説明

画像処理装置、画像処理方法

【課題】 圧縮された複数の画像データの一部分に基づき、新たな圧縮画像データを生成する画像処理を効率的に行う。
【解決手段】 フォトビューアPVは、フレームメモリ40に記憶された、圧縮された転送元フレーム42の一部分である圧縮ラスタデータRsを伸張して、第1の伸張部分データを生成し、そこから、所定の範囲である転送元領域Dsの伸張データを切り出す。また、フレームメモリ40に記憶された、圧縮された転送先フレーム44の一部分である圧縮ラスタデータRdを伸張して第2の伸張部分データを生成する。そして、転送元領域Dsの伸張データを第2の伸張部分データの転送先領域Ddに上書きして、当該データを圧縮し、圧縮ラスタデータRd2を生成する。そして、圧縮ラスタデータRd2をフレームメモリ40に転送し、圧縮ラスタデータRd部分に書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理技術に関し、更に詳しくは、複数の圧縮された画像データに基づいて行う画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置においては、扱う画像の高画質化などに伴い、メモリ使用量の削減が図られている。例えば、特許文献1は、入力した画像に対して、DPCM(Differential pulse code modulation)のエンコードを行い、圧縮した画像データをローカルメモリに格納し、データを出力する時点で、ローカルメモリのデータをデコードすることにより、メモリ使用量の削減を行う画像処理技術を開示している。
【0003】
【特許文献1】米国特許公報6115507
【特許文献2】特開2003−84738号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、圧縮されたフレームの一部分を別のフレームに書き込む場合には、転送元の圧縮データの先頭から全てのデータをデコードして必要なデータを抜き出し、転送先の圧縮データの先頭から全てのデータをデコードし、抜き出したデータを転送先のデコードデータに書き込んだ上で、転送先のデコードデータを圧縮する必要があり、非常に処理が煩雑になると同時に、処理に長時間を要していた。かかる問題は、上述のDPCMに限らず、種々の圧縮技術を用いた画像処理装置に共通する問題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、圧縮された複数の画像データの一部分に基づき、新たな圧縮画像データを生成する画像処理を効率的に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]画像処理装置であって、第1の所定の領域を単位として圧縮が行われた第1の圧縮画像データのうちから、該第1の所定の領域を単位として一部分を伸張して、第1の伸張部分データを生成する第1の伸張手段と、第2の所定の領域を単位として圧縮が行われた第2の圧縮画像データのうちから、該第2の所定の領域を単位として一部分を伸張して、第2の伸張部分データを生成する第2の伸張手段と、前記第1の伸張部分データから、所定範囲のデータを切り出す切出手段と、該切り出した所定範囲のデータと、前記第2の伸張部分データとに基づいて、第3の伸張部分データを生成する第1の生成手段と、
該生成した第3の伸張部分データを前記第2の所定の領域単位で圧縮して生成した圧縮部分データと前記第2の圧縮画像データとを合成して、第3の圧縮画像データを生成する第2の生成手段とを備えた画像処理装置。
【0008】
かかる構成の画像処理装置は、第1の圧縮画像データのうちから一部分を伸張して、そこから所定範囲を切り出したデータと、第2の圧縮画像データのうちから一部分を伸張したデータとに基づいて第3の部分伸張データを生成し、さらに、当該データを圧縮した圧縮部分データと第2の圧縮画像データの一部とを合成して、第3の圧縮画像データを生成する。したがって、扱う圧縮画像データ全体を伸張または圧縮する必要がないので、圧縮された複数の画像データの一部分に基づき、新たな圧縮画像データを効率的に生成することができる。また、扱う圧縮画像データ全体を伸張または圧縮する必要がないので、メモリ容量が削減できるとともに、データ転送量を削減して、画像処理装置の消費電力を低減することができる。なお、第1の所定の領域と第2の所定の領域とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、第1の伸張手段と第2の伸張手段とは、実質的に同一の手段である構成であってもよい。
【0009】
[適用例2]適用例1記載の画像処理装置であって、第1の生成部は、切り出した所定範囲のデータを、第2の伸張部分データの所定位置に上書きして、第3の伸張部分データを生成する画像処理装置。
【0010】
かかる構成の画像処理装置は、第1の生成部が、切り出した所定範囲のデータを第2の伸張部分データの所定位置に上書きするので、簡単に第3の伸張部分データを生成することができる。また、データ生成の他の形態として、切り出した所定範囲のデータと、第2の伸張部分データの所定位置のデータとをアルファブレンド処理などを行うものであってもよい。
【0011】
[適用例3]適用例1または適用例2記載の画像処理装置であって、更に、切出手段が切り出した所定範囲のデータが表す画像に対して、所定の画像処理を施す画像処理手段を備え、第1の生成部は、切り出した所定範囲のデータに代えて、画像処理が施されたデータと、第2の伸張部分データとに基づいて、第3の伸張部分データを生成する画像処理装置。
【0012】
かかる構成の画像処理装置は、切り出した所定範囲のデータが表す画像に対して、所定の画像処理を施し、当該データと、第2の伸張部分データとに基づいて、第3の伸張部分データを生成するので、上述の効率的な圧縮画像データ生成手法を用いつつ、様々なデータを生成することができる。なお、所定の画像処理とは、拡大処理、縮小処理、色調補正処理、彩度補正処理など、種々の画像処理である。
【0013】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか記載の画像処理装置であって、第1の圧縮画像データ及び第2の圧縮画像データは、所定の領域を単位として圧縮された各々の圧縮データのサイズが一定となるように圧縮されたデータであり、圧縮手段は、第2の所定の領域を単位として圧縮された各々の圧縮データのサイズが一定となるように、圧縮を行う画像処理装置。
【0014】
かかる構成の画像処理装置において扱う圧縮画像データは、所定の領域を単位として圧縮された各々の圧縮データのサイズが一定であるので、圧縮画像データの切り出しを行う際や合成を行う際などに、各々の圧縮データを格納する記憶媒体における各々の圧縮データの格納位置を簡単に特定することができる。
【0015】
[適用例5]適用例1ないし適用例3のいずれか記載の画像処理装置であって、更に、第1の圧縮画像データ及び第2の圧縮画像データを構成する、所定の領域を単位として圧縮された各々の圧縮データの格納位置を特定する特定手段を備えた画像処理装置。
【0016】
かかる構成の画像処理装置は、所定の領域を単位として圧縮された各々の圧縮データの格納位置を特定する特定手段を備えているので、所定の領域ごとの圧縮データのサイズが一定でない場合であっても、各々の圧縮データを格納する記憶媒体における各々の圧縮データの格納位置を特定することができる。
【0017】
[適用例6]第1の所定の領域と第2の所定の領域とは、同一の領域である適用例1ないし適用例5のいずれか記載の画像処理装置。
【0018】
かかる構成の画像処理装置は、第1の所定の領域と第2の所定の領域とが同一であるので、装置構成を簡略化することができる。
【0019】
[適用例7]第1の所定の領域及び第2の所定の領域は、画像を構成するラスタを単位とする領域である適用例6記載の画像処理装置。
【0020】
かかる構成の画像処理装置は、所定の領域を、画像を構成するラスタを単位とする領域としてもよい。また、その他の構成として、所定サイズのブロックを単位とする領域とすることもできる。
【0021】
また、本発明は、適用例8の画像処理方法としても実現することができる。
[適用例8]画像処理方法であって、第1の所定の領域を単位として圧縮が行われた第1の圧縮画像データのうちから、第1の所定の領域を単位として一部分を伸張して、第1の伸張部分データを生成し、第2の所定の領域を単位として圧縮が行われた第2の圧縮画像データのうちから、第2の所定の領域を単位として一部分を伸張して、第2の伸張部分データを生成し、第1の伸張部分データから、所定範囲のデータを切り出し、切り出した所定範囲のデータと、第2の伸張部分データとに基づいて、第3の伸張部分データを生成し、生成した第3の伸張部分データを第2の所定の領域単位で圧縮して生成した圧縮部分データと、第2の圧縮画像データとを合成して、第3の圧縮画像データを生成する画像処理方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施例について説明する。
A.フォトビューアの概略構成:
図1は、本発明の実施例としてのフォトビューアPVの概略構成を示す説明図である。フォトビューアPVは、制御部20、グラフィックコントローラ22、ディスプレイ24、ハードディスクドライブ25、入力機構26、インタフェース28、メモリ制御部30、フレームメモリ40を備えており、それぞれがバスで接続されている。
【0023】
制御部20は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータで構成され、ROM内に記憶されたプログラムに基づき、フォトビューアPVの機能全体を制御する。グラフィックコントローラ22は、制御部20からの指示に従い、液晶式のディスプレイ24に駆動信号を送り、フレームメモリ40から読み出した画像を表示させる。
【0024】
入力機構26は、十字カーソルキーと決定ボタンとを備えている。ユーザは、これらのキーを操作して、フォトビューアPVの各種設定や操作を行う。インタフェース28は、フォトビューアPVで表示させる画像のデータを取り込むためのインタフェースであり、SDメモリカードスロット、USBコネクタ等を備えている。インタフェース28を介して取り込まれた画像データは、ハードディスクドライブ25に記憶される。
【0025】
フレームメモリ40は、グラフィックコントローラ22が画像を表示させるためにバッファとして使用するメモリである。ここでは、フレームメモリ40に転送元フレーム42及び転送先フレーム44が記憶されている状態を示している。
【0026】
転送元フレーム42は、ユーザがディスプレイ24に表示させたい画像データであり、ユーザの入力機構26を用いた操作によりハードディスクドライブ25から読み出されたものである。転送先フレーム44は、表示する画像の周囲に付される画像枠や、フォトビューアPVの操作に関するUI(ユーザインタフェース)を表す画像である。本実施例においては、転送元フレーム42及び転送先フレーム44は、メモリ容量削減のため、後述する圧縮部90によって、DPCM方式で圧縮されて記憶されており、データが出力される時点で伸張される。
【0027】
メモリ制御部30は、制御部20からの指示を受けて、フレームメモリ40へのデータの書き込みなど、フレームメモリ40に係る動作全般を制御するDSP(Digital Signal Processor)である。メモリ制御部30は、請求項の第2の生成手段に該当する。また、メモリ制御部30には、メモリ制御部30の指示により動作する画像転送回路50が接続されている。画像転送回路50は、後述する画像転送処理に用いる回路であり、転送元データ伸張部60a、転送先データ伸張部60b、転送元アドレス生成部72a、転送先アドレス生成部72b、領域判定部74、重ね合わせ部80、圧縮部90を備えている。
【0028】
圧縮部90は、入力された画像データをDPCM方式により符号化を行う圧縮回路である。本実施例においては、圧縮部90は、フレームのラスタを単位として、画像データの圧縮を行う構成としている。また、圧縮は、ラスタを単位として圧縮された各々の圧縮データ(圧縮ラスタデータという)のサイズが一定となる方法で行う構成としている。
【0029】
圧縮部90の構成の一例を図2に示す。圧縮部90は、請求項の圧縮手段に該当する。本例では、圧縮部90は、予測差分値演算部91、予測部92、符号生成部93、圧縮率制御部94を備えている。予測差分値演算部91に1番目の階調値データが入力されると、予測差分値演算部91は、そのデータを符号生成部93に入力する。そして、M番目(Mは2以上の整数)の階調値データが入力されると、予測差分値演算部91は、予測部92からM−1番目の階調値データを受け取って、それらの差分値を演算し、その結果を符号生成部93に入力する。符号生成部93は入力された差分値データを元に、順次、符号化処理を行う。そして、符号生成部93によって符号化されたデータは、圧縮率制御部94にフィードバックされ、フレームのラスタ毎の圧縮データサイズが一定となるように制御された上で、出力される。
【0030】
なお、ラスタ毎の圧縮サイズを一定に制御するためには、例えば、圧縮率制御部94が、順次圧縮される圧縮データのサイズをモニタリングし、その大きさに応じて、符号化の方式を、ロス有り方式とロス無し方式との間で切り替える指示を符号生成部93に行うことで、圧縮率を調整すればよい。また、ラスタ毎に圧縮されたデータの末尾にダミーデータを付加することで、圧縮データサイズの微調整を行ってもよい。
【0031】
転送元データ伸張部60aは、DPCM方式によりラスタ単位で符号化された符号語を画像データに変換する伸張回路である。なお、以降の説明は省略するが、転送先データ伸張部60bも転送元データ伸張部60aと同様の構成である。転送元データ伸張部60aは、請求項の第1の伸張手段に該当し、転送先データ伸張部60bは、請求項の第2の伸張手段に該当する。
【0032】
転送元データ伸張部60aの構成の一例を図3に示す。本例では、転送元データ伸張部60aは、符号解釈部61、予測差分値加算部62、予測部63を備えている。符号解釈部61に1番目の符号語が入力されると、符号解釈部61は、その符号語を解釈して復号化して、予測差分値加算部62及び予測部63に出力する。これを受けて、予測差分値加算部62は、入力された値を出力する。そして、符号解釈部61にN番目(Nは2以上の整数)が入力されると、符号解釈部61は、これを順次、復号化して、予測差分値加算部62及び予測部63に出力する。予測部63では、随時、入力された値を加算しており、予測差分値加算部62にN番目の復号化された差分値データが入力される時に、N−1番目までの加算値を予測差分値加算部62に入力する。予測差分値加算部62は、符号解釈部61から受け取ったN番目の差分値と、予測部63から受け取ったN−1番目までの加算値とを加算して、その値を出力する。
【0033】
なお、本実施例では、圧縮部90や転送元データ伸張部60a,転送先データ伸張部60bを用いて、DPCM(Differential Pulse Code Modulation)方式による圧縮または伸張を行う構成としたが、符号化の方式は、特に限定する必要はなく、所定の領域を単位として圧縮するものであればよい。例えば、LZ方式、zip方式、辞書方式、ADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)など、種々の符号化方式を用いることができる。
【0034】
転送元アドレス生成部72a,転送先アドレス生成部72bは、「B.画像転送処理」において後述する画像転送処理において扱う画像データのアドレスを生成する。領域判定部74は、請求項の切出手段に該当するものであり、画像転送処理において転送する画像データを切り出す。重ね合わせ部80は、請求項の第1の生成手段に該当するものであり、画像転送処理において、所定の画像データを生成する。これらの詳細については、「B.画像転送処理」において後述する。
【0035】
B.画像転送処理:
上述のフォトビューアPVにおける画像転送処理について、図4〜6を用いて説明する。本実施例における画像転送処理とは、フレームメモリ40に圧縮して記憶された転送元フレーム42が表す画像の一部を切り出して、圧縮された転送先フレーム44が表す画像の所定の位置に上書きする処理である。この処理は、本実施例においては、ユーザがデジタルスチルカメラを用いて撮影した写真画像をフォトビューアPVのハードディスクドライブ25に取り込み、フォトビューアPV上で当該写真画像の合焦状態を確認するための動作に際して行われる。
【0036】
具体的には、ユーザが、入力機構26を操作して、ハードディスクドライブ25に取り込まれた写真画像のサムネイルをディスプレイ24に表示させ、そのうちの1つを選択すると、制御部20が、選択されたサムネイルに対応する画像データに埋め込まれた、Exif(Exchangeable Image File Format)のメーカーノートに記録された合焦情報を参照し、合焦位置の周辺の所定範囲の画像を自動的にディスプレイ24に表示させる。その際、メモリ制御部30は、ハードディスクドライブ25から読み出して圧縮部90で圧縮した転送元フレーム42及び転送先フレーム44をフレームメモリ40に書き込んだ上で、転送元フレーム42の一部分(合焦位置周辺の画像)を切り出して、UI画像である転送先フレーム44の所定の位置に上書きするのである。こうして生成された画像は、伸張して、ディスプレイ24に表示される。以下、画像転送処理について、詳しく説明する。
【0037】
画像転送処理は、ユーザが、入力機構26を用いて、所望のサムネイルを選択し、これを受けて、フレームメモリ40に転送元フレーム42及び転送先フレーム44として書き込まれることで開始される。この処理が開始されると、メモリ制御部30は、図4に示すように、まず、転送元フレーム42から圧縮ラスタデータRsを切り出す(ステップS110)。
【0038】
具体的には、図6に示すように、ユーザ操作に基づいて制御部20から指示を受けたメモリ制御部30は、転送元アドレス生成部72aに対して、フレームメモリ40における転送元フレーム42の先頭アドレス、転送元フレーム42のフレーム幅及び高さ、転送を行いたい転送元領域Ds(図5(a)参照)のデータ先頭位置アドレス(X座標、Y座標)、転送元領域Dsの幅及び高さを入力する(ステップS111)。なお、転送元領域Dsは、合焦確認のためにディスプレイ24に表示される画像の領域であり、これに関する情報は、上述のユーザ操作を受けて、制御部20がExif情報を参照して決定するものである。
【0039】
そして、転送元アドレス生成部72aは、転送元領域Dsが含まれる全ての圧縮ラスタデータRs(図5(a)参照)のアドレスを判断し、当該アドレスとデータ要求とをメモリ制御部30に返す(ステップS112)ので、これを基にメモリ制御部30は、フレームメモリ40から転送元領域Dsを含む圧縮ラスタデータRsを切り出すのである(ステップS113)。なお、転送元フレーム42のラスタ毎の圧縮データサイズは一定であるので、転送元アドレス生成部72aは、簡単に圧縮ラスタデータRsのアドレスを特定することができる。
【0040】
圧縮ラスタデータRsを切り出すと、メモリ制御部30は、図4に示すように、画像転送回路50を用いて、圧縮ラスタデータRsを伸張させる(S120)。具体的には、図6に示すように、切り出した圧縮ラスタデータRsを転送元データ伸張部60aに入力して(ステップS121)、転送元データ伸張部60aを制御しながら、伸張を行うのである。本願において、ここで伸張されたデータは、第1の伸張部分データという。
【0041】
圧縮ラスタデータRsの伸張を行うと、メモリ制御部30は、図4に示すように、第1の伸張部分データから、転送元領域Dsの伸張データの切り出しを行う(ステップS130)。具体的には、図6に示すように、転送元アドレス生成部72aは、メモリ制御部30の指示を受けて、領域判定部74に転送元領域Dsのアドレスを入力する(ステップS131)。転送元領域Dsのアドレスとは、転送元領域Dsのデータ先頭位置アドレス(X座標、Y座標)、転送元領域Dsの幅及び高さのアドレスである。また、転送元データ伸張部60aは、メモリ制御部30の指示を受けて、領域判定部74に第1の伸張部分データを入力する(ステップS132)。これを受けて、領域判定部74は、メモリ制御部30の指示に基づき、第1の伸張ラスタデータから、転送元領域Dsの伸張データを切り出すのである。
【0042】
転送元領域Dsの伸張データを切り出すと、メモリ制御部30は、図4に示すように、転送先フレーム44から圧縮ラスタデータRdを切り出す(ステップS140)。具体的には、図6に示すように、ユーザ操作に基づいて制御部20から指示を受けたメモリ制御部30は、転送先アドレス生成部72bに対して、フレームメモリ40における転送先フレーム44の先頭アドレス、転送先フレーム44のフレーム幅及び高さ、転送元領域Dsを上書きすべき転送先領域Dd(図5(b)参照)のデータ先頭位置アドレス(X座標、Y座標)、転送先領域Ddの幅及び高さを入力する(ステップS141)。なお、転送先領域Ddは、合焦確認のためにディスプレイ24に表示される画像のうち、写真画像が表示される領域であり、これに関する情報は、予め定められているものである。
【0043】
そして、転送先アドレス生成部72bは、転送先領域Ddが含まれる全ての圧縮ラスタデータRd(図5(b)参照)のアドレスを判断し、当該アドレスとデータ要求とをメモリ制御部30に返す(ステップS142)ので、メモリ制御部30は、フレームメモリ40から圧縮ラスタデータRdを切り出すのである(ステップS143)。
【0044】
圧縮ラスタデータRdを切り出すと、メモリ制御部30は、図4に示すように、画像転送回路50を用いて、圧縮ラスタデータRdを伸張させる(S150)。具体的には、図6に示すように、切り出した圧縮ラスタデータRdを転送先データ伸張部60bに入力して(ステップS151)、転送先データ伸張部60bを制御しながら、伸張を行うのである。本願において、ここで伸張されたデータは、第2の伸張部分データという。
【0045】
圧縮ラスタデータRdの伸張を行うと、メモリ制御部30は、図4に示すように、画像転送回路50を用いて、第1の伸張部分データから切り出した転送元領域Dsの伸張データを、第2の伸張部分データの転送先領域Ddに上書きする(ステップS160)。具体的には、図6に示すように、領域判定部74は、メモリ制御部30の指示を受けて、重ね合わせ部80に転送元領域Dsの伸張データを入力する(ステップS161)。また、転送先アドレス生成部72bは、メモリ制御部30の指示を受けて、重ね合わせ部80に転送先領域Ddのアドレスを入力する(ステップS162)。転送先領域Ddのアドレスとは、転送先領域Ddのデータ先頭位置アドレス(X座標、Y座標)、転送先領域Ddの幅及び高さのアドレスである。また、転送先データ伸張部60bは、メモリ制御部30の指示を受けて、重ね合わせ部80に第2の伸張部分データを入力する(ステップS163)。これを受けて、重ね合わせ部80は、転送元領域Dsの伸張データを、第2の伸張部分データの転送先領域Ddに上書きするのである。本願において、こうして生成されたデータを、第3の伸張部分データという。
【0046】
第3の伸張部分データを生成すると、メモリ制御部30は、図4に示すように、画像転送回路50を用いて、第3の伸張部分データを、フレームのラスタごとに圧縮し、圧縮ラスタデータRd2を生成する(ステップS170)。具体的には、図6に示すように、メモリ制御部30は、第3の伸張部分データを重ね合わせ部80から圧縮部90へ入力させ、圧縮部90に第3の伸張部分データを圧縮させるのである(ステップS171)。
【0047】
圧縮ラスタデータRd2を生成すると、メモリ制御部30は、図4に示すように、圧縮ラスタデータRd2を転送先フレーム44の圧縮ラスタデータRdの部分に書き込む(ステップS180)。具体的には、図6に示すように、メモリ制御部30は、圧縮部90から圧縮ラスタデータRd2を出力させ(ステップS181)、これをフレームメモリ40に転送して(ステップS182)、転送先アドレス生成部72bから受け取った圧縮ラスタデータRdのアドレスを元に、圧縮ラスタデータRd部分に圧縮ラスタデータRd2を書き込むのである。こうして、圧縮された転送元フレーム42の転送元領域Dsを圧縮された転送先フレーム44の転送先領域Ddに転送する画像転送処理は完了となる。
【0048】
かかる構成のフォトビューアPVは、圧縮された転送元フレーム42の一部分である圧縮ラスタデータRsと、転送先フレーム44の一部分である圧縮ラスタデータRdのみを伸張して、第1の伸張部分データ及び第2の伸張部分データとを生成し、第1の伸張部分データのうち転送元領域Dsの伸張データを第2の伸張部分データの転送先領域Ddに上書きし、当該データを圧縮して、圧縮ラスタデータRd2を生成する。そして、圧縮ラスタデータRd2をフレームメモリ40に転送し、圧縮ラスタデータRd部分に書き込む。したがって、転送元フレーム42または転送先フレーム44の圧縮画像データ全体を伸張または圧縮する必要がないので、圧縮された画像データの一部分を転送して、効率的に、新たな圧縮画像データを生成することができる。また、扱う圧縮画像データ全体を伸張または圧縮する必要がないので、フレームメモリ40の容量を削減できるとともに、データ転送量を削減して、フォトビューアPVの消費電力を低減することができる。
【0049】
また、かかる構成のフォトビューアPVにおいて、圧縮部90は、フレームのラスタを単位として、各ラスタの圧縮データのサイズが一定となるように圧縮するので、フレームメモリ40における各々の圧縮ラスタデータの格納場所を簡単に特定することができる。
【0050】
C.変形例:
上述した実施例の変形例について説明する。
C−1.変形例1:
実施例においては、画像転送回路50が2つの伸張手段である転送元データ伸張部60aと転送先データ伸張部60bとを備え、圧縮ラスタデータRsと圧縮ラスタデータRdとを個別に伸張する構成としたが、圧縮ラスタデータRsと圧縮ラスタデータRdの両方について、1つの伸張手段が伸張する構成としてもよい。例えば、伸張手段として転送元データ伸張部60aのみを備え、転送元データ伸張部60aに入力されるデータに応じて、転送元データ伸張部60aからの出力先を、スイッチを用いて、領域判定部74と重ね合わせ部80との間で切り替える構成としてもよい。
【0051】
C−2.変形例2:
実施例においては、圧縮部90が、フレームのラスタを単位として、各ラスタの圧縮データのサイズが一定となるように圧縮することで、フレームメモリ40における各々の圧縮ラスタデータの格納場所を簡単に特定する構成としたが、このような構成に限られるものではなく、圧縮サイズは、ラスタ毎に異なる、例えば、ラスタ毎に、ロスレス圧縮方式を用いて最大限の圧縮率まで圧縮する構成としてもよい。このような場合には、メモリ制御部30は、各々の圧縮ラスタデータと、これらのフレームメモリ40への格納場所とを対応付けたテーブルを作成し、ハードディスクドライブ25などに記憶しておき、当該テーブルを参照して、
伸張画像の所定範囲に対応する各々の圧縮ラスタデータの格納場所を特定すればよい。
【0052】
C−3.変形例3:
実施例においては、圧縮を行う単位としての所定の領域を、フレームのラスタとしたが、このような構成に限られるものではない。例えば、2ラスタや3ラスタを単位としてもよい。もとより、ラスタ単位に限る必要はなく、種々の領域、例えば、所定サイズのブロック領域などとして設定してもよい。
【0053】
C−4.変形例4:
実施例においては、圧縮を行う単位としての所定の領域を、転送元フレーム42と転送先フレーム44とで同一の構成(ラスタ単位)とした。また、転送元フレーム42と転送先フレーム44の圧縮方式は、同一の構成(DPCM方式)とした。このような構成とすることで、画像転送回路50の簡略化を図れるからである。ただし、所定の領域は、転送元フレーム42と転送先フレーム44とで異なる領域としても構わない。また、圧縮方式も、転送元フレーム42と転送先フレーム44とで異なる方式としても構わない。その場合、それぞれの領域や圧縮方式に対応した伸張手段や圧縮手段を設ければよい。
【0054】
C−5.変形例5:
実施例においては、図4のステップS160に示したとおり、第1の伸張部分データから切り出した転送元領域Dsの伸張データを、第2の伸張部分データの転送先領域Ddに上書きすることで、第3の伸張部分データを生成したが、第3の伸張部分データの生成方法は、このような態様に限られるものではなく、転送元領域Dsの伸張データと、第2の伸張部分データとに基づいて生成するものであればよい。例えば、転送元領域Dsの伸張データと転送先領域Ddの伸張データとが表す階調値をアルファブレンドして生成したデータを、転送先領域Ddに書き込んでもよい。こうすれば、画像の単純な切り貼り処理だけでなく、より多様な画像処理を行うことができる。
【0055】
C−6.変形例6:
実施例においては、図4のステップS160に示したとおり、第1の伸張部分データから切り出した転送元領域Dsの伸張データと、第2の伸張部分データとに基づいて、第3の伸張部分データを生成したが、第3の伸張部分データの生成方法は、このような態様に限られるものではなく、転送元領域Dsの伸張データが表す画像に対して、所定の画像処理を施して、当該処理が施されたデータと第2の伸張部分データとに基づいて、第3の伸張部分データを生成してもよい。所定の画像処理としては、拡大処理、縮小処理、色調補正、彩度補正など種々の色補正とすることができる。
【0056】
C−7.変形例7:
実施例においては、同一の記憶媒体間(実施例ではフレームメモリ40)における転送処理について示したが、異なる記憶媒体間、例えば、フレームメモリ40とハードディスクドライブ25との間における転送処理としても実現できる。記憶媒体についても、特に制限はない。また、本発明は、転送処理に限らず、複数の圧縮画像データから所定範囲をコピーして、新たな圧縮画像データを生成する構成とすることもできる。例えば、ハードディスクドライブ25に格納された第1の圧縮画像データと、ROMに格納された第2の圧縮画像データとから、フレームメモリ内に新たな圧縮画像データを生成してもよい。また、画像処理の基となる圧縮画像データ(実施例では、転送元フレーム42及び転送先フレーム44)は、圧縮部90により圧縮されたものに限らず、予め圧縮されてROMなどに書き込まれたデータであってもよい。
【0057】
C−8.変形例8:
実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、実施例に示したフォトビューアとしての構成に限らず、デジタルカメラ、携帯電話、プリンタ、パーソナルコンピュータなど種々の装置に搭載する画像処理装置や、画像処理方法等の形態でも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例としてのフォトビューアPVの概略構成を示す説明図である。
【図2】圧縮部90の概略構成を示す説明図である。
【図3】転送元データ伸張部60aの概略構成を示す説明図である。
【図4】画像伝送処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】画像転送処理の様子を概念的に示す説明図である。
【図6】画像転送処理の詳細な流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
20…制御部、22…グラフィックコントローラ、24…ディスプレイ、25…ハードディスクドライブ、26…入力機構、28…インタフェース、30…メモリ制御部、40…フレームメモリ、42…転送元フレーム、44…転送先フレーム、50…画像転送回路、60a…転送元データ伸張部、60b…転送先データ伸張部、61…符号解釈部、62…予測差分値加算部、63…予測部、72a…転送元アドレス生成部、72b…転送先アドレス生成部、74…領域判定部、80…重ね合わせ部、90…圧縮部、91…予測差分値演算部、92…予測部、93…符号生成部、94…圧縮率制御部、PV…フォトビューア、Rd,Rs,Rd2…圧縮ラスタデータ、Dd…転送先領域、Ds…転送元領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
第1の所定の領域を単位として圧縮が行われた第1の圧縮画像データのうちから、該第1の所定の領域を単位として一部分を伸張して、第1の伸張部分データを生成する第1の伸張手段と、
第2の所定の領域を単位として圧縮が行われた第2の圧縮画像データのうちから、該第2の所定の領域を単位として一部分を伸張して、第2の伸張部分データを生成する第2の伸張手段と、
前記第1の伸張部分データから、所定範囲のデータを切り出す切出手段と、
該切り出した所定範囲のデータと、前記第2の伸張部分データとに基づいて、第3の伸張部分データを生成する第1の生成手段と、
該生成した第3の伸張部分データを前記第2の所定の領域単位で圧縮して生成した圧縮部分データと前記第2の圧縮画像データとを合成して、第3の圧縮画像データを生成する第2の生成手段と
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記第1の生成部は、前記切り出した所定範囲のデータを、前記第2の伸張部分データの所定位置に上書きして、前記第3の伸張部分データを生成する
画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の画像処理装置であって、
更に、前記切出手段が切り出した所定範囲のデータが表す画像に対して、所定の画像処理を施す画像処理手段を備え、
前記第1の生成部は、前記切り出した所定範囲のデータに代えて、前記画像処理が施されたデータと、前記第2の伸張部分データとに基づいて、第3の伸張部分データを生成する
画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の画像処理装置であって、
前記第1の圧縮画像データ及び前記第2の圧縮画像データは、前記所定の領域を単位として圧縮された各々の圧縮データのサイズが一定となるように圧縮されたデータであり、
前記圧縮手段は、前記第2の所定の領域を単位として圧縮された各々の圧縮データのサイズが一定となるように、前記圧縮を行う
画像処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の画像処理装置であって、
更に、前記第1の圧縮画像データ及び前記第2の圧縮画像データを構成する、前記所定の領域を単位として圧縮された各々の圧縮データの格納位置を特定する特定手段を備えた
画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の所定の領域と前記第2の所定の領域とは、同一の領域である請求項1ないし請求項5のいずれか記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の所定の領域及び前記第2の所定の領域は、画像を構成するラスタを単位とする領域である請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像処理方法であって、
第1の所定の領域を単位として圧縮が行われた第1の圧縮画像データのうちから、該第1の所定の領域を単位として一部分を伸張して、第1の伸張部分データを生成し、
第2の所定の領域を単位として圧縮が行われた第2の圧縮画像データのうちから、該第2の所定の領域を単位として一部分を伸張して、第2の伸張部分データを生成し、
前記第1の伸張部分データから、所定範囲のデータを切り出し、
該切り出した所定範囲のデータと、前記第2の伸張部分データとに基づいて、第3の伸張部分データを生成し、
該生成した第3の伸張部分データを前記第2の所定の領域単位で圧縮して生成した圧縮部分データと、前記第2の圧縮画像データとを合成して、第3の圧縮画像データを生成する
画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−212742(P2009−212742A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52834(P2008−52834)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】