説明

画像処理装置および画像形成装置

【課題】異なるライン数の画像データを用いて画像処理を行う複数種類の画像処理部を備えた画像処理装置において、回路規模の縮小を図る。
【解決手段】ラインバッファ回路BL1〜BL6とディレイ調整部53とを備え、フィルタ処理を行う場合には、ラインバッファ回路BL1〜BL6に記憶させた6ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて空間フィルタ処理部17に出力し、膨張処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1〜BL2に記憶させた2ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて膨張処理部14cに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数ライン分の画像データを同期させて出力する信号処理部を備えた画像処理装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば画像処理装置に備えられるラインバッファなど、各種の信号処理装置においてFIFO(First-in-First-out;先入れ先出し)メモリを備えた記憶装置が用いられている。
【0003】
また、FIFOメモリの動作速度を高速化させるための技術として、例えば特許文献1には、FIFOメモリを2つのメモリ回路からなるデュアルポートメモリとし、これら各メモリ回路に対して書き込みと読み出しとを交互に行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−3782号公報(平成10年1月6日公開)
【特許文献2】特開2002−232708号公報(平成14年8月16日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、異なるライン数の画像データを用いて画像処理を行う複数種類の画像処理部を備えた従来の画像処理装置では、これら各画像処理部で使用される画像データのライン数に応じた数のラインバッファを備えた信号処理回路を画像処理部毎に備える必要があり、画像処理装置の回路規模が大きくなるという問題があった。なお、上記複数の処理としては、例えば、フィルタ処理(例えば網点や下地領域の画像データに対して平坦化やモアレ除去を行うためのフィルタ処理)、領域分離処理(エッジ判定処理、色判定処理、網点判定処理など)、回転処理、変倍処理、ラベリング処理、孤立点の除去を行うための膨張縮退処理などが挙げられる。
【0005】
また、上記特許文献1の技術を画像処理装置のラインバッファに適用する場合、FIFOメモリに備えられる各メモリ回路の記憶ワード数(記憶する信号の画素数)を主走査方向の画素数の1/2として互いに等しくする必要がある。このため、メモリ回路に記憶させる1ラインあたりのワード数が互いに異なる複数の画像処理を行う場合に、上記のFIFOメモリを共用できないので、上記の各画像処理を行う画像処理部毎に異なる信号処理回路を設ける必要があり、回路規模が増大してしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なるライン数の画像データを用いて画像処理を行う複数種類の画像処理部を備えた画像処理装置において、回路規模の縮小を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、上記の課題を解決するために、複数ラインのデータからなる画像データに対して画像処理を施す画像処理装置であって、nライン分(nは2以上の整数)のデータに基づいて第1処理を行う第1処理部と、mライン分(mはn>mの整数)のデータに基づいて第2処理を行う第2処理部と、複数ライン分のデータを同期させて出力する信号処理部とを備え、上記信号処理部は、それぞれが1ライン分のデータを記憶する(n−1)個以上のラインバッファと、入力された1ライン分のデータを遅延させて出力するディレイ調整部とを備え、上記第1処理を行う場合には、(n−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(n−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記第1処理部に出力し、上記第2処理を行う場合には、(m−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(m−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記第2処理部に出力することを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、信号処理部は、それぞれが1ライン分のデータを記憶する(n−1)個以上のラインバッファと、入力された1ライン分のデータを遅延させて出力するディレイ調整部とを備えている。そして、第1処理を行う場合には、(n−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(n−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記第1処理部に出力し、第2処理を行う場合には、(m−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(m−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記第2処理部に出力する。したがって、第1処理部に入力するnライン分のデータの同期と、第2処理部に入力するmライン分のデータの同期とを共通の信号処理部を用いて行うことができる。これにより、第1処理部に対応する信号処理部と第2処理部に対応する信号処理部とを別々に備える場合に比べて、回路規模を小さくすることができる。
【0009】
また、上記第2処理部は、注目画素を含むmライン分の2値データを参照し、注目画素の周囲における所定数の画素に上記2値データの値が1の画素が含まれている場合に当該注目画素の2値データの値を1とする膨張処理を行う膨張処理部と、注目画素を含むmライン分の2値データを参照し、注目画素の周囲における上記所定数の画素に上記2値データの値が0の画素が含まれている場合に当該注目画素の2値データを0とする縮退処理を行う縮退処理部とを備え、上記信号処理部は、入力された1ライン分のデータを遅延させて出力する第2ディレイ調整部と、上記複数のラインバッファのうちの少なくとも一部に入力するデータの入力元を、上記第1処理の場合と上記第2処理の場合とで切り替える切替スイッチとを備え、上記第2処理を行う場合、(m−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(m−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記膨張処理部および上記縮退処理部のうちの一方に出力し、上記一方の処理部から出力されるmライン分のデータのうちの(m−1)ライン分を上記一方の処理部へのデータの出力に用いたラインバッファとは異なるラインバッファに入力し、上記一方の処理部から出力されるmライン分のデータのうちの残りの1ライン分を上記第2ディレイ調整部に入力し、これらmライン分のデータを同期させて上記膨張処理部および上記縮退処理部のうちの他方の処理部に出力する構成としてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、共通の信号処理部を用いて、第1処理、膨張処理、および縮退処理を行うことができる。したがって、これら各処理に対応する信号処理部をそれぞれ設ける場合に比べて、回路規模を小さくすることができる。
【0011】
また、注目画素が属する領域の画像種別を判別し、判別結果を示す領域識別信号を生成する領域分離処理部を備え、上記第2処理部は、上記領域識別信号に対して上記膨張処理および上記縮退処理を施す構成であってもよい。
【0012】
上記の構成によれば、領域識別信号に膨張処理および縮退処理を施すことにより、この領域識別信号に含まれる孤立点などのノイズを除去することができる。
【0013】
また、上記第2処理部は、画像データに対して上記膨張処理および上記縮退処理を施す構成であってもよい。
【0014】
上記の構成によれば、画像データに膨張処理および縮退処理を施すことにより、この画像データに含まれる孤立点などのノイズを除去することができる。
【0015】
また、上記第2処理部は、上記第2処理として画像データに回転処理を施す構成であってもよい。上記の構成によれば、画像データに膨張処理および縮退処理を施すことができる。
【0016】
また、上記第2処理部は、上記第2処理として画像データに変倍処理を施す構成であってもよい。上記の構成によれば、画像データに変倍処理、すなわち、拡大処理および縮小処理の少なくとも一方を施すことができる。
【0017】
また、上記第1処理部は、上記第1処理として画像データに回転処理を施し、上記第2処理部は、上記第2処理として画像データに変倍処理を施す構成であってもよい。上記の構成によれば、画像データに回転処理および変倍処理を施すことができる。
【0018】
また、上記第1処理部は、上記第1処理として画像データに空間フィルタ処理を施す構成であってもよい。
【0019】
上記の構成によれば、画像データに空間フィルタ処理を施すことにより、画像データに対して例えば強調処理や平滑化処理などを施すことができる。
【0020】
また、上記信号処理部は、上記第1処理を行うか上記第2処理を行うかにかかわらず、上記各ラインバッファから出力されるデータを上記第1処理部および上記第2処理部の両方に出力するとともに、上記第1処理部および上記第2処理部にこれら各部における処理を実行するか否かを示すイネーブル信号を出力する出力制御部を備えている構成としてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、上記第1処理を行うか上記第2処理を行うかにかかわらず、上記各ラインバッファから出力されるデータを上記第1処理部および上記第2処理部の両方に出力するので、上記第1処理を行うか上記第2処理を行うかによって各ラインバッファから出力されるデータの出力先を切り替える切替スイッチを設ける必要がない。このため、上記信号処理部の回路規模をより小さくすることができる。また、第1処理部および第2処理部では、イネーブル信号に応じて第1処理あるいは第2処理を行うか否かを切り替えることができるので、これら各処理部において誤った処理が行われることを防止できる。
【0022】
また、第2処理を行う場合に、上記第2処理部にデータを出力するラインバッファ以外のラインバッファの動作を停止させる構成としてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、使用しないラインバッファの動作を停止させることにより、消費電力を低減することができる。
【0024】
本発明の画像形成装置は、上記したいずれかの画像処理装置と、上記画像処理装置から出力される画像データに応じた画像を記録材上に形成する画像形成部とを備えている。
【0025】
したがって、この画像形成装置に備えられる画像処理装置の回路規模を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の画像処理装置は、上記信号処理部が、それぞれが1ライン分のデータを記憶する(n−1)個以上のラインバッファと、入力された1ライン分のデータを遅延させて出力するディレイ調整部とを備え、上記第1処理を行う場合には、(n−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(n−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記第1処理部に出力し、上記第2処理を行う場合には、(m−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(m−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記第2処理部に出力する。
【0027】
それゆえ、第1画像処理部に対応する信号処理部と第2画像処理部に対応する信号処理部とを別々に備える場合に比べて、回路規模を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について説明する。
【0029】
(1.全体構成)
図2は、本実施形態に係るカラー画像処理装置10を備えたデジタルカラー複合機(画像形成装置)1の概略構成を示すブロック図である。
【0030】
カラー画像入力装置20は、例えば、電荷結合素子(Charge Coupled Device;以下、CCDと称する)を備えたスキャナ部より構成され、原稿画像が記録された紙からの反射光像を、CCDにてRGBのアナログ信号として読み取り、カラー画像処理装置10に入力するものである。
【0031】
カラー画像処理装置10は、図2に示すように、A/D変換部11、シェーディング補正部12、入力階調補正部13、領域分離処理部14、色補正部15、黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17、出力階調補正部18、および、階調再現処理部19を備えている。そして、上記カラー画像処理装置10に、カラー画像入力装置20とカラー画像出力装置30とが接続され、全体としてデジタルカラー複合機1を構成している。また、デジタルカラー複合機1には、操作パネル40が備えられている。
【0032】
カラー画像入力装置20にて読み取られたアナログ信号は、カラー画像処理装置10内を、A/D変換部11、シェーディング補正部12、入力階調補正部13、領域分離処理部14、色補正部15、黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17、出力階調補正部18、および階調再現処理部19の順で送られ、CMYKのデジタルカラー信号として、カラー画像出力装置30へ出力される。
【0033】
A/D(アナログ/デジタル)変換部11は、入力されてきたRGBのアナログ信号をデジタル信号に変換するものである。シェーディング補正部12は、A/D変換部11より送られてきたRGBのデジタル信号に対して、カラー画像入力装置20の照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理を施すものである。
【0034】
入力階調補正部13は、シェーディング補正部12にて各種の歪みが取り除かれたRGB信号(RGBの反射率信号)のカラーバランスを整えるとともに、濃度信号などのカラー画像処理装置10に採用されている画像処理システムの扱い易い信号に変換する。また、入力階調補正部13は、下地濃度の除去やコントラストなどの画質調整処理を行う。
【0035】
領域分離処理部14は、RGB信号によって表現されている入力画像の各画素を、例えば文字領域、網点領域、写真領域(印画紙写真領域)などの複数の領域に分離するものである。そして、領域分離処理部14は、上記分離結果に基づき、入力画像の各画素がどの領域に属しているかを示す領域識別信号を領域識別信号補正部14bへ出力するとともに、入力階調補正部13から出力された入力信号をそのまま後段の色補正部15に出力する。
【0036】
領域分離処理の方法は特に限定されるものではなく、従来から公知の種々の方法を用いることができる。本実施形態では、特許文献2に開示されている領域分離方法を用いて、入力画像データを文字領域、網点領域、印画紙写真領域、および下地領域に分離するものとする。
【0037】
特許文献2の方法では、注目画素を含むn×mのブロック(例えば、15×15画素)における最小濃度値と最大濃度値の差分である最大濃度差と、隣接する画素間における濃度差の絶対値の総和である総和濃度繁雑度とを算出し、最大濃度差と予め定められた最大濃度差閾値との比較、および総和濃度繁雑度と総和濃度繁雑度閾値との比較を行う。そして、これらの比較結果に応じて注目画素を、文字領域・網点領域またはその他領域(下地・印画紙写真領域)に分類する。
【0038】
具体的には、下地領域の濃度分布は、通常、濃度変化が少ないので最大濃度差及び総和濃度繁雑度ともに非常に小さくなる。また、印画紙写真領域(例えば、印画紙写真のような連続階調領域を、ここでは、印画紙写真領域と表現する。)の濃度分布は、滑らかな濃度変化をしており、最大濃度差及び総和濃度繁雑度はともに小さく、かつ、下地領域よりは多少大きくなる。すなわち、下地領域や印画紙写真領域(その他領域)においては、最大濃度差及び総和濃度繁雑度とも小さい値をとなる。
【0039】
そこで、最大濃度差が最大濃度差閾値よりも小さく、かつ、総和濃度繁雑度が総和濃度繁雑度閾値よりも小さいと判断されたときは、注目画素はその他領域(下地・印画紙写真領域)であると判定し、そうでない場合は、文字・網点領域であると判定する。また、下地・印画紙写真領域であると判定した場合には、最大濃度差及び総和濃度繁雑度に応じて印画紙写真領域と下地領域とにさらに分類する。
【0040】
また、上記文字領域・網点領域であると判断された場合、算出された総和濃度繁雑度と最大濃度差に文字・網点判定閾値を掛けた値との比較を行い、比較結果に基づいて文字領域または網点領域に分類する。
【0041】
具体的には、網点領域の濃度分布は、最大濃度差は網点によりさまざまであるが、総和濃度繁雑度が網点の数だけ濃度変化が存在するので、最大濃度差に対する総和濃度繁雑度の割合が大きくなる。一方、文字領域の濃度分布は、最大濃度差が大きく、それに伴い総和濃度繁雑度も大きくなるが、網点領域よりも濃度変化が少ないため、網点領域よりも総和濃度繁雑度は小さくなる。
【0042】
そこで、最大濃度差と文字・網点判定閾値との積よりも総和濃度繁雑度が大きい場合には網点領域の画素であると判別し、最大濃度差と文字・網点判定閾値との積よりも総和濃度繁雑度が小さい場合には文字領域の画素であると判別する。
【0043】
領域識別信号補正部14bは、領域識別信号に対して後述する膨張処理および縮退処理を行うことにより、孤立点などのノイズを除去する補正処理を行う。そして、上記の補正処理を施した領域識別信号を、黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17、および階調再現処理部19に出力する。領域識別信号補正部14bの詳細については後述する。
【0044】
色補正部15は、色を忠実に再現するために、不要吸収成分を含むCMY色材の分光特性に基づいた色濁りを取り除く処理を行う。
【0045】
黒生成下色除去部16は、色補正後のCMYの3色信号から黒(K)信号を生成する黒生成と、元のCMY信号が重なる部分を差し引いて新たなCMY信号を生成する処理とを行うことにより、CMYの3色信号をCMYKの4色信号に変換する。
【0046】
空間フィルタ処理部17は、黒生成下色除去部16から入力されるCMYK信号の画像データに対して、領域識別信号を基にデジタルフィルタによる空間フィルタ処理を行い、空間周波数特性を補正することによって、出力画像のぼやけや粒状性劣化を軽減する。空間フィルタ処理部17の詳細については後述する。
【0047】
出力階調補正部18は、濃度信号などの信号をカラー画像出力装置30の特性値である網点面積率に変換する出力階調補正処理を行うものである。
【0048】
階調再現処理部19は、空間フィルタ処理部17と同様に、CMYK信号の画像データに対して、領域識別信号を基に所定の処理を施すものであり、最終的に画像の階調を擬似的に再現できるように処理する階調再現処理を施す。
【0049】
例えば、領域分離処理部14によって文字領域として分離された領域は、特に黒文字または色文字の再現性を高めるために、空間フィルタ処理部17による空間フィルタ処理において鮮鋭強調処理が施されて高周波成分が強調され、階調再現処理部19によって高周波成分の再現に適した高解像度のスクリーンを用いた二値化または多値化処理が施される。
【0050】
また、領域分離処理部14によって網点領域として分離された領域に関しては、空間フィルタ処理部17によって、入力網点成分を除去するためのローパス・フィルタ処理が施され、階調再現処理部19によって、階調性を重視したディザスクリーンを用いた多値ディザ処理が施される。
【0051】
また、領域分離処理部14にて写真領域として分離された領域に関しては、階調再現処理部19によって、階調再現性を重視したスクリーンを用いた二値化または多値化処理が行われる。
【0052】
上述した各処理が施された画像データは、図示しない記憶部に一旦記憶され、所定のタイミングで読み出されてカラー画像出力装置30に出力される。
【0053】
カラー画像出力装置30は、入力された画像データに対応する画像を記録媒体(例えば紙等)上に出力するものである。カラー画像出力装置30における画像の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、電子写真方式やインクジェット方式などを用いることができる。なお、以上の処理は図示しない主制御部(CPU(Central Processing Unit))により制御される。
【0054】
操作パネル40は、ユーザからの指示入力を受け付けるものであり、操作パネル40に入力された情報はカラー画像処理装置10の主制御部(図示せず)に送られる。操作パネル40としては、例えば、液晶ディスプレイ等の表示部と設定ボタン等の操作部とが一体化されたタッチパネル等を用いることができる。主制御部は、操作パネル40に入力された情報に基づいてカラー画像入力装置20、カラー画像処理装置10、およびカラー画像出力装置30における各部の動作を制御する。
【0055】
(2.信号処理回路17)
本実施形態では、領域識別信号補正部14bと空間フィルタ処理部17とが、共通の信号処理回路(図1に示す信号処理回路50)を用いてそれぞれの処理を行うようになっている。
【0056】
図1は、信号処理回路50、空間フィルタ処理部17、および領域識別信号補正部14bの概略構成を示すブロック図である。
【0057】
空間フィルタ処理部17(第1処理部)は、処理対象の画像データにおける注目画素を含む複数の画素からなるブロックに対して、このブロックと同じ大きさのマトリクスの各画素に割り当てられたフィルタ係数を用いた画素値とのコンボリューション演算により、上記ブロック内の各画素について注目画素に対するフィルタ処理(強調処理、平滑化処理、あるいは強調処理および平滑処理の両方の特性を有する処理等)の結果を算出する。
【0058】
図3は、空間フィルタ処理部17において用いられるフィルタを示す説明図である。この図に示すように、本実施形態では、注目画素を中心とする7画素×7画素のフィルタを用いている。具体的には、空間フィルタ処理部17は、主走査方向7画素×副走査方向7画素(7ライン)の画像データを信号処理回路50から入力され、この入力された画像データにおける各画素と、これら各画素に対応するフィルタ係数とを乗算し、各画素についての乗算結果の総和を算出し、算出した総和を所定値(フィルタ内の各画素についてのフィルタ係数の総和に応じて設定される。本実施形態では186。)で除算した値を注目画素のフィルタ処理結果とする。
【0059】
なお、空間フィルタ処理部17は、上記のフィルタ処理をCMYKの各色成分について行う。このため、信号処理回路50をCMYKの各色毎に、すなわち4つ備えている。ただし、これに限らず、信号処理回路50を1つだけ備え、CMYKの各色についての処理を1色ずつ順次行うようにしてもよい。
【0060】
領域識別信号補正部(第2処理部)14bは、図1に示しように、膨張処理部14cと縮退処理部14dとを備えている。
【0061】
膨張処理部14cは、注目画素を含む主走査方向3画素×副走査方向3画素(3ライン)の領域分離信号を信号処理回路50から入力され、図4に示すように、この入力された領域分離信号における注目画素の周囲8画素の値を参照し、これら8画素の中に文字領域と判定された画素が1画素でも存在する場合、この注目画素を文字領域とする膨張処理を各画素について行う。また、膨張処理部14cは、膨張処理を施した領域分離信号を信号処理回路50に入力信号2として入力する。
【0062】
なお、膨張処理部14cは、入力された領域識別信号を文字領域であるか否かを示す2値データ(2値画像データ)とみなして膨張処理を行う。すなわち、注目画素が文字領域である場合には当該画素の画素値を1、文字領域でない場合には当該画素の画素値を0とみなして処理を行う。そして、膨張処理後には、この膨張処理の結果を反映させた、各画素が文字領域、網点領域、印画紙写真領域、および下地領域のうちのいずれに属するかを示す領域識別信号を出力する。より具体的には、膨張処理によって画素値1とされた画素については文字領域とし、画素値0とされた画素については膨張処理部14cに入力されたときの領域識別信号が示す領域(網点領域、印画紙写真領域、および下地領域のうちのいずれか)とする。
【0063】
縮退処理部14dは、信号処理回路50を介して膨張処理部14cによって膨張処理を施された後の領域分離信号を入力され、注目画素の周囲8画素に領域と判別されている画素が1画素でもある場合、この注目画素を下地領域とする縮退処理を各画素について行う。例えば、図5に示すように、第2〜第4ラインの画像データに基づいて第3ラインの注目画素に対する膨張処理が行われた後、膨張処理後の第1〜第3ラインの画像データに基づいて第2ラインの注目画素に対する縮退処理が行われる。なお、縮退処理部14dは、注目画素の周辺8画素に網点領域の画素がある場合には、注目画素の判定結果の変更(縮退処理)は行わない。これは、網点上に文字が記載されている場合があり(例えば地図など)、このような場合に文字が削除されるのを防ぐためである。そして、この縮退処理を施した領域分離信号を黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17、および階調再現処理部19に出力する。
【0064】
また、膨張処理部14cは、入力された領域識別信号を下地領域であるか否かを示す2値データ(2値画像データ)とみなして縮退処理を行う。すなわち、注目画素が下地領域である場合には当該画素の画素値を1、下地領域でない場合には当該画素の画素値を0とみなして処理を行う。そして、縮退処理後には、この縮退処理の結果を反映させた、各画素が文字領域、網点領域、印画紙写真領域、および下地領域のうちのいずれに属するかを示す領域識別信号を出力する。より具体的には、縮退処理によって画素値1とされた画素については下地領域とし、画素値0とされた画素については縮退処理部14dに入力されたときの領域識別信号が示す領域(文字領域、網点領域、および印画紙写真領域のうちのいずれか)とする。
【0065】
これにより、画像読取時の読み取り誤差等に起因する文字領域内における文字領域以外の画素の孤立点(ノイズ)を除去するように領域分離信号を補正できる。なお、本実施形態では、膨張処理部14cによる膨張処理を行った後に縮退処理部14dによる縮退処理を行うようにしているが、これに限らず、縮退処理部14dによる縮退処理を行った後に膨張処理部14cによる膨張処理を行うようにしてもよい。この場合、画像読取時の読み取り誤差等に起因する下地領域内における文字領域の画素の孤立点(ノイズ)を除去することができる。
【0066】
なお、領域識別信号は画素毎に判定された信号であるので、CMYKに対応する4つの信号処理回路50を備える場合には、これら4つの信号処理回路50のうちのいずれか1つを用いて膨張処理および縮退処理を行えばよい。
【0067】
信号処理回路50は、(1)黒生成下色除去部16から出力された画像データを所定量(例えば主走査方向7画素×副走査方向7ライン)毎に空間フィルタ処理部17に出力する処理(フィルタ処理モード)と、(2)領域分離処理部14から出力された領域分離信号を所定量(例えば主走査方向3画素×副走査方向3ライン)毎に領域識別信号補正部14bの膨張処理部14cに出力し、膨張処理部14cから入力される膨張処理後の領域分離信号を縮退処理部14dに出力する処理(領域識別信号補正モード)とを選択的(排他的)に行う。
【0068】
なお、カラー画像処理装置10は、黒生成下色除去部16から出力された画像データを一時的に格納する第1記憶手段(図示せず)と、領域分離処理部14から出力された領域分離信号を一時的に格納する記憶手段(図示せず)とを備えており、主制御部が、上記(1)の処理(フィルタ処理モード)を行う場合には第1記憶手段に記憶させておいた上記画像データを信号処理回路50に入力させ、上記(2)の処理(領域識別信号補正モード)を行う場合には第2記憶手段に記憶させておいた上記領域分離信号を信号処理回路50に入力させるようになっている。
【0069】
信号処理回路50の構成について具体的に説明する。信号処理回路50は、図1に示すように、入力ポートPi1〜Pi4、クロックゲート部51、切替スイッチ52、ディレイ調整部53、ディレイ調整部54、ラインバッファ回路LB1〜LB6、および出力ポートPo1〜Po3を備えている。
【0070】
ディレイ調整部53は、入力ポートPi1を介して入力される1ライン分の入力信号1(フィルタ処理モードでは黒生成下色除去部16から出力された画像データ、領域識別信号補正モードでは領域分離処理部14から出力された領域分離信号)、および主制御部から入力されるイネーブル信号1を、後述する各ラインバッファ回路(フィルタ処理モードではラインバッファ回路LB1〜LB6、領域識別信号補正モードでは少なくともラインバッファ回路LB1,LB2)からの出力信号と同期させるように遅延させて出力ポートPo1,Po2に出力するものである。なお、出力ポートPo1は空間フィルタ処理部17に接続され、出力ポートPo2は膨張処理部14cに接続されている。
【0071】
なお、イネーブル信号には、1ページの有効期間を表すページイネーブル信号、1ラインの有効期間を表すラインイネーブル信号、およびデータの有効/無効を表すデータイネーブル信号の3種類の制御信号が含まれる。信号処理回路50、空間フィルタ処理部17、および領域識別信号補正部14bはこのイネーブル信号に基づいて各種制御を行う。図6は、これら3種類のイネーブル信号のタイミングチャートである。ページイネーブル信号はアサートされている期間(ハイレベルの期間)が画像の1ページを表す。ラインイネーブル信号はアサートされている期間が1ラインを表している。データイネーブル信号はアサートされている期間が1データを表している。
【0072】
ディレイ調整部54は、切替スイッチ52を介して入力される入力信号2(膨張処理部14cによって膨張処理を施された領域識別信号)およびイネーブル信号2をラインバッファ回路LB3,LB4からの出力信号と同期させるように遅延させて出力ポートPo3に出力するものである。なお、出力ポートPo3は縮退処理部14dに接続されている。
【0073】
切替スイッチ52は、主制御部から入力ポートPi3を介して入力される切替信号に基づいて、信号処理回路50内の各部材の接続状態を、(1)空間フィルタ処理部17に画像データを出力するための状態(フィルタ処理モード)と、(2)領域識別信号補正部14bに領域分離信号を出力するための状態(領域識別信号補正モード)とに切り替える。
【0074】
具体的には、フィルタ処理モード(例えば切替信号が「0」のとき)では、ラインバッファ回路LB2から出力される画像データおよびイネーブル信号をラインバッファ回路LB3に入力する。この場合、ラインバッファ回路LB1〜LB6およびディレイ調整部53は、黒生成下色除去部16から入力される副走査方向7ライン分の画像データを互いに同期したタイミングで出力する7ラインバッファとして機能する。
【0075】
一方、領域識別信号補正モード(例えば切替信号が「1」のとき)では、入力ポートPi2を介して膨張処理部14cから入力される膨張処理後の領域分離信号(入力信号2)およびイネーブル信号2をラインバッファ回路LB3に入力する。この場合、ラインバッファ回路LB1,LB2およびディレイ調整部53は、領域分離処理部14から入力される領域分離信号を互いに同期したタイミングで出力する3ラインバッファとして機能し、ラインバッファ回路LB3,LB4およびディレイ調整部54は膨張処理部14cから入力される膨張処理後の領域分離信号を互いに同期したタイミングで出力する3ラインバッファとして機能する。
【0076】
クロックゲート部51は、主制御部から入力ポートPi3を介して入力される切替信号(レジスタ信号)に応じて、領域識別信号補正モードの選択期間中に、ラインバッファ回路LB5,LB6へのクロック信号の入力を遮断し、ラインバッファ回路LB5,LB6の動作を停止させる。つまり、領域識別信号補正モードではラインバッファ回路LB5,LB6を使用しないので、ラインバッファ回路LB5,LB6へのクロック信号の入力を遮断してラインバッファ回路LB5,LB6の動作を停止させる。これにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、空間フィルタ処理において7ライン分の画像データを用いているが、これに限るものではない。例えば、15ライン分の画像データを用いる場合、信号処理回路50に14ライン分のラインバッファ回路を備えればよい。この場合、膨張処理および縮退処理には合計4ライン分のラインバッファ回路を用いればよいので、領域識別信号補正モードにおいて10ラインバッファ回路についてクロック信号の供給を停止させることができる。したがって、消費電力の削減効果がより大きくなる。また、本実施形態では、膨張処理を文字領域について行い、縮退処理を下地領域について行っているが、これに限らず、例えば、膨張処理を文字領域および写真領域について行い、縮退処理を下地領域について行うようにしてもよい。この場合、膨張処理および縮退処理には合計8ライン分のラインバッファ回路が必要となるが、15ライン分の画像データを用いる場合には領域識別信号補正モードにおいて6ラインバッファ回路についてクロック信号の供給を停止させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、切替スイッチ52の動作を切り替えるための切替信号に基づいてクロックゲート部51の動作を制御しているが、これに限らず、上記切替信号とは異なる信号(レジスタ)を用いてもよい。
【0079】
また、本実施形態ではクロックゲート部51によってラインバッファ回路LB5,LB6へのクロック信号の入力/遮断を制御しているが、これに限るものではない。例えば、図7に示すように、クロックゲート部51を省略するとともに、ラインバッファ回路LB5,LB6に入力するクロック信号としてラインバッファ回路LB1〜LB4へのクロック信号とは異なる信号(ゲーティングクロック信号)を用い、信号処理回路50の外部に備えられる切替手段(図示せず)によって領域識別信号補正モードの選択期間中にはゲーティングクロック信号を信号処理回路50に入力しないようにしてもよい。
【0080】
ラインバッファ回路LB1〜LB6は、1ライン分の入力信号を一時的に記憶し、所定のタイミングで出力する。なお、ラインバッファ回路LB1,LB2の出力端子は出力ポートPo1,Po2に接続され、ラインバッファ回路LB3,LB4の出力端子は出力ポートPo1,Po3に接続され、ラインバッファ回路LB3,LB4の出力端子は出力ポートPo1に接続されている。ラインバッファ回路LB1〜LB6の詳細については後述する。
【0081】
これにより、フィルタ処理モードの場合、黒生成下色除去部16から入力された1ライン目の画像データおよび主制御部から入力されたイネーブル信号がラインバッファ回路LB1に、2ライン目の画像データおよびイネーブル信号がラインバッファ回路LB2に、3ライン目の画像データおよびイネーブル信号がラインバッファ回路LB3に、4ライン目の画像データおよびイネーブル信号がラインバッファ回路LB4に、5ライン目の画像データおよびイネーブル信号がラインバッファ回路LB5に、6ライン目の画像データおよびイネーブル信号がラインバッファ回路LB6に、7ライン目の画像データがディレイ調整部53にそれぞれ入力され、これら各ラインの画像データおよびイネーブル信号が互いに同期したタイミングで出力ポートPo1を介して空間フィルタ処理部17に出力される。
【0082】
また、領域識別信号補正モードの場合、領域分離処理部14から入力された1ライン目の領域識別信号および主制御部から入力されたイネーブル信号がラインバッファ回路LB1に、2ライン目の領域識別信号およびイネーブル信号がラインバッファ回路LB2に、3ライン目の領域識別信号およびイネーブル信号がディレイ調整部53にそれぞれ入力され、これら各ラインの領域識別信号が互いに同期したタイミングで出力ポートPo2を介して膨張処理部14cに出力される。また、膨張処理部14cから出力された膨張処理後の領域識別信号およびイネーブル信号は、1ライン目の領域識別信号およびイネーブル信号がラインバッファ回路LB3に、2ライン目の領域識別信号およびイネーブル信号がラインバッファ回路LB4に、3ライン目の領域識別信号およびイネーブル信号がディレイ調整部54にそれぞれ入力され、これら各ラインの領域識別信号およびイネーブル信号が互いに同期したタイミングで出力ポートPo3を介して縮退処理部14dに出力される。
【0083】
なお、空間フィルタ処理部17は、イネーブル信号がフィルタ処理モードを示す信号である場合にフィルタ処理を行う一方、イネーブル信号が領域識別信号補正モードを示す信号である場合には画像データを入力されてもフィルタ処理を行わない。イネーブル信号がフィルタ処理モードを示す信号であるか領域識別信号補正モードを示す信号であるかの判断は、例えばデータイネーブル信号のアサート期間(ハイレベル期間)の長さに基づいて判断すればよい。また、上記した3種類のイネーブル信号に加えて、フィルタ処理モードであるか領域識別信号補正モードであるかを示すイネーブル信号を用いてもよい。
【0084】
また、膨張処理部14cは、イネーブル信号が領域識別信号補正モードを示す信号である場合に膨張処理を行う一方、イネーブル信号がフィルタ処理モードを示す信号である場合には領域識別信号を入力されても膨張処理を行わない。同様に、縮退処理部14dは、イネーブル信号が領域識別信号補正モードを示す信号である場合に中ク対処理を行う一方、イネーブル信号がフィルタ処理モードを示す信号である場合には領域識別信号を入力されても縮退処理を行わない。ただし、これに限らず、イネーブル信号が領域識別信号補正モードを示す信号である場合には出力ポートPo1から空間フィルタ処理部17への画像データの出力を行わず、イネーブル信号がフィルタ処理モードを示す信号である場合には出力ポートPo2から膨張処理部14cへの領域識別信号の出力および出力ポートPo3から縮退処理部14dへの領域識別信号の出力を行わない構成としてもよい。
【0085】
(3.ラインバッファ回路BL1〜BL6)
次に、ラインバッファ回路BL1〜BL6の構成について説明する。図8は、ラインバッファ回路BL1の構成を示すブロック図である。なお、ラインバッファ回路BL2〜BL6についても同様の構成である。
【0086】
この図に示すように、ラインバッファ回路BL1は、メモリ制御部61、入力切替スイッチ62、書き込み側保持部63、データ連結部64、シングルポートメモリ65、データ展開部66、読み出し側保持部67、および出力切替スイッチ68を備えている。
【0087】
シングルポートメモリ65は、1ライン分の入力信号(画像データあるいは領域分離信号)を格納するシングルポートのメモリである。
【0088】
メモリ制御部61は、イネーブル信号に基づいて、ラインバッファ回路BL1の各部を制御するための制御信号、すなわち、シングルポートメモリ65に対する書き込みアドレスまたは読み出しアドレスを示すアドレス信号、シングルポートメモリ65に対する書き込み処理と読み出し処理とを切り替える書き込み・読み出し切替信号(メモリ書き込み有効信号・メモリ読み出し有効信号)、およびシングルポートメモリ65に対するアクセスの有効/無効を示すメモリアクセス有効信号を生成する。
【0089】
入力切替スイッチ62は、メモリ制御部61から入力される制御信号に応じて、入力信号の出力先を奇数番目のデータと偶数番目のデータとで切り替えるためのスイッチである。具体的には、入力切替スイッチ62は、奇数番目(奇数番目の画素)の入力信号を書き込み側保持部63に出力し、偶数番目(偶数番目の画素)の入力信号をデータ連結部64に出力する。
【0090】
書き込み側保持部63は、入力切替スイッチ62を介して入力された奇数番目の入力信号を一時的に格納するものであり、例えばフリップフロップで構成される。
【0091】
データ連結部64は、書き込み側保持部63に保持された奇数番目の入力信号と、入力切替スイッチ62を介して入力される偶数番目の入力信号とを連結させる。
【0092】
データ展開部66は、シングルポートメモリ65から読み出されたデータを奇数番目のデータと偶数番目のデータとに展開し、偶数番目のデータを読み出し側保持部67に出力し、奇数番目のデータを出力切替スイッチ68に出力する。
【0093】
読み出し側保持部67は、データ展開部66を介して入力された偶数番目のデータを一時的に格納するものであり、例えばフリップフロップで構成される。
【0094】
出力切替スイッチ68は、メモリ制御部61から入力される制御信号に応じて、出力切替スイッチ68から入力される奇数番目のデータと読み出し側保持部67から入力される偶数番目のデータとを、入力切替スイッチ62に入力された時と同じ順で(FIFO(First-in-First-out))出力されるように適宜選択して出力する。
【0095】
図9は、1ライン12画素分のデータのシングルポートメモリ65への書き込み処理、およびシングルポートメモリ65からの読み出し処理のタイミングチャートである。
【0096】
奇数番目のデータが入力されると、メモリ制御部61は、この奇数番目のデータを入力切替スイッチ62から書き込み側保持部63に送らせ、書き込み側保持部63に一旦記憶させる。
【0097】
その後、上記奇数番目のデータの次に偶数番目のデータが入力されると、メモリ制御部61は、この偶数番目のデータを入力切替スイッチ62からデータ連結部64に送らせるとともに、書き込み側保持部63に一旦記憶させておいた上記奇数番目のデータをデータ連結部64に送らせる。
【0098】
次に、メモリ制御部61は、書き込み側保持部63から入力された奇数番目のデータと入力切替スイッチ62から入力された偶数番目のデータとをデータ連結部64に連結させる。そして、メモリ制御部61は、書き込み先のアドレスを示すアドレス信号、および書き込み動作を有効にするためのメモリ書き込み有効信号を出力し、データ連結部64が連結した上記データをシングルポートメモリ65に書き込ませる。
【0099】
このようにして、2画素分のデータがシングルポートメモリ65に対する1回のアクセスで書き込まれる。
【0100】
また、メモリ制御部61は、シングルポートメモリ65に書き込まれたデータを読み出す際、読み出すデータのアドレスを示すアドレス信号、および読み出し動作を有効にするためのメモリ読み出し有効信号を出力し、2画素分のデータを一度に読み出してデータ展開部66に送る。
【0101】
そして、メモリ制御部61は、シングルポートメモリ65から読み出した2画素分のデータのうち、奇数番目の画素のデータをデータ展開部66から出力切替スイッチ68に出力させ、偶数番目の画素のデータを読み出し側保持部67に出力させて記憶させる。また、メモリ制御部61は、読み出し側保持部67に記憶させた偶数番目の画素のデータを、出力切替スイッチ68から奇数番目の画素のデータが出力されるタイミングに応じて読み出し側保持部67から出力切替スイッチ68に出力させる。
【0102】
また、メモリ制御部61は、データ展開部66から入力される奇数番目の画素のデータを出力した後、読み出し側保持部67から入力される偶数番目の画素のデータを出力するように出力切替スイッチ68の動作を制御する。
【0103】
このようにして、2画素分のデータがシングルポートメモリ65に対する1回のアクセスで読み出される。なお、シングルポートメモリ65にデータを書き込んだ後、当該データの読み出しを開始するまでの時間は、各ラインバッファ回路からの出力タイミングを同期させるようにラインバッファ回路毎に異なるように設定される。
【0104】
このように、本実施形態では、2画素分のデータの書き込みと2画素分のデータの読み出しとを交互に行う。つまり、ラインバッファ回路に奇数番目のデータが入力されるタイミングでシングルポートメモリ65から2画素分のデータの読み出しを行い、偶数番目のデータが入力されるタイミングで2画素分のデータのシングルポートメモリ65への書き込みを行う。
【0105】
これにより、シングルポートメモリ65において高速なFIFO処理を実現できる。つまり、シングルポートメモリはメモリアクセスの端子が一つしか存在しないので、1サイクル(1回のアクセス)で行える処理は書き込みまたは読み出しの一方のみに限られる。このため、従来の技術では、書き込み処理と読み出し処理とを行う場合には画素数(データ数)の2倍のアクセス回数が必要であった。これに対して、本実施形態では、2画素ずつ書き込みまたは読み込みを行うことでアクセス回数を従来の半分に低減するとともに、奇数番目のデータがラインバッファ回路に入力された後、偶数番目のデータが入力されるまでの待ち時間にシングルポートメモリ65からの読み出しを行うことで、書き込みおよび読み出しの処理速度を従来の半分に短縮できる。
【0106】
なお、図9の例では、シングルポートメモリ65へのデータの書き込み、およびシングルポートメモリ65からのデータの読み出しを2画素ずつ行う場合について説明したが、1回のアクセスで書き込みまたは読み出しを行う画素数(データ数)はこれに限るものではない。
【0107】
図10は、1回のアクセスで書き込みまたは読み出しを行う画素数(データ数)を8画素とした場合のタイミングチャートである。この場合、1画素目から7画素目までのデータが書き込み側保持部63に一旦格納され、8画素目のデータが入力されたときに8画素分のデータがデータ連結部64で連結されて1回のアクセスでシングルポートメモリ65に書き込まれる。
【0108】
また、1画素目から7画素目までのデータが入力されている期間中にシングルポートメモリ65から8画素分のデータが1回のアクセスで読み出される。読み出された8画素分のデータのうち1画素目のデータはデータ展開部66から出力切替スイッチ68に送られて出力され、2画素目から8画素目までのデータは読み出し側保持部67に一旦記憶された後、2画素目のデータから順に1画素ずつ出力切替スイッチ68に送られて出力される。
【0109】
このように、1回のアクセスで書き込みまたは読み出しを行う画素数を増加させることにより、シングルポートメモリ65に対するアクセス回数をより低減できる。ただし、1回のアクセスで書き込みまたは読み出しを行う画素数が多くなると、書き込み側保持部63と読み出し側保持部67で保持するデータ量が多くなり、また出力切替スイッチ68から出力するデータの管理が複雑化するので、1回のアクセスで書き込みまたは読み出しを行う画素数は、書き込み側保持部63および読み出し側保持部67の容量やメモリ制御部61の処理能力等に応じて適宜設定することが好ましい。
【0110】
なお、図10は、1ラインが18画素分のデータからなる場合の例を示している。このため、17番目および18番目の画素はこれら2画素分のデータが入力された時点でシングルポートメモリ65に書き込み可能であるが、シングルポートメモリ65からの他の画素のデータの読み出しタイミングにあわせるため、18番目の画素が入力された後、6画素分の入力時間に相当する時間だけ遅れて書き込みを行っている。ただし、これに限らず、例えば図11に示すように、18番目の画素のデータが入力された時点で17番目および18番目の画素のデータを書き込むようにしてもよい。
【0111】
以上のように、本実施形態にかかるデジタルカラー複合機1は、ラインバッファ回路BL1〜BL6とディレイ調整部53とを備えており、空間フィルタ処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1〜BL6に記憶させた6ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて空間フィルタ処理部17に出力し、膨張処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1〜BL2に記憶させた2ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて膨張処理部14cに出力する。
【0112】
これにより、空間フィルタ処理部17に対応する信号処理部と膨張処理部14cに対応する信号処理部とを別々に備える場合に比べて、回路規模を小さくすることができる。
【0113】
また、膨張処理後に縮退処理を行う際、膨張処理後の3ライン分の画像データのうちの2ライン分をラインバッファ回路BL3,BL4、およびディレイ調整部54に入力し、これら3ライン分の画像データを同期させて縮退処理部14dに出力する。
【0114】
これにより、第1画像処理部、膨張処理部14c、および縮退処理部14dに対応する信号処理部をそれぞれ別々に備える場合に比べて、回路規模を小さくすることができる。
【0115】
また、本実施形態では本発明をデジタルカラー複写機に適用する場合の例について説明したが、本発明の適用対象はこれに限るものではない。例えば、モノクロの複写機に適用してもよい。また、コピア機能、プリンタ機能、ファクシミリ送信機能、scan to e-mail機能等を単独で備える装置に適用してもよく、上記各機能のうちの2つ以上を備えた複合機に適用してもよい。
【0116】
例えば、上記したデジタルカラー複合機1の構成に加えて、モデムやネットワークカードよりなる通信装置を備え、ファクシミリ通信を行える構成としてもよい。この場合、例えば、ファクシミリの送信を行うときは、通信装置にて相手先との送信手続きを行って送信可能な状態が確保し、送信可能な状態が確保されると、所定の形式で圧縮した画像データ(スキャナで読み込まれた画像データ)をメモリから読み出し、圧縮形式の変更など必要な処理を施して、相手先に通信回線を介して順次送信するようにすればよい。
【0117】
また、ファクシミリを受信する場合、主制御部は、通信手続きを行いながら相手先から送信されてくる画像データを受信してカラー画像処理装置10に入力し、カラー画像処理装置10では、受信した画像データに対して、必要に応じて圧縮/伸張処理、回転処理、解像度変換処理等を行い、出力階調補正処理および階調再現処理を施してカラー画像出力装置30から出力するようにすればよい。
【0118】
また、ネットワークカード、LANケーブルを介して、ネットワークに接続されたコンピュータや他のデジタル複合機とデータ通信を行うようにしてもよい。
【0119】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については実施形態1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0120】
図12は、本実施形態にかかるデジタルカラー複合機1bの概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、デジタルカラー複合機1bは、実施形態1のデジタルカラー複合機1におけるカラー画像処理装置10に代えてカラー画像処理装置10bを備えている。また、実施形態1のデジタルカラー複合機1の構成に加えて通信装置70を備えている。
【0121】
カラー画像処理装置10bは、実施形態1のデジタルカラー複合機1の構成に加えて膨張・縮退処理部71、解像度変換処理部72、回転処理部73、および圧縮・伸張処理部74を備えている。
【0122】
なお、カラー画像処理装置10bでは、ファクシミリの送受信を行う場合(ファクシミリの送信を行うモードが選択された場合、あるいは、ファクシミリの受信信号を受信した場合)、入力階調補正部13b以降の処理を実施形態1と一部異ならせる。図12では、ファクシミリの送受信を行う場合のデータの流れを破線で示している。また、以下では、ファクシミリの送受信を行う場合の処理について説明する。
【0123】
A/D変換部11は、カラーのアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0124】
シェーディング補正部12は、A/D変換部11より送られてきたデジタルのカラー信号に対して、画像読取時の照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理を施す。
【0125】
入力階調補正部13bは、シェーディング補正処理が施された画像データについて、階調の非線型性を補正する(濃度データに変換する)。この処理は、例えば、LUT(Look Up Table:ルックアップテーブル)を参照して行われる。また、カラー画像データを、例えば、マトリクス演算等により輝度信号(K)に変換する。
【0126】
領域分離処理部14は、入力階調補正部から出力された画像データに対し、例えば、各画素を文字領域、網点領域、写真領域の何れかに分離する。また、領域分離処理部14は、分離結果に基づき、画素がどの領域に属しているかを示す領域識別信号を、領域識別信号補正部14bを介して空間フィルタ処理部17および階調再現処理部19に出力する。なお、ファクシミリの送受信を行う場合、領域識別信号補正部14bは領域分離処理部14から出力された領域識別信号に対して補正処理を施すことなくそのまま空間フィルタ処理部17および階調再現処理部19に出力する。あるいは、ファクシミリの送受信を行う場合、領域分離処理部14が領域分離処理を行わないようにしてもよい。また、領域分離処理部14は、入力階調補正部13bから出力された信号をそのまま後段の空間フィルタ処理部17に出力する。
【0127】
色補正部15および黒生成下色除去部16はファクシミリの送受信を行う場合には色補正処理および黒生成下色除去処理を行わず、入力されたデータを空間フィルタ処理部17にそのまま出力する。
【0128】
空間フィルタ処理部17は、領域分離処理部14から出力された画像データに対して、領域識別信号を基にデジタルフィルタによる空間フィルタ処理を行い、空間周波数特性を補正することによって出力画像のぼやけや粒状性劣化を防ぐように処理する。空間フィルタ処理の方法については実施形態1と同様の方法を用いる。
【0129】
出力階調補正部18は、ファクシミリの送受信を行う場合には入力されたデータを階調再現処理部19にそのまま出力する。
【0130】
階調再現処理部19は、空間フィルタ処理部17から出力されたデータの各画素における8ビット階調の値を、例えば誤差拡散法を用いて2階調の値に変換する。この処理は、領域分離処理部14から出力される領域識別信号に応じて行われる。例えば、領域分離処理部14にて文字に分離された領域は、高域周波数の再現に適した2値化処理が施され、領域分離処理部14にて写真に分離された領域に関しては、階調再現性を重視した2値化処理が行われる。
【0131】
膨張・縮退処理部71は、階調再現処理部19から出力される2値画像データに対して膨張処理・縮退処理を施してノイズ除去を行う。膨張処理および縮退処理の方法は実施形態1における膨張処理部14cおよび縮退処理部14dの処理と同様である。
【0132】
解像度変換処理部72は、画像データに対して必要に応じて解像度変換処理を施す。回転処理部73は、画像データに対して必要に応じて回転処理を施す。圧縮・伸張処理部74は、画像データを所定の形式で圧縮し、図示しないメモリに一旦格納する。
【0133】
主制御部は、ファクシミリの送受信を行う場合、ファクシミリの送受信モードを示す値を図示しないレジスタに設定する。また、主制御部は、信号処理回路50を空間フィルタ処理部17に画像データを出力するための状態(フィルタ処理モード)と、膨張・縮退処理部71に画像データを出力するための状態(膨張・縮退処理モード)とに切り替えるための切替信号を生成し、信号処理回路50に出力する。信号処理回路50の動作は実施形態1と略同様なのでここではその説明を省略する。
【0134】
通信装置70は、デジタルカラー複合機1bに対して通信回線を介して接続された他の装置との間で通信を行うものである。本実施形態では、通信装置70を介してファクシミリの送受信を行う。
【0135】
主制御部は、ファクシミリの送信を行う場合、通信装置70を介して送信相手の装置と送信手続きを行い、送信可能な状態が確保されると、所定の形式で圧縮された画像データを上記のメモリから読み出し、圧縮形式の変更など必要な処理を施して通信装置70から通信回線を介して順次送信させる。
【0136】
また、主制御部は、ファクシミリの受信を行う場合、通信手続きを行いながら相手先から送信されてくる所定の形式に圧縮された状態の画像データを受信すると共に、受信した画像データをカラー画像処理装置10bに入力させる。また、主制御部は、圧縮・伸張処理部74に上記の画像データの伸張処理を行わせてページ画像として送信されてきた原稿画像を再現させる。さらに、主制御部は、解像度変換処理部72および回転処理部73を制御し、原稿画像に対してカラー画像出力装置30の仕様に応じた解像度変換処理および回転処理を行わせ、カラー画像出力装置30に出力させる。なお、ファクシミリで送信されたデータは2値化されているので、カラー画像出力装置30に出力する。カラー画像出力装置30は、この原稿画像の画像データに基づいて記録材上に画像を形成する。
【0137】
以上のように、本実施形態にかかるデジタルカラー複合機1bは、ラインバッファ回路BL1〜BL6とディレイ調整部53とを備えており、空間フィルタ処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1〜BL6に記憶させた6ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて空間フィルタ処理部17に出力し、膨張処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1〜BL2に記憶させた2ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて膨張処理部14cに出力する。
【0138】
これにより、実施形態1にかかるデジタルカラー複合機1と略同様の効果を得ることができる。
【0139】
また、上記各実施形態では、信号処理回路50から出力される画像データを用いて空間フィルタ処理(第1処理)と膨張・縮退処理(第2処理)とを行う場合について説明したが、これに限らず、本発明は、異なるライン数の画像データを用いて画像処理を行う複数の画像処理部を備えた画像処理装置に適用できる。例えば、フィルタ処理、領域分離処理、回転処理、変倍処理、変倍処理、およびラベリング処理(例えば注目画素の画素値と隣接画素の画素値との関係に基づいて注目画素に当該画素の特性を示すラベル付けを行う処理)のうちの2つ以上の処理を信号処理回路50からの出力を用いて行うようにしてもよい。
【0140】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同じ機能を有する部材については当該実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0141】
図13は、本実施形態にかかるデジタルカラー複合機1cの概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、デジタルカラー複合機1cは、実施形態1のデジタルカラー複合機1におけるカラー画像処理装置10に代えてカラー画像処理装置10cを備えている。カラー画像処理装置10cは、カラー画像処理装置10における領域識別信号補正部14bを省略するとともに、領域分離処理部14と色補正部15との間に回転処理部21を備えた構成である。
【0142】
本実施形態では、回転処理部(第2処理部)21と空間フィルタ処理部(第1処理部)17とが、共通の信号処理回路(図14に示す信号処理回路50c)を用いてそれぞれの処理を行うようになっている。なお、回転処理を行う際、信号処理回路50cは回転処理部の一部として機能する。
【0143】
図14は、信号処理回路50c、空間フィルタ処理部17、および回転処理部21の概略構成を示すブロック図である。
【0144】
信号処理回路50cは、(1)黒生成下色除去部16から入力された画像データを所定量(本実施形態では主走査方向15画素×副走査方向15ライン)毎に空間フィルタ処理部17に出力する処理(フィルタ処理モード)と、(2)後述する入力画像メモリ82から読み出された画像データまたは領域分離信号を所定量(本実施形態では主走査方向8画素×副走査方向8ライン)毎に回転処理部21に出力する処理(回転処理モード)とを選択的(排他的)に行う。つまり、フィルタ処理モードではディレイ調整部53から出力される1ライン分の画像データとラインバッファ回路LB1〜LB14から出力される14ライン分の画像データの計15ライン分の画像データを空間フィルタ処理部17に出力する。また、回転処理モードでは、ディレイ調整部53から出力される1ライン分の画像データまたは領域識別信号とラインバッファ回路LB1〜LB7から出力される7ライン分の画像データまたは領域識別信号の計8ライン分の画像データまたは領域識別信号を回転処理部21に出力する。
【0145】
より具体的には、信号処理回路50cは、図14に示すように、入力ポートPi1〜Pi3、クロックゲート部51、ディレイ調整部53、ラインバッファ回路LB1〜LB14、および出力ポートPo1〜Po2を備えている。
【0146】
ディレイ調整部53は、入力ポートPi1を介して入力される1ライン分の入力信号(フィルタ処理モードでは黒生成下色除去部16から出力された画像データ、回転処理モードでは後述する入力画像メモリ82から読み出された画像データまたは領域分離信号)、および主制御部から入力されるイネーブル信号を、後述する各ラインバッファ回路(フィルタ処理モードではラインバッファ回路LB1〜LB14、回転処理モードではラインバッファ回路LB1〜LB7)からの出力信号と同期させるように遅延させて出力ポートPo1,Po2に出力する。なお、出力ポートPo1は空間フィルタ処理部17に接続され、出力ポートPo2は回転処理部21に接続されている。イネーブル信号には、1ページの有効期間を表すページイネーブル信号、1ラインの有効期間を表すラインイネーブル信号、およびデータの有効/無効を表すデータイネーブル信号の3種類の制御信号が含まれる。信号処理回路50c、空間フィルタ処理部17、および回転処理部21はこのイネーブル信号に基づいて各種制御を行う。
【0147】
出力ポートPo1は、切替信号がフィルタ処理モードを示す信号である場合にはディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB14から出力された画像データを空間フィルタ処理部17に出力する一方、切替信号が回転処理モードを示す信号である場合には空間フィルタ処理部17への出力を遮断する。また、出力ポートPo2は、切替信号が回転処理モードを示す信号である場合にはディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7から出力された画像データまたは領域識別信号を回転処理部21に出力する一方、切替信号がフィルタ処理モードを示す信号である場合には回転処理部21への出力を遮断する。
【0148】
クロックゲート部51は、主制御部から入力ポートPi3を介して入力される切替信号(レジスタ信号)に応じて、回転処理モードの選択期間中に、ラインバッファ回路LB8〜LB14へのクロック信号の入力を遮断し、ラインバッファ回路LB5〜LB14の動作を停止させる。これにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0149】
ラインバッファ回路LB1〜LB14は、1ライン分の入力信号を一時的に記憶し、所定のタイミングで出力する。これら各ラインバッファ回路の構成は実施形態1におけるラインバッファ回路と同様である。なお、ラインバッファ回路LB1〜LB7の出力端子は出力ポートPo1,Po2に接続され、ラインバッファ回路LB8〜LB14の出力端子は出力ポートPo1に接続されている。
【0150】
空間フィルタ処理部17は、処理対象の画像データにおける注目画素を含む複数の画素からなるブロック(本実施形態では主走査方向15画素×副走査方向15画素(15ライン))に対して、このブロックと同じ大きさのマトリクスの各画素に割り当てられたフィルタ係数を用いた画素値とのコンボリューション演算により、上記ブロック内の各画素について注目画素に対するフィルタ処理(強調処理、平滑化処理、あるいは強調処理および平滑処理の両方の特性を有する処理等)の結果を算出する。空間フィルタ処理部17の構成および処理内容は実施形態1と略同様なのでここではその説明を省略する。
【0151】
なお、空間フィルタ処理部17は、上記のフィルタ処理をCMYKの各色成分について行う。このため、信号処理回路50cをCMYKの各色毎に、すなわち4つ備えている。ただし、これに限らず、信号処理回路50cを1つだけ備え、CMYKの各色についての処理を1色ずつ順次行うようにしてもよい。
【0152】
また、上記各モードにおいて信号処理回路50cから空間フィルタ処理部17および回転処理部21に出力する主走査方向の画素数および副走査方向のライン数は上記の例に限るものではなく、適宜変更してもよい。信号処理回路50cに備えるラインバッファ回路の数は、空間フィルタ処理部17に出力する画像データのライン数に応じて適宜変更すればよい。例えば、空間フィルタ処理部17が8ライン分の画像データに基づいてフィルタ処理を行うようにしてもよい。また、回転処理部21が4ライン分の画像データ、あるいは16ライン分の画像データに基づいて回転処理を行うようにしてもよい。
【0153】
回転処理部21は、領域分離処理部14から信号処理回路50cを介して入力される画像データおよび領域識別信号に対して回転処理を施し、回転処理後の画像データを色補正部15に出力し、回転処理後の領域識別信号を黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17、および階調再現処理部19に出力する。回転させる角度は、例えば、操作パネル40を介してユーザが指定した角度、あるいはユーザが指定したモードに応じた角度に設定すればよい。本実施形態では、0度、90度、180度、270度のいずれかの回転角度で回転処理を行う。
【0154】
なお、画像データに対する回転処理は、RGBの色成分毎に行う。本実施形態では、上述したように、空間フィルタ処理部17においてCMYKの画像データに対してフィルタ処理を行うために信号処理回路50cを4つ備えている。したがって、これら4つの信号処理回路50cのうちの3つを用いてRGBの各色成分に対する回転処理を行えばよい。ただし、これに限らず、RGBの各色成分について1色ずつ順次回転処理を行うようにしてもよい。
【0155】
また、画像データに対する回転処理と領域識別信号に対する回転処理とを同時に行ってもよく、画像データの回転処理を行った後に領域識別信号の回転処理を行うようにしてもよい。画像データの回転処理を行った後に領域分離信号の回転処理を行う場合には、領域分離処理部14と信号処理回路50cとの間にメモリ等の一時格納領域を設けて領域分離信号を一時格納しておき、領域分離信号に対する回転処理の開始タイミングに応じて信号処理回路50cに出力するようにすればよい。また、4つの信号処理回路50cのうち、回転処理に使用しないものについては動作を停止させるようにしてもよい。これにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0156】
図14に示したように、回転処理部21は、メモリ制御部81、入力画像メモリ82、出力画像メモリ83を備えている。
【0157】
入力画像メモリ82は、領域分離処理部14から入力された画像データおよび領域分離信号を一時的に記憶するメモリである。出力画像メモリ83は、回転処理後の画像データを記憶するメモリである。メモリ制御部84は、入力画像メモリ82および出力画像メモリ83に対するデータの書き込み、およびこれら両メモリからのデータの読み出しを制御する。
【0158】
図15は、回転処理部21における回転処理を説明するための説明図であり、画像データを90度回転させる場合の例を示している。
【0159】
まず、メモリ制御部81は、図15に示すように、入力画像メモリに記憶された画像データを左側の画素から右側の画素に向かって8画素分読み出し、ディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7に1画素分ずつ順次書き出す処理を、最下行のラインから最上行のラインに向かって1ラインずつ順次行う。また、最上行のラインに対する処理が終わると、未処理の画像データについて、最下行から順に同様の処理を繰り返す。
【0160】
その後、メモリ制御部81は、ディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7から出力される各画素のデータを、ディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7に書き込まんだ時の順序で、出力画像データにおける上側のラインから下側のラインに向かって各ラインに1画素ずつ、各ラインの左端の画素として割り当てていき、出力画像メモリ83に順次格納していく。これにより、最終的に、入力画像データを90度回転させた画像データが出力画像メモリ83に格納される。
【0161】
なお、180度回転させる場合には、図16(a)に示すように、ディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7から出力される各画素のデータを、ディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7に書き込んだ時の順序で、出力画像データにおける上側のラインから下側のラインに向かって各ラインに8画素ずつ、各ラインの左端の画素から右側に隣接する各画素に順次割り当てるようにすればよい。
【0162】
また、270度回転させる場合には、図16(b)に示すように、ディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7から出力される各画素のデータを、ディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7に書き込んだ時の順序で、出力画像データにおける下側のラインから上側のラインに向かって各ラインに1画素ずつ、各ラインの右端の画素として割り当てるようにすればよい。
【0163】
また、ディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7から出力画像メモリ83へのデータの転送は、ディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7に転送可能な所定単位の画素データが格納されたときに随時行うようにしてもよく、ディレイ調整部53および各ラインバッファ回路LB1〜LB7について個別に行ってもよく、ディレイ調整部53および各ラインバッファ回路LB1〜LB7を複数のグループに分けてグループ毎に行ってもよい。
【0164】
以上のように、本実施形態にかかるデジタルカラー複合機1cは、ラインバッファ回路BL1〜BL14とディレイ調整部53とを備えており、空間フィルタ処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1〜BL14に記憶させた14ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて空間フィルタ処理部17に出力し、回転処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1〜BL7に記憶させた7ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて回転処理部21に出力する。
【0165】
これにより、空間フィルタ処理部17に対応するラインバッファ回路(信号処理回路)と回転処理部21に対応するラインバッファ回路(信号処理回路)とを別々に備える場合に比べて回路規模を小さくすることができる。
【0166】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同じ機能を有する部材については当該実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0167】
図17は、本実施形態にかかるデジタルカラー複合機1dの概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、デジタルカラー複合機1dは、実施形態3のデジタルカラー複合機1cにおけるカラー画像処理装置10cに代えてカラー画像処理装置10dを備えている。カラー画像処理装置10dは、カラー画像処理装置10cにおける回転処理部21に代えて変倍処理部22を備えた構成である。
【0168】
本実施形態では、変倍処理部(第2処理部)22と空間フィルタ処理部(第1処理部)17とが、共通の信号処理回路(図17に示す信号処理回路50d)を用いてそれぞれの処理を行うようになっている。
【0169】
図18は、信号処理回路50d、空間フィルタ処理部17、および変倍処理部22の概略構成を示すブロック図である。
【0170】
信号処理回路50dは、(1)黒生成下色除去部16から出力された画像データを所定量(本実施形態では主走査方向7画素×副走査方向7ライン)毎に空間フィルタ処理部17に出力する処理(フィルタ処理モード)と、(2)領域分離処理部14から出力された画像データまたは領域分離信号を所定量(本実施形態では主走査方向2画素×副走査方向2ライン)毎に変倍処理部22に出力する処理(変倍処理モード)とを選択的(排他的)に行う。つまり、フィルタ処理モードではディレイ調整部53から出力される1ライン分の画像データとラインバッファ回路LB1〜LB6から出力される7ライン分の画像データの計8ライン分の画像データを空間フィルタ処理部17に出力する。また、変倍処理モードでは、ディレイ調整部53から出力される1ライン分の画像データまたは領域識別信号とラインバッファ回路LB1から出力される1ライン分の画像データまたは領域識別信号の計2ライン分の画像データまたは領域識別信号を変倍処理部22に出力する。
【0171】
より具体的には、信号処理回路50dは、図18に示すように、入力ポートPi1〜Pi3、クロックゲート部51、ディレイ調整部53、ラインバッファ回路LB1〜LB6、および出力ポートPo1〜Po2を備えている。
【0172】
ディレイ調整部53は、入力ポートPi1を介して入力される1ライン分の入力信号(フィルタ処理モードでは黒生成下色除去部16から出力された画像データ、変倍処理モードでは領域分離処理部14から出力された画像データまたは領域分離信号)、および主制御部から入力されるイネーブル信号を、後述する各ラインバッファ回路(フィルタ処理モードではラインバッファ回路LB1〜LB6、変倍処理モードではラインバッファ回路LB1)からの出力信号と同期させるように遅延させて出力ポートPo1,Po2に出力する。なお、出力ポートPo1は空間フィルタ処理部17に接続され、出力ポートPo2は変倍処理部22に接続されている。イネーブル信号には、1ページの有効期間を表すページイネーブル信号、1ラインの有効期間を表すラインイネーブル信号、およびデータの有効/無効を表すデータイネーブル信号の3種類の制御信号が含まれる。信号処理回路50d、空間フィルタ処理部17、および変倍処理部22はこのイネーブル信号に基づいて各種制御を行う。
【0173】
出力ポートPo1は、切替信号がフィルタ処理モードを示す信号である場合にはディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB6から出力された画像データを空間フィルタ処理部17に出力する一方、切替信号が変倍処理モードを示す信号である場合には空間フィルタ処理部17への出力を遮断する。また、出力ポートPo2は、切替信号が変倍処理モードを示す信号である場合にはディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1から出力された画像データまたは領域識別信号を変倍処理部22に出力する一方、切替信号がフィルタ処理モードを示す信号である場合には変倍処理部22への出力を遮断する。
【0174】
クロックゲート部51は、主制御部から入力ポートPi3を介して入力される切替信号(レジスタ信号)に応じて、変倍処理モードの選択期間中に、ラインバッファ回路LB2〜LB6へのクロック信号の入力を遮断し、ラインバッファ回路LB2〜LB6の動作を停止させる。これにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0175】
ラインバッファ回路LB1〜LB6は、1ライン分の入力信号を一時的に記憶し、所定のタイミングで出力する。これら各ラインバッファ回路の構成は実施形態1におけるラインバッファ回路と同様である。なお、ラインバッファ回路LB1の出力端子は出力ポートPo1,Po2に接続され、ラインバッファ回路LB2〜LB6の出力端子は出力ポートPo1に接続されている。
【0176】
空間フィルタ処理部17の構成、およびフィルタ処理時の動作については上述した各実施形態と略同様なので、ここではその説明を省略する。
【0177】
なお、空間フィルタ処理部17は、上記のフィルタ処理をCMYKの各色成分について行う。このため、信号処理回路50dをCMYKの各色毎に、すなわち4つ備えている。ただし、これに限らず、信号処理回路50dを1つだけ備え、CMYKの各色についての処理を1色ずつ順次行うようにしてもよい。
【0178】
また、上記各モードにおいて信号処理回路50dから空間フィルタ処理部17および回転処理部21に出力する主走査方向の画素数および副走査方向のライン数は上記の例に限るものではなく、適宜変更してもよい。信号処理回路50dに備えるラインバッファ回路の数は、空間フィルタ処理部17に出力する画像データのライン数に応じて適宜変更すればよい。例えば、空間フィルタ処理部17が15ライン分の画像データに基づいてフィルタ処理を行うようにしてもよい。
【0179】
変倍処理部22は、領域分離処理部14から入力される画像データおよび領域識別信号に対して変倍処理(拡大処理または縮小処理)を行い、変倍処理後の画像データを色補正部15に出力し、変倍処理後の領域識別信号を黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17、および階調再現処理部19に出力する。変倍処理の倍率は、例えば操作パネル40を介してユーザが指定する。なお、本実施形態では、主走査方向についての変倍処理と副走査方向についての変倍処理とを独立して行えるようになっている。
【0180】
なお、画像データに対する変倍処理は、RGBの色成分毎に行う。本実施形態では、上述したように、空間フィルタ処理部17においてCMYKの画像データに対してフィルタ処理を行うために信号処理回路50dを4つ備えている。したがって、これら4つの信号処理回路50dのうちの3つを用いてRGBの各色成分に対する回転処理を行えばよい。ただし、これに限らず、RGBの各色成分について1色ずつ順次回転処理を行うようにしてもよい。
【0181】
また、画像データに対する変倍処理と領域識別信号に対する変倍処理とを同時に行ってもよく、画像データの変倍処理を行った後に領域識別信号の変倍処理を行うようにしてもよい。画像データの変倍処理を行った後に領域分離信号の変倍処理を行う場合には、領域分離処理部14と信号処理回路50dとの間にメモリ等の一時格納領域を設けて領域分離信号を一時格納しておき、領域分離信号に対する変倍処理の開始タイミングに応じて信号処理回路50dに出力するようにすればよい。また、4つの信号処理回路50dのうち、変倍処理に使用しないものについては動作を停止させるようにしてもよい。これにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0182】
図19は、変倍処理部22における変倍処理の方法を示す説明図である。変倍処理部22は、操作パネル40に対するユーザの指示入力に応じて変倍倍率を決定し、決定した倍率に応じて変倍処理後の画像データにおける各画素の座標o(x)を算出する。そして、変倍処理前の画像データにおける、上記の変倍処理後の座標o(x)の近傍4点(4画素)の座標a(x),a(x+1),b(x),b(x+1)を抽出し、これら4点と変倍処理後の座標o(x)との距離をそれぞれ算出する。そして、変倍処理後の座標o(x)に対応する画素の画素値を上記4点のうち座標o(x)に対する距離が最も短い点の画素値に設定する(ニアレストネイバ処理)。なお、変倍処理の方法はこれに限るものではなく、従来から公知の種々の方法を用いることができる。
【0183】
以上のように、本実施形態にかかるデジタルカラー複合機1dは、ラインバッファ回路BL1〜BL6とディレイ調整部53とを備えており、空間フィルタ処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1〜BL6に記憶させた6ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて空間フィルタ処理部17に出力し、変倍処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1に記憶させた1ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて変倍処理部22に出力する。
【0184】
これにより、空間フィルタ処理部17に対応するラインバッファ回路(信号処理回路)と変倍処理部22に対応するラインバッファ回路(信号処理回路)とを別々に備える場合に比べて回路規模を小さくすることができる。
【0185】
〔実施形態5〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同じ機能を有する部材については当該実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0186】
図20は、本実施形態にかかるデジタルカラー複合機1eの概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、デジタルカラー複合機1eは、実施形態3のデジタルカラー複合機1cにおけるカラー画像処理装置10cに代えてカラー画像処理装置10eを備えている。カラー画像処理装置10eは、カラー画像処理装置10cの構成に加えて回転処理部21と色補正部15との間に変倍処理部22を備えた構成である。
【0187】
本実施形態では、回転処理部(第1処理部)21と変倍処理部(第2処理部)22とが、共通の信号処理回路(図20に示す信号処理回路50e)を用いてそれぞれの処理を行うようになっている。
【0188】
図21は、信号処理回路50e、回転処理部21、および変倍処理部22の概略構成を示すブロック図である。
【0189】
信号処理回路50dは、(1)領域分離処理部14から出力された画像データまたは領域分離信号を所定量(本実施形態では主走査方向8画素×副走査方向8ライン)毎に回転処理部21に出力する処理(回転処理モード)と、(2)領域分離処理部14から出力された画像データまたは領域分離信号を所定量(本実施形態では主走査方向2画素×副走査方向2ライン)毎に変倍処理部22に出力する処理(変倍処理モード)とを選択的(排他的)に行う。つまり、回転処理モードではディレイ調整部53から出力される1ライン分の画像データとラインバッファ回路LB1〜LB7から出力される7ライン分の画像データの計8ライン分の画像データを回転処理部21に出力する。また、変倍処理モードでは、ディレイ調整部53から出力される1ライン分の画像データまたは領域識別信号とラインバッファ回路LB1から出力される1ライン分の画像データまたは領域識別信号の計2ライン分の画像データまたは領域識別信号を変倍処理部22に出力する。
【0190】
より具体的には、信号処理回路50eは、図14に示すように、入力ポートPi1〜Pi3、クロックゲート部51、ディレイ調整部53、ラインバッファ回路LB1〜LB7、および出力ポートPo1〜Po2を備えている。
【0191】
ディレイ調整部53は、入力ポートPi1を介して入力される1ライン分の入力信号、および主制御部から入力されるイネーブル信号を、後述する各ラインバッファ回路(回転処理モードではラインバッファ回路LB1〜LB7、変倍処理モードではラインバッファ回路LB1)からの出力信号と同期させるように遅延させて出力ポートPo1,Po2に出力する。なお、出力ポートPo1は回転処理部21に接続され、出力ポートPo2は変倍処理部22に接続されている。イネーブル信号には、1ページの有効期間を表すページイネーブル信号、1ラインの有効期間を表すラインイネーブル信号、およびデータの有効/無効を表すデータイネーブル信号の3種類の制御信号が含まれる。信号処理回路50e、回転処理部21、および変倍処理部22はこのイネーブル信号に基づいて各種制御を行う。
【0192】
出力ポートPo1は、切替信号が回転処理モードを示す信号である場合にはディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1〜LB7から出力された画像データまたは領域識別信号を回転処理部21に出力する一方、切替信号が変倍処理モードを示す信号である場合には回転処理部21への出力を遮断する。また、出力ポートPo2は、切替信号が変倍処理モードを示す信号である場合にはディレイ調整部53およびラインバッファ回路LB1から出力された画像データまたは領域識別信号を変倍処理部22に出力する一方、切替信号が回転処理モードを示す信号である場合には変倍処理部22への出力を遮断する。
【0193】
クロックゲート部51は、主制御部から入力ポートPi3を介して入力される切替信号(レジスタ信号)に応じて、変倍処理モードの選択期間中に、ラインバッファ回路LB2〜LB7へのクロック信号の入力を遮断し、ラインバッファ回路LB2〜LB7の動作を停止させる。これにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0194】
ラインバッファ回路LB1〜LB7は、1ライン分の入力信号を一時的に記憶し、所定のタイミングで出力する。これら各ラインバッファ回路の構成は実施形態1におけるラインバッファ回路と同様である。なお、ラインバッファ回路LB1の出力端子は出力ポートPo1,Po2に接続され、ラインバッファ回路LB2〜LB7の出力端子は出力ポートPo1に接続されている。
【0195】
なお、上記各モードにおいて信号処理回路50eから回転処理部21および変倍処理部22に出力する主走査方向の画素数および副走査方向のライン数は上記の例に限るものではなく、適宜変更してもよい。信号処理回路50eに備えるラインバッファ回路の数は、回転処理部21に出力する画像データのライン数に応じて適宜変更すればよい。
【0196】
回転処理部21の構成および動作は実施形態3と略同様であり、変倍処理部22の構成および動作は実施形態4と略同様であるので、これら各部の説明については省略する。
【0197】
以上のように、本実施形態にかかるデジタルカラー複合機1eは、ラインバッファ回路BL1〜BL6とディレイ調整部53とを備えており、回転処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1〜BL7に記憶させた7ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて回転処理部21に出力し、変倍処理を行う場合にはラインバッファ回路BL1に記憶させた1ライン分の画像データとディレイ調整部53に入力された1ライン分の画像データとを同期させて変倍処理部22に出力する。
【0198】
これにより、空間フィルタ処理部17に対応するラインバッファ回路(信号処理回路)と変倍処理部22に対応するラインバッファ回路(信号処理回路)とを別々に備える場合に比べて回路規模を小さくすることができる。
【0199】
また、上記各実施形態において、デジタルカラー複合機1に備えられるカラー画像処理装置10を構成する各部(各ブロック)は、CPU等のプロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよい。すなわち、デジタルカラー複合機1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている構成としてもよい。この場合、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるカラー画像処理装置10の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、デジタルカラー複合機1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによって達成される。
【0200】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0201】
また、カラー画像処理装置10を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムコードを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0202】
また、カラー画像処理装置10の各ブロックは、ソフトウェアを用いて実現されるものに限らず、ハードウェアロジックによって構成されるものであってもよく、処理の一部を行うハードウェアと当該ハードウェアの制御や残余の処理を行うソフトウェアを実行する演算手段とを組み合わせたものであってもよい。
【0203】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態、および請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明は、異なるライン数の画像データを用いて画像処理を行う複数の画像処理部を備えた画像処理装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】本発明の一実施形態にかかる信号処理回路(信号処理装置)のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる画像処理装置のブロック図である。
【図3】図2に示した画像処理装置における空間フィルタ処理部で用いられるフィルタ係数の一例を示す説明図である。
【図4】図2に示した画像処理装置において行われる膨張処理および縮退処理における、注目画素と参照画素との関係を示す説明図である。
【図5】図2に示した画像処理装置において行われる膨張処理および縮退処理における、注目画素と参照画素との関係を示す説明図である。
【図6】図2に示した画像処理装置において用いられるイネーブル信号の信号波形図である。
【図7】図1に示した信号処理回路の変形例を示すブロック図である。
【図8】図1に示した信号処理回路に備えられるラインバッファ回路のブロック図である。
【図9】図8に示したラインバッファ回路で扱われる信号の信号波形図である。
【図10】図8に示したラインバッファ回路で扱われる信号の信号波形図である。
【図11】図8に示したラインバッファ回路で扱われる信号の信号波形図である。
【図12】本発明の他の実施形態にかかる画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態にかかる画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示した画像処理装置に備えられる信号処理回路、空間フィルタ処理部、および回転処理部の構成を示すブロック図である。
【図15】図14に示した回転処理部における回転処理方法の一例を示す説明図である。
【図16】(a)および(b)は、図14に示した回転処理部における回転処理方法の一例を示す説明図である。
【図17】本発明のさらに他の実施形態にかかる画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図18】図17に示した画像処理装置に備えられる信号処理回路、空間フィルタ処理部、および変倍処理部の構成を示すブロック図である。
【図19】図18に示した変倍処理部における変倍処理方法の一例を示す説明図である。
【図20】本発明のさらに他の実施形態にかかる画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図21】図20に示した画像処理装置に備えられる信号処理回路、回転処理部、および変倍処理部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0206】
1,1b,1c,1d,1e デジタルカラー複合機(画像処理装置、画像形成装置)
2 特許文献
10,10b,10c,10d,10e カラー画像処理装置(画像処理装置)
14 領域分離処理部
14b 領域識別信号補正部(第2処理部)
14c 膨張処理部
14d 縮退処理部
17 空間フィルタ処理部(第1処理部)
20 カラー画像入力装置
21 回転処理部(第2処理部、第1処理部)
22 変倍処理部(第2処理部)
30 カラー画像出力装置
50,50c,50d,50e 信号処理回路
51 クロックゲート部
52 切替スイッチ
53 ディレイ調整部
54 ディレイ調整部
61 メモリ制御部
62 入力切替スイッチ
63 書き込み側保持部
64 データ連結部
65 シングルポートメモリ
66 データ展開部
67 読み出し側保持部
68 出力切替スイッチ
70 通信装置
71 膨張・縮退処理部
BL1〜BL14 ラインバッファ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ラインのデータからなる画像データに対して画像処理を施す画像処理装置であって、
nライン分(nは2以上の整数)のデータに基づいて第1処理を行う第1処理部と、
mライン分(mはn>mの整数)のデータに基づいて第2処理を行う第2処理部と、
複数ライン分のデータを同期させて出力する信号処理部とを備え、
上記信号処理部は、
それぞれが1ライン分のデータを記憶する(n−1)個以上のラインバッファと、
入力された1ライン分のデータを遅延させて出力するディレイ調整部とを備え、
上記第1処理を行う場合には、(n−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(n−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記第1処理部に出力し、
上記第2処理を行う場合には、(m−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(m−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記第2処理部に出力することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
上記第2処理部は、
注目画素を含むmライン分の2値データを参照し、注目画素の周囲における所定数の画素に上記2値データの値が1の画素が含まれている場合に当該注目画素の2値データの値を1とする膨張処理を行う膨張処理部と、
注目画素を含むmライン分の2値データを参照し、注目画素の周囲における上記所定数の画素に上記2値データの値が0の画素が含まれている場合に当該注目画素の2値データを0とする縮退処理を行う縮退処理部とを備え、
上記信号処理部は、
入力された1ライン分のデータを遅延させて出力する第2ディレイ調整部と、
上記複数のラインバッファのうちの少なくとも一部に入力するデータの入力元を、上記第1処理の場合と上記第2処理の場合とで切り替える切替スイッチとを備え、
上記第2処理を行う場合、(m−1)個の上記ラインバッファに記憶させた(m−1)ライン分のデータと上記ディレイ調整部に入力された1ライン分のデータとを同期させて上記膨張処理部および上記縮退処理部のうちの一方に出力し、
上記一方の処理部から出力されるmライン分のデータのうちの(m−1)ライン分を上記一方の処理部へのデータの出力に用いたラインバッファとは異なるラインバッファに入力し、上記一方の処理部から出力されるmライン分のデータのうちの残りの1ライン分を上記第2ディレイ調整部に入力し、これらmライン分のデータを同期させて上記膨張処理部および上記縮退処理部のうちの他方の処理部に出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
注目画素が属する領域の画像種別を判別し、判別結果を示す領域識別信号を生成する領域分離処理部を備え、
上記第2処理部は、上記領域識別信号に対して上記膨張処理および上記縮退処理を施すことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記第2処理部は、画像データに対して上記膨張処理および上記縮退処理を施すことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記第2処理部は、上記第2処理として画像データに回転処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記第2処理部は、上記第2処理として画像データに変倍処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記第1処理部は、上記第1処理として画像データに回転処理を施し、
上記第2処理部は、上記第2処理として画像データに変倍処理を施すことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
上記第1処理部は、上記第1処理として画像データに空間フィルタ処理を施すことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
上記信号処理部は、上記第1処理を行うか上記第2処理を行うかにかかわらず、上記各ラインバッファから出力されるデータを上記第1処理部および上記第2処理部の両方に出力するとともに、上記第1処理部および上記第2処理部にこれら各部における処理を実行するか否かを示すイネーブル信号を出力する出力制御部を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
第2処理を行う場合に、上記第2処理部にデータを出力するラインバッファ以外のラインバッファの動作を停止させることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
上記画像処理装置から出力される画像データに応じた画像を記録材上に形成する画像形成部とを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−259201(P2009−259201A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285552(P2008−285552)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】