説明

画像処理装置

【課題】印刷装置における印刷画質の低下を抑えつつ、黒の記録材の使用量を低減できる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置4は、印刷対象の画像データに基づくモノクロ印刷を行う場合における各画素に対応するブラックインクの使用量相当値を算出するインク使用量算出部31と、画像データにおける色が低減対象色範囲に含まれる色である画素に対して、インク使用量算出部31で算出されたブラックインクの使用量相当値を、インクの使用量が所定の低減率で低減された使用量相当値に変換するとともに、当該画素に対応するインクの色を、ブラックから印刷装置2で使用可能な他の色に置き換える低減処理部32と、各画素に対応するインクの色および使用量相当値に基づき、印刷装置2に対応する形式の印刷データを生成する印刷データ生成部33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを処理する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置におけるランニングコスト低減のため、高価なカラーの記録材(カラーインク等)の使用量を抑える技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、印刷対象がカラー画像データと識別された場合であって、ユーザによって2色モードが選択された場合には、2色画像データを生成して出力する画像処理装置が開示されている。これにより、カラー画像が2色印刷されることで、フルカラーモードよりもカラーの記録材の使用量が抑えられ、コストが低減される。
【0004】
また、画像データに対するパターン間引きやガンマ処理により、印刷に用いられる記録材の使用量を減らすことで、印刷装置のランニングコストを低減する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−54354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ブラック(黒)を含む2色による2色印刷では、元のカラー画像における高濃度、高彩度の色範囲において、ブラックの記録材が多く使用される。また、モノクロ印刷において、ブラックの記録材が多く使用される。このように、印刷装置では、他の色と比較してブラックの記録材の使用量が多い。このため、印刷装置では、ブラックの記録材の補充が頻繁に行われる。したがって、ブラックの記録材の補充のために印刷装置が停止する機会が多くなる。これは、印刷効率の低下を招いてしまう。
【0007】
また、単純に、印刷対象の画像データに対するパターン間引きやガンマ処理により、ブラックの記録材の使用量を低減しようとすると、印字されない画素が増えることなどから、例えば、文字部分等において、印刷画質が低下することがあった。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、印刷装置における印刷画質の低下を抑えつつ、ブラック(黒)の記録材の使用量を低減できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像処理装置の第1の特徴は、黒および少なくとも1つの他の色の記録材を使用して印刷可能な印刷装置に印刷データを出力する画像処理装置であって、印刷対象の画像データに基づくモノクロ印刷を行う場合における前記画像データの各画素に対応する黒の記録材の使用量相当値を算出する記録材使用量算出部と、前記画像データにおける色が前記黒の記録材の使用量を低減する対象となる低減対象色範囲に含まれる色である画素に対して、前記記録材使用量算出部で算出された黒の記録材の使用量相当値を、記録材の使用量が所定の低減率で低減された使用量相当値に変換するとともに、当該画素に対応する記録材の色を、黒から前記印刷装置で使用可能な他の色に置き換える低減処理部と、各画素に対応する記録材の色および使用量相当値に基づき、前記印刷装置に対応する形式の印刷データを生成する印刷データ生成部とを備えることにある。
【0010】
本発明に係る画像処理装置の第2の特徴は、前記低減処理部は、前記低減対象色範囲を調整可能であることにある。
【0011】
本発明に係る画像処理装置の第3の特徴は、前記低減処理部は、前記低減率を調整可能であることにある。
【0012】
本発明に係る画像処理装置の第4の特徴は、前記低減処理部は、前記画像データにおける画素の属性に応じて前記低減率を変えることにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像処理装置の第1の特徴によれば、低減処理部が、印刷対象の画像データにおける色が低減対象色範囲に含まれる色である画素に対して、モノクロ印刷を行う場合の黒の記録材の使用量相当値を、記録材の使用量が所定の低減率で低減された使用量相当値に変換するとともに、当該画素に対応する記録材の色を、黒から印刷装置で使用可能な他の色に置き換える。これにより、画像内において通常のモノクロ印刷であれば多くの黒の記録材が使用される部分を、それより少ない使用量の他の色の記録材で印刷させることができる。これにより、印刷装置における黒の記録材の使用量を低減することが可能となる。他の色の記録材で印刷された部分は、色味によって識別可能となるため、印刷物は十分な視認性を保持する。また、パターン間引き等による記録材の使用量を削減する処理は行わないため、濃度差が減少して階調性が損なわれる等により印刷画質が低下することは抑えられる。
【0014】
本発明に係る画像処理装置の第2の特徴によれば、低減対象色範囲が調整可能であるので、ユーザの希望を印刷結果に反映できるとともに、記録材の使用量を調整できる。
【0015】
本発明に係る画像処理装置の第3の特徴によれば、低減率が調整可能であるので、インクの使用量を調整できる。
【0016】
本発明に係る画像処理装置の第4の特徴によれば、画素の属性に応じて低減率を変えることで、印刷対象の原稿の内容に応じて印刷画質を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態に係る画像処理装置を含む印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図2】画像処理装置の省インクモノクロモードにおける処理のフローチャートである。
【図3】色相範囲の説明図である。
【図4】低減対象色範囲の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置を含む印刷システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、印刷システム1は、印刷装置2と、画像読取装置3と、画像処理装置4とを備える。
【0020】
印刷装置2は、記録材であるインクをインクジェットヘッドから印刷媒体へと吐出して印刷を行うインクジェット方式の印刷装置からなる。印刷装置2は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色に対応するインクジェットヘッドを有し、カラー印刷およびモノクロ印刷が可能である。
【0021】
画像読取装置3は、原稿を光学的に読み取り、画像データを生成するものである。画像読取装置3は、CCD(Charge Coupled Device)、光源、原稿台、原稿台カバー、CCDを走査させる駆動モータ等を備える。画像読取装置3は、原稿台に載置された原稿に光源の光を照射し、原稿からの反射光をCCDで読み取ることで、原稿の画像データを生成し、これを出力する。本実施の形態では、画像読取装置3が出力する画像データは、各色8ビット(0〜255の256階調)のRGB形式の画像データであるとする。
【0022】
画像処理装置4は、画像読取装置3で原稿を読み取って得られた画像データを処理して、印刷装置2に対応した形式の印刷データを生成し、これを印刷装置2に出力するものである。画像処理装置4では、印刷モードとしてモノクロモードかカラーモードを選択可能になっている。また、モノクロモードにおいては、さらに、標準モノクロモードか省インクモノクロモードを選択可能になっている。標準モノクロモードは、ブラック(黒)インクのみを用いた通常のモノクロ印刷を行うモードである。省インクモノクロモードは、印刷装置2におけるブラックインクの使用量を低減可能とするために設けられたモードである。具体的には、省インクモノクロモードは、印刷対象の画像データにおける一部の色範囲に対して、印刷に用いるインクの使用量を標準モノクロモードの場合よりも低減するとともに、インク色をブラック(黒)から印刷装置2で使用可能な他の色に置き換えて印刷するモードである。
【0023】
画像処理装置4は、画像処理部11と、入力表示部12とを備える。
【0024】
画像処理部11は、画像読取装置3で生成された印刷対象の画像データに基づき、印刷モードに応じた印刷データを生成する。画像処理部11は、モノクロモード処理部21と、カラーモード処理部22とを備える。
【0025】
モノクロモード処理部21は、モノクロモードが設定されている場合において、画像読取装置3からの入力画像データに基づき、モノクロ印刷用の印刷データを生成する。モノクロモード処理部21は、設定に応じて、標準モノクロモード用または省インクモノクロモード用の印刷データを生成する。モノクロモード処理部21は、インク使用量算出部31と、低減処理部32と、印刷データ生成部33とを備える。
【0026】
インク使用量算出部31は、画像読取装置3で生成されたRGB形式の画像データに基づく通常のモノクロ印刷を行う場合における、画像データの各画素に対応するブラックインクの使用量相当値Ibを算出する。本実施の形態において、ブラックインクの使用量相当値Ibは、最大濃度のブラック(R,G,Bの値がすべて0)を印刷するためのブラックインクの使用量に対する、各画素の画素値(RGB値)に応じたブラックインクの使用量の割合を示す値とする。インク使用量算出部31は、請求項の記録材使用量算出部に相当する。
【0027】
低減処理部32は、入力画像データにおける色が、ブラックインクの使用量を低減する対象となる低減対象色範囲に含まれる色である画素に対して、ブラックインクの使用量相当値Ibを、インク使用量が所定の低減率で低減された使用量相当値Ib´に変換する。また、低減処理部32は、当該画素に対応するインクの色を、ブラックから印刷装置2で使用可能な他の色に置き換える。すなわち、低減処理部32は、入力画像データにおいて低減対象色範囲に含まれる色の画素に対応するインクの色をブラック以外の他の色に変更し、その色のインクの使用量相当値をIb´とする。
【0028】
印刷データ生成部33は、各画素に対応するインクの色および使用量相当値に基づき、印刷装置2に対応する形式の印刷データを生成する。具体的には、印刷データ生成部33は、画素ごとのブラックまたは他の色のインクの使用量相当値で表現した形式の画像データに対して中間調処理等を施し、印刷装置2の各色のインクジェットヘッドから各画素に吐出するインクのドロップ数を示すドロップデータである印刷データを生成する。インクのドロップ数は、例えば、0〜5ドロップの6段階で設定される。
【0029】
カラーモード処理部22は、カラーモードが設定されている場合において、画像読取装置3からの入力画像データに基づき、カラー印刷用の印刷データを生成する。
【0030】
入力表示部12は、ユーザの入力操作を受け付けるとともに、各種の入力画面等を表示するものである。入力表示部12は、ユーザが各種の入力操作を行うための操作ボタン、タッチパネル等、および各種の入力画面等を表示する液晶表示パネル等を備える。ユーザは、入力表示部12により、カラーモード、モノクロモード(標準モノクロモード、省インクモノクロモード)の設定操作を行うことができる。
【0031】
画像処理装置4は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置等を備えて構成される。CPUがハードディスク等の記憶装置に格納されたプログラムを実行することにより、画像処理部11の機能が実現される。
【0032】
次に、画像処理装置4の動作について説明する。
【0033】
モノクロモードにおける省インクモノクロモードが選択設定されている場合について説明する。図2は、画像処理装置4の省インクモノクロモードにおける処理のフローチャートである。
【0034】
画像読取装置3からRGB形式の画像データが入力されると、ステップS10において、インク使用量算出部31は、画像データにおけるライン番号を示す変数lに「1」を設定する。
【0035】
次いで、ステップS20において、インク使用量算出部31は、ライン上における画素番号を示す変数mに「1」を設定する。
【0036】
次いで、ステップS30において、インク使用量算出部31は、lライン目のm番目の画素(注目画素)の画素値(RGB値)に基づき、注目画素に対応するブラックインクの使用量相当値Ibを算出する。
【0037】
ここで、濃度が大きい画素ほど、モノクロ印刷で使用されるブラックインクは多くなる。また、有彩色の濃度は、ブルー、マゼンタ、レッドの色相では比較的大きく、イエロー、グリーン、シアンの色相では比較的小さい。なお、例えば、以下の式(1)により、濃度を示すグレー値Grが表される。このグレー値Grの値が小さいほど濃度が大きい。
【0038】
Gr=0.299R+0.587G+0.144B …(1)
そこで、本実施の形態において、インク使用量算出部31は、有彩色については、色相に応じて、モノクロ印刷時のブラックインクの使用量相当値Ibを決定する。また、無彩色については、インク使用量算出部31は、濃度に応じてブラックインクの使用量相当値Ibを決定する。
【0039】
具体的には、インク使用量算出部31は、有彩色については、図3においてL表色系のa平面で示す6つの色相範囲(レッド、イエロー、グリーン、シアン、ブルー、マゼンタ)ごとに、ブラックインクの使用量相当値Ibを予め設定しておく。例えば、レッドはIb=70%、イエローはIb=10%、グリーンはIb=40%、シアンはIb=30%、ブルーはIb=90%、マゼンタはIb=60%とする(公知の式(1)による算出)。なお、図3において、一点鎖線の直線が各色相範囲の境界を示し、彩度が小さい中心付近は無彩色となる。彩度が閾値以下である無彩色については、インク使用量算出部31は、濃度に応じたブラックインクの使用量相当値Ibを予め設定しておく。そして、インク使用量算出部31は、RGB値と、上記のように設定された使用量相当値Ibとの対応を示すルックアップテーブル(図示せず)を予め保持しておく。インク使用量算出部31は、このルックアップテーブルを参照して、注目画素のRGB値に基づき、注目画素に対応するブラックインクの使用量相当値Ibを取得する。
【0040】
なお、インク使用量算出部31は、上述のようなルックアップテーブルを用いるかわりに、計算式により、注目画素のRGB値からブラックインクの使用量相当値Ibを算出するようにしてもよい。
【0041】
次いで、ステップS40において、低減処理部32は、注目画素のRGB値に基づき、注目画素の色が、低減対象色範囲に含まれるか否かを判断する。RGB値から色を判定する方法には、公知の手法を用いることができる。低減対象色範囲としては、ブラックインクの使用量相当値Ibが大きく、インクの使用量の削減余地が大きい有彩色の色範囲が設定される。本実施の形態では、有彩色のなかで濃度が比較的大きい色範囲である、図4にドットハッチングで示すブルー、マゼンタ、レッドの範囲を、低減対象色範囲とする。
【0042】
注目画素の色が低減対象色範囲に含まれないと判断した場合(ステップS40:NO)、低減処理部32は、ステップS60の処理に進む。
【0043】
注目画素の色が低減対象色範囲に含まれると判断した場合(ステップS40:YES)、ステップS50において、低減処理部32は、ステップS30で算出された注目画素のブラックインクの使用量相当値Ibを、インク使用量が所定の低減率で低減された使用量相当値Ib´に変換する。低減率は、例えば、0.5とする。この場合、Ib´=(1−0.5)×Ibとなる。また、低減処理部32は、注目画素に対応するインクの色を、ブラックからマゼンタに置き換える。すなわち、低減処理部32は、注目画素に対応するインク色をマゼンタとし、その使用量相当値をIb´とする。マゼンタに置き換えるのは、低減対象色範囲に含まれ、かつ、印刷装置2で使用可能なインク色だからである。この後、低減処理部32は、ステップS60の処理に進む。
【0044】
ステップS60では、低減処理部32は、注目画素に対応する変数mが、1ラインにおける最終画素であることを示すMであるか否かを判断する。m=Mでないと低減処理部32が判断した場合(ステップS60:NO)、ステップS70において、インク使用量算出部31は、変数mに「1」を加え、その後、ステップS30の処理に戻る。
【0045】
m=Mであると判断した場合(ステップS60:YES)、ステップS80において、低減処理部32は、注目画素に対応する変数lが最終ラインであることを示すLであるか否かを判断する。l=Lでないと低減処理部32が判断した場合(ステップS80:NO)、ステップS90において、インク使用量算出部31は、変数lに「1」を加え、その後、ステップS20の処理に戻る。
【0046】
l=Lであると低減処理部32が判断した場合(ステップS80:YES)、ステップS100において、印刷データ生成部33は、画素ごとのブラックまたはマゼンタのインクの使用量相当値で表現した形式の画像データに対して中間調処理等を施し、ドロップデータである印刷データを生成する。そして、印刷データ生成部33は、この省インクモノクロモード用の印刷データを印刷装置2へと出力する。
【0047】
印刷装置2は、画像処理装置4から入力された省インクモノクロモード用の印刷データに基づき、ブラックインクとマゼンタインクとを用いた省インクモノクロ印刷を行う。
【0048】
上記の処理により生成された省インクモノクロモード用の印刷データによれば、印刷対象の画像データにおける低減対象色範囲(ブルー、マゼンタ、レッド)内の色が、標準モノクロモードの場合のブラックインクの使用量に対して、所定の低減率で低減された使用量のマゼンタインクで印刷される。なお、入力画像データがモノクロの画像データである場合は、上述の省インクモノクロモードの処理で生成される印刷データは、標準モノクロモードの場合と同様のものとなり、この印刷データによって、ブラックインクのみを用いたモノクロ印刷が行われる。
【0049】
インク使用量の低減率は、印刷対象の画像データにおける低減対象色範囲内の色の印刷にマゼンタのインクを用いたとしても、標準モノクロモードの場合よりも印刷コストが低くなるような値に設定される。これによれば、印刷画質の低下を抑えつつ、印刷装置2におけるランニングコストが低減されるようにインクの使用量を抑制することが可能になる。ただし、この場合に限定されず、例えば、インク使用量の低減率は、ユーザにより設定した値にすることも可能である。また、印刷装置2におけるブラックインクの残量に応じて、インク使用量の低減率を定めるようにしてもよい。
【0050】
モノクロモードの標準モノクロモードが選択設定されている場合は、モノクロモード処理部21は、低減処理部32が行う図2のステップS40,S50の処理を省略する。これにより、モノクロモード処理部21は、標準モノクロモード用の印刷データを生成し、これを印刷装置2へと出力する。これにより、印刷装置2は、ブラックインクのみを用いた通常のモノクロ印刷を行う。
【0051】
なお、モノクロモード処理部21は、省インクモノクロモードが設定されている場合でも、マゼンタインクの残量が所定量未満で省インクモノクロモード用の印刷が不可能であれば、上記の標準モノクロモードと同様の処理を行う。
【0052】
カラーモードが選択設定されている場合は、カラーモード処理部22が、画像読取装置3からの入力画像データに基づき、カラー印刷用の印刷データを生成し、これを印刷装置2へと出力する。これにより、印刷装置2においてカラー印刷が行われる。
【0053】
以上説明したように、画像処理装置4のモノクロモード処理部21は、省インクモノクロモードが設定されている場合、入力画像データにおける色が低減対象色範囲に含まれる色である画素に対して、ブラックインクの使用量相当値Ibを、インク使用量が低減された使用量相当値Ib´に変換する。また、モノクロモード処理部21は、当該画素に対応するインクの色を、ブラックからマゼンタに置き換える。これにより、省インクモノクロモードでは、画像内において標準モノクロモードであれば多くのブラックインクが使用される部分が、それより少ない使用量のマゼンタインクで印刷される。これにより、印刷装置2におけるブラックインクの使用量を低減することが可能となる。
【0054】
一方、省インクモノクロモードで印刷された印刷物では、マゼンタインクで印刷された部分は、色味によって識別可能となる。このため、省インクモノクロモードの印刷物は、十分な視認性を保持する。また、画像処理装置4では、例えば、パターン間引き、画素に応じてインクを全く吐出しない、全体的に薄くするような印刷画質を低下させるようなインク使用量削減を行わないので、濃度差が減少して階調性が損なわれる等のような、印刷画質が低下することは抑えられる。また、画像処理装置4では、印刷対象の画像データにおける無彩色の部分は変化させないため、ブラックで表現された文字の可読性を維持できる。
【0055】
このように、本実施の形態の画像処理装置4によれば、印刷装置2における印刷画質の低下を抑えつつ、ブラックインクの使用量を低減することが可能となる。
【0056】
本実施の形態では、低減対象色範囲をブルー、マゼンタ、レッドの範囲としたが、これに限らない。また、低減対象色範囲を調整可能としてもよい。例えば、低減処理部32が、ユーザによる入力表示部12に対する操作に応じて低減対象色範囲を調整するようにしてもよい。これにより、画像処理装置4は、ユーザの希望を印刷結果に反映できるとともに、インクの使用量を調整できる。
【0057】
また、本実施の形態では、ブラックインクから置き換えるインク色をマゼンタインクとしたが、これに限らない。また、ブラックインクから置き換えるインク色は1色に限らない。例えば、低減対象色範囲内の色に応じて、異なる色に置き換えるようにしてもよい。
【0058】
また、インク使用量の低減率を調整可能としてもよい。例えば、低減処理部32が、ユーザによる入力表示部12に対する操作に応じて低減率を調整するようにしてもよい。これにより、画像処理装置4は、インクの使用量を調整できる。
【0059】
また、印刷対象の画像データにおいて、インク使用量の低減率が一律ではなく、画素の属性に応じて低減率を変えるようにしてもよい。例えば、文字属性の画素については、写真属性の画素よりも低減率を小さくして、文字が写真より高濃度で印刷されるようにしてもよい。これにより、印刷対象の原稿の内容に応じて印刷画質を調整することができる。
【0060】
また、画像処理装置4は、印刷装置2のインク残量に応じて、モノクロモードにおける標準モノクロモードと省インクモノクロモードとを切り替えるようにしてもよい。具体的には、画像処理装置4は、印刷装置2でブラックのインク残量が所定量以上のときは標準モノクロモードを選択し、ブラックのインク残量が所定量未満のときは省インクモノクロモードを選択するようにしてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、画像処理装置4が画像読取装置3から入力される画像データに対する画像処理を行う場合について説明したが、PC(パーソナルコンピュータ)で生成された画像データに対する画像処理を行う場合にも本発明は適用可能である。
【0062】
また、本実施の形態では、印刷装置2が、記録材としてインクを用いるインクジェット方式の印刷装置であるとして説明したが、他の方式の印刷装置である場合にも本発明は適用できる。
【0063】
また、本実施の形態では、印刷装置2が4色のインク(記録材)を用いて印刷を行うものであるとして説明したが、これに限らず、ブラックと少なくとも1つの他の色の記録材を用いて印刷を行う印刷装置に本発明は適用可能である。
【0064】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 印刷システム
2 印刷装置
3 画像読取装置
4 画像処理装置
11 画像処理部
12 入力表示部
21 モノクロモード処理部
22 カラーモード処理部
31 インク使用量算出部
32 低減処理部
33 印刷データ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒および少なくとも1つの他の色の記録材を使用して印刷可能な印刷装置に印刷データを出力する画像処理装置であって、
印刷対象の画像データに基づくモノクロ印刷を行う場合における前記画像データの各画素に対応する黒の記録材の使用量相当値を算出する記録材使用量算出部と、
前記画像データにおける色が前記黒の記録材の使用量を低減する対象となる低減対象色範囲に含まれる色である画素に対して、前記記録材使用量算出部で算出された黒の記録材の使用量相当値を、記録材の使用量が所定の低減率で低減された使用量相当値に変換するとともに、当該画素に対応する記録材の色を、黒から前記印刷装置で使用可能な他の色に置き換える低減処理部と、
各画素に対応する記録材の色および使用量相当値に基づき、前記印刷装置に対応する形式の印刷データを生成する印刷データ生成部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記低減処理部は、前記低減対象色範囲を調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記低減処理部は、前記低減率を調整可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記低減処理部は、前記画像データにおける画素の属性に応じて前記低減率を変えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46329(P2013−46329A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184335(P2011−184335)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】