説明

画像処理装置および方法

【課題】画像の符号化データのデータ量をより容易に低減させることができるようにする。
【解決手段】ハフマン復号部101は、JPEG規格に従い、ハフマン符号化されたJPEG画像を復号する。空白領域特定部102は、係数データから、復号画像に含まれる、注目領域でない空白領域を特定する。成分分離部103は、ハフマン復号結果に基づいてJPEG画像をAC成分符号とDC成分符号とに分離する。AC成分除去部104は、分離されたAC成分符号から、ROIマスクにおいて空白領域とされる領域のAC成分を除去する。トランスコード100は、DC成分符号と、空白領域のAC成分が除去されたAC成分符号とを合成し、トランスコードされたJPEG画像として出力する。本発明は、例えば、画像処理装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および方法に関し、特に、画像の符号化データのデータ量をより容易に低減させることができるようにした画像処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DPI(Digital Pathology Imaging)システムによる病理診断は、これまでの組織診に加え細胞診へも応用範囲を広げてきている。
【0003】
組織診は、検査や手術等において病変部位をメスで切り取るなどして採取し、その病変部位を薄くスライスして染色して顕微鏡を使って観察する方法である。組織診においては、一般的に、細胞が集合として観察され、その細胞群中で、細胞の大きさ、形、並び方などに異常があるか否か、または、本来存在しない細胞が存在するか否か等が診断される。
【0004】
これに対して、細胞診は、自然に剥がれ落ちた細胞(喀痰細胞診)、剥がした細胞(擦過細胞診)、若しくは、針を刺して吸引した細胞(吸引細胞診)等を染色し、顕微鏡を使って観察する方法である。細胞診においては、一般的に、少数の細胞が観察され、各細胞、または、その核の大きさや形状等に異常があるか否か等が診断される。
【0005】
DPIシステムにおいては、これらの生体の組織や細胞の画像(顕微鏡を介しての観察画像)は、デジタルデータとして管理される。そのため、観察画像(デジタルデータ)には、適宜、用途等に応じて様々な画像処理を施すことができる。
【0006】
一般的に、このような観察画像の画像データは、JPEG(Joint Photographic Experts Group)符号化方式等で符号化され、容量が削減される。
【0007】
また、一般的に、JPEG符号化方式で符号化された符号化データに対して、さらに変換処理(トランスコード)を行い、さらに容量を削減する方法が提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0008】
特許文献1乃至特許文献3に記載のトランスコードにおいては、DCT(Discrete Cosine Transform)係数を変換することにより、データ量を削減する。これらのトランスコードは、JPEG符号化方式で符号化された符号化データ全般に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3856292号
【特許文献2】特許3948024号
【特許文献3】特許3948025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献3に記載の方法の場合、細胞診用の観察画像の特徴について考慮されておらず、十分にデータ量を低減させる事ができない恐れがあった。
【0011】
DPIで扱う細胞病理デジタル画像や組織病理デジタル画像は、検体を透明なプレートに乗せ顕微鏡にて撮影するという理由から、一般的に、細胞も何も存在しない部分が多いという特徴を有する。特に、細胞診の観察画像の場合、観察される細胞数も少なく、観察画像に含まれる細胞が存在しない部分が多い。このような領域(空白領域)は、診断には使われないが、画像データにおいては、その空白領域にノイズが乗った状態で圧縮される。つまり、この空白領域もデータ量が発生するので、その分、無駄にデータ量が増大していることになる。
【0012】
このような特徴を踏まえて、トランスコードを行うことにより、さらなるデータ量の削減が期待されるが、従来においては、そのようなトランスコードを行う方法は無く、十分にデータ量を低減させることができなかった。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、画像の符号化データのデータ量をより容易に低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面は、画像データから生成された係数データが符号化された符号化データを復号する復号手段と、前記復号手段により符号化が復号されて得られた係数データを用いて、前記画像データの画像の、注目すべきでない領域である空白領域を特定する特定手段と、前記復号手段により符号化が復号されて得られた係数データをAC成分とDC成分とに分離する分離手段と、前記分離手段により前記DC成分から分離された前記AC成分から、前記特定手段により特定された空白領域を除去する除去手段と、前記除去手段により前記空白領域が除去された前記AC成分と、前記DC成分とを合成する合成手段とを備える画像処理装置である。
【0015】
前記特定手段は、前記係数データから復号画像を生成する生成手段を備え、前記生成手段により生成された前記復号画像の空白領域を特定することができる。
【0016】
前記特定手段は、前記生成手段により生成された前記復号画像を、前記復号画像の空白領域を示す情報であるROIマスクを生成する他の装置に供給し、前記他の装置が生成した前記ROIマスクを取得する取得手段をさらに備え、前記除去手段は、前記取得手段により取得された前記ROIマスクにより示される空白領域を、前記分離手段により前記DC成分から分離された前記AC成分から除去することができる。
【0017】
前記特定手段は、前記係数データから一部の成分を抽出する抽出手段をさらに備え、前記生成手段は、前記抽出手段により抽出された一部の成分について前記復号画像を生成し、前記取得手段は、前記生成手段により生成された前記一部の成分についての復号画像を前記他の装置に供給し、前記他の装置が生成した前記一部の成分についての復号画像の空白領域を示すROIマスクを取得し、前記除去手段は、前記取得手段により取得された前記ROIマスクにより示される空白領域を、前記分離手段により前記DC成分から分離された前記AC成分から除去することができる。
【0018】
前記特定手段は、前記生成手段により生成された前記復号画像から空白領域を検出する検出手段をさらに備え、前記除去手段は、前記分離手段により前記DC成分から分離された前記AC成分から、前記検出手段により検出された空白領域を除去することができる。
【0019】
前記符号化データは、前記係数データがハフマン符号化されたものであるようにすることができる。
【0020】
前記画像データは、生体の細胞若しくは組織の観察画像であるようにすることができる。
【0021】
本発明の一側面は、また、画像処理装置の画像処理方法であって、復号手段が、画像データから生成された係数データが符号化された符号化データを復号し、特定手段が、符号化が復号されて得られた係数データを用いて、前記画像データの画像の、注目すべきでない領域である空白領域を特定し、分離手段が、符号化が復号されて得られた係数データをAC成分とDC成分とに分離し、除去手段が、前記DC成分から分離された前記AC成分から、特定された空白領域を除去し、合成手段が、前記空白領域が除去された前記AC成分と、前記DC成分とを合成する画像処理方法である。
【0022】
本発明の一側面においては、画像データから生成された係数データが符号化された符号化データが復号され、符号化が復号されて得られた係数データを用いて、画像データの画像の、注目すべきでない領域である空白領域が特定され、符号化が復号されて得られた係数データがAC成分とDC成分とに分離され、DC成分から分離されたAC成分から、特定された空白領域が除去され、空白領域が除去されたAC成分と、DC成分とが合成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画像を処理することができる。特に、より容易に画像の符号化データのデータ量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用したトランスコーダの主な構成例を示すブロック図である。
【図2】データ変換とROIマスクの様子の例を説明する図である。
【図3】変換処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図4】本発明を適用したトランスコーダの他の構成例を示すブロック図である。
【図5】変換処理の流れの他の例を説明するフローチャートである。
【図6】本発明を適用したトランスコーダの、さらに他の構成例を示すブロック図である。
【図7】変換処理の流れの、さらに他の例を説明するフローチャートである。
【図8】本発明を適用したパーソナルコンピュータの主な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(トランスコーダ)
2.第2の実施の形態(トランスコーダ)
3.第3の実施の形態(トランスコーダ)
4.第4の実施の形態(パーソナルコンピュータ)
【0026】
<1.第1の実施の形態>
[トランスコーダ]
図1は、本発明を適用したトランスコーダの主な構成例を示すブロック図である。トランスコーダ100は、画像データがJPEG符号化方式で圧縮された符号化データであるJPEG画像を、再圧縮するように変換処理(トランスコード)を行う装置である。
【0027】
つまり、トランスコーダ100は、入力されたJPEG画像を再圧縮し、データ量を削減させたJPEG画像を出力する。
【0028】
このトランスコーダ100は、例えば、DPIで扱う細胞病理デジタル画像や組織病理デジタル画像、つまり、細胞診や組織診の観察画像の特徴に適した方法でトランスコードを行う。より具体的には、トランスコーダ100は、細胞診や組織診の観察画像(特に生体の細胞診の観察画像)に多く含まれる、細胞が存在しない領域であり、診断に不要な領域(観察対象でない領域)である空白領域のAC成分を除去し、DC成分のみとすることにより、容易に、データ量の大幅な削減を行うことができる。
【0029】
図1に示されるように、トランスコーダ100は、ハフマン復号部101、空白領域特定部102、成分分離部103、AC成分除去部104、および成分合成部105を有する。
【0030】
ハフマン復号部101は、JPEG規格に従い、ハフマン符号化されたJPEG画像を復号し、復号された係数データを空白領域特定部102に供給する。また、ハフマン復号部101は、JPEG画像とハフマン復号結果とを成分分離部103に供給する。
【0031】
空白領域特定部102は、供給された係数データから、復号画像に含まれる、注目すべきでない空白領域を特定する。例えば、細胞診や組織診の観察画像の場合、細胞等が存在しない領域が空白領域とされる。
【0032】
空白領域特定部102は、供給された係数データから復号画像を生成し、外部のROI(Region Of Interest)検出装置121にその復号画像を提供し、注目すべきであるROI(注目領域)を検出させ、そのROIを指定するROIマスクを取得する。空白領域は注目領域でない領域であるので、ROIマスクは、注目領域を指定するとともに空白領域も指定する。
【0033】
図1に示されるように、空白領域特定部102は、逆ジグザグスキャン部111、逆量子化部112、逆直交変換部113、およびROIマスク取得部114を有する。
【0034】
逆ジグザグスキャン部111は、ハフマン復号された1次元配列の係数データを逆ジグザグスキャンし、2次元配列に変換し、それを逆量子化部112に供給する。
【0035】
逆量子化部112は、2次元配列化された係数データを逆量子化し、それを逆直交変換部113に供給する。
【0036】
逆直交変換部113は、係数データを逆直交変換し、復号画像を生成する。復号画像はROIマスク取得部114に供給される。
【0037】
ROIマスク取得部114は、その復号画像を、トランスコーダ100の外部のROI検出装置121に供給し、その復号画像の注目領域(つまり空白領域)を示すROIマスクを生成させる。
【0038】
例えば、復号画像が図2Aに示されるような画像130であるとする。画像130には、細胞131および細胞132が含まれる。画像130の各四角は、ROI検出の処理単位であるブロックである。図2Aに示されるように、斜線が引かれたブロックには、細胞131および細胞132が含まれない。つまり、このブロックが空白領域141である。
【0039】
ROI検出装置121は、この画像130から、例えば図2Bに示されるような2値のROIマスク151を生成する。図2Bに示されるROIマスク151において、各値は、画像130の各ブロックが注目領域であるか、若しくは空白領域であるかを示す。
【0040】
図2Bの例の場合、値「0」が注目領域を示し、値「1」が空白領域を示している。つまり、値「1」がAC成分を除去する領域であることを示し、値「0」がAC成分を除去しない領域であることを示している。
【0041】
ROIマスク151の生成方法は任意である。また、ROIマスク151は、上述した以外の情報を含んでいても良い。例えば、ROIマスク151が3値以上のデータであってもよい。
【0042】
デコード画像のサイズを縦 X pixel 横 Y pixelとすると、INT((X+7)/8) * INT((Y+7)/8)ビットで表現される。色差成分に関しては、対応する輝度成分がすべてAC成分除去を指定されたとき、同様にAC成分を除去する。
【0043】
ROIマスク取得部114は、ROI検出装置121が生成したROIマスクを取得すると、それをAC成分除去部104に供給する。
【0044】
成分分離部103は、ハフマン復号部101から供給されたJPEG画像をハフマン復号結果に基づいてAC(交流)成分符号とDC(直流)成分符号とに分離する。成分分離部103は、分離したAC成分符号をAC成分除去部104に供給し、DC成分符号を成分合成部105に供給する。
【0045】
AC成分除去部104は、成分分離部103から供給されるAC成分符号から、ROIマスク取得部114から供給されるROIマスクにおいて空白領域とされる領域(ブロック)のデータをEOB(End Of Block)に置き換える。EOBは、そのブロック内のAC成分が0であることを示す。このようにしてAC成分除去部104は、AC成分符号から空白領域のAC成分を除去する。
【0046】
AC成分除去部104は、その空白領域がEOBに置き換えられたAC成分符号を成分合成部105に供給する。
【0047】
成分合成部105は、成分分離部103から供給されたDC成分符号と、AC成分除去部104から供給される、その空白領域が除去されたAC成分符号とを合成し、トランスコードされたJPEG画像を生成する。このトランスコードされたJPEG画像は、トランスコーダ100に入力されたトランスコード前のJPEG画像の空白領域のAC成分を除去したものである。成分合成部105は、このトランスコードされたJPEG画像を出力する。
【0048】
[変換処理の流れ]
図3のフローチャートを参照して、トランスコーダ100による変換処理の流れの例を説明する。JPEG画像(JPEGデータ)が入力されるとトランスコーダ100は、変換処理を開始する。
【0049】
変換処理が開始されると、ステップS101において、ハフマン復号部101は、入力されたJPEGデータ(ハフマン符号)に対して、ハフマン復号を行う。
【0050】
ステップS102において、逆ジグザグスキャン部111は、ハフマン復号された係数データを逆ジグザグスキャンする。ステップS103において、逆量子化部112は、2次元配列に変換された係数データに対して逆量子化を行う。ステップS104において、逆直交変換部113は、逆量子化された係数データに対して逆直交変換を行い、復号画像を生成する。
【0051】
ステップS105において、ROIマスク取得部114は、復号画像を使ってROI検出装置121からROIマスクを取得する。
【0052】
ステップS106において、成分分離部103は、ステップS101のハフマン復号結果に基づいて、JPEGデータをAC成分符号とDC成分符号とに分離する。ステップS107において、AC成分除去部104は、ステップS106においてDC成分符号から分離されたAC成分符号の、ROIマスク取得部114から供給されるROIマスクにおいて空白領域に指定される領域(ブロック)をEOBに置き換えることにより、空白領域のAC成分を除去する。
【0053】
ステップS108において、成分合成部105は、除去処理後のAC成分符号とDC成分符号とを合成し、変換後のJPEGデータを生成する。
【0054】
ステップS109において、成分合成部105は、変換後のJPEGデータを出力し、変換処理を終了する。
【0055】
以上のように、トランスコーダ100は、JPEG画像から空白領域のAC成分を除去する。つまり、トランスコーダ100は、画像の使用目的(例えば組織診や細胞診)にとって重要な注目領域の画質は低減させずに、不要な空白領域のみ、より多くのデータ量の削減することができる。
【0056】
例えば組織診や細胞診において使用される電子顕微鏡などを用いた細胞や組織の観察画像の場合、一般的に、観察対象である細胞や組織が存在する部分と、何も存在しない部分が含まれることが多い。観察対象である細胞や組織等の部分は、診断に用いる重要な部分(注目領域)であるので、より高画質であることが求められるが、何も存在しない部分は基本的に診断に不要な部分(空白領域)である。
【0057】
このような画像に対してトランスコーダ100は、上述したように、観察対象である細胞や組織等の部分は画質を劣化させずに、何も存在しない部分のデータ量を低減させる。
【0058】
したがって、トランスコーダ100は、視覚的に画質の劣化が目立たないように、より多くのデータ量を削減することができる。つまり、トランスコーダ100は、データ量削減による、画像としての価値(観察画像としての価値)の低減を抑制することができる。
【0059】
このようなJPEG画像のトランスコードを、トランスコーダ100は、AC成分を除去するだけで複雑な演算処理等を必要とせずに、より高速かつ低負荷に行うことができる。したがって、トランスコーダ100は、コストの増大も抑制することができる。
【0060】
つまり、トランスコーダ100は、より容易に、より多くのデータ量の削減を行うことができる。
【0061】
<2.第2の実施の形態>
[トランスコーダ]
以上においては、空白領域特定部102が、復号画像をROI検出装置121に提供するように説明したが、この復号画像は、例えば輝度信号等のように、画像情報の一部のみとしてもよい。
【0062】
図4は、その場合のトランスコーダの主な構成例を示すブロック図である。図4に示されるトランスコーダ200は、基本的に図1のトランスコーダ100と同様の構成を有し、トランスコーダ100と、同様のトランスコードを行う装置である。
【0063】
つまり、トランスコーダ200も、トランスコーダ100と同様に、JPEG画像の空白領域を特定し、その空白領域のAC成分を除去することにより、JPEG画像のデータ量を削減するトランスコードを行う。
【0064】
ただし、トランスコーダ200は、空白領域特定部102の代わりに空白領域特定部202を有する。空白領域特定部202は、JPEG画像の輝度信号のみを復号し、生成した輝度信号の復号画像を外部のROI検出装置121に供給し、ROIマスクを生成させる。
【0065】
例えば、エッジを検出したり、部分領域毎に画素値の分散を求めたりして注目領域を特定する場合、ROI検出装置121は、輝度信号の復号画像のみからでもROIマスクの生成は十分に可能である。
【0066】
空白領域特定部202は、空白領域特定部102が有する構成(逆ジグザグスキャン部111乃至ROIマスク取得部114)に加え、輝度信号抽出部210を有する。輝度信号抽出部210は、ハフマン復号されて得られたJPEG画像の係数データから、輝度信号成分を抽出し、それを逆ジグザグスキャン部111に供給する。
【0067】
逆ジグザグスキャン部111乃至逆直交変換部113は、抽出された輝度信号の復号画像を生成し、ROIマスク取得部114は、生成された輝度信号の復号画像をROI検出装置121に供給し、ROIマスクを生成させる。
【0068】
[変換処理の流れ]
この場合の変換処理の流れの例を図5のフローチャートを参照して説明する。
【0069】
ステップS201において、ハフマン復号部101がJPEG画像のハフマン符号を復号すると、ステップS202において、輝度信号抽出部210が係数データから輝度信号成分を抽出する。
【0070】
ステップS203乃至ステップS206の各処理は、ステップS202において抽出された輝度信号を用いて、図3のステップS102乃至ステップS105の各処理と同様に実行される。
【0071】
また、ステップS207乃至ステップS210の各処理は、図3のステップS106乃至ステップS109の各処理と同様に実行される。
【0072】
以上のように、トランスコーダ200は、ROIマスクを取得するために、復号画像を輝度信号についてのみ生成し、ROI検出装置121に供給する。したがって、トランスコーダ200は、より容易にROIマスクを取得することができる。
【0073】
つまり、トランスコーダ200は、トランスコーダ100の場合よりも容易にデータ量の削減を行うことができる。
【0074】
なお、輝度成分の代わりに色差成分が復号され、ROIマスクの生成に利用されるようにしてもよい。ROI検出装置121に提供する情報は、ROI検出装置121がROIマスクを生成する事ができる情報であれば、どのような情報であってもよい。例えば、ハフマン復号されて得られる係数データをROI検出装置121に供給するようにしてもよい。その場合、逆ジグザグスキャン部111乃至逆直交変換部113を省略することができるので、トランスコーダは、より容易にデータ量の削減を行うことができる。
【0075】
<3.第3の実施の形態>
[トランスコーダ]
以上においては、外部のROI検出装置121においてROIマスクが生成されるように説明したが、トランスコーダ自身がこのROIマスクを生成するようにしてもよい。
【0076】
図6は、その場合のトランスコーダの主な構成例を示すブロック図である。図6に示されるトランスコーダ300は、基本的に図1のトランスコーダ100と同様の構成を有し、トランスコーダ100と同様のトランスコードを行う装置である。
【0077】
ただし、トランスコーダ300は、トランスコーダ300自身でROIマスクを生成する。図6に示されるようにトランスコーダ300は、空白領域特定部102の代わりに空白領域特定部302を有する。
【0078】
空白領域特定部302は、基本的に空白領域特定部102と同様の構成を有するが、ROIマスク取得部114の代わりにROI検出部314を有する。
【0079】
ROI検出部314は、ROI検出装置121と同様に、逆直交変換部113により逆直交変換されて得られた復号画像について特徴解析を行い、注目領域(空白領域)を指定するROIマスクを生成する。
【0080】
注目領域(空白領域)の検出方法は任意である。例えば、ROI検出部314が、復号画像からエッジ成分を検出し、そのエッジ成分を含む領域を注目領域とし、それ以外を空白領域として、ROIマスクを生成するようにしてもよい。
【0081】
また、例えば、ROI検出部314が、復号画像に対して、部分領域毎に画素値の分散を求め、その分散の値が大きな領域を注目領域とし、それ以外を空白領域として、ROIマスクを生成するようにしてもよい。
【0082】
ROI検出部314は、生成したROIマスクをAC成分除去部104に供給する。
【0083】
[変換処理の流れ]
この場合の変換処理の流れの例を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0084】
ステップS301乃至ステップS304の各処理は、図3のステップS101乃至ステップS104の各処理と同様に行われる。
【0085】
ステップS305において、ROI検出部314は、ステップS304の処理により生成された復号画像を用いて注目領域(ROI)を検出し、ROIマスクを生成する。
【0086】
ステップS306の処理は、図3のステップS106の処理と同様に実行される。
【0087】
ステップS307において、AC成分除去部104は、ステップS306においてDC成分符号から分離されたAC成分符号の、ステップS305において生成されたROIマスクにおいて空白領域に指定される領域(ブロック)をEOBに置き換えることにより、空白領域のAC成分を除去する。
【0088】
ステップS308およびステップS309の各処理は、図3のステップS108およびステップS109の各処理と同様に実行される。
【0089】
以上のように、トランスコーダ300は、入力されたJPEG画像を復号し、その復号画像を用いてROIマスクを生成する。これにより、トランスコーダ300は、ROI検出装置121を必要とせずに空白領域の特定を行うことができる。
【0090】
つまり、トランスコーダ300は、トランスコーダ300のみで容易にデータ量の削減を行うことができる。
【0091】
なお、このようにROIマスクをトランスコーダ自身で生成する場合においても、第2の実施の形態のように、例えば輝度信号のみ、若しくは色差信号のみ等、画像データの一部の情報のみを復号し、ROIマスクを生成するようにしてもよい。また、係数データからROIマスクを生成するようにしてもよい。さらに、逆直交変換処理を簡易化して、負荷を低減させるようにしてもよい。
【0092】
以上においては、値が0と1の2値により構成されるROIマスクを用いて空白領域の特定を行うように説明したが、ROIマスクは空白領域を示す情報であればどのような情報であってもよく、例えば、0、1、2、・・・のように3値以上の値により構成されるようにしてもよい。
【0093】
以上のようにトランスコードがより容易にJPEG画像のデータ量を低減させることができるので、例えば、DPIシステムにおいて、検体撮影直後はROIを検出せずそのまま圧縮し、後でそのJPEG画像をトランスコードするようにすることができる。このため、空白部分のノイズ削減処理を行うに当たって、検体撮影時の処理を軽減すること(撮影直後にROI判定をする必要がなくなる)が可能になる。検体撮影時の処理が高速に行えるようになることにより、ユーザは撮影後の画像を低レイテンシで確認することができる。また、上述したトランスコードを用いて、バックグラウンドでトランスコードを行うことも可能になり、データ量の削減処理を、より低負荷に行うことができる。
【0094】
なお、以上においては、JPEG画像をトランスコードする場合について説明したが、これに限らず、本発明は、コードストリームのAC成分を除去することができるものであれば、どのような符号化方式で符号化された画像のトランスコードにも適用することができる。例えば、トランスコードされるデータは、ハフマン符号以外の符号化方式で符号化されたコードストリームであってもよい。
【0095】
また、以上においては、JPEG画像の例として、細胞診や組織診に用いられる生体の細胞等の観察画像について説明したが、上述したような観察画像と同様の特徴、すなわち、画像内に注目領域と空白領域とを含むような画像であれば、どのような画像であってもよい。例えば、地図データ、航空写真、衛星写真等であってもよいし、その他の画像であってもよい。
【0096】
<4.第4の実施の形態>
[パーソナルコンピュータ]
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。この場合、例えば、図8に示されるようなパーソナルコンピュータとして構成されるようにしてもよい。
【0097】
図8において、パーソナルコンピュータ400のCPU(Central Processing Unit)401は、ROM(Read Only Memory)402に記憶されているプログラム、または記憶部413からRAM(Random Access Memory)403にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM403にはまた、CPU401が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0098】
CPU401、ROM402、およびRAM403は、バス404を介して相互に接続されている。このバス404にはまた、入出力インタフェース410も接続されている。
【0099】
入出力インタフェース410には、キーボード、マウスなどよりなる入力部411、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部412、ハードディスクなどより構成される記憶部413、モデムなどより構成される通信部414が接続されている。通信部414は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
【0100】
入出力インタフェース410にはまた、必要に応じてドライブ415が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア421が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部413にインストールされる。
【0101】
上述した一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0102】
この記録媒体は、例えば、図8に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、若しくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア421により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM402や、記憶部413に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0103】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0104】
また、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0105】
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
【0106】
また、以上において、1つの装置(または処理部)として説明した構成を分割し、複数の装置(または処理部)として構成するようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成をまとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部を他の装置(または他の処理部)の構成に含めるようにしてもよい。つまり、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0107】
100 トランスコーダ, 101 ハフマン復号部, 102 空白領域特定部, 103 成分分離部, 104 AC成分除去部, 105 成分合成部, 111 逆ジグザグスキャン部, 112 逆量子化部, 113 逆直交変換部, 114 ROIマスク取得部, 200 トランスコーダ, 202 空白領域特定部, 210 輝度信号抽出部, 300 トランスコーダ, 302 空白領域特定部, 314 ROI検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データから生成された係数データが符号化された符号化データを復号する復号手段と、
前記復号手段により符号化が復号されて得られた係数データを用いて、前記画像データの画像の、注目すべきでない領域である空白領域を特定する特定手段と、
前記復号手段により符号化が復号されて得られた係数データをAC成分とDC成分とに分離する分離手段と、
前記分離手段により前記DC成分から分離された前記AC成分から、前記特定手段により特定された空白領域を除去する除去手段と、
前記除去手段により前記空白領域が除去された前記AC成分と、前記DC成分とを合成する合成手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記特定手段は、
前記係数データから復号画像を生成する生成手段を備え、
前記生成手段により生成された前記復号画像の空白領域を特定する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記生成手段により生成された前記復号画像を、前記復号画像の空白領域を示す情報であるROIマスクを生成する他の装置に供給し、前記他の装置が生成した前記ROIマスクを取得する取得手段をさらに備え、
前記除去手段は、前記取得手段により取得された前記ROIマスクにより示される空白領域を、前記分離手段により前記DC成分から分離された前記AC成分から除去する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記係数データから一部の成分を抽出する抽出手段をさらに備え、
前記生成手段は、前記抽出手段により抽出された一部の成分について前記復号画像を生成し、
前記取得手段は、前記生成手段により生成された前記一部の成分についての復号画像を前記他の装置に供給し、前記他の装置が生成した前記一部の成分についての復号画像の空白領域を示すROIマスクを取得し、
前記除去手段は、前記取得手段により取得された前記ROIマスクにより示される空白領域を、前記分離手段により前記DC成分から分離された前記AC成分から除去する
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記特定手段は、
前記生成手段により生成された前記復号画像から空白領域を検出する検出手段をさらに備え、
前記除去手段は、前記分離手段により前記DC成分から分離された前記AC成分から、前記検出手段により検出された空白領域を除去する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記符号化データは、前記係数データがハフマン符号化されたものである
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像データは、生体の細胞若しくは組織の観察画像である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像処理装置の画像処理方法であって、
復号手段が、画像データから生成された係数データが符号化された符号化データを復号し、
特定手段が、符号化が復号されて得られた係数データを用いて、前記画像データの画像の、注目すべきでない領域である空白領域を特定し、
分離手段が、符号化が復号されて得られた係数データをAC成分とDC成分とに分離し、
除去手段が、前記DC成分から分離された前記AC成分から、特定された空白領域を除去し、
合成手段が、前記空白領域が除去された前記AC成分と、前記DC成分とを合成する
画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−23605(P2012−23605A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160559(P2010−160559)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】