説明

画像処理装置、表示システム、電子機器及び画像処理方法

【課題】表示素子の点灯時間を短くした場合でも、輝度低下に伴う画質の劣化を防止できる画像処理装置等を提供する。
【解決手段】表示画像を構成する各ドットに対応した画像データに対してフレームレート制御を行う画像処理装置は、当該ドットと前記当該ドットの周囲の少なくとも1つのドットとの階調差に応じて、前記当該ドットのフレームレートを生成するフレームレート生成部と、前記フレームレート生成部によって生成された前記フレームレートに基づいて、ドット単位に前記画像データに対してフレームレート制御を行うフレームレート制御部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、表示システム、電子機器及び画像処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として、液晶素子を用いたLCD(Liquid Crystal Display:LCD)パネルや、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:以下、OLEDと略す)(広義には、発光素子)を用いた表示パネル(表示装置)が普及している。中でも、OLEDは、液晶素子と比較して高速な応答性を有し、コントラスト比を向上させることができる。このようなOLEDをマトリックス状に配置させた表示パネルによれば、視野角が広く、高画質の画像を表示できる。
【0003】
その一方、OLEDを用いた表示パネルでは、OLEDの発光メカニズムに起因して、その点灯時間に比例して有機素材の劣化が進む。そのため、この表示パネルにおいて、いわゆる焼き付き現象が発生し、LCDパネル等の他の表示パネルと比較して長寿命化への障害となりやすいと考えられている。このようなOLEDを用いた表示パネルの焼き付き現象を防止する技術については、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献1には、画像信号として印加する電流値又は定電流の印加時間により画像の階調を制御しながら、所定時間間隔で表示位置を所定距離だけ移動させるようにした有機発光ディスプレイ装置が開示されている。また、特許文献2には、ディスプレイのリフレッシュレートを切り替える際の視覚的兆候を減少させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−304318号公報
【特許文献2】特開2008−197626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された技術では、OLEDの点灯時間を十分に短くすることができないという問題がある。また、点灯時間を短くすると輝度が低下し、画質を劣化させるという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、OLEDのような表示素子の点灯時間を短くした場合でも、輝度低下に伴う画質の劣化を防止できる画像処理装置、表示システム、電子機器及び画像処理方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、表示画像を構成する各ドットに対応した画像データに対してフレームレート制御を行う画像処理装置が、当該ドットと前記当該ドットの周囲の少なくとも1つのドットとの階調差に応じて、前記当該ドットのフレームレートを生成するフレームレート生成部と、前記フレームレート生成部によって生成された前記フレームレートに基づいて、ドット単位に前記画像データに対してフレームレート制御を行うフレームレート制御部とを含む。
【0009】
本態様によれば、周囲のドットとの階調差に応じてドット毎にフレームレート制御を行うようにしたので、通常動作時と比較して点灯回数を低減することができ、焼き付き現象の発生を抑えて、表示パネルの長寿命化に貢献できる。更に、ドットの点灯時間を短くした場合でも、輝度を単純に低下させることなく、フレームレート制御によって画質の劣化を防止できるようになる。
【0010】
(2)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記フレームレート生成部は、前記当該ドットの輝度と前記当該ドットの周囲のドットの輝度との差、及び前記当該ドットの色値と前記当該ドットの周囲のドットの色値との差の少なくとも1つに基づいて、前記フレームレートを調整するフレームレート調整処理部を含む。
【0011】
本態様によれば、周囲のドットとの輝度差及び色値との差の少なくとも1つに基づいてフレームレートを調整するようにしたので、輝度及び色値を用いることができ、ドット単位のフレームレートの調整処理を簡素化できるようになる。
【0012】
(3)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記フレームレート生成部は、前記表示画像を分割した複数のブロックを構成するブロックの平均輝度に応じて、前記階調差に応じて生成される前記当該ドットのフレームレートを補正する。
【0013】
本態様においては、表示画像を分割することにより得られるブロックの平均輝度に応じて各ドットのフレームレートを補正するようにしている。これにより、ブロック単位で明るい画像か暗い画像かを判別して、その判別結果に応じて補正することで、コントラストが強調されてしまう事態を回避することができる。
【0014】
(4)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記フレームレート生成部は、前記表示画像の水平方向及び垂直方向にそれぞれ3ドットで構成される処理ブロック単位で、前記水平方向及び前記垂直方向に1画面分を走査しながら、前記当該ドットと前記当該ドットの周囲のドットとの階調差に応じて前記当該ドットのフレームレートを生成する。
【0015】
本態様によれば、隣接するドット間で相関をとりながらフレームレートを決定することができる。その結果、隣接するドット間で不自然にフレームレートが変化することなく、フレームレートの調整に起因する画質の劣化を防止できるようになる。
【0016】
(5)本発明の他の態様に係る画像処理装置では、前記フレームレート制御部は、前記表示画像が静止画であるとき、ドット単位に前記画像データに対してフレームレート制御を行う。
【0017】
本態様によれば、フレームレート制御による効果を得にくい動画では制御を省略して動画の画質の劣化を抑え、焼き付き現象の防止を確実に行うと共に、より点灯時間が長くなる画像表示の際の高画質化を図ることができる。
【0018】
(6)本発明の他の態様に係る画像処理装置は、前記フレームレート制御部によってフレームレート制御された前記画像データに対してガンマ補正処理を行うガンマ補正処理部を含む。
【0019】
本態様によれば、上記の効果に加えて、フレームレート制御によって画像全体の輝度の低下や色落ち等があっても画質の劣化を防止できるようになる。
【0020】
(7)本発明の他の態様は、表示システムが、複数のロウ信号線と、前記複数のロウ信号線と交差して設けられる複数のカラム信号線と、前記複数のロウ信号線のいずれかと前記複数のカラム信号線のいずれかとにより特定され駆動電流に応じた輝度で発光する複数の発光素子とを有する表示パネルと、前記複数のロウ信号線を駆動するロウドライバーと、前記複数のカラム信号線を駆動するカラムドライバーと、上記のいずれか記載の画像処理装置とを含み、前記画像処理装置によってフレームレート制御された前記画像データに基づいて前記表示画像を表示する。
【0021】
本態様によれば、表示素子の点灯時間を短くした場合でも、輝度低下に伴う画質の劣化を防止できる表示システムを提供できるようになる。
【0022】
(8)本発明の他の態様は、電子機器が、上記のいずれか記載の画像処理装置を含む。
【0023】
本態様によれば、表示素子の点灯時間を短くした場合でも、輝度低下に伴う画質の劣化を防止できる画像処理装置を備えた電子機器を提供できるようになる。
【0024】
(9)本発明の他の態様は、表示画像を構成する各ドットに対応した画像データに対してフレームレート制御を行う画像処理方法が、当該ドットと前記当該ドットの周囲の少なくとも1つのドットとの階調差に応じて、前記当該ドットのフレームレートを生成するフレームレート生成ステップと、前記フレームレート生成ステップにおいて生成された前記フレームレートで、ドット単位に前記画像データに対してフレームレート制御を行うフレームレート制御ステップとを含む。
【0025】
本態様によれば、周囲のドットとの階調差に応じてドット毎にフレームレート制御を行うようにしたので、通常動作時と比較して点灯回数を低減することができ、焼き付き現象の発生を抑えて、表示パネルの長寿命化に貢献できる。更に、ドットの点灯時間を短くした場合でも、輝度を単純に低下させることなく、フレームレート制御によって画質の劣化を防止できるようになる。
【0026】
(10)本発明の他の態様に係る画像処理方法は、前記フレームレート生成ステップでは、前記当該ドットの輝度と前記当該ドットの周囲のドットの輝度との差、及び前記当該ドットの色値と前記当該ドットの周囲のドットの色値との差の少なくとも1つに基づいて、前記フレームレートを調整する。
【0027】
本態様によれば、周囲のドットとの輝度差及び色値との差の少なくとも1つに基づいてフレームレートを調整するようにしたので、輝度及び色値を用いることができ、ドット単位のフレームレートの調整処理を簡素化できるようになる。
【0028】
(11)本発明の他の態様に係る画像処理方法は、前記フレームレート生成ステップでは、前記表示画像を分割した複数のブロックを構成するブロックの平均輝度に応じて、前記階調差に応じて生成される前記当該ドットのフレームレートを補正する。
【0029】
本態様においては、表示画像を分割することにより得られるブロックの平均輝度に応じて各ドットのフレームレートを補正するようにしている。これにより、ブロック単位で明るい画像か暗い画像かを判別して、その判別結果に応じて補正することで、コントラストが強調されてしまう事態を回避することができる。
【0030】
(12)本発明の他の態様に係る画像処理方法は、前記フレームレート生成ステップでは、前記表示画像の水平方向及び垂直方向にそれぞれ3ドットで構成される処理ブロック単位で、前記水平方向及び前記垂直方向に1画面分を走査しながら、前記当該ドットと前記当該ドットの周囲のドットとの階調差に応じて前記当該ドットのフレームレートを生成する。
【0031】
本態様によれば、隣接するドット間で相関をとりながらフレームレートを決定することができる。その結果、隣接するドット間で不自然にフレームレートが変化することなく、フレームレートの調整に起因する画質の劣化を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示システムの構成例のブロック図。
【図2】図1の画像処理装置の構成例のブロック図。
【図3】図2の画像解析部の構成例のブロック図。
【図4】図2のFRC部の構成例のブロック図。
【図5】画像処理装置の動作説明図。
【図6】画像処理装置の他の動作説明図。
【図7】画像処理装置の処理例のフロー図。
【図8】基本フレームレートテーブルの一例を模式的に示す図。
【図9】基本フレームレート加算テーブルの一例を模式的に示す図。
【図10】輝度差フレームレート加算テーブルの一例を模式的に示す図。
【図11】色距離フレームレート加算テーブルの一例を模式的に示す図。
【図12】図12(A)〜図12(C)は処理ブロック内のドット毎に求められる輝度の具体例を示す図。
【図13】図13(A)、図13(B)は図12(C)の輝度に対応した基本フレームレートの一例を示す図。
【図14】図14(A)、図14(B)はフレームレート調整処理部において算出されるドットD5についての周囲のドットとの輝度差及び色距離の一例を示す図。
【図15】図15(A)〜図15(C)はフレームレート生成部において生成される各ドットのフレームレートの一例を示す図。
【図16】図16(A)、図16(B)は本実施形態における表示システムが適用された電子機器の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
【0034】
図1に、本発明の一実施形態に係る表示システムの構成例のブロック図を示す。この表示システムは、表示素子としての発光素子であるOLEDを用いた表示パネル(発光パネル)を有し、各OLEDは、画像処理装置により生成された画像データ及び表示タイミング制御信号に基づいて、ロウドライバー及びカラムドライバーにより駆動される。
【0035】
より具体的には、表示システム10は、表示パネル20と、ロウドライバー30と、カラムドライバー40と、電源回路60と、画像処理装置100と、ホスト200とを含む。表示パネル20には、Y方向に延びる複数のデータ信号線d1〜dN(Nは2以上の整数)及び複数のカラム信号線c1〜cNがX方向に配設される。更に、表示パネル20には、各カラム信号線及び各データ信号線と交差するようにX方向に延びる複数のロウ信号線r1〜rM(Mは2以上の整数)がY方向に配設される。各カラム信号線(より具体的には、各カラム信号線及び各データ信号線)と各ロウ信号線との交差位置には画素回路が形成され、表示パネル20には、複数の画素回路がマトリックス状に配置される。
【0036】
図1では、X方向の隣接するR成分の画素回路PR、G成分の画素回路PG及びB成分の画素回路PBにより1ドットが構成される。R成分の画素回路PRは、赤色の表示色を発光するOLEDを有し、G成分の画素回路PGは、緑色の表示色を発光するOLEDを有し、B成分の画素回路PBは、青色の表示色を発光するOLDEを有する。
【0037】
ロウドライバー30は、表示パネル20のロウ信号線r1〜rMに接続されている。ロウドライバー30は、例えば1垂直走査期間内に、表示パネル20のロウ信号線r1〜rMを順次選択し、各ロウ信号線の選択期間に選択パルスを出力する。カラムドライバー40は、表示パネル20のデータ信号線d1〜dN、カラム信号線c1〜cNに接続されている。カラムドライバー40は、カラム信号線c1〜cNに所与の電源電圧を印加すると共に、例えば1水平走査期間毎に、1ライン分の画像データに対応した階調電圧をそれぞれ各データ信号線に印加する。
【0038】
これにより、第j(1≦j≦M、jは整数)行が選択される水平走査期間に、第j行の第k(1≦k≦N、kは整数)列目の画素回路に、画像データに対応した階調電圧が印加されることになる。第j行の第k列目の画素回路では、ロウ信号線rjに選択パルスが印加されると、データ信号線dkに印加された画像データに対応した電圧が、当該画素回路が有する駆動トランジスターのゲートに供給される。即ち、ロウドライバー30によってロウ信号線rjに選択パルスが印加されると、カラムドライバー40によってデータ信号線dkに印加された画像データに対応した電圧が、駆動トランジスターのゲートに供給される。このとき、カラム信号線ckに所与の電源電圧が印加されていると、この駆動トランジスターが導通状態となって、当該画素回路が有するOLEDに駆動電流が流れる。以上のように、ロウドライバー30及びカラムドライバー40は、1垂直走査期間内に順次選択したロウ信号線に接続された画素を構成するOLEDに、画像データに対応する駆動電流を供給することができる。
【0039】
ホスト200は、画像データ生成部として、表示画像に対応した画像データを生成する。ホスト200によって生成された画像データは、画像処理装置100に送られる。画像処理装置100は、ホスト200からの画像データに基づく画像表示の際に、該画像データに対してフレームレート制御(Frame Rate Control:以下、FRC)を行う。画像処理装置100によるFRC後の画像データは、カラムドライバー40に供給される。また、画像処理装置100によるFRC後の画像データに対応した表示タイミング制御信号は、ロウドライバー30及びカラムドライバー40に供給される。電源回路60は、複数種類の電源電圧を生成し、表示パネル20、ロウドライバー30、カラムドライバー40、及び画像処理装置100の各部に電源電圧を供給する。
【0040】
図2に、図1の画像処理装置100の構成例のブロック図を示す。
【0041】
画像処理装置100は、画像データ記憶部110と、画像解析部120と、静止画判別部140と、FRC部(フレームレート制御部)150と、FRCカウンター160と、表示タイミング制御部170とを含む。更に、画像処理装置100は、ガンマ補正処理部180と、ガンマ補正テーブル記憶部190とを含む。
【0042】
画像データ記憶部110は、ホスト200によって生成された表示画像を構成する各ドットの画像データを記憶する。画像データ記憶部110には、ホスト200からの画像データが順次記憶される。
【0043】
画像解析部120は、フレームレート生成部として機能し、画像データ記憶部110に記憶される画像データに基づいてドット毎にフレームレートを生成する。この画像解析部120は、周囲の少なくとも1つのドットとの階調差に応じて各ドットのフレームレートを生成する。より具体的には、画像解析部120は、当該ドットの輝度に応じて基本フレームレートを決定する。この基本フレームレートは、当該ドットを含む所与のブロックを構成する複数のドットの輝度の平均輝度に応じて補正される。そして、画像解析部120は、周囲のドットとの階調差に応じて基本フレームレート(或いは平均輝度に応じて補正された基本フレームレート)を調整したフレームレートをドット毎に生成する。即ち、画像解析部120は、当該ドットの輝度と当該ドットの周囲のドットの輝度との差(輝度差)、及び当該ドットの色値と当該ドットの周囲のドットの色値との差(色距離)の少なくとも1つに基づいてドット毎にフレームレートを生成する。ここで、色値は、色を表す値であればよい。こうしてドット毎に生成されたフレームレートは、当該ドットの画像データと関連付けられて、画像解析部120又は画像データ記憶部110に保存される。
【0044】
静止画判別部140は、ホスト200から供給される画像データが静止画の画像データであるか否かを判別する。そのため、静止画判別部140は、画像データ記憶部110に順次記憶される画像データに基づいて、表示すべき画像が静止画であるフレームが連続しているか否かを検出する。静止画であるフレームが連続していることが検出されたとき、静止画判別部140は、ホスト200からの画像データが静止画の画像データであると判別する。
【0045】
FRC部150は、画像解析部120によってドット毎に生成されたフレームレートに基づいて、画像データ記憶部110に記憶される各ドットの画像データに対してFRCを行う。このようなFRC部150は、静止画判別部140によって処理対象の画像データが静止画の画像データであると判別されたときに、上記のFRCを行う。これにより、FRCによる効果を得にくい動画では制御を省略して動画の画質の劣化を抑え、焼き付き現象の防止を確実に行うと共に、より点灯時間が長くなる画像表示の際の高画質化を図ることができる。FRCカウンター160は、FRC部150によって行われるFRCで参照されるフレーム番号FNを生成する。FRCカウンター160は、表示制御される画像のフレーム数をカウントしており、カウントされたフレームを特定するためのフレーム番号FNを出力する。FRC部150は、FRCカウンター160からのフレーム番号FNを用いて、FRCを行う。
【0046】
表示タイミング制御部170は、表示タイミング制御信号を生成する。表示タイミング制御信号としては、例えば1水平走査期間を指定する水平同期信号HSYNC、1垂直走査期間を指定する垂直同期信号VSYNC、水平走査方向のスタートパルスSTH、垂直走査方向のスタートパルスSTV、ドットクロックDCLK等がある。表示タイミング制御部170によって生成された表示タイミング制御信号は、FRC部150によって行われたFRC後の画像データに同期して、ロウドライバー30及びカラムドライバー40に対して出力される。
【0047】
ガンマ補正処理部180は、ガンマ補正テーブル記憶部190に記憶されるガンマ補正テーブルに従って、FRC部150によって行われたFRC後の画像データに対してガンマ補正処理を行う。ガンマ補正テーブルには、補正前の画像データに対応したガンマ補正量が補正データとして記憶されており、ガンマ補正処理部180は、FRC後の画像データに対応した補正データに基づいて該画像データを補正する処理を行う。ガンマ補正テーブル記憶部190に記憶されるガンマ補正テーブルを構成する補正データは、ホスト200等によって変更できるように構成されている。
【0048】
なお、図2では、画像処理装置100が画像データ記憶部110を内蔵する構成を例に示すが、画像データ記憶部110が画像処理装置100の外部に設けられていてもよい。また、画像データ記憶部110が記憶する各ドットの画像データと該画像データに対応するフレームレートは、複数の記憶手段に分けて記憶されてもよい。
【0049】
図3に、図2の画像解析部120の構成例のブロック図を示す。図3において、図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0050】
画像解析部120は、YUV変換部122と、フレームレート生成部124とを含む。フレームレート生成部124は、基本フレームレート生成部126と、フレームレート調整処理部128とを含む。また、フレームレート生成部124において生成されるフレームレートを当該ドットの輝度及び当該ドットの周囲のドットとの階調差に応じて変更するために、画像解析部120は、複数種類のテーブルを参照する。即ち、画像解析部120は、基本フレームレートテーブル記憶部130、基本フレームレート加算テーブル記憶部132、輝度差フレームレート加算テーブル記憶部134、色距離フレームレート加算テーブル記憶部136を含む。
【0051】
YUV変換部122は、画像データ記憶部110に記憶される画像データ(例えばRGB形式の画像データ)を、輝度データY及び色差データUVにより構成されるYUVデータに変換する。フレームレート生成部124は、当該ドットと当該ドットの周囲の少なくとも1つのドットとの階調差に応じて、当該ドットのフレームレートを生成する。このとき、フレームレート生成部124は、YUV変換部122によって変換された輝度データと例えばRGB形式の画像データとを用いて、フレームレートを生成する。
【0052】
このようなフレームレート生成部124は、基本フレームレートテーブル記憶部130に記憶される基本フレームレートテーブルを参照することで、基本フレームレート生成部126において基本フレームレートを生成する。基本フレームレートテーブルには、当該ドットの輝度に対応したフレームレートが記憶されており、基本フレームレート生成部126は、この基本フレームレートテーブルを参照して当該ドットの輝度に対応した基本フレームレートを生成する。またフレームレート生成部124は、基本フレームレート加算テーブル記憶部132に記憶される基本フレームレート加算テーブルを参照して、基本フレームレートを補正する。こうすることで、例えば水平方向の両端が明るい画像又は水平方向の両端が暗い画像でフレームレートの差が大きくなって、コントラストがより強調されることを防止できる。即ち、このような画像において、ブロック単位で明るい画像か暗い画像かを判別して、その判別結果に応じて補正することで、コントラストが強調されてしまう事態を回避する。基本フレームレート加算テーブルには、当該ドットを含む複数のドットで構成されるブロックの平均輝度に対応した加算値(補正データ)が記憶されている。基本フレームレート生成部126は、この基本フレームレート加算テーブルを参照して基本フレームレートを補正する。
【0053】
フレームレート調整処理部128は、基本フレームレートを調整する処理を行う。そのため、フレームレート調整処理部128は、輝度差フレームレート加算テーブル及び色距離フレームレート加算テーブルの少なくとも1つを参照する。輝度差フレームレート加算テーブル記憶部134に記憶される輝度差フレームレート加算テーブルには、周囲のドットとの輝度差に対応した加算値(補正データ)が記憶されている。色距離フレームレート加算テーブル記憶部136に記憶される色距離フレームレート加算テーブルには、周囲のドットとの色距離に対応した加算値(補正データ)が記憶されている。
【0054】
以上のように、基本フレームレート生成部126は、ドット毎に、各ドットの輝度に応じた基本フレームレートを生成する。また、フレームレート調整処理部128は、周囲のドットとの輝度差及び色距離の少なくとも1つに応じて、該基本フレームレートを調整する。
【0055】
図4に、図2のFRC部150の構成例のブロック図を示す。図4は、FRC部150の他に、画像データ記憶部110、画像解析部120及びFRCカウンター160もあわせて図示している。図4において、図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
FRC部150は、コンパレーター152と、FRC処理部154とを有し、画像データ記憶部110に記憶される画像データとこれに対応したフレームレートとに基づいて、FRCを行う。各ドットの画像データに対応したフレームレートは、FRCに先立って画像解析部120において取得されている。コンパレーター152は、FRCカウンター160からのフレーム番号FNと、当該ドットのフレームレートとを比較する。FRC処理部154は、画像データ記憶部110に記憶される当該ドットの画像データに対して、コンパレーター152からの比較結果に基づいてFRC処理を行う。このFRC処理では、当該ドットのフレームレートを参照して当該ドットを点灯すべきか非点灯にすべきかを決定する。点灯するときは、FRC処理部154は、当該ドットの画像データをそのまま出力する。一方、非点灯にするときは、FRC処理部154は、当該ドットの画像データとして黒を表示する画像データを出力する。このように、ドット毎に生成されたフレームレートに基づいて点灯と非点灯とを制御することで、画像処理装置100は、FRCを実現する。
【0057】
以上のような構成を有する画像処理装置100の動作例について説明する。
【0058】
図5及び図6に、画像処理装置100の動作説明図を示す。図5は、表示画像IMGに対応する画像データに対するFRCの処理単位の説明図を表す。図6は、図5の処理単位の走査の説明図を表す。
【0059】
図5に示すように、画像処理装置100は、表示画像IMGを複数のブロックに分割することにより得られるブロックBK単位で、FRCを行う。本実施形態では、ブロックBKは、16ドット×16ラインの矩形領域とし、平均輝度はブロックBK単位で生成される。このとき、画像処理装置100は、各ブロックBKを3ドット×3ラインの処理ブロックPBK(水平方向及び垂直方向にそれぞれ3ドットで構成される処理ブロック)単位で、周囲のドットとの階調差に応じた各ドットのフレームレートを決定する。即ち、画像処理装置100は、図6に示すように、表示画像IMGを複数のブロックに分割し、ブロックBK毎に処理ブロックPBKを1ドット毎又は1ライン毎にずらしながら走査することを繰り返して、各ドットのフレームレートを生成する。このように処理ブロックPBKを3ドット×3ラインで構成し、1ドット又は1ライン毎にずらしながらドット間の階調差に応じたフレームレートを生成するようにしたので、隣接するドット間で相関をとりながらフレームレートを決定することができる。その結果、隣接するドット間で不自然にフレームレートが変化することなく、フレームレートの調整に起因する画質の劣化を防止できるようになる。
【0060】
以下、画像処理装置100の具体的な処理例について説明する。
【0061】
図7に、画像処理装置100の処理例のフロー図を示す。画像処理装置100は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)や専用のハードウェアによって構成され、図2〜図4の各部に対応したハードウェアが図7の各ステップに対応した処理を実行することができる。或いは、画像処理装置100が、中央演算処理装置(Central Processing Unit:以下、CPU)、読み出し専用メモリー(Read Only Memory:以下、ROM)又はランダムアクセスメモリー(Random Access Memory:以下、RAM)によって構成されてもよい。この場合、ROM又はRAMに格納されたプログラムを読み込んだCPUが、該プログラムに対応した処理を実行することで図7の各ステップに対応した処理を実行することができる。
【0062】
画像処理装置100によるFRCに先立って、基本フレームレートテーブル、基本フレームレート加算テーブル、輝度差フレームレート加算テーブル及び色距離フレームレート加算テーブルの各テーブルが作成される。例えば、ホスト200が、各テーブルの値を設定するようにしてもよい。ここで、例えば図5のような表示画像IMGのRGB形式の画像データが入力されると、画像処理装置100は、この画像データを画像データ記憶部110に格納する。画像処理装置100は、最初のブロックの左上に処理ブロックを設定し、ブロック内で該処理ブロックを1ドットずつ水平方向又は1ラインずつ垂直方向に移動させながら、処理ブロック毎に各ドットのフレームレートを決定する。画像処理装置100は、この処理をブロック毎に繰り返して、表示画像IMGの各ドットのフレームを決定する。
【0063】
そのため、まず、画像処理装置100は、画像解析部120のYUV変換部122において、画像データ記憶部110から各ドットの画像データを読み出し、該画像データをYUVデータに変換する(ステップS10)。次に、フレームレート生成部124が、図5又は図6のブロックBK単位で輝度ヒストグラムを作成する。そして、基本フレームレート生成部126が、基本フレームレートテーブル記憶部130を参照して、各ドットの輝度に対応した基本フレームレートfrを読み出すことで、各ドットの基本フレームレートを生成する(ステップS12)。また、基本フレームレート生成部126は、基本フレームレート加算テーブル記憶部132を参照して、当該ドットを含むブロックBKの平均輝度に対応した加算値δを読み出し、ブロック毎に各ドットの基本フレームレートを補正する(ステップS14)。ステップS14において、ブロック単位での明るさに応じて補正することにより、コントラストが過度に強調されることを回避できるようになる。
【0064】
これ以降、画像処理装置100は、ブロックBK毎に、処理ブロックPBK内で以下のような処理を行う。即ち、フレームレート生成部124は、水平方向、垂直方向及び斜め方向にそれぞれ隣接するドット間の輝度差を算出すると共に、このドット間の色距離(各ドットの色を表す値の差)を算出する(ステップS16)。そして、フレームレート調整処理部128は、この輝度差及び色距離を解析し(ステップS18、ステップS20)、これらの解析結果に基づいて、基本フレームレート生成部126で生成された基本フレームレートを調整する処理を行う(ステップS22)。より具体的には、フレームレート調整処理部128は、輝度差の解析結果に基づいて、輝度差フレームレート加算テーブル記憶部134を参照して、輝度差に応じた加算値αを読み出し、処理ブロックPBK内の各ドットのフレームレートを調整する。また、フレームレート調整処理部128は、色距離の解析結果に基づいて、色距離フレームレート加算テーブル記憶部136を参照して、色距離に応じた加算値βを読み出し、処理ブロックPBK内の各ドットのフレームレートを調整する。これにより、フレームレートを小さくすることにより本来明暗の差があるドットの明暗が目立つことを回避する。
【0065】
そして、次の処理ブロックがあるとき(ステップS24:Y)、画像処理装置100は、処理ブロックの位置を水平方向に1ドット又は垂直方向に1ライン分ずらして次の処理ブロックに処理対象を移動し(ステップS26)、ステップS16に戻る。また、ステップS24において、次の処理ブロックがないとき(ステップS24:N)、画像処理装置100は、一連の処理を終了する(エンド)。
【0066】
なお、図7では、輝度差及び色距離の両方を解析する例を示すが、輝度差及び色距離の一方のみを解析し、その解析結果に応じてフレームレートを調整するようにしてもよい。
【0067】
ここで、画像処理装置100による処理例を具体的に説明する。以下では、基本フレームレートテーブル、基本フレームレート加算テーブル、輝度差フレームレート加算テーブル及び色距離フレームレート加算テーブルの各テーブルは、次のように設定されているものとする。
【0068】
図8に、基本フレームレートテーブル記憶部130に記憶される基本フレームレートテーブルの一例を模式的に示す。この基本フレームレートテーブルでは、各ドットの輝度(Y)に対応して基本フレームレートfrが指定されている。なお、図8では、8輝度値毎に基本フレームレートが指定される例を表すが、表示パネル20の特性等に応じて、1つの基本フレームレートfrを指定する輝度値の数や基本フレームレートfrの値を変更できることが望ましい。
図9に、図3の基本フレームレート加算テーブル記憶部132に記憶される基本フレームレート加算テーブルの一例を模式的に示す。この基本フレームレート加算テーブルでは、ブロックBKにおける平均輝度(Yave)に対応して加算値δが指定されている。なお、図9では、16平均輝度値毎に加算値δが指定される例を表すが、表示パネル20の特性等に応じて、1つの加算値δを指定する平均輝度値の数や加算値δの値を変更できることが望ましい。
図10に、図3の輝度差フレームレート加算テーブル記憶部134に記憶される輝度差フレームレート加算テーブルの一例を模式的に示す。この輝度差フレームレート加算テーブルでは、輝度差(Ydiff)に対応して加算値αが指定されている。なお、図10では、8輝度差値毎に加算値αが指定される例を表すが、表示パネル20の特性等に応じて、1つの加算値αを指定する輝度差値の数や加算値αの値を変更できることが望ましい。
図11に、図3の色距離フレームレート加算テーブル記憶部136に記憶される輝度差フレームレート加算テーブルの一例を模式的に示す。この色距離フレームレート加算テーブルでは、色距離(RGBdist)に対応して加算値βが指定されている。なお、図11では、24色距離値毎に加算値βが指定される例を表すが、表示パネル20の特性等に応じて、1つの加算値βを指定する色距離値の数や加算値βの値を変更できることが望ましい。
【0069】
このとき、画像処理装置100は、次のような処理ブロックPBK内の各ドットのRGB形式の画像データ(各色成分が8ビットデータ)に対してFRCを行うものとする。
【0070】
図12(A)〜図12(C)に、処理ブロックPBK内のドット毎に求められる輝度の具体例を示す。図12(A)は、処理ブロックPBKの説明図を表す。図12(B)は、処理ブロックPBKの画像データの一例を表す。図12(C)は、処理ブロックの輝度の一例を表す。
【0071】
本実施形態では、3ドット×3ラインで構成される処理ブロックPBKが、ドットD1〜D9を含む。このとき、ドットD5を基準に、輝度差や色距離が算出される。なお、処理ブロックPBKが画面内の左上の位置で、ドットD5が画面内座標(X,Y)=(0,0)のとき、ドットD1、D2、D3、D4、D7については例外的にドットD5と同一のデータとして処理されるものとする。
【0072】
ドットD1の画像データが(R,G,B)=(241,200,195)とすると、公知のYUV変換式によって輝度が求められ、図12(C)のようにY=212となる。図12(A)のドットD2〜D9の各画像データについても、同様のYUV変換式によって図12(C)に示すような輝度が得られる。ここで、基本フレームレート生成部126は、図8に示す基本フレームレートテーブルを参照することで、各ドットの輝度に対応した基本フレームレートfrを得る。また、基本フレームレート生成部126は、当該ブロックの平均輝度に基づいて、図9に示す基本フレームレート加算テーブルを参照することで加算値δを取得し、該加算値δに基づいて基本フレームレートを補正する。
【0073】
図13(A)、図13(B)に、図12(C)の輝度に対応した基本フレームレートの一例を示す。図13(A)は、基本フレームレート生成部126によって生成された基本フレームレートの一例をドット毎に表す。図13(B)は、基本フレームレート生成部126において補正された基本フレームレートの一例をドット毎に表す。
【0074】
例えば図12(C)に示すドットD1におけるY=212に対応する基本フレームレートfrは、図8に示す基本フレームレートテーブルにおいて55が設定されている。基本フレームレート生成部126は、当該ブロックの他のドットD2〜D9についても基本フレームレートテーブルを参照して基本フレームレートを生成する(図13(A))。ここで、当該ブロックの平均輝度は四捨五入するとYave=134として求められるものとする。このとき、基本フレームレート生成部126は、図9に示す基本フレームレート加算テーブルを参照して加算値δ=2を取得し、当該ブロックの各ドットの基本フレームレートに加算値δを加算することで、補正後の基本フレームレートを生成する(図13(B))。
【0075】
次にフレームレート調整処理部128は、図12(A)のドットD5を基準として、周囲のドットD1〜D4、D6〜D9の各ドットとの輝度差及び色距離を算出する。なお、本実施形態では、色距離については、処理速度とハードウェア規模を考慮して、RGBの各色成分の差分の合計値として求めるものとする。
【0076】
図14(A)、図14(B)に、フレームレート調整処理部128において算出されるドットD5についての周囲のドットとの輝度差及び色距離の一例を示す。図14(A)は、ドットD5についての周囲のドットとの輝度差とこれに対応した加算値αの一例を表す。図14(B)は、ドットD5と周囲のドットとの色距離とこれに対応した加算値βの一例を表す。
【0077】
ドットD5について周囲のドットとの輝度差が算出されると、図10に示す輝度差フレームレート加算テーブルを参照することで、図14(A)に示す加算値αが輝度差毎に得られる。フレームレート調整処理部128は、図14(A)に示す加算値αに基づいて、更に調整量Δαを求め、加算値α及び調整量Δαを用いてフレームレートを調整する処理を行う。同様に、ドットD5について周囲のドットとの色距離が算出されると、図11に示す色距離フレームレート加算テーブルを参照することで、図14(B)に示す加算値βが色距離毎に得られる。フレームレート調整処理部128は、図14(B)に示す加算値βに基づいて、更に調整量Δβを求め、加算値β及び調整量Δβを用いてフレームレートを調整する処理を行う。
【0078】
まず、図14(A)に示す輝度差(Ydiff)のうち、負の値をとる輝度差に対応する加算値αの最大値を、α1とする。ここで、ドットD5については、基本フレームレートにα1=1を加算することでフレームレートを調整する。これに対して、ドットD1〜D4、D6〜D9については、正の値をとる輝度差に対応した加算値αの平均値が、(正の値をとる輝度差の個数×α1)より大きいか否かを判別し、大きいときにフレームレートに例えば1を加算し、それ以外は加算しない。なお、ドットD1〜D4、D6〜D9については、輝度差が負の値をとるものについてはフレームレートに何も加算しない。例えば、図14(A)に示す場合、次のように、フレームレートに加算する調整量Δαが求められる。
Δα= if ((0+2+3+2)/4)>(α1×4)) then 1 else 0
= 0
【0079】
次に、図14(B)に示す色距離(RGBdist)のうち、負の値をとる輝度差と色距離との乗算結果の絶対値(abs(負のYdiff×RGBdist))が最大値となる色距離に対応する加算値βを、β1とする。ここで、ドットD5については、基本フレームレートにβ1=1を加算することでフレームレートを調整する。これに対して、ドットD1〜D4、D6〜D9については、正の値をとる輝度差に対応した加算値βの平均値が、(正の値をとる輝度差の個数×β1)より大きいか否かを判別し、大きいときにフレームレートに例えば1を加算し、それ以外は加算しない。なお、ドットD1〜D4、D6〜D9については、輝度差が負の値をとるものについてはフレームレートに何も加算しない。例えば、図14(B)に示す場合、次のように、フレームレートに加算する調整量Δβが求められる。
Δβ= if ((0+3+3+3)/4)>(β1×4)) then 1 else 0
= 0
【0080】
このように、輝度差が正の値をとる周囲のドットの個数が処理ブロック内の平均的な明るさに対応することに着目して、輝度差及び色距離に基づいて、平均的な明るさより暗いドットのフレームレートをプラス方向に加算する。この結果、処理ブロック内において、明暗の差があるドットのフレームレートを低下させることで、より一層明暗が目立つことを防止できるようになる。
【0081】
以上のように調整量Δα、Δβが求められると、フレームレート調整処理部128は、調整量Δα、Δβを用いて、各ドットの基本フレームレートを調整して、フレームレートを生成する。
【0082】
図15(A)〜図15(C)に、フレームレート生成部124において生成される各ドットのフレームレートの一例を示す。図15(A)は、図12(A)〜図12(C)の処理ブロックPBKについて基本フレームレート生成部126によって生成される基本フレームレートの一例を表す。図15(B)は、図12(A)〜図12(C)の処理ブロックPBKについて基本フレームレート生成部126によって補正される基本フレームレートの一例を表す。図15(C)は、図12(A)〜図12(C)の処理ブロックPBKについてフレームレート調整処理部128による調整後のフレームレートの一例を表す。
【0083】
処理ブロックPBK内の各ドットが、図12(A)に示すような輝度を有する場合、図15(A)に示すように基本フレームレートがドット毎に生成された後、当該ブロックBKの平均輝度に応じて図15(B)に示すように基本フレームレートが補正される。そして、水平方向、垂直方向及び斜め方向に隣接するドット間の輝度差及び色距離に応じて、図15(C)に示すようにフレームレートが調整される。このとき、フレームレート調整処理部128は、次のようにフレームレートを生成する。
D1=57+(α+Δα)+(β+Δβ)=57+(0+0)+(0+0)=57
D2=50+(α+Δα)+(β+Δβ)=50+(0+0)+(0+0)=50
D3=48+(α+Δα)+(β+Δβ)=48+(0+0)+(0+0)=48
D4=56+(α+Δα)+(β+Δβ)=56+(0+0)+(0+0)=56
D5=49+α1+β1=49+1+1=51
D6=38+(α+Δα)+(β+Δβ)=38+(2+0)+(3+0)=43
D7=53+(α+Δα)+(β+Δβ)=53+(0+0)+(0+0)=53
D8=37+(α+Δα)+(β+Δβ)=37+(3+0)+(3+0)=43
D9=37+(α+Δα)+(β+Δβ)=37+(2+0)+(3+0)=42
【0084】
続いて、画像処理装置100は、画像解析部120において処理ブロックPBKを水平方向に1ドット、又は垂直方向に1ラインだけ移動させて、移動後の処理ブロックにおける各ドットのフレームレートを生成する。このとき、基本フレームレートは、上記のようにテーブルを参照することなく、直前の処理ブロックにおいて生成されたフレームレートをそのまま使用する。従って、最初の処理ブロックのフレームレートを生成して次の処理ブロックに移動したとき、ドットD1(図15(C)でフレームレートが「57」のドット)の基本フレームレートのみが決定される。そして、移動後の次の処理ブロックは、例えばドットD2(図15(C)でフレームレートが「50」のドット)が次の処理ブロックの左上隅のドットとして処理され、この左上隅のドットのフレームレートが決定される。こうして、画像内で処理ブロックの走査が終了した段階で全ドットのフレームレートが決定されることになる。
【0085】
また、決定されたフレームレートに従ってFRC後の画像データに対して、図2に示すようにガンマ補正処理を行うことが望ましい。この場合、画像全体の輝度の低下や色落ち等があっても画質の劣化を防止できる。
【0086】
以上説明した画像処理装置100を含んで構成される表示システム10は、例えば次のような電子機器に適用することができる。
【0087】
図16(A)、図16(B)に、本実施形態における表示システム10が適用された電子機器の構成を示す斜視図を示す。図16(A)は、モバイル型のパーソナルコンピューターの構成の斜視図を表す。図16(B)は、携帯電話機の構成の斜視図を表す。
【0088】
図16(A)に示すパーソナルコンピューター800は、本体部810と、表示部820とを含む。表示部820として、本実施形態における表示システム10が実装される。本体部810は、表示システム10のうちホスト200を含み、この本体部810にはキーボード830が設けられる。即ち、パーソナルコンピューター800は、少なくとも上記の実施形態における画像処理装置100を含んで構成される。キーボード830を介した操作情報がホスト200によって解析され、その操作情報に応じて表示部820に画像が表示される。この表示部820は、OLEDを表示素子としているため、視野角が広い画面を有するパーソナルコンピューター800を提供できる。
【0089】
図16(B)に示す携帯電話機900は、本体部910と、表示部920とを含む。表示部920として、本実施形態における表示システム10が実装される。本体部910は、表示システム10のうちホスト200を含み、この本体部910にはキーボード930が設けられる。即ち、携帯電話機900は、少なくとも上記の実施形態における画像処理装置100を含んで構成される。キーボード930を介した操作情報がホスト200によって解析され、その操作情報に応じて表示部920に画像が表示される。この表示部920は、OLEDを表示素子としているため、視野角が広い画面を有する携帯電話機900を提供できる。
【0090】
なお、本実施形態における表示システム10が適用された電子機器として、図16(A)、図16(B)に示すものに限定されるものではない。例えば、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS(Point of sale system)端末、プリンター、スキャナー、複写機、ビデオプレーヤー、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【0091】
以上、本発明に係る画像処理装置、表示システム、電子機器及び画像処理方法等を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、次のような変形も可能である。
【0092】
(1)本実施形態では、OLEDが適用された表示システムを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0093】
(2)本実施形態では、色距離としてRGBの色成分の差分の合計値として求める例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、公知の色度変換式に従って画像データから色度に変換して、ドット間の色距離を色度の差として求めるようにしてもよい。
【0094】
(3)本実施形態において、本発明を、画像処理装置、表示システム、電子機器及び画像処理方法等として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記の画像処理方法の処理手順が記述されたプログラムや、該プログラムが記録された記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…表示システム、 20…表示パネル、 30…ロウドライバー、
40…カラムドライバー、 60…電源回路、 100…画像処理装置、
110…画像データ記憶部、 120…画像解析部、 122…YUV変換部、
124…フレームレート生成部、 126…基本フレームレート生成部、
128…フレームレート調整処理部、 130…基本フレームレートテーブル記憶部、
132…基本フレームレート加算テーブル記憶部、
134…輝度差フレームレート加算テーブル記憶部、
136…色距離フレームレート加算テーブル記憶部、 140…静止画判別部、
150…FRC部、 152…コンパレーター、 154…FRC処理部、
160…FRCカウンター、 170…表示タイミング制御部、
180…ガンマ補正処理部、 190…ガンマ補正テーブル記憶部、 200…ホスト、
BK…ブロック、 IMG…表示画像、 PBK…処理ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画像を構成する各ドットに対応した画像データに対してフレームレート制御を行う画像処理装置であって、
当該ドットと前記当該ドットの周囲の少なくとも1つのドットとの階調差に応じて、前記当該ドットのフレームレートを生成するフレームレート生成部と、
前記フレームレート生成部によって生成された前記フレームレートに基づいて、ドット単位に前記画像データに対してフレームレート制御を行うフレームレート制御部とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記フレームレート生成部は、
前記当該ドットの輝度と前記当該ドットの周囲のドットの輝度との差、及び前記当該ドットの色値と前記当該ドットの周囲のドットの色値との差の少なくとも1つに基づいて、前記フレームレートを調整するフレームレート調整処理部を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記フレームレート生成部は、
前記表示画像を分割した複数のブロックを構成するブロックの平均輝度に応じて、前記階調差に応じて生成される前記当該ドットのフレームレートを補正することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記フレームレート生成部は、
前記表示画像の水平方向及び垂直方向にそれぞれ3ドットで構成される処理ブロック単位で、前記水平方向及び前記垂直方向に1画面分を走査しながら、前記当該ドットと前記当該ドットの周囲のドットとの階調差に応じて前記当該ドットのフレームレートを生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記フレームレート制御部は、
前記表示画像が静止画であるとき、ドット単位に前記画像データに対してフレームレート制御を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記フレームレート制御部によってフレームレート制御された前記画像データに対してガンマ補正処理を行うガンマ補正処理部を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
複数のロウ信号線と、前記複数のロウ信号線と交差して設けられる複数のカラム信号線と、前記複数のロウ信号線のいずれかと前記複数のカラム信号線のいずれかとにより特定され駆動電流に応じた輝度で発光する複数の発光素子とを有する表示パネルと、
前記複数のロウ信号線を駆動するロウドライバーと、
前記複数のカラム信号線を駆動するカラムドライバーと、
請求項1乃至6のいずれか記載の画像処理装置とを含み、
前記画像処理装置によってフレームレート制御された前記画像データに基づいて前記表示画像を表示することを特徴とする表示システム。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか記載の画像処理装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
表示画像を構成する各ドットに対応した画像データに対してフレームレート制御を行う画像処理方法であって、
当該ドットと前記当該ドットの周囲の少なくとも1つのドットとの階調差に応じて、前記当該ドットのフレームレートを生成するフレームレート生成ステップと、
前記フレームレート生成ステップにおいて生成された前記フレームレートで、ドット単位に前記画像データに対してフレームレート制御を行うフレームレート制御ステップとを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記フレームレート生成ステップでは、
前記当該ドットの輝度と前記当該ドットの周囲のドットの輝度との差、及び前記当該ドットの色値と前記当該ドットの周囲のドットの色値との差の少なくとも1つに基づいて、前記フレームレートを調整することを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記フレームレート生成ステップでは、
前記表示画像を分割した複数のブロックを構成するブロックの平均輝度に応じて、前記階調差に応じて生成される前記当該ドットのフレームレートを補正することを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかにおいて、
前記フレームレート生成ステップでは、
前記表示画像の水平方向及び垂直方向にそれぞれ3ドットで構成される処理ブロック単位で、前記水平方向及び前記垂直方向に1画面分を走査しながら、前記当該ドットと前記当該ドットの周囲のドットとの階調差に応じて前記当該ドットのフレームレートを生成することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−227117(P2011−227117A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93761(P2010−93761)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】