説明

画像処理装置および方法、X線診断装置

【課題】被ばく量の低減を支援することができる。
【解決手段】画像処理装置は、記憶部、算出部、第1生成部、および表示部を含む。記憶部は、X線画像を記憶する。算出部は、前記X線画像の第1ノイズ量を算出する。第1生成部は、ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、前記第1ノイズ量で示される第1ノイズ画像に対応する第1X線量を得たのち、前記第1X線量とは異なる第2X線量に対応する第2ノイズ画像を少なくとも1つ算出し、前記第2ノイズ画像と前記X線画像とを加算した第1シミュレーション画像を生成する。表示部は、前記X線画像と少なくとも1つの前記第1シミュレーション画像とを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置および方法、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血性心疾患は世界を代表する病気であり、近年その治療方法として、被検体への負担軽減の観点から低侵襲治療である血管内治療が増えている。血管内治療は通常、X線透視下に行われ、X線装置はイメージガイドの道具として使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−253435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、X線装置を用いたイメージガイド下での治療においては、症例が困難なケースでは治療時間が2、3時間に及ぶこともある。そのような場合は、長時間の透視が必要となるので、結果として長時間被ばくし続けることとなる。そのため、被検体およびスタッフへの被ばく量が問題となる。
そのため、ファントム等から模擬画像を作成し、模擬画像をもとにスキャン条件を逐次設定して被ばく量を低減する手法もある。しかし、血管内治療の場合は被検体に対する撮影方向は逐次変化し、被検体および撮影部位によってX線の透過状態が異なるため、撮影部位に適したX線量を設定することができない。
本開示の目的は、被ばく量の低減を支援することができる画像処理装置および方法、X線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係るX線診断装置は、記憶部、算出部、第1生成部、および表示部を含む。記憶部は、X線画像を記憶する。算出部は、前記X線画像の第1ノイズ量を算出する。第1生成部は、ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、前記第1ノイズ量で示される第1ノイズ画像に対応する第1X線量を得たのち、前記第1X線量とは異なる第2X線量に対応する第2ノイズ画像を少なくとも1つ算出し、前記第2ノイズ画像と前記X線画像とを加算した第1シミュレーション画像を生成する。表示部は、前記X線画像と少なくとも1つの前記第1シミュレーション画像とを表示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る画像処理装置を含むX線診断装置を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態に係る画像処理装置の動作を示すフローチャート。
【図3】(a)ノイズ量とX線量との関係を示すグラフと、(b)シミュレーション画像の生成例を示す図。
【図4】第1の実施形態に係る画像表示の一例を示す図。
【図5】第1の実施形態の変形例に係る画像処理装置を示すブロック図。
【図6】第2の実施形態に係る画像処理装置を示すブロック図。
【図7】第2の実施形態に係る画像表示の一例を示す図。
【図8】第3の実施形態に係る画像処理装置を示すブロック図。
【図9】第3の実施形態に係る画像表示の一例を示す図。
【図10】第4の実施形態に係る画像処理装置を示すブロック図。
【図11】第4の実施形態に係る画像表示の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る画像処理装置および方法、X線診断装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0008】
本実施形態に係るX線診断装置について図1を参照して説明する。
本実施形態に係るX線診断装置100は、撮影制御部101、アーム駆動部102、アーム103、X線発生部104、X線検出部105、インタフェース部106、および画像処理装置120を含む。
また、画像処理装置120は、画像受信部107、画像記憶部108、ノイズ算出部109、シミュレーション画像生成部110、および画像表示部111を含む。
【0009】
撮影制御部101は、外部からのトリガにより、被検体150をX線撮影するための制御信号を生成し、後述するX線発生部104とX線検出部105とアーム駆動部102とを制御する。制御信号は、撮影を行う際のX線量、撮影方向および位置を決定する信号である。X線量は、本実施形態では、管電圧、管電流、パルス幅、パルスレート、および線質フィルタのいずれかの撮影条件、またはこれらの組み合わせにより決定される量とする。撮影方向および位置の決定とは、例えば、被検体150に対するX線の照射角度、X線検出部105とX線発生部104との距離、X線発生部104からのX線の撮影視野を決定することである。
【0010】
アーム駆動部102は、撮影制御部101から制御信号を受け取り、制御信号に従ってアーム103を回転駆動させる。
アーム103は、X線発生部104とX線検出部105とが対向するように、一端にX線発生部104を支持し、もう一端にX線検出部105を支持する。また、アーム103は、アーム駆動部102によって回転駆動が可能である。
X線発生部104は、アーム103の一端に支持され、撮影制御部101からの制御信号によりX線を発生する。なお、X線発生部104は、被検体150に対するX線の照射野を制限するために、X線絞り部(図示せず)を含んでもよい。
【0011】
X線検出部105は、アーム103のX線発生部104とは別の一端に支持され、X線発生部104から発生したX線を検出し、X線画像を生成する。X線検出部105は、例えばFPD(Flat Panel Detector)を採用すればよい。
インタフェース部106は、X線検出部105からX線画像を受け取り、A/D(Analog-Digital)変換、プロトコル変換などを行う。
画像受信部107は、インタフェース部106を介してX線画像を受け取る。
【0012】
画像記憶部108は、画像受信部107からX線画像を受け取って記憶する。
ノイズ算出部109は、画像記憶部108からX線画像を受け取り、X線画像に含まれるノイズ量を計算する。
シミュレーション画像生成部110は、ノイズ算出部109からX線画像およびノイズ量を受け取り、ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、X線画像を撮影したX線量とは異なるX線量の場合の画像を示すシミュレーション画像を少なくとも1つ生成する。すなわち、X線画像を撮影したときのX線量よりも、X線量が少ない場合、またはX線量が多い場合のシミュレーション画像を生成する。シミュレーション画像生成処理については図2および図3を参照して後述する。
【0013】
画像表示部111は、シミュレーション画像生成部110から、X線画像と1以上のシミュレーション画像とを受け取り、X線画像と1以上のシミュレーション画像とを表示する。
【0014】
次に、画像処理装置120の動作について図2のフローチャートを参照して説明する。
【0015】
ステップS201では、画像受信部107が、X線画像を受信する。
ステップS202では、ノイズ算出部109が、X線画像のノイズ量(以下、第1ノイズ量ともいう)を算出する。
ステップS203では、シミュレーション画像生成部110が、ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、ノイズ量に対応する第1ノイズ画像を得る。また、シミュレーション画像生成部110は、第1ノイズ画像および第1ノイズ量に対応した第1X線量を得る。
ここで、依存性とは、基準ノイズ画像のノイズ量を基にした計算式であり、第1ノイズ量を計算式に当てはめ、第1ノイズ量に対応するノイズ画像を算出する。基準ノイズ画像は、例えば、X線検出部105において入射線量1μRでのノイズ画像(平均0、分散σ)を用いればよい。なお、ノイズ量とX線量とは、環境または装置により異なるため、診断を行なうたびに、基準ノイズ画像からノイズ量に対するX線量の依存性を生成することが望ましい。
【0016】
ステップS204では、シミュレーション画像生成部110が、第1X線量とは異なる第2X線量に対応する第2ノイズ画像を算出する。
通常のX線画像では、ノイズはポアソン分布に従うため、画像輝度をLとすると、ノイズの標準偏差は√Lとなる。また、暗電流を考慮した場合は、より正確なノイズ推定ができる。つまり、X線量をN分の1とした場合、ノイズ量は√N分の1なので、X線量が少ないほどノイズ量が少なくなる。しかし、実際には、X線量を減らすと画像全体の輝度も減少し画像が見にくくなる。よって、通常は、X線量を減らした分、ゲインをかけて画像の輝度をほぼ一定に保つようにする。X線量を2分の1とすると、ノイズ量は√2分の1となるが、元のX線量における画像の輝度を保つため、2倍のゲインをかける。すると、ノイズ量は2×1/√2=√2となり、相対的にノイズが増大する。よって、画像輝度を一定とする条件下では、X線量が少ないほど画質が劣化した、すなわちノイズ量が相対的に多いX線画像となる。
具体的には、第2X線量として第1X線量を2分の1にしたときの第2ノイズ画像を得る場合は、理想的には第1ノイズ画像のノイズ量の√2倍のノイズ量に対応するノイズ画像を算出すればよい。なお、第2ノイズ画像を複数生成する場合は、第2X線量が第1X線量の2分の1、4分の1、または2倍、3倍といったようにそれぞれX線量が異なる画像を生成してもよい。
【0017】
ステップS205では、シミュレーション画像生成部110が、第2ノイズ画像とX線画像とを加算することによりシミュレーション画像を生成する。第2ノイズ画像が複数生成された場合は、X線量が異なる(画像のノイズ量が異なる)複数のシミュレーション画像が生成される。例えば、X線画像を撮影したときのX線量の2分の1、3分の1または4分の1となるようなシミュレーション画像が生成される。
【0018】
ステップS206では、画像表示部111が、X線画像とシミュレーション画像とを同時に表示する。以上で画像処理装置120の動作を終了する。このように、X線量を減らした場合、または増やした場合に想定されるX線画像を模擬的に生成することができる。
【0019】
なお、上記ステップでは、X線画像中の部分領域ごとにノイズ量を計算して、上述のステップS203からステップS205までの処理を行い、すべての部分領域を合わせることでシミュレーション画像を生成するような場合を想定しているが、これに限られない。例えば、X線画像についてノイズ均一化処理を行って画像全体のノイズを均一化してから、ステップS203以降のステップと同様の処理を行なってもよい。ノイズ均一化処理を行う場合は、シミュレーション画像を生成した後に、ノイズ均一化処理の逆変換を行えばよい。
【0020】
ここで、具体的なシミュレーション画像の生成例について図3を参照して説明する。
【0021】
図3(a)は、画像の輝度を一定にしたときのノイズ量とX線量との関係を示すグラフであり、図3(b)は、シミュレーション画像の一例を示す図である。
【0022】
図3(a)に示すように、X線画像の第1ノイズ量301が得られると、第1ノイズ画像302および第1X線量303を得ることができる。続いて、得られた第1X線量303をN分の1(Nは任意の整数)にしたときの第2X線量304に対応する第2ノイズ量305(結果として、第1ノイズ量301の√N倍)から、第2ノイズ画像306を算出することができる。
【0023】
その後、図3(b)に示すように、X線画像と第2ノイズ画像とを加算することにより、所望のX線量に相当するシミュレーション画像を生成することができる。
【0024】
次に、画像表示部111における画像表示の一例について図4を参照して説明する。
図4の例は、X線画像401と、X線量を2分の1、3分の1、4分の1にした場合の3つのシミュレーション画像402とを並べて表示する。このようにすることで、X線画像401の画質と、X線量を低減させたと仮定した場合のシミュレーション画像402の画質とを瞬時に比較することができる。よって、ユーザが、目標物を視認できる範囲のX線量の目安が判断しやすくなり、どこまでX線量を減らせるかを判断できるため、X線被ばく量の低減を支援することができる。
具体的には、ユーザが、例えばステントを視認できるかどうかをシミュレーション画像を見て判断し、「X線量が4分の1のシミュレーション画像の画質ではステントが見えないが、X線量が3分の1のシミュレーション画像の画質であればステントが視認できる」ということが容易に判断できる。
【0025】
なお、図4の例ではシミュレーション画像は3つであるが、これに限らず、さらに多くのシミュレーション画像を同時に表示してもよい。また、ここではメインモニタにX線画像を、サブモニタにシミュレーション画像を表示する例を想定しているが、同じモニタ内に別ウィンドウとしてX線画像とシミュレーション画像とを表示してもよい。
さらにシミュレーション画像を表示するタイミングは、常時表示、画像が画像記憶部108に記憶されるごと、一定間隔(30分ごとなど)またはX線の照射角度が変わるごと、のいずれでもよい。
【0026】
また、本実施形態では、画像受信部107で受信される画像は静止画であるが、動画であってもよい。このとき、シミュレーション画像も動画で表示することが望ましい。ただし、X線画像とシミュレーション画像とは、同じフレームレートで処理しなくてもよい。また、動画の場合は、基準ノイズ画像を数フレーム用意することが望ましい。
【0027】
また、本実施形態では、X線量の設定は相対値(2分の1、3分の1など)で行なっているが、絶対値(mGyなど)でもよい。
【0028】
以上に示した第1の実施形態によれば、X線画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、現在のX線画像の第1X線量とは異なる第2X線量と対応する第2ノイズ画像を用いてシミュレーション画像を生成し、X線量(ノイズ量)が異なったシミュレーション画像と現在のX線画像とを表示することにより、ユーザがノイズ量の異なるシミュレーション画像を見ることで、画像の視認性を確保しつつどの程度まで被ばく量を低減できるかを容易に判断でき、被ばく量の低減を支援することができる。
【0029】
(第1の実施形態の変形例)
上述の画像処理装置120では、X線画像のノイズ量をもとにシミュレーション画像を生成したが、X線画像を撮像したときのX線量を算出してもよい。
【0030】
本変形例にかかる画像処理装置のブロック図を図5に示す。
本変形例にかかる画像処理装置500は、画像受信部107、画像記憶部108、線量算出部501、シミュレーション画像生成部502、および画像表示部111を含む。
画像受信部107、画像記憶部108、および画像表示部111の動作については、第1の実施形態と同様の動作を行うためここでの説明は省略する。
【0031】
線量算出部501は、画像記憶部108からX線画像を受け取り、X線画像の輝度を計算して第1X線量を算出する。また、線量算出部501は、X線画像のデータ中に撮影条件(管電流、管電圧、パルス幅など)を示す撮像情報が含まれている場合は、撮像情報を参照してX線量を算出してもよい。
【0032】
シミュレーション画像生成部502は、線量算出部501から第1X線量を受け取り、ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、第1X線量とは異なる第2X線量に対応する第2ノイズ画像を算出する。その後、第2ノイズ画像とX線画像とを加算してシミュレーション画像を生成する。
【0033】
以上に示した第1の実施形態の変形例によれば、シミュレーション画像生成の処理量を軽減しつつ第1の実施形態と同様にシミュレーション画像を生成でき、被ばく量の低減を支援することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
第2の実施形態として、シミュレーション画像にさらに画像処理を行った画像を提示してもよい。こうすることで、より見やすい画像をユーザが選択することができる。
【0035】
第2の実施形態に係る画像処理装置について図6のブロック図を参照して説明する。
第2の実施形態に係る画像処理装置600は、画像受信部107、画像記憶部108、ノイズ算出部109、第1シミュレーション画像生成部601、第2シミュレーション画像生成部602、および画像表示部603を含む。なお、画像受信部107、画像記憶部108、およびノイズ算出部109は、第1の実施形態と同様の処理を行うため、ここでの説明は省略する。
【0036】
第1シミュレーション画像生成部601は、第1の実施形態に係るシミュレーション画像生成部110とほぼ同様の動作を行う。
第2シミュレーション画像生成部602は、シミュレーション画像生成部601からX線画像および1以上のシミュレーション画像を受け取り、1以上のシミュレーション画像についてそれぞれ1以上の画像処理(例えばフィルタ処理など)を行い、複数のシミュレーション画像を得る。ここで便宜上、第1シミュレーション画像生成部601で生成されるシミュレーション画像を第1シミュレーション画像、第2シミュレーション画像生成部602のシミュレーション画像を第2シミュレーション画像と呼ぶ。例えば、3つの第1シミュレーション画像に対して、2つのフィルタ処理を行う場合は、3×2=6の第2シミュレーション画像を得ることができる。
またフィルタ処理は、例えば、エッジ強調、リカーシブフィルタといった一般的な画像処理に関する空間フィルタであればよい。
画像表示部603は、第2シミュレーション画像生成部602からX線画像と複数の第2シミュレーション画像とを受け取り、X線画像と複数の第2シミュレーション画像とを表示する。
【0037】
次に、画像表示部603における画像表示の一例を図7に示す。
図7では、X線画像701と、X線量が2分の1、3分の1および4分の1となる3つの第1シミュレーション画像のそれぞれに対し画像処理A、画像処理Bおよび画像処理Cの3つのフィルタ処理を行った9つの第2シミュレーション画像702とを同時に表示する。
このようにすることで、X線量の違いに加えて画像処理の違いにより、ユーザがより適した画質の画像を選択することができる。例えば、ユーザは、図7に示すような表示を見ることにより「X線量を2分の1にした場合は画像処理Aが見やすい。X線量を3分の1にした場合は画像処理Bが見やすい。X線量を4分の1にした場合は画像処理Cが見やすいが、ステントが見えない。よって3分の1の場合の処理Bにしよう。」という選択をすることができる。
【0038】
なお、第2シミュレーション画像を全体ではなく、一部の領域のみ抽出して表示部に表示するようにしてもよい。また、比較のため、第1シミュレーション画像と第2シミュレーション画像とを同時に表示してもよい。
さらに、画像表示部603をタッチパネルなどで構成し、第2シミュレーション画像のうちの1つの第2シミュレーション画像を選択した場合に、選択されたX線量が撮影制御部101に送られ、選択された画像処理が第2シミュレーション画像生成部602へ送られるようにしてもよい。
なお、第2の実施形態は、X線量と画像処理とによるシミュレーション画像を生成するが、X線量に関する撮影条件を変動させたシミュレーション画像でもよい。例えば、第1シミュレーション画像生成部601では管電流を増減させた場合のシミュレーション画像を生成する。第2シミュレーション画像生成部602では、この第1シミュレーション画像についてパルス幅を増減させたシミュレーション画像を生成する。この場合、第1シミュレーション画像生成部601では、管電流に対するノイズ量の依存性を参照すればよく、第2シミュレーション画像生成部602では、パルス幅に対するノイズ量の依存性を参照すればよい。
【0039】
以上に示した第2の実施形態によれば、第1シミュレーション画像に画像処理を行った第2シミュレーション画像を表示することで、シミュレーション画像の中でより見やすい画像をユーザが選択することができ、被ばく量の低減を支援することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、予め目標値を設定する点が異なる。目標値はX線量または画像に関する指標値であり、ノイズ量(ノイズSD(Standard Deviation))、画像SNR(Signal to Noise Ratio)、画像LNR(Level to Noise Ratio)、X線量および被ばく量のいずれかであればよい。
【0041】
第3の実施形態に係る画像処理装置について図8のブロック図を参照して説明する。
第3の実施形態に係る画像処理装置800は、画像受信部107、画像記憶部108、ノイズ算出部109、目標値設定部801、シミュレーション画像生成部802、および画像表示部803を含む。なお、画像受信部107、画像記憶部108、およびノイズ算出部109は、第1の実施形態と同様の処理を行うため、ここでの説明は省略する。
【0042】
目標値設定部801は、ユーザ入力または規定値により画像に関する目標値を設定する。目標値は、例えば施設、環境、または被検体ごとに定められた値を用いればよい。
シミュレーション画像生成部802は、シミュレーション画像生成部110とほぼ同様の動作を行い、目標値設定部801から目標値を受け取り、ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、目標値に対応するX線量でのノイズ画像とX線画像とを加算したシミュレーション画像である目標画像を生成する。シミュレーション画像の生成方法は、上述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
画像表示部803は、シミュレーション画像生成部802から、X線画像と目標画像とを受け取り、X線画像と目標画像とX線量に関するコメントとを同時に表示する。
【0043】
次に、画像表示部803における画像表示の一例について図9に示す。
図9では、X線画像901、目標画像902、スクロールバー903、およびコメント904を同時に表示する。
スクロールバー903は、目標値の高低を示す。図9では、目標値をX線量として、左端はX線量が少なく、右端はX線量が高い場合を示す。また、現在のX線量の値(スクロールバー903中の現在値“○”)でのX線画像901が示され、目標値であるX線被ばく量の値(スクロールバー903中の目標値“□”)での目標画像902が示される。なお、画像処理装置800は、スクロールバー903上の目標値をスライドさせることにより、目標値設定部801の目標値を可変させ、逐次、目標値に対応する目標画像を生成し、表示するようにしてもよい。
【0044】
また、コメント904には、現在値と目標値とを差を表示する。例えば「あと2分の1に減らす必要があります」と表示すればよい。さらに、コメント904を表示するかわりに、音声で通知してもよいし、コメント表示と音声とを共に用いてもよい。
画像表示部803は、目標画像に加え、上述した実施形態における他のX線照射量におけるシミュレーション画像を表示するようにしてもよい。例えば、X線画像と目標画像との間のX線量に関するシミュレーション画像を表示するようにしてもよい。
【0045】
以上に示した第3の実施形態によれば、目標値を設定することにより、ユーザに低減すべきX線量をわかりやすく提示することができ、被ばく量の低減を支援することができる。
【0046】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、目標値を操作する操作部を備え、操作部によりX線被ばく量を決定してX線撮影制御を行う点が異なる。
第4の実施形態に係る画像処理装置について図10を参照して説明する。
第4の実施形態に係る画像処理装置1000は、画像受信部107、画像記憶部108、ノイズ算出部109、目標値設定部801、シミュレーション画像生成部802、画像表示部803、操作部1001、差分計算部1002、および照射条件計算部1003を含む。
なお、画像受信部107、画像記憶部108、ノイズ算出部109、目標値設定部801、シミュレーション画像生成部802、および画像表示部803については同様の動作を行うためここでの説明は省略する。
【0047】
操作部1001は、例えばキーボードやマウス、タッチパネルなどであり、ユーザからの目標値の入力を受け付ける。また、操作部1001は、ユーザからの入力、または規定時間経過した後に指示信号が生成される。
差分計算部1002は、ノイズ算出部109からX線画像の第1ノイズ量を、シミュレーション画像生成部802から目標値に対応するノイズ量をそれぞれ受け取り、第1ノイズ量と目標値のノイズ量との差を計算する。
照射条件計算部1003は、差分計算部1002から差を受け取り、差に基づいてX撮影におけるX線の照射条件を算出する。その後、照射条件計算部1003が照射条件を撮影制御部101へ送る。
【0048】
次に、画像表示部603における画像表示の一例について図11に示す。
図11では、X線画像1101、目標画像1102、およびスクロールバー1103を同時に表示する。また、図11に示す例では、スクロールバー1103を操作部1001として、スクロールバー1103に示す目標値をスライドさせることにより、操作部1001が目標値設定部801に目標値を入力する。そして目標値設定部801からシミュレーション画像生成部802に目標値が入力されることで、目標画像が生成されることになる。
このように目標値を変化させることで、逐次、目標値に対応するX線量におけるシミュレーション画像を目標画像1102として表示させることができ、目標画像の画質の変化をユーザが認識しやすくなる。
【0049】
また、ユーザが目標画像でX線撮影を行うと判断した場合には、操作部1001において指示信号が生成される。図11の例では、例えば、ユーザが目標画像1102をタッチすることで指示信号が生成される。または、目標画像が画像表示部803に表示され一定時間が経過した後で指示信号が生成される。なお、ユーザが決定ボタンを押す、または音声により応答するなど、目標値を決定できる手法であれば何でもよい。指示信号が生成された場合は、図1に示すようなX線診断装置100の撮影制御部101に、照射条件計算部1003からX線画像1101が目標画像1102となるようなX線の照射条件が入力される。この照射条件により目標画像となるようなX線撮影を行うことができる。
【0050】
以上に示した第4の実施形態によれば、目標値を可変させて目標画像を可変的に表示し、指示信号を入力することで目標値に対応するX線の照射条件を計算させて撮影制御部にフィードバックすることで、容易にX線量を減少させることができ、被検体への被ばく量を低減することができる。
【0051】
(比較例)
以下比較例として従来の手法と問題点とを説明する。
従来手法として、被ばく低減を目的としたCTに関するものがある。この従来手法は、ファントム等の「サンプル画像」および所望の「スキャン条件」を入力すると、そのノイズ量になるようにサンプル画像を処理して「模擬画像」を生成する。ユーザは模擬画像を目視しながら、病変が確認できる限界までスキャン条件を逐次再設定することにより被ばくを低減することが可能である。しかし、この従来手法をX線診断装置を用いた血管内治療時に採用すると、以下のような問題が生じる。
【0052】
問題1:「模擬画像」を目視しながら「スキャン条件」を逐次再設定する必要があるため、試行錯誤が必要であり、設定完了までに時間がかかってしまう。血管内治療とは数分を争う治療のため、こうした試行錯誤に要する時間は好ましくない。
【0053】
問題2:従来手法の場合の断層画像は3次元データであるのに対し、X線診断装置を用いた血管内治療時に使用されるのは投影された2次元データである。よって入力として用意すべき「サンプル画像」は、CTでは1種類でよいが、X線診断装置では全方向(例えばLAO(Left Anterior Oblique)、RAO(Right Anterior Oblique)方向に1度おきとして360種類×CRA(cranial)、CAU(caudal)方向に1度おきとして360種類=129600種類)のサンプル画像が必要となってしまい、現実的ではない。
【0054】
問題3:従来手法で用いる「サンプル画像」とは、ファントム画像もしくは他人の画像のため、当該患者の画像とは異なるため、現実味に欠ける。特に、血管内治療のように治療しようとする被検体の様子はサンプル条件とは異なることが多く、例えば心肥大などがあると、画像濃度などで異なりが大きくなってしまう。
【0055】
問題4:上述の問題3を解消しようとして、「サンプル画像」ではなく、被検体の画像をX線画像としようとすると、その画像の「画像SD」の値が得られないため、シミュレーションができない。
【0056】
問題5:従来手法は、X線画像として動画、すなわち略リアルタイムに次々と新しいフレームが入ってくるような入力を想定していない。
【0057】
問題6:見たいものの視認性を論じて画質(およびSNR、被ばく量)を調整する場合、静止画と動画ではノイズの見え方は異なる。従来手法は静止画を対象としたものであり、動画の画質は考慮されていない。
【0058】
以上のように、血管内治療中とは異なる環境かつ異なるニーズで用いられるものであり、高速に自動にリアルタイムにという観点では上述の問題がある。
【0059】
本開示は、2次元投影画像を扱うX線装置において使用可能であり、被検体のデータを入力として扱うことができ、かつリアルタイム入力に対応できるので、上述の問題点を解消することができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更をおこなうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、画像処理装置またはX線診断装置の分野に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0062】
100・・・X線診断装置、101・・・撮影制御部、102・・・アーム駆動部、103・・・アーム、104・・・X線発生部、105・・・X線検出部、106・・・インタフェース部、107・・・画像受信部、108・・・画像記憶部、109・・・ノイズ算出部、110,502,802・・・シミュレーション画像生成部、111,403,603,803・・・画像表示部、120,500,600,800、1000・・・画像処理装置、150・・・被検体、301・・・第1ノイズ量、302・・・第1ノイズ画像、303・・・第1X線量、304・・・第2X線量、305・・・第2ノイズ量、306・・・第2ノイズ画像、401,701,901,1101・・・X線画像、402,702・・・シミュレーション画像、501・・・線量算出部、601・・・第1シミュレーション画像生成部、602・・・第2シミュレーション画像生成部、801・・・目標値設定部、902,1102・・・目標画像、903,1103・・・スクロールバー、904・・・コメント、1001・・・操作部、1002・・・差分計算部、1003・・・照射条件計算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線画像を記憶する記憶部と、
前記X線画像の第1ノイズ量を算出する算出部と、
ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、前記第1ノイズ量で示される第1ノイズ画像に対応する第1X線量を得たのち、前記第1X線量とは異なる第2X線量に対応する第2ノイズ画像を少なくとも1つ算出し、前記第2ノイズ画像と前記X線画像とを加算した第1シミュレーション画像を生成する第1生成部と、
前記X線画像と少なくとも1つの前記第1シミュレーション画像とを表示する表示部と、を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
X線画像を記憶する記憶部と、
前記X線画像を撮影したときの第1X線量を算出する算出部と、
ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、前記第1X線量とは異なる第2X線量に対応するノイズ画像を少なくとも1つ算出し、前記第2X線量に対応するノイズ画像と前記X線画像とを加算した第1シミュレーション画像を生成する第1生成部と、
前記X線画像と少なくとも1つの前記第1シミュレーション画像とを表示する表示部と、を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記第1シミュレーション画像について、それぞれ少なくとも1つの画像処理を行い、第2シミュレーション画像を得る第2生成部をさらに具備し、
前記表示部は、前記X線画像と前記第2シミュレーション画像とを表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
X線量または画像に関する目標値を設定する設定部をさらに具備し、
前記第1生成部は、前記目標値の設定があった場合には、前記依存性に基づいて前記目標値に対応するX線量における第3ノイズ画像を抽出し、該第3ノイズ画像と前記X線画像とを加算した目標画像を少なくとも生成し、
前記表示部は、前記目標値の設定があった場合には、少なくとも前記X線画像と前記目標画像とを表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、複数の前記第1シミュレーション画像を生成する場合、それぞれX線量が異なる第1シミュレーション画像を生成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
指示信号の入力があった場合、前記X線画像のノイズ量と前記目標画像のノイズ量との差を計算する第1計算部と、
前記X線画像が前記目標画像となるように、前記差よりX線の照射条件を計算する第2計算部と、をさらに具備することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
X線画像を記憶する記憶部を用意し、
前記X線画像の第1ノイズ量を算出し、
ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、前記第1ノイズ量で示される第1ノイズ画像に対応する第1X線量を得たのち、前記第1X線量とは異なる2X線量に対応する第2ノイズ画像を少なくとも1つ算出し、前記第2ノイズ画像と前記X線画像とを加算した第1シミュレーション画像を生成し、
前記X線画像と少なくとも1つの前記第1シミュレーション画像とを表示することを具備することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
X線を発生するX線発生部と、
該X線発生部から照射され、被検体を透過したX線を検出してX線画像を得るX線検出部と、
前記被検体に対する前記X線発生部と前記X線検出部とのX線の照射角度、位置、および範囲を制御する制御部と、
前記X線画像を記憶する記憶部と、
前記X線画像の第1ノイズ量を算出する算出部と、
X線量または画像に関する目標値を設定する設定部と、
ノイズ画像のノイズ量に対するX線量の依存性に基づいて、前記目標値に対応するX線量または前記目標値に対応する第2ノイズ量におけるノイズ画像を算出し、前記第2ノイズ量におけるノイズ画像と前記X線画像とを加算した目標画像を生成する生成部と、
前記X線画像と前記目標画像とを表示する表示部と、
指示信号の入力があった場合、前記第1ノイズ量と前記第2ノイズ量との差を計算する第1計算部と、
前記X線画像が前記目標画像となるように、前記差よりX線の照射条件を計算する第2計算部と、を具備し、
前記制御部は、前記照射条件でX線撮影を行うように制御することを特徴とするX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−17511(P2013−17511A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150942(P2011−150942)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】