説明

画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法

【課題】 欠陥の分布やその他の部位の検査状況を視覚的に容易に把握できるようにする。
【解決手段】 検査領域の画素をセグメントで分けて、各セグメント毎に求めた欠陥レベルの分布を、欠陥レベル0:青〜欠陥レベル128:緑〜欠陥レベル255:赤というように欠陥レベルに応じた256階調の色相環でモニタに表示される。欠陥レベルは、検査領域に含まれる画素をN×N(Nは画素数)のセグメントで分割し、各セグメントに含まれる画素濃度の平均濃度を当該セグメントの欠陥レベルとして決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置を用いた欠陥検査での表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品等の様々な製品の外観検査等において、撮像装置を用いて当該電子部品を撮影し、その撮像画像を画像処理装置によって解析して欠陥の有無を判別する欠陥検査が行われている。
【0003】
このような画像処理装置を用いた欠陥検査においては、撮像画像上で画素値が急峻に変化している部分が欠陥として扱われる。図1は、従来の欠陥検査の結果の表示例を示す。この図1から理解できるように、モニタには、欠陥箇所及びその欠陥レベルの数値として画素値(濃度)の変化量が重畳表示される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の表示方法によれば、オペレータは欠陥箇所に関する情報を得ることができるものの、その他の部位の状況を把握したいという要請に応じることができない。
【0005】
本発明の目的は、欠陥の分布やその他の部位の検査状況を視覚的に容易に把握することのできる画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法を提供することにある。
【0006】
本発明の更なる目的は、欠陥検査で欠陥と判別するしきい値の設定を容易且つ最適化することのできる画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
検査領域に含まれる画素のセグメントに含まれる各画素の濃度の平均濃度を算出し、
該平均濃度に基づいて決定した欠陥レベルの分布を二次元又は三次元の表現形式で表示することを特徴とする画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法を提供することにより達成される。
【0008】
すなわち、本発明によれば、オペレータは、モニタの表示を見ることで、欠陥の分布やその他の部位の検査状況を視覚的に容易に把握することができ、また、モニタに表示された二次元又は三次元の表現形式による欠陥レベルの分布を見ながら欠陥検査で欠陥と判別するしきい値の設定を行うことで、最適なしきい値を容易に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に添付の図面を参照しながら、本発明の実施例を説明する。図2に示す画像処理装置1は、従来と同様に、検査対象を撮影するためのカメラ2と、カメラ2から撮像画像を取り込んで画像処理を行うと共に欠陥検査を行う画像処理装置本体3と、その結果を表示するためのモニタ4などを有する。
【0010】
欠陥検査は、従来と同様に、オペレータが設定したしきい値に基づいて行われる。図3、図4は、検査結果のモニタ表示例を示す。図3の表示例は、検査領域の画素をセグメント分けし、各セグメント毎に求めた欠陥レベルの分布を二次元の表現形式で表示したものであり、この表示例では、例えば、欠陥レベル0:青〜欠陥レベル128:緑〜欠陥レベル255:赤というように欠陥レベルに応じた256階調の色相環で表示される。勿論、欠陥レベルに応じた濃さの濃淡画像で表示してもよい。
【0011】
図4の表示例にあっては、欠陥レベルの程度に応じた三次元棒グラフのように三次元の表現形式で表示した鳥瞰図で欠陥レベルの分布が表示される。
【0012】
図3、図4のように欠陥レベルの分布を視覚的に表示することにより、オペレータは、欠陥がどのような程度で、また、どの程度分布しているかを直ちに把握することができ、これにより容易に検査状況を確認することができる。また、どの程度の欠陥が、画像上でどのようなレベルになるかを知ることができる。また、欠陥と判断するしきい値の設定に際し、図3又は図4の表示を見て具体的に画像全体の欠陥レベルの分布を見ながら、しきい値の設定を行うことができるため、最適なしきい値を容易に設定することができる。
【0013】
欠陥レベルの第1の算出方法として、検査領域に含まれる画素に関してN×N(Nは画素数)のセグメントSGを設定し、このセグメントに含まれる各画素の濃度の平均濃度を算出し、次いで、このセグメントを縦横(図5)又は縦横、斜め左上、斜め左下、斜め右上、斜め右下にn画素ずつシフトさせる毎に平均濃度を算出して、これにより得た各平均濃度を欠陥レベルとして決定して、その分布を図3又は図4のように二次元又は三次元の表示形式でモニタ4に表示するようにしてもよい。上記のセグメント分けする画素数N及び/又はシフト画素数nはオペレータが任意に設定可能であるのが好ましい。
【0014】
欠陥レベルの第2の算出方法として、検査領域に含まれる画素をN×N(Nは画素数)のセグメントで分割し、図6に示すように、一つのセグメントSGに着目したときに、当該セグメントSGの平均濃度と、当該セグメントSGに隣接する斜め左上のセグメントSG、真上のセグメントSG、斜め右上のセグメントSG、左横のセグメントSG、右横のセグメントSG、左下のセグメントSG、真下のセグメントSG、斜め右下のセグメントSGの各平均濃度との間で存在する最大平均濃度と最小平均濃度との差分(最大平均濃度−最小平均濃度)を当該セグメントSGの欠陥レベルとして決定して、その分布を図3又は図4のように二次元又は三次元の表示形式でモニタ4に表示するようにしてもよい。
【0015】
図7〜図9は、上記欠陥レベルの第2の算出方法の具体的な算出過程の一例を示すものである。図7は、検査領域(N=9)に含まれる9×9の各画素における濃度を示す値を示す。このような各画素に対応する濃度を有する検査領域の画素に対し、この具体的な算出方法では、左上側の「3×3」のセグメントSGを設定し、このセグメントSGを順次一画素ずつ右側にシフトし、右端までたどり着いたら、下方に1画素シフトして左側から一画素ずつ右側に向けてシフトすることを反復することにより、各シフト位置でのセグメント内の平均値を算出する。例えば、図7に示す左上端にセグメントSGが位置する場合((長方形で囲んだセグメント)は、そのセグメント内に含まれる画素の濃度の平均値は、(39+48+47+45+65+41+35+39+65)/9という計算式で求めることができ、計算結果は「47.1」という値となる。
【0016】
図8は、上記のように求めた各セグメントSGの平均濃度を列挙して図である。先の「47.1」は図8では左上に表示されている。この図8に列挙した各セグメントSGの平均濃度の値に対して、これを3×3のブロック(図8に長方形で囲んだブロック)に分け、このブロックにおける中央の値(図8の例では「52.2」)とその回りの8つの値との間の差分の最大値を求める。左上端の長方形で囲んだブロックでは、左下の「43.0」との差分値が最大値に該当し、その値は(52.2−43.0)=「9.2」である。次いで、3×3のブロックを左端から列方向(右方向)に一行ずつシフトし、右端までたどり付いたら、下方に一列シフトして左端から一行ずつ右端に向けてシフトすることを反復することにより、各シフト位置でのブロックにおける最大差分値を求めた結果が図9である。先の左上端のブロックの最大差分値「9.2」は、図9の左上に表示されている。
【0017】
図9の差分値データは各セグメントSG間での傷レベル変化を表すことになり、傷レベル変化として、この検査領域においては、図9を参照すると「2.3」から「20.7」が存在することになり、この値を用いて、例えば図3に示すような色相表示を行なうことができる。その際、単純に色相表現を行なう手法としては、元々各画素の濃度値として「0」から「255」の256の値で測定可能な場合、この256に対応する256階調からなる色相環を適応することにより、より細やかな傷レベル変化を表現することができる。変形例として、0〜255の256の間をいくつかのレンジに分割し、各レンジに対して色を割り当てることにより、或程度はおおまかになるものの、全体的にクリアに傷レベル変化を明確に表現することができる。この2つの表現手法のいずれかを採用するかは任意であるが、この二つの手法をオペレータが選択画面によって選択可能としてもよい。
【0018】
また、上述したような考えに基づく色相の各濃度値への割り当てを行なう場合、傷レベル変化が図9に示すように「2.3」〜「20.7」と比較的狭い範囲に分布するような場合には、その傷レベル変化に対応する色の変化が少ないため、目視によって認識することが困難な場合がある。このような場合は、上述した色相環の基本的な割り当て以外に追加の機能として、256階調からなる色相環の中を、上述した傷レベル変化「2.3」〜「20.7」のレンジに対応した「2」〜「21」の20段階に自動的に分割し、その各分割レンジの中心に位置する色を上述した各傷レベルに付与することによって、変化の少ない傷レベル変化であっても、これを目視可能とすることのできる機能を用意し、これをオペレータが選択可能とすることも可能である。
【0019】
欠陥レベルの第3の算出方法として、検査領域に含まれる画素をN×N(Nは画素数)のセグメントで分割し、各セグメントSGの画素濃度の平均濃度を算出し、一定方向(縦又は横方向)に隣接するセグメント間の平均濃度の差分を欠陥レベルとして決定して、その分布を図3又は図4のように二次元又は三次元の表示形式でモニタ4に表示するようにしてもよい。
【0020】
欠陥レベルの第4の算出方法として、検査領域に含まれる画素をN×N(Nは画素数)のセグメントで分割し、各セグメントに含まれる画素濃度の平均濃度を当該セグメントの欠陥レベルとして決定して、その分布を図3又は図4のように二次元又は三次元の表示形式でモニタ4に表示してもよい。
【0021】
欠陥レベルの第5の算出方法として、ウェーブレット変換を利用して行うこともできる。ウェーブレット変換を利用する場合には、まず白黒濃淡画像を元画像として、ウェーブレット変換し、次いで係数の大きいところをしきい値でリミットをかけ、逆ウェーブレット変換してテクスチャ除去画像を生成する。次いで、元画像とこのテクスチャ除去画像との差を欠陥レベルとして表示してもよい。
【0022】
検出可能な欠陥部位の大きさ(例えば傷の大きさ)は、セグメントの大きさ(Nの大小)によって決まる。図10〜図12は、画像処理装置1で検出可能な欠陥部位の大きさに関し、この大きさをユーザが設定するための具体例を例示するものである。画像処理装置は既知のように様々な検査を実行できるが、図10に示すメニューから「傷」を選択することにより欠陥検査を設定することができる。次いで、図11のレビュー画像から欠陥検査を行う計測範囲を設定する。次いで、図11に例示するようにセグメントSGの大きさ設定するためのダイアログボックスを重畳表示させ、このダイアログボックスを使ってセグメントSGの大きさ(上述した画素数N)を設定することができる。セグメントSGのサイズを大きな値に設定することで、大きな欠陥(大きい傷)だけを欠陥として認識させることができ、逆に、セグメントSGのサイズを小さな値に設定することで、小さな欠陥(小さな)だけを欠陥として認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】画像処理装置の欠陥検査に関する従来の表示例を示す図である。
【図2】画像処理装置の全体構成を示す図である。
【図3】実施例の欠陥検査に関する表示例を示す図である。
【図4】実施例の欠陥検査に関する他の表示例を示す図である。
【図5】欠陥レベルの算出方法に関する一例を説明するための図である。
【図6】欠陥レベルの算出方法に関する他の例を説明するための図である。
【図7】欠陥レベルの具体的な算出方法を説明するための図であり、検査領域の各画素の濃度値を示す図である。
【図8】図7に図示の各セグメントの平均濃度を示す図である。
【図9】図8に示す各セグメント間の傷レベル変化の数値を示す図である。
【図10】画像処理装置の各種の検査の中から欠陥検査を選択するための具体的なメニューを示す図である。
【図11】モニタを使って検査範囲を設定する例を示す図である。
【図12】検出する欠陥(傷)の大きさを設定するためのダイアログボックスを例示する図である。
【符号の説明】
【0024】
1 画像処理装置
2 カメラ
3 画像処理装置本体
4 モニタ
SG 欠陥レベルの算出のための設定されたセグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査領域に含まれる画素のセグメントに含まれる各画素の濃度の平均濃度を算出し、
該平均濃度に基づいて決定した欠陥レベルの分布を二次元又は三次元の表現形式で表示することを特徴とする画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法。
【請求項2】
前記平均濃度を欠陥レベルとして決定して、その分布を二次元又は三次元の表現形式で表示する、請求項1に記載の画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法。
【請求項3】
隣接するセグメント間の平均濃度の差分を欠陥レベルとして決定して、その分布を二次元又は三次元の表現形式で表示する、請求項1に記載の画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法。
【請求項4】
一つのセグメントに着目したときに、当該セグメントとその周りに隣接するセグメントとの間で存在する最大平均濃度と最小平均濃度との差分を欠陥レベルとして決定して、その分布をその分布を二次元又は三次元の表現形式で表示する、請求項1に記載の画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法。
【請求項5】
前記セグメントを所定の画素数ずつシフトさせながら、該セグメントの平均濃度を算出する、請求項1に記載の画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法。
【請求項6】
前記所定の画素数をオペレータが任意に設定可能である、請求項2に記載の画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法。
【請求項7】
前記セグメントに含まれる画素数をオペレータが任意に設定可能である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像処理装置を用いた欠陥検査の表示方法。

【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−78380(P2006−78380A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263719(P2004−263719)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】