説明

画像判定装置

【課題】カラーモードの多色印刷において原稿の色の再現性が不十分な印刷物の低減を図る。
【解決手段】画像判定装置11は、原稿の画像データにおける各画素の色が、カラーモードの多色印刷で使用可能な複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色であるか否かを判断する印刷可否判断部21と、画像データの有効画素数に対する、複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色の画素数の割合を用いて、画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードの多色印刷および単色モードの印刷のいずれであるかを判定するモード判定部23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿色の判定を行う画像判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿がカラー原稿か白黒原稿かを自動で判定する自動原稿色判定(ACS)機能が知られている。ACS機能では、原稿の画像データを構成する画素がカラー画素か白黒画素かを判定し、この判定結果を用いて原稿がカラー原稿か白黒原稿かを判定している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ACS機能は、印刷枚数に応じて課金を行い、カラーモードはモノクロモードよりも印刷物1枚あたりに高額な料金が課金される課金システムと組み合わせて使用されることがある。この課金システムを採用した印刷装置では、ACS機能による判定結果に応じて、カラーモードまたはモノクロモードでの印刷が行われる。ACS機能を利用することで、ユーザがカラーモードかモノクロモードかを設定する手間を省くことができる。また、ユーザがカラーかモノクロかを判断しにくい原稿の場合に、その判断を課金システムでフォローすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−153723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カラーモードにおいて、カラー原稿を多色印刷する機能を有する印刷装置がある。多色印刷は、フルカラー印刷とモノクロ印刷との中間的な印刷方法であり、2色印刷等の、少ない色数での印刷を行うものである。
【0006】
ここで、例えば、カラー原稿を黒、赤の2色のインクを用いて2色擬似カラー印刷する印刷装置において、原稿の画像データを公知の手法で色分解すると、原稿における青や緑の画素が黒インクで印刷されることになる。このため、原稿が黒、赤、青で構成されている場合、原稿における青は印刷物で再現されない。同様に、黒、青の2色のインクを用いた2色印刷では、原稿における赤は印刷物で再現されない。
【0007】
このような2色印刷でも、上記の課金システムでは、カラーモードでの印刷として高額な料金が課金される。しかしながら、上記のような、原稿の色が十分に再現されていない印刷物では、カラーモードによる印刷物としては不十分であった。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、カラーモードの多色印刷において原稿の色の再現性が不十分な印刷物を低減できる画像判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像判定装置の第1の特徴は、原稿の画像データにおける各画素の色が、カラーモードの多色印刷で使用可能な複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色であるか否かを判断する印刷可否判断部と、前記画像データの有効画素数に対する、前記複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色の画素数の割合を用いて、前記画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードの多色印刷および単色モードの印刷のいずれであるかを判定するモード判定部とを備えることにある。
【0010】
本発明に係る画像判定装置の第2の特徴は、原稿の画像データにおける各画素の色が、カラーモードの多色印刷で使用可能な複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色であるか否かを判断する印刷可否判断部と、前記画像データの有効画素数に対する、前記複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色の画素数の割合を用いて、および、前記画像データを前記複数の印刷色により印刷する場合に各画素に対して使用される印刷色を割り当てたときの、各印刷色に対応する画素数の偏りを示す値を用いて、前記画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードの多色印刷および単色モードの印刷のいずれであるかを判定するモード判定部とを備えることにある。
【0011】
本発明に係る画像判定装置の第3の特徴は、前記モード判定部により前記画像データに対して実行すべき印刷が単色モードの印刷であると判定された場合に、判定結果に従い単色モードの印刷を実行するか、カラーモードの多色印刷を実行するかをユーザに選択させるための選択画面を表示する表示部をさらに備えることにある。
【0012】
本発明に係る画像判定装置の第4の特徴は、前記印刷可否判断部は、前記モード判定部により前記画像データに対して実行すべき印刷が単色モードの印刷であると判定された場合に、カラーモードの多色印刷が可能になるように前記画像データの色変換を行うことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像判定装置の第1の特徴によれば、画像データの有効画素数に対する、複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色の画素数の割合を用いて、画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードの多色印刷および単色モードの印刷のいずれであるかを判定する。これにより、カラーモードの多色印刷において原稿の色の再現性が不十分な印刷物を低減できる。
【0014】
本発明に係る画像判定装置の第2の特徴によれば、画像データの有効画素数に対する、複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色の画素数の割合、および、画像データを複数の印刷色により印刷する場合に各画素に対して使用される印刷色を割り当てたときの、各印刷色に対応する画素数の偏りを示す値を用いて、画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードの多色印刷および単色モードの印刷のいずれであるかを判定する。これにより、原稿の色が十分に再現され、かつ、印刷色に偏りが少ない、多色印刷に適した原稿のみカラーモードの多色印刷を実行させることが可能となる。したがって、カラーモードの多色印刷において原稿の色の再現性が不十分な印刷物を低減するとともに、多色印刷の必要性が小さい印刷物を低減することができる。
【0015】
本発明に係る画像判定装置の第3の特徴によれば、選択画面を表示部に表示することにより、モノクロ印刷または2色印刷をユーザに選択させることができ、利便性が向上する。
【0016】
本発明に係る画像判定装置の第4の特徴によれば、画像データに対して実行すべき印刷が単色モードの印刷であると判定された場合に、カラーモードの多色印刷が可能になるように画像データの色変換を行うことで、一旦、実行すべき印刷が単色モードの印刷であると判定された場合でも、多色印刷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態に係る印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図2】印刷可否判断用テーブル31の一例を示す図である。
【図3】自動原稿色判定モードが選択されている場合の画像処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】自動原稿色判定モードが選択されている場合の画像処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】選択画面の一例を示す図である。
【図6】(a)は第1例の原稿を示す図、(b)は(a)に示す原稿を2色印刷した印刷物を示す図である。
【図7】(a)は第2例の原稿を示す図、(b)は(a)に示す原稿を2色印刷した印刷物を示す図である。
【図8】(a)は第3例の原稿を示す図、(b)は(a)に示す原稿を2色印刷した印刷物を示す図である。
【図9】(a)は第4例の原稿を示す図、(b)は(a)に示す原稿を2色印刷した印刷物を示す図である。
【図10】第1例〜第4例のモード判定結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、印刷システム1は、印刷装置2と、画像処理装置3とを備える。
【0020】
印刷装置2は、2つのドラムを有する孔版印刷装置からなる。2つのドラムは、互いに異なる色のインクに対応し、印刷装置2は、2色印刷可能である。ドラムは他の色に対応するものに交換可能であり、2色印刷に用いるインク色(印刷色)の組み合わせは変更可能になっている。また、印刷装置2は、2つのドラムのうちの1つのみを用いてモノクロ印刷を行うことが可能である。
【0021】
画像処理装置3は、印刷対象の原稿の画像データに基づき、印刷装置2で印刷に用いられる形式の印刷データを生成する。印刷対象の原稿の画像データは、スキャナ装置で原稿を読み取って生成されたRGB形式の画像データである。画像処理装置3では、自動原稿色判定モードが選択可能になっている。自動原稿色判定モードにおいては、画像処理装置3は、印刷対象の原稿の画像データに基づき、原稿がカラーモードおよびモノクロモードのいずれでの印刷に適しているかを判定し、この判定結果に応じた印刷データを印刷装置2へと出力する。画像処理装置3は、画像判定装置11と、画像処理部12と、通信部13とを備える。
【0022】
画像判定装置11は、自動原稿色判定モードが選択された場合において、印刷対象の原稿の画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードおよびモノクロモードのいずれの印刷であるかを判定する。本実施の形態では、カラーモードの印刷は、印刷装置2における2色印刷である。画像判定装置11は、印刷可否判断部21と、記憶部22と、モード判定部23と、入力部24と、表示部25とを備える。
【0023】
印刷可否判断部21は、後述の印刷可否判断用テーブル31を参照して、印刷対象の原稿の画像データにおける各画素の色が、カラーモードの2色印刷で使用可能な2つのインク色の組み合わせで印刷可能(再現可能)な色であるか否かを判断する。印刷可能(再現可能)な色とは、原稿における色に対して、ほぼ同じ色に限らず、2色のインクを重ねることやインク量を調整することなどによりユーザが違和感を覚えない程度に印刷物において表現される色を含む。そして、印刷可否判断部21は、画像データの有効画素数に対する、2つのインク色の組み合わせで印刷可能(再現可能)な色の画素数の割合である色再現率Rcを算出する。有効画素は、白でない画素である。また、印刷可否判断部21は、画像データを2色印刷する場合に各画素に対して使用されるインク色を割り当てたときの、各インク色に対応する画素数の偏りを示す値である偏り値Bを算出する。
【0024】
記憶部22は、印刷可否判断用テーブル31を記憶している。印刷可否判断用テーブル31の一例を図2に示す。印刷可否判断用テーブル31は、2色印刷で使用可能な2つの インク色の組み合わせにおいて、原稿における各色が印刷可能であるか否かを示すテーブルである。印刷可否判断用テーブル31は、それぞれのインク色の組み合わせにおいて、公知の色分解の手法を用いて実験的に予め作成されたものである。図2の印刷可否判断用テーブル31では、インク色の組み合わせとして、黒+赤、赤+青、赤+緑、の3つが示されているが、他の組み合わせも可能である。また、図2の印刷可否判断用テーブル31では、原稿における色として、無彩色である黒(グレー)、および有彩色である赤、緑、青の4色としているが、これに限らず、例えば、より細分化してもよい。
【0025】
モード判定部23は、上述の色再現率Rcおよび偏り値Bを用いて、印刷対象の原稿の画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードの2色印刷およびモノクロモードの印刷のいずれであるかを判定する。具体的には、モード判定部23は、色再現率Rcが所定の閾値Rcth以下である場合、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定する。また、モード判定部23は、色再現率Rcが閾値Rcthより大きい場合において、偏り値Bが所定の閾値Bth1より大きく閾値Bth2未満の範囲内である場合、実行すべき印刷がカラーモードの2色印刷であると判定する。一方、色再現率Rcが閾値Rcthより大きい場合において、偏り値Bが閾値Bth1より大きく閾値Bth2未満の範囲内でない場合、モード判定部23は、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定する。
【0026】
入力部24は、ユーザによる入力操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。入力部24は、操作ボタン、タッチパネル等を有する。ユーザは、入力部24を操作することにより、自動原稿色判定モードの選択指示が可能である。
【0027】
表示部25は、各種の画面等を表示するものである。表示部25は、液晶表示パネル等からなる。
【0028】
画像処理部12は、印刷対象の原稿の画像データに基づき、印刷装置2で印刷に用いられる形式の印刷データを生成する。カラーモードが選択されている場合、画像処理部12は、原稿の画像データから印刷装置2での2色印刷用の印刷データを生成する。モノクロモードが選択されている場合、画像処理部12は、原稿の画像データから印刷装置2でのモノクロ印刷用の印刷データを生成する。自動原稿色判定モードが選択されている場合、画像処理部12は、モード判定部23の判定結果に応じて、2色印刷用の印刷データまたはモノクロ印刷用の印刷データを生成する。なお、自動原稿色判定モードが選択されている場合、画像処理部12は、2色印刷用の印刷データおよびモノクロ印刷用の印刷データを生成しておき、これらからモード判定部23の判定結果に応じて一方を選択して印刷装置2へと出力するようにしてもよい。
【0029】
通信部13は、画像処理装置3を印刷装置2との間でデータの送受信可能とするものである。
【0030】
画像処理装置3は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置等を備えて構成される。CPUがハードディスク等の記憶装置に格納されたプログラムを実行することにより、画像処理部12、印刷可否判断部21、モード判定部23の機能が実現される。記憶部22は、ハードディスク等の記憶装置により実現される。
【0031】
次に、画像処理装置3の動作について説明する。
【0032】
画像処理装置3の特徴は、自動原稿色判定モードが選択されている場合の動作にあるので、これについて説明する。図3、図4は、自動原稿色判定モードが選択されている場合の画像処理装置3の動作を説明するためのフローチャートである。
【0033】
スキャナ装置から印刷対象の原稿の画像データが入力されると、ステップS10において、印刷可否判断部21は、印刷装置2から、2色印刷で使用可能な2つのインク色を示す情報を取得する。2色印刷で使用可能な2つのインク色は、印刷装置2にセットされている2つのドラムに対応するインク色である。
【0034】
次いで、ステップS20において、印刷可否判断部21は、カウント値Ck1,Ck2,Cc,Cgにそれぞれ「0」を設定する。カウント値Ck1は、2色印刷において2つのインク色のうちの一方のインク色である第1インク色が使用される画素数のカウント値である。カウント値Ck2は、2色印刷において他方のインク色である第2インク色が使用される画素数のカウント値である。カウント値Ccは、2色印刷で使用可能な2つのインク色の組み合わせで印刷可能な色をした画素数のカウント値である。カウント値Cgは、画像データにおける有効画素数のカウント値である。
【0035】
次いで、ステップS30において、印刷可否判断部21は、画像データにおけるライン番号を示す変数lに「1」を設定する。
【0036】
次いで、ステップS40において、印刷可否判断部21は、ライン上における画素番号を示す変数mに「1」を設定する。
【0037】
次いで、ステップS50において、印刷可否判断部21は、lライン目のm番目の画素である注目画素の色相角H、彩度S、輝度Yを算出する。これらを算出する方法は特に限定されず、印刷可否判断部21は、各種の公知の手法を用いて、注目画素のRGB値から注目画素の色相角H、彩度S、輝度Yを算出することができる。
【0038】
次いで、ステップS60において、印刷可否判断部21は、注目画素が有効画素であるか否かを判断する。具体的には、印刷可否判断部21は、注目画素の彩度Sが閾値Sth未満、かつ、輝度Yが閾値Yth以上の場合は、注目画素が白であり、有効画素でないと判断する。注目画素が有効画素でないと判断した場合(ステップS60:NO)、印刷可否判断部21は、後述する図4のステップS140の処理に進む。
【0039】
注目画素が有効画素であると判断した場合(ステップS60:YES)、ステップS70において、印刷可否判断部21は、カウント値Cgに「1」を加算する。
【0040】
次いで、ステップS80において、印刷可否判断部21は、注目画素の印刷に第1インク色が使用されるか否かを判断する。具体的には、印刷可否判断部21は、注目画素の色に基づき、公知の色分解の手法により、注目画素に対して、第1インク色および第2インク色の少なくともいずれか一方を、印刷に使用する色として割り当てる。これに基づき、印刷可否判断部21は、注目画素の印刷に第1インク色が使用されるか否かを判断する。ここで、注目画素の色は、色相角H、彩度S、輝度Yにより判断される。彩度Sが閾値Sth未満、かつ、輝度Yが閾値Yth未満の場合、注目画素の色は、輝度Yの値に応じて黒またはグレーとなる。彩度Sが閾値Sth以上の場合、注目画素の色は有彩色であり、色相角Hに応じてその色が判断される。
【0041】
注目画素の印刷に第1インク色は使用されないと判断した場合(ステップS80:NO)、印刷可否判断部21は、ステップS100の処理に進む。注目画素の印刷に第1インク色が使用されると判断した場合(ステップS80:YES)、ステップS90において、印刷可否判断部21は、カウント値Ck1に「1」を加算し、その後、ステップS100の処理に進む。
【0042】
ステップS100では、印刷可否判断部21は、注目画素の印刷に第2インク色が使用されるか否かを判断する。注目画素の印刷に第2インク色は使用されないと判断した場合(ステップS100:NO)、印刷可否判断部21は、ステップS120の処理に進む。注目画素の印刷に第2インク色が使用されると判断した場合(ステップS100:YES)、ステップS110において、印刷可否判断部21は、カウント値Ck2に「1」を加算し、その後、ステップS120の処理に進む。
【0043】
ステップS120では、印刷可否判断部21は、印刷可否判断用テーブル31を参照して、注目画素の色は印刷装置2での2色印刷により印刷可能な色であるか否かを判断する。例えば、図2に示すように、2色印刷に使用されるインク色の組み合わせが黒+赤の場合、注目画素の色が赤や黒(グレー)であれば、2色印刷により印刷可能な色であると判断される。一方、例えば、注目画素の色が緑や青の場合は、印刷可能な色ではないと判断される。ここで、図2の印刷可否判断用テーブル31を用いる場合、印刷可否判断部21は、注目画素が有彩色のときは、その色相角Hに応じて赤、緑、青のいずれかの色に分け、その注目画素の色が印刷可能な色であるか否かを判断する。
【0044】
注目画素の色が2色印刷で印刷可能な色ではないと判断した場合(ステップS120:NO)、印刷可否判断部21は、図4のステップS140の処理に進む。注目画素の色が2色印刷で印刷可能な色であると判断した場合(ステップS120:YES)、印刷可否判断部21は、図4のステップS130において、カウント値Ccに「1」を加算し、その後、ステップS140の処理に進む。
【0045】
ステップS140では、印刷可否判断部21は、変数mが1ラインにおける最終画素であることを示すMであるか否かを判断する。m=Mでないと判断した場合(ステップS140:NO)、ステップS150において、印刷可否判断部21は、変数mに「1」を加え、その後、図3のステップS50の処理に戻る。
【0046】
m=Mであると判断した場合(ステップS140:YES)、ステップS160において、印刷可否判断部21は、変数lが最終ラインであることを示すLであるか否かを判断する。l=Lでないと判断した場合(ステップS160:NO)、ステップS170において、印刷可否判断部21は、変数lに「1」を加え、その後、図3のステップS40の処理に戻る。
【0047】
l=Lであると判断した場合(ステップS160:YES)、ステップS180において、印刷可否判断部21は、色再現率Rcおよび偏り値Bを算出する。色再現率Rcは、以下の式(1)により算出される。偏り値Bは、以下の式(2)により算出される。
【0048】
Rc=Cc/Cg …(1)
B=Ck1/(Ck1+Ck2) …(2)
次いで、ステップS190において、モード判定部23は、ステップS180で算出された色再現率Rcが閾値Rcthより大きいか否かを判断する。閾値Rcthは、インク色の組み合わせやインクのランニングコスト等を考慮して予め設定されるものであり、例えば、Rcth=0.5(50%)とすることができる。
【0049】
色再現率Rcが閾値Rcth以下であると判断した場合(ステップS190:NO)、モード判定部23は、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定し、後述するステップS220の処理に進む。
【0050】
色再現率Rcが閾値Rcthより大きいと判断した場合(ステップS190:YES)、ステップS200において、モード判定部23は、偏り値Bが所定の閾値Bth1より大きく閾値Bth2未満の範囲内であるか否か、すなわち、偏り値BがBth1<B<Bth2を満たすか否かを判断する。閾値Bth1,Bth2は、予め設定されるものであり、例えば、Bth1=0.05(5%),Bth2=0.95(95%)とすることができる。
【0051】
偏り値BがBth1<B<Bth2を満たさないと判断した場合(ステップS200:NO)、モード判定部23は、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定し、後述するステップS220の処理に進む。
【0052】
偏り値BがBth1<B<Bth2を満たすと判断した場合(ステップS200:YES)、モード判定部23は、実行すべき印刷がカラーモードの2色印刷であると判定し、ステップS210において、画像処理部12に2色印刷用の印刷データを生成させる。そして、画像処理部12が、2色印刷用の印刷データを、通信部13を介して印刷装置2へと出力する。これにより、印刷装置2において、2色印刷が実行される。
【0053】
一方、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定した場合(ステップS190:NO、ステップS200:NO)、ステップS220において、モード判定部23は、表示部25に選択画面を表示させる。ここで表示される選択画面の一例を図5に示す。
【0054】
図5に示す選択画面40は、モード判定部23の判定結果により実行すべき印刷としてモノクロモードの印刷を推奨するとともに、その判定結果に従い単色モードの印刷を実行するか、カラーモードの多色印刷を実行するかをユーザに選択させるための画面である。図5に示すように、選択画面40には、モノクロモードの印刷(モノクロ印刷)を推奨するメッセージと、モノクロ印刷の指示を受け付けるための「はい」ボタン41と、カラーモードの2色印刷の指示を受け付けるための「いいえ」ボタン42とが表示される。ユーザは、「はい」ボタン41または「いいえ」ボタン42を押下する操作を行うことで、モノクロ印刷またはカラーモードの2色印刷を選択できる。
【0055】
次いで、ステップS230において、入力部24からの操作信号に基づき、「はい」ボタン41が押下されてモノクロ印刷が指示されたか否かを判断する。モノクロ印刷が指示されたと判断した場合(ステップS230:YES)、ステップS240において、モード判定部23は、画像処理部12にモノクロ印刷用の印刷データを生成させる。そして、画像処理部12が、モノクロ印刷用の印刷データを、通信部13を介して印刷装置2へと出力する。これにより、印刷装置2において、モノクロ印刷が実行される。ここで、印刷装置2に黒インクに対応したドラムがセットされていない場合、すなわち、第1インク色および第2インク色がいずれも黒でない場合、ユーザは、少なくとも一方のドラムを黒インクに対応したドラムに交換する必要がある。
【0056】
「いいえ」ボタン42が押下されてカラーモードの2色印刷が指示されたと判断した場合(ステップS230:NO)、モード判定部23は、ステップS210の処理を行う。これにより、印刷装置2において、2色印刷が実行される。
【0057】
以上のような処理により、色再現率Rcが小さく閾値Rcth以下である場合、印刷対象の原稿がカラー原稿であっても、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定される。また、色再現率Rcが閾値Rcthより大きくても、Bth1<B<Bth2が満たされない場合、つまり、各インク色が使用される画素数に偏りが大きい場合、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定される。色再現率Rcが閾値Rcthより大きく、かつ、Bth1<B<Bth2が満たされる場合、実行すべき印刷がカラーモードの2色印刷であると判定される。
【0058】
以下、原稿の例を用いて説明する。図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)にそれぞれ示すような第1例〜第4例の原稿を、黒と赤を使用可能なインク色として、公知の色分解を行って2色印刷する場合、それぞれ図6(b)、図7(b)、図8(b)、図9(b)のような印刷物が得られる。ここで、色再現率の閾値Rcth=0.5、偏り値の閾値Bth1=0.05,Bth2=0.95とする。
【0059】
図6(a),(b)に示す第1例では、図10に示すように、図6(a)の原稿において、黒と赤とがそれぞれ0.5(50%)の割合で使用されている。そして、2色印刷において、全有効画素数に対する黒インクに割り当てられる画素数の割合Rbと、赤インクに割り当てられる画素数の割合Rrとが略等しく、Rb=Rr=0.5となる。この場合、偏り値B=0.5となる。また、図6(b)に示すように、図6(a)の原稿の色がすべて印刷されるため、色再現率Rc=1となる。このように、第1例では、Rc>Rcth,Bth1<B<Bth2がともに満たされるので、実行すべき印刷(推奨モード)はカラーモードの2色印刷であると判定される。
【0060】
図7(a),(b)に示す第2例は、原稿がモノクロであり、黒インクのみで印刷される。この第2例では、図10に示すように、Rb=1,Rr=0,Rc=1となる。そして、第1インク色を黒とすると、偏り値B=1となる。このように、第2例では、Rc>Rcthは満たされているが、Bth1<B<Bth2が満たされず、すべき印刷はモノクロモードの印刷であると判定される。
【0061】
図8(a),(b)に示す第3例では、原稿に青が含まれている。図8(a)の原稿における各色の割合は、図10に示すように、黒が0.2(20%)、赤が0.2(20%)、青が0.6(60%)である。原稿の青の画素は、黒と赤の2色印刷において、図8(b)に示すように、黒インクで印刷される。このため、第3例では、図10に示すように、Rb=0.8,Rr=0.2となり、偏り値B=0.8となる。また、図8(b)に示すように、原稿の青は印刷されず、黒と赤のみが原稿の通り印刷されるため、色再現率Rc=0.4となる。このように、第3例では、Rc>Rcthが満たされず、印刷物は、原稿とは大きく色合いが異なったものとなっている。このため、第3例では、実行すべき印刷はモノクロモードの印刷であると判定される。
【0062】
図9(a),(b)に示す第4例では、原稿の大部分が黒であり、一部に赤が含まれている。図10に示すように、図9(a)の原稿における黒の割合は0.95(95%)、赤の割合は0.05(5%)である。この第4例では、図10に示すように、Rb=0.95,Rr=0.05,Rc=1となる。したがって、偏り値B=0.95となる。このように、第4例では、Rc>Rcthは満たされているが、Bth1<B<Bth2が満たされない。このため、第4例では、原稿はカラー原稿であるが、使用されるインク色の偏りが大きいため、実行すべき印刷はモノクロモードの印刷であると判定される。
【0063】
以上説明したように、画像判定装置11では、印刷可否判断部21が色再現率Rcおよび偏り値Bを算出する。そして、モード判定部23は、色再現率Rcおよび偏り値Bを用いて、印刷対象の原稿の画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードの2色印刷およびモノクロモードの印刷のいずれであるかを判定する。これにより、画像判定装置11によれば、原稿の色が十分に再現され、かつ、印刷色に偏りが少ない、2色印刷に適した原稿のみカラーモードの2色印刷を実行させることが可能となる。したがって、カラーモードの2色印刷において原稿の色の再現性が不十分な印刷物を低減するとともに、2色印刷の必要性が小さい印刷物を低減することができる。この結果、印刷装置2での印刷コストを抑えることができる。
【0064】
また、モード判定部23が画像データに対して実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定した場合、選択画面40を表示部25に表示させる。これにより、原稿がカラーであったとしても実行すべき印刷としてモノクロモードの印刷を推奨しつつ、モノクロ印刷または2色印刷をユーザに選択させることができる。この結果、利便性が向上する。
【0065】
なお、偏り値Bの算出、およびこれを用いた判断(ステップS200)を省略してもよい。すなわち、モード判定部23は、Rc>Rcthである場合、偏り値Bに関わらず、実行すべき印刷がカラーモードの2色印刷であると判定し、Rc≦Rcthである場合、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定するようにしてもよい。このようにしても、カラーモードの2色印刷において原稿の色の再現性が不十分な印刷物を低減する効果が得られる。
【0066】
また、モード判定部23により、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定された場合に、印刷可否判断部21が、カラーモードの2色印刷が可能になるように画像データの色変換を行うようにしてもよい。例えば、有効画素の色が黒か青であり、黒の画素数と青の画素数が略等しい印刷対象の原稿の画像データに対し、2色印刷に用いられるインク色が黒と赤である場合、公知の色分解を行って2色印刷すれば、原稿の青は黒インクで印刷されることになる。このため、印刷物は黒1色で印刷されることになる。したがって、この場合、偏り値B=1となり、モード判定部23は、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定する。そこで、印刷可否判断部21は、印刷対象の原稿の画像データにおける青の画素を赤に色変換する。そして、印刷可否判断部21は、色変換後の画像データから、色再現率Rcおよび偏り値Bを算出する。色変換後の画像データは画像処理部12へと送られる。
【0067】
上記の色変換後の画像データによれば、前述の図6(a),(b)に示した第1例と同様に、色再現率Rc=1、偏り値B=0.5となる。これにより、モード判定部23が、実行すべき印刷がカラーモードの2色印刷であると判定する。そして、画像処理部12が、色変換後の画像データに基づいて2色印刷用の印刷データを生成し、これを印刷装置2に出力する。この結果、印刷装置2で黒と赤の2色印刷が実行される。これにより、一旦、実行すべき印刷がモノクロモードの印刷であると判定された場合でも、2色印刷が可能となる。
【0068】
上述の実施の形態では、実行すべき印刷がカラーモードの2色印刷でない場合、黒インクのみを用いるモノクロモードの印刷としたが、黒以外の1色を用いて印刷する場合も含めた単色モードの印刷としてもよい。この場合、例えば、原稿の画像データにおいて画素数が最も多い色のインクを用いた単色モードの印刷とすればよい。
【0069】
また、本実施の形態では、印刷装置2が孔版印刷装置であるとしたが、他の印刷方式でも本発明は適用可能である。
【0070】
また、本実施の形態では、カラーモードの印刷が2色印刷である場合について説明したが、3色印刷等も含めた多色印刷において本発明は適用可能である。
【0071】
また、本実施の形態では、印刷対象の原稿の画像データは、スキャナ装置で生成されたものであるとしたが、プリンタドライバで生成されたページ記述言語(PDL:Page Description Language)がラスタライズされた画像データであってもよい。この場合、PDLにより自動原稿色判定モードの選択が指示される。
【0072】
また、印刷装置2に対応したプリンタドライバを備えるPC(パーソナルコンピュータ)で画像処理装置3を構成し、アプリケーションで生成された画像データを印刷対象としてもよい。この場合、画像処理部12、印刷可否判断部21、モード判定部23がプリンタドライバの機能として実現される。また、プリンタドライバにおいて、自動原稿色判定モードの選択が指示される。
【0073】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 印刷システム
2 印刷装置
3 画像処理装置
11 画像判定装置
12 画像処理部
13 通信部
21 印刷可否判断部
22 記憶部
23 モード判定部
24 入力部
25 表示部
31 印刷可否判断用テーブル
40 選択画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像データにおける各画素の色が、カラーモードの多色印刷で使用可能な複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色であるか否かを判断する印刷可否判断部と、
前記画像データの有効画素数に対する、前記複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色の画素数の割合を用いて、前記画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードの多色印刷および単色モードの印刷のいずれであるかを判定するモード判定部と
を備えることを特徴とする画像判定装置。
【請求項2】
原稿の画像データにおける各画素の色が、カラーモードの多色印刷で使用可能な複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色であるか否かを判断する印刷可否判断部と、
前記画像データの有効画素数に対する、前記複数の印刷色の組み合わせで印刷可能な色の画素数の割合を用いて、および、前記画像データを前記複数の印刷色により印刷する場合に各画素に対して使用される印刷色を割り当てたときの、各印刷色に対応する画素数の偏りを示す値を用いて、前記画像データに対して実行すべき印刷が、カラーモードの多色印刷および単色モードの印刷のいずれであるかを判定するモード判定部と
を備えることを特徴とする画像判定装置。
【請求項3】
前記モード判定部により前記画像データに対して実行すべき印刷が単色モードの印刷であると判定された場合に、判定結果に従い単色モードの印刷を実行するか、カラーモードの多色印刷を実行するかをユーザに選択させるための選択画面を表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像判定装置。
【請求項4】
前記印刷可否判断部は、前記モード判定部により前記画像データに対して実行すべき印刷が単色モードの印刷であると判定された場合に、カラーモードの多色印刷が可能になるように前記画像データの色変換を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像判定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−46286(P2013−46286A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183630(P2011−183630)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】