説明

画像処理装置、画像形成システム及び画像処理プログラム

【課題】 パイプライン処理方式とリコンフィグ処理方式のうち、画像処理に要する時間が短い方の処理方式で複数のDRPを稼動させる画像処理装置、画像形成システム及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】 入力された印刷ジョブの画像情報の画素数に基づいて、リコンフィグ処理方式によって画像処理する場合に要する第1処理時間とパイプライン処理方式によって画像処理する場合に要する第2処理時間とを算出する処理時間算出部32aと、処理時間算出部32aにより算出された第1処理時間と第2処理時間のいずれか短い時間の処理方式によって、複数のDRP61〜66を稼動させる稼動制御部32bと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像形成システム及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の動作は、コントローラによって制御されている。コントローラには、動的再構成可能処理装置(Dynamic Reconfigurable Processor、以下、単にDRPという。)と呼ばれる描画プロセッサが搭載されている。DRPは、CPU(Central Processing Unit)の制御によって、画像処理に関する種々の機能を発揮する。
【0003】
CPUはパイプライン処理方式かリコンフィグ処理方式のいずれかでDRPを稼動させる。例えば、DRPが複数段で構成されている場合に、パイプライン処理方式では、CPUは各DRPに1つの画像処理機能を発揮させる。このため、画像情報が入力されると、1つのDRPで1つの画像処理が行われ、これが完了すると、次の画像処理が行われていく。一方、リコンフィグ処理方式では、画像情報が入力されると、CPUが1つのDRPの画像処理機能を切り替え、複数の画像処理が行われていく。
【0004】
例えば、特許文献1は、上述したパイプライン処理方式に関する技術を開示する。特許文献2は、プログラマブル論理回路に対する回路の再構成に関する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−215593号公報
【特許文献2】特開2002−026721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、パイプライン処理方式とリコンフィグ処理方式のうち、画像処理に要する時間が短い方の処理方式で複数のDRPを稼動させる画像処理装置、画像形成システム及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、入力された印刷ジョブの画像情報の画素数に基づいて、リコンフィグ処理方式によって画像処理する場合に要する第1処理時間とパイプライン処理方式によって画像処理する場合に要する第2処理時間とを算出する算出手段と、算出手段により算出された第1処理時間と第2処理時間のいずれか短い時間の処理方式によって、複数のDRPを稼動させる稼動制御手段と、を有する画像処理装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、算出手段は、さらに、入力された印刷ジョブの処理内容にも基づいて、第1処理時間及び第2処理時間を算出することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、算出手段は、さらに、DRPの各機能における1画素あたりの処理時間にも基づいて、第1処理時間及び第2処理時間を算出することを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、算出手段は、さらに、DRPの画像処理機能を切り替えるために要する時間にも基づいて、第1処理時間を算出することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、算出手段は、DRPの各機能における1画素あたりの処理時間に出力画素数をそれぞれ乗じて得られた各算出結果のうち、最大となる第1算出結果に対し、さらに、入力された印刷ジョブが要求する画像処理の機能数を乗じて得られた第2算出結果を、第2処理時間とすることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、算出手段は、さらに、パイプライン処理方式の初動時間を含む場合には、画像処理を行うページ数及びパイプライン処理方式で稼動するDRPの段数にも基づいて、第1及び第2処理時間を算出することを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置と、画像処理装置に印刷ジョブを出力する出力装置と、画像処理装置から出力される画像情報に応じた画像を記録媒体に形成する形成装置と、を有する画像形成システムである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、コンピュータを、入力された印刷ジョブの画像情報の画素数に基づいて、リコンフィグ処理方式によって画像処理する場合に要する第1処理時間とパイプライン処理方式によって画像処理する場合に要する第2処理時間とを算出する算出手段、算出手段により算出された第1処理時間と第2処理時間のいずれか短い時間の処理方式によって、複数のDRPを稼動させる稼動制御手段、として機能させるための画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、パイプライン処理方式とリコンフィグ処理方式のうち、画像処理に要する時間が短い方の処理方式で複数のDRPが稼動する。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、第1処理時間と第2処理時間の比較精度が向上する。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、第1処理時間と第2処理時間の比較精度が向上する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、第1処理時間と第2処理時間の比較精度が向上する。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、第1処理時間と第2処理時間の比較精度が向上する。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、第1処理時間と第2処理時間の比較精度が向上する。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、パイプライン処理方式とリコンフィグ処理方式のうち、画像処理に要する時間が短い方の処理方式で複数のDRPが稼動する。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、パイプライン処理方式とリコンフィグ処理方式のうち、画像処理に要する時間が短い方の処理方式で複数のDRPが稼動する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】画像形成システムの構成図の一例である。
【図2】コントローラのブロック図である。
【図3】画像処理装置のハードウェア構成である。
【図4】DRPのブロック図である。
【図5】リコンフィグ処理方式による画像処理装置の機能ブロック図である。
【図6】処理時間テーブルの一例である。
【図7】パイプライン処理方式による画像処理装置の機能ブロック図である。
【図8】CPUの動作の一例を示すフローチャートである。
【図9】第1処理時間及び第2処理時間の算出式の一例である。
【図10】リコンフィグ処理が有利となった場合の第1処理時間及び第2処理時間の具体例である。
【図11】リコンフィグ処理が有利となった場合の概念図である。
【図12】パイプライン処理が有利となった場合の第1処理時間及び第2処理時間の具体例である。
【図13】パイプライン処理が有利となった場合の概念図である。
【図14】第1処理時間及び第2処理時間の算出式の他の一例である。
【図15】リコンフィグ処理が有利となった場合の第1処理時間及び第2処理時間の他の具体例である。
【図16】リコンフィグ処理が有利となった場合の他の概念図である。
【図17】パイプライン処理が有利となった場合の第1処理時間及び第2処理時間の他の具体例である。
【図18】パイプライン処理が有利となった場合の他の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、画像形成システムの構成図の一例である。
画像形成システムは、図1に示すように、画像形成装置1、前処理装置3、バッファ装置4,5、後処理装置6、コントローラ10、入力装置20を含む。コントローラ10は画像処理装置12を含む。
【0026】
画像形成装置1は、コントローラ10による制御に基づいて、画像情報に応じた画像を記録用紙などの記録媒体7に形成する。画像形成装置1としては例えばプリンタがある。画像情報は、画像処理装置12から出力される。記録媒体7は、プラスチックであってもよく、特に材質は限定されるものでは無い。
【0027】
前処理装置3は、まだ印刷されていない記録媒体7を画像形成装置1に送り出す。前処理装置3は、ロール状に巻かれた記録媒体7を保持する。
後処理装置6は、画像形成装置1から送り出された記録媒体7を受け取り、ロール状に巻き取る。
バッファ装置4,5は、前処理装置3、及び後処理装置6における記録媒体7の搬送速度と、画像形成装置1における記録媒体7の搬送速度との差を吸収する。バッファ装置4,5によって、記録媒体7には一定の張りが保たれ、記録媒体7のたるみが抑制される。
【0028】
出力装置20は、利用者による操作に基づいて、画像形成装置1で記録媒体7に画像形成させるための印刷ジョブを生成する。出力装置20はネットワークNWを介して印刷ジョブを画像出力装置12に出力する。出力装置20としては例えばパーソナルコンピュータがある。
コントローラ10は、出力装置20から出力された印刷ジョブを受信する。コントローラ10は、印刷ジョブを画像形成装置1で画像形成可能なラスター形式の画像情報に変換する。コントローラ10は画像情報を画像形成装置1に出力する。尚、コントローラ10を画像形成装置1の内部に構成してもよい。
【0029】
図2は、コントローラ10のブロック図である。
コントローラ10は、図2に示すように、印刷ジョブ受信部11、画像処理装置12、画像形成装置インタフェース(I/F)13を含む。
【0030】
印刷ジョブ受信部11は、出力装置20から出力された印刷ジョブを受信する。
画像処理装置12は、印刷ジョブ受信部11が受信した印刷ジョブを、ラスター形式の画像情報に変換し、種々の画像処理を行う。
画像形成装置I/F13は、画像処理がなされた画像情報を画像形成装置1に出力する。
【0031】
図3は、画像処理装置12のハードウェア構成である。
画像処理装置12は、CPU32、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)、NVRAM(Non Volatile RAM)、DDR2SDRAM(Double Data Rate 2 SDRAM)等のRAM33a,71〜76、フラッシュメモリ等のROM(Read Only Memory)33b、HDD(Hard Disc Drive)33c、デイジーチェーン状に接続されたDRP61〜66及び外部I/F(Interface)31を有する。CPU32及びDRP61〜66は、スイッチとしてのPCI Express I/Fにより接続される。
【0032】
コンピュータとしてのCPU32は、印刷ジョブを受信すると、これを画像情報に変換すると共に、DRP61〜66を稼動させる。この稼動は、CPU32がROM33bやHDD33c等の記憶装置33に格納された所要のプログラムを読み込み、当該プログラムに従った演算を行うことにより、実現される。尚、当該プログラムとしては、後述するフローチャートに応じたプログラムとすることができる。また、このプログラムをCD−ROMなどの搬送可能な記憶媒体に格納してCPU32に提供してもよい。
【0033】
図4は、DRP62のブロック図である。尚、DRP61,63〜66も同様の構成を有するため、その説明を省略する。
DRP62は、制御部62a、画像処理部62b、ダイレクトI/O62c、高速バススイッチ62d、PCIインタフェース62e、RAMインタフェース62fを含む。
【0034】
制御部62aは、CPU32からの制御に基づいて稼動する。
画像処理部62bは、制御部62aの制御に基づいて、PEマトリックスを書換え、種々の画像処理機能を実現する。画像処理部62bの回路記憶部には、実現させる画像処理に関する回路が格納されている。
ダイレクトI/O62cは、DRP61から画像情報を受信し、画像処理部62bに出力すると共に、画像処理部62bで画像処理がなされた画像情報をDRP63に出力する。ダイレクトI/O62cは、パイプライン処理方式により、直接、画像情報を転送する。この結果、画像情報には各DRP61〜63で、逐次、画像処理がなされる。
【0035】
高速バススイッチ62dは、制御部62a、画像処理部62b、PCIインタフェース62e、RAMインタフェース62fとの間の情報経路を高速に切り替えるためのバススイッチである。
PCIインタフェース62eは、外部に接続された他の回路などの間で情報の送受信を行うためのインタフェースである。
RAMインタフェース62fは、RAM72との間で情報の送受信を行うためのインタフェースである。
【0036】
図5は、リコンフィグ処理方式による画像処理装置12の機能ブロック図、図6は、処理時間テーブルの一例である。
【0037】
CPU32は、処理時間算出部32a、稼動制御部32bを含む。処理時間算出部32a及び稼動制御部32は、後述するフローチャートに基づくプログラムにより実現される。
処理時間算出部32aは、入力された印刷ジョブの画像情報の画素数に基づいて、リコンフィグ処理方式によって画像処理する場合に要する第1処理時間とパイプライン処理方式によって画像処理する場合に要する第2処理時間とを算出する。処理時間算出部32aは、必要に応じて、画像情報をページごとに分割する。
稼動制御部32bは、処理時間算出部32aにより算出された第1処理時間と第2処理時間のいずれか短い時間の処理方式によって、複数のDRP61〜66を稼動させる。図5では、第1処理時間が第2処理時間より短かったため、リコンフィグ処理方式によりDRP61〜66が稼動していることを示している。
【0038】
図5において、DRP61〜66は、色変換処理部、フィルタ処理部、拡大処理部を実現する。これらは、稼動制御部32bによる制御信号によって順次切り替わる。
例えば、画像情報がDRP61〜66にそれぞれ入力されると、DRP61〜66は、まず、色変換処理部を実現する。したがって、画像情報には色変換処理が施される。画像情報に対する色変化処理が完了すると、所定の切替時間を経過した後、DRP61〜66はフィルタ処理部を実現する。色変換処理が施された画像情報は、切替時間の間、対応するRAM71〜76に記憶される。
【0039】
次いで、RAM71〜76に記憶された色変換処理が施された画像情報にフィルタ処理が施される。画像情報に対するフィルタ処理が完了すると、さらに、所定の切替時間を経過した後、DRP61〜66は拡大処理部を実現する。フィルタ処理が施された画像情報は、切替時間の間、再度、対応するRAM71〜76に記憶される。次いで、RAM71〜76に記憶されたフィルタ処理が施された画像情報に拡大処理が施され、CPU32に出力される。
【0040】
記憶装置33は、画像情報格納部33x、処理時間テーブル格納部33yを含む。これらは、上述したROM33bやHDD33cにより実現される。
画像情報格納部33xは、画像情報を格納する。画像情報はCPU32から呼び出されて、各DRP61〜66に渡される。
【0041】
処理時間テーブル格納部33yは、処理時間テーブルを格納する。処理時間テーブルは、図6に示すように、各画像処理(例えば、色変換処理やフィルタ処理など)が要する処理時間L、入力依存フラグ、及び出力依存フラグなどで構成される。例えば、色変換処理には1画素あたり3クロック要することを示す。また、図6において、「OH」はオーバーヘッド(Over Head)を示す。オーバーヘッドは、1つの画像処理が終了してから次の画像処理が開始するまでの画像処理機能の切替時間である。図6では、例えば、色変換処理が終了してからフィルタ処理が開始できるまで200クロック要することを示す。
尚、各画像処理が要する処理時間は、設計値として算出された値を利用してもよいし、実際の測定値を利用してもよい。
【0042】
図7は、パイプライン処理方式による画像処理装置12の機能ブロック図である。
図7によれば、DRP61〜63,DRP64〜66はそれぞれ3段で構成される。また、DRP61〜63で1つの回路基板、DRP64〜66で1つの回路基板が構成される。第1段目であるDRP61,64は色変換処理部を実現する。第2段目であるDRP62,65はフィルタ処理部を実現する。第3段目であるDRP63,66は拡大処理部を実現する。したがって、CPU32から出力された画像情報は、まず、DRP61で色変換処理が行われ、ついで、DRP62で色変換処理が行われ、さらに、DRP63で拡大処理が行われる。DRP64〜66に出力された画像情報に対しても同様の画像処理が行われる。このように、パイプライン処理方式により、逐次、画像処理がなされていく。尚、1つの回路基板に搭載するDRPの個数は適宜変更してもよい。また、回路基板の個数についても図7に示すものに限定されない。
【0043】
続いて、本実施形態に係る画像処理装置12の動作について説明する。
【0044】
図8は、CPU32の動作の一例を示すフローチャート、図9は、第1処理時間及び第2処理時間の算出式の一例である。
CPU32の処理時間算出部32aは、印刷ジョブを受信すると、その印刷ジョブから必要な画像処理(例えば色変換処理、フィルタ処理、拡大処理など)を選択し、処理時間テーブル格納部33yを参照しつつ、図8に示すように、リコンフィグ処理方式による第1処理時間を算出する(ステップS1)。第1処理時間は、図9に示す式(1)で算出される。式(1)によれば、画像処理機能ごとの処理画素数P1,P2,P3に、1画素あたりの処理時間L1,L2,L3をそれぞれ掛け合わせ、掛け合わされた結果となるそれぞれ値にオーバーヘッドをそれぞれ加算し、この加算結果をすべて合計した値が第1処理時間Y1となっている。
【0045】
処理時間算出部32aは、次いで、パイプライン処理方式による第2処理時間を算出する(ステップS2)。第2処理時間は、図9に示す式(2)で算出される。式(2)によれば、画像処理機能ごとの処理画素数P1,P2,P3に、1画素あたりの処理時間L1,L2,L3をそれぞれ掛け合わせ、掛け合わされた結果となるそれぞれ値から最大値を選択し、選択された最大値をDRPの段数倍(例えば3倍)した値となっている。すなわち、画像処理に要する時間が最もかかる画像処理を基準にしている。
【0046】
処理時間算出部32aは、次いで、第1処理時間が第2処理時間より短いか否かを判定する(ステップS3)。処理時間算出部32aは、第1処理時間が第2処理時間より短いと判定した場合(ステップS3:YES)、稼動制御部32bは、DRP61〜66をリコンフィグ処理方式で稼動させる(ステップS4)。一方、処理時間算出部32aは、第1処理時間が第2処理時間より長いと判定した場合(ステップS3:NO)、稼動制御部32bは、DRP61〜66をパイプライン処理方式で稼動させる(ステップS5)。
【0047】
ここで、上述したステップS3〜S5の処理の具体例について図10乃至図13を参照して説明する。
図10は、リコンフィグ処理が有利となった場合の第1処理時間及び第2処理時間の具体例、図11は、リコンフィグ処理が有利となった場合の概念図、図12は、パイプライン処理が有利となった場合の第1処理時間及び第2処理時間の具体例、図13は、パイプライン処理が有利となった場合の概念図である。
【0048】
例えば、図10に示す色変換処理において、1画素を処理するのに要するクロック数が3クロックである場合、入力依存フラグが0であるため、入力画素数100を掛け合わせても、処理時間は0クロックである。しかし、出力依存フラグが1であるため、出力画素数100を掛け合わせると、処理時間は300クロックとなる。同様に、フィルタ処理についても300クロック、拡大処理については拡大率1.3を考慮して650クロックとなる。この結果、リコンフィグ処理方式に関する第1処理時間は1850クロックとなる。
【0049】
一方、図10において、色変換処理における処理時間が300クロック、フィルタ処理における処理時間が300クロック、拡大処理における処理時間が650クロックであるため、最大値は650クロックとなる。この最大値650クロックを3倍した値1950クロックがパイプライン処理方式に関する第2処理時間は1850クロックとなる。
【0050】
したがって、リコンフィグ処理方式の方がパイプライン処理方式より処理時間が短い。このため、DRP61〜63はリコンフィグ処理方式で稼動する。同様に、DRP64〜66もリコンフィグ処理方式で稼動する。
【0051】
また、図11に示すリコンフィグ処理方式よれば、画像処理A1(例えば色変換処理)、画像処理B1(例えばフィルタ処理)、画像処理C1(例えば拡大処理)はDRP61の機能が切り替わることで実現する。同様に、A2,B2,C2はDRP62の機能が切り替わることにより実現し、A3,B3,C3はDRP63の機能が切り替わることにより実現する。DRP61〜63は並列で稼動するため、最初の処理時間300クロックでA1,A2,A3が完了する。
【0052】
次いで、オーバーヘッド200クロックが経過した後、DRP61〜63のA1,A2,A3がB1,B2,B3に切り替わり、処理時間300クロックでB1,B2,B3が完了する。同様に、オーバーヘッド200クロックが経過した後、DRP61〜63のB1,B2,B3がC1,C2,C3に切り替わり、処理時間650クロックでC1,C2,C3が完了する。このため、図11に示すように、処理時間が1850クロックであれば、画像処理A,B,Cが完了する。
【0053】
一方、図11に示すパイプライン処理方式によれば、1段あたりの処理時間が最大となる画像処理Cの処理時間650クロックを算出の基礎とし、この処理時間を3倍にして合計処理時間1950クロックを算出している。パイプライン処理方式では、先の画像処理が完了しないと次の画像処理が開始されない。例えば、画像処理B1は画像処理A1が完了するまで待機する。同様に、画像処理C1は画像処理B1が完了するまで待機する。このような待機により、拡大率が1.3の場合には、パイプライン処理方式の処理効率がリコンフィグ処理方式より下がる。このため、パイプライン処理方式は、並列でDRPが稼動するリコンフィグ処理方式より処理時間がかかる場合がある。リコンフィグ処理方式であれば、パイプライン処理方式における各処理時間のばらつきに伴う待機が解消される。
【0054】
逆に、図12において、図10に示す拡大率1.3倍を1.1倍に修正すれば、上述した説明と同様の手法により、第1処理時間Y1は1750クロック、第2処理時間Y2は1650クロックとなる。したがって、パイプライン処理方式の方がリコンフィグ処理方式より処理時間が短い。このため、DRP61〜63はパイプライン処理方式で稼動する。同様に、DRP64〜66もパイプライン処理方式で稼動する。
【0055】
具体的には、図13のリコンフィグ処理方式に示すように、DRP61〜63が並列に稼動した場合、合計処理時間は1750クロックとなるが、パイプライン処理方式では1650クロックとなる。この場合、パイプライン処理方式に上述した待機が発生しても、リコンフィグ処理方式のオーバーヘッドを考慮すると、パイプライン処理方式の方がリコンフィグ処理方式より処理効率があがる。このように、パイプライン処理方式を利用して逐次画像処理を行っていく場合の方が、DRP61〜63の画像処理機能を切り替えるリコンフィグ処理方式の場合より、短い時間で画像処理が完了する場合もある。したがって、双方の処理方式を適宜切り替えることで、効率的に画像処理がなされる。
【0056】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図14は、第1処理時間及び第2処理時間の算出式の他の一例である。図14に示す式(3)及び式(4)は、上述した図9に示す式(1)及び式(2)と対比すると、処理ページ数N及びパイプライン段数Dをさらに考慮する点で相違する。
【0057】
第1処理時間は、図14に示す式(3)で算出される。式(3)によれば、まず、画像処理機能ごとの処理画素数P1,P2,P3に、1画素あたりの処理時間L1,L2,L3をそれぞれ掛け合わせ、掛け合わされた結果となるそれぞれ値にオーバーヘッドをそれぞれ加算し、この加算結果をすべて合計した値を算出する。さらに、この算出結果に1段当たりの処理ページ数(N÷D)を掛け合わせた値が第1処理時間Y1となっている。
【0058】
第2処理時間は、図14に示す式(4)で算出される。式(4)によれば、まず、画像処理機能ごとの処理画素数P1,P2,P3に、1画素あたりの処理時間L1,L2,L3をそれぞれ掛け合わせ、掛け合わされた結果となるそれぞれ値から最大値を選択し、選択された最大値をDRPの段数倍(例えば3倍)した値を算出する。さらに、この算出結果に1段当たりの処理ページ数(N÷D)を掛け合わせる。この掛け合わせ結果に、画像処理機能ごとの処理画素数P1,P2に、1画素あたりの処理時間L1,L2をそれぞれ掛け合わせて得られるそれぞれの値を加算した値が第2処理時間Y2となっている。尚、画像処理機能ごとの処理画素数P1,P2に、1画素あたりの処理時間L1,L2をそれぞれ掛け合わせて得られるそれぞれの値を初期時間という。
【0059】
さらに、本実施形態の具体例について図15乃至図18を参照して詳しく説明する。
図15は、リコンフィグ処理が有利となった場合の第1処理時間及び第2処理時間の他の具体例、図16は、リコンフィグ処理が有利となった場合の他の概念図、図17は、パイプライン処理が有利となった場合の第1処理時間及び第2処理時間の他の具体例、図18は、パイプライン処理が有利となった場合の他の概念図である。
【0060】
例えば、図15に示す色変換処理において、1画素を処理するのに要するクロック数が3クロックである場合、入力依存フラグが0であるため、入力画素数100を掛け合わせても、処理時間は0クロックである。しかし、出力依存フラグが1であるため、出力画素数100を掛け合わせると、処理時間は300クロックとなる。同様に、フィルタ処理についても処理時間は300クロック、拡大処理については拡大率を考慮して処理時間は650クロックとなる。本実施形態では、これらの処理時間の合計値に対し、1段当たりの処理ページ数30(=ページ数90÷段数3)を掛け合わせる。この結果、リコンフィグ処理方式に関する第1処理時間Y1は55500クロックとなる。
【0061】
一方、図15において、色変換処理における処理時間が300クロック、フィルタ処理における処理時間が300クロック、拡大処理における処理時間が650クロックであるため、最大値は650クロックとなる。この最大値650クロックを3倍した値1950クロックに対し、1段当たりの処理ページ数30(=ページ数90÷段数3)を掛け合わせる。この結果、パイプライン処理方式に関する第2処理時間は59100クロックとなる。
【0062】
したがって、リコンフィグ処理方式の方がパイプライン処理方式より処理時間が短い。このため、DRP61〜63はリコンフィグ処理方式で稼動する。同様に、DRP64〜66もリコンフィグ処理方式で稼動する。
【0063】
また、図16に示すリコンフィグ処理方式よれば、画像処理A1(例えば色変換処理)、画像処理B1(例えばフィルタ処理)、画像処理C1(例えば拡大処理)はDRP61の機能が切り替わることで実現する。同様に、A2,B2,C2はDRP62の機能が切り替わることにより実現し、A3,B3,C3はDRP63の機能が切り替わることにより実現する。DRP61〜63は並列で稼動するため、最初の処理時間300クロックでA1,A2,A3が実現する。
【0064】
次いで、オーバーヘッド200クロックが経過した後、DRP61〜63のA1,A2,A3がB1,B2,B3に切り替わり、処理時間300クロックでB1,B2,B3が完了する。同様に、オーバーヘッド200クロックが経過した後、DRP61〜63のB1,B2,B3がC1,C2,C3に切り替わり、処理時間650クロックでC1,C2,C3が完了する。このため、図16に示すように、処理ページ数が90ページである場合、処理時間が55500クロックであれば、画像処理A,B,Cが完了する。
【0065】
一方、図16に示すパイプライン処理方式によれば、1段あたりの処理時間が最大となる画像処理Cの処理時間650クロックを算出の基礎とし、この処理時間を3倍にして合計処理時間1950クロックを算出している。さらに、この算出値1950クロックに1段あたりのページ数30を掛け合わせ、この掛け合わせ結果に初期時間600クロックを加算している。このため、パイプライン処理方式であれば、処理ページ数が90ページである場合、処理時間が59100クロックであれば、画像処理A,B,Cが完了する。すなわち、並列でDRPが稼動するリコンフィグ処理方式より処理時間がかかる場合がある。
【0066】
逆に、図17において、図15に示す拡大率1.3倍を1.1倍に修正すれば、上述した説明と同様の手法により、第1処理時間Y1は52500クロック、第2処理時間Y2は50100クロックとなる。したがって、パイプライン処理方式の方がリコンフィグ処理方式より処理時間が短い。このため、DRP61〜63はパイプライン処理方式で稼動する。同様に、DRP64〜66もパイプライン処理方式で稼動する。
【0067】
具体的には、図18のリコンフィグ処理方式に示すように、DRP61〜63が並列に稼動した場合、ページ数が90ページであれば、合計処理時間は52500クロックとなるが、パイプライン処理方式では50100クロックとなる。このように、パイプライン処理方式を利用して逐次画像処理を行っていく場合の方が、DRP61〜63の画像処理機能を切り替えるリコンフィグ処理方式の場合より、短い時間で画像処理が完了する場合もある。
【0068】
このように、本実施形態では、第1処理時間及び第2処理時間を算出する際に、初期時間やページ数を考慮する。この結果、第1処理時間と第2処理時間との比較において、第1実施形態より比較の精度が高くなる。
【0069】
一方で、第1実施形態では、初期時間やページ数が無視されている。特に、処理ページ数が増大すると、上述した画像処理Cに要する時間が増大となる。この結果、画像処理Cの前になされる画像処理A,Bに要する時間は、無視できる程度に、画像処理Cに対して相対的に短くなる。このため、第1実施形態では、第2実施形態ほど第1処理時間及び第2処理時間の算出が複雑とならず、簡素化される。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、画像処理は、上述した画像処理に限定されず、回転処理、JPEG伸張処理、階調補正(Tone Correction)処理、階調再現(Tone Reproduction Control)処理、スクリーン処理などであってもよい。また、例えば、上述した処理時間算出処理、算出結果による稼動判定は、印刷ジョブごとに行ってもよいし、ページ単位ごとに行ってもよい。
【0071】
印刷ジョブごとに行う場合、印刷ジョブ生成時に、印刷ジョブにおける画像処理の内容(例えば、色変換処理やフィルタ処理など)をCPU32がすべて判定し、ページをグループ分けする。また、ページ単位ごとに行う場合、パイプライン段数分の連続するページに着目し、毎ページ印刷直前にCPU32が判定し、画像処理を切り替える。
【0072】
例えば、拡大率が1.3倍の写真入りカタログが90枚、続けて、拡大率が1.1倍の写真入りカタログが90枚の印刷ジョブをCPU32が受信した場合、1〜90ページ目までは、第1実施形態及び第2実施形態で説明したように、リコンフィグ処理方式でDRP61〜66が稼動し、ページが印刷される。そして、91〜180ページ目までは、パイプライン処理方式でDRP61〜66が稼動し、ページが印刷される。特に、類似する様式のページを大量印刷する場合、リコンフィグ処理方式とパイプライン処理方式のうち、高速な処理方式が選択されて、ページが印刷される。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
10 コントローラ
12 画像処理装置
20 出力装置
32 CPU
32a 処理時間算出部
32b 稼動制御部
61〜66 DRP
33 記憶装置
33x 画像情報格納部
33y 処理時間テーブル格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された印刷ジョブの画像情報の画素数に基づいて、リコンフィグ処理方式によって画像処理する場合に要する第1処理時間とパイプライン処理方式によって画像処理する場合に要する第2処理時間とを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された第1処理時間と第2処理時間のいずれか短い時間の処理方式によって、複数のDRPを稼動させる稼動制御手段と、
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記算出手段は、さらに、入力された印刷ジョブの処理内容にも基づいて、前記第1処理時間及び第2処理時間を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記算出手段は、さらに、前記DRPの各機能における1画素あたりの処理時間にも基づいて、前記第1処理時間及び第2処理時間を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記算出手段は、さらに、前記DRPの画像処理機能を切り替えるために要する時間にも基づいて、前記第1処理時間を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記DRPの各機能における1画素あたりの処理時間に出力画素数をそれぞれ乗じて得られた各算出結果のうち、最大となる第1算出結果に対し、さらに、入力された印刷ジョブが要求する画像処理の機能数を乗じて得られた第2算出結果を、第2処理時間とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記算出手段は、さらに、前記パイプライン処理方式の初動時間を含む場合には、画像処理を行うページ数及び前記パイプライン処理方式で稼動する前記DRPの段数にも基づいて、前記第1及び第2処理時間を算出することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置に印刷ジョブを出力する出力装置と、
前記画像処理装置から出力される画像情報に応じた画像を記録媒体に形成する形成装置と、
を有する画像形成システム。
【請求項8】
コンピュータを、
入力された印刷ジョブの画像情報の画素数に基づいて、リコンフィグ処理方式によって画像処理する場合に要する第1処理時間とパイプライン処理方式によって画像処理する場合に要する第2処理時間とを算出する算出手段、
前記算出手段により算出された第1処理時間と第2処理時間のいずれか短い時間の処理方式によって、複数のDRPを稼動させる稼動制御手段、
として機能させるための画像処理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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