説明

画像処理装置

【課題】スペクトラム拡散クロックを用いて画像を描画する場合に、スペクトラム拡散クロックの生成に用いる変調信号の周期性が画像に与える影響を小さくする。
【解決手段】画像形成装置は水平同期信号として機能するBD信号SG2を生成するBD信号生成部と、スペクトラム拡散クロックCLK2を生成するクロック生成部301とを備える。クロック生成部301はPLL回路に変調信号生成部41を加えた構成を有する。クロック生成部301はスペクトラム拡散クロックCLK2の周波数を周期Tで変動させている。変調信号生成部41は変調信号SG1の周波数をランダムに選択し、BD信号SG2がクロック生成部301に入力される毎に、周波数をランダムに変えた変調信号SG1を生成する。これによりBD信号SG2がクロック生成部301に入力される毎に周期Tをランダムに変化させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロック生成装置としてスペクトラム拡散クロックジェネレータを用いる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器から放射される電磁波による電磁妨害(EMI:Electro-Magnetic Interference)の対策として、スペクトラム拡散クロックジェネレータ(SSCG:Spread Spectrum Clock Generator)が知られている。電子機器では各種タイミングを取るためにクロックが用いられるが、クロックはEMIの主な原因となっている。SSCGは周波数がわずかに変動するクロックを生成することにより、クロックの周波数スペクトラムを拡散させている。これにより、クロックの周波数スペクトラムのピーク値を下げて、電磁波ノイズを低減している。
【0003】
クロック生成装置としてSSCGを用いた画像形成装置が提案されている(特許文献1参照)。この画像形成装置ではBD(Beam Detect)信号を基準にして同じパターンでクロックの周波数を変動させており、感光体ドラムに静電潜像を描画するレーザ光の制御にそのクロックを用いることによって、レーザスポット径及びレーザスポット間隔を均一にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−292083号公報(図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スペクトラム拡散クロックは周波数が周期的に変動するクロックである。したがって、スペクトラム拡散クロックを画像データで変調した信号によって画像を描画する場合、周波数変動の周期性の影響は画素を描画する位置のズレとなって表れ、これにより干渉が生じて画像に規則的な濃淡が生じる。
【0006】
スペクトラム拡散クロックは例えば、周期的に電圧が変化する変調信号に応じて、周波数が変動するようになっている。
【0007】
図10は変調信号SG1の周期性の影響を受けて発生する規則的な濃淡と変調信号SG1との関係を示す図である。図10において、変調信号SG1の縦軸は電圧を示しており、スペクトラム拡散クロックの周波数と連動している。横軸は時間の経過を示している。水平画素ラインPLは画像を構成する画素のうち主走査方向D1に並ぶ画素のラインである。一本の走査ラインを描画することにより、一本の水平画素ラインPLが形成される。符号P1は規則的な濃淡の薄い部分であり、符号P2は規則的な濃淡の濃い部分を示している。水平画素ラインPLにおいて、薄い部分P1と濃い部分P2が交互に並ぶことにより規則的な濃淡が生じている。
【0008】
水平同期信号の周期が変調信号SG1の周期の整数倍であれば、規則的な濃淡は干渉縞状のノイズとなって画像に表れる。すなわち、水平同期信号の周期が変調信号SG1の周期の整数倍の場合、図10に示すように、規則的な濃淡の主走査方向D1の位置が同じとなり、その結果、副走査方向D2に延びる複数のライン状のノイズ(干渉縞状のノイズ)N1,N2が画像に表れる。ノイズN1は薄いラインであり、ノイズN2は濃いラインであり、ノイズN1とノイズN2が交互に表れている。一本の水平画素ラインPLだけを見れば規則的な濃淡は視覚で認識されにくく特に問題とならないが、副走査方向D2に延びる複数のライン状のノイズN1,N2であれば視覚で認識できるレベルとなり問題となる。
【0009】
具体的に説明すれば、変調信号SG1の周波数が一般的な25kHzとした場合、変調信号SG1の周期、すなわちスペクトラム拡散クロックの周波数の変動周期は40μsecとなる。水平同期信号の周期が例えば400μsecであれば、400μsec=40μsec×10なので、副走査方向D2に10本の薄いラインのノイズN1と10本の濃いラインのノイズN2が交互に表れる。
【0010】
本発明は、スペクトラム拡散クロックを用いて画像を描画する場合に、スペクトラム拡散クロックの生成に用いる変調信号の周期性が画像に与える影響を小さくすることができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の一の局面に係る画像処理装置は、スペクトラム拡散クロックを用いて画像を描画する画像処理装置であって、前記画像を描画する際の水平同期信号を生成する水平同期信号生成部と、前記スペクトラム拡散クロックを生成すると共に前記水平同期信号が入力されるクロック生成部と、を備え、前記クロック生成部は、前記スペクトラム拡散クロックの周波数を周期Tで変動させており、前記水平同期信号が前記クロック生成部に入力される毎に前記周期Tを変化させる。
【0012】
本発明によれば、水平同期信号がクロック生成部に入力される毎に、スペクトラム拡散クロックの周波数が変動する周期Tを変化させている。スペクトラム拡散クロックは変調信号の周期と同じ周期で周波数が変動するので、本発明では水平同期信号の周期毎に変調信号の周期を変化させていることになる。したがって、同じ周期の変調信号が水平同期信号の周期毎に繰り返されることがなくなる。言い換えれば、画像の空間周波数を水平同期信号の周期毎に異ならせることができる。このため、変調信号の周期性の影響を受けて発生する規則的な濃淡は、副走査方向に延びる複数のライン状のノイズとなって画像に表れずに、点状のノイズとなって表れる。点状のノイズはライン状のノイズに比べて視覚で認識されにくい(目立たない)。したがって本発明によれば、スペクトラム拡散クロックの生成に用いる変調信号の周期性が、画像に与える影響を小さくすることができる。
【0013】
なお、本発明において、スペクトラム拡散クロックを用いた画像の描画は、潜像の描画及び顕像の描画のいずれでもよい。また、スペクトラム拡散クロックは画像の描画に必要となる処理をするための様々なタイミング信号に用いられる他、スペクトラム拡散クロックを画像データにより変調した信号の生成にも用いることができる。
【0014】
上記構成において、前記クロック生成部は、前記スペクトラム拡散クロックを分周した分周信号を生成する分周器と、基準クロックと前記分周信号との位相差を示す位相差信号を生成する位相比較器と、前記位相差信号を直流信号に変換するローパスフィルタと、前記スペクトラム拡散クロックの生成に利用される変調信号を生成する変調信号生成部と、前記直流信号の電圧と前記変調信号の電圧とを加算した加算信号を生成する加算器と、入力した信号の電圧に応じて発振周波数を制御する発振器であり、前記加算信号の電圧に応じて周波数が変動する前記スペクトラム拡散クロックを出力する電圧制御発振器と、を含み、前記変調信号生成部は、前記水平同期信号が前記クロック生成部に入力される毎に、周波数を変えた前記変調信号を出力するようにできる。
【0015】
この構成はクロック生成部の一つの態様であり、変調信号生成部は水平同期信号がクロック生成部に入力される毎に、周波数を変えた変調信号(周期を変えた変調信号と言うこともできる)を出力するので、水平同期信号がクロック生成部に入力される毎に周期Tを変化させることができる。
【0016】
上記構成において、前記変調信号生成部は、前記変調信号の周波数をランダムに選択し、前記水平同期信号が前記クロック生成部に入力される毎に、周波数をランダムに変えた前記変調信号を出力するようにできる。
【0017】
この構成はクロック生成部の他の態様であり、変調信号生成部は水平同期信号がクロック生成部に入力される毎に、周波数をランダムに変えた変調信号(周期をランダムに変えた変調信号と言うこともできる)を出力するので、水平同期信号がクロック生成部に入力される毎に周期Tをランダムに変化させることができる。このため、変調信号の周期性の影響を受けて発生する規則的な濃淡は、ランダムに並ぶ点状のノイズとなって表れる。ランダムに並ぶ点状のノイズはさらに視覚で認識されにくい。したがってスペクトラム拡散クロックの生成に用いる変調信号の周期性が、画像に与える影響をさらに小さくすることができる。
【0018】
上記構成において、前記水平同期信号が前記クロック生成部に入力されると、前記変調信号生成部は前記変調信号の周波数をランダムに選択すると共に前回の前記水平同期信号の入力によって選択された周波数の前記変調信号を出力するようにできる。
【0019】
この構成によれば、水平同期信号がクロック生成部に入力されると、変調信号生成部は今回の水平同期信号の入力によって選択された周波数の変調信号を出力するのではなく、前回の水平同期信号の入力によって選択された周波数の変調信号を出力する。今回の水平同期信号の入力によって選択された周波数の変調信号を出力すれば、周波数の選択処理によって、その分だけ変調信号の出力が遅延するが、上記構成では前回の水平同期信号の入力によって選択された周波数の変調信号を出力している。このため、水平同期信号がクロック生成部に入力されると、周波数をランダムに変えた変調信号を遅延なく出力することができる。したがって、水平同期信号がクロック生成部に入力されるタイミングに合わせてスペクトラム拡散クロックの周期Tを変化させることができる。
【0020】
上記構成において、前記変調信号生成部によってランダムに選択される複数の周波数が予め定められており、前記複数の周波数の中に周波数の値が素数である周波数が含まれるようにできる。
【0021】
水平同期信号の周期毎に周波数をランダムに変えた変調信号を生成することにより、水平同期信号の周期毎に同じ周期の変調信号を繰り返さないようにすることができるが、変調信号どうしで周波数(周期ということもできる)に規則性があれば、それが視覚で認識できるノイズとなって画像に表れる可能性がある。周波数の値が素数の変調信号については、他の変調信号の周波数(周期)と規則性がないので、変調信号どうしで周期に規則性があることが原因となるノイズを防止することができる。
【0022】
上記構成において、前記スペクトラム拡散クロックを画像データにより変調した信号を利用して描画された画像を用紙に形成して出力する画像形成部を備え、前記画像形成部は、前記スペクトラム拡散クロックを画像データにより変調した信号である光ビームを照射する露光部と、前記光ビームにより静電潜像が描画される像担持体と、前記静電潜像をトナーにより現像する現像部と、を含むようにできる。
【0023】
この構成によれば、電子写真方式によって用紙に形成された画像について、スペクトラム拡散クロックの生成に用いる変調信号の周期性が、画像に与える影響を小さくすることができる。
【0024】
上記構成において、前記画像形成部は、一色の前記トナーによって表された単色の画像を用紙に形成して出力するようにできる。
【0025】
この構成は、一色のトナー画像によって表された単色の画像(例えば、モノクロの画像、イエロー単色の画像)の形成に本発明を適用している。複数の色のトナー画像を重ね合わせて形成したカラー画像では、トナー画像が重ね合わされることにより、上述した副走査方向に延びる複数のライン状のノイズが目立たなくなる場合があるが、単色の画像ではトナー画像が重ね合わされないので、そのような場合はない。したがって、一色のトナー画像によって表された単色の画像の形成に対して、本発明を適用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、スペクトラム拡散クロックを用いて画像を描画する場合に、スペクトラム拡散クロックの生成に用いる変調信号の周期性が画像に与える影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造の概略を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態においてポリゴンミラーの光偏向面に光ビームを照射した状態を示す模式図である。
【図4】本実施形態に係る光ビームの照射制御系を示すブロック図である。
【図5】本実施形態に係るクロック生成部の構成を示すブロック図である。
【図6】スペクトラム拡散クロックと変調信号の波形を示す図である。
【図7】変調信号のコードの一例をグラフで示した図である。
【図8】本実施形態に係るクロック生成部で生成されたスペクトラム拡散クロックをクロック信号として用いた画像の描画について説明するフローチャートである。
【図9】本実施形態における変調信号とBD信号(水平同期信号)の波形を示す図である。
【図10】水平同期信号の周期が変調信号の周期の整数倍の場合において、規則的な濃淡と変調信号との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、カラーコピー、カラープリンタ及びカラーファクシミリ機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1はタンデム方式であり、装置本体100と装置本体100の上に配置された画像読取部200を備える。
【0029】
画像読取部200はCCD(Charge Coupled Device)等によって画像(文字、図、写真等)を読み取り、画像データとして出力する。画像読取部200はカラー画像を読み取る機能を有する。これによりカラーコピー及びカラーファクシミリの送信が可能となる。
【0030】
装置本体100は用紙貯留部110、画像形成部130及び定着部160を備える。
【0031】
用紙貯留部110は装置本体100の最下部に配置されており、用紙Pの束を貯留することができる用紙トレイ111を備えている。用紙トレイ111は装置本体100に差し込んで装着される。用紙Pを補給するときは装置本体100から用紙トレイ111を引き出す。用紙トレイ111に貯留された用紙Pの束において、最上位の用紙Pがピックアップローラ113の駆動により、用紙搬送路115へ向けて繰り出される。用紙Pは用紙搬送路115を通って、画像形成部130へ搬送される。
【0032】
画像形成部130は搬送されてきた用紙Pにトナー画像を形成する。画像形成部130はトナー画像を転写ベルト131に転写する順番に従って配置された、マゼンタ用ユニット133M、シアン用ユニット133C、イエロー用ユニット133Y、ブラック用ユニット133Kを備える。これらのユニットは同様の構成を有しており、マゼンタ用ユニット133Mを例にして説明する。
【0033】
マゼンタ用ユニット133Mは感光体ドラム135及び露光装置137を備える。感光体ドラム135の周りには帯電器139、現像装置141及びクリーナ143が配置されている。感光体ドラム135は像担持体の一例である。像担持体としてはベルト状の担持体でもよい。
【0034】
帯電器139は感光体ドラム135の周面を一様に帯電させる。露光装置137は画像データ(画像読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)の中でマゼンタのデータに対応する光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム135の周面に照射する。これにより、感光体ドラム135の周面にはマゼンタのパターンの静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム135の周面に現像装置141からマゼンタトナーを供給することにより、周面にはマゼンタのパターンのトナー画像が形成される。
【0035】
転写ベルト131は感光体ドラム135と1次転写ローラ145により挟まれた状態で時計周りに動くことができる。マゼンタのパターンのトナー画像は感光体ドラム135から転写ベルト131に転写される。感光体ドラム135の周面に残っているマゼンタトナーはクリーナ143によって除去される。以上がマゼンタ用ユニット133Mの説明である。
【0036】
マゼンタ用ユニット133M、シアン用ユニット133C、イエロー用ユニット133Y、ブラック用ユニット133Kの上方には、対応する色のトナーを収容したコンテナ、すなわち、マゼンタトナー用コンテナ147M、シアントナー用コンテナ147C、イエロートナー用コンテナ147Y、ブラックトナー用コンテナ147Kが配置されている。各色の現像装置141には対応するコンテナからトナーが補給される。
【0037】
上述したように転写ベルト131にはマゼンタのパターンのトナー画像が転写され、このトナー画像に重ねてシアンのパターンのトナー画像が転写され、同様に、イエローのパターンのトナー画像、ブラックのパターンのトナー画像が重ねて転写される。これにより転写ベルト131にカラーのトナー画像が形成される。このように各色のパターンのトナー画像を転写ベルト131に重畳して転写することにより、転写ベルト131にカラーのトナー画像が形成される。カラーのトナー画像は2次転写ローラ149によって、先ほど説明した用紙貯留部110から搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0038】
カラーのトナー画像が転写された用紙Pは定着部160に送られる。定着部160は加熱ローラ161と定着ローラ163に定着ベルト165が掛けられた構造を有する。定着ベルト165は定着ローラ163と加圧ローラ167により挟まれている。これらのローラによって、カラーのトナー画像が転写された用紙Pが挟まれる。これにより、カラーのトナー画像と用紙Pに熱と圧力が加えられて、カラーのトナー画像を用紙Pに定着させる。用紙Pは排紙トレイ169に排紙される。
【0039】
図2は図1に示す画像形成装置1の電気的な構成を示すブロック図である。画像形成装置1はスペクトラム拡散クロックを用いて画像を描画する画像処理装置の一例である。画像形成装置1は装置本体100、画像読取部200、制御部300、操作表示部400及び通信部500がバスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100及び画像読取部200に関しては図1で説明しているので、説明を省略する。
【0040】
制御部300はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリ等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、画像形成装置1を構成する上記ハードウェアに対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリは画像データ(画像読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
【0041】
制御部300はスペクトラム拡散クロックを生成するクロック生成部301を備える。クロック生成部301については後で詳細に説明する。
【0042】
操作表示部400にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー、テンキー、ストップキー、リセットキー、コピー、プリンタ、スキャナ及びファクシミリを切り換えるための機能切換キー等が設けられている。また、操作表示部400にはタッチパネルが設けられている。タッチパネルの画面には各種の操作及び動作の内容等が表示されると共にソフトキーからなる操作キーが表示される。
【0043】
通信部500はファクシミリ通信部501及びネットワークI/F部503を備える。ファクシミリ通信部501は相手先ファクシミリとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリ通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリ通信部501は電話回線505に接続される。
【0044】
ネットワークI/F部503はLAN(Local Area Network)507に接続される。ネットワークI/F部503はLAN507に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
【0045】
次に、静電潜像の描画を実行する光ビーム照射制御系について図3及び図4を用いて説明する。図3は本実施形態においてポリゴンミラー11の光偏向面13に光ビームLBを照射した状態を示す模式図である。図4は本実施形態に係る光ビームの照射制御系15を示すブロック図である。照射制御系15はカラー画像を構成する各色に対応して設けられている。本実施形態ではマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックについて照射制御系15が設けられている。コリメータレンズ及びfθレンズ等の光学部品については図示を省略している。照射制御系15はポリゴンミラー11、クロック変調部17、光ビーム生成部19及びBD信号生成部21等を備える。
【0046】
クロック変調部17はスペクトラム拡散クロックCLK2を画像データにより変調した信号を生成する。制御部300を構成する要素の一つである画像処理専用のASICが、クロック変調部17の機能を有する。クロック変調部17はバッファ23と変調回路25を備える。
【0047】
静電潜像の描画を実行する場合、描画の対象となる画像のデータが制御部300のRAM(メインメモリ)からバッファ23に送られる。バッファ23は予め定められた本数の走査ラインSLの描画に用いられるデータを一時的に格納する。1本の走査ラインSLは用紙に形成された画像の1本の水平画素ラインPLに相当する。BD信号SG2は水平同期信号として機能しており、BD信号SG2がクロック変調部17に入力される毎に、それと同期してクロック変調部17はバッファ23に格納されたデータを変調回路25へ送る。
【0048】
変調回路25は例えばPWM(Pulse Width Modulation)回路であり、スペクトラム拡散クロックCLK2とバッファ23から送られてきたデータが入力し、スペクトラム拡散クロックCLK2を画像データにより変調した信号を生成する。この信号は光ビーム生成部19へ送られて光信号に変換される。
【0049】
光ビーム生成部19は光ビームLBを生成し、光ビームLBを発光する光源27及び光源27を駆動するドライバ等から構成される。光源27としては例えば半導体レーザが用いられる。ドライバはスペクトラム拡散クロックCLK2を画像データにより変調した信号に応じて光源の発光を制御する。これにより、スペクトラム拡散クロックCLK2を画像データにより変調した信号を光信号に変換した光ビームLBが照射される。
【0050】
ポリゴンミラー11は光ビーム生成部19で生成された光ビームLBを反射する。ポリゴンミラー11はモータ29によって回転方向R1に回転する。ポリゴンミラー11は正六角形の側面を有している。この側面は6個の光偏向面13より構成される。
【0051】
光源27から発光した光ビームLBは、回転するポリゴンミラー11に照射され、光偏向面13で偏向されて(ポリゴンミラー11で反射されて)、感光体ドラム135上に走査ラインSLを主走査方向D1に描画する。1つの光偏向面13で1本の走査ラインSLが描画される。回転方向R2に回転する感光体ドラム135に1本の走査ラインSLの描画を繰り返すことにより、副走査方向D2に沿って静電潜像が描画される。副走査方向D2は感光体ドラム135の回転方向R2に対応している。感光体ドラム135の周面を展開した面において、横方向が主走査方向D1であり、縦方向が副走査方向D2となる。
【0052】
BD信号生成部21(水平同期信号生成部の一例)は各色に対応して設けられており、静電潜像を感光体ドラム135に描画する際の水平同期信号となるBD(Beam Detect)信号SG2を生成する。BD信号SG2は光ビームLBで感光体ドラム135に静電潜像を描画する際に主走査方向D1の位置を揃えるための基準となる信号である。BD信号生成部21からBD信号SG2が出力されて予め定められた期間の経過後、画像データにより変調された光ビームLBによって感光体ドラム135に静電潜像の描画が開始される。
【0053】
BD信号生成部21の構成について説明する。BD信号生成部21はBDセンサ31及びBD信号変換部33を備える。光ビームLBは、感光体ドラム135の主走査方向D1の寸法よりも長い走査範囲内において、主走査方向D1に繰り返し走査される。BDセンサ31はその走査範囲のうち、光ビームLBが感光体ドラム135の走査を開始する前に光ビームLBを受光する位置に設置されている。
【0054】
BDセンサ31はフォトセンサである。BDセンサ31は、光ビーム生成部19で生成されて、回転するポリゴンミラー11の光偏向面13で反射された光ビームLBを受光すると、その受光信号をBD信号変換部33に出力する。BD信号変換部33は、その受光信号を矩形波のBD信号SG2に整形し、パルス状のBD信号SG2をクロック変調部17に出力する。以上説明したように画像形成装置1は、スペクトラム拡散クロックCLK2を画像データにより変調した信号を利用して画像を描画する画像処理装置として機能する。
【0055】
次に、スペクトラム拡散クロックを生成するクロック生成部301を説明する。図5はクロック生成部301の構成を示すブロック図である。クロック生成部301はPLL(Phase Locked Loop)回路に変調信号生成部41、加算器51、デジタルアナログ変換器53を付加した構成を有する。
【0056】
クロック生成部301はPLL(Phase Locked Loop)回路として、分周器43、位相比較器45、ローパスフィルタ47及び電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)49を備える。
【0057】
分周器43はクロック生成部301で生成されたスペクトラム拡散クロックCLK2を分周した分周信号を生成する。
【0058】
位相比較器45は基準クロックCLK1と分周器43で生成された分周信号とが入力し、基準クロックCLK1と分周信号の位相差を示すパルス信号である位相差信号を生成する。
【0059】
ローパスフィルタ47はループフィルタとも称されており、位相比較器45から出力された位相差信号を平滑して直流信号に変換する。
【0060】
加算器51はローパスフィルタ47から出力された直流信号の電圧と変調信号生成部41で生成された変調信号SG1の電圧とを加算した加算信号を生成する。
【0061】
電圧制御発振器49は入力した信号の電圧に応じて発振周波数を制御する発振器であり、加算器51から出力された加算信号の電圧に応じて周波数が変動するスペクトラム拡散クロックCLK2を出力する。スペクトラム拡散クロックCLK2は図4に示すクロック変調部17へ送られる。
【0062】
変調信号生成部41はスペクトラム拡散クロックCLK2の生成に利用される変調信号SG1を生成する。図6はスペクトラム拡散クロックCLK2と変調信号SG1の波形を示す図である。クロック生成部301はスペクトラム拡散クロックCLK2の周波数を周期Tで変動させている。この周期Tは変調信号SG1の周期と同じである。
【0063】
変調信号生成部41は乱数生成部57、変調信号コード記憶部59、周波数選択部61及び変調信号コード出力部63を備える。変調信号生成部41は変調信号SG1の周波数をランダムに選択し、BD信号SG2(水平同期信号)がクロック生成部301の変調信号生成部41に入力される毎に、周波数をランダムに変えた変調信号SG1を生成する。これにより、クロック生成部301はBD信号SG2がクロック生成部301の変調信号生成部41に入力される毎に周期Tをランダムに変化させている。
【0064】
乱数生成部57にはBD信号SG2が入力し、乱数生成部57はBD信号SG2が入力される毎に乱数を生成し、生成した乱数を周波数選択部61へ送る。
【0065】
変調信号コード記憶部59は周波数が異なる複数の変調信号のコードを予め記憶している。コードはアナログの変調信号SG1の電圧を示す半周期の波形に対応したデジタル値である。図7は変調信号SG1のコードの一例をグラフで示した図である。縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示している。
【0066】
コードは画像形成装置1の工場出荷時に変調信号コード記憶部59に記憶させてもよいし、図2に示す操作表示部400を用いて後から記憶及び記憶の変更ができるようにしてもよい。
【0067】
変調信号SG1のコードの一つとして例えば25kHzの変調信号SG1のコードを記憶させる場合、残りのコードとして25kHz近辺であって周波数の値が素数の変調信号SG1のコードを記憶させる(例えば、17kHz、19kHz、23kHz、29kHz、31kHz、37kHzの変調信号SG1のコード)。これにより、BD信号SG2(水平同期信号)の周期毎に周波数が変わる変調信号どうしにおいて、周期の規則性をなくしている。
【0068】
変調信号コード記憶部59は周波数が異なる複数の変調信号SG1のコードのそれぞれを、乱数生成部57で生成される乱数と対応させて記憶している。
【0069】
周波数選択部61は、変調信号コード記憶部59に記憶されている周波数が異なる複数の変調信号SG1のコードの中から、乱数生成部57から送られた乱数に対応する変調信号SG1のコードを選択する。
【0070】
変調信号コード出力部63にはBD信号SG2が入力され、BD信号SG2が入力される毎に変調信号コード出力部63は周波数選択部61で選択された変調信号SG1のコードを繰り返し出力する。これにより変調信号SG1がデジタル信号として出力される。出力された変調信号SG1はデジタルアナログ変換器53において、アナログ信号(アナログの電圧信号)に変換されて加算器51へ送られる。
【0071】
次に本実施形態に係るスペクトラム拡散クロックCLK2をクロック信号として用いた画像の描画についてコピーを例に説明する。図8はこれを説明するフローチャートである。図9は本実施形態における変調信号SG1とBD信号(水平同期信号)SG2の波形を示す図である。本実施形態の一つの特徴はスペクトラム拡散クロックCLK2を生成するための変調信号SG1について、BD信号SG2の周期毎に変調信号SG1の周波数を変えていることである。
【0072】
ユーザが原稿を図2に示す画像読取部200にセットして、操作表示部400に設けられたスタートキーを操作する(ステップS1)。制御部300は画像形成装置1が既に立ち上がっているか判断する(ステップS3)。画像形成装置1が立ち上がっていれば、スペクトラム拡散クロックCLK2は生成されている。画像形成装置1がスリープモード等により、まだ立ち上がっていないと制御部300が判断すれば(ステップS3でNo)、制御部300は画像形成装置1の立ち上げ動作をする(ステップS5)。この動作にはスペクトル拡散クロックCLK2の生成開始も含まれる。
【0073】
スペクトル拡散クロックCLK2は次のようにして生成される。図5に示すように、位相比較器45には基準クロックCLK1と分周器43から出力された分周信号が入力しており、位相比較器45は基準クロックCLK1と分周信号の位相差を示す位相差信号をローパスフィルタ47へ出力する。ローパスフィルタ47は位相差信号を直流信号に変換して加算器51へ出力する。
【0074】
一方、変調信号コード出力部63は変調信号コード記憶部59から周波数25kHzの変調信号SG1のコードを読み取り、そのコードを繰り返し出力する。これにより、変調信号生成部41からデジタルの25kHzの変調信号SG1が出力される。
【0075】
デジタルの変調信号SG1(電圧)はデジタルアナログ変換器53でアナログの変調信号SG1(電圧)に変換されて、加算器51へ送られる。加算器51において、そのアナログの25kHzの変調信号SG1(電圧)とループフィルタ47から出力された直流電圧とが加算されて加算信号が生成される。加算信号は電圧制御発振器49に送られ、これにより25kHzの変調信号SG1を基にしたスペクトラム拡散クロックCLK2が生成される。
【0076】
画像形成装置1が立ち上がっていると制御部300が判断すれば(ステップS3でYes)、制御部300はコピー動作を開始する。まず、画像読取部200はスペクトラム拡散クロックCLK2をクロック信号として原稿を読み取る(ステップS7)。画像読取部200で原稿が読み取られることにより生成された画像データは、図4に示すクロック変調部17へ送られる。また、制御部300は図4に示すポリゴンミラー11を回転させ、そしてBD信号SG2を生成するために、光源27から光ビームLBを照射させる。光ビームLBはポリゴンミラー11で反射されてBDセンサ31で受光され、BD信号生成部21でBD信号SG2が生成され(ステップS9)、そのBD信号はクロック変調部17、乱数生成部57及び変調信号コード出力部63に送られる。ここでは1番目の走査ラインSLを描画するためのBD信号(以下、1番目のBD信号)SG2が生成され、1番目のBD信号SG2はクロック変調部17、乱数生成部57及び変調信号コード出力部63に送られる。
【0077】
BD信号SG2が変調信号コード出力部63に入力されることにより、変調信号コード出力部63は周波数選択部61で選択された変調信号SG1のコードを連続して出力する(ステップS11)。1番目のBD信号SG2が生成された時点では乱数生成部57で乱数が生成されていないので、周波数選択部61は変調信号コード記憶部59に記憶されている変調信号SG1のコードを選択することができない。このため、1番目のBD信号SG2に応じて生成される変調信号SG1のコードは予め定められている(例えば25kHzの変調信号SG1のコード)。よって、1番目のBD信号SG2が変調信号コード出力部63に入力されることにより、変調信号コード出力部63は25kHzの変調信号SG2のコードを連続して出力する。
【0078】
一方、BD信号SG2が乱数生成部57に入力されることにより、乱数生成部57では乱数が生成されて、生成された乱数は周波数選択部61へ送られる。周波数選択部61はその乱数に対応した変調信号のコード(例えば19kHzの変調信号SG1のコード)を選択する(ステップS13)。
【0079】
ステップS11で連続して出力された変調信号SG1のコードは、デジタルアナログ変換器53においてデジタル信号からアナログ信号(アナログの電圧信号)に変換されて、加算器51へ送られる。加算器51においてそのアナログの電圧信号とローパスフィルタ47から出力された直流電流の電圧とが加算されて、加算信号が生成される。加算信号は電圧制御発振器49に送られ、これによりステップS11の変調信号SG1を基にしたスペクトラム拡散クロックCLK2が生成される(ステップS15)。ここでは25kHzの変調信号SG1を基にしたスペクトラム拡散クロックCLK2が生成される。
【0080】
ステップS9で生成されたBD信号SG2がクロック変調部17に入力されることにより、クロック変調部17は画像データのうちバッファ23に格納されている今回の走査ラインSLの描画に用いるデータを変調回路25へ送る。一方、ステップS15でスペクトラム拡散クロックCLK2はクロック変調部17の変調回路25へ送られており、今回の走査ラインSLの描画に用いるデータにより変調されて、その変調された信号で生成された光ビームLBにより走査ラインSLが感光体ドラム135に描画される(ステップS17)。
【0081】
ここでは、1番目のBD信号SG2がクロック変調部17に入力されることにより、クロック変調部17はバッファ23に格納されている1番目の走査ラインSLの描画に用いるデータを変調回路25へ送る。ステップS15で生成されたスペクトラム拡散クロックCLK2は1番目の走査ラインSLの描画に用いるデータにより変調されて、その変調された信号で生成された光ビームLBにより1番目の走査ラインSLが感光体ドラム135に描画される。このように、図1に示す露光装置(露光部)137はスペクトラム拡散クロックCLK2を画像データにより変調した信号である光ビームLBを、BD信号(水平同期信号)SG2のタイミングに合わせて照射している。
【0082】
制御部300が最後の走査ラインSLが描画されたと判断すれば(ステップS19でYes)、静電潜像の描画が終了する。これに対して、制御部300が最後の走査ラインSLの描画がされていないと判断すれば(ステップS19でNo)、ステップS9へ戻る。ここでは、BD信号生成部21において2番目の走査ラインSLを描画するためのBD信号(以下、2番目のBD信号)SG2が生成される(ステップS9)、2番目のBD信号SG2は1番目のBD信号SG2と同様にクロック変調部17、乱数生成部57及び変調信号コード出力部63に送られる。
【0083】
2番目のBD信号SG2が変調信号コード出力部63に入力されることにより、変調信号コード出力部63は前回のステップS13で選択された変調信号SG1のコード(19kHzの変調信号SG1のコード)を連続して出力する(ステップS11)。
【0084】
また、2番目のBD信号SG2が乱数生成部57に入力されることにより、乱数生成部57では乱数が生成されて、生成された乱数は周波数選択部61へ送られる。周波数選択部61はその乱数に対応した変調信号SG1のコード(例えば37kHzの変調信号SG1のコード)を選択する(ステップS13)。
【0085】
後はステップS15,17と同様の処理がされて、2番目の走査ラインSLが感光体ドラム135に描画される(ステップS17)。最後の走査ラインSLの描画がされるまで、ステップS9〜ステップS17が繰り返される。例えば、3番目の走査ラインSLを描画するために、変調信号コード出力部63は37kHzの変調信号SG1を出力し、かつ周波数選択部61は29kHzの周波数を選択している。
【0086】
最後の走査ラインSLが描画されることにより、露光装置137での露光処理が終了すると、制御部300が現像、転写、定着の各工程の制御をし(ステップS21)、これにより画像が印刷された用紙が排紙トレイ169に排紙される。
【0087】
本実施形態の主な効果を説明する。本実施形態においても、変調信号SG1の周期性の影響により一本の水平画素ラインPL内では規則的な濃淡(図10)が生じている。本実施形態によれば、BD信号SG2がクロック生成部301の変調信号生成部41に入力される毎に、スペクトラム拡散クロックCLK2の周波数が変動する周期Tをランダムに変化させている。
【0088】
スペクトラム拡散クロックCLK2は変調信号SG1の周期と同じ周期で周波数が変動するので、本実施形態ではBD信号SG2の周期毎に変調信号SG1の周期をランダムに変化させていることになる。したがって、同じ周期の変調信号SG1がBD信号SG2の周期毎に繰り返されることがなくなる。言い換えれば、画像の空間周波数をBD信号SG2の周期毎に異ならせることができる。このため、変調信号SG1の周期性の影響を受けて発生する規則的な濃淡は、図10に示すような副走査方向D2に延びる複数のライン状のノイズN1,N2となって画像に表れずに、ランダムに並ぶ点状のノイズとなって表れる。ランダムに並ぶ点状のノイズはライン状のノイズに比べて視覚で認識されにくい(目立たない)。したがって本実施形態によれば、スペクトラム拡散クロックCLK2の生成に用いる変調信号SG1の周期性が、画像に与える影響を小さくすることができる。
【0089】
なお、BD信号SG2の周期毎に変調信号SG1の周期をランダムに変化させるのではなく、変調信号SG1の周期の単に変化させるだけでもよい。但し、変調信号SG1の周期をランダムに変化させると、規則的な濃淡はランダムに並ぶ点状のノイズとなって画像に表れる。ランダムに並ぶ点状のノイズはさらに視覚で認識されにくいので、スペクトラム拡散クロックの生成に用いる変調信号SG1の周期性が、画像に与える影響をさらに小さくすることができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、BD信号SG2(水平同期信号)がクロック生成部301の変調信号生成部41に入力されると、変調信号生成部41は変調信号SG1の周波数をランダムに選択すると共に前回のBD信号SG2(水平同期信号)の入力によって選択された周波数の変調信号SG1を出力している。具体的に説明すると、図9に示すように2番目のBD信号SG2が乱数生成部57に入力されると、周波数選択部61は37kHzの周波数を選択する。また、2番目のBD信号SG2が変調信号コード出力部63に入力されると、変調信号コード出力部63は前回のBD信号SG2(すなわち、1番目のBD信号SG2)の入力によって選択された19kHzの周波数の変調信号SG1を出力する。
【0091】
したがって、BD信号SG2がクロック生成部301の変調信号生成部41に入力されると、変調信号生成部41は今回のBD信号SG2の入力によって選択された周波数の変調信号SG1を出力するのではなく、前回のBD信号SG2の入力によって選択された周波数の変調信号SG1を出力する。今回のBD信号SG2の入力によって選択された周波数の変調信号SG1を出力すれば、周波数の選択処理によって、その分だけ変調信号SG1の出力が遅延するが、本実施形態では前回のBD信号SG2の入力によって選択された周波数の変調信号SG1を出力している。このため、BD信号SG2がクロック生成部301の変調信号生成部41に入力されると、周波数をランダムに変えた変調信号SG1を遅延なく出力することができる。したがって、BD信号SG2がクロック生成部301の変調信号生成部41に入力されるタイミングに合わせてスペクトラム拡散クロックCLK2の周期Tを変化させることができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、変調信号生成部41によってランダムに選択される複数の周波数が予め定められており、複数の周波数の中に周波数の値が素数である周波数が含まれている。詳しくは、図5の変調信号コード記憶部59は周波数の値が素数の変調信号SG1のコードを予め記憶している(例えば、17kHz、19kHz、23kHz、29kHz、31kHz、37kHzの変調信号SG1のコード)。
【0093】
BD信号SG2の周期毎に周波数をランダムに変えた変調信号SG1を生成することにより、BD信号SG2の周期毎に同じ周期の変調信号SG1を繰り返さないようにすることができるが、変調信号SG1どうしで周期に規則性があれば(例えば周期が20μsec、25μsec、30μsecであり、いずれも5で割り切れる)、それが視覚で認識できるノイズとなって画像に表れる可能性がある。周波数の値が素数の変調信号SG1については、他の変調信号SG1の周波数(周期)と規則性がないので、変調信号SG1どうしで周期に規則性があることが原因となるノイズを防止することができる。
【0094】
画像形成部130によって一色のトナー画像によって表された単色の画像(例えば、モノクロの画像、イエロー単色の画像)を形成して出力する場合に、本実施形態は特に有効となる。複数の色のトナー画像を重ね合わせて形成したカラー画像では、トナー画像が重ね合わされることにより、図10に示すライン状のノイズN1,N2が目立たなくなる場合があるが、単色の画像ではトナー画像が重ね合わされないので、そのような場合はない。したがって、一色のトナー画像によって表された単色の画像の形成に対して、本実施形態を適用するのが好ましい。
【符号の説明】
【0095】
1 画像形成装置(画像処理装置の一例)
21 BD信号生成部(水平同期信号生成部の一例)
135 感光体ドラム(像担持体の一例)
137 露光装置(露光部の一例)
141 現像装置(現像部の一例)
SG1 変調信号
SG2 BD信号(水平同期信号の一例)
PL 水平画素ライン
CLK2 スペクトラム拡散クロック
T 変調信号の周期、スペクトラム拡散クロックの周波数が変動する周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトラム拡散クロックを用いて画像を描画する画像処理装置であって、
前記画像を描画する際の水平同期信号を生成する水平同期信号生成部と、
前記スペクトラム拡散クロックを生成すると共に前記水平同期信号が入力されるクロック生成部と、を備え、
前記クロック生成部は、前記スペクトラム拡散クロックの周波数を周期Tで変動させており、前記水平同期信号が前記クロック生成部に入力される毎に前記周期Tを変化させる画像処理装置。
【請求項2】
前記クロック生成部は、
前記スペクトラム拡散クロックを分周した分周信号を生成する分周器と、
基準クロックと前記分周信号との位相差を示す位相差信号を生成する位相比較器と、
前記位相差信号を直流信号に変換するローパスフィルタと、
前記スペクトラム拡散クロックの生成に利用される変調信号を生成する変調信号生成部と、
前記直流信号の電圧と前記変調信号の電圧とを加算した加算信号を生成する加算器と、
入力した信号の電圧に応じて発振周波数を制御する発振器であり、前記加算信号の電圧に応じて周波数が変動する前記スペクトラム拡散クロックを出力する電圧制御発振器と、を含み、
前記変調信号生成部は、前記水平同期信号が前記クロック生成部に入力される毎に、周波数を変えた前記変調信号を出力する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変調信号生成部は、前記変調信号の周波数をランダムに選択し、前記水平同期信号が前記クロック生成部に入力される毎に、周波数をランダムに変えた前記変調信号を出力する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記水平同期信号が前記クロック生成部に入力されると、前記変調信号生成部は前記変調信号の周波数をランダムに選択すると共に前回の前記水平同期信号の入力によって選択された周波数の前記変調信号を出力する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記変調信号生成部によってランダムに選択される複数の周波数が予め定められており、前記複数の周波数の中に周波数の値が素数である周波数が含まれる請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記スペクトラム拡散クロックを画像データにより変調した信号を利用して描画された画像を用紙に形成して出力する画像形成部を備え、
前記画像形成部は、
前記スペクトラム拡散クロックを画像データにより変調した信号である光ビームを照射する露光部と、
前記光ビームにより静電潜像が描画される像担持体と、
前記静電潜像をトナーにより現像する現像部と、を含む請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像形成部は、一色の前記トナーによって表された単色の画像を用紙に形成して出力する請求項6に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−249260(P2012−249260A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121890(P2011−121890)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】