説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】データ生成装置で実行された補正を画像処理装置および画像処理方法において重複して実行するのを防止する。
【解決手段】デジタルカメラの機種を特定する情報として画像データに付加される機種情報を取得し、その機種情報に基づき、デジタルカメラが人物の顔情報に基づき補正を行って画像データを生成する機能を有するか否かを判別する。そして、デジタルカメラが上記機能を有すると判別するとき、デジタルカメラにより生成された画像データに含まれる人物の顔領域を特定する顔情報を取得するとともに当該顔情報に基づき画像データを補正する処理については、実行しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デジタルカメラなどのデータ生成装置により生成された画像データに含まれる人物の顔領域を特定する顔情報を取得するとともに前記顔情報に基づき前記画像データを補正する機能を有する画像処理装置および画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記した機能を有するプリンターなどの印刷装置が近年数多く提供されている。また、デジタルカメラなどのデータ生成装置においても、上記機能と同種の機能を備えたものが数多く提供されている。例えば特許文献1に記載のプリントシステムでは、デジタルカメラが顔認識処理を実行して顔オブジェクトの位置情報や色情報などを顔オブジェクト情報として検出し、さらに原撮影画像データに添付し、または埋め込んで顔オブジェクト情報付き撮影画像データを生成する。一方、プリンターなどの印刷装置は、撮影画像に付加される顔オブジェクト情報に基づいて画像データに対して色補正を実行し、色補正済の画像を印刷する。このように、デジタルカメラによる顔認識結果を利用して印刷装置側で独自に補正をかける技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−213455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、顔認識により得られた顔情報に基づく補正処理に関しては、デジタルカメラ側とプリンター側のどちらで行ってもよいが、両方で行った場合は同種の補正処理を重複して行うこととなり、二度手間となるのみならず、意図しない補正がプリンター側で実行されてしまう可能性があった。さらに、顔認識処理には時間がかかり、かつ印刷開始前に行う必要があることから、プリンター側で顔認識に基づく補正処理を行った場合には印刷ボタン押下から印刷開始までの待ち時間が増えるという問題もあった。したがって、重複した補正処理を合理的に排除することが望まれている。
【0005】
この発明にかかるいくつかの態様は、データ生成装置で実行された補正を画像処理装置および画像処理方法において重複して実行するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一態様は、データ生成装置により生成された画像データに含まれる人物の顔領域を特定する顔情報を取得するとともに顔情報に基づき画像データを補正する補正部と、データ生成装置の機種を特定する情報として画像データに付加される機種情報を取得する機種情報取得部と、データ生成装置が人物の顔情報に基づき補正を行って画像データを生成する機能を有するか否かを、機種情報取得部により取得された機種情報に基づき判別する機能判別部とを備え、データ生成装置が機能を有すると機能判別部が判別するとき、補正部は顔情報の取得および補正を行わないことを特徴としている。
【0007】
また、この発明の他の態様は、データ生成装置により生成された画像データを取得する第1工程と、画像データに含まれる人物の顔領域を特定する顔情報を取得するとともに顔情報に基づき画像データを補正する第2工程と、データ生成装置の機種を特定する情報として画像データに付加される機種情報を取得する第3工程と、データ生成装置が人物の顔情報に基づき補正を行って画像データを生成する機能を有するか否かを、第3工程で取得された機種情報に基づき判別する第4工程とを備え、データ生成装置が機能を有すると第4工程で判別された場合には第2工程を行わないことを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(画像処理装置および画像処理方法)では、データ生成装置により生成された画像データに含まれる人物の顔領域を特定する顔情報を取得するとともに顔情報に基づき画像データを補正する機能を有しているが、これと同様の補正処理を実行する機構をデータ生成装置が有することがある。そして、データ生成装置が上記機能を有する場合、データ生成装置による補正が実行されて同補正が画像データに反映されている可能性が高い。そこで、本発明においては、画像データに付加される機種情報を取得し、その機種情報に基づいてデータ生成装置が機能を有すると判別したときには、顔情報の取得および補正を行わないように構成し、重複した処理が発生するのを防止している。
【0009】
ここで、機能を有するデータ生成装置の機種を記憶する記憶部を設け、機種情報取得部により取得された機種情報が記憶部に記憶された機種に含まれるか否かに基づいてデータ生成装置が機能を有するか否かを判別してもよい。これにより、当該判別を効率的、かつ確実に行うことができる。
【0010】
また、データ生成装置の新機種は次々と提供されるため、記憶部の記憶内容に基づき上記判別を精度良く行う上で、記憶部の記憶内容を更新することが非常に重要である。したがって、次のようにして新たなデータ生成装置の機種情報を記憶部に追加して更新するように構成するのが望ましい。例えば、機種情報取得部により取得された機種情報が記憶部に記憶された機種に含まれないと判別したとき、機能を有するデータ生成装置の機種として当該機種情報を記憶部に書き込むように構成してもよい。
【0011】
また、上記機能を有するデータ生成装置の機種を示す情報としてユーザーから入力される情報を受け付ける入力部を設け、入力部に入力された情報を記憶部に書き込むように構成してもよい。
【0012】
また、上記機能を有するデータ生成装置の機種を示す情報を記憶する外部装置にアクセスして上記機能を有するデータ生成装置の機種を示す情報を外部装置から受信する通信部を設け、通信部により受信された情報を記憶部に書き込むように構成してもよい。
【0013】
さらに、上記機能を有するデータ生成装置の機種を示す情報を記憶する記憶媒体にアクセスして上記機能を有するデータ生成装置の機種を示す情報を記憶媒体から読み出す情報読出部を設け、情報読出部により読み出された情報を記憶部に書き込むように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる画像処理装置の一実施形態を用いた印刷システムを示す図。
【図2】デジタルカメラで作成される画像ファイルの一例を示す図。
【図3】図1の印刷装置で実行される画像処理および印刷動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明にかかる画像処理装置の一実施形態を用いた印刷システムを示す図である。この印刷システムは、デジタルカメラ200の撮影により取得された画像データを、メモリカードM、USB(Universal Serial Bus)ケーブルや無線LAN(Local Area Network)等によって印刷装置100に転送し、印刷装置100で印刷するものである。すなわち、ここではユーザーがデジタルカメラ200で画像を撮影して画像データを生成し、その画像データをそのまま印刷装置100で読み込んで印刷する、いわゆるダイレクト印刷を想定しているが、本発明を適用可能な印刷システムはこれに限定されるものではない。つまり、デジタルカメラ200で生成した画像データをパーソナルコンピューターや携帯電話などに取り込み、パーソナルコンピューターから印刷装置100に画像データを送信して印刷する印刷システムにも本発明を適用することは可能である。
【0016】
デジタルカメラ200では、同図に示すように、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、CCD(Charge Coupled Device)204、GP(Graphic Processor)205およびI/F(Interface)206がバス207を介して相互に接続され、これらの間で情報の授受が可能となっている。そして、CPU201はROM202に格納されているプログラムに応じて各種演算処理を実行しながらデジタルカメラ200の制御を行う。このとき一時的に必要となるデータはRAM203に格納される。また、CCD204は、光学系208によって集光された被写体からの光学像を電気信号に変換して出力する。この光学系208は、複数のレンズおよびアクチュエータによって構成されており、アクチュエータによってフォーカス等を調整しながら被写体の光学像を複数のレンズによってCCD204の受光面に結像する。さらに、GP205は、CPU201から供給される表示命令に基づいて表示用の画像処理を実行し、得られた表示用画像データをLCD(Liquid Crystal Display)209に供給して表示させる。なお、デジタルカメラ200の機種によっては、上記演算処理のひとつとして顔認識処理を行うとともに顔認識処理により得られた顔情報に基づく補正処理を行う機能を有する場合がある。
【0017】
I/F206はデジタルカメラ200の入出力機能を提供するものであり、操作ボタン210、ジャイロセンサー211およびカードI/F回路212の間で情報を授受する際に、データの表現形式を適宜変換する装置である。I/F206に接続される操作ボタン210には、電源、モード切替え、シャッターなどのボタンや、各種機能を設定できる入力手段があり、これらによってユーザーはデジタルカメラ200を任意に制御して動作させることが可能となっている。また、ジャイロセンサー211はデジタルカメラ200によって被写体を撮影した際のカメラ本体の角度(水平面に対する角度)を示す信号を生成して出力する。デジタルカメラ200は、上記したカメラ本体の角度を含め、撮影時における種々の情報(例えば、露光、被写体等に関する情報)を生成する。それらの情報の一つである撮影情報に後述する顔情報が含まれる。なお、本実施形態では、デジタルカメラ200は、撮影情報をExif(Exchangeable Image File Format)情報に記載し、画像データに付加した画像ファイルを生成することができる構造となっている。
【0018】
また、カードI/F回路212はカードスロット213に挿入されたメモリカードMとの間で情報を読み書きするためのインタフェースである。さらに、I/F206は図示を省略するUSB、無線LANなどの外部機器との接続機能も有しており、有線または無線にて印刷装置100との間で画像ファイルの授受が可能となっている。なお、デジタルカメラ200で作成され、印刷装置100に与えられる画像ファイル(画像データ+Exif情報)については、後で詳述する。
【0019】
印刷装置100はデジタルカメラ200で撮像された画像を印刷する装置であり、次のように構成されている。印刷装置100では、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)104、GP105およびI/F106がバス107を介して相互に接続され、これらの間で情報の授受が可能となっている。CPU101はROM102およびEEPROM104に格納されているプログラムに応じて各種演算処理を実行するとともに印刷装置100の各部を制御し、本発明の「補正部」、「機種情報取得部」および「機能判別部」として機能する。また、CPU101が実行対象とするプログラムやデータについてはRAM103に一時的に格納される一方、印刷装置の電源が切断された後も保持しておくデータ、例えば後述する機能を有するデジタルカメラの機種をまとめたデータテーブル等については、本発明の「記憶部」に相当するEEPROM104に格納される。さらに、CPU101は必要に応じてGP105に対して表示命令を与え、この表示命令に応じてGP105が表示用の画像処理を実行し、その処理結果をLCD108に供給して表示させる。
【0020】
I/F106は、操作ボタン109、カードI/F回路110およびプリンターエンジンコントローラー111の間で情報を授受する際に、データの表現形式を適宜変換する装置である。印刷装置100では、操作ボタン109は印刷装置100のメニュー選択等を行う時に押されるように構成されている。また、カードI/F回路110は、カードスロット112と接続されており、このカードスロット112に挿入されたメモリカードMからデジタルカメラ200によって生成された画像ファイルを読み出す。なお、I/F106は、図示を省略するUSB、無線LANなどの外部機器との接続機能も有しており、有線通信または無線通信にてデジタルカメラ200との間で画像ファイルの授受が可能となっている。
【0021】
そして、印刷装置100は、メモリカードMを介して、あるいはデータ通信により画像データを受け取ると、CPU101により種々の処理を行うとともにプリンターエンジンコントローラー111によりプリンターエンジン113を制御し、これによって画像データに対応する画像を印刷する。以下、図2ないし図4に基づき画像ファイルの構成を説明した上で、本実施形態における画像処理動作および印刷動作について詳述する。
【0022】
図2は上記のように構成されたデジタルカメラで作成される画像ファイルの一例を示す図である。この実施形態では、デジタルカメラ200はCCD204で撮像された画像データをRAM203に格納する。また、デジタルカメラ200の機種によっては、被写体に人物が含まれているときに顔認識処理を行うとともに、顔認識処理により取得される人物の顔領域を特定する顔情報に基づいて顔色が最適となる様に原撮影画像データを補正して画像データを作成する機能を有するものがある。そして、デジタルカメラ200の機種を特定するための機種情報として例えばモデル名を参照することでデジタルカメラ200が上記機能を有するか否かを判別可能となっている。なお、顔認識方式および補正方式については従来より数多く提案されており、それらのうちいずれの方式を採用してもよい。
【0023】
また、この実施形態では、上記のように画像データ、本発明の「機種情報」に相当するモデル名などをRAM203に格納しているが、その記録方式としてディジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格Exif Ver.2.2.1を使用している。このExif画像ファイルの構造は、基本的には通常のJPEG(Joint Photographic Experts Group)画像形式そのものであり、その中にサムネイル画像や撮影関連データ等のデータをJPEGの規約に準拠した形で埋め込んだものである。
【0024】
本実施形態で使用する画像ファイルは、図2の左側部分に示すように、最初にSOI(Start of image)301がある。その後に、APP1(アプリケーション・マーカーセグメント)302、DQT(Define Quantization Table)303、DHT(Define Huffman Table)304の順となっている。さらにその後に、SOF(Start of Frame)305、SOS(Start of Stream)マーカー306、圧縮データ(Compress Data)307の順となっている。最後にEOI(End of Image)308がある。これらのうちAPP1はアプリケーションプログラムで使用するためのデータ領域として図2の中央部分に示す構造を有している。APP1の構造は、先頭にAPP1 Marker領域302aがある。そして、その次にLength領域302bがある。
【0025】
Length領域302bに続くデータの最初の6バイトの領域302cでは、識別子としてASCII文字の“Exif"が、その次に2バイトの0x00が続く。そこからTiff(Tagged Image File Format)形式でデータが格納されている。Tiff形式の最初の8バイトはTiffヘッダー(Header)領域302dである。
【0026】
また、Tiffヘッダー領域302dの次の0th IFD(IFD of main image)領域302eに、同図の右側部分に示すように、画像幅、画像高さ、モデル名等の画像関連情報(あるは、単に画像情報とも呼ぶ)が格納される。これらのうちモデル名はデジタルカメラ200の機種を特定する機種情報としてASCII文字で書き込まれる。そして、モデル名を参照することでデジタルカメラ200が顔認識処理により取得された顔情報に基づいて画像データを補正する機能を有しているか否かを判別可能となっている。
【0027】
そして、0th IFDの次に0th IFD Value領域302fがある。さらに、その次にExif IFD領域302gが設けられ、露出時間、Fナンバー、撮影シーンタイプなどの撮影関連情報(あるいは、単に撮影情報とも呼ぶ)が格納される。また、Exif IFD領域302gの次にExif IFD Value領域302hがある。
【0028】
次に、上記のようなデータ構造(図2)を有する画像ファイルがメモリカードMに保存されており、そのメモリカードMから画像ファイルを読み出し、印刷装置100により画像ファイルに含まれる各種情報に基づき所定の画像処理を実行して印刷する動作について、図3を参照しつつ説明する。
【0029】
図3は図1の印刷装置で実行される画像処理および印刷動作を示すフローチャートである。ユーザーが印刷装置100のカードスロット112にメモリカードMを挿入し、操作ボタン109を操作して印刷指令を与えると、CPU101がROM102に格納されているプログラムにしたがって装置各部を制御して以下の画像処理および印刷動作を実行する。なお、本実施形態では、画像処理のひとつとして顔認識処理および補正処理を実行するか否かを判別するために、顔情報に基づいて顔色が最適となる様に原撮影画像データを補正して画像データを作成する機能を有するデジタルカメラのモデル名が予め印刷装置100の工場出荷段階においてテーブル形式でEEPROM104に記憶されている。
【0030】
まず、CPU101は、印刷の対象となる画像ファイルをメモリカードMから取得し、ハフマン解凍処理を実行し、量子化DCT(Discrete Cosine Transform)係数を得る(ステップS10)。より具体的には、CPU101は、図2に示す画像ファイルからエントロピー符号化テーブルを取得し、圧縮データ307に含まれているY(輝度)成分、Cr(色差成分)、および、Cb(色差成分)のそれぞれのブロックのDC係数と、AC係数とを復号する。なお、この際、最小符号化単位であるMCU(Minimum Coded Unit)単位で復号を行う。
【0031】
また、CPU101は、ステップS10において得られた量子化DCT係数を逆量子化する(ステップS11)。具体的には、CPU101は、図2に示す画像ファイルから量子化テーブルを取得し、ステップS10において得られた量子化DCT係数に乗じることにより(逆量子化することにより)、DCT係数を得る。
【0032】
次に、CPU101は、画像を回転させるために必要な情報を、例えばRAM103にキャッシュする(ステップS12)。具体的には、JPEG方式によって圧縮された画像を回転させる場合、MCUのDC成分(直流成分)とAC成分(交流成分)のそれぞれを一度ハフマン展開しなければならない。ここで、DC成分については隣接するDC成分値の差分をハフマン符号化することから、隣接するMCUとの相関関係が問題となる。また、AC成分ではハフマン符号化処理によりそのデータ長が各MCUで一定にならず、JPEGデータのビットストリーム中のどのデータが求めるMCUのAC成分値であるかが不明となることが問題となる。そこで、ステップS12では、各MCUのDC成分値とAC成分のアドレスを求めてキャッシュしておくことにより、ローテート処理を可能とする。
【0033】
そして、CPU101はステップS11で得られたDCT係数に対して逆DCT演算を施すことによりもとの画素値を得る(ステップS13)。また、CPU101は、ステップS13の処理によって得られたYCC空間の画像をRGB(Red Green Blue)空間の画像と、HSB(Hue Saturation Brightness)空間の画像に変換する(ステップS14)。
【0034】
そして、CPU101はステップS13およびステップS14の処理において得られたYCC,RGB,HSBのそれぞれの画像をRAM103に格納して保持する。なお、このとき、データ量を削減するために画素を所定の割合で間引きした後にRAM103に格納してもよい(ステップS15)。
【0035】
また、CPU101は、ステップS15においてRAM103に格納されたYCC,RGB,HSBそれぞれの画像の成分について、ヒストグラムを計算する(ステップS16)。具体的には、RGB画像については、R,G,Bそれぞれの画像についてヒストグラムを計算する。その結果、画像を構成する各成分の分布を得る。
【0036】
上記したように、本実施形態では、ステップS10〜16の処理はMCU単位で行われており、CPU101は、全てのMCUについての処理が終了したことを確認するまで、ステップS10に戻って処理を繰り返して実行する。一方、全てのMCUについての処理が終了した場合には、次のステップS17に進む。
【0037】
このステップS17では、CPU101は、Exifタグからモデル名に関する情報を本発明の「機種情報」として読み込み、RAM103に格納する(ステップS17)。そして、CPU101は、読み込んだ情報に上記画像ファイルを生成したデジタルカメラ200のモデル名が含まれていない場合(ステップS18で「NO」)には、顔認識機能および補正機能を有さないデジタルカメラ200により画像ファイルが生成された、つまり画像データに対して顔認識処理および補正処理が施されていない可能性が非常に高いと判別し、印刷装置100側で顔認識処理および補正処理を行う(ステップS19〜S23)。すなわち、CPU101はステップS10〜S16を実行して得られた画像データに対して従来より多用されている顔認識処理、例えばテンプレートを適用した顔認識処理を行う(ステップS19)。そして、顔認識処理により画像データ中に人物の顔が認識された場合(ステップS20で「YES」)、CPU101は顔認識処理により得られた全ての顔位置から顔の平均顔色を取得した(ステップS21)後、顔色が最適になるようにエンハンスパラメータを計算する(ステップS22)。なお、エンハンスパラメータ計算の詳細については省略するが、RAM103に記憶したRGBヒストグラムに基づきコントラスト、明度、彩度、シャープネスなどの各画質パラメータの特徴量を抽出し、抽出した特徴量が所定の画質パラメータの特徴量に近づくようエンハンスのパラメータを設定する。一方、顔認識処理により画像データ中に人物の顔が認識されなかった場合(ステップS20で「NO」)、CPU101は、画像全体が最適になるようにエンハンスパラメータを計算する(ステップS23)。
【0038】
一方、CPU101は、ステップS17で取得した機種情報にデジタルカメラ200のモデル名が含まれている場合(ステップS18で「YES」)には、当該モデル名がEEPROM104に記憶されたデータテーブルに登録されているものに一致するかを検索する(ステップS24)。そして、一致するモデル名がデータテーブルに含まれていない場合(ステップS25で「NO」)には、CPU101はモデル名登録指定の有無に応じて印刷装置100による顔認識処理および補正処理の実行を制御する。この「モデル名登録指定」とは、EEPROM104に記憶された機種以外のモデル名を有するデジタルカメラ200等のデータ生成装置で画像ファイルが生成された場合における、印刷装置100での対応処理を指定するものである。これは、デジタルカメラ200等の新機種が次々と発売されることに対応するためのものであり、本実施形態では新たなモデル名を取得した場合、当該モデルのデジタルカメラ200は少なくとも印刷装置100の工場出荷以降に発売された新機種であり、顔認識機能および補正機能を有している蓋然性が高いとして次のような処理を実行するように、「モデル名登録指定あり」に初期設定している。もちろん、印刷装置100を使用するユーザーにより「モデル名登録指定なし」に設定することも可能である。
【0039】
このように本実施形態では、新たなモデル名を取得した場合、CPU101は「モデル名登録指定あり」に設定されているか否かを判別する(ステップS26)。そして、「モデル名登録指定なし」と判別した場合(ステップS26で「NO」)、デジタルカメラ200のモデル名が含まれていない場合(ステップS18で「NO」)と同様に、印刷装置100側で顔認識処理および補正処理を行う(ステップS19〜S23)。一方、「モデル名登録指定あり」と判別した場合(ステップS26で「YES」)、CPU101は、当該モデル名をEEPROM104に書き込んでデータテーブルに追加登録し(ステップS27)、補正処理の実行を規制するために「エンハンスなし」に設定する(ステップS28)とともに、ステップS29に進んで印刷装置100での顔認識処理(ステップS19)をスキップする。
【0040】
また、CPU101は、画像データに付加されたモデル名(機種情報)がEEPROM104に記憶されたデータテーブルに登録されているものに一致する場合(ステップS25で「YES」)、補正処理の実行を規制するために「エンハンスなし」に設定する(ステップS28)とともに、ステップS29に進んで印刷装置100での顔認識処理(ステップS19)をスキップする。
【0041】
このように、本実施形態では、画像データに付加されたモデル名に基づいてデジタルカメラ200が顔認識により得られる顔情報に基づき補正する機能を有するか否かを判別し、同機能を有していないと判別した場合のみ印刷装置100での顔認識処理および補正処理用のエンハンスパラメータ設定処理を行った上で、次のステップS29を実行する。
【0042】
このステップS29では、CPU101は、印刷対象となる画像ファイルにおいて、解凍処理の対象となる位置を示すファイルポインタをリセットし、処理位置を画像ファイルの先頭に復元する。そして、CPU101は、以下のステップS30〜S38を繰り返して画像データに基づいて画像を印刷する。
【0043】
CPU101は、RAM103にキャッシュされた1MCUライン分の画像データにハフマン解凍処理を施し、量子化DCT係数を得る(ステップS30)。ここで、1MCUラインとは、画像を回転させる場合には、画像を構成する列方向に1列のMCU群をいい、回転させない場合には、画像を構成する行方向に1列のMCU群をいう。そして、CPU101は、ステップS29の処理において得られた量子化DCT係数を逆量子化し(ステップS31)、さらにステップS30で得られたDCT係数に対して逆DCT演算を施すことによりもとのデータを得る(ステップS32)。
【0044】
こうして得られたYCC空間の画像を、CPU101はRGB空間の画像に変換する(ステップS33)。そして、CPU101は、エンハンスの実行が設定されている場合のみ、つまりステップS34で「YES」と判別した場合のみ、RGB空間の画像を構成する各画素に対してステップS22、S23において算出したエンハンスパラメータを適用することにより、印刷される画像を最適な色合いに補正し(ステップS35)、次のステップS36に進む。
【0045】
CPU101は、こうして補正された画像データに対して、リサイズ、回転などのレイアウト処理を施し(ステップS36)、プリンターエンジンコントローラー111の図示せぬバンドバッファに供給する。これを受けたプリンターエンジンコントローラー111は、プリンターエンジン113の各部を制御して画像データに対応する画像を印刷する(ステップS37)。そして、印刷処理が完了すると、CPU101はRAM103のキャッシュ状態を更新する(ステップS38)。そして、全MCUライン分について上記ステップS30〜S38が完了すると、一連の処理を終了する。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、デジタルカメラ200が顔認識処理により得られる顔情報に基づいて原撮影画像データを補正して画像データを作成する機能を有する場合、デジタルカメラ200による顔認識処理および補正処理が実行されて同補正が画像データに反映されている蓋然性が高いと判断し、デジタルカメラ200と同種の顔認識処理および補正処理は実行されない。このため、デジタルカメラ200等のデータ生成装置と重複する処理が印刷装置100で発生するのを防止している。その結果、意図しない補正が印刷装置100側で実行されるのを防止し、印刷ボタン押下から印刷開始までの待ち時間が増大するのを抑えることができる。
【0047】
また、上記機能を有するデジタルカメラ200等のデータ生成装置の機種をEEPROM104に予め登録し、画像データに付加されたモデル名(機種情報)が登録された機種と一致するか否かに基づいてデジタルカメラ200等が上記機能を有するか否かを判別している。したがって、ユーザーがどのような機種のデジタルカメラ200を用いて撮影したのかを問わず、上記判別を効率的、かつ確実に行うことができる。
【0048】
さらに、新たなモデル名を検出する(ステップS25で「NO」と判別する)毎に、当該モデル名をEEPROM104に追加登録して更新するように構成しているため、データ生成装置の新機種が印刷装置100の工場出荷以降に次々と提供された場合でも、機種登録によってデータ生成装置の新たな機種で実行される処理と重複する処理が印刷装置100で発生するのを防止することができる。
【0049】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、新たなモデル名を取得すると、自動的にEEPROM104に追加登録しているが、ユーザーが操作ボタン109を介してデジタルカメラ200などのデータ生成装置のモデル名を適宜追加登録することができるように構成してもよい。なお、この場合、操作ボタン109が本発明の「入力部」として機能する。
【0050】
また、新たなモデル名の追加登録方法として、印刷装置100やデジタルカメラ200のメーカー、データ提供会社などが管理する外部装置(サーバー)にアクセスして最新情報を受信して登録してもよい。例えば、これらの外部装置において、顔認識処理により得られる顔情報に基づいて原撮影画像データを補正して画像データを作成する機能を有するデジタルカメラなどのデータ生成装置の機種を示す情報が更新されることがある。そこで、ネットワークを介して外部装置にアクセスして最新情報を受信する通信部を印刷装置100に設け、CPU101が外部装置から受信した情報をEEPROM104に書き込んで追加登録するように構成してもよい。
【0051】
また、上記したデータ生成装置の機種に関する最新情報がメモリカードMなどの記憶媒体により提供される場合には、カードI/F回路110およびカードスロット112を介して記憶媒体にアクセスして最新情報を記憶媒体から読み出し、当該情報をEEPROM104に書き込んで追加登録するように構成してもよい。この場合、カードI/F回路110およびカードスロット112が本発明の「情報読出部」として機能する。
【0052】
また、上記実施形態では、画像データに顔情報およびシーン情報を付加した画像ファイルをメモリカードMに記録し、当該メモリカードMを介して印刷装置100に供給して印刷しているが、有線または無線通信により画像ファイルが印刷装置100に供給される場合も、本発明を適用することで上記した実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0053】
また、上記実施形態では、画像データに付加されたモデル名を本発明の「機種情報」として取得しているが、デジタルカメラ200等のデータ生成装置の機種を特定可能な情報を本発明の「機種情報」とすることができ、モデル名に限定されないことは言うまでもない。
【0054】
また、上記実施形態では、本発明にかかる画像処理装置および方法を印刷装置100に適用しているが、複数の電子機器から構成される印刷システムにも、また印刷装置以外の1つの電子機器(例えば複合機、ファクシミリ装置など)にも適用可能である。
【0055】
さらに、上記実施形態にかかる画像処理方法を実行するプログラムを、CD−ROM、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性メモリカードなどの記憶媒体に記憶させ、この記憶媒体からプログラムをコードとして読み出し、コンピューターにおいて実行してもよい。つまり、上記プログラムを記憶した記憶媒体、コンピュータープログラム自体も本発明の一実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
100…印刷装置、 101…CPU(補正部、機種情報取得部、機能判別部)、 102…ROM、 103…RAM、 104…EEPROM(記憶部)、 109…操作ボタン(入力部)、 110…カードI/F回路(情報読出部)、 112…カードスロット(情報読出部)、 200…デジタルカメラ(データ生成装置)、 307…圧縮データ(画像データ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ生成装置により生成された画像データに含まれる人物の顔領域を特定する顔情報を取得するとともに前記顔情報に基づき前記画像データを補正する補正部と、
前記データ生成装置の機種を特定する情報として前記画像データに付加される機種情報を取得する機種情報取得部と、
前記データ生成装置が人物の顔情報に基づき補正を行って画像データを生成する機能を有するか否かを、前記機種情報取得部により取得された機種情報に基づき判別する機能判別部とを備え、
前記データ生成装置が前記機能を有すると前記機能判別部が判別するとき、前記補正部は顔情報の取得および補正を行わない
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記機能を有するデータ生成装置の機種を記憶する記憶部を備え、
前記機能判別部は、前記機種情報取得部により取得された機種情報が前記記憶部に記憶された機種に含まれるか否かに基づいて前記データ生成装置が前記機能を有するか否かを判別する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記機能判別部は、前記機種情報取得部により取得された機種情報が前記記憶部に記憶された機種に含まれないと判別したとき、前記機能を有するデータ生成装置の機種として当該機種情報を前記記憶部に書き込む請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記機能を有するデータ生成装置の機種としてユーザーから入力される情報を受け付ける入力部を備え、
前記機能判別部は、前記入力部に入力された情報を前記記憶部に書き込む請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記機能を有するデータ生成装置の機種を示す情報を記憶する外部装置にアクセスして前記機能を有するデータ生成装置の機種を示す情報を前記外部装置から受信する通信部を備え、
前記機能判別部は、前記通信部により受信された情報を前記記憶部に書き込む請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記機能を有するデータ生成装置の機種を示す情報を記憶する記憶媒体にアクセスして前記機能を有するデータ生成装置の機種を示す情報を前記記憶媒体から読み出す情報読出部を備え、
前記機能判別部は、前記情報読出部により読み出された情報を前記記憶部に書き込む請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
データ生成装置により生成された画像データを取得する第1工程と、
前記画像データに含まれる人物の顔領域を特定する顔情報を取得するとともに前記顔情報に基づき前記画像データを補正する第2工程と、
前記データ生成装置の機種を特定する情報として前記画像データに付加される機種情報を取得する第3工程と、
前記データ生成装置が人物の顔情報に基づき補正を行って画像データを生成する機能を有するか否かを、前記第3工程で取得された機種情報に基づき判別する第4工程とを備え、
前記データ生成装置が前記機能を有すると前記第4工程で判別された場合には前記第2工程を行わないことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−173994(P2012−173994A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35434(P2011−35434)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】