説明

画像処理装置、電子カメラおよび画像処理プログラム

【課題】 同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像された複数枚の画像から、元の画像よりも高ダイナミックレンジの合成画像を生成する際に、コントラスト、色相、彩度の変化が少ない自然な合成画像を、簡単な構成で生成すること。
【解決手段】 同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像されたN(ただしNは2以上の整数)枚の画像に対して合成処理を施し、N枚の画像よりも高ダイナミックレンジの合成画像を生成する画像処理装置であって、N枚の画像を取得する取得部と、N枚の画像のうち、少なくとも1枚の画像に対してローパス処理を行い、ローパス画像を生成するローパス処理部と、合成処理における重み付け量を、ローパス画像に基づいて決定する決定部と、重み付け量にしたがって、N枚の画像に対して合成処理を施し、合成画像を生成する合成処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、電子カメラおよび画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像された複数の画像を合成して、元の画像よりも高ダイナミックレンジの画像を生成する手法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明では、入力信号のレベルに応じて異なる階調カーブを用いて、第1の画像および第2の画像を合成することにより、高ダイナミックレンジの画像を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3074967号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明では、中間の階調からハイライトにかけては、階調カーブの傾きがゆるくなり、合成画像のハイライト部分のコントラストが低下する場合がある。また、色調が変化することにより彩度が低下したり、色相が変化したりする場合があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像された複数枚の画像から、元の画像よりも高ダイナミックレンジの合成画像を生成する際に、コントラスト、色相、彩度の変化が少ない自然な合成画像を、簡単な構成で生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像されたN(ただしNは2以上の整数)枚の画像に対して合成処理を施し、前記N枚の画像よりも高ダイナミックレンジの合成画像を生成する画像処理装置であって、前記N枚の画像を取得する取得部と、前記N枚の画像のうち、少なくとも1枚の画像に対してローパス処理を行い、ローパス画像を生成するローパス処理部と、前記合成処理における重み付け量を、前記ローパス画像に基づいて決定する決定部と、前記重み付け量にしたがって、前記N枚の画像に対して前記合成処理を施し、前記合成画像を生成する合成処理部とを備える。
【0007】
なお、前記ローパス処理部は、前記N枚の画像のうち、前記露光条件による露出量がより少ない画像から前記ローパス画像を生成しても良い。
【0008】
また、前記ローパス画像に所定の階調変換処理を施す階調変換処理部をさらに備え、前記決定部は、前記階調変換処理が施された前記ローパス画像に基づいて、前記重み付け量を決定しても良い。
【0009】
また、前記階調変換処理における階調変換特性を、ユーザ操作に基づいて設定する設定部をさらに備えても良い。
【0010】
また、前記階調変換処理における階調変換特性を、前記N枚の画像の輝度情報に基づいて設定する設定部をさらに備えても良い。
【0011】
また、前記取得部は、前記N枚の画像として、3枚以上の画像を取得し、前記ローパス処理部と、前記決定部と、前記合成処理部とによる処理を複数回繰り返すことにより、前記合成画像を生成しても良い。
【0012】
また、被写体像を撮像して画像データを生成する撮像部と、上記した何れかの画像処理装置とを備え、前記取得部は、前記撮像部から前記N枚の画像を取得する電子カメラも本発明の具体的態様として有効である。
【0013】
また、上記発明に関する構成を、処理対象の画像データに対する画像処理をコンピュータで実現するための画像処理プログラムに変換して表現したものも本発明の具体的態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像された複数枚の画像から、元の画像よりも高ダイナミックレンジの合成画像を生成する際に、コントラスト、色相、彩度の変化が少ない自然な合成画像を、簡単な構成で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態の電子カメラ10の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の合成処理部15の詳細を示す図である。
【図3】第1実施形態の合成処理部15の動作を示すフローチャートである。
【図4】ローパスフィルタについて説明する図である。
【図5】階調カーブGm1について説明する図である。
【図6】階調カーブの変更について説明する図である。
【図7】階調カーブの変更について説明する別の図である。
【図8】第2実施形態の合成処理部15の詳細を示す図である。
【図9】第2実施形態の合成処理部15の動作を示すフローチャートである。
【図10】階調カーブGm2,Gm3について説明する図である。
【図11】第3実施形態の合成処理部15の詳細を示す図である。
【図12】第3実施形態の合成処理部15の動作を示すフローチャートである。
【図13】階調カーブGm4,Gm5,Gm6について説明する図である。
【図14】第4実施形態の合成処理部15の詳細を示す図である。
【図15】第4実施形態の合成処理部15の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態では、本発明の画像処理装置を備えた電子カメラを例に挙げて説明する。
【0017】
図1は、第1実施形態の電子カメラ10の構成を示す図である。図1に示すように、電子カメラ10は、撮影レンズ11、撮像素子12、アナログフロントエンド(Analog Front End)部(以下、AFE部と称する)13、画像処理部14、合成処理部15、圧縮伸長部16、記録部17の各部を備えるとともに、各部を統括的に制御する制御部18を備える。
【0018】
また、電子カメラ10は、撮像により生成された画像などを表示する不図示の表示部、レリーズ釦や設定釦などを含む不図示の操作部を備える。制御部18は、内部に不図示のメモリを備え、各部を制御するためのプログラムを予め記録するとともに、操作部の操作状態を検知する。
【0019】
撮影時、制御部18は、撮影レンズ11を介した被写体像を撮像素子12により撮像し、AFE部13によりディジタルの画像データを生成する。そして、制御部18は、画像処理部14により色処理、階調変換処理を施した後、圧縮伸長部16により適宜圧縮し、記録部17に記録する。
【0020】
なお、電子カメラ10は、高ダイナミックレンジ撮影の機能を有している。この機能は、同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像された複数の画像を合成して、元の画像よりも高ダイナミックレンジの画像を生成する機能である。電子カメラ10は、操作部を介したユーザ操作によりこの機能を実行しても良いし、制御部18による判断に基づいてこの機能を実行しても良い。また、この機能を実行する際には、画像処理部14の出力は合成処理部15に供給され、合成処理部15の出力は圧縮伸長部16に接続される。
【0021】
高ダイナミックレンジ撮影を行う際に、制御部18は、各部を制御し、同一の撮影シーンを異なる露光条件で撮像し、複数の画像を生成する。処理の具体的な方法は公知技術と同様であるため説明を省略する。露光条件の設定は、操作部を介したユーザ操作に基づいて行っても良いし、制御部18による自動制御で行っても良い。
【0022】
以下では、上述した撮影により、第1画像と第2画像とが生成されたものとして説明を行う。第1画像は、第2画像よりも露出量が少ない画像である。
【0023】
図2は、合成処理部15の詳細を示す図である。合成処理部15は、図2に示すように、ローパス画像作成部21、階調変換処理部22、合成部23の各部を備える。なお、色処理、階調変換処理など、通常の画像処理を行う各部については、図示および説明を省略する。
【0024】
図2で説明した合成処理部15における動作について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0025】
ステップS1において、合成処理部15は、第1画像および第2画像を取得する。この第1画像および第2画像は、通常の画像処理を施した後の画像であっても良いし、通常の画像処理の途中の画像であっても良い。また、第1画像のRGB値を、それぞれR1[x,y],G1[x,y],B1[x,y]で示し、第2画像のRGB値を、それぞれR2[x,y],G2[x,y],B2[x,y]で示す。
【0026】
ステップS2において、合成処理部15は、ローパス画像作成部21によって、第1画像のローパス画像を作成する。ローパス画像作成部21は、第1画像のRGB値に基づいて、次式を用いて輝度値Y1[x,y]を求める。
【0027】
Y1[x,y]=kr・R1[x,y]+kg・G1[x,y]+kb・B1[x,y] …(式1)
式1中のkr、kg、kbは、輝度値Y1[x,y]を算出するための所定の係数である。
【0028】
さらに、図4に例示する幅dが比較的広いフィルタLpwと、次式を用いて、ローパス画像LY1[x,y]を求める。
【0029】
【数1】

【0030】
ステップS3において、合成処理部15は、階調変換処理部22によって、ローパス画像LY1[x,y]に対して階調変換処理を行う。階調変換処理部22は、次式を用いて階調変換処理を行い、階調処理後のローパス画像LY1t[x,y]を求める。
【0031】
LY1t[x,y]=Gm1(LY1[x,y]) …(式3)
式3中のGm1は、図5に示す階調カーブGm1である。
【0032】
ステップS4において、合成処理部15は、合成部23によって、合成処理を行い、合成画像を生成する。合成部23は、ステップS1で取得した第1画像および第2画像を、ステップS3で階調変換処理を施したローパス画像LY1t[x,y]に基づいて合成し、合成画像を生成する。画像の合成は、以下の式4から式6を用いてRGB値のそれぞれについて行われる。
【0033】
Rmix[x,y]=(R1[x,y]・LY1t[x,y]+R2[x,y]・(255−LY1t[x,y]))÷255 …(式4)
Gmix[x,y]=(G1[x,y]・LY1t[x,y]+G2[x,y]・(255−LY1t[x,y]))÷255 …(式5)
Bmix[x,y]=(B1[x,y]・LY1t[x,y]+B2[x,y]・(255−LY1t[x,y]))÷255 …(式6)
ステップS5において、合成処理部15は、ステップS4で算出したRmix[x,y],Gmix[x,y],Bmix[x,y]からなる合成画像を出力する。なお、合成処理部15は、合成画像のRGB値に対して変換処理を行い、YCbCr化してから出力しても良い。また、合成処理部15から出力された合成画像は、圧縮伸長部16により適宜圧縮され、記録部17に記録される。
【0034】
以上説明したように、第1実施形態によれば、同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像されたN(ただしNは2以上の整数)枚の画像を取得し、N枚の画像のうち、少なくとも1枚の画像に対してローパス処理を行い、ローパス画像を生成する。そして、合成処理における重み付け量を、ローパス画像に基づいて決定し、決定した重み付け量にしたがって、N枚の画像に対して前記合成処理を施し、合成画像を生成する。したがって、ローパス画像から合成時の重み付け量を算出することにより、第1画像および第2画像の暗部と明部とを大まかに区別することができる。そのため、第1画像のみ、または、第2画像のみが合成画像に反映される領域については、コントラストや彩度の低下が発生しない。結果として、第1実施形態によれば、同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像された複数枚の画像から、元の画像よりも高ダイナミックレンジの合成画像を生成する際に、コントラスト、色相、彩度の変化が少ない自然な合成画像を、簡単な構成で生成することができる。
【0035】
なお、第1実施形態では、図5に示した階調カーブGm1を用いて階調変換処理を行う例を示したが、本発明はこの例に限定されない。
【0036】
例えば、図6に示すように、標準的な階調カーブ(例えば、図5に示した階調カーブGm1)を変化させることにより、合成画像における2つの画像(第1画像および第2画像)の境界の加減を変化させることができる。図6に示すように、変化のなだらかな階調カーブに変化させると、上述した境界はあいまいになり、2つの画像の境界は目立ちにくくソフトな合成画像となる。一方、変化の急な階調カーブに変化させると、上述した境界は明確になり、2つの画像の境界がくっきりとして目立つ合成画像となる。
【0037】
また、図7に示すように、標準的な階調カーブ(例えば、図5に示した階調カーブGm1)を変化させることにより、合成画像において2つの画像(第1画像および第2画像)のそれぞれを重視する割合を変化させることができる。図7に示すように、階調カーブの変化が暗部側にシフトした階調カーブを採用すると、上述した割合は、第1画像の方が多くなり、第1画像を重視した合成画像が生成される。この場合、合成処理において、露出量が少な目である第1画像を選択する領域が増えるので、結果として白トビが少ない明部重視の合成画像が生成される。一方、階調カーブの変化が明部側にシフトした階調カーブを採用すると、上述した割合は、第2画像の方が多くなり、第2画像を重視した合成画像が生成される。この場合、合成処理において、露出量が多めである第2画像を選択する領域が増えるので、結果として黒つぶれの少ない暗部重視の合成画像が生成される。
【0038】
図6および図7を用いて説明した階調カーブの変更は、操作部を介したユーザ操作により行う構成としても良いし、制御部18による判断に基づいて行う構成としても良い。制御部18により判断を行う場合には、画像解析を行い、解析結果に応じて階調カーブを変更しても良い。
【0039】
例えば、ステップS2において説明した輝度値Y1[x,y]のヒストグラムの分散を評価し、ヒストグラムの広がりに応じて、図6で説明したように、階調カーブを変更しても良い。この場合、例えば、分散が小さいほど境界が目立つ傾向があるので、より「あいまいに」なるように階調カーブを変更する。
【0040】
また、ステップS2において説明した輝度値Y1[x,y]の累積度数分布を評価し、累積度数に応じて、図7で説明したように、階調カーブを変更しても良い。この場合、例えば、累積度数が1/2となる輝度値を閾値として、階調カーブを変更する。
【0041】
<第2実施形態>
以下、図面を用いて本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、上述した第1実施形態の変形例であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行う。また、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同様の符号を用いて説明を行う。
【0042】
図8は、第2実施形態の合成処理部15の詳細を示す図である。第2実施形態の合成処理部15は、第1実施形態の合成処理部15における階調変換処理部22に代えて第1階調変換処理部31および第2階調変換処理部32を備え、合成部23に代えて合成部33を備える。
【0043】
図8で説明した合成処理部15における動作について、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
ステップS11およびステップS12において、合成処理部15は、第1実施形態の図3のステップS1およびステップS2と同様の処理を行う。
【0045】
ステップS13において、合成処理部15は、第1階調変換処理部31によって、ステップS12で作成したローパス画像LY1[x,y]に対して第1階調変換処理を行う。第1階調変換処理部31は、次式を用いて第1階調変換処理を行い、階調処理後のローパス画像LY1t[x,y]を求める。
【0046】
LY1t[x,y]=Gm2(LY1[x,y]) …(式7)
式7中のGm2は、図10に示す階調カーブGm2である。なお、階調カーブGm2は、図5に示した階調カーブGm1と同じ階調カーブであっても良いし、異なる階調カーブであっても良い。
【0047】
ステップS14において、合成処理部15は、第2階調変換処理部32によって、ステップS12で作成したローパス画像LY1[x,y]に対して第2階調変換処理を行う。第2階調変換処理部32は、次式を用いて第2階調変換処理を行い、階調処理後のローパス画像LY2t[x,y]を求める。
【0048】
LY2t[x,y]=Gm3(LY1[x,y]) …(式8)
式8中のGm3は、図10に示す階調カーブGm3である。
【0049】
ステップS15において、合成処理部15は、合成部33によって、合成処理を行い、合成画像を生成する。合成部33は、ステップS11で取得した第1画像および第2画像を、ステップS13で第1階調変換処理を施したローパス画像LY1t[x,y]およびステップS14で第2階調変換処理を施したローパス画像LY2t[x,y]に基づいて合成し、合成画像を生成する。画像の合成は、以下の式9から式11を用いてRGB値のそれぞれについて行われる。
【0050】
Rmix[x,y]=(R1[x,y]・LY1t[x,y]+R2[x,y]・LY2t[x,y])÷255 …(式9)
Gmix[x,y]=(G1[x,y]・LY1t[x,y]+G2[x,y]・LY2t[x,y])÷255 …(式10)
Bmix[x,y]=(B1[x,y]・LY1t[x,y]+B2[x,y]・LY2t[x,y])÷255 …(式11)
ステップS16において、合成処理部15は、ステップS15で算出したRmix[x,y],Gmix[x,y],Bmix[x,y]からなる合成画像を出力する。なお、合成処理部15は、合成画像のRGB値に対して処理の変換処理を行い、YCbCr化してから出力しても良い。また、合成処理部15から出力された合成画像は、圧縮伸長部16により適宜圧縮され、記録部17に記録される。
【0051】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1画像用の階調カーブと第2画像用の階調カーブとを用意し、合成処理時に用いるローパス画像を個別に作成することにより、合成処理に関して、第1実施形態よりもさらに細かな調整を施すことが可能となる。
【0052】
なお、第1実施形態または第2実施形態で説明した各処理を繰り返し実行することにより、互いに異なる露光条件で撮像された3枚以上の画像の合成処理を行うことができる。例えば、第1画像、第2画像および第3画像を取得し、まず、第1実施形態で説明した処理により、第1画像および第2画像から合成画像を生成する。そして、合成画像を第1画像とし、第3画像を第2画像として、第1実施形態で説明した処理を再び実行することにより、3枚の画像の合成処理を行うことができる。第2実施形態で説明した処理についても同様である。また、4枚以上の画像の合成処理についても同様である。
【0053】
さらに、第1の実施形態の処理と第2の実施形態の処理とを適宜組み合わせて3枚以上の画像の合成処理を行う構成としても良い。
【0054】
<第3実施形態>
以下、図面を用いて本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、上述した第1実施形態の変形例であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行う。また、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同様の符号を用いて説明を行う。
【0055】
図11は、第3実施形態の合成処理部15の詳細を示す図である。第3実施形態の合成処理部15は、第1実施形態の合成処理部15における階調変換処理部22に代えて第1階調変換処理部41,第2階調変換処理部42および第3階調変換処理部43を備え、合成部23に代えて合成部44を備える。
【0056】
図11で説明した合成処理部15における動作について、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0057】
ステップS21において、合成処理部15は、第1画像、第2画像および第3画像を取得する。第1画像は、第2画像よりも露出量が少ない画像であり、第2画像は、第3画像よりも露出量が少ない画像である。この第1画像、第2画像および第3画像は、通常の画像処理を施した後の画像であっても良いし、通常の画像処理の途中の画像であっても良い。また、第1画像のRGB値を、それぞれR1[x,y],G1[x,y],B1[x,y]で示し、第2画像のRGB値を、それぞれR2[x,y],G2[x,y],B2[x,y]で示し、第3画像のRGB値を、それぞれR3[x,y],G3[x,y],B3[x,y]で示す。
【0058】
ステップS22において、合成処理部15は、図3のフローチャートのステップS2と同様に、ローパス画像作成部21によって、第1画像のローパス画像LY1[x,y]を求める。
【0059】
ステップS23において、合成処理部15は、第1階調変換処理部41によって、ステップS22で作成したローパス画像LY1[x,y]に対して第1階調変換処理を行う。第1階調変換処理部41は、次式を用いて第1階調変換処理を行い、階調処理後のローパス画像LY1t[x,y]を求める。
【0060】
LY1t[x,y]=Gm4(LY1[x,y]) …(式12)
式12中のGm4は、図13に示す階調カーブGm4である。なお、階調カーブGm4は、図5に示した階調カーブGm1と同じ階調カーブであっても良いし、異なる階調カーブであっても良い。
【0061】
ステップS24において、合成処理部15は、第2階調変換処理部42によって、ステップS22で作成したローパス画像LY1[x,y]に対して第2階調変換処理を行う。第2階調変換処理部42は、次式を用いて第2階調変換処理を行い、階調処理後のローパス画像LY2t[x,y]を求める。
【0062】
LY2t[x,y]=Gm5(LY1[x,y]) …(式13)
式13中のGm5は、図13に示す階調カーブGm5である。
【0063】
ステップS25において、合成処理部15は、第3階調変換処理部43によって、ステップS22で作成したローパス画像LY1[x,y]に対して第3階調変換処理を行う。第3階調変換処理部43は、次式を用いて第3階調変換処理を行い、階調処理後のローパス画像LY3t[x,y]を求める。
【0064】
LY3t[x,y]=Gm6(LY1[x,y]) …(式14)
式14中のGm6は、図13に示す階調カーブGm6である。なお、階調カーブGm6は、図10に示した階調カーブGm3と同じ階調カーブであっても良いし、異なる階調カーブであっても良い。
【0065】
ステップS26において、合成処理部15は、合成部44によって、合成処理を行い、合成画像を生成する。合成部44は、ステップS21で取得した第1画像、第2画像および第3画像を、ステップS23で第1階調変換処理を施したローパス画像LY1t[x,y]、ステップS24で第2階調変換処理を施したローパス画像LY2t[x,y]およびステップS25で第3階調変換処理を施したローパス画像LY3t[x,y]に基づいて合成し、合成画像を生成する。画像の合成は、以下の式15から式17を用いてRGB値のそれぞれについて行われる。
【0066】
Rmix[x,y]=(R1[x,y]・LY1t[x,y]+R2[x,y]・LY2t[x,y] +R3[x,y]・LY3t[x,y])÷255 …(式15)
Gmix[x,y]=(G1[x,y]・LY1t[x,y]+G2[x,y]・LY2t[x,y] +G3[x,y]・LY3t[x,y])÷255 …(式16)
Bmix[x,y]=(B1[x,y]・LY1t[x,y]+B2[x,y]・LY2t[x,y] +B3[x,y]・LY3t[x,y])÷255 …(式17)
ステップS26において、合成処理部15は、ステップS26で算出したRmix[x,y],Gmix[x,y],Bmix[x,y]からなる合成画像を出力する。なお、合成処理部15は、合成画像のRGB値に対して処理の変換処理を行い、YCbCr化してから出力しても良い。また、合成処理部15から出力された合成画像は、圧縮伸長部16により適宜圧縮され、記録部17に記録される。
【0067】
なお、第3実施形態では、3枚の画像を合成する場合を例に挙げて説明したが、4枚以上の画像を合成する際にも、同様に階調変換処理部を増やすことにより対応することができる。
【0068】
以上説明したように、第3実施形態によれば、3枚以上の画像を合成する際に、処理は多少複雑化するが、第1実施形態および第2実施形態を繰り返す場合よりも高速に処理を行うことができる。
【0069】
<第4実施形態>
以下、図面を用いて本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、上述した第2実施形態の変形例であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明を行う。また、第2実施形態と同様の構成については、第2実施形態と同様の符号を用いて説明を行う。
【0070】
図14は、第4実施形態の合成処理部15の詳細を示す図である。第4実施形態の合成処理部15は、第2実施形態の合成処理部15におけるローパス画像作成部21に代えて第1ローパス画像作成部51および第2ローパス画像作成部52を備え、第1階調変換処理部31および第2階調変換処理部32に代えて第1階調変換処理部53および第2階調変換処理部54を備え、合成部33に代えて合成部55を備える。
【0071】
図14で説明した合成処理部15における動作について、図15のフローチャートを用いて説明する。
【0072】
ステップS31において、合成処理部15は、第1画像および第2画像を取得する。この第1画像および第2画像は、通常の画像処理を施した後の画像であっても良いし、通常の画像処理の途中の画像であっても良い。また、第1画像のRGB値を、それぞれR1[x,y],G1[x,y],B1[x,y]で示し、第2画像のRGB値を、それぞれR2[x,y],G2[x,y],B2[x,y]で示す。
【0073】
ステップS32において、合成処理部15は、第1ローパス画像作成部51によって、第1ローパス画像を作成する。第1ローパス画像作成部51は、第2実施形態のステップS12と同様の処理を行い、第1画像から第1ローパス画像LY1[x,y]を求める。
【0074】
ステップS33において、合成処理部15は、第1階調変換処理部53によって、ステップS32で作成した第1ローパス画像LY1[x,y]に対して第1階調変換処理を行う。第1階調変換処理部53は、第2実施形態のステップS13と同様の処理を行い、階調処理後の第1ローパス画像LY1t[x,y]を求める。
【0075】
ステップS34において、合成処理部15は、第2ローパス画像作成部52によって、第2ローパス画像を作成する。第2ローパス画像作成部52は、第2画像に対して、第2実施形態のステップS12と同様の処理を行い、第2画像から第2ローパス画像LY2[x,y]を求める。
【0076】
ステップS35において、合成処理部15は、第2階調変換処理部54によって、ステップS34で作成した第2ローパス画像LY2[x,y]に対して第2階調変換処理を行う。第2階調変換処理部54は、第2実施形態のステップS14と同様の処理を行い、階調処理後の第2ローパス画像LY2t[x,y]を求める。
【0077】
ステップS36において、合成処理部15は、合成部55によって、合成処理を行い、合成画像を生成する。合成部55は、ステップS31で取得した第1画像および第2画像を、ステップS33で第1階調変換処理を施したローパス画像LY1t[x,y]およびステップS35で第2階調変換処理を施したローパス画像LY2t[x,y]に基づいて合成し、合成画像を生成する。画像の合成処理は、第2実施形態のステップS15と同様に行われる。
【0078】
ステップS37において、合成処理部15は、ステップS36で算出したRmix[x,y],Gmix[x,y],Bmix[x,y]からなる合成画像を出力する。なお、合成処理部15は、合成画像のRGB値に対して変換処理を行い、YCbCr化してから出力しても良い。また、合成処理部15から出力された合成画像は、圧縮伸長部16により適宜圧縮され、記録部17に記録される。
【0079】
以上説明したように、第4実施形態によれば、処理は多少複雑化するが、合成処理に関して、第2実施形態よりもさらに細かな調整を施すことが可能となる。
【0080】
なお、上述した各実施形態で説明した高ダイナミックレンジ撮影の機能は、操作部を介したユーザ操作により実行しても良いし、制御部18による判断に基づいて実行しても良い。制御部18による判断に基づいて実行する場合には、撮影モード(例えば、「ポートレートモード」、「風景モード」など)、画像のコントラストの強弱、画像の調整モード、シーン解析や顔認識による画像判断結果等に応じて判断を行うと良い。
【0081】
また、上述した各実施形態において、ホワイトバランスを自動で設定するオートホワイトバランス処理が選択されている場合には、第1画像および第2画像の生成に際して、それぞれ個別のホワイトバランス設定とすることにより、明部と暗部とのそれぞれに最適なホワイトバランス処理が施された画像を生成することができる。
【0082】
また、上述した各実施形態では、本発明の技術を電子カメラ10において実現する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コンパクトタイプの電子カメラや動画撮影を行うムービーカメラなどにも本発明を同様に適用することができる。
【0083】
また、コンピュータと画像処理プログラムとにより、上述した各実施形態で説明した画像処理装置をソフトウェア的に実現しても良い。この場合、合成処理部15による処理(図3,図9,図12,図15のフローチャートの処理)の一部または全部をコンピュータで実現する構成とすれば良い。このような構成とすることにより、上述した各実施形態と同様の処理を実施することが可能になる。
【0084】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0085】
1…電子カメラ,14…画像処理部,15…合成処理部,18…制御部,21・51・52…ローパス画像作成部,22・31・32・41・42・43・53・54…階調変換処理部,23・33・44・55…合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像されたN(ただしNは2以上の整数)枚の画像に対して合成処理を施し、前記N枚の画像よりも高ダイナミックレンジの合成画像を生成する画像処理装置であって、
前記N枚の画像を取得する取得部と、
前記N枚の画像のうち、少なくとも1枚の画像に対してローパス処理を行い、ローパス画像を生成するローパス処理部と、
前記合成処理における重み付け量を、前記ローパス画像に基づいて決定する決定部と、
前記重み付け量にしたがって、前記N枚の画像に対して前記合成処理を施し、前記合成画像を生成する合成処理部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記ローパス処理部は、前記N枚の画像のうち、前記露光条件による露出量がより少ない画像から前記ローパス画像を生成する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記ローパス画像に所定の階調変換処理を施す階調変換処理部をさらに備え、
前記決定部は、前記階調変換処理が施された前記ローパス画像に基づいて、前記重み付け量を決定する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記階調変換処理における階調変換特性を、ユーザ操作に基づいて設定する設定部をさらに備える
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記階調変換処理における階調変換特性を、前記N枚の画像の輝度情報に基づいて設定する設定部をさらに備える
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の画像処理装置において、
前記取得部は、前記N枚の画像として、3枚以上の画像を取得し、
前記ローパス処理部と、前記決定部と、前記合成処理部とによる処理を複数回繰り返すことにより、前記合成画像を生成する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
同一の撮影シーンを互いに異なる露光条件で撮像して、複数枚の画像を生成する撮像部と、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の画像処理装置とを備え、
前記取得部は、前記撮像部から前記N枚の画像を取得する
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項8】
同一の撮影シーンから互いに異なる露光条件で撮像されたN(ただしNは2以上の整数)枚の画像に対して合成処理を施し、前記N枚の画像よりも高ダイナミックレンジの合成画像を生成する画像処理をコンピュータで実現するための画像処理プログラムであって、
前記N枚の画像を取得する取得ステップと、
前記N枚の画像のうち、少なくとも1枚の画像に対してローパス処理を行い、ローパス画像を生成するローパス処理ステップと、
前記合成処理における重み付け量を、前記ローパス画像に基づいて決定する決定ステップと、
前記重み付け量にしたがって、前記N枚の画像に対して前記合成処理を施し、前記合成画像を生成する合成処理ステップと
をコンピュータで実現することを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−195963(P2012−195963A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148477(P2012−148477)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2010−155791(P2010−155791)の分割
【原出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】