説明

画像処理装置

【課題】画像処理装置に対する設定/指示に係る作業の負荷を軽減し、当該作業を効率的に行うことができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】ユーザが予め、画像処理装置に対する所望の設定/指示を書き込み、その設定/指示を書き込んだエリアを画像処理装置が認識可能なマーカにより指定したシート状媒体であるコマンドシートを光学的に読み取り、エリアに書き込まれた設定/指示をテキストデータにするOCR手段と、テキストデータを解析し、その解析結果を、画像処理装置の設定に関連づける、又は、画像処理装置の動作に関連づけるコマンドシートデータ解析手段と、解析結果が設定データである場合は、その設定データを画像処理装置に設定し、解析結果が指示データである場合は、その指示データに従って画像処理装置の動作を実行する指定データ設定/指示実行手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザによって所望の設定/指示が行われる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の複写装置においては、特許文献1に示されるように、原稿の文字認識すべき領域を所定色のマーカでマーキングしておき、マーキング色に応じて、文字認識/表解析/イメージ切り出しの各処理を行っている。従来の孔版印刷装置においても、特許文献2に示されるように、シート状媒体としてのコマンドシート(エリア指定シート)に囲み線もしくは対角線を記入し、モノクロスキャナで原稿とともに読み込ませることにより、エリア指定内部とエリア指定外部に分けて製版させ(このような機能は、従来からメイキャップ機能として知られている)、これを色分版として用い、カスケード接続された二台の孔版印刷装置により多色印刷をなすなどに利用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び2のいずれにおいても、マーキングを行って所望の処理を行うための対象は原稿である。すなわち、特許文献1では、マーキングにより、当該原稿を適当な文書構成要素に切り分けて、切り分けた文書構成要素のうち文字領域に対してのみOCR(Optical Character Reader)処理を行うことを目的としている。また、特許文献2では、コマンドシートによるマーキングにより、当該原稿を適当な文書構成要素に切り分けて、色分版に用いることを目的としている。
【0004】
ところで、オフィスや事業所などに、複写機(PPC)、複合機能プリンタ(MFP)、孔版印刷装置などの画像処理装置を導入・設置する際には、ネットワークアドレスやネットマスク等の通信関連の設定や電動排紙台やソーターなどのオプション設定など、今後の運用/稼動に必要な初期設定や設置設定、いわゆる導入設定(画像処理装置に対する設定/指示の一例)を行わなければならない。
【0005】
この導入設定は、導入台数が数台程度ならば、販売員やサービスエンジニアなどが一台一台、画像処理装置の操作パネルから一つ一つ手作業で設定していっても、それほどの作業量や作業負荷とはならない。しかしながら、導入台数が時として一度に数十台〜数百台に及ぶ、いわゆる一括導入/一括納入と呼ばれるものの場合、これらの導入設定を従来のやり方で行う場合、作業日数が数日に及んだり、臨時の導入設定要員を多数確保して作業に当たらせたり、場合によっては深夜/徹夜作業になったりすることがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、これまで専ら原稿の加工に用いられてきたメイキャップ機能を、画像処理装置に対する設定/指示に利用することにより、当該設定/指示に係る作業の負荷を軽減し、当該作業を効率的に行うことができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、ユーザが予め、画像処理装置に対する所望の設定/指示を書き込み、その設定/指示を書き込んだエリアを画像処理装置が認識可能なマーカにより指定したシート状媒体であるコマンドシートを光学的に読み取り、エリアに書き込まれた設定/指示をテキストデータにするOCR手段と、テキストデータを解析し、その解析結果を、画像処理装置の設定に関連づける、又は、画像処理装置の動作に関連づけるコマンドシートデータ解析手段と、解析結果が設定データである場合は、その設定データを画像処理装置に設定し、解析結果が指示データである場合は、その指示データに従って画像処理装置の動作を実行する指定データ設定/指示実行手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の画像処理装置において、ユーザに対して種々の表示を行う表示手段を有し、表示手段は、OCR手段によるコマンドシートの読み取りの前に、そのコマンドシートによる設定/指示を開始する旨を示す表示、コマンドシートデータ解析手段による解析結果を示す表示、これから実行される設定データの画像処理装置への設定に関する表示、設定データを画像処理装置に設定した結果を示す表示、これから実行される指示データに従った画像処理装置の動作に関する表示、指示データに従って画像処理装置の動作を実行した結果を示す表示、のうち少なくとも1つの表示を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像処理装置において、OCR手段によるコマンドシートの読み取りの前、及び、コマンドシートデータ解析手段による解析の後の少なくとも一方において、コマンドシートによる設定/指示を実行するか否かについてユーザが選択する操作を受け付けるコマンドシート設定/指示指定手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の画像処理装置において、コマンドシートは、複数の色のマーカによりエリアが複数指定されたカラーコマンドシートであり、OCR手段は、カラーコマンドシートを読み取り、複数のエリアに書き込まれた設定/指示をそれぞれテキストデータにし、コマンドシートデータ解析手段は、複数のテキストデータを解析し、その解析の結果、同一の色のマーカで指定されたエリアの設定/指示を、同一のカテゴリとしてグルーピングし、グルーピングした設定/指示を、画像処理装置の設定に関連づける、又は、画像処理装置の動作に関連づけることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像処理装置において、コマンドシートデータ解析手段は、テキストデータの解析の結果、同一項目の設定/指示に対し、複数のエリアで異なる設定/指示が指定されていた場合、複数のエリアのうち下方にあるエリアで指定されている設定/指示の指定を有効なものとして扱うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の画像処理装置において、コマンドシートデータ解析手段は、テキストデータを解析する際に、予め用意されている同義語辞書を参照して設定/指示を確定させ、その確定結果を、画像処理装置の設定に関連づける、又は、画像処理装置の動作に関連づけることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の画像処理装置において、コマンドシートデータ解析手段は、テキストデータの解析の結果、設定/指示が簡略化された様式の記述であった場合、OCR手段による設定/指示項目の情報から判断されるカテゴリ判別と、カラーマーカの情報から判断されるカテゴリ判別と、の双方の判別情報を判断材料として、画像処理装置の設定/動作に関連づけることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の画像処理装置において、表示手段は、画像の表示に電力を必要としない電子ペーパーであり、その電子ペーパーに表示された画像の編集や追加が可能であり、コマンドシートによる設定/指示の指定を代替できることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の画像処理装置において、指定データ設定/指示実行手段は、指示データにおいて通紙調整の指示がなされた場合、画像処理装置の給紙台にセットされた通紙調整用印刷用紙を、指示データに付随して記述された通紙条件によって通紙し、その通紙の結果、通紙が正常に行われた場合は、その旨の表示を行うように制御する一方で、通紙が正常に行われなかった場合は、画像処理装置の用紙搬送に関わる設定パラメータを変化させて幾度かの通紙を試み、その通紙の試みの結果、通紙が成功した場合は、その旨の表示を行うように制御するとともに、その通紙が成功したときの設定パラメータを自己修正して書き換える一方で、最終的に、調整可能な範囲においても正常な通紙が行えなかった場合は、その旨の表示を行うように制御することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の画像処理装置において、指定データ設定/指示実行手段は、指示データにおいて画像処理装置の診断の指示がなされた場合、指示データに付随して記述された診断項目を自己診断し、その診断結果をユーザに通知するように制御することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の画像処理装置において、コマンドシートデータ解析手段によって参照される同義語辞書は、一般的なテキストエディタで閲覧/編集可能なテキストファイルであり、かつ、XMLで記述されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、画像処理装置に対する設定/指示に係る作業の負荷を軽減し、当該作業を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る孔版印刷システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る孔版印刷システムが適用された孔版印刷装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る孔版印刷装置制御部のハードウェア(電装基板)構成の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る孔版印刷装置の動作時にタッチパネルに表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る孔版印刷装置の動作時にタッチパネルに表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る孔版印刷装置の動作時にタッチパネルに表示されるメッセージ画面の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るコマンドシートの例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る孔版印刷システムの動作例を示す流れ図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る孔版印刷装置の動作時にタッチパネルに表示されるコマンドシート解析結果表示画面の一例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る孔版印刷システムの構成例を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る同義語辞書の内容例を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るコマンドシートの例を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る孔版印刷装置の動作時にタッチパネルに表示されるコマンドシート解析結果表示画面の一例を示す図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係るコマンドシートの例を示す図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る設定/指示対応表の例を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施形態に係る孔版印刷装置の動作時に孔版印刷装置に外装された電子ペーパーに表示されるコマンドシート解析結果表示画面の一例を示す図である。
【図17】本発明の第5の実施形態に係るコマンドシート(電子ペーパー代替)の例を示す図である。
【図18】本発明の第6の実施形態に係るコマンドシートの例を示す図である。
【図19】本発明の第6の実施形態に係る孔版印刷システムの動作例を示す流れ図である。
【図20】本発明の第7の実施形態に係るコマンドシートの例を示す図である。
【図21】本発明の第7の実施の形態に係る孔版印刷システムの動作例を示す流れ図である。
【図22】本発明の第7の実施形態に係る孔版印刷装置の動作時にタッチパネルに表示される機器診断結果画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。以下の各実施形態において、第1の実施形態と同一の機能を有する構成要素には、第1の実施形態と同一の符号を付し、第2の実施形態以降での重複説明は極力省略する。
【0021】
〔第1の実施形態〕
本実施形態の孔版印刷システム1(画像処理システムの一例)は、図1に示すように、エリア指定手段2と、孔版印刷装置100(画像処理装置の一例)とを備える。なお、本実施形態では、孔版印刷装置を例として説明するが、その他の画像処理装置を適用してもよい。その例としては、電子写真方式やインクジェット方式など作像エンジンを問わず、複写機(PPC)、複合機能プリンタ(MFP)などの他の画像形成装置が挙げられる。
【0022】
孔版印刷装置100は、熱可塑性フィルムからなるマスタに熱穿孔プロセスを用いて潜像を形成し、潜像が形成されたマスタを、インキが充填された印刷ドラムに装填し、マスタが装填された印刷ドラムを回転させ、給紙された用紙と圧接させることにより、用紙に可視画像を形成する。
【0023】
エリア指定手段2は、例えばコマンドシート15(エリア指定シート)と呼ばれる毎葉紙等のシート状媒体によって実現される。コマンドシート15は、ユーザが、孔版印刷装置100が認識可能なマーカにより、少なくとも1個以上の囲み線や対角線等を書き込むことにより、特定のエリア(領域)を指定できる機能を有する。マーカで指定されるエリアには、ユーザにより、孔版印刷装置100に対する設定/指示(以下、単に設定/指示ともいう)が書き込まれる。設定/指示の例としては、孔版印刷装置100の設置設定、初期設定、機器設定や機能設定等の各種設定、または、孔版印刷装置100の再起動(リブート)、自己診断等の指示の実行、等に関する内容である。
【0024】
OCR手段2は、例えばイメージスキャナ110により実現され、コマンドシート15を光学的に読み取り、読み取った画像データのうち、マーカで指定されたエリアをテキストデータ化する。
【0025】
コマンドシートデータ解析手段4は、例えば制御手段20により実現され、上記テキストデータを解析し、孔版印刷装置100の設定項目に関連づける、又は、孔版印刷装置100の動作項目に関連づける。
【0026】
指定データ設定/指示実行手段5は、例えば制御手段20により実現され、上記解析されたデータが設定データ(孔版印刷装置100に対する所定の設定を示すデータ)の場合、孔版印刷装置100に設定データとして設定し、上記解析されたデータが指示データ(孔版印刷装置100に対する所定の動作の指示を示すデータ)の場合、指示され動作を実行する。
【0027】
コマンドシート設定/指示指定手段6は、例えばタッチパネル115や物理的なボタン・キー等により実現され、コマンドシート15を利用した設定/指示を実行するか否かについてユーザが選択する操作を受け付ける。この選択操作を受け付けるタイミングとしては、例えば、OCR手段3によってコマンドシート15が読み取られる前のタイミング、又は、コマンドシートデータ解析手段4による設定/指示の解析の後のタイミング、のいずれか、あるいは、それら両方のタイミングが挙げられる。
【0028】
表示手段7は、例えばタッチパネル115や電子ペーパー400等で実現され、ユーザに対し、各種表示を行う。この表示例としては、以下のものが挙げられる。例えば、OCR手段2によるコマンドシート15の読み取りに先立ち、コマンドシート15による設定/指示の実行を開始する旨の表示がある。また、例えば、コマンドシートデータ解析手段4による解析結果を示す表示として、コマンドシートデータ解析手段4により解析された解析データ(設定データ)と、当該解析データが設定される孔版印刷装置100の設定項目とを対比させた表示がある。また、例えば、設定データ設定/指示実行手段5によってこれから実行される設定データの孔版印刷装置100への設定に関する表示として、解析された設定(設定の具体的な内容を示してもよい)をこれから実行してもよいかをユーザに問い合わせる表示がある。また、例えば、設定データ設定/指示実行手段5が設定データを孔版印刷装置100に設定した結果を示す表示として、解析された設定(設定の具体的な内容を示してもよい)の孔版印刷装置100への設定が完了した旨を示す表示がある。また、例えば、設定データ設定/指示実行手段5によってこれから実行される指示データに従った孔版印刷装置100の動作に関する表示として、解析された指示(指示された動作の具体的な内容を示してもよい)をこれから実行してもよいかをユーザに問い合わせる表示がある。また、例えば、設定データ設定/指示実行手段5が指示データに従って孔版印刷装置100の動作を実行した結果を示す表示として、解析された指示(指示された動作の具体的な内容を示してもよい)に従って孔版印刷装置100の動作が完了した旨を示す表示がある。
【0029】
以上の各手段を用いた孔版印刷装置100の動作の概要をまとめると、以下のようになる。
【0030】
ユーザ(孔版印刷装置100の操作を行う者)は、予め、シート状媒体に、孔版印刷装置100に設定したい指示(設定データ)や孔版印刷装置100に動作させたい指示(指示データ)を書き込み、書き込んだエリアをマーカにより囲み線などで指定することで、このシート状媒体をコマンドシート15として用意しておく。
【0031】
コマンドシート設定/指示指定手段6において、ユーザにより予め、コマンドシート15を利用した設定/指示の実行が有効の旨の設定がなされている場合、制御手段8は、孔版印刷装置に通常の原稿読み取りではなく、コマンドシート15の読み取りによる設定/指示の動作を行う旨の表示を、表示手段7に行わせる。この表示手段7の表示を見て、ユーザは、コマンドシート15による設定/指示の実行が開始されることを認識できる。なお、通常の原稿読み取りが設定されている場合、ユーザは、コマンドシート設定/指示指定手段6において所定の操作を行うことで、コマンドシート15による設定/指示の実行に切り替える。そして、ユーザは、用意したコマンドシート15を孔版印刷装置100にセットして、読み取りを指示する。
【0032】
OCR手段2は、孔版印刷装置100の原稿台にセットされたコマンドシート15を光学的に読み込み、読み取った画像データのうち、マーカで指定されたエリアをテキストデータ化する。
【0033】
コマンドシートデータ解析手段4は、上記テキストデータを解析し、孔版印刷装置100の設定(設定項目)又は動作に関連づける。またこのとき、制御手段8は、表示手段7に、関連づけの結果を示す表示を行わせるとともに、その結果に従ってこれから設定又は動作を行ってよいかをユーザに問い合わせる表示を行わせる。
【0034】
上記問い合わせに対して、ユーザがコマンドシート設定/指示指定手段6において同意の操作を行うと、指定データ設定/指示実行手段5は、解析されたテキストデータが設定データの場合、孔版印刷装置100に設定データとして設定し、解析されたテキストデータが指示データの場合、その指示に従った動作を実行する。
【0035】
上記設定又は動作の実行後、制御手段8は、実行された設定又は動作の結果を示す表示を表示手段7に行わせる。
【0036】
次に、図2を参照して、孔版印刷システム1を構成する孔版印刷装置100の基本構成について説明する。
【0037】
孔版印刷装置100は、装置本体の内部に、マスタ107が外周面に巻着される印刷ドラム101と、印圧手段となるプレスローラ102と、製版装置となるプロッタ103と、排版手段104とを備える。孔版印刷装置100は、装置本体の右側に配置された給紙手段105から給紙される記録紙106をプレスローラ102で印刷ドラム101に押し当てることで、巻着されたマスタ107の画像を記録紙106に転写する。また、孔版印刷装置100は、片面印刷の場合、画像転写された記録紙106を搬送手段108で装置本体の左側に配置された排紙手段109へと搬送し、両面印刷の場合、片面の印刷が終了した記録紙を、切替え部材121により再給紙手段122に導き、再び給紙させることにより裏面に印刷を行う。このような構成は周知のものである。
【0038】
装置本体の上部には、画像読取手段となるカラースキャナ110が配置されていて、原稿画像を読み取り、製版に用いる画像データを取得している。
【0039】
装置本体の上部正面には、孔版印刷装置100の操作部となる操作パネル111が配設されている。操作パネル111には、印刷や製版の切り替えキー113、スタートキー114、タッチパネル115、初期設定/プリンタ設定キー116、印刷位置調整キー117、プリントスピード設定キー118などが配備されている。
【0040】
タッチパネル115は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等で構成されていて、その画面には、各種案内情報や各種操作画面が適宜表示される。このタッチパネル115がユーザによって操作されると、各画面に表示されたスイッチに対応した内容が制御手段20や孔版印刷装置100に設定される。
【0041】
装置本体内には、孔版印刷装置100の各部を制御する制御手段20が配設されている。制御手段20は、図3に示すように、大きく、実装基板となるACU(Application Control Unit)200とECU(Engine Control Unit)300の二つに分かれている。
【0042】
ACU200は、孔版印刷装置100の操作パネル111(タッチパネル115)が接続される操作パネル用インターフェース205、携帯型大容量記憶メディアであるSD(Secure Digital)メモリーカード201やUSB(Universal Serial Bus)メモリ203などが接続されるインターフェース(SD I/F206、USB I/F209)、大容量記憶装置となるハードディスク(HDD:Hard Disc Drive)207が接続されるインターフェース208、パソコンなどの情報端末に対し、LAN(Local Area Network)やインターネットなどのネットワークを介してアクセスするためのネットワークインターフェースカード(NIC)202や無縁LANカードを接続するための通信インターフェース(NIC I/F212、無線LAN I/F214)、無給電画像表示装置である電子ペーパー400を接続するためのI/Oインターフェース221、FAXモジュールを接続するためのFAXインターフェース222、ECU300側が接続されるECUインターフェース215、中央演算回路となるCPU(Central Processing Unit)216、記憶手段となるRAM(Random Access Memory)217及びROM(Read Only Memory)218がそれぞれ、ASIC(Application Specification Integrated Circuit)220に接続されている。
【0043】
ACU200は、孔版印刷装置100の製版/蓄積の制御等を行い、スキャナあるいはネットワーク経由で転送されてくる文書を蓄積文書としてHDDに蓄積したり、スキャナあるいはHDDに蓄積された蓄積文書あるいはネットワーク経由で転送された文書データから、最終的に製版データを作成したのち、ECU300に転送するという働きを受け持つ。本実施形態の特徴的な機能は、主にこのACU200に属する。
【0044】
ECU300は、中央演算回路となるCPU321、記憶手段となるRAM322とROM323、ACU200が有するECUインターフェース215と接続されるACUインターフェース324、スキャナ110が接続されるスキャナインターフェース326、画像の像域分離や各種画像補正を行うIPP(Image Pre-Processor)325、プロッタ103が接続されるプロッタインターフェース328がそれぞれ、ASIC329に接続されている。
【0045】
ECU300は、ACU200により作成された製版データをもとに、プロッタ103により、周知の孔版原紙となるマスタの感熱孔版フィルム119に、熱的プロセスによって穿孔を行うことにより、製版済みのマスタを作成する。そして、ECU300は、この製版済みのマスタ107を印刷ドラム101となる版胴の外周面に巻装し、ドラム内部に設置されたインキパック120から、インキを供給しながら印刷ドラム101を回転させる。そして、ECU300は、それに呼応させるように記録紙(印刷用紙)106を給紙することにより印刷成果物(印刷物)を得る。すなわち、ECU300は、上述した一連のデジタル式の孔版印刷装置100の製版から印刷に至る動作全般を制御するものである。
【0046】
なお、孔版印刷装置100としては、片面印刷装置や両面印刷装置のいずれであってもよいが、本実施形態では、両面印刷装置としている。但し、本実施形態で説明するコマンドシート15による設置設定/初期設定機能の実施形態は、基本的な動きを重点的に説明するため、片面読取り、片面印刷をベースとしたものに限定している。
【0047】
まず、孔版印刷装置100の工場出荷時には、メイキャップ機能(コマンドシート15)による設置/指示を行えるように、孔版印刷装置100本体のタッチパネル115において、図4、図5のメニュー画面に示されるようなメイキャップ機能の動作に関する各種設定がなされる。
【0048】
本実施形態では、コマンドシート15には、「エリア指定方法」として"囲み線"を、「マーカ指定方法」として"モノクロマーカ"を、コマンドシートの機能として"設定/指示"モードを指定している。
【0049】
これにより、孔版印刷装置100の納入先において、開梱・設置後、電源投入時に、直ちにコマンドシート15による設置設定/初期設定が可能となる。
【0050】
なお、コマンドシート15のエリア指定において、原稿編集モードなどでは、"対角線"を指定できるが、本実施形態におけるコマンドシート15による設定/指示モードでは、"囲み線"のみを指定している。なぜなら、指定エリア内の設定/指示に対して、"対角線"を指定した場合、当該設定/指示と対角線が交錯したような場合、OCR処理時に不具合やエラーを発生/誘発する可能性があるためである。
【0051】
また、当然のことながら、設置設定/初期設定後の通常の運用状態においても、タッチパネル115から、メイキャップ機能を設定することにより、コマンドシート15による設定/指示を行えるが、対象台数が一台、二台のレベルであれば、タッチパネル115から、設定項目を直接変更するのと、作業量にたいして差がなく、あまりメリットはない。
【0052】
以上のような設定がなされた孔版印刷装置100の制御について、図6、図7、図9の説明図や図8の流れ図を使用して以下に説明する。
【0053】
ユーザ(セールスエンジニアもしくはカスタマエンジニアなどの設置設定者などの操作者)によって、孔版印刷装置100の主電源が投入されると(図8のST1)、制御手段20は、表示手段7(例えばタッチパネル115)上に、図6に示されるような、コマンドシートによる設定/指示モードである旨及びコマンドシートのセットを促す旨の案内表示(メッセージ表示)を行わせる(図8のST2)。そして、制御手段20は、ユーザによって所定の操作やコマンドシート15(エリア指定手段2の一例)のセットが行われるのを待つ。
【0054】
ここで、コマンドシート設定/指示指定手段6(例えばタッチパネル115)において、ユーザによって操作が行われたとする(図8のST3)。その操作がコマンドシートによる設定/指示の実行に同意しない操作であった場合(図8のST4/取消)、制御手段20は、コマンドシートによる設定/指示モードを解除し、通常の原稿読み取りモードに切り替える(図8のST13)。一方、その操作がコマンドシートによる設定/指示の実行に同意する操作であった場合(図8のST4/OK)、制御手段20は、OCR手段2(例えばイメージスキャナ110)に、原稿台にセットされたコマンドシート15の画像を読み取らせ(図8のST5)、マーカで指定されたエリア内についてOCR処理(テキストデータ化)を行わせる(図8のST6)。
【0055】
ここで、コマンドシート15について、より詳細に説明する。本実施形態において、設置設定/初期設定の際、もっとも重要、かつ、設定頻度が高い、ネットワーク関連や機器構成についての設定/指示の指定例を、図7に示す。
【0056】
図7に示すように、コマンドシート15における指定の方法は、マーカによるエリア指定内部に、設定/指示項目とその設定値/指示内容を、コロンを挟んで併記するようになっている。また、それぞれのマーカで指定されたエリアは、それぞれが関連する一連の設定/指示項目のまとまり、例えば、本実施形態では、上から、ネットワーク関連、機器構成関連、初期設定関連、指示動作関連を表している。
【0057】
図7に示すコマンドシート15の例では、ネットワーク関連の設定として、「DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)」を"OFF"、すなわちIPアドレスを自動取得しないとし、そのかわり固定「IPアドレス」として"192.168.118.0.2"を割付けている。
【0058】
また、図7の例では、機器構成関連の設定として、「電動排紙台」を"有効"と指定しており、これは、孔版印刷装置100にオプションとして電動排紙台を装着させていることを示している。
【0059】
さらに、図7の例では、初期設定として、「コマンドシート設定/指示」を"無効"と指定している。これは一見すると、現在、コマンドシートによる設定/指示モードのメイキャップ動作をさせているので、矛盾するような印象を受けるが、コマンドシートによる設定/指示モードによるメイキャップ動作が終了した後に、当該モードの無効設定を行うことを意味している。これにより、孔版印刷装置100がユーザに引き渡されたときには、通常の孔版印刷装置として、原稿の製版・印刷を行えることになる。もし、このような指定をしない場合、コマンドシートによる設定/指示モードが解除されないので、ユーザの意図に反し、いつまでもコマンドシートによる設定/指示の動作が繰り返されてしまう。これを防ぐために、ユーザがその解除作業をする方法もあるが、それでは、ユーザの利便性を著しく阻害してしまう。
【0060】
最後に、図7の例では、「指示」項目として、"リブート"(再起動)動作を指定している。これは、上記設定項目を当該孔版印刷装置の設定項目に、確実に反映させるために、孔版印刷装置100のシステムを再起動させるためのものである。設定項目の中には、再起動を必要としないものもあるが、確実を記すためにこのような指定をしている。
【0061】
このように、図7の例では、孔版印刷装置100に対しての3種類の設定と1種類の指示が書き込まれており、それぞれがエリア分けされている。なお、コマンドシート15における設定と指定の種類及び数は、図7に限定されるものではない。また、図7の例のように、一のコマンドシートにおいて、設定と指示の両方が含まれていてもよいし、あるいは、設定又は指示のいずれかだけであってもよい。
【0062】
なお、ネットワーク関連の設定に関しては、DHCPモードがデフォルトでオン(有効)になっていれば、孔版印刷装置100とDHCPサーバとが独自のプロトコルで通信し、結果、孔版印刷装置100に動的なIPアドレスが割り振られ、また、そのDHCPサーバが稼動していない環境では、特定のIPアドレスが勝手に割り振られたりすることがある。しかしながら、パソコン(PC:Personal Computer)端末などと異なり、孔版印刷装置100のような画像形成装置では、利便性を鑑みて、固定的なIPアドレスで運用されることが多いため、本実施形態のような設定方法は、有効性がある。
【0063】
また、図7に示すコマンドシート15には、指定されたエリアの下方に、タイトルや種々の情報やメモなどが記載されているが、マーカによるエリア指定の外であるので、無視されるため、本実施形態の動作になんら影響を及ぼさない。逆に言えば、設置設定者への指示や留意点などを自由に、またレイアウト的にも自由に記すことができるため、設置設定や初期設定作業の勘違いや作業間違いなどを抑止することができ、効率的に作業を進めることができる。
【0064】
再び図8のフローに戻る。図8のST6において、OCR手段2がコマンドシート15における各エリアについてテキストデータ化を行った後、制御手段20のコマンドシートデータ解析手段4は、テキストデータを基にデータ(設定データ/指示データ)の抽出を行い、抽出したデータの孔版印刷装置100の設定/動作項目への関連づけを行う(図8のST7)。このとき、制御手段20は、実行した解析の結果、すなわち、データの抽出結果及びその抽出データの孔版印刷装置100の設定/動作項目への関連づけの結果を、表示手段7に表示させる(図8のST8)。図9に、この表示の例を示す。図9に示されるように、コマンドシート15の各エリアにおける設定及び指示の内容が、表示手段7に表示される。ユーザは、この表示を見て、コマンドシート15に書き込んだ設定/指示の内容と一致しているかを確認する。
【0065】
上記確認の結果、ユーザは、図9に示す表示内容に同意せず、表示されている設定/指示を実行したくない場合、図9に示す表示の右下の「取消」をタッチする操作を行う(図8のST9、ST10/取消)。これにより、図8のST2へ戻る。一方、上記確認の結果、ユーザは、図9に示す表示内容に同意し、表示されている設定/指示を実行したい場合、図9に示す表示の右下の「OK」をタッチする操作を行う(図8のST9、ST10/OK)。
【0066】
ユーザにより図9に示す「OK」をタッチする操作が行われると、指定データ設定/指示実行手段5は、図9に示される設定データを孔版印刷装置100の設定項目に反映し(図8のST11)、また、図9に示される指示データを孔版印刷装置100で実行する(図8のST12)。
【0067】
なお、本実施形態では、指示データが"リブート"のみになっているが、"リブート"は、"シャットダウン"(主電源OFF)などとともに、指示データの中でも一番最後に実行されるものであり、たとえ指示データの最初に記述されていても、その前に実行できる指示データ、例えば(スキャナの)"シェーディング補正"や"ホワイトバランス補正"などがある場合、そちらの指示データを先に実行するようにスケジューリングされる。
【0068】
また、本実施形態では、図9に示されるような解析結果のすべての項目が正しい場合に、次工程の設定処理や動作処理に進んでいるが、正しく解析された個別の項目のみを選択して、次工程に進む処理としたり、正しく解析されない個別の項目のみを再読込みさせるような処理としたりしてもよい。
【0069】
図8のST12におけるコマンドシート15による設定/指示の実行の終了後、孔版印刷装置100が再起動すると、その後は、通信機能(ネットワーク機能)や電動排紙台が使用できるようになる。また、コマンドシートによる設定/指示モードも解除されるので、通常通りの、原稿の製版・印刷が可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、複数の設定/指示対象となる孔版印刷装置に対して、一枚のコマンドシートを用意して、IPアドレスの部分のみ付箋などで付け替えて読込ませるような方法をとっているが、対象孔版印刷装置分のコマンドシートを個別に用意して読込ませるような方法であってもよい。
【0071】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態と同一または同様の部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既に説明した構成上及び機能上の説明は省略して、要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じである)。
【0072】
本実施形態の孔版印刷システムは、基本的に第1の実施形態で示したものと同じであるが、図10に示されるように、コマンドシート15の設定/指示の項目を特定するための同義語辞書10(フラッシュROM217によって実現される)が付加された構成となっている。すなわち、本実施形態では、コマンドシートデータ解析手段4が、必要に応じ、予め用意されている同義語辞書10を参照して、設定/指示の項目を確定させ、孔版印刷装置100の設定項目や動作へ関連づける点で、上記第1の実施形態と異なる。
【0073】
第1の実施形態においては、コマンドシートに記述する設定/指示項目は、予め厳密に決められ、登録されたものでなければならず、字句が少しでも異なり、一致しない場合、対応する設定項目や動作への関連づけができない。
【0074】
このため、設定/指示項目の正確な記載について、ユーザマニュアルや保守マニュアルに記載して、記述の徹底を図らせる方法をとることもできるが、そのような方法では、設定/指示の語句を一字一句間違えずに、諳んじたり、マニュアルを見ながら記述することを要求されるため、利便性を著しく阻害してしまう。
【0075】
本実施形態では、錯誤を生じない限り、できるだけ広い指定記述を許し、その指定記述を最終的に正規化された指定記述に収束化させるために同義語辞書10を使用する。
【0076】
図11に同義語辞書10の実装例(一部)を示す。本実施形態では、同義語辞書10は、XML(eXtensible Markup Language)形式のテキストファイルで記述されている。さらに、図11に示す辞書中において、<item>タグで示されるものが、項目/動作項目に対応するものであり、<regular>タグで示されるものが、正規化された指定記述であり、<synonym>タグで示されるものが、同義語であり、ここでエントリされたものが表現のバラツキとして許容されるものを示している。
【0077】
ここで、コマンドシートデータ解析手段4にて行われる、同義語辞書10を用いた設定/指示項目の確定方法について説明する。
【0078】
例えば、ユーザが、省エネ設定と電動排紙台を共に"有効"に設定したい場合、コマンドシート15に、「省エネ設定:ON」、「電動排紙台:有」とそれぞれ記述したとする。この場合、コマンドシートデータ解析手段4は、図11の同義語辞書10において、<synonym>タグに"ON"や"有"が含まれている<item>タグを検索する。検索の結果、コマンドシートデータ解析手段4は、"ON"と"有"の両方とも同じ<item>タグに属しており、それらの正規化された指定記述は<regular>タグから「有効」であることがわかる。よって、コマンドシートデータ解析手段4は、コマンドシート15における「省エネ設定:ON」と「電動排紙台:有」という記述が、「省エネ設定:有効」と「電動排紙台:有効」と指定されたものと解釈する。
【0079】
また、例えば、コマンドシート15に「指示:Reboot」と記述されていた場合、図11の同義語辞書10において、直接的には、"Reboot"を含む<synonym>タグは存在しないが、アルファベットの記述の場合、大文字/小文字変換を施したものも検索対象とされるようにする。よって、コマンドシートデータ解析手段4は、図11の同義語辞書10において、"Reboot"の検索結果として、"reboot"を特定する。その結果、コマンドシートデータ解析手段4は、上記例と同様にして、コマンドシート15における「指示:Reboot」という記述が、「指示:リブート」が指定されたものと解釈する。
【0080】
さらに、同義語辞書10においては、カタカナなどにおいても同様に大文字/小文字変換がかけられる。例えば、コマンドシート15に"ゲートウエイ"と記述されていても"ゲートウェイ"と正規化されて識別される。
【0081】
なお、本実施形態では、かなとカタカナを区別しており、例えば"あり"と"アリ"、"なし"と"ナシ"は、異なる指定とみなされるが、区別せずに、同一のものとする処理を加えてもよい。
【0082】
本実施形態のような同義語辞書の実現方法においては、書式は規定されるものの、基本はテキストファイルなので、簡単に閲覧・編集でき、さらにUSBメモリやSDカードなどの携帯型メモリに格納することにより、他の孔版印刷装置使用時にも利用できるなどの可搬性にも優れる。
【0083】
また、孔版印刷装置の設定/指示項目が、新たな機種開発により、変更になったり、項目が追加されたりしたとしても、本同義語辞書を適切に改訂することにより、それらの変化に追随することができる。
【0084】
〔第3の実施形態〕
次に、第3の実施形態を説明する。本実施形態の孔版印刷システムは、前述の第1または第2の実施形態で示したものと同じであるが、一のコマンドシートにおいて、同一項目の設定/指示に対し、複数のエリアにて異なる設定/指示が指定されている場合、コマンドシートデータ解析手段4は、複数のエリアのうち下方に存在するエリアの設定/指定を有効なものとして扱うように制御するようにする。
【0085】
例えば4台の孔版印刷装置にIPアドレス(設定項目の一例)を設定する場合、コマンドシートにおいてそれぞれ異なるIPアドレスを指定(記述)する必要がある。その場合、例えば、一のコマンドシートにおいて、各IPアドレスを記述した付箋等を付け替えることで、4台分の装置に対応できる。しかし、このような方法では、ユーザの手間がかかる。そこで、本実施形態では、一のコマンドシートにおいて、IPアドレスを指定するエリアを追加していくことで、複数の装置に対応できるようにする。
【0086】
本実施形態に適用されるコマンドシートの例を図12に示す。図12に示すコマンドシート15は、例えば4台分の孔版印刷装置100に共通して用いられるものである。1台目の孔版印刷装置100に読み込ませるものは、図12に示すコマンドシート15においてB部分のエリア(IPアドレス:192.168.0.8)が記述されていないものである。すなわち、A部分のエリアのIPアドレス:192.168.0.7が、1台目の孔版印刷装置100に設定されるIPアドレスである。ユーザはまず、そのコマンドシート15(B部分のエリアなし)を1台目の孔版印刷装置100に読み込ませ、それに基づいた設定/指示を実行させる。その後、ユーザが、同じコマンドシート15を用いて2台目の孔版印刷装置100の設定/指示を行おうとする場合、1台目の孔版印刷装置100に読み込ませたコマンドシート15(B部分のエリアなし)に対して、図12に示すB部分のエリアを追加する。すなわち、ユーザは、図12に示すように、コマンドシート15において、2台目の孔版印刷装置100に設定したいIPアドレス192.168.0.8を追加して書き込み、その部分をマーカによりエリア指定する。これによって、一のコマンドシート15において、IPアドレス(同一の項目)に対し、異なる2つの指定がなされたエリア(A部分とB部分)が存在することになる。そして、ユーザは、図12に示すコマンドシート15(B部分のエリアあり)を、孔版印刷装置100に読み込ませ、それに基づいた設定/指示の実行を指示する。
【0087】
このように、一のコマンドシート15において、同一の項目に対し、複数のエリアで異なる指定が存在する場合、コマンドシートデータ解析手段4は、複数のエリアのうち下方にあるエリアでの指定を有効とみなす。よって、図12の例で言えば、B部分はA部分よりも下方にあるので、B部分のエリアの指定が有効とみなされる。このようにして、2台目の孔版印刷装置100では、コマンドシート15のB部分で指定されたIPアドレスが設定されることになる。この2台目の孔版印刷装置100におけるコマンドシートデータ解析手段4の解析結果の表示例を図13に示す。図13に示されるように、表示手段7には、B部分のエリアで指定されたIPアドレス192.168.0.8が表示される。
【0088】
3台目以降に関しても上記2台目のときと同様に、IPアドレスを指定するエリアをコマンドシート15の下方に追加していくことにより、適切な値を指定していくことができる。
【0089】
以上説明した本実施形態におけるエリア追加による設定例は、IPアドレスだけに限定されるものではなく、日時の設定など、刻々と設定すべき項目が変化するような場合にも有効である。また、上記説明では、同一の設定項目を例としたが、同一の指示項目についても同様である。また、上記説明では、異なる複数の指定が2つのエリアでなされた例としたが、2つ以上のエリアで異なる指定がされている場合でも、それらのエリアのうち最も下方にあるエリアの指定が有効とされる。
【0090】
〔第4の実施形態〕
次に、第4の実施形態を説明する。本実施形態の孔版印刷システムは、基本的に既出の実施形態で示したものと同じであるが、以下の特徴を有する。すなわち、コマンドシート15として、少なくとも1種類以上の色合いのマーカでエリア指定された、いわゆるカラーコマンドシートを用いる。そして、OCR手段2は、カラーコマンドシートを光学的に読み取り、読み取った画像データのうち、カラーコマンドシートで指定されたエリアをテキストデータ化するとともに、カラーコマンドシートで指定されたエリア指定情報(色あい情報を含む)を保持する。そして、コマンドシートデータ解析手段4は、上記テキストデータを解析するとともに、カラーコマンドシートの同一の色合いのマーカで指定された設定/指示項目を、同一の設定/指示項目カテゴリとしてグルーピング(併合)し、グルーピングした設定/指示項目を、孔版印刷装置100の設定項目に関連づける、または、孔版印刷装置100の動作に関連づける。
【0091】
図14に、本実施形態におけるカラーコマンドシートの例を示す。図14のカラーコマンドシート15では、例として、セキュリティ設定、アクセスコード設定、省電力モードについての設定の指定(記述)がなされている。また、各々の設定カテゴリ別に、異なるカラーマーカによるエリア分けがなされている。例として、セキュリティ設定は赤で、アクセスコード設定は黒で、省電力モード設定は緑で、それぞれ色分けされている。
【0092】
まず、図14における各設定項目について、簡単に説明する。セキュリティ設定は、文書の機密性にかかわるものであり、通常モードとセキュリティモードがある。後者が指定された場合、追加印刷ができない、製版マスタが装填された印刷ドラムが引き出せない、製版マスタが廃棄された排版ボックスが引き出せないなどの機密性を保護するための措置がとられる。但し、セキュリティモードを解除するためのコードを入力すれば、一時的に解除でき、通常モードになるが、移行時間を経過すると、再びセキュリティモードに戻る。
【0093】
アクセスコード設定は、操作パネル(タッチパネル)で特定の項目、特に管理者設定と呼ばれるセキュリティやユーザ利用に関する項目を設定する場合、その設定画面に入るためのアクセス制御をかけるものであり、当該設定が有効に指定されていた場合、アクセスコードの入力が要求される。これは前述のように、文書機密やユーザ利用などセキュリティ設定や課金処理に関わる設定を、一般ユーザに勝手に変更されることを抑止するためのものである。
【0094】
省電力モードは、省エネルギーに関わるものであり、省エネモードとオートオフモードがある。前者が指定された場合、製版/印刷やパネル操作など何もおこなわれない時間が、移行時間続くと、電源部(PSU:Power Supply Unit)やECUが待機モード(省エネモード)に入り、副電源が落とされる。一方、後者が指定された場合、無操作時間が移行時間経過するもしくはオートオフ設定時刻になると、主電源が落とされる(オートオフ)。
【0095】
図14に示すカラーコマンドシート15では、セキュリティ設定において、「セキュリティ設定」と「移行時間」、「コード」とが、異なるエリアに、但し、同色(赤)で指定されている。また、本来の設定指定では、「移行時間」は「セキュリティ移行時間」、「コード」は「セキュリティコード」と項目指定しなければならないが、簡略化されて指定されている。なお、簡略化については、アクセスコード設定、省エネモードについても同様である。
【0096】
コマンドシートデータ解析手段4は、カラーコマンドシート15で指定された設定/指示項目をカラーマーカによる指定エリア内から抽出するとともに、カラーごとにグルーピングする。これにより、赤マーカで指定された「セキュリティ設定」と「移行時間」、「コード」とは、同一のカテゴリに分類される。さらに、コマンドシートデータ解析手段4は、図15に示される設定/指示対応テーブルを検索し、設定項目「セキュリティ設定」が「セキュリティ設定」カテゴリの「セキュリティ設定」項目に、「移行時間」が「セキュリティ移行時間」項目に、「コード」が「セキュリティコード」項目に対応することを類推する。なお、図15の設定/指示対応テーブルは、上記同義語辞書10と同様に、一般的なテキストエディタで閲覧/編集可能なテキストファイルであり、かつ、XMLで記述されている。
【0097】
上記同様にして、コマンドシートデータ解析手段4は、図15に示される設定/指示対応テーブルを検索し、黒マーカで指定された「コード」が、「アクセスコード設定」カテゴリの「アクセスコード」項目に、緑マーカで指定された「移行時間」が、「省電力モード設定」カテゴリの「省電力移行時間」項目に、該当することを類推する。
【0098】
このような仕組みを採用することにより、「コード」や「移行時間」などの簡略化した指定をしても、また、同一指定エリアに記述しなくても、正しく解釈され、孔版印刷装置の設定/動作に対応づけられる。
【0099】
コマンドシートデータ解析手段4による設定/指示データの解析結果を、孔版印刷装置100の外装に装着された電子ペーパー400に表示させた例を図16に示す。図16に示されるように、電子ペーパー400の左領域400Aには、設定/指示データの解析結果が表示されている。なお、右領域400Bには、所定のメッセージが表示されているが、本実施形態の構成・動作に関するものではない。
【0100】
〔第5の実施形態〕
次に、第5の実施形態を説明する。本実施形態では、コマンドシート15として、画像の表示に電力を必要としない無給電画像表示装置、いわゆる電子ペーパーを用いるようにする。この電子ペーパーは、当該電子ペーパーに表示された画像の編集や追加が可能な機能を有するものであり、コマンドシートによる設定/指示の指定の代替として使用される。
【0101】
なお、電子ペーパーにおいては、画像の表示に電力を必要としないといっても、画像の消去や書換え時には電力を消費する。このため、本実施形態で用いる電子ペーパーとしては、図16に示すような孔版印刷装置100から電力供給を受けられるものが好ましいが、携帯型タイプの電子ペーパーを用いることもできる。その場合、バッテリー(2次電池)と光発電方式を組み合わせたタイプや、バッテリー(2次電池)とワイヤレス給電方式を組み合わせたタイプのものなどが使用できる。
【0102】
図17に、紙などで構成されたコマンドシートの代わりとしての、電子ペーパーによるコマンドシートの表示例を示す。
【0103】
なお、本実施形態では、電子ペーパーを単なるコマンドシートの代替として使用しているが、当該コマンドシート(電子ペーパー)を孔版印刷装置100に読み込ませた後の、設定/指示データの解析結果の表示用として兼務させてもよい。その場合において、解析結果の表示に誤りがあった場合、それを訂正し、再度読み込ませるなどのサイクリックな(循環的な)使い方をしてもよい。
【0104】
また、本実施形態では、単色(黒)マーカによるコマンドシートの代替として使用しているが、当該電子ペーパーが、カラー表示及びカラー画像の編集機能を持ったものであれば、図14に示したようなカラーコマンドシートの代替として使用してもよい。
【0105】
〔第6の実施形態〕
次に、第6の実施形態を説明する。本実施形態の孔版印刷システムは、基本的に前述の実施形態で示したものと同じであるが、以下の特徴を有する。すなわち、指定データ設定/指示実行手段5は、コマンドシート15における指示項目に通紙調整の指示がなされている場合、孔版印刷装置100の給紙台(給紙トレイ)にセットされた通紙調整用印刷用紙を、指示項目に付随して記述された通紙条件に従って通紙を実行する。その結果、通紙が正常に行われた場合には、指定データ設定/指示実行手段5は、通紙が正常に行われた旨の結果を表示手段7に表示させる。一方で、通紙が正常になされない場合、指定データ設定/指示実行手段5は、孔版印刷装置100の用紙搬送に関わる機器設定パラメータを変化させて幾度かの通紙を試みる。その結果、通紙が成功した場合、指定データ設定/指示実行手段5は、通紙が正常に行われた旨の結果を表示手段7に表示させるとともに、当該通紙が成功したときの機器設定パラメータを自己修正して書き換える。一方で、最終的に、調整可能な範囲においても正常な通紙が行えない場合、指定データ設定/指示実行手段5は、通紙が行えなかった旨の結果を表示手段7に表示させる。
【0106】
図18に、通紙調整の指示が記載されたコマンドシートの例(一部分)を示す。本実施形態では、図18に示すコマンドシート15において、指示項目"指示:通紙調整"の他に、通紙調整の際に画像(製版)を伴った通紙を行うか、単なる印刷用紙のみの通紙を行うかの指定("画像:なし")や、印刷速度/通紙速度("印刷速度:3速")、通紙枚数("通紙枚数:10枚")、当該通紙調整の調整値を登録する項目("用紙種類:ユーザ1")などの通紙条件が指定されている。
【0107】
図18に示すコマンドシート15を孔版印刷装置100に読み込ませたときの動作は、基本的に第1の実施形態で説明した図8に則って処理が行われるが、指示項目(通紙調整指示)についてはステップST12で実行される。その処理部分のより詳しい説明を、図19を用いて以下に説明する。
【0108】
指定データ設定/指示実行手段5は、まず、図18に示す前述のコマンドシート15から抽出された通紙調整を行う際の通紙条件を、孔版印刷装置100自身に設定する(図19のST1)。
【0109】
その後、指定データ設定/指示実行手段5は、表示手段7に対し、通紙調整に使用する印刷用紙(通紙調整用印刷用紙)を給紙台にセットするようにユーザに促す旨の表示を行う(図19のST2)。
【0110】
ユーザによって通紙調整用印刷用紙のセットが行われ、ユーザによる通紙開始の操作を受け付けたら(図19のST3、ST4/OK)、指定データ設定/指示実行手段5は、通紙条件の画像指定項目を参照する(図19のST5)。
【0111】
上記参照の結果、画像指定がある場合(図19のST6/画像指定あり)、指定データ設定/指示実行手段5は、指定されたテストパターン(通紙調整用テスト画像)を生成し(図19のST7)、製版をし(図19のST8)、印刷/通紙を行う(図19のST9)。
【0112】
本実施形態では、図18に示すように画像の生成をしない旨("画像:なし")の指定がされているので、上記参照の結果、画像指定がない場合となる(図19のST6/画像指定なし)。よって、指定データ設定/指示実行手段5は、給紙台にセットされた通紙調整用印刷用紙の単なる通紙のみを行う(図19のST9)。
【0113】
図19のST9における通紙の結果、何の問題もなく通紙が行われた場合(図19のST10/通紙OK)、指定データ設定/指示実行手段5は、孔版印刷装置100の通紙設定パラメータ(機器設定パラメータ)を、指定された登録項目に登録する(図19のST11)。例えば、本実施形態では、「用紙種類」項目の"ユーザ1"に登録され、以後、印刷用紙を使う際に、"ユーザ1"を選択すれば、印刷用紙を問題なく通紙することができる。
【0114】
しかしながら、図19のST9における通紙において、ジャムなどが発生した場合(図19のST10/通紙NG)、指定データ設定/指示実行手段5は、ユーザの指示を待ち(図19のST12)、再通紙(通紙の再試行)が指示された場合(図19のST13/再通紙)、再び通紙を試みる(図19のST9)。なお、ユーザにより通紙設定パラメータの変更が指示された場合(図19のST13/通紙パラメータ変更)、指定データ設定/指示実行手段5は、予め定められたアルゴリズムに従い、給紙圧や分離圧、分離パット種類、給紙タイミングなどの通紙パラメータを変更し(図19のST14)、再び通紙を試みる(図19のST9)。
【0115】
なお、本実施形態では、通紙条件の一例を図18に示しているが、これらに限定されものではなく、場合によっては、スキップ給紙(間欠的な給紙)などを加えてもよい。
【0116】
上述したように、本実施形態によれば、孔版印刷装置100を使用するユーザ環境において、ユーザ特有の印刷用紙(特殊な形状や加工の用紙や紙袋/封筒など)を使いたい場合、設置設定時や初期設定時に、予め通紙調整を行って、登録させておくことにより、ユーザが印刷業務を円滑、かつ、効率的に進めることができる。
【0117】
また、場合によっては、それ以前の商談/入札フェーズにおいて、孔版印刷装置100が、ユーザの要求する印刷用紙を扱えるかどうかの通紙性能確認にも使用することができる。
【0118】
〔第7の実施形態〕
次に、第7の実施形態を説明する。本実施形態の孔版印刷システムは、基本的に前述の実施形態で示したものと同じであるが、以下の特徴を有する。すなわち、指定データ設定/指示実行手段5は、コマンドシート15における指示項目に機器診断(孔版印刷装置100の診断)の指示がなされている場合、指示項目に付随して記述された診断項目を自己診断し、その診断結果をユーザに通知する(例えば表示手段7に表示する)ようにする。
【0119】
図20に、機器診断の指示が記載されたコマンドシートの例(一部分)を示す。本実施形態では、図20に示すコマンドシート15において、指示項目"指示:機器診断"の他に、"ドラム回転"、"スキャナ移動"、"インキポンプ"、"マスタ搬送"などの診断項目がいくつか指定されている。
【0120】
なお、本実施形態では、機器診断の診断項目の一例を図20に示しているが、これらに限定されものではなく、この他にも、"マスタカッタ"、"用紙搬送"など種々の自己診断項目やセルフチェック項目があってもよい。
【0121】
図20に示すコマンドシート15を孔版印刷装置100に読み込ませたときの動作は、基本的に、第1の実施形態で説明した図8に則って処理が行われるが、指示項目(機器診断指示)についてはステップST12で実行される。その処理部分のより詳しい説明を、図21を用いて以下に説明する。
【0122】
指定データ設定/指示実行手段5は、まず、図20に示す前述のコマンドシート15から抽出された機器診断を行う際の診断項目を整理し、診断項目のリストを生成する(図21のST1)。
【0123】
次に、指定データ設定/指示実行手段5は、エントリされた(生成したリストにリストアップされた)診断項目をどのような順番で、どのように実行させるか(シーケンス実行、パラレル実行)のスケジューリングを行う(図21のST2)。
【0124】
次に、指定データ設定/指示実行手段5は、生成したリストにリストアップされた診断項目をスケジューリングに従い、テスト(実行)していく(図21のST4、ST7、ST10、ST13)。そして、指定データ設定/指示実行手段5は、テストの結果を各々診断結果として記録していく(図21のST5、ST8、ST11、ST14)。
【0125】
なお、図21では、図20に示した診断項目分の分岐処理しか、流れ図に記載されていないが、本来は、孔版印刷装置100で自己診断可能な項目数だけ、分岐処理が併記されるものである。
【0126】
指定データ設定/指示実行手段5は、すべての診断処理が終了すると、記録した診断結果を表示手段7に表示させ、ユーザに通知する(図21のST15)。このときの表示手段7に表示された診断結果の一例を図22に示す。図22の例では、診断結果がすべてOK(○印)となっており、孔版印刷装置100の使用に問題のないことを示している。しかし、もし、診断結果の表示にNG(×印)がある場合は、当該診断項目のどこかになんらかの異常が発生している可能性があるため、再チェックや調整、交換、修理などの適切な対処を行う必要がある。
【0127】
上述したように、本実施形態によれば、孔版印刷装置の輸送や搬入に伴う故障や不具合の発生を、設置設定時や初期設定時に、実際の孔版印刷装置の使用/運用の前にチェックすることができる。
【0128】
また、本実施形態の機器診断指示は、上述のような設置設定時や初期設定時のみならず、孔版印刷装置の工場出荷時における出荷検査にも適用することができる。
【0129】
さらに、本実施形態では、診断項目の指定に、"診断:***"として、逐一指定しているが、例えば、"診断:ALL"などと指定することにより、すべての診断項目もしくは予め決められた一連の診断項目を実施するような処理としてもよい。
【0130】
以上説明してきた本発明の第1〜第7の実施形態の一部又は全部は、以下に記す構成1〜9のようにも記載されうるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0131】
〈構成1〉
熱可塑性フィルムからなるマスタに熱穿孔プロセスを用いて潜像を形成し、前記潜像が形成されたマスタを、インキが充填された印刷ドラムに装填し、前記マスタが装填された前記印刷ドラムを回転させ、給紙された用紙と圧接させることにより、前記用紙に可視画像を形成するいわゆる孔版印刷装置において、
エリア指定シートと呼ばれる毎葉紙等のシート状媒体に、孔版印刷装置が認識可能なマーカにより、少なくとも1個以上の囲み線や対角線等を書き込むことにより、特定のエリア(領域)を指定するエリア指定手段と、
前記コマンドシートを光学的に読取り、読取った画像データのうち、前記エリア指定手段で指定された領域をテキストデータ化するOCR手段と、
前記テキストデータを解析し、当該孔版印刷装置の設定項目に関連づける、もしくは、当該孔版印刷装置への動作に関連づける、コマンドシートデータ解析手段と、
前記解析されたデータが設定データの場合、当該孔版印刷装置の設定データとして設定し、または、前記解析されたデータが指示データの場合、当該指示を動作実行する、指定データ設定/指示実行手段と、
前記コマンドシートを利用した、当該孔版印刷装置の設置設定、初期設定、機器設定や機能設定等の各種設定、または、当該孔版印刷装置の再起動(リブート)、自己診断等の指示の実行、を行うか否かを指定するコマンドシート設定/指示指定手段と、
前記コマンドシート読取りに先立ち、当該コマンドシート設定/指示の動作を行う旨の表示を行い、もしくは、前記解析されたデータと当該解析データが設定される当該孔版印刷装置に設定項目を対比させた表示を行い、もしくは、前記解析されたデータを当該孔版印刷装置の設定のデータとして設定実行した結果、もしくは、前記解析されたデータが指示データの場合、動作実行済みもしくはこれから動作実行を行おうとする動作の表示を行う表示手段と、
操作者が、マーカにより囲み線などで指定されたエリアに、当該孔版印刷装置に設定したい設定データや当該孔版印刷装置に動作させたい指示データを書き込んだコマンドシートを用意し、
孔版印刷装置では、コマンドシート設定/指示指定手段において、その設定が有効の旨の設定がなされている場合、当該孔版印刷装置に通常の原稿読取りではなくコマンドシート読取りによる設定/指示の動作を行う旨の表示を行わせ、操作者によって用意された、前記設定データや指示データが書き込まれたコマンドシートをOCR手段により読み込み、読み取った画像データをテキストデータ化し、コマンドシートデータ解析手段によって、前記テキストデータを解析し、当該孔版印刷装置の設定項目に関連づけもしくは当該孔版印刷装置への動作に関連づけ、その関連づけの結果を表示し、操作者の同意がなされたとき、解析されたデータが設定データの場合、当該孔版印刷装置の設定データとして設定し、または、前記解析されたデータが指示データの場合、当該指示を動作実行し、前記解析されたデータを当該孔版印刷装置の設定のデータとして設定実行した結果、もしくは、前記解析されたデータが指示データの場合、動作実行済みの結果もしくはこれから動作実行を行おうとする動作について、の表示を行うように制御する制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0132】
上記構成1によれば、これまで専ら原稿の加工に用いられてきたメイキャップ機能を、導入設定等に利用することにより、当該導入設定作業の負荷を軽減し、また当該作業を効率的に行うことができる。
【0133】
〈構成2〉
上記構成1において、
前記孔版印刷装置の設定/指示に使用するコマンドシートが、
少なくとも1種類以上の色合いのマーカでエリア指定された、いわゆるカラーコマンドシートと呼ばれるエリア指定手段であり、
前記OCR手段が、
カラーコマンドシートを光学的に読取り、読取った画像データのうち、前記エリア指定手段で指定された領域をテキストデータ化するとともに、前記カラーコマンドシートで指定されたエリア指定情報(色あい情報を含む)を保持するOCR手段であり、
前記コマンドシートデータ解析手段が、
前記テキストデータを解析するとともに、前記カラーコマンドシートの同一の色合いのマーカで指定された設定/指示項目は、同一の設定/指示項目カテゴリとして併合(グルーピング)し、さらに、前記グルーピングされた設定/指示項目を、当該孔版印刷装置の設定項目に関連づける、もしくは、当該孔版印刷装置への動作に関連づける、コマンドシートデータ解析手段であることを特徴とする。
【0134】
上記構成2によれば、モノクロマーカではできなかった、カラーマーカの色合いに意味づけをもたせることにより、より柔軟、より複雑、よりロバスト性の高い、メイキャップ機能を利用した設定/指示を行わせることができる。
【0135】
〈構成3〉
上記構成1または構成2において、
前記制御手段が、
前記コマンドシートによる設定/指示において、同一設定項目に異なる設定が指定されている場合、当該コマンドシートの読取り走査において、後に出現した指定を有効なものとして扱うように制御することを特徴とする。
【0136】
上記構成3によれば、設定/指示項目の修正や変更、順繰り作業における設定/指示を効率的に行うことができる。
【0137】
〈構成4〉
上記構成1から3のいずれかの構成において、
前記コマンドシート解析手段が、
必要に応じ、予め用意されている同義語辞書を参照して、設定/指示項目を確定させ、当該孔版印刷装置の設定項目に関連づける、もしくは、当該孔版印刷装置への動作に関連づけることを特徴とする。
【0138】
上記構成4によれば、設定/指示項目の指定において、厳密な記述によらず、ある程度の省略や簡略な記述でも、許容されるため、使い勝手のよい設定/指示が可能となる。
【0139】
〈構成5〉
上記構成1から4のいずれかの構成において、
前記コマンドシート解析手段が、
設定/指示項目が簡略化された様式の記述であった場合、OCRによる設定/指示項目の情報から判断されるカテゴリ判別と、カラーマーカの情報から判断されるカテゴリ判別と、の双方の判別情報を判断材料として、当該孔版印刷装置への設定/動作へ適切に関連づけることを特徴とする。
【0140】
上記構成5によれば、より柔軟、より複雑、よりロバスト性の高い、設定/指示を行わせることができる。
【0141】
〈構成6〉
上記構成1から5のいずれかの構成において、
前記表示手段が、
画像の表示に電力を必要としない無給電画像表示装置、いわゆる電子ペーパーであって、かつ、当該電子ペーパーに表示された画像の編集や追加が可能な、いわゆる編集可能を有するものであって、前記コマンドシートによる設定/指示指定の代替が可能であることを特徴とする。
【0142】
上記構成6によれば、通常使用される紙のコマンドシートと異なり、何度でも再使用可能であるため、当該メイキャップ機能の使用に際し、紙資源を消費しないので、省資源に寄与することができる。また、孔版印刷装置と電子ペーパーのシステム構築の仕方によっては、コマンドシートからの設定/指示項目の抽出・解析結果の表示も兼ねることができ、指定用と表示用のサイクリックな(循環的な)使い方をすることもできる。
【0143】
〈構成7〉
上記構成1から6のいずれかの構成において、
前記制御手段が、
設定/指示項目において、指示項目に通紙調整の指示がなされたとき、当該孔版印刷装置の給紙台にセットされた通紙調整用印刷用紙を、指示項目に付随して記述された通紙条件によって通紙し、その結果、
通紙が正常に行われた場合、その旨の結果を表示し、
通紙が正常になされない場合、当該孔版印刷装置の用紙搬送に関わる機器設定パラメータを変化させて幾度かの通紙を試み、その結果、
通紙が成功した場合、その旨の結果を表示するとともに、当該通紙の成功した時の機器設定パラメータを自己修正して書き換え、
最終的に、調整可能な範囲においても正常な通紙が行えない場合、その旨の結果を表示するように制御することを特徴とする。
【0144】
上記構成7によれば、ユーザの使用する印刷用紙にマッチした孔版印刷装置の導入設定が可能であり、また、それを事前に行うことにより、以後のユーザの印刷業務を円滑、かつ、効率的に進めることができる。さらに、場合によっては、それ以前の孔版印刷装置の商談/入札フェーズにおいて、当該孔版印刷システムが、ユーザの要望する印刷用紙を扱えるかどうかの通紙性能確認にも使用することができる。
【0145】
〈構成8〉
上記構成1から7のいずれかの構成において、
前記制御手段が、
設定/指示項目において、指示項目に機器診断の指示がなされたとき、指示項目に付随して記述された診断項目を自己診断し、当該診断結果を表示または通信手段によって操作者に知らしめるように制御することを特徴とする。
【0146】
上記構成8によれば、孔版印刷装置の輸送や搬入に伴う故障や不具合の発生を、設置設定時や初期設定時に、実際の孔版印刷装置の使用/運用の前にチェックすることができる。また、本実施形態の機器診断指示は、前記のような設置設定時や初期設定時のみならず、孔版印刷装置の工場出荷時における出荷検査にも適用することができる。
【0147】
〈構成9〉
上記構成1から8のいずれかの構成において、
前記コマンドシートデータ解析手段によって参照される同義語辞書や設定/指示対応テーブルが、
一般的なテキストエディタで閲覧/編集可能なテキストファイルであり、かつ、その記述形式が、XMLで記述されていることを特徴とする。
【0148】
上記構成9によれば、テキストエディタで、簡単に閲覧・編集でき、さらに、USBメモリやSDカードなどの携帯型メモリに格納することにより、他の孔版印刷装置使用時にも利用できるなどの可搬性にも優れる。また、孔版印刷装置の設定/指示項目が、新たな機種開発により変更になったり、項目が追加されたりしたとしても、当該同義語辞書や設定/指示対応テーブルを適切に改訂することにより、それらの変化に追随することができる。
【0149】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0150】
例えば、上述した各実施形態における動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成によって実行することも可能である。
【0151】
ソフトウェアによる処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリにインストールして実行させてもよい。あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させてもよい。
【0152】
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto Optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することが可能である。
【0153】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送してもよい。または、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送してもよい。コンピュータでは、転送されてきたプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることが可能である。
【0154】
また、上記各実施形態で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。
【符号の説明】
【0155】
1 孔版印刷システム
2 エリア指定手段
3 OCR手段
4 コマンドシートデータ解析手段
5 指定データ設定/指示実行手段
6 コマンドシート設定/指示指定手段
7 表示手段
8 制御手段
15 コマンドシート(又は、カラーコマンドシート)
16 同義語辞書
20 孔版印刷装置の制御部
100 孔版印刷装置
101 印刷ドラム
103 製版部(プロッタ)
110 画像読取り部(スキャナ)
111 操作部(操作パネル)
115 タッチパネル
119 マスタロール
120 インキパック
200 ACU
300 ECU
400 電子ペーパー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0156】
【特許文献1】特開平11−191136号公報
【特許文献2】特開平05−254237号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが予め、画像処理装置に対する所望の設定/指示を書き込み、当該設定/指示を書き込んだエリアを前記画像処理装置が認識可能なマーカにより指定したシート状媒体であるコマンドシートを光学的に読み取り、前記エリアに書き込まれた設定/指示をテキストデータにするOCR手段と、
前記テキストデータを解析し、当該解析結果を、前記画像処理装置の設定に関連づける、又は、前記画像処理装置の動作に関連づけるコマンドシートデータ解析手段と、
前記解析結果が設定データである場合は、当該設定データを前記画像処理装置に設定し、前記解析結果が指示データである場合は、当該指示データに従って前記画像処理装置の動作を実行する指定データ設定/指示実行手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
ユーザに対して種々の表示を行う表示手段を有し、
前記表示手段は、
前記OCR手段による前記コマンドシートの読み取りの前に、当該コマンドシートによる設定/指示を開始する旨を示す表示、
前記コマンドシートデータ解析手段による前記解析結果を示す表示、
これから実行される前記設定データの前記画像処理装置への設定に関する表示、
前記設定データを前記画像処理装置に設定した結果を示す表示、
これから実行される前記指示データに従った前記画像処理装置の動作に関する表示、
前記指示データに従って前記画像処理装置の動作を実行した結果を示す表示、
のうち少なくとも1つの表示を行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記OCR手段による前記コマンドシートの読み取りの前、及び、前記コマンドシートデータ解析手段による解析の後の少なくとも一方において、前記コマンドシートによる設定/指示を実行するか否かについてユーザが選択する操作を受け付けるコマンドシート設定/指示指定手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記コマンドシートは、
複数の色のマーカにより前記エリアが複数指定されたカラーコマンドシートであり、
前記OCR手段は、
前記カラーコマンドシートを読み取り、前記複数のエリアに書き込まれた設定/指示をそれぞれテキストデータにし、
前記コマンドシートデータ解析手段は、
前記複数のテキストデータを解析し、当該解析の結果、同一の色のマーカで指定されたエリアの設定/指示を、同一のカテゴリとしてグルーピングし、
前記グルーピングした設定/指示を、前記画像処理装置の設定に関連づける、又は、前記画像処理装置の動作に関連づけることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記コマンドシートデータ解析手段は、
前記テキストデータの解析の結果、同一項目の設定/指示に対し、複数のエリアで異なる設定/指示が指定されていた場合、前記複数のエリアのうち下方にあるエリアで指定されている設定/指示の指定を有効なものとして扱うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記コマンドシートデータ解析手段は、
前記テキストデータを解析する際に、予め用意されている同義語辞書を参照して前記設定/指示を確定させ、当該確定結果を、前記画像処理装置の設定に関連づける、又は、前記画像処理装置の動作に関連づけることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記コマンドシートデータ解析手段は、
前記テキストデータの解析の結果、前記設定/指示が簡略化された様式の記述であった場合、
前記OCR手段による設定/指示項目の情報から判断されるカテゴリ判別と、カラーマーカの情報から判断されるカテゴリ判別と、の双方の判別情報を判断材料として、前記画像処理装置の設定/動作に関連づけることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記表示手段は、
画像の表示に電力を必要としない電子ペーパーであり、
当該電子ペーパーに表示された画像の編集や追加が可能であり、
前記コマンドシートによる設定/指示の指定を代替できることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記指定データ設定/指示実行手段は、
前記指示データにおいて通紙調整の指示がなされた場合、
前記画像処理装置の給紙台にセットされた通紙調整用印刷用紙を、前記指示データに付随して記述された通紙条件によって通紙し、
当該通紙の結果、通紙が正常に行われた場合は、その旨の表示を行うように制御する一方で、通紙が正常に行われなかった場合は、前記画像処理装置の用紙搬送に関わる設定パラメータを変化させて幾度かの通紙を試み、
当該通紙の試みの結果、通紙が成功した場合は、その旨の表示を行うように制御するとともに、当該通紙が成功したときの設定パラメータを自己修正して書き換える一方で、最終的に、調整可能な範囲においても正常な通紙が行えなかった場合は、その旨の表示を行うように制御することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記指定データ設定/指示実行手段は、
前記指示データにおいて前記画像処理装置の診断の指示がなされた場合、
前記指示データに付随して記述された診断項目を自己診断し、当該診断結果をユーザに通知するように制御することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記コマンドシートデータ解析手段によって参照される同義語辞書は、一般的なテキストエディタで閲覧/編集可能なテキストファイルであり、かつ、XMLで記述されていることを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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