説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】 センタリング処理を行う際に画像データの転送速度を向上することができる画像処理装置および画像処理方法を提供する。
【解決手段】 読み出しアクセスコントローラ205は、画像伸長モジュール101から1バンド転送完了信号が入力されると、メモリ104に対して読み出しアクセスを行い、有効エリアに該当する画像データを読み込む。白塗り処理部202は、読み出された有効エリアの画像データのサイズと、予め制御レジスタ206に設定された出力画像データのサイズとを比較し、有効エリアの画像データのサイズが小さい場合は、有効エリアの画像データを、出力画像データの中央に配置するとともに、残余部分に対して白塗り処理を行い、出力画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトメモリアクセス方式によってデータを転送することができる画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写装置、スキャナ装置、プリンタ装置およびファクシミリ装置などの機能を1つにまとめた複合装置などに搭載され、画像データを処理する画像処理装置では、近年、カラー化の対応が行われている。カラー化によってデータ容量は増大し、このような画像処理装置では、データ処理の高速化が要求されている。画像処理装置では、ダイレクトメモリアクセス(Direct Memory Access、略称DMA)方式によってデータを転送することによって、データ処理の高速化が図られている。
【0003】
特許文献1に開示される技術では、複数のDMA回路と各DMA回路を起動させるセレクタ回路とが設けられ、各DMA回路が連携される。各DMA回路を連携するための連携設定は、CPUによる書き込み、読み出し指令の出力により行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−172107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1ページ分の画像データを複数のバンドに分割してモジュール間で転送を行う場合、特許文献1記載の技術を用いると、画像入力モジュールと画像処理モジュールとが連携しているので、画像入力モジュールから出力される画像データのサイズと画像処理モジュールが処理対象とする画像データのサイズとは一致する必要がある。よって、画像処理モジュールで処理すべき有効エリアが、画像入力モジュールから出力される画像データの一部分であった場合、処理対象ではない無効エリアについても画像入力モジュールから画像処理モジュールへのデータ転送が発生するため、転送速度の向上が期待できない。
【0006】
一方、画像処理装置には、スキャナで読み取った画像データを保存するために、HDD(ハードディスクドライブ)などの記憶装置が接続されていることが多い。記憶装置の容量は限られているため、同じ容量で保存枚数を多くするには、JPEG(Joint
Photographic Experts Group)方式、JBIG(Joint Bi-level Image Experts Group)方式などで圧縮処理を施した圧縮画像データの状態で保存される。そして、画像データの再印字、PC(パーソナルコンピュータ)への再送信、ファクシミリ再送信などを行う場合は、記憶装置から読み出した圧縮画像データに対して画像伸長処理を施した上で、その他の画像処理を行う必要がある。
【0007】
ここで、記憶装置に保存されている画像データについて、ユーザの指示に従い、画像データの一部分のみを出力用紙または出力画像の中心にセンタリングして出力する場合がある。
【0008】
しかしながら、記憶装置に保存された画像データに対する伸長処理は、1ページ分の画像データについて行われるため、特許文献1の技術を用いて伸長処理モジュールと画像処理モジュールとを連携させる場合は、無効エリアも含めて1ページ分すべての画像データについて転送を行う必要があり、転送速度の向上は期待できない。さらに、画像処理後に画像データのセンタリングを実現するためには、メモリ上に一旦1ページ分の画像データを展開した後、センタリングに必要な有効エリアを読み出して、予めメモリ上に書き込んでおいた印字サイズまたは送信サイズに合わせて白塗りされたキャンバスデータの中心位置に、読み出した画像データを書き込むことでセンタリングを実現する。または、画像処理後のメモリ上の1ページ分の画像データに対して、印字サイズまたは送信サイズに対して無効となるエリアに白データを書き込み、白塗りを行うことでセンタリングを実現する。いずれのセンタリング処理にしても画像データの転送速度を向上することはできない。
【0009】
本発明の目的は、センタリング処理を行う際に画像データの転送速度を向上することができる画像処理装置および画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、1ページ分の画像データを、複数のバンドに分割してバンド毎に順次処理する画像処理装置であって、
画像データの書き込みおよび画像データの読み出しが可能なメモリと、
画像データをバンド毎に前記メモリへ書き込み、1バンド分の画像データの書き込みが完了する度に1バンド転送完了通知を出力する画像入力モジュールと、
前記画像入力モジュールから前記1バンド転送完了通知を受け取ると、前記画像入力モジュールが前記メモリへ書き込んだ画像データを読み出し、読み出した画像データに画像処理を施した出力画像データを作成する画像処理モジュールと、を含み、
前記画像処理モジュールは、
前記画像入力モジュールによって前記メモリに書き込まれた1バンド分の画像データから、画像処理を行うべき領域である有効エリアを判別し、前記有効エリアの画像データのみを前記メモリから読み出す読み出しアクセスコントローラと、
前記読み出しアクセスコントローラによって読み出された前記有効エリアの大きさと、前記出力画像データの大きさとを比較し、前記有効エリアの大きさのほうが小さい場合は、前記有効エリア内の画像データを前記出力画像データの中央に配置するとともに、有効エリアを除く残余の部分が下地となるように予め定める色の画像データを配置する画像処理部と、を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0011】
また本発明は、前記画像入力モジュールが、圧縮された画像データに対して伸長処理を行う画像伸長モジュールであることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記読み出しアクセスコントローラが、前記有効エリア以外の画像データについては、メモリからの読み出しを行わずに、前記画像入力モジュールに対して、1バンド分の画像データを読み出したことを示す1バンド読み出し完了通知を出力することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記画像処理モジュールが、前記予め定める色を変更可能に設定するレジスタを備え、
前記画像処理部は、下地として前記レジスタに設定される色の画像データを配置することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、1ページ分の画像データを、複数のバンドに分割してバンド毎に順次処理する画像処理方法であって、
画像入力モジュールが、画像データをバンド毎に前記メモリへ書き込み、1バンド分の画像データの書き込みが完了する度に1バンド転送完了通知を出力する画像入力ステップと、
画像処理モジュールが、前記画像入力モジュールから前記1バンド転送完了通知を受け取ると、前記メモリに書き込まれた画像データを読み出し、読み出した画像データに画像処理を施した出力画像データを作成する画像処理ステップと、を含み、
前記画像処理ステップは、
前記画像入力モジュールによって前記メモリに書き込まれた1バンド分の画像データから、画像処理を行うべき領域である有効エリアを判別し、前記有効エリアの画像データのみを前記メモリから読み出す読み出しステップと、
前記読み出しステップで読み出された前記有効エリアの大きさと、前記出力画像データの大きさとを比較し、前記有効エリアの大きさのほうが小さい場合は、前記有効エリア内の画像データを前記出力画像データの中央に配置するとともに、有効エリアを除く残余の部分が下地となるように予め定める色の画像データを配置する画像処理ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、読み出しアクセスコントローラが、画像入力モジュールによってメモリへ書き込まれた1バンド分の画像データのうち、画像処理を行うべき領域である有効エリアを判別し、前記有効エリアの画像データのみをメモリから読み出すと、画像処理部が、読み出された有効エリアの大きさと、出力画像データの大きさとを比較し、有効エリアの大きさのほうが小さい場合は、有効エリア内の画像データを出力画像データの中央に配置するとともに、有効エリアを除く残余の部分が下地となるように予め定める色の画像データを配置する。
【0016】
このように、画像処理モジュールは、メモリから有効エリアの画像データのみを読み出して、これを出力画像の中央に配置するので、有効エリアの画像データをセンタリング処理する際に、画像入力モジュールと画像処理モジュールとの間で画像データの転送速度を向上することができる。
【0017】
また本発明によれば、圧縮された画像データを伸長した画像データに対してセンタリング処理を行うことができる。
【0018】
また本発明によれば、前記有効エリア以外の画像データについては、メモリから読み出しを行わずに、前記画像入力モジュールに対して、1バンド分の画像データを読み出したことを通知するので、画像処理が不要な画像データをメモリから読み出さずに、次のバンドの転送処理を続行することができる。
【0019】
また本発明によれば、レジスタに設定することで、センタリング処理の際の下地の色を任意に変更することができる。
【0020】
また本発明によれば、読み出しステップで、画像入力モジュールによってメモリへ書き込まれた1バンド分の画像データのうち、画像処理を行うべき領域である有効エリアを判別し、前記有効エリアの画像データのみをメモリから読み出すと、画像処理ステップで、読み出された有効エリアの大きさと、出力画像データの大きさとを比較し、有効エリアの大きさのほうが小さい場合は、有効エリア内の画像データを出力画像データの中央に配置するとともに、有効エリアを除く残余の部分が下地となるように予め定める色の画像データを配置する。
【0021】
このように、画像処理工程では、メモリから有効エリアの画像データのみを読み出して、これを出力画像の中央に配置するので、有効エリア内の画像データをセンタリング処理する際に、画像入力モジュールと画像処理モジュールとの間で画像データの転送速度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態である画像処理装置100の構成を示す概略図である。
【図2】画像処理モジュール102の構成を示すブロック図である。
【図3】画像処理モジュール102による出力画像作成処理を示すフローチャートである。
【図4】出力画像作成処理における主走査方向処理を示すフローチャートである。
【図5】画像伸長モジュール101から画像処理モジュール102へと転送される1ページ分の画像データの概略図である。
【図6A】センタリング処理前の状態を示す概略図である。
【図6B】センタリング処理後の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態である画像処理装置100の構成を示す概略図である。
画像処理装置100は、画像処理モジュールへ画像データを転送する画像伸長モジュール101と、画像伸長モジュール101からの入力画像に対して画像処理を行う画像処理モジュール102と、画像伸長モジュール101および画像処理モジュール102からのメモリアクセス要求に応じて、メモリ104へのアクセスを制御するメモリコントローラ103とで構成される。
【0024】
画像伸長モジュール101は、画像処理装置100に接続されるHDD等の画像記憶装置に記憶された圧縮画像データが入力されると、入力された圧縮画像データに伸長処理を施し、圧縮前の状態(たとえばビットマップデータ)にまで戻した画像データを生成するとともに、伸長後の画像データについてはメモリコントローラ103を介してメモリ104へバンド毎に転送する。伸長後の画像データをメモリ104へ転送する際は、1バンド分の画像データを出力するたびにバンド転送完了通知を画像処理モジュール102へと出力する。
【0025】
画像処理モジュール102は、画像伸長モジュール101から入力されるバンド転送完了通知に応じて、1ページの画像データのうち画像処理が必要となる有効エリアの画像データのみについてメモリ104からの読み出しを行う。出力すべき画像のサイズ(出力画像サイズ)は予め設定されているので、有効エリア以外の残余の領域に対しては白塗り処理を行う。ここで、白塗り処理とは、1画素ごとに現在設定されている画素値(濃度値)を、白色を表す特定の画素値(濃度値)に書き換える処理であり、この白塗り処理によって有効エリア以外の残余の領域を下地領域とすることができる。
【0026】
このような白塗り処理を行ったのち、メモリ104へと画像データを転送する。なお、有効エリアは、予め定めるサイズの領域を示す矩形状のウインドウを、入力装置(マウス/タッチパネル等)を用いて移動させたり、有効領域を示す座標をユーザが直接入力することにより、ユーザが任意に設定できるように構成されている。また出力画像サイズは、画像伸長モジュール101から入力される1ページ分の入力画像サイズと同等でもよいが、特に制限はなく任意の大きさに設定可能である。
【0027】
メモリコントローラ103は、各モジュールで処理が施された画像データをメモリ104へ書き込む、または各モジュールが処理を施そうとする画像データ読み出すときのメモリ制御インタフェースである。メモリ104は、各モジュールから出力される画像データを一時的に保存する記憶手段である。
【0028】
なお、画像処理モジュール102と画像伸長モジュール101とは、DMA連携が可能なように構成されている。
【0029】
図2は、画像処理モジュール102の構成を示すブロック図である。
画像処理モジュール102は、読み出しDMAコントローラ201と、白塗り処理部202と、画像演算部203と、書き込みDMAコントローラ204と、読み出しアクセスコントローラ205と、制御レジスタ206と、書き込みアクセスコントローラ207とにより構成される。
【0030】
画像処理が必要な画像データに対しては、読み出しDMAコントローラ201がメモリ104にアクセスして記憶されている画像データを読み出し、白塗り処理部202が、予め制御レジスタ206に設定された印字画像データまたは送信画像データ(以下では「出力画像データ」という)のサイズに合わせて白塗り処理を行う。画像演算部203が画像処理を施し、書き込みDMAコントローラ204が、メモリ104にアクセスして画像処理済み画像データを書き込む。
【0031】
読み出しDMAコントローラ201は、制御レジスタ206に予め設定された連携設定、および有効エリア開始ラインの設定、有効エリア終了ラインの設定をもとに、画像伸長モジュール101から入力される1ページ分の画像データから画像処理すべき有効エリアと、画像処理すべきでない無効エリアとを判別する。また、読み出しDMAコントローラ201は、予め制御レジスタ206に設定された出力画像サイズと、メモリ104から読み出した有効エリアの処理情報をもとに、有効エリア以外の領域を判別することもできる。
【0032】
画像伸長モジュール101から1バンド転送完了信号R_BAND_END_INが入力されると、読み出しアクセスコントローラ205は、処理ライン数と制御レジスタ206に予め設定された有効エリア情報とに基づいて、画像処理が必要な有効エリアに該当する画像データを読み出すべく、メモリ104に対して読み出しアクセスを行い、有効エリアに該当する画像データを読み込む。
【0033】
画像処理部である白塗り処理部202は、読み出された有効エリアの画像データのサイズと、予め制御レジスタ206に設定された出力画像データのサイズとを比較し、出力画像データのサイズに対してメモリ104から読み込んだ有効エリアの画像データのサイズが小さい場合は、有効エリアの画像データを、出力画像データの中央に配置するとともに、出力画像データから有効エリアの画像データを除く残余部分に対して白塗り処理を行い、有効エリアの画像データと白塗り処理によって生成した下地の画像データとを合わせると出力画像データのサイズとなるように、出力画像データを生成する。白塗り処理を行う際に、有効エリアの画像データを、出力画像データの中心に配置し、残余部分を下地とすることで、出力画像データは、有効エリアの画像データをセンタリング処理した画像データとして得られる。たとえば、有効エリア開始画素の座標が、ページメモリの始点に位置するように、書き込み開始位置を設定し、さらに、ユーザが指定したセンタリングの対象となる画像領域に対して、有効エリアの開始画素の座標を算出することで、センタリング処理を行うことができる。
【0034】
これにより、画像伸長モジュール101から入力された1ページ分の画像データのうち、有効エリアの画像データのみをメモリ104から読み出し、予め設定された出力画像データの残余部分の白塗りを行うことで、DMA連携を行いつつセンタリング処理も実現することが可能である。
【0035】
このとき、読み出しアクセスコントローラ205は、画像伸長モジュール101が出力した画像データのうち、画像処理すべきでない無効エリアの画像データについては、メモリ104へのアクセスを発生させずに、必要に応じて1バンド読み出し完了通知R_BAND_
END_OUTを画像伸長モジュール101に対して出力する。
【0036】
これにより、画像処理装置100では、画像伸長モジュール101と画像処理モジュール102とのDMA連携を行いつつ、画像処理モジュール102では画像処理が必要な有効エリアの画像データについてのみ転送を行うので、センタリング処理を行う際に画像データの転送速度を向上することができる。
【0037】
白塗り処理部202によって白塗り処理が施され、センタリング処理済みの画像データは、画像演算部203へと出力され、画像演算部203が画像演算による所定の画像処理を行う。画像処理が施された画像データは、書き込みDMAコントローラ204によってメモリ104へと書き込まれる。なお、書き込みアクセスコントローラ207は制御レジスタ206に設定されたDMA連携設定に応じて、1バンド転送完了信号W_BAND_END_OUTおよび1バンド読み出し完了通知W_BAND_END_INを用いて、後段のその他の処理モジュールとDMA連携によるデータ転送が可能である。
【0038】
図3は、画像処理モジュール102による出力画像作成処理を示すフローチャートである。また、図4は、出力画像作成処理における主走査方向処理を示すフローチャートである。
【0039】
1ページ分の画像データを処理するためにDMA転送が開始されると、ステップS1で画像伸長モジュール101からのバンド転送完了通知が入力されたかどうかを判断し、入力されればステップS2に進み、入力されなければ入力されるまで待機する。
【0040】
画像伸長モジュール101は、1ページ分の画像データのうち1バンド分の画像データを転送し終え、画像処理モジュール102が転送したバンドに対する画像処理を行なっている間に次の1バンド分の画像データを伸長して転送を行うので、効率よく処理が実行できる。
【0041】
ステップS2、ステップS3では、読み出しDMAコントローラ201が、現在処理中のラインと有効エリア開始ライン、有効エリア終了ラインとをそれぞれ比較し、ステップS4で現在処理中のラインが有効エリア内にあるラインであるかどうかを判断する。
【0042】
ここで、有効エリア開始ライン、有効エリア終了ラインは、制御レジスタ206に有効エリア情報として設定された情報を読み出して比較するが、有効エリア情報は、上記のようにセンタリングが必要な場合には、出力画像作成処理の開始前に、有効エリアの画像データを出力画像データの中央に配置するように書き換えられる。
【0043】
ここで、画像伸長モジュール101から画像処理モジュール102へと転送される1ページ分の画像データの概略図を図5に示す。
【0044】
図5の概略図に示すように、1ページ分の画像データ501は、複数のバンド(Band1、Band2、……、Band7)に分割され、バンド毎にデータ転送される。画像処理モジュール102で処理すべき有効エリア502と無効エリア503は、バンド同士の境界とは無関係な位置に設定されることが多い。
【0045】
バンドは、画像データの主走査方向の複数のラインから構成されており、有効エリア開始ラインL1、有効エリア終了ラインL2も主走査方向のラインである。有効エリアの副走査方向のサイズは、制御レジスタ206に設定された有効エリア開始ラインL1および有効エリア終了ラインL2によって決定され、有効エリア開始ラインL1から有効エリア終了ラインL2までの全てのラインが有効エリアに含まれるラインである。したがって、有効エリア開始ラインL1、有効エリア終了ラインL2によって、副走査方向のエリア幅が決定される。
【0046】
有効エリアは、有効エリア開始ラインL1および有効エリア終了ラインL2のみでは確定せず、主走査方向の幅が必要である。主走査方向の有効エリアの幅については、制御レジスタ206に有効エリア情報として設定された有効エリア開始画素P1、有効エリア終了画素P2によって決定される。なお、主走査方向の有効エリア幅はバンド毎に変化することはなく、有効エリア、無効エリアの決定は、予め定める有効エリアの幅に依存する。
【0047】
図3に戻り、ステップS4で現在処理中のラインが有効エリア内であると判断されればステップS5に進み、有効エリア外すなわち無効エリアのラインであると判断されればステップS14に進む。
【0048】
ステップS5では、図4に示すフローチャートによって主走査方向の処理が行われる。主走査方向処理では、現在処理中のラインにおいて、画素ごとに予め定める処理を施し、ステップS19で、処理中のラインにおける読み取り開始位置を、有効エリア開始画素P1以降に設定する。これによって、処理中のラインの先頭画素から有効エリア開始画素P1までの画素を読み飛ばすことになる。ステップS20で、予め設定された出力画像データのサイズによって決まる、処理すべき主走査方向の画素数である出力画素数と、既に処理済みの画素数である処理済み画素数とを比較する。ステップS21で処理済み画素数が出力画素数よりも多い場合は、主走査方向処理を終了し、図3に示すフローチャートのステップS6に進み、処理済み画素数が出力画素数以下であれば、ステップS22に進む。
【0049】
ステップS22では、処理済み画素と主走査方向の有効エリア終了画素P2とを比較し、ステップS23では処理済み画素が有効エリア終了画素P2を超えたかどうかを判断し、超えていればステップS26に進み、超えていなければステップS24に進む。
【0050】
ステップS24では、読み出しのためのメモリアクセスを発生させ、メモリ104から画素データを読み出すとともにページメモリに書き込む。処理済み画素が有効エリア終了画素P2を超えていれば、ステップS26で白塗りエリアの画素であると判断して白塗り処理を行いページメモリに書き込む。
【0051】
ステップS24,S26の処理完了後は、ステップS25で処理済み画素数カウンタのカウントアップを行い、ステップS20に戻る。
【0052】
ステップS5の主走査方向処理が完了した後は、画像演算部203への出力が1ライン分完了しているため、ステップS6で処理済みライン数のカウントアップを行い、ステップS7に進む。
【0053】
また、ステップS14では、現在処理中のラインが有効エリア終了ラインを超えているかどうかを判断し、超えていれば白塗りエリアと判断し、ステップS15で1ライン全体に対して白塗りを行い、ステップS16で処理済みライン数のカウントアップを行ったのち、ステップS6に進む。超えていなければ有効エリア未達のライン、すなわち無効エリアのラインであるとして何ら処理せずにステップS7に進む。ステップS7では、処理の対象となるラインを次のラインに移行するため現在処理ラインのカウントアップを行い、ステップS8に進む。
【0054】
ステップS8では、現在処理中のラインがバンドの最終ラインであるかどうかを判断する。現在処理中のラインがバンドの最終ラインである場合は、1バンド分の読み出しが完了したものとして、ステップS9に進み、1バンド読み出し完了通知R_BAND_END_OUTを画像伸長モジュール101に対して出力してステップS10に進む。現在処理中のラインがバンドの最終ラインではない場合は、処理の対象ラインを次のラインへと変更してステップS2に戻りライン処理を続行する。
【0055】
ステップS10では、現在処理中のラインと有効エリア終了ラインL2とを比較し、画像伸長モジュール101から有効エリアの画像データを受信完了したかどうかを判断し、未受信のバンドがある場合はステップS1に戻り、次のバンドを受信するべく、1バンド転送完了通知R_BAND_END_IN待ちの状態で待機する。
【0056】
有効エリアの画像データを受信完了している場合は、画像処理モジュール102は画像伸長モジュール101から必要な画像データをすべて受信したことになるので、ステップS11に進み、DMA連携を終了して、メモリ104からの画像データ読み出しを終了させる。なお、DMA連携を終了したことをCPUに対して通知するようにしてもよい。
【0057】
また、画像伸長モジュール101からの1ページ分のデータ転送よりも画像処理モジュール102での1ページ分の有効エリアの画像データ読み出しが先に終了した場合であっても、画像処理モジュール102から画像伸長モジュール101に対してDMA連携が終了したことを通知することで、画像伸長モジュール101がDMA転送を終了し、無効エリアの画像データに対するメモリアクセスを発生させないよう構成することもできる。
【0058】
以降のステップは、有効エリアのサイズが出力画像データのサイズよりも小さい場合に、DMA連携の終了後、つまり画像処理モジュール102が画像伸長モジュール101から有効エリアの画像データをすべて受信した後、有効エリアの外側の領域に白塗り処理を行うためのステップである。
【0059】
ステップS12では、処理済みライン数と出力画像データの副走査方向のライン数とを比較し、ステップS13に進む。
【0060】
ステップS13では、処理済みライン数が出力画像データの副走査方向のライン数よりも多い場合は、画像演算部203へ出力する出力画像データが完成したと判断し、フロー終了する。処理済みライン数が出力画像データの副走査方向のライン数に満たない場合は、白塗りが必要なラインとしてステップS17で白塗り処理を行い、ステップS18で処理済みライン数のカウントアップを行ったのち、ステップS12に戻る。
【0061】
以上により、画像伸長モジュール101と画像処理モジュール102とがDMA連携するとともに、画像処理モジュール102は有効エリアのみをメモリ104から読み出し、出力画像データのサイズに対して有効エリア以外の領域への白塗りを実現することで、高速にデータ転送しながらセンタリング処理も同時に行うことができる。
【0062】
図6Aは、センタリング処理前の状態を示す概略図であり、図6Bは、センタリング処理後の状態を示す概略図である。予めユーザによりセンタリングの対象となる画像領域(X3,Y3)〜(X2,Y2)が指定されているものとする。
【0063】
有効エリア開始画素(X1,Y1)に位置する画素が、ページメモリの始点座標(0,0)に位置するように、ページメモリに対する書き込み開始位置を設定してページメモリに有効エリアの画像データを書き込む。この書き込みにより、有効エリア開始画像(X1,Y1)の位置が、ページメモリの始点(0,0)と一致した印刷ページの始点へと移動する。センタリング処理では、さらにセンタリングの対象となる画像領域(X3,Y3)〜(X2,Y2)に対して(L1+L2)÷2=L3,(L4+L5)÷2=L6となるように、有効エリアの開始位置(X1,Y1)を算出する。すなわち、X1=L1−L3,Y1=L4−L6として算出すればよい。
【0064】
また、メモリ104への画像データの転送については、メモリに設定された2つの記憶領域を用いて、複数のバンドによって構成される画像データを交互に転送するリングバッファ転送を行うことも可能であり、リングバッファ転送を用いることでDMA転送に必要なメモリの使用領域を最小限とすることができる。
【0065】
上記の実施形態では、出力画像データにおいて、有効エリア以外の領域の画素を白色のデータに書き換えて、有効エリア以外の領域を全て白色画像として塗り潰しているが、これは、下地の色が白色であることが多いために、白色としているだけであって、白色に限られたものではない。例えば、下地の色が白色以外の色の場合には、下地と同じ色で塗り潰しを行うことが好ましい。この場合には制御レジスタ206に予め塗り潰す色を設定しておき、白塗り処理部202が、有効エリア以外の領域の画素を制御レジスタ206に設定された色の画素に書き換えることで、任意の色で塗り潰すこともできる。
【0066】
図3および図4に示したフローチャートに基づく処理は、ソフトウェアによって各ステップを実行するように構成されてもよく、各ステップを実行するハードウェアロジックを作製して、画像処理モジュールの内部にハードウェアロジックを設けてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 画像処理装置
101 画像伸長モジュール
102 画像処理モジュール
103 メモリコントローラ
104 メモリ
201 読み出しDMAコントローラ
202 白塗り処理部
203 画像演算部
204 書き込みDMAコントローラ
205 読み出しアクセスコントローラ
206 制御レジスタ
207 書き込みアクセスコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ページ分の画像データを、複数のバンドに分割してバンド毎に順次処理する画像処理装置であって、
画像データの書き込みおよび画像データの読み出しが可能なメモリと、
画像データをバンド毎に前記メモリへ書き込み、1バンド分の画像データの書き込みが完了する度に1バンド転送完了通知を出力する画像入力モジュールと、
前記画像入力モジュールから前記1バンド転送完了通知を受け取ると、前記画像入力モジュールが前記メモリへ書き込んだ画像データを読み出し、読み出した画像データに画像処理を施した出力画像データを作成する画像処理モジュールと、を含み、
前記画像処理モジュールは、
前記画像入力モジュールによって前記メモリに書き込まれた1バンド分の画像データから、画像処理を行うべき領域である有効エリアを判別し、前記有効エリアの画像データのみを前記メモリから読み出す読み出しアクセスコントローラと、
前記読み出しアクセスコントローラによって読み出された前記有効エリアの大きさと、前記出力画像データの大きさとを比較し、前記有効エリアの大きさのほうが小さい場合は、前記有効エリア内の画像データを前記出力画像データの中央に配置するとともに、有効エリアを除く残余の部分が下地となるように予め定める色の画像データを配置する画像処理部と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像入力モジュールは、圧縮された画像データに対して伸長処理を行う画像伸長モジュールであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記読み出しアクセスコントローラは、前記有効エリア以外の画像データについては、メモリからの読み出しを行わずに、前記画像入力モジュールに対して、1バンド分の画像データを読み出したことを示す1バンド読み出し完了通知を出力することを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理モジュールは、前記予め定める色を変更可能に設定するレジスタを備え、
前記画像処理部は、下地として前記レジスタに設定される色の画像データを配置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
1ページ分の画像データを、複数のバンドに分割してバンド毎に順次処理する画像処理方法であって、
画像入力モジュールが、画像データをバンド毎に前記メモリへ書き込み、1バンド分の画像データの書き込みが完了する度に1バンド転送完了通知を出力する画像入力ステップと、
画像処理モジュールが、前記画像入力モジュールから前記1バンド転送完了通知を受け取ると、前記メモリに書き込まれた画像データを読み出し、読み出した画像データに画像処理を施した出力画像データを作成する画像処理ステップと、を含み、
前記画像処理ステップは、
前記画像入力モジュールによって前記メモリに書き込まれた1バンド分の画像データから、画像処理を行うべき領域である有効エリアを判別し、前記有効エリアの画像データのみを前記メモリから読み出す読み出しステップと、
前記読み出しステップで読み出された前記有効エリアの大きさと、前記出力画像データの大きさとを比較し、前記有効エリアの大きさのほうが小さい場合は、前記有効エリア内の画像データを前記出力画像データの中央に配置するとともに、有効エリアを除く残余の部分が下地となるように予め定める色の画像データを配置する画像処理ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2011−15371(P2011−15371A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160240(P2009−160240)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】