説明

画像処理装置及び撮影装置

【課題】撮像素子やレンズの口径の大きさに依存することなく、撮影者がピントを合わせた被写体が強調された強調画像を比較的簡易に取得できる画像処理装置及び撮像装置を提供する。
【解決手段】入力画像のうちピントの合っている部分(合焦部分)とピントがあっていない部分(非合焦部分)とでは、そのエッジ部分における輝度の遷移パターンが異なるため、(極局所領域の輝度差分値)/(局所領域の輝度差分値)により算出されるエッジ差分比が相違する。入力画像にぼかし処理を施して出力画像を生成する際に、エッジ差分比に応じて当該ぼかし処理におけるぼかし度合を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影者が焦点を合わせた被写体が強調された撮影画像を取得できる画像処理装置及び撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complimentary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の固体撮像素子を用いたデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮影装置が広く普及している。
【0003】
ところで、撮影対象のうち、ピントの合った被写体が鮮明に撮影され、ピントの合った被写体を除く他の被写体がピントがぼけたように撮影され、この結果、全体としてピントの合った被写体が強調されて浮き立ったような、いわゆる“ぼけ味”のある撮影画像を取得するためには、例えば、固体撮像素子のサイズやこの固体撮像素子に撮影画像を結像させるためのレンズの口径が大きいタイプの撮影装置を用いる必要がある。このようなタイプの撮影装置によると、被写界深度を十分に浅くして撮影することができるため、ピントの合った被写体を浮き立たせた、いわゆる“ぼけ味”のある撮影画像を取得することができる。
【0004】
しかしながら、固体撮像素子のサイズやレンズの口径の小さい、いわゆるコンパクトタイプのデジタルカメラのような撮影装置を用いた場合には、被写界深度を十分に浅くして撮影ができないため“ぼけ味”のある撮像画像を取得することが困難であった。また、どちらのタイプの撮影装置であっても、ピントの合った被写体と他の被写体との間に輝度差や彩度差等を付与することによってピントの合った被写体が強調された撮影画像を取得することは困難であった。
【0005】
尚、下記特許文献1には、画像処理によりぼけ味のある画像を取得する発明が開示されている。かかる画像処理によると、まず、1つの基準画像データを被写体領域の画像データと背景領域の画像データという別個独立した2つの画像データに分離して出力する。そして、分離された背景画像データにぼかし処理を施した後、ぼかし処理後の背景画像データと基準画像データとを合成する。合成後、背景領域と被写体領域の境界線がギザギザとなり違和感が生じることを防ぐためにアンチエイリアジング処理を施す。かかる一連の処理により”ぼけ味”の或る画像を取得することができる。このように、下記特許文献1では、”ぼけ味”の或る画像を取得できるものの、上記した一連の複雑な処理を必要とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-229198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、撮像素子やレンズの口径の大きさに依存することなく、ピントの合った被写体が強調された撮影画像を、比較的簡易に取得できる画像処理装置及び撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1発明に係る画像処理装置は、複数の小領域からなる第1撮影画像に対してにぼかし処理を施し第2撮影画像を生成する第2撮影画像生成手段と、各小領域の合焦度合を導出する合焦度導出手段と、合焦度導出手段により導出された各小領域の合焦度合が小さいほど第2撮影画像の混合割合を大きくして、第1撮影画像における各小領域と第2撮影画像における各小領域に対応する第2小領域を合成処理する合成処理手段と、を備えている。そして、第2撮影画像生成手段は、第1撮影画像から顔画像領域を検出する顔領域検出手段と、検出された顔画像領域に基づいて、第1撮影画像にぼかし処理を施すことにより第2撮影画像を生成するぼかし処理手段とを備えている。
【0009】
本願の第2発明に係る画像処理装置は、本願第1発明に係る画像処理装置において、ぼかし処理手段が検出された顔画像領域の第1撮影画像領域に対する割合が所定割合以上である場合に、ぼかし度合を大きくするぼかし処理を施し、所定割合未満である場合には、ぼかし度合を小さくする、或いはぼかし度合をゼロとするぼかし処理を施すことを特徴とする。
【0010】
本願の第3発明に係る画像処理装置は、本願第1又は第2発明に係る画像処理装置において、合焦度導出手段が各小領域における輝度信号の遷移パターンに応じて合焦度合を導出することを特徴とする。
【0011】
本願の第4発明に係る画像処理装置は、本願第1又は第2発明に係る画像処理装置において、合焦度導出手段は、各小領域における輝度信号に含まれる周波数成分に応じて合焦度合を導出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によると、ピントの合った被写体が強調された撮影画像を比較的簡易に取得することができる。
本発明の意義ないし効果は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮像装置の全体構成図である。
【図2】図1のレンズ部3の内部構成図である。
【図3】第1実施例の強調画像生成処理の概要を説明するための図である。
【図4】第1実施例の強調画像生成処理の概要を説明するための図である。
【図5】第1実施例に係る強調画像生成処理の動作を説明するための図である。
【図6】第1実施例に係る極局所領域差分抽出、局所領域差分抽出、及びエッジ差分比算出処理を説明するための図である。
【図7】第1実施例に係る拡張処理を説明するための図である。
【図8】第1実施例に係る拡張処理を説明するための図である。
【図9】第1実施例に係るぼかし処理及びエッジ強調処理を説明するための図である。
【図10】第2実施例に係る強調画像生成処理の動作を説明するための図である。
【図11】第2実施例にBPF−H50及びBPF−L51の動作を説明するための図である。
【図12】第3実施例に係る強調画像生成処理の動作を説明するための図である。
【図13】第4実施例に係る強調画像生成処理の動作を説明するための図である。
【図14】第4実施例に係る位置情報テーブル60の動作を説明するための図である。
【図15】第5実施例に係る強調画像生成処理の動作を説明するための図である。
【図16】第5実施例に係る位置情報テーブル63の動作を説明するための図である。
【図17】第6実施例に係る強調画像生成処理の動作を説明するための図である。
【図18】第6実施例に係る変換テーブル67の動作を説明するための図である。
【図19】撮像装置1が強調画像を生成する手順を示すフローチャートである。
【図20】第7実施例に係る強調画像生成処理の動作を説明するための図である。
【図21】第7−2実施例において、ぼかし処理部69が用いるぼかしフィルタを説明するための図である。
【図22】第7−2実施例において、ぼかし処理部69の動作を説明するための図である。
【図23】第7−2実施例において、ぼかし処理部69が位置Aで生成するマスクフィルタ及び補正ぼかしフィルタを説明するための図である。
【図24】第7−2実施例において、ぼかし処理部69が位置Bで生成するマスクフィルタ及び補正ぼかしフィルタを説明するための図である。
【図25】第7−3実施例において、ぼかし処理部69の動作を説明するための図である。
【図26】第7−3実施例において、ぼかし処理部69が位置Cで生成するマスクフィルタ及び補正ぼかしフィルタを説明するための図である。
【図27】第7−4実施例において、ぼかし処理部69の動作を説明するための図である。
【図28】第7−4実施例において、ぼかし処理部69によるぼかし処理の効果を説明するための図である。
【図29】第7−5実施例において、ぼかし処理部69の動作を説明するための図である。
【図30】第8実施例に係る強調画像生成処理の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施形態>
本発明に係る画像処理をデジタルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像装置に実施した形態について、図面を参照して説明する。撮像装置は静止画を撮影できるものであれば、動画撮影が可能なものであっても構わない。尚、本願においては、「撮像」と「撮影」を同義で使用する。
【0015】
(撮像装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置1の内部構成を示すブロック図である。図1において、撮像装置1は、入射される光を電気信号に変換するCCD又はCMOSセンサなどのイメージセンサ(固体撮像素子)2と、ズームレンズやフォーカスレンズを備え被写体の光学像をイメージセンサ2に結像させるレンズ部3と、イメージセンサ2から出力されるアナログ電気信号である画像信号を増幅する増幅回路(図示せず。)及び当該画像信号をデジタルの画像信号に変換するA/D(Analog/Digital)変換回路(図示せず。)を備えたAFE(Analog Front End)4と、AFE4から出力される複数フレーム分のデジタル画像信号をフレーム単位で一時的に格納するフレームメモリ5と、外部から入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロフォン(以下、マイクと記載する。)6と、フレームメモリ5に一時的に格納され画像信号に対して画像処理を施す画像処理部7と、マイク6からのアナログの音声信号をデジタル信号に変換し、音声処理を施す音声処理部8と、静止画を撮影する場合は画像処理部7からの画像信号に対してJPEG(Joint Photographic Experts Group)圧縮方式など、動画を撮影する場合は画像処理部7からの画像信号と音声処理部8からの音声信号とに対してMPEG(Moving Picture Experts Group)圧縮方式などの圧縮符号化処理を施す圧縮処理部9を備える。
【0016】
また、撮像装置1は、圧縮処理部9で圧縮符号化された圧縮符号化信号をSDカードなどの外部メモリ22に記録するドライバ部10と、ドライバ部10で外部メモリ22から読み出した圧縮符号化信号を伸長して復号する伸張処理部11と、伸長処理部11で復号されて得られた画像信号をアナログ信号に変換する画像信号出力部12と、画像信号出力部12で変換された画像信号に基づく画像の表示を行うLCD等を有する表示部13と、伸張処理部11からのデジタルの音声信号をアナログの音声信号に変換して出力する音声信号出力部14と、音声信号出力部14からのアナログの音声信号を再生するスピーカ部15と、を備える。
【0017】
また、撮像装置1は、各ブロックの動作タイミングを一致させるためのタイミング制御信号を出力するTG(Timing Generator)16と、撮像装置内全体の駆動動作を制御するCPU(Central Processing Unit)17と、各動作のための各プログラムを記憶するとともにプログラム実行時のデータの一時保管を行うメモリ18と、静止画撮影用のシャッタボタンを含むユーザからの指示が入力される操作部19と、CPU17と各ブロックとの間でデータのやりとりを行うためのバス20と、メモリ18と各ブロックとの間でデータのやりとりを行うためのバス21と、を備える。
【0018】
図2は、レンズ部3の内部構成図である。レンズ部3は、ズームレンズ30及びフォーカスレンズ31を含む複数枚のレンズを備えて構成される光学系35と、絞り32と、ドライバ34を有している。ドライバ34は、ズームレンズ30及びフォーカスレンズ31の移動並びに絞り32の開口量(換言すると、開口部の大きさである。)の調節を実現するためのモータ等から構成される。
【0019】
撮像装置1は、「自動的にフォーカスレンズ31の位置を制御することにより、被写体を表す光学像をイメージセンサ2の撮像面(受光面と呼ぶこともできる。)に結像させる」いわゆるAF(Automatic Focus)機能を備えている。この機能により、理想的には、被写体を表す光学像が結像する点がイメージセンサ2の撮像面上の点と一致する。ここで本願では、被写体を表す光学像をイメージセンサ2の撮像面に結像させることを被写体にピントを合わせる、或いは焦点を合わせると記載する。また、ピントが合わせられた被写体をピントの合った被写体、或いは焦点の合った被写体と記載する。逆に、ピントが合っていない場合をピントがぼけていると記載する。
【0020】
また、撮像装置1は、「自動的に絞り32の開口量、イメージセンサ2の露光時間及びAFE4の増幅率を制御することにより、撮影画像の明るさを略一定に保つ」いわゆるAE(Automatic Exposure)機能を備えている。さらに、撮像装置1は、「被写体に照射される光の光源を判定し、当該光源に応じて、白色の色相を自動的に決定するとともに、当該白色の色相に応じてその他の色の色相を決定する」いわゆるAWB(Automatic White Balance)機能を備えている。
【0021】
撮像装置1では、撮影者から操作部19に対してズーム倍率を変更する操作が行なわれた場合には、CPU17が、当該操作に従って、ズームレンズ30を光軸に沿って移動させる、いわゆるズーム制御を行う。これによりイメージセンサ2による撮影の画角が変更される(換言すれば、イメージセンサ2の撮像面上に形成される被写体の像が拡大または縮小される)。
【0022】
図1の撮像装置1は、静止画撮影の際、画像処理部7の画像処理により、ピントの合っている被写体(以下、特定被写体とも記載する。)画像がピントのあっていない被写体(以下、背景とも記載する。)画像よりも強調された撮影画像(以下、強調画像とも記載する。)を比較的簡易に生成することができる。以下、画像処理部7で実現する強調画像生成処理の各実施例について説明する。
【0023】
<第1実施例>
図3は、第1実施例に係る強調画像生成処理の概要を説明するための図である。図3(a)は、撮像装置1による静止画撮影により取得された入力画像100を示している。図3(a)において、人物101は、特定被写体の画像であり、建物102は、背景画像の一つである。
図3(b)は、人物101の或る領域におけるX軸方向の輝度信号の遷移を示す模式図である。人物101はピントが合っているため、輝度変化の境界部分(以下、エッジ部分とも記載する。)であるE地点付近で輝度値が急峻に変化している。従って、E地点を中心とするAB間を極局所領域と、E地点を中心とする極局所領域よりも広いCD間を局所領域と定義すると、極局所領域における輝度の最大値と最小値の差分である輝度差分値と局所領域における輝度差分値は等しくなる。即ち、
(極局所領域の輝度差分値)/(局所領域の輝度差分値)=1
となる。
【0024】
一方、図3(c)は、建物102の或る領域におけるX軸方向の輝度信号の遷移を示す模式図である。建物102はピントが合っていないため、輝度変化の境界部分であるJ地点付近では輝度値は緩慢に変化している。従って、J地点を中心とする極局所領域FG間における輝度差分値はJ地点を中心とする局所領域HI間における輝度差分値よりも非常に小さくなる。即ち、
(極局所領域の輝度差分値)/(局所領域の輝度差分値)<<1
となる。尚、以下では(極局所領域の輝度差分値)/(局所領域の輝度差分値)をエッジ差分比と記載する。
【0025】
このように、入力画像のうちピントの合っている部分(即ち、合焦部分。)とピントがあっていない部分(即ち、非合焦部分。)とでは、そのエッジ部分における輝度信号の遷移パターンが異なるため、エッジ差分比が相違する。即ち、入力画像の各画素では、ピントがどの程度合っているか(以下、合焦度合とも記載する。)によって当該画素周辺における輝度信号の遷移パターンが相異し、これによりエッジ差分比も相異する。
【0026】
第1実施例では、入力画像にぼかし処理を施して出力画像を生成する際に、エッジ差分比に応じて当該ぼかし処理におけるぼかし度合を変更する。図4は、入力画像に当該ぼかし処理を施すことによって生成される出力画像を説明するための図である。エッジ差分比画像103は、入力画像100の各画素について、エッジ差分比を算出してプロットすることにより生成された画像である。出力画像100aは、入力画像に対してエッジ差分比に応じたぼかし度合によるぼかし処理を施すことによって生成された画像である。
【0027】
エッジ差分比が小さいほどぼかし度合が強くなるように設定することによって、ピントの合っていない建物102は、ぼかし度合の強いぼかし処理が施されることとなる。他方、ピントの合った人物101に対しては、ぼかし処理が施されない、あるいはぼかし度合の弱いぼかし処理が施される。この結果、出力画像100aは入力画像100と比較して、ピントの合っていない建物102aを含む背景画像のぼけ度合いがより一層大きくなり、いわゆるぼけ味のある撮影画像となっている。
【0028】
図5は、第1実施例に係る強調画像生成処理の動作を説明するための図である。上述したようにフレームメモリ5にはAFE4から出力されるデジタル画像信号が一時的に格納されている。このデジタル画像信号はRAWデータの形式で格納されている。YUV生成部41は、フレームメモリ5に一時的に格納されたRAWデータ形式の画像信号に対し、いわゆる色分離処理(色同時化処理ともいう。)を施すとともに、色分離されたデジタル画像信号からY、U、V信号を生成する。
【0029】
極局所領域差分抽出部42は、YUV生成部41から出力される輝度信号から、画素毎に極局所領域の輝度差分値を抽出し出力する。局所領域差分抽出部43は、YUV生成部41から出力される輝度信号から画素毎に局所領域の輝度差分値を抽出し出力する。エッジ差分比算出部44は、極局所領域の輝度差分値及び局所領域の輝度差分値に基づいて画素毎にエッジ差分比を算出し出力する。
【0030】
図6は、極局所領域差分抽出部42による極局所領域差分抽出処理、局所領域差分抽出部43による局所領域差分抽出処理、及びエッジ差分比算出部44によるエッジ差分比算出処理を説明するための図である。図6(a)は、YUV生成部41から出力される輝度信号のうち、例として7×7画素分を取り出した図である。図6(a)において、「aij」は、画素ijにおける輝度値を示している。例えば、「a12」は、画素12の輝度値を示している。ここで、極局所領域を、注目画素を中心とし、当該注目画素から比較的狭い範囲の周辺領域と定義し、局所領域を注目画素を中心とし、当該注目画素から極局所領域よりも広い範囲の周辺領域と定義する。
【0031】
図6(a)では、例として、3×3画素からなる領域を極局所領域とし、7×7画素からなる領域を局所領域としている。具体的には、注目画素を画素44とし、画素ij(i=3,4,5、j=3,4,5)からなる領域を極局所領域とし、画素ij(i=1,2・・7、j=1,2・・7)からなる領域を局所領域としている。
【0032】
極局所領域差分抽出部42は、注目画素の極局所領域における輝度の最大値と最小値の差分を極局所領域の輝度差分値として抽出する。図6(a)において、例えば、注目画素44の極局所領域においてa55が最大値、a33が最小値であるとすると、注目画素44の極局所領域の輝度差分値b44はb44=a55−a33となる。極局所領域差分抽出部42は極局所領域を1画素単位でシフトするとともに、全画素の極局所領域の輝度差分値を抽出する。
【0033】
図6(b)は、各画素における極局所領域の輝度差分値を示す。例えば、b44は、画素44における極局所領域の輝度差分値を示す。
【0034】
局所領域差分抽出部43は、注目画素の局所領域における輝度の最大値と最小値の差分を局所領域の輝度差分値として抽出する。図6(a)において、例えば、注目画素44の局所領域においてa11が最大値、a17が最小値であるとすると、注目画素44に対する局所領域の輝度差分値c44は、c44=a11−a17となる。局所領域差分抽出部43は局所領域を1画素単位でシフトするとともに、全画素の局所領域の輝度差分値を抽出する。図6(c)は、各画素における局所領域の輝度差分値を示す。例えば、c44は、画素44における局所領域の輝度差分値を示す。
【0035】
図5のエッジ差分比算出部44は、各画素について、極局所領域の輝度差分値と局所領域の輝度差分値に微小なオフセット値αを加えた値との比、即ち(極局所領域の輝度差分値)/(局所領域の輝度差分値+α)を補正エッジ差分比として算出する。尚、局所領域の輝度差分値にオフセット値αを加えるのは、分母がゼロになるのを防ぐためである。図6(d)は、各画素における補正エッジ差分比を示す。例えば、d44は、画素44における補正エッジ差分比を示す。
【0036】
図5の拡張処理部45は、算出された各画素の補正エッジ差分比に基づいて、エッジ部分の領域を拡張する。図7は、拡張処理部45による拡張処理の概要を説明するための図である。図7(a)は、図3(a)における人物101の或る領域におけるX軸方向の輝度信号の遷移を示す模式図である。図7(a)において、L地点がエッジ部分であり、L地点を中心とする所定範囲であるKM間を拡張処理対象領域とする。
【0037】
図7(b)は、図7(a)と同じ領域におけるX軸方向の補正エッジ差分比の遷移を示す模式図である。図7(b)から明らかなように、エッジ差分比算出部44により算出された補正エッジ差分比は、エッジ部分であるL地点で最大となる。拡張処理部45は、拡張処理対象領域における各画素の補正エッジ差分比を、最大値を取るL地点の補正エッジ差分比に置換する。
【0038】
図7(c)は、図7(a)と同じ領域におけるX軸方向の拡張処理後の補正エッジ差分比の遷移を示す模式図である。図7(c)では、拡張処理対象領域の補正エッジ差分比がエッジ部分L地点の補正エッジ差分比に置換されている。即ち、拡張処理部45は、注目画素を中心する拡張処理対象領域において、注目画素の補正エッジ差分比を、拡張処理対象領域内の最も大きい補正エッジ差分比と置換する。
【0039】
図8は拡張処理部45による拡張処理を説明するための図である。図8(a)、(b)、(c)、(d)は、エッジ差分比算出部44から出力される入力画像に対する補正エッジ差分比のうち、7×7画素分の補正エッジ差分比を示す。図8(a)では、拡張処理部45は注目画素を画素44として、拡張処理対象領域を注目画素44を中心とする3×3画素からなる領域としている。今、図8(a)において、注目画素44のd44が最も大きい補正エッジ差分比であるとすると、拡張処理部45は、注目画素44の値は置換せずそのまま維持する。図8(e)は、図8(a)の場合における拡張処理の結果を示している。図8(b)は、拡張処理対象領域を1画素分右へシフトし、注目画素を画素45とした場合を示している。
【0040】
図8(b)において、d44が最も大きい補正エッジ差分比であるとすると、拡張処理部45は、注目画素45の値をd44の値に置き換える。図8(f)は、図8(b)の場合における拡張処理の結果を示している。図8(f)において、画素45の値がd45からd44に置換されている。図8(c)は、図8(a)の状態から拡張処理対象領域を1画素分上へシフトし、注目画素を画素34とした場合を示している。
【0041】
図8(c)においても、d44が最も大きい補正エッジ差分比であるとすると、拡張処理部35は、注目画素34の値をd44の値に置き換える。図8(g)は、図8(c)の場合における拡張処理の結果を示している。図8(g)において、画素34の値がd34からd44に置換されている。図8(d)は、図8(a)の状態から拡張処理対象領域を1画素分下へシフトし、注目画素を画素54とした場合を示している。
【0042】
図8(d)においても、d44が最も大きい補正エッジ差分比であるとすると、拡張処理部45は、注目画素54の値をd44の値に置き換える。図8(h)は、図8(d)の場合における拡張処理の結果を示している。図8(h)において、画素54の値がd54からd44に置換されている。
【0043】
このようにして、拡張処理部45は、全画素について拡張処理を行なう。拡張処理によるとエッジ部分の領域が拡張されるため、ピントの合っている被写体とピントのあっていない被写体の境界が明確になり、より一層ぼけ味のある強調画像を生成することができる。
【0044】
図5の変換テーブル46は、拡張処理部45から出力される画素毎の補正エッジ差分比に応じて画素毎にぼかし度合およびエッジ強調度合を導出して出力する。
【0045】
図9(a)は、変換テーブル46が、補正エッジ差分比からぼかし度合を導出するための関数を示している。図9(a)において、変換テーブル46は、補正エッジ差分比が閾値THよりも小さければ、ぼかし度合を最大とし、補正エッジ差分比が閾値TH以上であれば最小とする。補正エッジ差分比が閾値TH以上であり閾値THより小さければ、補正エッジ差分比が増加するにつれてぼかし度合を線形的に減少させる。なお、非線形に減少させるものとしても構わないが単調減少するものが好ましい。
【0046】
図9(b)は、変換テーブル46が、エッジ強調度合を導出するための関数を示している。図9(b)において、変換テーブル46は、補正エッジ差分比が閾値THよりも小さければ、エッジ強調度合を1.0とし、補正エッジ差分比が閾値TH以上であれば最大とする。補正エッジ差分比が閾値TH以上であり閾値THより小さければ、補正エッジ差分比が増加するにつれてエッジ強調度合を線形的に増加させる。なお、非線形に増加させるものとしても構わないが単調増加するものが好ましい。
【0047】
図5のぼかし処理部47は、変換テーブル46から出力される画素毎のぼかし度合に応じてYUV生成部41から出力されるY、U、V信号に対し画素毎にぼかし処理を施す。ぼかし処理部47は、例えば、単純な平均化フィルタではなく、注目画素に近いほど大きな重みを付け、その重みをガウス分布に近づけたガウシアンフィルタを採用することができる。この場合、変換テーブル46から出力されるぼかし度合を当該ガウス分布の分散値とすることができる。
【0048】
エッジ強調処理部48は、ぼかし処理部47から出力されるY、U、V信号に対し画素毎にエッジ強調処理を施す。エッジ強調処理部48は、例えば、変換テーブル46から出力される画素毎のエッジ強調度合に応じて、エッジ強調度合を変更できる鮮鋭化フィルタを採用することができる。尚、上記ガウシアンフィルタ及び鮮鋭化フィルタは、例えば、CG-ARTS協会から発行されている「デジタル画像処理」(2007年3月1日第2版第2印刷)の108頁から110頁、及び122頁から124頁に記載されているものを採用することができる。また、上記実施例1では、極局所領域を3×3画素、局所領域を7×7画素及び拡張処理対象領域を3×3画素からなる領域としているが、これらに限られるものではなく実施例1で採用した領域よりも広い範囲、或いは狭い範囲からなる領域とすることも可能である。
【0049】
<第2実施例>
図10は、画像処理部7における強調画像生成処理の第2実施例を説明する図である。図10において、図5と同一の番号を付している部位は、第1実施例の場合と同一の機能及び動作を有する部位であるため、その機能及び動作の説明は省略する。尚、第2実施例では、拡張処理部45には後述する周波数成分比が入力されることになるが、拡張処理部45は第1実施例の場合と同一の処理を行なう。
【0050】
また、変換テーブル46には、拡張処理部45からの画素毎の周波数成分比が入力されるが、変換テーブル46は、実施例1の場合と同一の処理を行なう。従って、図9(a)、(b)においてその横軸が周波数成分比となる。
【0051】
BPF−H50及びBPF−L51は、YUV生成部41から出力されるY信号(以下、輝度信号とも記載する。)からそれぞれ所定範囲の周波数帯域の成分を含む輝度信号を抽出するBPF(Band Pass Filter)である。
【0052】
図11は、BPF−H50とBPF−L51の周波数特性を示している。図11において、FはBPF−H50の中心周波数、FHc1及びFHc2は遮断周波数(カットオフ周波数)を示しており、(FHc2−FHc1)をBPF−H50の通過帯域という。
同様に、FはBPF−L51の中心周波数、FLc1及びFLc2は遮断周波数であり、(FLc2−FLc1)がBPF−H50の通過帯域である。BPF−H50は中心周波数Fの輝度信号を100%通過させ、BPF−L51は中心周波数Fの輝度信号を100%通過させる。
【0053】
BPF−H50では、輝度信号の高周波成分を抽出できるようにFが比較的高い周波数に設定されている。他方、BPF−L51では、BPF−H50よりも低い周波数成分を抽出できるようにFはFよりも低い周波数に設定されている。周波数成分比算出部52は、BPF−H50から出力される輝度信号値とBPF−L51から出力される輝度信号値とから下記式(1)により画素毎に周波数成分比を算出する。
周波数成分比=|(BPF−H50の出力値)/(BPF−L51の出力値)|
・・・(1)
図3(a)の入力画像100において、ピントの合っている人物101の或る領域には、高周波成分の輝度信号が多く含まれている。他方、ピントの合っていない建物102は、ピントがあっていないことから高周波成分の輝度信号は少なく、中域成分あるいは低域成分の輝度信号が多く含まれている。
【0054】
従って、ピントの合っている位置(即ち、合焦位置)では、
|BPF−H50の出力値|>|BPF−L51の出力値|
となり、ピントの合っていない位置(即ち、非合焦位置)では、
|BPF−H50の出力値|<|BPF−L51の出力値|
となる。
【0055】
第2実施例では、入力画像にぼかし処理を施して出力画像を生成する際に、上記(1)式により算出される周波数成分比に応じて当該ぼかし処理におけるぼかし度合を変更する。具体的には、周波数成分比が大きい画素ほど、ぼかし度合を小さくするぼかし処理を施し、小さい画素ほど、ぼかし度合を大きくするぼかし処理を施す。これにより、ピントの合っている被写体が強調された強調画像を生成することができる。
【0056】
<第3実施例>
図12は、画像処理部7における強調画像生成処理の第3実施例を説明する図である。
図12において、図10と同一の番号を付している部位は、第2実施例の場合と同一の機能及び動作を有する部位であるため、その機能及び動作の説明は省略する。尚、第3実施例では、拡張処理部45には後述する水平周波数成分比又は垂直周波数成分比が入力されることになるが、拡張処理部45は第2実施例の場合と同一の処理を行なう。また、変換テーブル46には、拡張処理部45からの画素毎の水平周波数成分比又は垂直周波数成分比が入力されるが、変換テーブル46は、実施例2の場合と同一の処理を行なう。従って、図9(a)、(b)においてその横軸が水平周波数成分比又は垂直周波数成分比となる。
【0057】
H−BPF−H53及びH−BPF−L54は、YUV生成部41から出力される輝度信号から水平方向(図3(a)のX軸方向)における所定範囲の周波数帯域の成分を含む輝度信号を抽出するBPFである。
【0058】
H−BPF−H53では、輝度信号の高周波成分を抽出できるようにその中心周波数FHHが比較的高い周波数に設定されている。他方、H−BPF−L54では、H−BPF−H53よりも低い周波数成分を抽出できるようにその中心周波数FHLはFHHよりも低い周波数に設定されている。
【0059】
水平周波数成分比算出部57は、H−BPF−H53から出力される輝度信号値とH−BPF−L54から出力される輝度信号値とから下記式(2)により水平周波数成分比を算出する。
水平周波数成分比=|(H−BPF−H53の出力値)/(H−BPF−L54
の出力値)| ・・・(2)
V−BPF−H55及びV−BPF−L56は、YUV生成部41から出力される輝度信号から垂直方向(図3(a)のY軸方向)における所定範囲の周波数帯域の成分を含む輝度信号を抽出するBPFである。
【0060】
V−BPF−H55では、輝度信号の高周波成分を抽出できるようにその中心周波数FVHが比較的高い周波数に設定されている。他方、V−BPF−L56では、V−BPF−H55よりも低い周波数成分を抽出できるようにその中心周波数FVLはFVHよりも低い周波数に設定されている。
【0061】
垂直周波数成分比算出部57は、V−BPF−H55から出力される輝度信号値とV−BPF−L56から出力される輝度信号値とから下記式(3)により垂直周波数成分比を算出する。
【0062】
垂直周波数成分比=|(V−BPF−H55の出力値)/(V−BPF−L56
の出力値)| ・・・(3)
選択部59は、水平周波数成分比算出部57から出力される水平周波数成分比と垂直周波数成分比算出部58から出力される垂直周波数成分比のうち、大きい方を選択し、拡張処理部45へ出力する。
【0063】
このように、第3実施例では、入力画像の水平、垂直の両方向について合焦度合を考慮してぼかし処理部47のぼかし度合、及びエッジ強調処理部48のエッジ強調度合を制御することができる。従って、第3実施例によると、よりきめ細かくぼかし処理及びエッジ処理が施された強調画像を生成することができる。
【0064】
<第4実施例>
図13は、画像処理部7における強調画像生成処理の第4実施例を説明する図である。図13において、図10と同一の番号を付している部位は、第2実施例の場合と同一の機能及び動作を有する部位であるため、その機能及び動作の説明は省略する。
【0065】
撮像装置1のレンズ部3が備えるレンズは、通常、撮影画像の中心点から遠ざかるに連れてMTF(Modulation Transfer Function)が劣化する。尚、撮影画像の中心とは、図3(a)の入力画像100を例にとると、X軸方向の中点を通るY軸に平行な直線と、Y軸方向の中点を通るX軸に平行な直線との交点を意味する。このため、例えば、図3(a)の人物101に対して、撮影画像の中心点から離れた4隅周辺でピントを合わせた場合の輝度信号の高域成分の大きさは、中心点付近でピントを合わせた場合と比較して小さくなってしまう。よって、撮影画像全体に同じ特性のBPFを施し、上記(1)で周波数差分比を算出したとしても精度のよい特性(合焦度合を表わす正しい特性、換言すると合焦位置からのズレを表わす正しい特性)が得られない。
【0066】
そこで、周波数差分比の特性の精度を向上させるための方策の一つとして、入力画像内の画素位置に応じてBPFの特性(中心周波数)を変更し、合焦度合の検出精度を高めることが考えられる。
【0067】
図13において、BPF−H61及びBPF−L62は、YUV生成部41から出力される輝度信号からそれぞれ一定範囲の周波数帯域の成分を含む輝度信号を抽出するBPFである。そして、BPF−H61及びBPF−L62は、後述の位置情報テーブル60から出力されるパラメータに応じてその中心周波数を変更することができる。従って、輝度信号から抽出する周波数帯域の範囲を変更することができる。
【0068】
位置情報テーブル60には、予めYUV生成部41から出力される輝度信号の各画素位置に応じた、BPF−H61及びBPF−L62が抽出すべき周波数帯域の範囲を設定するためのパラメータが格納されている。
【0069】
具体的には、各画素の位置が入力画像の中心点に存在する画素、或いは中心点に最も近い画素(以下、これらをまとめて中心画素と記載する。)から離れるにつれてBPF−H61及びBPF−L62が抽出する周波数帯域の範囲を低周波数側へシフトさせるようなフィルタ係数が格納されている。BPF−H61及びBPF−L62は、入力される輝度信号にフィルタ処理を施す際に、位置情報テーブル60から出力されるフィルタ係数を取得して、フィルタ処理を行う。
【0070】
図14(a)は、入力画像100と入力画像100上の中心画素103及び隅にある画素(以下、隅画素と記載する。)104を示す図である。図14(b)は、入力画像100の画素位置に応じて変動するBPF−H61及びBPF−L62の周波数特性を示す図である。
【0071】
BPF−H61は、入力画像100の中心画素103に対してフィルタ処理を行う場合は、位置情報テーブル60から周波数特性が曲線103Hとなるパラメータを取得しフィルタ処理を行う。そして、BPF−L62は、位置情報テーブル60から周波数特性が曲線103Lとなるパラメータを取得しフィルタ処理を行う。
【0072】
一方、BPF−H61は、入力画像100の隅画素104に対してフィルタ処理を行う場合は、位置情報テーブル60から周波数特性が曲線104Hとなるパラメータを取得しフィルタ処理を行う。そして、BPF−L62は、位置情報テーブル60から周波数特性が曲線104Lとなるパラメータを取得しフィルタ処理を行う。
【0073】
実施例4によると、撮像装置1のレンズ部3が備えるレンズのMTF特性を考慮し、入力画像内の各画素に対して、各画素位置に応じた周波数特性を有するBPF−H61及びBPF−L62によりフィルタ処理を行うことができる。これにより、周波数成分比算出部52は、高精度に周波数成分比を算出することができ、この結果、より高精度に強調画像を生成することができる。
【0074】
尚、当然のことながら、実施例3も、位置情報テーブル60を採用するとともに、位置情報テーブル60からのパラメータに応じてH−BPF−H53及びH−BPF−L54、並びにV−BPF−H55及びV−BPF−L56が抽出する周波数帯域の範囲を可変とすることにより、実施例4と同様の効果を奏することができる。
【0075】
<第5実施例>
図15は、画像処理部7における強調画像生成処理の第5実施例を説明する図である。
図15において、図10と同一の番号を付している部位は、第2実施例の場合と同一の機能及び動作を有する部位であるため、その機能及び動作の説明は省略する。
【0076】
位置情報テーブル63には予め、入力画像に含まれる輝度信号の周波数毎に、入力画像の中心画素におけるMTFと入力画像の各画素位置におけるMTFとの差に応じたゲイン値が格納されている。
【0077】
位置情報テーブル63は、BPF−H50及びBPF−L51からそれぞれの中心周波数を取得し、当該周波数に対応するゲイン値を導出し後述の乗算部64及び65に出力する。
【0078】
図16は、BPF−H50及びBPF−L51の周波数特性、図14(b)の中心画素103及び隅画素104におけるMTFを示している。曲線105及び曲線106はそれぞれBPF−H50及びBPF−L51の周波数特性を示し、F及びFは、それぞれの周波数特性の中心周波数を示している。曲線103mは、中心画素103における輝度信号の周波数に対するMTFを示している。曲線104mは、隅画素104における輝度信号の周波数に対するMTFを示している。
【0079】
今、例えば、輝度信号の周波数がFのときの曲線103mの値が0.65、曲線104mの値が0.4であるとする。これは、中心画素103における周波数Fの輝度信号の大きさが、本来有するべき大きさの65%となっていることを示している。同様に、隅画素104における周波数Fの輝度信号の大きさが、本来有するべき大きさの40%となっていることを示している。
【0080】
図16において、gHnは、BPF−H50の周波数特性の中心周波数Fにおける、中心画素103のMTFと隅画素104のMTFとの差を示している。同様に、gLnは、BPF−H50の周波数特性の中心周波数Fにおける、中心画素103のMTFと隅画素104のMTFとの差を示している。位置情報テーブル63には、gHnに応じたゲインGHn及びgLnに応じたゲインGLnが格納されている。
【0081】
乗算部64は、位置情報テーブル63からゲインGHnを取得し、これを隅画素104に対するBPF−H50によるフィルタ処理結果に乗じて出力する。同様に、乗算部65は、位置情報テーブル63からゲインGLnを取得し、これを隅画素104に対するBPF−L51のフィルタ処理結果に乗じて出力する。尚、乗算部64及び乗算部65は、BPF−H50及びBPF−L51の中心画素103に対するフィルタ処理結果には1.0を乗じる。
【0082】
実施例5によると、撮像装置1のレンズ部3が備えるレンズのMTF特性を考慮し、各画素位置に応じたゲイン値をBPF−H50及びBPF−L51からの出力に乗じる。これにより、周波数成分比算出部52は、実施例4と同様、高精度に周波数成分比を算出することができ、この結果、より高精度に強調画像を生成することができる。
【0083】
尚、当然のことながら、実施例3についても位置情報テーブル63を採用するとともに、位置情報テーブル63からのゲイン値それぞれを、H−BPF−H53及びH−BPF−L54、並びにV−BPF−H55及びV−BPF−L56BPF−H50及びBPF−L51それぞれからの出力に乗じることにより実施例5と同様の効果を奏することができる。
【0084】
<第6実施例>
図17は、画像処理部7における強調画像生成処理の第6実施例を説明する図である。図17において、図5と同一の番号を付している部位は、第1実施例の場合と同一の機能及び動作を有する部位であるため、その機能及び動作の説明は省略する。
【0085】
図17において、ぼかし処理部60は、入力画像にぼかし処理を施し、ぼかし画像を出力する。ぼかし処理部60は、例えば、隣接する画素信号の濃淡変化を滑らかにする平均化フィルタ、或いは画像信号に含まれる空間周波数成分のうち、低周波成分は残し、高周波成分を除去するようなLPF(Low Pass Filter)を採用することができる。上記平均化フィルタやLPFは、例えば、CG-ARTS協会から発行されている「デジタル画像処理」(2007年3月1日第2版第2印刷)の108頁から110頁、及び131頁から133頁に記載されているものを採用することができる。変換テーブル67は、拡張処理部45から出力される補正エッジ差分比に基づいて、入力画像とぼかし画像との合成度合いを表わす加算比率Kを、入力画像の画素毎に導出する。
【0086】
図18は、変換テーブル67が、加算比率Kを導出するための関数を示している。図18において、変換テーブル67は、補正エッジ差分比が閾値THよりも小さければ、加算比率を0とし、補正エッジ差分比が1.0以上であれば1とする。補正エッジ差分比が閾値TH以上であり1.0より小さければ、補正エッジ差分比が増加するにつれて加算比率Kを線形的に増加させる。なお、非線形に増加させるものとしても構わないが単調増加するものが好ましい。
【0087】
加重加算処理部68は、入力画像とぼかし画像を加算比率Kに基づいて合成し、出力画像を生成する。具体的には、画素毎に下記式(4)の加重加算処理により出力画像を生成する。
出力画像=(入力画像×加算比率K)+(ぼかし画像×(1−加算比率K)) ・・・(4)
上記式(4)によると、例えば、入力画像が、図3(a)の入力画像100場合、人物101については、補正エッジ差分比が大きくなるため人物101の画像に対応する画素の加算比率KはK=1或いは1に近い値となる。従って出力画像における人物101の画像は、入力画像100の人物101の画像とほぼ等しくなる。
【0088】
一方、入力画像100の建物102の画像については、ピントが合っていないことから、補正エッジ差分比は1より小さい値となる。従って、加算比率Kがゼロに近づき、出力画像における建物102の画像は、入力画像100の建物102の画像にぼかし画像の建物102の画像が混合されるため、入力画像100の建物102の画像よりもぼかし効果が大きい画像となる。この結果、出力画像は、人物101が強調されて見える画像となる。
【0089】
尚、当然のことながら、図10の第2実施例、図12の第3実施例、図13の第4実施例及び図15の第5実施例における変換テーブル46、ぼかし処理部47及びエッジ強調処理部48それぞれに替えて、図17の第6実施例における変換テーブル67、ぼかし処理部66及び加重加算処理部68それぞれを採用することができる。
【0090】
第2、第4又は第5実施例を変形した場合、変換テーブル67へは、周波数成分比が入力され、図18における変換テーブル67の関数の横軸が周波数成分比となる。
【0091】
第3実施例を変形した場合には、水平周波数成分比又は垂直周波数成分比が入力され、図18における変換テーブル67の関数の横軸が水平周波数成分比又は垂直周波数成分となる。
【0092】
図5の第1実施例、図10の第2実施例、図12の第3実施例、図13の第4実施例及び図15の第5実施例におけるぼかし処理部47に替えて変換テーブル46から出力されるぼかし度合に応じてY信号の大きさのみを低減する可変輝度低減処理部(図示せず。)を採用することができる。また、図17の第6実施例におけるぼかし処理部66に替えてY信号の大きさのみを低減する固定輝度低減処理部(図示せず。)を採用することができる。これにより、例えば、入力画像が、図3(a)の入力画像100の場合、ピントの合っていない建物102の輝度が低減され、人物101が強調されて浮き立って見える出力画像を取得することができる。
【0093】
また、図5の第1実施例、図10の第2実施例、図12の第3実施例、図13の第4実施例及び図15の第5実施例におけるぼかし処理部47に替えて変換テーブル46から出力されるぼかし度合に応じてU、V信号の大きさのみを低減する可変彩度低減処理部(図示せず。)を採用することができる。また、図17の第6実施例におけるぼかし処理部66に替えてU、V信号の大きさのみを低減する固定彩度低減処理部(図示せず。)を採用することができる。これにより、例えば、入力画像が、図3(a)の入力画像100の場合、ピントの合っていない建物102の彩度が低減され、人物101が強調されて浮き立って見える出力画像を取得することができる。
【0094】
また、本実施例及び変形例では、強調画像生成処理を入力画像の画素単位で行なっているが、これに限られるものではない。例えば、複数の画素からなる小領域を強調画像生成処理を施す単位とすることもできる。これによると、強調画像生成処理の処理量を軽減することができる。
【0095】
図19は、撮像装置1が強調画像を生成するまでの一連の処理を示すフローチャートである。ステップS100において、撮像装置1の電源がONされると、ステップS101へ進む。
【0096】
ステップS101では、撮影者が撮像装置1の動作モードを選択する。撮像装置1は、動画及び静止画を撮影する撮影モードと既に撮影され外部メモリ22に記録された撮影画像を再生する再生モードを有する。ここでは、撮影者により撮影モードが選択され、さらに強調画像生成モードが選択されているものとする。
【0097】
ステップS102では、撮像装置1は、プレビューモードへ移行する。プレビューモードでは、レンズ部3を経由してイメージセンサ2の光電変換によって得られたアナログの画像信号がAFE4においてデジタルの画像信号に変換されて画像処理部7へ出力される。そして、画像処理部7において、当該デジタルの画像信号は、AF処理、AE処理及びホワイトバランス処理等の画像処理が施され、画像信号出力部12を経て表示部13に表示される。
【0098】
ステップS103では、撮影者によって撮影対象の構図やズーム倍率が調整される。
【0099】
ステップS104では、撮像装置1が、ステップS103で設定された構図やズーム倍率の下でAF/AE/AWB制御を実行する。
【0100】
ステップS105では、CPU17は、操作部19のシャッタボタンがいわゆる半押しされたかどうかを判定する。
【0101】
撮像装置1の操作部19には、静止画撮影のためのシャッタボタン(図示せず。)が備えられている。シャッタボタンは2段階スイッチとなっており、撮影者がシャッタボタンを略半分まで押し込むと第1スイッチがONされる。シャッタボタンが最後まで押し込まれる(以下、シャッタボタンを最後まで押し込むことを全押しと記載する。)と第2スイッチがONされる。
【0102】
シャッタボタンが半押しされたと判断されると、ステップS106へ進む。そうでなければステップS102へ戻り、撮像装置1はプレビューモードを継続する。
【0103】
ステップS106では、撮像装置1が、AF機能により撮影者が注目する被写体(例えば、図3(a)の人物101。)にピントを合わせるとともに、AE機能により絞り32の開口量の設定、イメージセンサ2の露光時間(即ち、シャッタスピード。)の設定及びAWB機能による色相の設定を行なう。
【0104】
ステップS107では、CPU17は、シャッタボタンが全押しされたかどうかを判断する。全押しされたと判断した場合は、ステップS108へ進む。そうでない場合、即ち半押しの状態が維持されている場合は、撮像装置1は、全押しされるまでステップS107で設定された撮影条件を維持する。
【0105】
ステップS108では、撮像装置1は、ステップS106で設定された撮影条件で静止画撮影することにより、例えば、図3(a)の入力画像100を取得し、RAWデータあるいはYUV形式で入力画像をフレームメモリ5に格納し、ステップS109へ進む。
【0106】
ステップS109では、CPU17は、強調画像生成モードに設定されているか否かを判断する。強調画像生成モードに設定されている場合は、ステップS110へ進む。そうでない場合は、ステップS111へ進む。
【0107】
ステップS110では、撮影により取得した入力画像から、本実施例及び変形例のいずれかに記載の強調画像生成処理により強調画像を生成し、ステップS112へ進む。
【0108】
ステップS111では、CPU17の制御の下、画像処理部7によって撮影により取得した入力画像に対し画像処理が施され、続いて圧縮処理部9により圧縮処理が施され、外部メモリ22に格納される。そして、ステップS102へ戻る。
【0109】
ステップS112では、CPU17の制御の下、画像処理部7によって撮影により取得した入力画像100及び強調画像に対し画像処理が施され、続いて圧縮処理部9により圧縮処理が施され、外部メモリ22に格納される。そして、ステップS102へ戻る。
【0110】
<実施例7>
図20は、画像処理部7における強調画像生成処理の第7実施例を説明する図である。図20において、図17と同一の番号を付している部位は、第6実施例の場合と同一の機能及び動作を有する部位であるため、その機能及び動作の説明は省略する。図20において、ぼかし処理部69は、入力画像にぼかし処理を施すことによりぼかし画像を生成し出力する。ぼかし処理部69は、例えば、入力画像に対し画素信号の濃淡変化を滑らかにする平均化フィルタ、画像信号に含まれる空間周波数成分のうち低周波成分を残しつつ高周波成分を除去するようなLPF(Low Pass Filter)、或いは、処理の対象となる画素に近いほど大きな重みを付け、その重みをガウス分布に近づけたガウシアンフィルタ等を用いることによりぼかし処理を実現する。以下、ぼかし処理を実現するフィルタをぼかしフィルタと記載する。
【0111】
ぼかし処理部69は、拡張処理部45から出力される入力画像の各画素の補正エッジ差分比を0.0以上1.0以下の範囲に収まるように正規化し、かかる正規化された補正エッジ差分比を各画素の合焦度合として利用する。ぼかし処理部69は、ぼかし処理の対象となる画素(以下、注目画素と記載する。)にぼかし処理を施す際に、当該注目画素の合焦度合に応じて、ぼかし処理によるぼかし度合を変更する。以下、ぼかし処理部69によるぼかし処理の実施例について説明する。
【0112】
<実施例7−1>
ぼかし処理部69は、入力画像における注目画素の合焦度合に応じて、ぼかしフィルタのフィルタサイズを変更する。ぼかし処理部69は、注目画素の合焦度合が、予め定められた所定の閾値TH1以上の場合には、ぼかしフィルタのフィルタサイズを小さくし、注目画素の合焦度合が所定の閾値TH1より小さい場合には、フィルタサイズを大きくする。
【0113】
例えば、所定の閾値を0.5とした場合、ぼかし処理部69は、注目画素の合焦度合が0.5以上の場合には、当該注目画素はピントが合っている状態に近いと判断し、フィルタサイズを3×3とする。他方、注目画素の合焦度合が0.5より小さい場合には、当該注目画素はピントが合っていない状態に近いと判断し、フィルタサイズを5×5とする。
【0114】
画像処理部69による上記ぼかし処理によると、注目画素が、ピントの合っている状態に近い場合は、注目画素の極近傍、例えば、当該注目画素に隣接する画素のみの画素値を利用してフィルタ処理がなされる。このため当該注目画素のぼかし度合は小さくなる傾向となる。他方、注目画素がピントの合っていない状態に近い場合には、当該注目画素の極近傍の画素のみならず、注目画素から離れた位置にある画素の画素値を利用してフィルタ処理がなされる。このため当該注目画素のぼかし度合は大きくなる傾向となる。即ち、入力画像は、ピントの合っている状態に近い画素に対してはぼかし度合が小さくなるように、ピントの合っていない状態に近い画素に対してはぼかし度合が大きくなるように、ぼかし処理が施されることになる。この結果、ピントの合った被写体が強調された画像をより一層効果的に生成することができる。
【0115】
<実施例7−2>
ぼかし処理部69は、ぼかしフィルタによるぼかし処理で利用する画素の合焦度合に基づいて当該ぼかしフィルタにマスク処理を施し、補正ぼかしフィルタを生成する。ぼかし処理部69は、当該補正ぼかしフィルタを用いて入力画像にぼかし処理を施す。今、ぼかし処理部69が、フィルタサイズ5×5のぼかしフィルタを用いるものとする。
【0116】
図21(a)は、フィルタサイズが5×5のぼかしフィルタを示している。ぼかしフィルタは、25個の要素が配列されて構成される。ぼかしフィルタを構成する25個の要素それぞれをぼかしフィルタ要素と呼ぶ。図21(a)においてa〜yは、各ぼかしフィルタ要素を示している。各ぼかしフィルタ要素はそれぞれ所定のフィルタ係数を有している。図21(b)においてCa〜Cyは、各ぼかしフィルタ要素が有するフィルタ係数である。尚、各ぼかしフィルタ要素の係数Ca〜Cyをまとめてぼかしフィルタのフィルタ係数と記載する場合もある。ここで、ぼかしフィルタによるぼかし処理の対称となる入力画像中の注目画素は、ぼかしフィルタ要素mに対応する画素となる。
【0117】
ぼかし処理部69は、注目画素(ぼかしフィルタ要素mに対応する画素)と各ぼかしフィルタ要素(ぼかしフィルタ要素mを除く)に対応する画素の合焦度合に基づいて、ぼかしフィルタにマスク処理を施すためのマスクフィルタを生成する。生成されるマスクフィルタのフィルタサイズはぼかしフィルタのフィルタサイズと同じである。ここで、マスクフィルタについてのマスクフィルタ要素及びマスクフィルタのフィルタ係数の用語の意味は、ぼかしフィルタの場合と同様である。次に、ぼかし処理部69は、ぼかしフィルタのフィルタ係数それぞれにマスクフィルタのフィルタ係数を乗じることにより補正ぼかしフィルタを生成する。
【0118】
ぼかし処理部69は、例えば、以下のような規則に従いマスクフィルタを生成する。
(1)注目画素の合焦度合が予め定められた所定の閾値TH1より大きい場合、
(1−1) TH1<ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を1とする。
【0119】
(1−2) 0≦ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦TH1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とする。
【0120】
(2)注目画素の合焦度合が予め定められた所定の閾値TH1以下である場合、
(2−1) TH1<ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とする。
【0121】
(2−2) 0≦ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦TH1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を1とする。
【0122】
図22は、ぼかし処理部69による、入力画像200に対するぼかし処理を説明するための図である。入力画像200では、人物201にピントが合っているものとする。ぼかし処理部69は、ぼかしフィルタの位置を水平方向および垂直方向に1画素ずつシフトさせつつ、各位置においてマスクフィルタを生成する。そして、生成したマスクフィルタ及びぼかしフィルタに基づいて補正ぼかしフィルタを生成し、該補正ぼかしフィルタにより注目画素にぼかし処理を施す。
【0123】
ぼかしフィルタが位置Aにある場合に、ぼかし処理部69がどのようにぼかし処理を施すかを説明する。ぼかしフィルタが位置Aにある場合、ぼかしフィルタ要素mに対応する画素は、ピントの合っている人物201の顔の一部の画素であり、その合焦度合がTH1より大きいく1以下であるものとする。また、ぼかしフィルタ要素a、b、c、f、g、k、l、p、q、u、v、wに対応する画素のそれぞれの合焦度合が0以上、TH1以下で、ぼかしフィルタ要素d、e、h、i、j、m、n、o、r、s、t、x、yに対応する画素のそれぞれの合焦度合がTH1より大きく1以下であるものとする。
【0124】
この場合、ぼかし処理部69は、規則(1−2)に従ってぼかしフィルタ要素a、b、c、f、g、k、l、p、q、u、v、wに対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とし、規則(1−1)に従ってぼかしフィルタ要素d、e、h、i、j、m、n、o、r、s、t、x、yに対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を1として、図23(a)のようなマスクフィルタを生成する。ぼかし処理部69は、図23(b)に示すように、ぼかしフィルタのフィルタ係数とマスクフィルタのフィルタ係数を乗算し、補正ぼかしフィルタを生成する。ぼかし処理部69は、生成した補正ぼかしフィルタを用いて、位置Aにおける入力画像200の注目画素にぼかし処理を施す。即ち、ぼかし処理部69は、合焦度合がTH1以上の注目画素にぼかし処理を施す場合には、合焦度合がTH1以上の画素の画素値のみを用いてぼかし処理を施す。これにより、ピントの合っている注目画素に対するぼかし処理において、ピントのあっていない画素の色が混ざることにより起こる色にじみを軽減することができる。
【0125】
ぼかしフィルタが位置Bにある場合、ぼかしフィルタ要素mに対応する画素は、ピントの合っていない人物202の体の一部の画素であり、その合焦度合が0以上、TH1以下であるものとする。また、ぼかしフィルタ要素a、f、g、k、l、p、q、uに対応する画素のそれぞれの合焦度合がTH1より大きく1以下、ぼかしフィルタ要素b、c、d、e、h、i、j、m、n、o、r、s、t、v、w、x、yに対応する画素のそれぞれの合焦度合が0以上、TH1以下であるものとする。
【0126】
このとき、ぼかし処理部69は、規則(2−1)に従ってぼかしフィルタ要素a、f、g、k、l、p、q、uに対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とし、規則(2−2)に従ってぼかしフィルタ要素b、c、d、e、h、i、j、m、n、o、r、s、t、v、w、x、yに対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を1として、図24(a)のようなマスクフィルタを生成する。ぼかし処理部69は、図24(b)に示すように、ぼかしフィルタのフィルタ係数とマスクフィルタのフィルタ係数を乗算し、補正ぼかしフィルタを生成する。ぼかし処理部69は生成した補正ぼかしフィルタを用いて、位置Bにおける入力画像200の注目画素にぼかし処理を施す。
即ち、ぼかし処理部69は、合焦度合がTH1より小さい注目画素にぼかし処理を施す場合には、合焦度合がTH1より小さい画素の画素値のみを用いてぼかし処理を施す。これにより、ピントの合っていない注目画素に対するぼかし処理において、ピントのあっている画素の色が混ざることにより起こる色にじみを軽減することができる。
【0127】
<実施例7−3>
ぼかし処理部69は、実施例7−2と同様に、ぼかしフィルタによるぼかし処理で利用する画素の合焦度合に基づいて当該ぼかしフィルタにマスク処理を施し、補正ぼかしフィルタを生成する。そして、当該補正ぼかしフィルタを用いて入力画像にぼかし処理を施す。以下、実施例7−2との相違点について説明する。
【0128】
ぼかし処理部69は、0.0以上1.0以下の範囲の合焦度合を予め定められた所定範囲毎に区切ることにより3つ以上の小範囲に細分化する。そして、注目画素(ぼかしフィルタ要素mに対応する画素)と各ぼかしフィルタ要素(ぼかしフィルタ要素mを除く)に対応する画素の合焦度合が細分化された小範囲のいずれに属するかに基づいてマスクフィルタを生成する。そして、ぼかしフィルタと生成されたマスクフィルタに基づいて補正ぼかしフィルタを生成し、当該補正ぼかしフィルタを用いて注目画素にぼかし処理を施す。
【0129】
ぼかし処理部69は、例えば、合焦度合を3つの小範囲に細分化し、以下のような規則に従いマスクフィルタを生成する。
【0130】
(3)注目画素の合焦度合が予め定められた所定の閾値TH1より大きく、予め定められた所定の閾値TH2以下の場合、
(3−1) TH2<ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とする。
【0131】
(3−2) TH1<ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦TH2
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を1とする。
【0132】
(3−3) 0≦ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦TH1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とする。
【0133】
(4)注目画素の合焦度合が予め定められた所定の閾値TH2より大きく1以下である場合、
(4−1) TH2<ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を1とする。
【0134】
(4−2) TH1<ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦TH2
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とする。
【0135】
(4−3) 0≦ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦TH1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とする。
【0136】
(5)注目画素の合焦度合が0以上で予め定められた閾値TH1以下である場合、
(5−1) TH2<ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とする。
【0137】
(5−2) TH1<ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦TH2
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とする。
【0138】
(5−3) 0≦ぼかしフィルタ要素に対応する画素の合焦度合≦TH1
であれば、当該ぼかしフィルタ要素に対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を1とする。
【0139】
図25は、ぼかし処理部69による、ぼかし処理を説明するための図である。図25の入力画像300において、人物301は、顔部分301a、胴体部分301b、腕部分301cから成る。人物301は青色の衣服を着ているものとする。このため胴体部分301b及び腕部分301cは青色である。また、ハンドル302は赤色、背景303は緑色であるものとする。
【0140】
入力画像300では、ハンドル302及び腕部分301cにピントが合っており、その合焦度合がTH2より大きいものとする。また、人物301の胴体部分301bの合焦度合がTH1より大きくTH2以下であり、背景303の合焦度合が0以上、TH1以下であるものとする。以下、ぼかしフィルタが位置Cにある場合に、ぼかし処理部69が、どのようにぼかし処理を施すかを説明する。
【0141】
図25において、ぼかし処理の注目画素は、補正フィルタのフィルタ要素mに対応する画素である。当該注目画素は、ハンドル302の隙間に存在する人物301の胴体301bの一部分の画素である。従って、その合焦度合は上記したようにTH1より大きくTH2以下となる。今、フィルタ要素d、g、k、m、qの合焦度合はTH1より大きくTH2以下であるものとする。
【0142】
また、フィルタ要素a、b、c、f、h,i、l、n、p、r、s、u、v、wの合焦度合はTH2より大きく1以下であるものとする。
【0143】
また、フィルタ要素e、j、o、t、x、yの合焦度合は0以上、TH1以下であるものとする。
【0144】
このとき、ぼかし処理部69は、規則(3−1)に従い、ぼかしフィルタ要素a、b、c、f、h,i、l、n、p、r、s、u、v、wに対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0とし、規則(3−2)に従い、ぼかしフィルタ要素d、g、k、m、qに対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を1とし、規則(3−3)に従い、ぼかしフィルタ要素e、j、o、t、x、yに対応するマスクフィルタ要素のフィルタ係数を0として、図26(a)のようなマスクフィルタを生成する。ぼかし処理部69は、図26(b)に示すように、ぼかしフィルタのフィルタ係数とマスクフィルタのフィルタ係数を乗算し、補正ぼかしフィルタを生成する。ぼかし処理部69は生成した補正ぼかしフィルタを用いて、位置Cにおける入力画像300の注目画素にぼかし処理を施す。
【0145】
かかる補正ぼかしフィルタによるぼかし処理によると、合焦度合が注目画素と同じ範囲にある画素の画素値のみを用いてぼかし処理が施されるため、合焦度合が異なる画素の画素値が混ざることにより起こる色にじみを軽減することができる。従って、入力画像300において、青色の注目画素(ハンドル302の隙間に存在する青色の胴体301bの一部分の画素)のぼかし処理には、赤色や緑色の割合の多い画素は用いられず、青色の割合の多い画素が用いられることになるため、ぼかし処理後の注目画素に赤色や緑色が混ざることを軽減することができる。
【0146】
<実施例7−4>
ぼかし処理部69は、実施例7−2、実施例7−3と同様に、ぼかしフィルタによるぼかし処理で利用する画素の合焦度合に基づいて当該ぼかしフィルタにマスク処理を施し、補正ぼかしフィルタを生成する。そして、当該補正ぼかしフィルタを用いて入力画像にぼかし処理を施す。以下、実施例7−2及び実施例7−3との相違点について説明する。
【0147】
ぼかし処理部69は、例えば、ピントの合った被写体が水平方向へ移動しているシーンの画像が入力された場合、その移動のスピード感を強調する、所謂流し取りの効果を奏するぼかし処理を施す。
【0148】
図27は、ぼかし処理部69による、流し取り効果を奏するぼかし処理を説明するための図である。図27(a)において、入力画像400では、人物401にピントが合っているものとする。入力画像400は、人物401が水平方向左側から右側へ移動しているシーンの画像である。
【0149】
ぼかし処理部69は、人物401の水平移動方向(左側から右側へ向かう方向)とは反対の水平方向(右側から左側へ向かう方向)に進むに連れて、ぼかし処理に用いるぼかしフィルタの最後尾の列に新たなぼかしフィルタ要素の列を追加することにより新たなぼかしフィルタを生成していく。尚、ぼかしフィルタの最後尾の列とは、人物401の水平移動方向と反対の方向を進行方向とした場合の最後尾の列である。
【0150】
図27(b)において、ぼかし処理部69が、位置Dにおいて注目画素(フィルタ要素mに対応する画素)に対するぼかし処理を施す際に用いるぼかしフィルタ402のフィルタサイズは、5×5である。
【0151】
図27(c)において、図27(b)から1画素左側にシフトした位置E(即ち、水平右方向から左方向へ進めたと見ることができる。)で注目画素(フィルタ要素mに対応する画素)にぼかし処理を施す場合、ぼかし処理部69は、ぼかしフィルタ402の右端の列(ぼかしフィルタ要素e、j、o、t、yからなる列)にぼかしフィルタ要素イ、ロ、ハ、ニ、ホからなる列を追加し、フィルタサイズが5×6のぼかしフィルタ403を生成する。そして、かかるぼかしフィルタ403にマスク処理を施した補正ぼかしフィルタを生成し、ぼかし処理を施す。
【0152】
さらに、図27(d)において、図27(c)から1画素左側にシフトした位置F(即ち、更に水平右方向から左方向へさらに進めたと見ることができる。)で注目画素(フィルタ要素mに対応する画素)にぼかし処理を施す場合、ぼかし処理部69は、ぼかしフィルタ403の右端の列(ぼかしフィルタ要素イ、ロ、ハ、ニ、ホからなる列)にフィルタ要素ヘ、ト、チ、リ、ヌからなる列を追加し、フィルタサイズが5×7のぼかしフィルタ404を生成する。そして、かかるぼかしフィルタ404にマスク処理を施した補正ぼかしフィルタを生成し、ぼかし処理を施す。
【0153】
図28は、図27(a)の入力画像400に、上記のようにぼかし処理を施すことによって生成されたぼかし画像を示している。
【0154】
このように、ピントの合った特定被写体が水平方向に移動するシーンの入力画像にぼかし処理を施す場合において、ぼかし処理部69が、特定被写体の水平移動方向と反対方向に向って配列されている画素にぼかし処理を施す際に、当該反対方向に進むに連れてぼかし処理に用いるぼかしフィルタのフィルタサイズを特定被写体の水平移動方向に向って大きくしていくことにより、移動する特定被写体のスピード感を強調したぼかし画像を生成することができる。
【0155】
<実施例7−5>
ぼかし処理部69は、実施例7−2、実施例7−3と同様に、ぼかしフィルタによるぼかし処理で利用する画素の合焦度合に基づいて当該ぼかしフィルタにマスク処理を施し、補正ぼかしフィルタを生成する。そして、当該補正ぼかしフィルタを用いて入力画像にぼかし処理を施す。以下、実施例7−2及び実施例7−3との相違点について説明する。
【0156】
ぼかし処理部69は、例えば、入力画像が、ピントの合った被写体が撮影時に撮影方向を撮像装置に向って移動しているようなシーンの画像である場合、その移動のスピード感を強調する、所謂ズーム流し取りの効果を奏するぼかし処理を施す。
【0157】
図29は、ぼかし処理部69による、ズーム流し取り効果を奏するぼかし処理を説明するための図である。図29において、入力画像500は、人物501が撮影時に撮影方向を撮像装置に向って移動しているシーンの画像である。入力画像500では、人物501にピントが合っているものとする。
【0158】
ぼかし処理部69は、人物501を除くその他の被写体に対してぼかし処理を施す場合、人物501の重心の位置を導出し、当該重心の位置から離れるに連れて、ぼかし処理に用いるぼかしフィルタのサイズを大きくしていく。即ち、ピントの合っていないと判断される画素に対してぼかし処理を施す場合には、ピントの合っていると判断される画素群の重心を導出し、当該重心から離れるに連れて、ぼかし処理に用いるぼかしフィルタのサイズを大きくしていく。
【0159】
図29において、ぼかし処理部69が、位置Gにおいて注目画素(ぼかしフィルタ要素mに対応する画素)に対するぼかし処理を施す際に用いるぼかしフィルタ502のフィルタサイズは、5×5である。尚、ぼかしフィルタ要素mに対応する画素が人物501の重心であるとする。
【0160】
図29において、位置Hにおける注目画素(フィルタ要素mに対応する画素)は、ピントの合っていないと判断される画素であるものとする。この場合、ぼかし処理部69は、ぼかしフィルタ503のフィルタサイズを7×7とする。さらに、位置Hにおける注目画素(フィルタ要素mに対応する画素)は、ピントの合っていないと判断される画素であり、当該注目画素は、位置Hにおける注目画素よりも人物501の重心から離れている。従って、ぼかし処理部69が、ぼかしフィルタ504のフィルタサイズを8×8とする。
【0161】
このようなぼかし処理によると、ピントの合っていないと判断される画素については、ピントの合っている被写体の重心から遠ざかるにつれてぼかし処理によるぼかし度合が大きくなる傾向となる。これにより、ピントの合った被写体が撮影方向を撮像装置に向ってくるときのスピード感を強調したぼかし画像を生成することができる。
【0162】
<第8実施例>
図30は、画像処理部7における強調画像生成処理の第8実施例を説明する図である。図30において、図17と同一の番号を付している部位は、第6実施例の場合と同一の機能及び動作を有する部位であるため、その機能及び動作の説明は省略する。
【0163】
撮影対象に人物が含まれており、当該人物の顔にピントが合わせられるとともに、当該人物の顔が比較的大きく撮影された撮影画像は、撮影者が当該人物を主要被写体として撮影したと考えられる。このような撮影画像に対しては、合焦度合の低い背景画像(主要被写体を除く他の撮影対象の撮影画像)に、ぼかし度合のより大きなぼかし処理を施すことが、撮影者の意図に沿うと考えられる。
【0164】
他方、撮影対象に人物が含まれているものの、被写界深度が深く、撮影対象の略全体に対してピントが合わせられるとともに、当該人物の顔が比較的小さく撮影された撮影画像は、撮影者が当該人物を含む撮影対象全体を主要被写体として撮影したと考えられる。このような撮影画像に対しては、合焦度合の低い部分があったとしても、ぼかし度合のより小さいぼかし処理を施す、或いは、ぼかし処理を施さないことが撮影者の意図に沿うと考えられる。
【0165】
図30において、顔検出処理部70は、入力画像から注目被写体と考えられる人物の顔画像領域を検出するとともに、検出した顔画像領域の入力画像領域全体に占める割合に応じて、後述するぼかし処理部71によるぼかし度合を調整する。顔画像領域の入力画像領域全体に占める割合は、例えば、入力画像領域の画素数に対する顔画像領域の画素数の割合を計算することで算出することができる。
【0166】
顔画像領域の入力画像領域全体に占める割合が、例えば30%以上であれば、撮影者は当該人物を主要被写体とした、いわゆるポートレート(人物画)を撮影しようとしていると考えられる。他方、顔画像領域の入力画像領域全体に占める割合が、所定割合未満、例えば30%未満であれば、撮影者は撮影対象全体を主要被写体とした、いわゆるランドスケープ(風景画)を撮影しようとしていると考えられる。
【0167】
従って、顔検出部70は、顔画像領域の入力画像領域全体に占める割合が、あらかじめ決められた所定割合以上であれば、人物がより強調されて、浮き立ったように見えるように後述するぼかし処理部71によるぼかし度合を大きくする。他方、顔画像領域の入力画像領域全体に占める割合が、当該所定割合未満である場合は、撮影対象全体のぼけ具合が小さくなる、あるいは全く無くなるように、後述するぼかし処理部71によるぼかし度合を小さくする、あるいはぼかし度合をゼロにする。
このような処理により、撮影者が、人物を主要被写体とした撮影を行う場合には、人物がより一層強調された撮影画像を取得することができる。他方、撮影対象全体を主要被写体とした撮影を行う場合には、被写界深度を深くして、撮影対象全体にピントが合うように撮影された元の撮影画像にほぼ等しい画像を取得することができる。
【0168】
顔検出部70は、入力画像中に複数の人物顔を検出した場合には、例えば、最も顔画像領域の大きい人物顔を選択する、撮影画像の中心から最も近い位置に存在する人物顔を選択する、或いは、拡張処理部45から出力される補正エッジ差分比の平均が最も高い顔画像領域を選択する等、あらかじめ設定された条件に合致する顔画像を選択する。
【0169】
図30において、ぼかし処理部70は、入力画像にぼかし処理を施し、ぼかし画像を出
力する。ぼかし処理部70は、例えば、隣接する画素信号の濃淡変化を滑らかにする平均
化フィルタ、或いは画像信号に含まれる空間周波数成分のうち、低周波成分は残し、高周
波成分を除去するようなLPF(Low Pass Filter)を採用することができる。上記平均
化フィルタやLPFは、例えば、CG-ARTS協会から発行されている「デジタル画像処理」
(2007年3月1日第2版第2印刷)の108頁から110頁、及び131頁から13
3頁に記載されているものを採用することができる。
【0170】
ぼかし処理部70は、ぼかしフィルタのフィルタサイズを大きくすることによって、ぼかし度合を大きくすることができ、逆に、フィルタサイズを小さくすることによって、ぼかし度合を小さくすることができる。さらに、注目画素に対するフィルタ係数を1として、注目画素以外のフィルタ係数を0とすることにより、ぼかし度合をゼロとすることができる。その他、例えば、フィルタサイズを7×7に固定する場合には、注目画素から離れるに連れてフィルタ係数を大きくすることにより、ぼかし度合を大きくすることができ、反対に注目画素に近づくに連れてフィルタ係数を大きくすることにより、ぼかし度合いを小さくすることができる。
【0171】
ぼかし処理部70は、顔検出部70から顔画像領域の入力画像領域全体に占める割合が所定割合以上であることを示す信号が入力されると、例えば、フィルタサイズを7×7とする。他方、顔検出部70から顔画像領域の入力画像領域全体に占める割合が所定割合未満であることを示す信号、或いは顔画像領域が検出されなかったことを示す信号が入力されると、例えば、フィルタサイズを3×3とする、或いは注目画素に対するフィルタ係数を1として、その他のフィルタ係数を0とする。
【0172】
尚、当然のことながら、図5の第1実施例、図10の第2実施例、図12の第3実施例、図13の第4実施例、及び図15の第5実施例における変換テーブル46、ぼかし処理部47及びエッジ強調処理部48に替えて、図30の第8実施例における変換テーブル67、顔検出処理部70、ぼかし処理部71及び加重加算処理部68を採用することができる。
【0173】
第2、第4又は第5実施例を変形した場合、変換テーブル67へは、周波数成分比が入力され、図18における変換テーブル67の関数の横軸が周波数成分比となる。第3実施例を変形した場合には、水平周波数成分比又は垂直周波数成分比が入力され、図18における変換テーブル67の関数の横軸が水平周波数成分比又は垂直周波数成分となる。
【0174】
顔検出処理部70による顔検出処理について説明する。図30において、顔検出処理部70には、Y、U、V信号からなる入力画像の画像信号が入力される。顔検出処理部70は、入力画像の画像信号に基づき、入力画像中から人物の顔を検出し、検出された顔を含む顔領域を抽出する。画像中に含まれる顔を検出する手法として様々な手法が知られており、顔検出処理部70は何れの手法をも採用可能である。例えば、特開2000−105819号公報に記載の手法のように入力画像から肌色領域を抽出することによって顔(顔領域)を検出しても良いし、特開2006−211139号公報又は特開2006−72770号公報に記載の手法を用いて顔(顔領域)を検出しても良い。
【0175】
典型的には例えば、入力画像内に設定された着目領域の画像と所定の画像サイズを有する基準顔画像とを対比して両画像の類似度を判定し、その類似度に基づいて着目領域に顔が含まれているか否か(着目領域が顔領域であるか否か)を検出する。入力画像において着目領域は一画素ずつ左右方向又は上下方向にずらされる。そして、ずらされた後の着目領域の画像と基準顔画像とが対比されて、再度、両画像の類似度が判定され、同様の検出が行われる。このように、着目領域は、例えば入力画像の左上から右下方向に向けて1画素ずつずらされながら、更新設定される。また、入力画像を一定割合で縮小し、縮小後の画像に対して、同様の顔検出処理を行う。このような処理を繰り返すことにより、入力画像中から任意の大きさの顔を検出することができる。このような顔検出方法は、特開2007−265390に詳しく記載されている。
【0176】
上記第8実施例では、人物の顔画像を例に説明したが、人物の顔画像に限らず、動物の顔画像であっても、同様に実現することができる。
【0177】
<第9実施例>
第1実施例を表す図5、第2実施例を表す図10、第3実施例を表す図12、第4実施例を表す図13、及び第5実施例を表す図15、において、拡張処理部45が補正エッジ差分比をぼかし処理部47へも出力することとすることができる。そして、ぼかし処理部47は、所定値以上の補正エッジ差分比をカウントする。ぼかし処理部47は、入力画像の全画素数に対するカウント値の割合が所定割合以上の場合には、変換テーブル46からの出力に基づくぼかし度をより大きくしてぼかし処理を施すこととすることができる。逆に、所定割合未満の場合には、変換テーブル46からの出力に基づくぼかし度をより小さくする、或いはゼロにすることができる。
【0178】
<第10実施例>
第6実施例を表す図17において、例えば、拡張処理部45が補正エッジ差分比をぼかし処理部66へも出力することとすることができる。そして、ぼかし処理部66は、所定値以上の補正エッジ差分比をカウントする。ぼかし処理部66は、入力画像の全画素数に対するカウント値の割合が所定割合以上の場合には、ぼかし度を大きくしてぼかし処理を施すこととすることができる。逆に、所定割合未満の場合には、ぼかし度を小さくする、或いはゼロとするぼかし処理を施すこととすることができる。
【0179】
第9実施例及び第10実施例によると、補正エッジ差分比の数が比較的多い入力画像、即ち、ピントの合っている被写体が比較的大きい入力画像については、ピントが合っていない背景画像がよりぼかされた画像を取得することができる。他方、補正エッジ差分比の数が比較的少ない入力画像、即ち、ピントの合っている被写体が比較的小さい入力画像については、元の入力画像に近い画像を取得することができる。
【0180】
以上述べたように、本願発明では、入力画像の各画素或いは各領域(以下、各画素等と記載する。)の合焦度合(換言すると、各画素等の画像信号が、ピントが合っている画素等の画像信号からどの程度ずれているかの度合。)を導出し、当該合焦度合に応じて、各画素等の画像信号を低減する。具体的には、合焦度合が小さいほど、画像信号の高周波成分、Y信号(輝度信号)又はU及びV信号(彩度信号)を低減する。
【0181】
かかる処理により、撮像装置1の撮影者は、例えば、入力画像100の背景102をぼかすとともに人物101を強調して、その結果人物101が浮き立ったような“ぼけ味”のある強調画像を取得することができる。
【符号の説明】
【0182】
1 撮像装置
5 画像処理部
41 YUV生成部
42 極局所領域抽出部
43 局所領域抽出部
44 エッジ差分比算出部
45 拡張処理部
46 変換テーブル部
47 ぼかし処理部
48 エッジ強調処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の小領域からなる第1撮影画像に対してぼかし処理を施し第2撮影画像を生成する第2撮影画像生成手段と、
前記各小領域の合焦度合を導出する合焦度導出手段と、
前記合焦度導出手段により導出された前記各小領域の合焦度合が小さいほど前記第2撮
影画像の混合割合を大きくして、前記第1撮影画像における前記各小領域と前記第2撮影
画像における前記各小領域に対応する第2小領域を合成処理する合成処理手段と、
を備え、
前記第2撮影画像生成手段は、第1撮影画像から顔画像領域を検出する顔領域検出手段と、
検出された顔画像領域に基づいて、前記第1撮影画像にぼかし処理を施すことにより前記第2撮影画像を生成するぼかし処理手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ぼかし処理手段は、
検出された前記顔画像領域の前記第1撮影画像領域に対する割合が所定割合以上である場合に、ぼかし度合を大きくするぼかし処理を施し、
前記所定割合未満である場合には、
ぼかし度合を小さくする、或いはぼかし度合をゼロとするぼかし処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記合焦度導出手段は、前記各小領域における輝度信号の遷移パターンに応じて前記合
焦度合を導出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記合焦度導出手段は、前記各小領域における輝度信号に含まれる周波数成分に応じて
前記合焦度合を導出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装
置。
【請求項5】
撮影により複数の小領域からなる第1撮影画像を取得する撮影手段と、
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置によって生成された出力画像を記録する記録手段と、
を備えたことを特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−130169(P2011−130169A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286501(P2009−286501)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】