説明

画像処理装置及びその制御方法

【課題】ジョブを実行中に指定された緊急の新規ジョブが遅滞なく実行される画像処理装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】
原稿データを1ページ単位で画像処理して送信用データを作成する画像処理部122と、送信用データを送信する通信部112と、画像処理及び送信処理を含むジョブの指定を受付ける操作部130と、ジョブの種類を判定してジョブの実行タイミングを決定する制御部102とを備え、ジョブにしたがって画像処理を実行中に、新たなジョブが指定された場合、制御部102は、実行中のジョブ及び新たなジョブの種類を判定して新たなジョブの実行タイミングを決定し、画像処理部122は、決定されたタイミングにしたがって、新たなジョブに含まれる画像処理を実行する。これにより、ジョブを実行中に指定された緊急の新規ジョブが遅滞なく実行されるので、ユーザの待ち時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョブを実行中に緊急の新規ジョブの実行が指示された場合に、遅滞なく新規ジョブを実行することができる画像処理装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
帳票、見積書等の書類を相手先に届ける方法として、従来では、ファクシミリ(以下、FAXともいう)が広く利用されてきた。近年では、これらの書類を電子データとして電子メールに添付し、ネットワークを介して相手先に送信する方法も一般的に行なわれるようになっている。送信相手先の受信装置(パーソナルファクシミリ、ファクシミリ複合機、パーソナルコンピュータ(以下PCという)等)に応じて、送信方法を使い分けることができるようにもなってきた。
【0003】
例えば、画像処理装置の一種として、コピー、プリント、ファクシミリ、及びスキャナ等、複数の機能を備える複合機(MFP(MultiFunction Peripheral))が普及している。MFPは、スキャナにより読取った原稿のデジタルデータ、通信回線を介して受信したデジタルデータ等に基づき、記録紙上に画像を形成するだけではなく、それらのデジタルデータを画像処理して、FAX又は電子メールとして送信することができる。
【0004】
MFPを用いた送信方法の1つとして、複数の相手先に同じ文書の送信を行なう、いわゆる同報送信がある。同報送信を行なう場合、送信原稿をMFPにセットして送信相手先を順次設定し、スタートキー等の送信実行ボタンを押す。セットされた原稿が読取られ、画像変換(ファクシミリデータ又は電子メールに添付するデータへの変換)された後、設定された送信相手先への送信が順次行なわれる。
【0005】
この同報送信の場合、送信相手先の受信装置は全てファクシミリ装置、又は全てPCであるとは限らず、ファクシミリ装置とPCとが混在する場合もある。すなわち、ファクシミリ装置とPCとに対して、同報送信を行なう場合がある。そのような場合、MFPでは、相手先受信装置に応じた送信画像を準備する必要がある。例えば、相手先受信装置がカラーファクシミリであればカラーファクシミリ用の画像データを作成する必要がある。相手先受信装置がモノクロファクシミリであればカラー原稿であっても、モノクロファクシミリ用の画像データを作成する必要がある。また、相手先受信装置がPCであれば、電子メールに添付できる形式の画像データを作成する必要がある。さらに、相手先受信装置の性能によって、対応可能な解像度も異なり、解像度に応じた画像データを作成しなくてはならない。
【0006】
上記のように、MFPが送信相手先に応じて画像データを作成する場合、原稿の読取りが完了して、MFPの画像読取部が解放されていたとしても、MFP内部では画像生成処理がバックグランドジョブとしてMFPのハードウェアリソースを長く占有してしまう。そこで、例えば下記特許文献1のように、他のジョブに使われたくないリソースを、処理開始時にユーザが指定することで、指定したリソースを占有できる画像形成装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−72512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、あるジョブがMFPのハードウェアリソースを長く占有している期間に、別のユーザがそのMFPを利用(別の送信ジョブ実行)しようとしても、実行中のバックグラウンドジョブの処理が残っているため、ハードウェアリソースの競合により、新規の送信ジョブの画像生成処理が遅れてしまい、不都合が生じる。特に、緊急に送信する必要がある場合に問題となる。
【0009】
図1を参照して具体的に説明する。図1において、縦方向には各処理が配置されており、横方向は時刻を表す。図1では、最初にジョブJobAの実行が指示され、ジョブJobAの実行中に、次のジョブJobBの実行が指示された場合を示す。ジョブJobAは、ワンスキャンマルチフォーマット送信(FAX送信及び電子メール送信(ScanToE−mail))である。JobAでは、26ページの原稿をスキャンして記憶装置に画像データを記憶しながら、原稿1ページの画像データを記憶する度に、FAX送信用画像データを作成してFAX送信する。26ページのFAX送信の後、記憶装置から画像データを読出して、電子メールに添付して送信する。ジョブJobBは、26ページの原稿をスキャンし、FAX送信するジョブである。P1〜P26は、第1ページ〜第26ページに関する処理であることを表す。2つのジョブを区別するために、ジョブJobBの処理には斜線を引いている。
【0010】
時刻t1において、ジョブJobAの原稿読取が開始し、時刻t1において、原稿1ページの読取が完了し、その直後にFAX送信用の画像作成処理が開始する。時刻t3において、FAX送信用の画像作成処理(26ページ分)が完了し、その直後にScanToE−mail用の画像作成処理が開始する。1ページ目のScanToE−mail用の画像データを作成中、時刻t4において、ジョブJobBが開始する。この状態では、ジョブJobAに関する読取処理は完了しているので、MFPは、ジョブJobBの読取処理を行なうことができる。時刻t5で、ジョブJobBの1ページ目の原稿の読取が完了し、その直後にジョブJobBのFAX用画像の作成処理が開始する。これによって、MFPの画像処理部は、ジョブJobAのScanToE−mail用の画像の作成と、ジョブJobBのFAX用画像の生成とを、時分割処理により並行して行なうことになる。MFPの処理性能(処理速度)には限界があるので、このような場合には、各画像の作成処理に要する時間が長くなる。即ち、同じ26ページの原稿のFAX用画像を作成する処理であるが、時間T2が時間T1よりも長くなってしまう。JobBが緊急にFAX送信すべきジョブであった場合、先に実行されているJobAの影響を受けて、FAX送信が遅れ、問題となる。
【0011】
上記では、MFPが、複数の画像作成を並行して実行可能である場合を説明したが、MFPによっては、この機能がなく、先のジョブJobAの画像作成が完了するまで、次のジョブJobBが実行されないものもある。そのような場合、ジョブJobBのFAX用画像データの作成処理の実行がさらに遅れ、ジョブJobBが緊急にFAX送信すべきジョブであった場合、より一層問題となる。
【0012】
したがって、本発明は、ジョブを実行中に緊急の新規ジョブの実行が指定された場合にも、その新規ジョブの処理が遅滞なく実行され、ユーザの待ち時間を短縮することができる画像処理装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、下記によって達成することができる。
【0014】
即ち、本発明に係る画像処理装置は、原稿データを1ページ単位で画像処理し、送信先に応じた送信用データを作成する画像処理部と、送信用データを送信先に送信する送信部と、画像処理部による画像処理及び送信部による送信処理を含むジョブの指定を受付ける入力部と、指定されたジョブの種類を判定する判定部と、判定部によって判定されたジョブの種類を用いて、このジョブを実行するタイミングを決定するタイミング決定部と、を備え、画像処理部が、入力部によって指定されたジョブにしたがって画像処理を実行中に、入力部によって新たなジョブが指定された場合、判定部は、実行中のジョブの種類及び新たなジョブの種類を判定し、タイミング決定部は、判定部によって判定された実行中のジョブの種類及び新たなジョブの種類に応じて、新たなジョブを実行するタイミングを決定し、画像処理部は、タイミング決定部によって決定されたタイミングにしたがって、新たなジョブに含まれる画像処理を実行する。
【0015】
好ましくは、新たなジョブを実行するタイミングは、新たなジョブが指定された後であって、画像処理部による1ページ単位での画像処理が終了した時点である。
【0016】
より好ましくは、新たなジョブが指定されたときに実行されていたジョブの1ページ単位で行なう画像処理は、複数の画像処理を含み、新たなジョブを実行するタイミングは、新たなジョブが指定された後であって、画像処理部によって、複数の画像処理のうちの1つの画像処理が終了した時点である。
【0017】
さらに好ましくは、画像処理部は、新たなジョブを実行して1ページの画像処理を終了した後、新たなジョブを実行する前に実行していたジョブと新たなジョブとを交互に実行する。
【0018】
好ましくは、判定部は、さらに、ジョブの種類に応じて優先度を判定し、タイミング決定部は、判定部によって判定された実行中のジョブの優先度及び新たなジョブの優先度のうち、優先度が高い方のジョブが優先的に実行されるように、新たなジョブを実行するタイミングを決定する。
【0019】
より好ましくは、ジョブがFAXのダイレクト送信である場合、判定部は、FAXのダイレクト送信のジョブの優先度を、その他の種類のジョブの優先度よりも高いと判定する。
【0020】
さらに好ましくは、ジョブが複数種類の送信処理を含む場合、判定部は、ジョブの送信開始前と送信開始中とで、ジョブの優先度の判定結果を変更する。
【0021】
好ましくは、複数種類の送信処理を含むジョブは、FAXのダイレクト送信とインターネットFAX送信とを含むワンスキャンマルチフォーマット送信であり、判定部は、FAXのダイレクト送信の優先度を、インターネットFAX送信の優先度よりも高いと判定する。
【0022】
好ましくは、ジョブがFAXのメモリ送信である場合、判定部は、FAXのメモリ送信の送信中の優先度を、送信開始前の優先度よりも高いと判定する。
【0023】
また、本発明に係る画像処理装置の制御方法は、画像処理装置において、画像処理及び送信処理を含むジョブの指定を受付けるステップと、指定されたジョブの種類を判定するステップと、判定されたジョブの種類を用いて、このジョブを実行するタイミングを決定するステップと、原稿データを1ページ単位で画像処理し、送信先に応じた送信用データを作成するステップと、送信用データを送信先に送信するステップとを含み、さらに、ジョブにしたがって画像処理を実行中に、新たなジョブが指定された場合、実行中のジョブの種類及び新たなジョブの種類を判定するステップと、判定された実行中のジョブの種類及び新たなジョブの種類に応じて、新たなジョブを実行するタイミングを決定するステップと、タイミングにしたがって、新たなジョブに含まれる画像処理を実行するステップとを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ジョブを実行中に新規ジョブの実行が指定された場合、新規ジョブが優先的に実行すべきジョブであれば、実行中のジョブよりも新規ジョブが先に実行される。したがって、緊急の新規ジョブが遅れることなく実行され、ユーザの待ち時間を短縮することができる。
【0025】
新規ジョブが実行されるタイミングは、実行中のジョブの画像処理が、原稿1ページに対して終了した時点とすることにより、ハードウェアリソースが効率的に使用される。
【0026】
ジョブの種類に応じて予め優先度を設定しておくことで、ジョブの中断及び実行の制御を効率的に行なうことができる。また、FAXのメモリ送信(原稿の画像データを一旦メモリに記憶してからFAX送信する機能)、ワンスキャンマルチフォーマット送信(スキャンした原稿を異なる複数の方法で送信する機能)等、ジョブによっては、ジョブの進行状況に応じて優先度を適切に変更することにより、ジョブの中断及び実行の制御を適切に行ない、エラーの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の複数のジョブの実行を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の外観を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明のキュー(待ち行列)の状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像処理装置において実行される、ジョブをキューに登録するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る画像処理装置において実行される、ジョブの優先度に応じて処理順序を変更するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る画像処理装置における複数のジョブの実行を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0029】
本発明の実施の形態に係る画像処理装置は、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、及びプリンタ機能等の複数の機能を備えたデジタル複合機である。
【0030】
図2を参照して、画像処理装置100は、原稿読取部110、画像形成部120、操作部130、給紙部140、手差し給紙トレイ142、及び排紙処理部150を備えている。操作部130は、タッチパネルディスプレイ132及び操作キー部134を備えている。タッチパネルディスプレイ132は、液晶パネル等で構成された表示パネルと、表示パネルの上に配置され、タッチされた位置を検出するタッチパネルとを含む。操作キー部134には、図示しないいくつかの機能キーが配置される。操作キー部134には、テンキーが配置される場合もある。
【0031】
図3を参照して、画像処理装置100は、画像処理装置100全体を制御する制御部(以下、CPUという)102と、プログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)104と、揮発性の記憶装置であるRAM(Random Access Memory)106と、通電が遮断された場合にもデータを保持する不揮発性記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)108とを備えている。ROM104には、画像処理装置100の動作を制御するのに必要なプログラム及びデータが記憶されている。
【0032】
画像処理装置100はさらに、画像処理部122、画面生成部124、通信部112、及びバス114を備えている。CPU102、ROM104、RAM106、HDD108、通信部112、原稿読取部110、画像形成部120、画像処理部122、画面生成部124、操作部130は、バス114に接続されている。各部間のデータ(制御情報を含む)交換は、バス114を介して行なわれる。CPU102は、バス114を介してROM104からプログラムをRAM106上に読出して、RAM106の一部を作業領域としてプログラムを実行する。即ち、CPU102は、ROM104に格納されているプログラムにしたがって画像処理装置100を構成する各部の制御を行ない、画像処理装置100の各機能を実現する。
【0033】
通信部112は、外部のネットワーク180に接続され、画像処理装置100がネットワーク180を介して外部装置と通信するためのインターフェイスとして、例えばNIC(Network Interface Card)を備えている。また、通信部112は、外部の電話回線(図示せず)に接続され、画像処理装置100が電話回線を介して外部装置とFAX通信するためのインターフェイスであるFAXモデムを備えている。
【0034】
画像処理装置100が備える画像通信モードとしては、FAXモデムにより電話回線を介して画像データを送受信するファクシミリ通信モード、NICによりインターネットを介して画像データを送受信するインターネットファクシミリ通信モード、画像データを電子メールに添付して送受信する電子メール通信モード(スキャンtoメール)、及びネットワークを介して画像データをPCの特定のフォルダに転送する画像転送モード(スキャンtoフォルダ)等がある。
【0035】
原稿読取部110は、画像を読取るためのCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)と、原稿台、自動原稿送り装置(ADF)等にセットされた原稿を検知する原稿検知センサとを備え、原稿を読取って画像データを入力する。画像データは画像メモリ(図示せず)に一時的に記憶される。画像処理部122は、読取った画像データに対して、種々の画像処理を実行する。画像形成部120は、画像データを記録紙に印刷する。画像データは、必要に応じてHDD108に記憶される。
【0036】
給紙部140は画像形成用の記録紙を保持する。手差し給紙トレイ142は、記録紙を手差し給紙するためのトレイである。
【0037】
操作部130は、ユーザによる画像処理装置100に対する指示等の入力を受付ける。タッチパネルディスプレイ132に表示される画像は、画面生成部124によって生成される。ユーザは、タッチパネルディスプレイ132に表示される画面によって、画像処理装置100の状態及びジョブの処理状況等の確認を行なう。タッチパネルディスプレイ132に表示されたキーを、表示パネルに重ねられたタッチパネル上で選択する(タッチパネル上の該当部分にタッチする)ことによって、画像処理装置100の機能設定及び動作指示等ができる。
【0038】
CPU102は、操作部130に設けられたタッチパネルディスプレイ132、入力キー等に対するユーザの操作を監視すると共に、タッチパネルディスプレイ132に画像処理装置100の状態に関する情報等のユーザに通知すべき情報等を表示する。
【0039】
以下、画像処理装置100が搭載している機能(コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能、及びファクシミリ機能)を実行する各モードについて簡単に説明する。
【0040】
(コピーモード)
画像処理装置100を複写機として利用する場合には、原稿読取部110によって読取られた原稿の画像データ(以下、原稿データともいう)が、画像形成部120から複写物として出力される。
【0041】
原稿読取部110に装備されたCCDにより、読取位置にセットされた原稿の画像を電子的に読取ることができる。読取られた画像データは、画像メモリ上に出力データ(印刷用データ)として完成された後、HDD108に記憶される。原稿が複数ある場合には、この読取り動作及び記憶動作が繰返される。その後、操作部130から指示された処理モードに基づいて、HDD108に記憶された画像データが適切なタイミングで順次読出されて画像メモリに送られる。そして、画像形成部120での画像形成のタイミングに合わせて、画像データは画像形成部120へと伝送される。
【0042】
読取った画像データを複数枚印刷する場合にも、同様に出力データとしてページ単位でHDD108に記憶され、HDD108から画像メモリに送られ、出力枚数の分だけ繰返し、画像形成のタイミングに合わせて画像形成部120へ伝送される。
【0043】
給紙部140では、記録紙がピックアップローラによって引き出され、複数の搬送用ローラによって、画像形成部120まで搬送される。画像形成部120では、帯電された感光体ドラムを入力された画像データに応じて露光することにより、感光体ドラムの表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する。感光体ドラム上の静電潜像部分にトナーを付着させた後、トナーによる画像を、転写ベルトを介して、搬送された記録紙に転写される。その後、記録紙は加熱及び加圧され(これにより記録紙に画像が定着する)、排紙トレイ152に排出される。
【0044】
(プリンタモード)
画像処理装置100をプリンタとして利用する場合には、通信部112を介して受信した画像データが画像メモリ等を介して画像形成部120から出力される。
【0045】
通信部112は、ネットワーク180に接続されたコンピュータ等の端末装置(図示せず)から画像データを受信する。受信された画像データは、出力画像データとしてページ単位に画像メモリに送られた後、HDD108に記憶される。その後、画像データは、再びHDD108から画像メモリに送られ、上記したコピーモードと同様に画像形成部120へと伝送され、画像形成が行なわれる。
【0046】
(スキャナモード)
画像処理装置100を、例えばネットワークスキャナとして利用する場合には、原稿読取部110において読取られた原稿データを、通信部112からネットワーク180を介してコンピュータ等の端末装置へ送信する。この場合にも、原稿読取部110に装備されたCCDにより原稿を電子的に読取る。そして、読取られた原稿データは、画像メモリ上に出力データとして完成された後、HDD108に記憶される。その後、画像データは、再びHDD108から画像メモリに送られ、操作部130を介して指定された送信先との通信を確立した上で、通信部112から、指示された送信先へと送信される。
【0047】
(ファクシミリモード)
画像処理装置100は、FAXモデム及び電話回線網を介して外部のファクシミリ装置とFAX送受信することができる。
【0048】
画像処理装置100をファクシミリ装置として使用する場合、画像処理装置100は、HDD108から画像データを読出して、FAX通信用のデータ形式に変換して、FAXモデム及び電話回線網を介して外部のファクシミリ装置に送信することができる。また、ファクシミリ装置からFAX受信したデータを、画像データとして画像メモリ上に形成し、上記と同様に、HDD108への記憶、画像形成部120による印刷を実行することができる。
【0049】
FAX送信を実行する場合、ユーザはタッチパネルディスプレイ132に表示された画面及び操作キー部134を操作して、FAX送信の条件を設定した後、FAX送信の実行を指示するキーを押す。FAX送信の条件には、相手先のFAX番号、原稿のサイズ、送信画像の濃度、送信画像の画質等がある。同じ原稿を複数の送信先にまとめて送信する同報送信する場合には、送信先毎のFAX番号、送信先毎の送信条件を設定する。
【0050】
以下、画像処理装置100において、複数のジョブの実行が指示される場合に、CPU102が実行するプログラムの制御構造について説明する。具体的には、画像処理装置100に対してジョブが指示された場合にジョブをキューに登録するプログラム、及び、登録されたキューにしたがってジョブを実行するプログラムの制御構造について説明する。これらのプログラムは、マルチタスクとして並列に実行される。
【0051】
ここで、ユーザが画像処理装置100の操作部130を操作して、実行したい機能に関する条件を設定した後、操作部130に表示された画面の開始キーにタッチして実行を指示した場合、指示された内容がジョブとして、例えば図4に示すようにキュー(待ち行列)に登録される。キューを記憶するための領域は、RAM106上に確保される。キューには、ジョブを特定する情報(例えばジョブの名前、ジョブID等)が登録され、実際のジョブの条件は、キューとは別の領域に、ジョブを特定する情報と対応させて記憶されている。
【0052】
図4において、縦方向がジョブの優先度を表す。上に行く程優先度が高くなり、優先的に、即ち先に実行される。図4では、優先度が3段階に設定されている。横方向は、同じ優先度のジョブが実行される順序を表し、FIFO(先入先出)方式で、先に登録されたジョブから順に実行される。後述するように、ジョブは左詰で登録される。したがって、同じ優先度のジョブは、左に位置する程先に実行される。図4では、6つのジョブJob1〜Job6がキューに登録されており、Job1、Job2、Job3、Job4、Job5、Job6の順で実行される。
【0053】
図4に示したキューの状態は、表1の優先度デーブルにしたがって作成されている。表1は、原稿のスキャン及び送信に関連するジョブに優先度を設定したものである。優先度は“1”、“2”、“3”の順で低くなる。
【0054】
【表1】

【0055】
ネットワークスキャンとは、読取った原稿データを、所定のファイル形式(PDF、TIFF等)に変換してネットワークを介してPC等に送信する機能である。「送信サイズ制限有り」とは、送信用データのサイズに上限が設定されることを意味する。これは、電子メールの添付ファイルとして送信する場合に、受信容量が制限されている送信先に対応するための機能である。「送信サイズ制限有り」の条件でネットワークスキャンを実行し、送信用データが上限値を超えた場合、例えば、画像処理装置100の操作部130にエラーが表示され、ユーザの指示を待受ける状態になる。この状態では、送信は行なわれない。「送信サイズ制限無し」とは、送信用データの容量に制限が無いことを意味する。「送信サイズ制限有り」の優先度が、「送信サイズ制限無し」の優先度よりも高く設定されているのは、送信用データのサイズが上限値を超えるか否かは、実際に作成してみないと分からないからである。即ち、上限値を超えた場合のエラーを速やかにユーザに提示するためには、送信用データの作成を優先的に実行する必要があるからである。通常、「送信サイズ制限有り」のネットワークスキャンのジョブを実行している間は、ユーザが別のジョブを指定できないように、操作部130(操作画面)が設計される。
【0056】
I−FAX(Internet FAX)とは、読取った原稿データを、ネットワークを介して他のインターネットFAX装置、PC等に送信する機能である。例えば、原稿を電子メールの添付ファイルとして送信する。「送信サイズ制限有り」及び「送信サイズ制限無し」に関しては上記と同じである。
【0057】
FAXのメモリ送信とは、原稿全てをスキャンして一旦メモリ又はHDD108に記憶してから、FAX送信用の画像データを作成して、電話回線を介してFAX送信する機能である。FAXのメモリ送信では、FAX送信開始の前後で優先度が異なる。FAX送信開始前では優先度は“3”であるが、送信開始後には優先度は“1”である。これは、FAX送信を開始する前には、処理(原稿をスキャンしてHDD108等に記憶する処理)を中断しても支障がないが、一旦FAX送信(電話回線を介した通信)を開始した場合、送信中に処理(HDD108から原稿データを読出してFAX送信用の画像データを生成する処理)が遅延すると、FAX通信エラーが発生する可能性があること、及び、通話時間が長くなり課金が高くなる可能性もあるからである。
【0058】
FAXのダイレクト送信とは、原稿データを読取りながらFAX送信する機能である。
【0059】
USBメモリスキャンとは、読取った原稿データを、画像処理装置100に接続されたUSBメモリに記憶する機能である。
【0060】
FAXのダイレクト送信は優先度が“1”であり、最も優先度が高いので、図4に示したように、Job1は最上段に位置する。I−FAXの送信サイズ制限有り、ネットワークスキャンの送信サイズ制限有りは“2”であり、図4に示したように、Job2〜Job3は中断に位置する。ネットワークスキャンの送信サイズ制限無し、及び、I−FAXの送信サイズ制限無しは“3”であり、図4に示したように、Job5及びJob6は最下段に位置する。
【0061】
図4の状態で、表3に示した何れかのジョブの実行が新たに指示されると、該当する優先度の行において、ジョブが記憶されているセルのうちの右端のセルの右隣のセルに、そのジョブが登録される。あるジョブが実行されると、そのジョブのセルの右側のセルが左に順次シフトされる。例えば、Job2の実行が完了すれば、Job3が元のJob2のセルにシフトされ、Job4が元のJob3のセルにシフトされる。Job4の右側のセル(空データ)も順次シフトされる。最後に、右端のセルには0が書込まれる。
【0062】
以下においては、ジョブの優先度を示す表1の情報がHDD108に記憶されているとする。図5を参照して、画像処理装置100においてジョブが指示された場合にジョブをキューに登録するプログラムのステップ300において、CPU102は、操作部130が操作されたか否かを判定する。操作されたと判定された場合、制御はステップ302に移行する。そうでなければ、ステップ300が繰返される。
【0063】
ステップ302において、CPU102は、ジョブの実行が指示されたか否かを判定する。具体的には、ユーザが操作部130を操作して、表1に示した何れかのジョブの実行を指示するキーを押した場合に、CPU102は、ジョブの実行が指示されたと判定する。ジョブの実行が指示されたと判定された場合、制御はステップ304に移行する。そうでなければ、制御はステップ308に移行し、CPU102は終了する指示か否かを判定し、終了する指示であれば終了する。そうでなければ、ステップ310においてCPU102は、該当する処理を実行してステップ300に戻る。これによって、ユーザが操作部130を操作して、ジョブの実行を指示する前に、ジョブの条件(例えば、FAX送信であれば、相手先のFAX番号、原稿のサイズ、濃度、画質等)を設定することができる。
【0064】
ステップ304において、CPU102は、表1を参照して、ステップ300で実行を指示されたジョブの優先度を決定する。
【0065】
ステップ306において、ステップ300で実行を指示されたジョブを、ステップ304で決定された優先度で、RAM106上のキューに登録する。キューへの登録方法に関しては上記した通りであるので、説明を繰返さない。その後、制御はステップ300に戻る。
【0066】
以上によって、図4に示したようなキューが作成される。
【0067】
図6を参照して、登録されたキューにしたがってジョブを実行するプログラムのステップ400において、CPU102は、RAM106上のキューにジョブが登録されているか否かを判定する。ジョブが登録されていると判定された場合、制御はステップ402に移行する。そうでなければ、ステップ400が繰返される。
【0068】
ステップ402において、CPU102は、キューの中から最優先で実行すべきジョブを選択し、該当するジョブの条件を取得する。キューの中で最初に実行すべきジョブは、最も優先度の高いジョブのうち、最初にキューに登録されたジョブ(最も左に位置するジョブ)である。図4では、Job1である。ジョブの条件には、処理対象の全原稿のページ数Imaxが含まれる。また、繰返し処理のカウンタIに“1”を設定する(I=1)。後述するように、カウンタIは処理対象のページを特定する情報でもある。
【0069】
ステップ404において、CPU102はステップ402で選択されたジョブが、中断中のジョブであるか否かを判定する。ジョブの中断の詳細は後述する。中断中のジョブを特定する情報は、RAM106に記憶されている。したがって、CPU102は、中断中のジョブを特定する情報(以下「中断ジョブ情報」という)がRAM106に記憶されているか否かを判定し、記憶されている場合には、ステップ402で選択されたジョブが中断ジョブ情報と一致するか否かを判定する。一致する場合にのみ、中断中のジョブであると判定され、制御はステップ406に移行する。一致しない場合、又は、中断ジョブ情報がRAM106に記憶されていない場合には、中断中のジョブでないと判定され、制御はステップ408に移行する。
【0070】
ステップ406において、CPU102は、処理対象のページを指定する。具体的には、RAM106に記憶された、中断中のジョブによって処理が完了したページを特定する情報(以下「処理済ページ情報」という)Isを読出し、カウンタIにIs+1を設定する(I=Is+1)。これによって、中断中のジョブであれば、最後に完了したページの次のページが処理対象となる。
【0071】
ステップ408において、CPU102は、カウンタIに対応するページを対象として、ステップ402で選択されたジョブを、画像処理部122等を制御して行なう。ここでの処理は、主として、FAXダイレクト送信用の画像、I−FAX用の画像等の、ジョブに応じた画像データを1ページ作成する処理である。ステップ406の後にステップ408が実行される場合、ステップ408でセットされたカウンタI=Is+1に対応するページ、即ち処理済みのページの次のページが処理対象となる。1ページの処理が終われば、カウンタIに“1”を加算する(I=I+1)。なお、画像処理の前に原稿の読取処理が必要である場合には、少なくとも1ページの原稿が読取られるまで待機した後、画像処理が実行される。また、FAXのダイレクト送信における送信処理のように、1ページ画像を作成する毎に行なう処理であれば、ステップ408で実行される。一方、電子メール送信(ScanToE−mail)における送信処理のように、全ての画像データを作成した後に行なう処理は、ここでは実行されない。
【0072】
ステップ410において、CPU102は画像処理が完了したか否かを判定する。具体的には、CPU102は、現在のカウンタIが、ステップ402で取得した全原稿のページ数Imaxよりも大きいか否かによって、最後のページまで画像処理が完了したか否かを判定する。最終ページであると判定された場合、制御はステップ416に移行する。そうでなければ、制御はステップ412に移行する。
【0073】
ステップ412において、CPU102は、キューの中に、現在のジョブ(ステップ408で実行されたジョブ)よりも優先度が高く、すぐに実行可能なジョブがあるか否かを判定する。上記したジョブをキューに登録するプログラム(ステップ300〜310)と、本プログラムとはマルチタスクで実行されるので、ジョブの実行中に、ユーザは操作部130を操作してキューにジョブを登録することができる。より優先度が高く、すぐに実行可能なジョブがあると判定された場合、ステップ414に移行する。そうでなければ、ステップ408に戻る。画像処理の前に原稿の読取処理が必要である場合には、少なくとも1ページの原稿が読取られるまで待機する必要があるので、より優先度が高いジョブが登録されていても、該当する画像処理をすぐに実行できない場合には、現在のジョブを実行するために、ステップ414は実行されず、ステップ408に戻る。
【0074】
ステップ414において、CPU102は、現在のジョブを中断して、キューの中から最優先で実行すべきジョブを選択し、該当するジョブの条件を取得する。このとき、CPU102は、中断ジョブ情報及び処理済ページ情報Isを、対応させてRAM106に記憶する。中断ジョブ情報は、ジョブ名、ジョブID等の、ステップ408で実行したジョブを特定する情報である。処理済ページ情報Isは、ステップ408で処理したページを特定する情報であるカウンタIの値であるので、既にステップ408で“1”が加算されたIから“1”を減算した値である(Is=I−1)。このとき、繰返し処理のカウンタIに“1”を設定する(I=1)。
【0075】
ステップ408〜414が繰返されることによって、あるジョブの実行中に、実行中のジョブよりも優先度の高いジョブがキューに登録されていなければ、そのジョブが最後のページまで実行される。あるジョブの実行中に、実行中のジョブよりも優先度の高いジョブがキューに登録された場合、より優先度の高いジョブが実行される。例えば、優先度が“1”(最も優先度が高い)のジョブの実行中に、新たなジョブがキューに登録されても、実行中のジョブが最後まで実行される。優先度“2”のジョブの実行中に、新たに優先度が“1”のジョブがキューに登録された場合、優先度“2”のジョブは中断されて、新たな優先度“1”のジョブが実行される。優先度“3”(最も優先度が低い)のジョブの実行中に、新たに優先度“2”のジョブがキューに登録された場合、優先度“3”のジョブは中断されて、新たな優先度“2”のジョブが実行される。そして、その優先度“2”のジョブの実行中に、新たに優先度“1”のジョブがキューに登録された場合、その優先度“2”のジョブは中断されて、新たな優先度“1”のジョブが実行される。したがって、優先度“1”のジョブが実行されているときには、優先度“3”のジョブ及び優先度“2”のジョブが中断していることがある。
【0076】
ステップ416において、CPU102は、ジョブが完了したか否かを判定する。ステップ408に関して上記で説明したように、最後のページに関してステップ408の処理が実行されたことで、ジョブが完了する場合と、完了しない場合とがある。ジョブが完了したと判定された場合、制御はステップ426に移行する。そうでなければ、ステップ418に移行する。
【0077】
ステップ418において、CPU102は、そのジョブにおいて継続して実行すべき処理が画像処理であるか否かを判定する。画像処理であると判定された場合、制御はステップ422に移行する。そうでなければ、制御はステップ420に移行する。
【0078】
ステップ420において、CPU102は継続して実行すべき処理を実行する。
【0079】
ステップ422において、CPU102は、継続して実行すべき処理(画像処理)が、優先度を変更して実行すべき処理であるか否かを判定する。優先度を変更すべき処理であると判定された場合、ステップ424に移行する。そうでなければ、ステップ400に戻る。
【0080】
ステップ424において、CPU102は、現在のジョブの優先度を変更した新たなジョブをキューに登録し、現在のジョブを削除し、削除されたジョブの右側のジョブを順次シフトした後、ステップ400に戻る。例えば、現在実行中のジョブがFAXのメモリ送信であり、現在の状態が通信開始前である場合、ステップ424の処理が実行される。また、図1に示したように、現在実行中のジョブがワンスキャンマルチフォーマット送信のジョブであり、FAX送信が終了し、まだ電子メール送信(ScanToE−mail))処理が残っている場合、ステップ424の処理が実行される。
【0081】
表1に示されているように、FAXのメモリ送信では、FAX送信開始の前後で優先度が異なる。FAX送信開始前では優先度は“3”であるが、FAXのメモリ送信のジョブで通信開始前の処理が完了した場合には、次の送信処理から開始するジョブを優先度“1”でキューに登録する(ステップ418)。
【0082】
また、ジョブがワンスキャンマルチフォーマット送信の場合、最初にFAXのダイレクト送信が実行されるので、その段階ではジョブの優先度は、最も高い“1”であるが、次に電子メール送信(ScanToE−mail))が実行される場合、これは表1のI−FAXに該当するので、送信サイズ制限有りの場合、優先度が“2”に変更され、送信サイズ制限無しの場合、優先度が“3”に変更される。
【0083】
ステップ426において、CPU102は、完了したジョブをキューから削除し、削除されたジョブの右側のジョブを順次シフトする。
【0084】
ステップ428において、CPU102は、終了の操作を受けたか否かを判定する。終了の操作を受けたと判定された場合、終了する。そうでなければ、処理はステップ400に戻る。
【0085】
以上によって、画像処理装置100において、あるジョブの実行中に、現在実行中のジョブよりも優先度の高いジョブが登録された場合、現在実行中のジョブを、1ページの処理が終了した時点で中断し、新たに登録されたより優先度の高いジョブを実行することができる。したがって、緊急性の高いジョブを待たせることなく、優先的に実行することができる。また、1つのジョブの中に優先度の異なる処理が含まれている場合には、ジョブの進行にしたがって各処理の優先度に応じて、実行される。
【0086】
例えば、図1に示したように、ワンスキャンマルチフォーマット送信のジョブを実行中に、FAX送信が指示された場合、画像処理装置100によってどのように処理されるかを、図5〜7を参照して説明する。図7の縦方向及び横方向の意味は、図1と同じである。
【0087】
図7において、時刻t1以前において、ユーザによって操作部130が操作され、ワンスキャンマルチフォーマット送信の実行が指示されることによって、対応するジョブ(第1ジョブ)がキューに登録される(ステップ300〜306)。これによって、時刻t1において、26ページの原稿に対してワンスキャンマルチフォーマット送信が開始する(ステップ400〜408)。原稿が1ページ読取られる度に、FAX送信用の画像データが作成され、作成された画像データは通信部112を介してFAX送信される(ステップ408)。なお、FAX送信用の画像データが作成される前に、通信部112と送信先のFAX受信装置との間での接続処理が行なわれる。
【0088】
FAXのダイレクト送信は優先度が“1”であるので、他のジョブによって中断されることなく、時刻t3まで実行され、原稿26ページ分の読取及びFAX送信が完了する(ステップ408〜412が繰返され後、ステップ416、ステップ418、ステップ422の順で実行される)。その後、電子メール送信(ScanToE−mail)の処理が開始する(ステップ424の後、ステップ400に戻る)。
【0089】
その後、新たに、26ページの原稿に対してFAXのダイレクト送信の指示がされ、対応するジョブ(第2ジョブ)がキューに登録される(ステップ300〜306)。その後、1ページ目の画像データを用いて電子メール送信の処理(電子メールに添付する画像データを指定された条件で作成する処理)の実行中に、時刻t4において、原稿の読取処理が開始する。2ページ目の画像データを用いて電子メール送信の処理(第1ジョブ)を実行中に、第2ジョブによる最初の1ページの原稿の読取が完了した。2ページ目の画像データを用いて電子メール送信の処理(第1ジョブ)が完了した時点で、より優先度が高く、実行可能なジョブがキューにあるので(ステップ412)、実行するジョブを第1ジョブから第2ジョブに変更する(ステップ414)。これによって、時刻t6〜時刻t7の間、第2ジョブが実行される(ステップ408〜412の繰返し後、ステップ410、416、420が実行される)。その後、第2ジョブが完了した時刻t7において、中断していた第1ジョブが再開される(ステップ406の後に、ステップ408〜412が繰返し実行される)。
【0090】
このように、従来(図1)では、後から緊急のFAXダイレクト送信が指示された場合、そのジョブは、前のジョブと並行して行なわれるので、完了するまでの時間T2が長くなる(T2>T1)が、本実施の形態に係る画像処理装置100によれば、前のジョブを、1ページの処理が完了して時点で中断し、より優先度の高いFAXデイレクト送信が実行される。したがって、後から指示した第2ジョブのFAXデイレクト送信は、第1ジョブのFAXダイレクト送信と同程度の時間(T2≒T1)で完了することができる。
【0091】
上記のステップ408で実行される画像処理は、複数ページの原稿データに対して、各ページの画像処理を実行する場合に限定されない。例えば、同報送信する場合には、同じページの原稿データを用いて、送信先に応じた送信用画像データを作成する処理になる。即ち、1つの送信先に送信するための1ページの送信用画像データを作成する毎に、ステップ410が実行され、その結果に応じてステップ414が実行される。
【0092】
上記では、ステップ412において、より優先度が高く、且つすぐに実行可能なジョブが登録されている場合に、ステップ414の処理を実行することを説明したが、より優先度が高いジョブであれば、すぐに実行可能でなくても、ステップ414を実行してもよい。そのようにしても、ジョブを実行中に新たに優先度の高いジョブの実行が指示された場合、その新たなジョブを速やかに実行することができる。その場合、図7において、第1ジョブの電子メール送信(ScanToE−mail)における1ページ目の処理が終わった時点で、第1ジョブが中断される。したがって、第1ジョブの電子メール送信(ScanToE−mail)における2ページ目の処理は、第2ジョブの26ページ目のFAX送信が終わった時刻t7の後に実行される。第1ジョブの電子メール送信(ScanToE−mail)の完了時刻は遅くなるが、第2ジョブが実行される時刻t6及び完了時刻t7は変わらない。
【0093】
優先度は、上記した3段階に限定されず、2段階でも、4段階以上でもよい。
【0094】
優先度がジョブの進行に応じて変化するジョブは、FAXのメモリ送信、電子メール送信(ScanToE−mail)に限定されず、それ以外のジョブであってもよい。
【0095】
ハードウェアリソースの効率的利用の観点からは、1ページの画像処理が完了した時点で中断させることが好ましいが、これに限定されない。送信用の画像データを作成するために、1ページの画像データに対して、複数の画像処理を実行する必要がある場合には、各画像処理が完了した時点で、中断させることができる。例えば、画像データの空間解像度及び色解像度を変更してI−FAX送信する場合、空間解像度を変更した時点、又は、色解像度を変更した時点で、処理を中断してもよい。1ページの高解像度フルカラー画像データを、中解像度の256階調のカラー画像データに変換する場合、例えば、高解像度フルカラー画像データを中解像度フルカラー画像データに変換した時点、又は、中解像度フルカラー画像データを同じ解像度の256階調のカラー画像データに変換した時点で、処理を中断することができる。
【0096】
上記では、画像処理装置100で実行されるジョブ毎に優先度を予め決定しておき、ジョブが指定されたときに、優先度に応じてキューにジョブを登録する場合を説明したが、これに限定されない。実行中のジョブの種類と、新たに実行を指示されたジョブの種類とに応じて、どちらを優先するかを判定できれば、優先度を考慮せずにキューにジョブを登録することができる。例えば、特定のジョブ(例えば、FAXのダイレクト送信)を他のジョブよりも優先的に実行するように定めておけばよい。このようにしても、優先的に実行すべきジョブが指定された場合、実行中のジョブを中断し、優先的に実行すべきジョブを実行することができる。優先的に実行すべきジョブが完了し、中断していたジョブも完了した場合には、FIFOで先に登録されたジョブから順に実行すればよい。
【0097】
また、ジョブが実行された場合のキューを変更する処理は、上記に限定されない。例えば、各行の先頭を示すポインタを使用すれば、キューに登録されたジョブのシフトを行なわなくてもよい。ジョブが実行されると、そのジョブのセルを削除し(データを“0”にし)、先頭を表すポインタが、削除したセルの右隣のセルを指すようにすればよい。但し、ポインタが右端のセルを指している場合には、次には左端を指すように、循環的に変更する。
【0098】
また、上記では、実行中のジョブを完全に中断して、新たなジョブのみを実行する場合を説明したが、これに限定されない。実行中のジョブと新たなジョブとを交互に実行してもよい。例えば、1ページの画像処理が終了した時点で実行中のジョブを中断し、新たなジョブを実行して1ページの画像処理を行なう。その後、新たなジョブを中断し、中断していたジョブを実行して1ページの画像処理を行なう。このように、1ページの画像処理が終了した時点で、実行していたジョブを中断し、中断していたジョブを実行する処理を繰返してもよい。
【0099】
また、上記では、表1に示したスキャン及び送信に関連するジョブを対象としたが、これに限定されない。例えば、PC等から、ネットワーク経由で画像処理装置100に画像ファイルを送信し、そのファイルの画像を同報FAX送信する場合のジョブも対象となる。さらには、コピー、プリント等を含めて、画像処理装置100が実行可能な任意のジョブについて優先度を決定しておけば、緊急に実行すべきジョブを優先的に実行することができる。実行中のジョブを中断して、より優先度の高い新たなジョブを実行するタイミングは、少なくとも1ページの画像処理が完了した時点であることが好ましい。したがって、制御対象となるジョブは、ページ単位の処理が終了した時点で中断することが可能な処理を含むジョブであることが好ましい。
【0100】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
100 画像処理装置
102 制御部(CPU)
104 ROM
106 RAM
108 HDD
110 原稿読取部
112 通信部
114 バス
120 画像形成部
122 画像処理部
124 画面生成部
130 操作部
132 タッチパネルディスプレイ
134 操作キー部
140 給紙部
142 手差し給紙トレイ
150 排紙処理部
152 排紙トレイ
180 ネットワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿データを1ページ単位で画像処理し、送信先に応じた送信用データを作成する画像処理手段と、
前記送信用データを前記送信先に送信する送信手段と、
前記画像処理手段による画像処理、及び、前記送信手段による送信処理を含むジョブの指定を受付ける入力手段と、
指定された前記ジョブの種類を判定する判定手段と、
前記判定手段によって判定されたジョブの種類を用いて、該ジョブを実行するタイミングを決定するタイミング決定手段と、を備え、
前記画像処理手段が、前記入力手段によって指定されたジョブにしたがって画像処理を実行中に、前記入力手段によって新たなジョブが指定された場合、前記判定手段は、実行中の前記ジョブの種類及び前記新たなジョブの種類を判定し、
前記タイミング決定手段は、前記判定手段によって判定された実行中の前記ジョブの種類及び前記新たなジョブの種類に応じて、前記新たなジョブを実行するタイミングを決定し、
前記画像処理手段は、前記タイミング決定手段によって決定された前記タイミングにしたがって、前記新たなジョブに含まれる画像処理を実行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記新たなジョブを実行する前記タイミングは、
前記新たなジョブが指定された後であって、前記画像処理手段による1ページ単位での画像処理が終了した時点であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記新たなジョブが指定されたときに実行されていたジョブの1ページ単位で行なう前記画像処理は、複数の画像処理を含み、
前記新たなジョブを実行する前記タイミングは、
前記新たなジョブが指定された後であって、前記画像処理手段によって、前記複数の画像処理のうちの1つの画像処理が終了した時点であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、前記新たなジョブを実行して1ページの画像処理を終了した後、前記新たなジョブを実行する前に実行していたジョブと前記新たなジョブとを交互に実行することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、さらに、ジョブの種類に応じて優先度を判定し、
前記タイミング決定手段は、前記判定手段によって判定された実行中の前記ジョブの優先度及び前記新たなジョブの優先度のうち、優先度が高い方のジョブが優先的に実行されるように、前記新たなジョブを実行するタイミングを決定することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
ジョブがFAXのダイレクト送信である場合、前記判定手段は、FAXのダイレクト送信のジョブの優先度を、その他の種類のジョブの優先度よりも高いと判定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
ジョブが複数種類の送信処理を含む場合、前記判定手段は、前記ジョブの送信開始前と送信開始中とで、ジョブの優先度の判定結果を変更することを特徴とする請求項5又は6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
複数種類の送信処理を含む前記ジョブは、FAXのダイレクト送信とインターネットFAX送信とを含むワンスキャンマルチフォーマット送信であり、
前記判定手段は、FAXのダイレクト送信の優先度を、インターネットFAX送信の優先度よりも高いと判定することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
ジョブがFAXのメモリ送信である場合、前記判定手段は、FAXのメモリ送信の送信中の優先度を、送信開始前の優先度よりも高いと判定することを特徴とする請求項5から8の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像処理装置において、
画像処理及び送信処理を含むジョブの指定を受付けるステップと、
指定された前記ジョブの種類を判定するステップと、
判定されたジョブの種類を用いて、該ジョブを実行するタイミングを決定するステップと、
原稿データを1ページ単位で画像処理し、送信先に応じた送信用データを作成するステップと、
前記送信用データを前記送信先に送信するステップとを含み、
さらに、
ジョブにしたがって画像処理を実行中に、新たなジョブが指定された場合、実行中の前記ジョブの種類及び前記新たなジョブの種類を判定するステップと、
判定された実行中の前記ジョブの種類及び前記新たなジョブの種類に応じて、前記新たなジョブを実行するタイミングを決定するステップと、
前記タイミングにしたがって、前記新たなジョブに含まれる画像処理を実行するステップとを含むことを特徴とする画像処理装置の制御方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−12873(P2013−12873A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143807(P2011−143807)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】