説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】出力装置用の画像データを生成する画像処理装置であって、色補正を含む色変換処理を小規模なハードウェア構成で実行することのできる画像処理装置等を提供する。
【解決手段】入力画像データを出力装置用の画像データに変換する画像処理装置が、入力画像データに対して、色補正処理と色空間の変換処理とを、所定色数の色毎に実行する色補正データ生成回路と、入力画像データを複数回色補正データ生成回路に転送するために保持する遅延回路と、入力画像データに対する補正処理及び変換処理の処理後のデータを、所定色数の色毎に収めた色補正テーブルを記憶するメモリとを有し、色補正データ生成回路は、上記処理を、対応する色補正テーブルを用いて実行し、出力装置で用いられる色数が所定色数よりも多い場合には、全色についての処理を、遅延回路から転送される入力画像データを用いて、複数回の処理で実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される画像データを出力装置用の画像データに変換する画像処理装置等に関し、特に、色補正を含む色変換処理を小規模なハードウェア構成で実行することのできる画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力された画像データをプリンターやディスプレイなどの出力装置に出力させるための画像処理技術が知られている。かかる画像処理では、出力装置で色の再現がなされるようにその出力装置の色特性を反映させるための色補正処理、出力装置で用いられる色空間への変換処理、及び出力装置での階調数(例えば、2値)に落とすための変換処理など、各種の色変換処理が行われる。
【0003】
例えば、CMYK4色のインクで印刷を行うプリンターでは、RGBで表現された画像データが入力されると、当該プリンターの色特性に合わせるための上記色補正、RGBからCMYKへの色空間の変換、及びドットデータにするための2値化等がなされ、処理後のデータが印刷エンジンに転送される。
【0004】
また、下記特許文献1では、このような色変換処理を画質の低下を招くことなく高速で行うための技術について記載され、色補正処理を行う前に、入力データの階調数を、色補正用の変換テーブルの階調数に落としておくプレ変換処理を行うことなどが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3268512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような処理をハードウェアで実現する場合、高速処理のためには上記色補正に用いる変換テーブル(色補正テーブル)をSRAMなどの高速でアクセス可能なメモリに収める必要がある。そして、現実的に妥当な階調数の(例えば、32階調の)当該色補正テーブルは、それを収めるために大容量のメモリ領域を必要とし、大容量のSRAM等を備えなければならないという課題がある。
【0007】
また、近年のプリンターでは、インク等の色材の色数も増加しており、装置によっては使用する色材の色数を切り替えられるものもある。このような装置の場合、上記色変換処理をやはりハードウェアで実現することを考えると、上記色補正処理のための回路を、最大色数に合わせて設ける、又は、切換可能な各色数毎に設けるということになり、回路規模が大きなものになってしまうという課題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、入力される画像データを出力装置用の画像データに変換する画像処理装置であって、色補正を含む色変換処理を小規模なハードウェア構成で実行することのできる画像処理装置、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、入力画像データを出力装置用の画像データに変換する画像処理装置が、前記入力画像データに対して、前記出力装置の色特性に基づく補正処理と、前記出力装置で用いられる色空間への変換処理とを、前記出力装置で用いられる色の所定色数の色毎に実行する色補正データ生成回路と、前記入力画像データを複数回前記色補正データ生成回路に転送するために、前記入力画像データを保持する遅延回路と、前記入力画像データに対する前記補正処理及び前記変換処理の処理後のデータを、前記所定色数の色毎に収めた色補正テーブル、を記憶するメモリと、を有し、前記色補正データ生成回路は、前記補正処理及び前記変換処理を、前記メモリに記憶された対応する前記色補正テーブルを用いて実行し、前記出力装置で用いられる色数が前記所定色数よりも多い場合には、前記出力装置で用いられる全色についての処理を、前記遅延回路から転送される入力画像データを用いて、複数回の処理で実行する、ことである。
【0010】
更に、上記の発明において、その好ましい態様は、更に、前記入力画像データの階調数を第一の階調数に変換するプレ変換回路を有し、前記色補正データ生成回路及び前記遅延回路には、当該プレ変換回路による変換後のデータが入力され、前記メモリに記憶される色補正テーブルは、前記第一の階調数より少ない第二の階調数のデータに対する前記処理後のデータを収める、ことを特徴とする。
【0011】
更にまた、上記の発明において、その一つの態様は、更に、前記色補正データ生成回路で処理されたデータを前記出力装置で用いられるデータの階調数に変換する処理を、前記出力装置で用いられる全色について同処理で実行するポスト変換回路と、前記出力装置で用いられる色数が前記所定色数よりも多い場合に、前記色補正データ生成回路で処理された前記全色のデータを同タイミングで前記ポスト変換回路に転送するために、前記色補正データ生成回路で先に処理されたデータを保持する後段遅延回路と、を有する、ことを特徴とする。
【0012】
更に、上記の発明において、別の態様は、更に、前記色補正データ生成回路で処理されたデータを、前記所定色数の色毎に、前記出力装置で用いられるデータの階調数に変換するポスト変換回路を有する、ことを特徴とする。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、入力画像データを出力装置用の画像データに変換する画像処理装置における画像処理方法において、前記画像処理装置が、前記入力画像データに対して、前記出力装置の色特性に基づく補正処理と、前記出力装置で用いられる色空間への変換処理とを、前記出力装置で用いられる色の所定色数の色毎に実行する色補正データ生成回路と、前記入力画像データを複数回前記色補正データ生成回路に転送するために、前記入力画像データを保持する遅延回路と、前記入力画像データに対する前記補正処理及び前記変換処理の処理後のデータを、前記所定色数の色毎に収めた色補正テーブル、を記憶するメモリと、を有し、前記色補正データ生成回路が、前記補正処理及び前記変換処理を、前記メモリに記憶された対応する前記色補正テーブルを用いて実行し、前記出力装置で用いられる色数が前記所定色数よりも多い場合には、前記出力装置で用いられる全色についての処理を、前記遅延回路から転送される入力画像データを用いて、複数回の処理で実行する、ことである。
【0014】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した画像処理装置を備えるプリンターの実施の形態例に係る構成図である。
【図2】画像処理ASIC35の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0017】
図1は、本発明を適用した画像処理装置を備えるプリンターの実施の形態例に係る構成図である。図1に示すプリンター2の画像処理ASIC35が本発明を適用した画像処理装置に相当し、当該画像処理ASIC35では、本プリンター2で印刷可能な最大色数(例えば、12色)の全データを生成する回路とせずにそれよりも少ない所定色数(例えば、4色)のデータを生成する色補正データ生成回路とし、当該所定色数よりも多い色数で印刷する場合には、当該データ生成に必要な入力画像データを遅延回路で保持することによって、この入力画像データを色補正データ生成回路に複数回転送し、全色のデータ生成を複数回に分けて行う。また、色補正データ生成回路での色補正処理に必要な色補正テーブルの階調数を上記入力画像データの階調数よりも少なくし、データ生成の際には補間演算を用いる。本画像処理ASIC35は、このようにすることで、印刷色数が可変なプリンター2において、入力画像データからプリンター2の印刷実行部である印刷エンジン(出力装置に相当)用の画像データの生成を、小規模なハードウェア構成で実現しようとするものである。
【0018】
図1に示すとおり、プリンター2は、コントローラー部3と印刷実行部4を備え、ここでは一例として、インクジェット式のプリンターである。本プリンター2では、通常、ホストコンピューター1からの印刷要求に従って、コントローラー部3が、送信される印刷対象画像のデータに対し各種の画像処理を施し、印刷実行部4が、当該画像処理後のデータに基づいて用紙などの印刷媒体に印刷を実行する。なお、本プリンター2は、12色(C、M、Y、K、Lc、Lm、Lk、Llk、Or、G、B、Dy)のインクを用いた印刷、8色(C、M、Y、K、Lc、Lm、Lk、Llk)のインクを用いた印刷、及び4色(C、M、Y、K)のインクを用いた印刷が可能である。
【0019】
ホストコンピューター1は、プリンター2に印刷指示をするプリンター2のホスト装置であり、パーソナルコンピューター等で構成される。図示していないが、ホストコンピューター1は、一般的なコンピューターと同様のハードウェア構成を備えており、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、表示装置、入力装置等が備えられる。
【0020】
また、ホストコンピューター1には、上記印刷指示の機能を担うドライバーが備えられ、ユーザーから印刷要求を受けた場合には、各種の印刷条件を含む印刷ジョブデータを生成してプリンター2へ送信する。なお、当該ドライバーは、処理を指示するプログラムと当該プログラムに従って処理を実行する制御装置(上記CPU等)などで構成される。
【0021】
プリンター2のコントローラー部3には、図1に示すように、I/F31、CPU32、ROM33、RAM34、画像処理ASIC35、エンジンI/F36が備えられる。I/F31は、ホストコンピューター1との通信を司る部分である。CPU32は、ROM33に格納されるプログラムに従ってプリンター2の各部を制御する処理を実行する。RAM34は、印刷対象画像のデータ等を一時的に保持するメモリである。
【0022】
画像処理ASIC35は、印刷対象の画像データに対して色補正処理などの色変換処理を司る回路であり、その具体的な構成と作用は後述する。エンジンI/F36は、上記色変換処理後のデータを整えて印刷実行部4へ転送する部分である。
【0023】
また、印刷実行部4は、上記転送されるデータに基づいて印刷媒体に印刷を実行する部分である。ここではインクジェット式の印刷方式であるので、各色のインクを噴射するノズルを備えたヘッド部(図示せず)が印刷媒体上を走査しながらインクを吐出して印刷を行う。
【0024】
このような構成を有するプリンター2では、印刷時に、まず、ホストコンピューター1から送信された印刷ジョブデータをI/F31を介して受信しRAM34に格納する。次に、受信したデータの制御コマンドがCPU32によって解釈され、CPU32から適宜印刷準備の指示がなされる。また、受信したデータに含まれる画像データ(ここでは一例としてRGBの色空間で表現されたデータ)については、CPU32によって展開処理がなされ、画素毎に各色(RGB)の階調値の値を有するいわゆるビットマップデータが生成され、RAM34に格納される。なお、ここでは、当該展開処理がプリンター2で行なわれたが、ホストコンピューター1で展開処理を行って、その後のデータを受信するようにしてもよい。
【0025】
その後、展開処理後の画像データが画像処理ASIC35に入力される。画像処理ASIC35では、入力された画像データの階調数(ここでは一例として、256階調)を所定の階調数(ここでは一例として、32階調)に落とすプレ変換処理、印刷実行部4で用いるインク色(上述した12色、8色、又は4色)のデータに変換すると共に当該印刷実行部4の色特性を反映させる色補正データ生成処理、及び、印刷実行部4で用いるデータの階調数(ここでは一例として、ドットのオン・オフを表す2階調)に落とすポスト変換処理を実行する。
【0026】
当該色変換処理後のデータは、エンジンI/F36で所定の順番に並べ替える処理などをなされ、順次、印刷実行部4に転送される。印刷実行部4では、当該転送されたデータに基づいて各色のノズルからインクを吐出し、印刷媒体に画像を形成する。その後、印刷媒体がプリンター2から排出されて一連の印刷処理が終了する。
【0027】
図2は、画像処理ASIC35の構成図である。図2に示すように、画像処理ASIC35は、一例として、入力ラスタバッファIB、プレ変換回路PR、カウンタ回路CC、遅延回路CD1、CD2、色補正データ生成回路CR、カウンタ回路PC、遅延回路PD0、PD1、ポスト変換回路PO、出力ラスタバッファOB、SRAMを備える。
【0028】
入力ラスタバッファIBは、画像処理ASIC35に入力される上述した画像データを保持するバッファであり、ここでは、画像処理ASIC35が1ラスタ毎に処理をするものとして1ラスタ分のデータを格納する。具体的には、RGBの256階調で表現された1ラスタ分のビットマップデータが保持される。なお、ラスタとは、画像範囲を副走査方向に所定長さで分割した領域のことである。
【0029】
プレ変換回路PRは、上記プレ変換処理を行う回路であり、具体的には256階調のRGBデータを32階調のRGBデータに変換する。具体的な変換手法としては、従前の誤差拡散法又は平均誤差法を用いることができ、あるいは、単に近い階調値に変換する手法を用いてもよい。
【0030】
カウンタ回路CCは、色補正データ生成回路CR用のカウンタであり、当該カウンタ値によって色補正データ生成回路CRは、使用する色補正テーブルCT0−CT2を切り換える。
【0031】
遅延回路CD1、CD2は、上記プレ変換回路PRでの処理後のデータを複数回色補正データ生成回路CRに転送するために、当該処理後のデータを一時的に保持する回路である。
【0032】
色補正データ生成回路CRは、上述した色補正データ生成処理を実行する回路である。当該回路で生成される色補正データは、各画素が印刷実行部4で使用される各インク色の階調値を有するデータであり、すなわち、12色印刷をする場合には12色の階調値を有するデータである。しかし、本画像処理装置では、当該色補正データ生成回路CRは、4色分の回路規模であり、1回の処理で4色分の色補正データを生成するので、4色印刷では1回の処理でよいが、8色印刷及び12色印刷では、それぞれ、上記遅延回路CDから転送される同じ入力データを用いた、2回及び3回の処理を行う。
【0033】
また、後述する色補正テーブルCTは、入力される画像データの各色の階調値に対して、上述した色補正データ生成処理の結果得られる色補正データの各色の階調値を対応させたテーブルであるので、色補正データ生成回路CRは、当該テーブルにおいて、プレ変換回路PRで処理された画像データの階調値に対して対応付けられている各色の階調値を取得することで、色補正データ生成処理を実行する。
【0034】
なお、上述したように、色補正データ生成回路CRに入力される画像データの階調数(32階調)は、色補正テーブルCTで用意される階調数(ここでは例えば、17階調)よりも多いため、上記階調値の取得は、実際には、色補正テーブルCTに収められているデータから補間計算をして求めた値を取得する。当該補間計算には、線形補間(例えば、四面体補間)を用いることができる。
【0035】
このように、色補正データ生成回路CRは、SRAMに格納される色補正テーブルCT0、CT1、CT2にアクセスして処理を実行する。
【0036】
SRAMに保存される色補正テーブルCT0、CT1、及びCT2は、RGB各色の階調値(17階調)で表現された各色(3次元の座標値)に対する色補正データの各色の階調値を対応させたテーブルであり、色補正テーブルCT0、CT1、及びCT2は、それぞれ、色補正データの、C、M、Y、Kの階調値、Lc、Lm、Lk、Llkの階調値、及びOr、G、B、Dyの階調値を対応させたテーブルである。
【0037】
カウンタ回路PCは、ポスト変換回路PO用のカウンタであり、当該カウンタ値に基づいてポスト変換回路POは処理を実行する。
【0038】
遅延回路PD0、PD1は、上記色補正データ生成回路CRで生成されたデータをタイミングを遅らせてポスト変換回路POに転送するために、当該生成されたデータを一時的に保持する回路である。
【0039】
ポスト変換回路POは、色補正データの階調数を印刷実行部4で用いられる階調数(2階調)に変換する処理を行う回路である。当該変換処理では、従前の誤差拡散法、ディザ法などを用いることができる。また、ここでは、当該変換処理で各色の階調値を決定するにあたり、他の色の階調値が必要となる処理法を用いることとしている。
【0040】
出力ラスタバッファOBは、ポスト変換回路POで処理されたデータを保持するバッファであり、1ラスタ分の容量を有する。ここに保持されたデータは、所定のタイミングでエンジンI/F36に出力される。
【0041】
次に、以上説明したような構成を有する本画像処理ASIC35での、処理手順について説明する。なお、ここでは、12色印刷を行なう場合の手順を説明する。まず、1ラスラ分の画像データ、すなわち、256階調で表現されたRGBのビットマップデータがRAM34から入力ラスタバッファIBに入力される。その後、当該データがプレ変換回路PRに出力されてプレ変換回路PRにおける上述した変換処理が実行される。その結果、上記画像データは32階調のRGBデータとなり、タイミングT1(図2のT1)でプレ変換回路PRから出力される。なお、タイミングTnは、1クロック毎に進行するタイミングを意味し、プレ変換回路PRにおける当該変換処理は3クロックに1回実行される。
【0042】
そして、このタイミングT1において、カウンタ回路CCは「0」の値に設定されている。プレ変換回路PRから出力された画像データは、図2に示すように、色補正データ生成回路CR、遅延回路CD1、及び遅延回路CD2に転送される。また、同タイミングでカウンタ回路CCから「0」のカウンタ値が色補正データ生成回路CRに送られる。
【0043】
その後、遅延回路CD1及び遅延回路CD2では、転送された画像データが保持される。また、色補正データ生成回路CRでは転送された画像データに対して上述した色補正データ生成処理を実行する。ここで、色補正データ生成回路CRは、上記カウンタ値「0」を受信しているので、SRAMに保持される色補正テーブルCT0にアクセスし、そのデータに基づいて上述の色補正データ生成処理を行なう。そして、当該処理の結果として、色補正データのCMYK部分(各画素の12座標値のうちの4座標値)が生成される。
【0044】
次に、タイミングT2において、上記生成された色補正データ(4色分)が色補正データ生成回路CRから、ポスト変換回路PO、遅延回路PD0、及び遅延回路PD1に転送される。また、同タイミングでカウンタ回路PCから「0」のカウンタ値がポスト変換回路POに送られる。
【0045】
一方、遅延回路CD1及び遅延回路CD2からは保持している画像データが色補正データ生成回路CRに転送され、また、カウンタ回路CCから「1」のカウンタ値が色補正データ生成回路CRに送られる。
【0046】
その後、色補正データ生成回路CRでは、上記カウンタ値「1」を受信しているので、遅延回路CD2から転送された画像データを無視し、遅延回路CD1から転送された画像データに対して上述した色補正データ生成処理を実行する。ここで、上記カウンタ値が「1」であるので、SRAMに保持される色補正テーブルCT1にアクセスし、そのデータに基づいて上述の色補正データ生成処理を行なう。そして、当該処理の結果として、色補正データのLc、Lm、Lk、Llk部分が生成される。
【0047】
また、ポスト変換回路POでは、カウンタ回路PCから転送されるカウンタ値が「2」であるタイミングで処理を実行するように設定されているので、この時点では処理を実行せず転送された色補正データを無視する。また、遅延回路PD0では、カウンタ回路PCのカウンタ値が「0」であるので、転送された色補正データを保持する。一方、遅延回路PD1では、カウンタ値が「0」であるので、転送された色補正データを保持しない。
【0048】
次に、タイミングT3において、上記生成された色補正データ(4色分)が色補正データ生成回路CRから、ポスト変換回路PO、遅延回路PD0、及び遅延回路PD1に転送される。また、同タイミングでカウンタ回路PCから「1」のカウンタ値がポスト変換回路POに送られる。また、遅延回路PD0から保持しているデータがポスト変換回路POに転送される。
【0049】
一方、遅延回路CD1及び遅延回路CD2からは保持している画像データが色補正データ生成回路CRに転送され、また、カウンタ回路CCから「2」のカウンタ値が色補正データ生成回路CRに送られる。
【0050】
その後、色補正データ生成回路CRでは、上記カウンタ値「2」を受信しているので、遅延回路CD1から転送された画像データを無視し、遅延回路CD2から転送された画像データに対して上述した色補正データ生成処理を実行する。ここで、上記カウンタ値が「2」であるので、SRAMに保持される色補正テーブルCT2にアクセスし、そのデータに基づいて上述の色補正データ生成処理を行なう。そして、当該処理の結果として、色補正データのOr、G、B、Dy部分が生成される。
【0051】
また、ポスト変換回路POでは、カウンタ回路PCから転送されるカウンタ値が「1」であるので、この時点では未だ処理を実行せず転送された色補正データを無視する。また、遅延回路PD0では、カウンタ回路PCのカウンタ値が「1」であるので、転送された色補正データを保持せず、一方、遅延回路PD1では、カウンタ値が「1」であるので、転送された色補正データを保持する。
【0052】
次に、タイミングT4では、上記生成された色補正データ(4色分)が色補正データ生成回路CRから、ポスト変換回路PO、遅延回路PD0、及び遅延回路PD1に転送される。また、同タイミングでカウンタ回路PCから「2」のカウンタ値がポスト変換回路POに送られる。また、遅延回路PD0及び遅延回路PD1から保持しているデータがポスト変換回路POに転送される。
【0053】
その後、ポスト変換回路POでは、カウンタ回路PCから転送されるカウンタ値が「2」であるので、この時点で上述した変換処理を実行する。すなわち、タイミングT4で、色補正データ生成回路CR、遅延回路PD0、及び遅延回路PD1から転送された色補正データで、全12色分の色補正データが揃うので、それらのデータについて2値化を実行する。
【0054】
なお、遅延回路PD0及び遅延回路PD1では、カウンタ回路PCのカウンタ値が「2」であるので、転送された色補正データを保持しない。
【0055】
その後、ポスト変換回路POで処理されたデータが出力ラスタバッファOBに転送されて保持され、所定のタイミングで印刷実行部4側へ送られる。
【0056】
また、上記タイミングT4では、前述したタイミングT1の処理がなされ、以降、同様の処理が繰り返し実行される。
【0057】
以上、12色印刷の場合について説明したが、8色印刷の場合には、12色印刷の場合に3クロック周期で実行された処理が2クロック周期で同様に実行されることになる。すなわち、カウンタ回路CC及びカウンタ回路PCのカウンタ値は「0」と「1」の値を取り、ポスト変換回路POは、カウンタ回路PCのカウンタ値が「1」の時に処理を実行する。
【0058】
また、4色印刷の場合にも、同様に、12色印刷の場合に3クロック周期で実行された処理が1クロック周期で同様に実行されることになる。この場合には、各カウンタ回路及び各遅延回路を用いないようにすることができる。
【0059】
なお、ポスト変換回路POでの処理に、各色について独立して同じ処理内容で実行できる方式を採用する場合には、ポスト変換回路POを4色分の処理を実行する回路規模として、色補正データ生成回路CRからデータが転送される度に処理を実行するようにすることができる。この場合には、カウンタ回路PC、遅延回路PD0、及び遅延回路PD1は必要でないので、これらがない構成とすることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態例に係る画像処理ASIC35では、遅延回路を設けて4色分を処理可能な規模の色補正データ生成回路で、4色、8色、及び12色の印刷における色変換処理を実行する。従って、色数の多い印刷及び色数を切り換えて行う印刷の場合にも、回路規模を小さく抑えることができる。
【0061】
また、プレ変換処理後のデータの階調数よりも少ない階調数の色補正テーブルを保持し、色補正データ生成時に補間演算を用いることとしたので、色補正テーブルを格納するSRAM等の高速メモリの容量も小さく抑えることができる。
【0062】
以上から、本プリンター2では、色変換処理を実行する部分を小規模なハードウェアで構成することが可能である。
【0063】
また、上述のように、後段のカウンタ回路PC、遅延回路PD0、及び遅延回路PD1を省く構成とすることにより、さらに小規模な構成とすることができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、最大色数を12色とし、色補正データ生成回路の規模を4色分の規模としたが、これらの色数は一例であり、処理スピード等を考慮して他の色数とすることができる。
【0065】
また、上記実施形態では、色変換処理後のデータを用いる出力装置がプリンター(の印刷実行部)であったが、本発明は、ディスプレイなど他の出力装置用の色変換処理にも適用することができる。
【0066】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0067】
1 ホストコンピューター、 2 プリンター、 3 コントローラー部、 4 印刷実行部、 31 I/F、 32 CPU、 33 ROM、 34 RAM、 35 画像処理ASIC、 36 エンジンI/F、 IB 入力ラスタバッファ、 PR プレ変換回路、 CC カウンタ回路、 CD1、CD2遅延回路、 CR 色補正データ生成回路、 PC カウンタ回路、 PD0、PD1 遅延回路(後段遅延回路)、 PO ポスト変換回路、 OB 出力ラスタバッファ、 CT0、CT1、CT2 色補正テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データを出力装置用の画像データに変換する画像処理装置であって、
前記入力画像データに対して、前記出力装置の色特性に基づく補正処理と、前記出力装置で用いられる色空間への変換処理とを、前記出力装置で用いられる色の所定色数の色毎に実行する色補正データ生成回路と、
前記入力画像データを複数回前記色補正データ生成回路に転送するために、前記入力画像データを保持する遅延回路と、
前記入力画像データに対する前記補正処理及び前記変換処理の処理後のデータを、前記所定色数の色毎に収めた色補正テーブル、を記憶するメモリと、を有し、
前記色補正データ生成回路は、前記補正処理及び前記変換処理を、前記メモリに記憶された対応する前記色補正テーブルを用いて実行し、前記出力装置で用いられる色数が前記所定色数よりも多い場合には、前記出力装置で用いられる全色についての処理を、前記遅延回路から転送される入力画像データを用いて、複数回の処理で実行する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、更に、
前記入力画像データの階調数を第一の階調数に変換するプレ変換回路を有し、
前記色補正データ生成回路及び前記遅延回路には、当該プレ変換回路による変換後のデータが入力され、
前記メモリに記憶される色補正テーブルは、前記第一の階調数より少ない第二の階調数のデータに対する前記処理後のデータを収める
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2において、更に、
前記色補正データ生成回路で処理されたデータを前記出力装置で用いられるデータの階調数に変換する処理を、前記出力装置で用いられる全色について同処理で実行するポスト変換回路と、
前記出力装置で用いられる色数が前記所定色数よりも多い場合に、前記色補正データ生成回路で処理された前記全色のデータを同タイミングで前記ポスト変換回路に転送するために、前記色補正データ生成回路で先に処理されたデータを保持する後段遅延回路と、を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1あるいは請求項2において、更に、
前記色補正データ生成回路で処理されたデータを、前記所定色数の色毎に、前記出力装置で用いられるデータの階調数に変換するポスト変換回路を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
入力画像データを出力装置用の画像データに変換する画像処理装置における画像処理方法であって、
前記画像処理装置が、
前記入力画像データに対して、前記出力装置の色特性に基づく補正処理と、前記出力装置で用いられる色空間への変換処理とを、前記出力装置で用いられる色の所定色数の色毎に実行する色補正データ生成回路と、
前記入力画像データを複数回前記色補正データ生成回路に転送するために、前記入力画像データを保持する遅延回路と、
前記入力画像データに対する前記補正処理及び前記変換処理の処理後のデータを、前記所定色数の色毎に収めた色補正テーブル、を記憶するメモリと、を有し、
前記色補正データ生成回路が、前記補正処理及び前記変換処理を、前記メモリに記憶された対応する前記色補正テーブルを用いて実行し、前記出力装置で用いられる色数が前記所定色数よりも多い場合には、前記出力装置で用いられる全色についての処理を、前記遅延回路から転送される入力画像データを用いて、複数回の処理で実行する
ことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−217214(P2011−217214A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84765(P2010−84765)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】