説明

画像処理装置および画像処理プログラム

【課題】TV正則化手法を用いて画像拡大を行う画像処理装置において、全体の計算時間を削減する。
【解決手段】入力画像から拡大骨格成分を得るTV正則化拡大部5と、このTV正則化拡大部で得られた拡大骨格成分をダウンサンプリングして、入力画像と同じサンプル数の画像となる骨格成分を得るダウンサンプリング部7と、ダウンサンプリング部7にて得られた骨格成分を入力画像から減算してテクスチャ成分を得る減算部6と、減算部6にて得られたテクスチャ成分から線形補間を用いて拡大テクスチャ成分を得る線形補間拡大部8と、TV正則化拡大部5にて得られた拡大骨格成分と線形補間拡大部8にて得られた拡大テクスチャ成分とを合成し拡大出力画像を得る成分合成部9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン、デジタルカメラ、医療画像などの画像を処理する画像処理装置および画像処理プログラムに関し、特にTotal variation(以下、TVと記す)正則化手法を用いて画像を拡大する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1〜3にはTV正則化手法を用いた画像拡大法が示されており、その方法はテレビジョンやカメラ画像などの超解像度拡大法として非常に有用である。
【0003】
図4に、非特許文献1〜3に示された、TV正則化手法を用いて画像拡大を行う画像処理装置の構成を示す。入力画像はTV正則化成分分離部1にて画像の骨格成分とテクスチャ成分に分離される。骨格成分はTV正則化拡大部2にて拡大骨格成分となる。テクスチャ成分は線形補間拡大部3にて拡大テクスチャ成分となる。拡大骨格成分と拡大テクスチャ成分は成分合成部4にて合成され、最終拡大画像が得られる。
【0004】
図5に、TV正則化成分分離部1の処理をフローチャートで示す。ステップ101で演算回数Nが0に初期設定された後、ステップ102でTV正則化演算のための修正項αが図中の式のように計算される。ステップ103で画素値u(N)が−εαによって新しい画素値u(N+1)に更新される。そして、ステップ104で演算回数Nがインクリメントされ、ステップ105で予め定められた値NstopにNが達したか否かが判定される。Nが値Nstopに達していない場合はステップ102に戻る。Nが値Nstopに達した場合は画素値uが最終骨格成分として出力され、またステップ106で入力画像fからuが引き算されて、テクスチャ成分vが出力される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】齊藤隆弘: "1 枚の画像からの超解像度オーバーサンプリング",映像メディア学会誌, Vol.62, No.2, pp.181-189, 2008
【非特許文献2】石井勇樹,中川陽介,小松隆,斎藤隆弘: "乗算型骨格テクスチャ画像分離の画像処理への応用", 電子情報通信学会論文誌,Vol.J90-D, No.7, pp. 1682-1685, 2007
【非特許文献3】T. Saito and T. Komatsu : "Image Processing Approach Based on Nonlinear Image-Decomposition",IEICE Trans. Fundamentals, Vol.E92-A, NO.3, pp.696-707, March 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1〜3に示されたTV正則化手法を用いた画像拡大法は、繰り返し演算にて膨大な計算時間のかかる、TV正則化演算処理部を2個有している。すなわち、TV正則化手法によって骨格成分とテクスチャ成分を分離するTV正則化成分分離部1と、TV正則化手法によるTV正則化拡大部2の2つである。したがって、この手法をテレビジョンのような動画像に用いる際には、その計算時間が問題となる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、TV正則化手法を用いて画像拡大を行う画像処理装置において、全体の計算時間を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
入力画像から拡大骨格成分を得るTV正則化拡大手段と、
前記拡大骨格成分をダウンサンプリングして、前記入力画像と同じサンプル数の画像となる骨格成分を得るダウンサンプリング手段と、
前記ダウンサンプリング手段にて得られた骨格成分を前記入力画像から減算してテクスチャ成分を得る減算手段と、
前記減算手段にて得られたテクスチャ成分から拡大テクスチャ成分を得る手段と、
この手段にて得られた拡大テクスチャ成分と前記TV正則化拡大手段にて得られた拡大骨格成分とを合成する成分合成手段と、を備えた画像処理装置ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
コンピュータを、
入力画像から拡大骨格成分を得るTV正則化拡大手段と、
前記拡大骨格成分をダウンサンプリングして、前記入力画像と同じサンプル数の画像となる骨格成分を得るダウンサンプリング手段と、
前記ダウンサンプリング手段にて得られた骨格成分を前記入力画像から減算してテクスチャ成分を得る減算手段と、
前記減算手段にて得られたテクスチャ成分から拡大テクスチャ成分を得る手段と、
この手段にて得られた拡大テクスチャ成分と前記TV正則化拡大手段にて得られた拡大骨格成分とを合成する成分合成手段として機能させる画像処理プログラムを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】ダウンサンプリングを説明するための図である。
【図3】図1中のTV正則化拡大部5の処理を示すフローチャートである。
【図4】従来例の画像処理装置の全体構成を示す図である。
【図5】図4中のTV正則化成分分離部1の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1に、本発明の一実施形態に係る画像処理装置の構成を示す。
この画像処理装置は、入力画像から拡大骨格成分を得るTV正則化拡大部5と、このTV正則化拡大部5で得られた拡大骨格成分をダウンサンプリングして、入力画像と同じサンプル数の画像となる骨格成分を得るダウンサンプリング部7と、ダウンサンプリング部7にて得られた骨格成分を入力画像から減算してテクスチャ成分を得る減算部6と、減算部6にて得られたテクスチャ成分から線形補間を用いて拡大テクスチャ成分を得る線形補間拡大部8と、TV正則化拡大部5にて得られた拡大骨格成分と線形補間拡大部8にて得られた拡大テクスチャ成分とを合成し拡大出力画像を得る成分合成部9と、を備えている。なお、線形補間拡大部8と成分合成部9は、図4に示す従来のものと同じである。
【0012】
この画像処理装置は、次のように作動する。入力画像はTV正則化拡大部5で拡大骨格成分となる。拡大骨格成分はダウンサンプリング部7で図2に示すように画素数が間引きされてもとの入力画像と同じサンプル数の画像となる。例えば、図の左側に示す6×6の拡大画像について、ダウンサンプリングを行うことにより、図中の黒丸を削除して、3×3の半分のサイズの画像を作成する。このダウンサンプリングにより得られた骨格成分は入力画像から減算されてテクスチャ成分となる。テクスチャ成分は線形補間拡大部8にて拡大テクスチャ成分となる。拡大骨格成分と拡大テクスチャ成分は成分合成部9にて合成されて最終拡大画像となる。
【0013】
図3に、TV正則化拡大部5での処理を示す。このTV正則化拡大部5では、拡大演算を行うため、例えば、i,jそれぞれを2倍にして、uの画素数を入力画像の画素数の4倍とするような演算を行う。なお、このような拡大演算は、従来(例えば、図4に示すTV正則化拡大部2)と同様のものである。具体的には、その拡大演算は次の通りである。
【0014】
まず、ステップ201で演算回数Nが0に初期設定された後、ステップ202でTV正則化演算のための修正項αが図中の式のように計算される。ただしここでは、拡大演算をしているので、uの画素数は入力画像の画素数をn×n倍(例えば、2×2=4倍)したものとなっている。このため、ステップ202では、右辺第2項のu*(N)を例えば図2のようにダウンサンプルしたものとし、入力画像fと画素数が同じになるようにしている。ステップ203で画素値u(N)が−εαによって新しい画素値u(N+1)に更新される。そして、ステップ204で演算回数Nがインクリメントされ、ステップ205で予め定められた値NstopにNが達したか否かが判定される。Nが値Nstopに達していない場合はステップ202に戻る。Nが値Nstopに達した場合は画素値uが最終骨格成分として出力される。
【0015】
この実施形態によれば、図4に示す従来の画像処理装置と比べ、計算時間のかかる、TV正則化成分分離部1が削除されているので、計算量を大幅に減らし、全体の計算時間を削減(例えば、半減)することができる。
【0016】
なお、図1に示す画像処理装置は、コンピュータを用いたソフトウェアにより実現することができる。その場合、図1に示す各構成部は、それぞれの機能を実現するための手段として把握され、それらにより画像処理プログラムが構成される。つまり、入力画像から拡大骨格成分を得るTV正則化拡大手段と、拡大骨格成分をダウンサンプリングして、入力画像と同じサンプル数の画像となる骨格成分を得るダウンサンプリング手段と、ダウンサンプリング手段にて得られた骨格成分を入力画像から減算してテクスチャ成分を得る減算手段と、減算手段にて得られたテクスチャ成分から線形補間を用いて拡大テクスチャ成分を得る線形補間拡大手段と、TV正則化拡大手段にて得られた拡大骨格成分と線形補間拡大手段にて得られた拡大テクスチャ成分とを合成する成分合成手段として、コンピュータを機能させる画像処理プログラムとして構成される。
【0017】
また、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、減算部にて得られたテクスチャ成分から拡大テクスチャ成分を得る手段としては、拡大骨格成分と同様の拡大を行った拡大テクスチャ成分を得るものであれば、線形補間拡大部8以外のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0018】
5 TV正則化拡大部
6 減算部
7 ダウンサンプリング部
8 線形補間拡大部
9 成分合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像から拡大骨格成分を得るTV正則化拡大手段と、
前記拡大骨格成分をダウンサンプリングして、前記入力画像と同じサンプル数の画像となる骨格成分を得るダウンサンプリング手段と、
前記ダウンサンプリング手段にて得られた骨格成分を前記入力画像から減算してテクスチャ成分を得る減算手段と、
前記減算手段にて得られたテクスチャ成分から拡大テクスチャ成分を得る手段と、
この手段にて得られた拡大テクスチャ成分と前記TV正則化拡大手段にて得られた拡大骨格成分とを合成する成分合成手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
コンピュータを、
入力画像から拡大骨格成分を得るTV正則化拡大手段と、
前記拡大骨格成分をダウンサンプリングして、前記入力画像と同じサンプル数の画像となる骨格成分を得るダウンサンプリング手段と、
前記ダウンサンプリング手段にて得られた骨格成分を前記入力画像から減算してテクスチャ成分を得る減算手段と、
前記減算手段にて得られたテクスチャ成分から拡大テクスチャ成分を得る手段と、
この手段にて得られた拡大テクスチャ成分と前記TV正則化拡大手段にて得られた拡大骨格成分とを合成する成分合成手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−182094(P2011−182094A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42639(P2010−42639)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】