説明

画像処理装置及びそれを備えた医用ワークステーション

【課題】オペレータがより簡単な操作で効率的に医用画像を作成することができる画像処理装置等を提供する。
【解決手段】画像処理装置10は、記憶部18と、入力部11と、処理部13と、出力部14と、を備え、オペレータからの指示を受けて患者体内の3次元医用画像を作成する。記憶部18には、医用画像を完成させるまでの工程の中で使われる可能性のあるコマンドの候補等が、前記医用画像の種別に対応付けて記憶されている。処理部13は、オペレータによって選択された、作成したい前記医用画像の種別に対応して、前記記憶部18からコマンド候補を読み込み、それをディスプレイ30に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者を撮像して得られた元画像を用いて所定の医用画像(例えば3次元画像)を作成するのに利用される画像処理装置及び医用ワークステーションに関する。特には、オペレータがより簡単な操作で効率的に医用画像を作成することができる画像処理装置及び医用ワークステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の透視撮像装置としては、CT(Computed Tomography)スキャナ、MRI(Magnetic
Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、超音波診断装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置等がある。また、近年では、これら透視撮像装置から得られた複数の断面画像(元画像)を用いて、患者体内の所定の関心部位を3次元化することが行われている。
このような技術によれば、断層画像だけでは分かりにくい患者内部の関心部位を立体的に可視化できるので、病気の早期発見などに大いに役立っている。
【特許文献1】特開2003−190102
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したような医用画像を作成するための医用ワークステーション(コンピュータとディスプレイとからなる)は、近年、多機能が進み、より緻密な画像が得られるようになった。その反面、操作が煩雑化し、使いこなすには十分な経験と慣れが必要となっている。なお、同様の課題は、3次元画像を作成する場合に限らず、2次元画像を作成する場合においても生じうる。
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、患者を撮像して得られた元画像を用いて所定の医用画像(例えば3次元画像)を作成するのに利用される画像処理装置等に関し、オペレータがより簡単な操作で効率的に医用画像を作成することができる画像処理装置及び医用ワークステーションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の画像処理装置は、
患者を撮像して得られた元画像のデータ、及び、画像処理用のコマンドのデータを記憶する記憶部と、
オペレータからの指示を受け付ける入力部と、
オペレータによって選択された前記コマンドを認識し、それに対応する画像処理を前記元画像に施す処理部と、
該処理部によって画像処理された画像をディスプレイに表示させる出力部と、
を備える、医用ワークステーション用の画像処理装置であって、
前記記憶部には、医用画像を完成させるまでの工程の中で使われる可能性のある前記コマンドの候補及び/又は前記元画像の候補のデータが、前記医用画像の種別に対応付けて記憶されており、
前記処理部は、
オペレータによって選択された、作成したい前記医用画像の種別に対応して、前記記憶部から前記コマンドの候補及び/又は元画像の候補のデータを読み込み、前記出力部を介してそれらのコマンド候補及び/又は元画像の候補をディスプレイに表示させる。
【0006】
このような構成によれば、作成したい医用画像の種別に対応して(例えば「血管」を抽出するのか、あるいは「腸」を抽出するかの別によって)、その医用画像を作成するのに必要なコマンド等のみがディスプレイに表示される。したがって、余計なコマンド等が表示されないので、オペレータは簡単な操作で効率的に医用画像を作成することができる。
【0007】
本発明の画像処理装置は、また、前記処理部が、前記入力部を介してオペレータによって入力されたキーワードを認識し、前記記憶部内のデータをキーワード検索する機能を有していてもよい。また、前記処理部が、前記入力部を介して入力されたオペレータの音声を自然言語として認識する言語認識機能を有していてもよい。
【0008】
本発明の画像処理装置は、また、
前記処理部が、
前記医用画像を完成させるまでの工程の中で実際に使用された前記コマンドの種類、順序並びに回数、及び/又は、使用された前記元画像の種類を認識し、統計データとして前記記憶手段に記憶させる機能と、
次回の作業の際に、前記記憶部内の統計データに基づいて、使用頻度の高い前記コマンド候補及び/又は元画像の候補を優先的に前記ディスプレイに表示させる機能と、を有していてもよい。
【0009】
本発明の医用ワークステーションは、上記本発明の画像処理装置とディスプレイとを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
上述したように、本発明によれば、オペレータが作成したい医用画像の種別に応じて、使用される可能性のあるコマンド等のみがディスプレイに表示されるようになっているため、オペレータはより簡単な操作で効率的に医用画像を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。図1は、本発明の医用ワークステーションの一形態を示す図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の医用ワークステーション1は、コンピュータからなる画像処理装置10と、それに接続されて所定の画像の表示するディスプレイ30と、を備える。ディスプレイ30は、例えば、一般に市販されているものを利用することができる。
【0013】
画像処理装置10は、様々なデータ処理を行う処理部13と、ハードディスク等で構成された記憶部18とを有している。また、いずれも処理部13と繋がっている、外部インターフェース12、入力部11、及び出力部14を有している。
【0014】
外部インターフェース12には、一例としてCT装置60が接続される。この場合、CT装置60で撮像された患者の断面画像のデータが、元画像として、同インターフェース12を介して画像処理装置10内に取り込まれる。
画像処理装置10は、外部インターフェース12を介して、医療施設内の所定のネットワーク70に接続されるようになっていてもよい。
【0015】
入力部11はオペレータからの指示を受け付ける部分である。図1に示すように、外部入力手段としては、オペレータの声の入力するためのマイクであってもよい。あるいは、不図示のキーボード、タッチパネル、マウス等であってもよい。
【0016】
出力部14は、ディスプレイ用のドライバであり、処理部13によって画像処理された作業中の医用画像(詳細後述)や、画像処理用のコマンドなどをディスプレイ30に表示させる。
【0017】
記憶部18には、一例として、画像処理装置10を動作させるためのプログラムがインストールされており、画像を処理するための複数のコマンドのデータが保存されている。「コマンド」の例としては、各種マスク処理、任意部位の形状変更、不要部分の削除、画像同士の合成などをするためのコマンドがある。
【0018】
記憶部18には、CT装置60で撮像された複数の元画像のデータ53が一時的に保存される。「元画像」とは、基本的にはCT装置60で撮像した1枚1枚の断面画像をいうが、複数の元画像を集合させたデータ(ボリュームデータ)も、以下、「元画像」と表現する。記憶部18には、また、医用画像を完成させるまでの工程の中で使われる可能性のあるコマンドの候補を当該医用画像の種別に対応付けて記憶するデータテーブル55が保存されている。これについては他の図面も参照して後述する。
【0019】
処理部13は、例えば図1に示すような態様で、ディスプレイ30に所定の画像やコマンドを表示させる。この例では、画面中央部やや下に作業中の医用画像35(「血管」の3次元画像が示されている)が表示され、その周辺に複数のアイコン状のコマンド31、32a、32b、32cが表示されている。画面左上に表示されているのは、元画像(ボリュームデータ)33である。
【0020】
処理部13は、入力部11を介してオペレータにより選択された所定のコマンド31、32a〜32cを認識する。そして、選択されたコマンドに対応する画像処理を元画像3に対して行う。画像処理された医用画像35は、ディスプレイ30の画面にリアルタイムで表示される。
【0021】
オペレータが一連の作業をより簡単で効率的に行えるよう、本実施形態の画像処理装置10では、記憶部18に、作業開始から医用画像を完成させるまでの工程の中で使われる可能性のあるコマンドの候補、及び/又は、元画像の候補のデータが保存されている。具体的な一例として、図2のようなデータテーブル55が記憶部18に保存されている。このテーブルには、作成したい医用画像の種別(抽出したい部位:「血管」、「腸」、「骨」等)に対応付けて、その医用画像を完成させるまでに使用される可能性がある、元画像の候補のデータ56、及び、コマンドの候補のデータ57が格納されている。例えば、「血管」の3次元画像を作成したい場合、Aタイプの元画像が画面上に表示されると共に、使用される可能性があるコマンドA、B、Dが画面上に表示される。この場合、例えば腸の画像を作成する場合にのみ使用されるコマンドSは画面上に表示されない。
【0022】
以上のように構成された本実施形態の画像処理装置10の使用方法について、以下、説明する。なお、「キーワード検索」ができる例や「学習機能」をもたせた例については後述する。図3は医用画像を完成させるまでの一連の工程を示すフローチャートである。
【0023】
まず初めに、オペレータは、マウス、キーボード又は音声入力等の任意の外部入力手段によって、作成したい医用画像の種別(この例では血管の3次元画像)を選択する(ステップS1)。この選択情報は、入力部11を介して、処理部13で認識される。処理部13は、この選択情報に基づいて、記憶部18にアクセスしデータテーブル55から選択情報(「血管」)対応するデータを読込み、必要なコマンド等のみをディスプレイ30に表示させる(ステップS2)。この例では、コマンドA、B、Dのみがディスプレイ30に表示される(不図示)。
【0024】
次いで、オペレータが画面に表示されたコマンドを適宜選択し、各種画像処理の進めていく(ステップS3)。オペレータが画面に表示されたコマンドを選択すると、処理部13により所定の画像処理が行われる。画像処理された医用画像35は、画面にリアルタイムに反映される。オペレータは、従来公知の手法により、各種のコマンドを使って、例えば骨や器官など不要な部分を削除していき、最終的に血管のみを抽出して所定の3次元医用画像を完成させる(ステップS4)。
【0025】
以上説明した本実施形態の構成によれば、作成したい医用画像の種別(上記例でいえば「血管」)に対応して、その医用画像を作成するのに必要なコマンド等のみが画面に表示されるようになっているので、オペレータは、簡単な操作で効率的に医用画像を作成することができる。なお、処理部13が、オペレータの声を音声認識する機能を有している場合、オペレータはより直感的に作業を行うことができる。
【0026】
次に、上記した基本的な装置の構成に、幾つかの付加的な機能を持たせた例について説明する。
【0027】
処理部13は、入力部11を介してオペレータによって入力されたキーワードを認識し、そのキーワードを検索キーとして記憶部18内の所定のデータをキーワード検索する機能を有していてもよい。
【0028】
「キーワード」としては、特に限定されるものではないが、抽出したい患者体内の部位名や、画像の表示形式等を用いることができる。「表示形式」とは、例えば、MPR(Multi Planer Reconstruction:任意多段面再構成)、MIP(Maximum Intensity
Projection:最大値投影画像)及びCPR(curved Multi Planer Reconstruction:曲面任意多段面再構成)等をいう。
【0029】
また、このキーワード検索の結果に基づいて、例えば、作業を支援するための表示(例えば、オペレータに対して、次にどのような画像処理を行いたいのかを尋ねるメッセージや、又は、現在行っている作業から予測される次の作業の候補の表示など)が画面上に現れるようになっていてもよい。
【0030】
処理部13は、また、医用画像35を完成させるまでの工程で実際に使用された各コマンドの種類、順序並びに回数のデータ、及び/又は、使用された前記元画像33の種類のデータを、統計データとして記憶部18に記憶させる機能を有していてもよい。この統計データによって、各コマンドの使用頻度、傾向を知ることができる。処理部13は、オペレータが次回作業をする際に、この統計データに基づいて、使用頻度の高いコマンドの候補や元画像の候補をディスプレイに優先的に表示(使用頻度が高いことを視覚的に認識できるような態様で表示することをいう)させる。
このように過去の作業記録から使用頻度等を解析し、使用頻度の高いコマンド等が画面に表示される構成とすることで、操作をより簡単にし、作業効率を一層向上させることができる。なお、統計データに、好みの画像スタイルや好みの着色パターンの情報等を含めてもよい。
【0031】
以上、幾つかの例を挙げて本発明について説明したが、本発明の画像処理装置(コンピュータ)、及び、それにディスプレイを含めた医用ワークステーションは、3次元画像を作成するためのものに限らず、2次元画像を作成するためのものであってもよい。
【0032】
また、医用画像を完成させるのに必要な所定の画像処理が実施されていない場合に、処理部13がそれを判断して、例えば画面に警告を表示するなどして、オペレータに注意を喚起するような構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の医用ワークステーションの一形態を示す図である。
【図2】コマンド候補及び元画像候補を表示するためのデータテーブルを示す図である。
【図3】医用画像を完成させるまでの一連の工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1 医用ワークステーション
11 入力部
12 外部インターフェース
13 処理部
30 ディスプレイ
31、32 コマンド
33 元画像
35 医用画像
53 元画像
55 データテーブル
60 CT装置
70 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を撮像して得られた元画像のデータ、及び、画像処理用のコマンドのデータを記憶する記憶部と、
オペレータからの指示を受け付ける入力部と、
オペレータによって選択された前記コマンドを認識し、それに対応する画像処理を前記元画像に施す処理部と、
該処理部によって画像処理された画像をディスプレイに表示させる出力部と、
を備える、医用ワークステーション用の画像処理装置であって、
前記記憶部には、医用画像を完成させるまでの工程の中で使われる可能性のある前記コマンドの候補及び/又は前記元画像の候補のデータが、前記医用画像の種別に対応付けて記憶されており、
前記処理部は、
オペレータによって選択された、作成したい前記医用画像の種別に対応して、前記記憶部から前記コマンドの候補及び/又は元画像の候補のデータを読み込み、前記出力部を介してそれらのコマンド候補及び/又は元画像の候補をディスプレイに表示させる医用ワークステーション用の画像処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記入力部を介してオペレータによって入力されたキーワードを認識し、前記記憶部内のデータをキーワード検索する機能を有する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記キーワードには、抽出したい部位名が含まれる、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記キーワードには、MPR(Multi Planer Reconstruction:任意多段面再構成)、MIP(Maximum
Intensity Projection:最大値投影画像)、及びCPR(curved Multi Planer Reconstruction:曲面任意多段面再構成)が含まれる、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記入力部を介して入力されたオペレータの音声を自然言語として認識する言語認識機能を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記処理部が、
前記医用画像を完成させるまでの工程の中で実際に使用された前記コマンドの種類、順序並びに回数、及び/又は、使用された前記元画像の種類を認識し、統計データとして前記記憶手段に記憶させる機能と、
次回の作業の際に、前記記憶部内の統計データに基づいて、使用頻度の高い前記コマンド候補及び/又は元画像の候補を優先的に前記ディスプレイに表示させる機能と、
を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記統計データには、好みの画像スタイル、好みの着色パターンの情報が含まれる、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記元画像が、患者の生体内部を示す複数の断面画像であり、
作成される前記医用画像が、患者の生体内部の任意の部位を示す3次元画像である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像処理装置と、該画像処理装置に接続され前記医用画像を表示するディプレイと、を備えた医用ワークステーション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−61028(P2009−61028A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230162(P2007−230162)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(391039313)株式会社根本杏林堂 (80)
【Fターム(参考)】