さらに、インタフェース90及び94、そしてコネクタ92及び96をPCMCIAカードやCF(コンパクトフラッシュ)カード等の規格に準拠したものを用いて構成した場合、LANカードやモデムカード、USBカード、IEEE1394カード、P1284カード、SCSIカード、PHS等の通信カード等の各種通信カードを接続することにより、他のコンピュータやプリンタ等の周辺機器との間で画像データや画像データに付属した管理情報を転送し合うことができる。102は、画像処理装置100のレンズ10を含む撮像部を覆うことにより、撮像部の汚れや破損を防止するバリアである保護手段である。
【0033】
104は光学ファインダであり、画像表示部28による電子ファインダ機能を使用することなしに、光学ファインダのみを用いて撮影を行うことが可能である。また、光学ファインダ104内には、表示部54の一部の機能、例えば、合焦表示、手振れ警告表示、フラッシュ充電表示、シャッタスピード表示、絞り値表示、露出補正表示等が設置されている。
【0034】
110は通信部であり、RS232CやUSB、IEEE1394、P1284、SCSI、モデム、LAN、無線通信等の各種通信機能を有する。112は通信部110により画像処理装置100を他の機器と接続するコネクタ或いは無線通信の場合はアンテナである。200はメモリカードやハードディスク等の記録媒体である。記録媒体200は、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される記録部202、画像処理装置100とのインタフェース204及び画像処理装置100と接続を行うコネクタ206を備えている。210はメモリカードやハードディスク等の記録媒体である。記録媒体210は、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される記録部212、画像処理装置100とのインタフェース214及び画像処理装置100と接続を行うコネクタ216を備えている。
【0035】
次に、本実施形態に係る画像処理回路20におけるWB補正値の算出方法について説明する。本処理は、黒体放射軸を用いたWB制御に基づいてWB補正値を算出する処理である。先ず、図2を参照しながら、第1のホワイトバランス補正値(第1のWB補正値)の算出方法について説明する。ここで、第1のWB補正値とは、第1の光源に対する通常のホワイトバランス制御により算出される補正値である。
【0036】
ステップS201において、画像処理回路20は、メモリ30に記憶された画像データを読み出し、当該画像データを任意のm個のブロックに分割する。ステップS202において、画像処理回路20は、ブロック(1〜m)毎に、画素値を色毎に加算平均して色平均値(R[i],G[i],B[i])を算出し、次の式を用いて色評価値(Cx[i],Cy[i])を算出する。
Cx[i]=(R[i]−B[i])/Y[i]×1024
Cy[i]=(R[i]+B[i]−2G[i])/Y[i]×1024
但し、Y[i]=(R[i]+2G[i]+B[i])/4
【0037】
ステップS203において、画像処理回路20は、i番目のブロックの色評価値(Cx[i],Cy[i])が、図3に示す予め設定される白検出範囲301に含まれるか否かを判定する。白検出範囲301は、予め異なる光源下で白を撮影し、算出した色評価値をプロットしたものである。この白検出範囲は撮影モードに対応して個別に設定できるものとする。図3におけるx座標(Cx)の負方向が高色温度被写体の白を撮影したときの色評価値を表し、正方向が低色温度被写体の白を撮影したときの色評価値を表している。また、y座標(Cy)は光源の緑成分の度合いを意味しており、負方向になるにつれGreen成分が大きくなる。
【0038】
i番目のブロックの色評価値(Cx[i],Cy[i])が予め設定される白検出範囲301に含まれる場合、処理はステップS204に移行する。一方、i番目のブロックの色評価値(Cx[i],Cy[i])が予め設定される白検出範囲301に含まれない場合、処理はステップS204をスキップして、ステップS205に移行する。
【0039】
ステップS204において、画像処理回路20は、i番目のブロックが白色であると判定して、当該ブロックの色平均値(R[i],G[i],B[i])を積分する。なお、ステップS203、S204の処理は次の式によって表すことができる。
【0040】
【数1】

【0041】
ここで、上記式において、色評価値(Cx[i],Cy[i])が白検出範囲301に含まれる場合にはSw[i]を1とし、色評価値(Cx[i],Cy[i])が白検出範囲301に含まれない場合にはSw[i]を0とする。これにより、ステップS203.S204において、色平均値(R[i],G[i],B[i])を積分するか、積分しないかを実質的に行っている。
【0042】
ステップS205において、画像処理回路20は、全てのブロックについて上記処理を行ったか否かを判定する。未処理のブロックが存在する場合、処理はステップS202に戻って上記処理を繰り返す。一方、全てのブロックについて処理を行った場合、処理はステップS206に移行する。
【0043】
ステップS206において、画像処理回路20は、得られた平均値の積分値(SumR1,SumG1,SumB1)から、次の式を用いて、第1のWB補正値(WBCo1_R1,WBCo1_G1,WBCo1_B1)を算出する。
WBCo1_R1=SumY1×1024/SumR1
WBCo1_G1=SumY1×1024/SumG1
WBCo1_B1=SumY1×1024/SumB1
但し、SumY1=(SumR1+2×SumG1+SumB1)/4
【0044】
次に、第2の光源に対する第2のホワイトバランス補正値(第2のWB補正値)の決定方法について説明する。第2のWB補正値(WBCo2_R,WBCo2_G,WBCo2_B)は、特定光源毎に予め決められた値を用いて決定する。即ち、この値は予め特定光源下で白を撮影して算出した値を用いる。例えば、光源に水銀灯が使われているシーンであれば、水銀灯用に予め決められているWB補正値を第2のWB補正値として用いる。ここで、光源に複数の種類がある場合、光源の種類に応じて第2のWB補正値を可変にしてもよい。例えば、水銀灯に2つの種類がある場合には、それぞれの水銀灯に応じてWB補正値を可変にしてもよい。
【0045】
次に、図4を参照しながら、画像処理回路20による画像データの合成処理について説明する。ステップS401において、画像処理回路20は、特殊光源対応を行うか否かを判定する。このとき、画像処理回路20は、メモリ30に記憶された画像データから光源推定を行い、その推定結果に応じて特殊光源対応を行うか否かを判定してもよいし、ユーザが予め指定しておいた結果に応じて特殊光源対応を行うか否かを判定してもよい。特殊光源対応を行う場合、処理はステップS402に移行する。一方、特殊光源対応を行わない場合、処理はステップS410に移行する。
【0046】
ステップS402において、画像処理回路20は、図2を用いて説明した方法により、第1のWB補正値WBCo1を算出する。ステップS403において、画像処理回路20は、上述した方法により、第2のWB補正値WBCo2を算出する。ステップS404において、画像処理回路20は、第1のWB補正値WBCo1を用いて、メモリ30に記憶された画像データから現像画像データYuv1を現像する。ステップS405において、画像処理回路20は、第2のWB補正値WBCo2を用いて、メモリ30に記憶された画像データから現像画像データYuv2を現像する。なお、現像画像データYuv1は第1の画像データ、現像画像データYuv2は第2の画像データの例である。
【0047】
ステップS410において、画像処理回路20は、ステップS402と同様の方法により第1のWB補正値WBCo1を算出する。ステップS411において、画像処理回路20は、第1のWB補正値WBCo1を用いて、メモリ30に記憶された画像データから現像画像データYuv1を現像する。つまり、画像処理回路20は通常のホワイトバランス制御を行う。
【0048】
ステップS406において、画像処理回路20は、メモリ30に記憶されている画像データ、現像画像データYuv1及び現像画像データYuv2をそれぞれn個のブロックに分割する。
【0049】
ステップS407において、画像処理回路20は、メモリ30に記憶されている画像データに対してブロック毎に画素値を各色に加算平均して色平均値(R[i],G[i],B[i])を算出する。そして、画像処理回路20は、ステップS202と同様に色評価値(Cx[i],Cy[i])を算出する。なお、ステップS407においては、ステップS202で算出された色評価値(Cx[i],Cy[i])をそのまま用いてもよい。このとき、飽和画素が存在する場合には、その飽和画素の画素値とその画素に対応する別色の画素の画素値とを加算処理に含めなくてもよい。例えば、或るR画素が飽和画素である場合には、R画素の画素値とそのR画素に対応するG画素の画素値及びB画素の画素値とを加算処理に含めないようにする。
【0050】
ステップS408において、画像処理回路20は、各光源に応じて後述の評価枠及び内枠を設定して、上記の第2のWB補正値と各ブロックの色評価値との差分に基づいて、ブロック毎の合成比率を算出する。例えば、光源に水銀灯を用いたシーンでは、図5に示すように、予め決められた水銀灯光源下の白の色評価値を重心とした水銀灯用の評価枠501及び内枠502を設定する。そして画像処理回路20は、予め決められた水銀灯光源下の白の色評価値と各ブロックの色評価値との距離に基づいて、各ブロックの合成比率を算出する。なお、評価枠501は、予め水銀灯光源下で白の被写体を撮影して算出された色評価値に基づき設定されたものである。
【0051】
先ず、色評価値と水銀灯光源下の白の色評価値との差分が小さく、図5に示す内枠502の内部に色評価値が存在するブロックに対しては、画像処理回路20は、当該ブロックの合成比率α[i]を1とする。次に、図5に示す評価枠501と内枠502との間の領域に色評価値が存在するブロックに対しては、画像処理回路20は以下のように合成比率α[i]を算出する。即ち、画像処理回路20は、内枠502を合成比率α[i]=1とし、評価枠501を合成比率α[i]=0とするように、内枠502から評価枠501に向かって合成比率を線形的に減少させ、当該ブロックの合成比率α[i]を算出する。そして、評価枠501の外部に色評価値が存在するブロックに対しては、画像処理回路20は合成比率α[i]を0とする。
【0052】
ここで、予め複数の評価枠と内枠とを保持しておき、特定の条件に応じて選択可能としてもよい。例えば、特定の条件として水銀灯光源下で顔が検出された場合について図6を用いて説明する。水銀灯光源下の顔が含まれたブロックは範囲603に示すように図5の評価枠501の範囲外に分布する傾向にある。このような新しい分布を考慮して、顔が検出された場合は新しい評価枠601と内枠602とにそれぞれ変更する。さらに評価枠601と内枠602とを選択するための条件としては、顔の有無の他にも、ユーザが指定した特殊光源補正度合い(例えば、ユーザが補正の強さとして強、中、弱の何れかを選択する)や被写体輝度や光源推定を行った場合は光源推定の確からしさ(例えば、水銀灯なら画像信号中に含まれる緑領域の割合や緑領域の分布する座標から判断)等に関する条件を同時に使用してもよい。
【0053】
ここで、評価枠と内枠との設定は、図6に示すような四角形ではなく任意の形にしてもよい。また例えば、電球色光源のような低色温度光源を用いたシーンの場合においても、光源に適した評価枠や内枠を設定し、水銀灯を光源としたシーンにおける合成比率算出方法と同様の処理により、合成比率を算出することができる。
【0054】
ステップS409において、画像処理回路20は、ブロック毎の合成比率α[i]を用いて現像画像データYuv1と現像画像データYuv2とを合成し、合成画像データYuv3を生成する。合成画像データYuv3の色評価値(Y3[i],u3[i],v3[i])を算出する際に、現像画像データYuv1の色評価値(Y1[i],u1[i],v1[i])と現像画像データYuv2の色評価値(Y2[i],u2[i],v2[i])とを用いる。即ち、画像処理回路20は、次の式により、合成画像データYuv3の色評価値(Y3[i],u3[i],v3[i])を算出する。
【0055】
【数2】

【0056】
ここで、ブロックの境界部分に生じる色味ずれを緩和するために、ステップS408でさらに画素補間処理を行うことにより、ブロック毎の合成比率α[i]から画素毎の合成比率α´[j]を算出してもよい。例えば、画像処理回路20は、画素補間処理としてバイリニア補間を用い、ブロック毎の合成比率α[i]から画素毎の合成比率α´[j]を算出する。このとき、ステップS409において、画像処理回路20は、画素毎の合成比率α´[j]を用いて、現像画像データYuv1と現像画像データYuv2とを合成し、合成画像データYuv3を生成する。画像処理回路20は、合成画像データYuv3の色評価値(Y3[j],u3[j],v3[j])を算出する際に、現像画像データYuv1の色評価値(Y1[j],u1[j],v1[j])と現像画像データYuv2の色評価値(Y2[j],u2[j],v2[j])とを用いる。即ち、画像処理回路20は、次の式により合成画像データYuv3の色評価値(Y3[j],u3[j],v3[j])を算出する。
【0057】
【数3】

【0058】
また、画像処理回路20における計算量を低減するために、色成分であるu成分及びv成分のみを合成してもよい。例えば、画像処理回路20は合成画像データYuv3の色評価値(Y3[i],u3[i],v3[i])を次の式により算出する。
【0059】
【数4】

【0060】
また、上述した画像合成処理において現像画像データはYuv形式を用いたが、例えば、画像形式としてRGB形式を用いた場合、ステップS409において用いた式の代わりに、次の式を用いる。つまり、画像処理回路20は、第1のWB補正値を用いて現像した現像画像データRGB1の色評価値(R1[i],G1[i],B1[i])と、第2のWB補正値を用いて現像した現像画像データRGB2の色評価値(R2[i],G2[i],B2[i])とを算出する。そして、画像処理回路20は、合成画像データRGB3の色評価値(R3[i],G3[i],B3[i])を次の式により算出する。
【0061】
【数5】

【0062】
また、上述した画像合成処理では、光源が2種類以上存在する場合に、現像画像データを2枚以上にして合成してもよい。例えば、水銀灯を用いたシーンにおいてストロボ光を発光した場合、画像処理回路20は、上記第1のWB補正値、第2のWB補正値に加えて、上記第2のWB補正値を決定する方法と同様にストロボ光に対応した第3のWB補正値を決定する。そして画像処理回路20は、3つのWB補正値をそれぞれ用いて3枚の画像データを現像して画像合成処理を行う。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、異なる複数の光源が混在するシーンにおいて、主被写体と背景とをともに適正な色味とする画像データを生成し、ユーザにとって好ましい画像を提供することができる。
【0064】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態における画像データを合成するまでの処理手順は、上述した実施形態とステップS408を除いて同様である。
【0065】
水銀灯を用いたシーンを例にした場合、上述した実施形態では顔が検出されると、図5に示す評価枠501及び内枠502ではなく、図6に示す評価枠601及び内枠602を使用して合成比率を算出していた。これに対し、本実施形態では、顔領域を含むブロック乃至は顔領域を含むブロックとその近傍のブロックの合成比率を算出するときのみに評価枠601及び内枠602を使用し、それ以外は評価枠501及び内枠502を使用する。これにより、人物とは関係のないブロックに対してより適性にWB補正を行うことができる。
【0066】
なお、上述した実施形態の機能を実現するように各種のデバイスを動作させるように、上記各種デバイスと接続された装置であってもよい。また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0067】
10:撮影レンズ、12:シャッタ、14:撮像素子、16:A/D変換器、18:タイミング発生回路、20:画像処理回路、22:メモリ制御回路、24:画像表示メモリ、26:D/A変換器、28:画像表示部、30:メモリ、32:画像圧縮・伸長回路、40:露光制御部、42:測距制御部、44:ズーム制御部、46:バリア制御部、48:ストロボ、50:システム制御回路、52:メモリ、54:表示部、56:不揮発性メモリ、60:モードダイアルスイッチ、62:シャッタスイッチSW1、64:シャッタスイッチSW2、66:操作部、80:電源制御部、82:コネクタ、84:コネクタ、86:電源、90:インタフェース、92:コネクタ、94:インタフェース、96:コネクタ、98:記録媒体着脱検知部、100:画像処理装置、102:保護手段、104:光学ファインダ、110:通信部、112:コネクタ(またはアンテナ)、200:記録媒体、202:記録部、204:インタフェース、206:コネクタ、210:記録媒体、212:記録部、214:インタフェース、216:コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像された画像データにおける第1の光源に対応する第1のホワイトバランス補正値と、前記画像データにおける第2の光源に対応する第2のホワイトバランス補正値とを決定する補正値決定手段と、
前記第1のホワイトバランス補正値に基づいて、前記画像データから第1の画像データを現像するとともに、前記第2のホワイトバランス補正値に基づいて、前記画像データから第2の画像データを現像する現像手段と、
前記画像データの色評価値を算出する色評価値算出手段と、
前記画像データの色評価値と前記第2の光源下の白の色評価値との差分に基づいて、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの合成比率を決定する合成比率決定手段と、
前記合成比率決定手段により決定された前記合成比率に従って、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成する合成手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記合成比率決定手段は、前記画像データが所定の条件を満たす場合、前記所定の条件に対応する前記合成比率を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像データから所定の領域を検出する検出手段を更に有し、
前記合成比率決定手段は、前記検出手段により前記画像データから前記所定の領域が検出された場合、前記所定の領域に対応する前記合成比率を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記合成比率決定手段は、前記所定の領域に対応する前記合成比率を、前記所定の領域、又は、前記所定の領域及びその近傍の領域に対して決定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記色評価値算出手段は、前記画像データの色評価値をブロック毎に算出し、前記合成比率決定手段は、前記ブロック毎の前記画像データの色評価値と前記第2の光源下の白の色評価値との差分に基づいて、前記合成比率を前記ブロック毎に決定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記合成比率決定手段は、画素補間処理により、前記ブロック毎の前記合成比率から画素毎の合成比率を決定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記補正値決定手段は、黒体放射軸を用いたホワイトバランス制御に基づいて、前記第1のホワイトバランス補正値を決定することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記補正値決定手段は、光源毎に予め決められた値を用いて、前記第2のホワイトバランス補正値を決定することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像データにおける光源を推定する推定手段と、
前記推定手段による光源の推定結果に応じて、前記合成手段による合成処理を行うか否かを判定する判定手段とを更に有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記色評価値算出手段は、前記画像データの色評価値を算出する際に、飽和画素の画素値と当該画素に対応する別色の画素の画素値とを色平均値の算出に含めないことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記合成手段は、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの色成分のみを合成することを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記所定の条件は、ユーザによって指定された特殊光源補正度合い、被写体輝度、及び、光源推定の確からしさ、のうちの少なくとも何れか一つに係る条件であることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項13】
画像処理装置によって実行される画像処理方法であって、
撮像された画像データにおける第1の光源に対応する第1のホワイトバランス補正値と、前記画像データにおける第2の光源に対応する第2のホワイトバランス補正値とを決定する補正値決定ステップと、
前記第1のホワイトバランス補正値に基づいて、前記画像データから第1の画像データを現像するとともに、前記第2のホワイトバランス補正値に基づいて、前記画像データから第2の画像データを現像する現像ステップと、
前記画像データの色評価値を算出する色評価値算出ステップと、
前記画像データの色評価値と前記第2の光源下の白の色評価値との差分に基づいて、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの合成比率を決定する合成比率決定ステップと、
前記合成比率決定ステップにより決定された前記合成比率に従って、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成する合成ステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
撮像された画像データにおける第1の光源に対応する第1のホワイトバランス補正値と、前記画像データにおける第2の光源に対応する第2のホワイトバランス補正値とを決定する補正値決定ステップと、
前記第1のホワイトバランス補正値に基づいて、前記画像データから第1の画像データを現像するとともに、前記第2のホワイトバランス補正値に基づいて、前記画像データから第2の画像データを現像する現像ステップと、
前記画像データの色評価値を算出する色評価値算出ステップと、
前記画像データの色評価値と前記第2の光源下の白の色評価値との差分に基づいて、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの合成比率を決定する合成比率決定ステップと、
前記合成比率決定ステップにより決定された前記合成比率に従って、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成する合成ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58870(P2013−58870A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195402(P2011−195402)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】