説明

画像劣化評価システム、画像劣化評価方法、画像劣化評価プログラム

【課題】画像情報を扱う画像撮影装置における妨害電磁波による影響の評価判定を行う。
【解決手段】画像情報の読み込みを行う画像撮影装置1と、この画像撮影装置1に対して妨害電磁波を放射する妨害電磁波発生装置2と、画像撮影装置1から妨害電磁波が印加されないときに読み込まれた基準画像と前記妨害電磁波が印加されているときに読み込まれた評価画像とを取得する手段と、前記基準画像と前記評価画像との比較を行い、この比較の結果値および画像編集処理された編集画像の画像劣化度を示す編集画像劣化指標値に基づき評価画像の劣化度を算出する手段とを有する画像劣化度演算装置9を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に妨害信号を印加し、当該電子機器における妨害信号の影響を評価判定する評価システム、評価方法、および評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラレコーダやファクシミリ装置など画像情報を扱う画像伝送装置に妨害電磁波(妨害信号)印加し、画像伝送装置で扱われる画像の画像品質の劣化を判定し、画像伝送装置における妨害信号の影響を評価する手法が開示されている。
しかしながら、画像の品質を、例えば人間の目視検査によって行った場合、その検査結果に人為的なミスが介入したり、試験測定者の体調によってはブロックノイズ(画欠け)などを見逃したりしてしまうことにより、評価の基準が変動してしまう不都合がある。
【0003】
これに対して、撮像装置により撮像された画像に基づき、マスター画像と検査画像を生成し当該画像の比較を行うことにより、人為的なミスが介入することなく撮像装置の妨害信号による影響を検査するための関連技術であるファクシミリ画像品質評価方法および装置が開示されている(特許文献1)。
【0004】
以下、この関連技術について説明する。
この関連技術は、図2に示すように、被試験装置(画像伝送装置)としての被試験ファクシミリ装置(EUT−FAX)1と、補助ファクシミリ装置2を備え、この被試験ファクシミリ装置1と補助ファクシミリ装置2を接続する通信ケーブルと、被試験ファクシミリ装置1の電源ケーブル4、また、補助ファクシミリ装置2の電源ケーブル5と、通信ケーブルを経由して被試験ファクシミリ装置1に伝導妨害波を印加する印加回路6と、妨害波発生装置7および電源ケーブルを経由して被試験ファクシミリ装置1に伝導妨害波を印加する印加回路8を備えている。また、妨害波発生装置9と、放射妨害波を印加するアンテナ10と、妨害波発生装置11と、静電気を印加する放電ガン12と、静電気発生装置13を有した構成をとっている。
【0005】
更に、画像品質評価を行うファクシミリ画像品質評価装置50を備え、当該ファクシミリ画像品質評価装置50は、AE−FAX2から画像を読み込むスキャナー14、スキャナー14を制御する画像読込制御部15、読み込んだ画像をファイルとして管理する画像ファイル管理部16、原画像ファイルと評価画像ファイルとを比較するときに位置を合わせる画像すり合わせ処理実行部17と、原画像データと評価画像データとの比較を行う相違点算出処理機能部18と、原画像データと評価画像データとの比較から平均オピニオン評価(MOS)を推定するMOS算出評価機能部19と、結果を出力する印刷機能部20とからなる。
【0006】
このシステムは、被試験ファクシミリ装置1から補助ファクシミリ装置2に画像を伝送する系と、補助ファクシミリ装置2から被試験ファクシミリ装置1に画像を伝送する系を有し、電磁妨害波を被試験ファクシミリ装置に印加する。
そして、電磁妨害波を印加しない状態のときのファクシミリ出力画像である原画像と、電磁妨害波を印加した状態のときのファクシミリ出力画像である評価画像とを照合し、原画像と評価画像の画像品質の主観評価値の算出を行う。
【0007】
以下、これを詳述する。
まず、被試験ファクシミリ装置1に電磁妨害波が印加されていない状態で、被試験ファクシミリ装置1から補助ファクシミリ装置2に画像を伝送し、補助ファクシミリ装置2で受信した受信画像をスキャナー14が読み込むと共に、画像ファイル管理部16に評価画像ファイルとして格納する。
【0008】
次に、被試験ファクシミリ装置1に電磁妨害波を印加した状態で、被試験ファクシミリ装置1から補助ファクシミリ装置2に画像を伝送する。
次いで、補助ファクシミリ装置2で受信した受信画像をスキャナー14が読み込み、この受信画像を画像ファイル管理部16が評価画像ファイルとして格納する。
【0009】
次に、画像すり合わせ処理実行部17で、原画像ファイルと評価画像ファイルの位置あわせを行い、相違点算出処理機能部18で比較を行う。
算出された相違点から被験者による客観的スコアの平均値として、MOS算出評価機能部19が、MOS(Mean Opinion Score 平均オピニオン評価)の推定(算出)を行う(MOS推定)。
【0010】
ここで、上記MOS推定について説明する。
評価画像データが得られた後で、評価画像データに対して、原画像データとの比較を行う部分(比較部分)を手動で選択する。相違点算出処理機能部18において、比較部分の画素情報から、
(ア)比較部分に含まれる縦方向の黒画素幅の最大値を(L)、
(イ)比較部分に含まれる横方向の黒画素幅の最大値を(W)、
(ウ)比較部分に含まれる黒画素数をB1、原画像の比較部分に相当する部分に含まれる黒画素をB2とするとき、(B1−B2)/B2で表される値を「B」とすると共に、
(エ)原画像の比較部分に相当する部分に含まれる走査線上の隣接する画素間の自己相関係数を「K」とし、下記「数1」により計算する。
【0011】
【数1】

ここで、I0(t)は第t番目の画素であり、白画素なら「0」、黒画素なら「1」である。また、mは走査線各行の画素数である。
これらの値を用いてMOSを、下記[数2]、[数3]を用いて推定する。
【0012】
【数2】

【0013】
【数3】

【0014】
ここでa0〜a4およびb0〜b2は、予め人の目視によって複数の画像の品質評価試験を行い、この装置で求めた結果が、人の目視による画像の品質評価試験結果と近くなるように定める。
【0015】
映像の主観品質評価の具体的方法としては、ITU−R BT.500に規定された、二重刺激妨害尺度法(DSIS、EBU法)、二重刺激連続品質尺度法(DSCQS)、単一刺激連続品質評価法(SSCQE)、同時二重刺激連続品質評価法(SDSCE)などが知られている。
しかしながら、これらの手法は、画像品質を評価するために大勢の被験者を集める必要があるため、多大なコストや時間がかかるという不都合がある。
【0016】
このため、主観評価実験を行うことなく、画質を客観的に評価する手法が研究されている。評価画像の基準画像に対する劣化度を客観的に表す指標として、例えば、SNRが開示されている。これは、原画像と評価対象画像との差分を雑音として、フレーム毎に次式[数4]で示される信号対雑音比を算出するものである。
【0017】
【数4】

ここで、Ps信号電力、PNは雑音電力である。SNRは計算が簡単ではあるが、主観評価との相関が低い場合があるため、より主観評価と近い客観評価基準に関する研究が進められている。
【0018】
また、この関連技術として、評価の基準となる画像に対して、圧縮・画像処理・保存などを施し、画質劣化した評価画像が、どの程度劣化しているかを客観的に評価するための指標値としてのSSIM(Stractual Similality)が提案されている。
これによると、上記SNRに比べて、人間の目視による評価(主観評価)と相関の高い客観評価が得られる。
【0019】
ここで、SSIMの算出手順を以下に示す。
基準画像(X)を図3に示すようにMブロックに分割する(カ)。ここで、単位ブロックはN画素から構成されるものとする。
次いで、第1ブロックについて、次式[数5]、[数6]により、各画素の振幅値Xを用いて平均値μxとδxを算出する(キ)。
【0020】
【数5】

【0021】
【数6】

【0022】
次いで、上記(キ)の計算を1〜Mブロックまで行う(ク)。
次いで、評価対象画像(Y)を(カ)と同様なMブロックに分割する(ケ)。
第1ブロックに関して、次式[数7]、[数8]、[数9]により、各画素の振幅値Xを用いて平均値μyと分散δy、δxyを算出する(コ)。
【0023】
【数7】

【0024】
【数8】

【0025】
【数9】

【0026】
次いで、(コ)の計算を1〜Mブロックまで行う(サ)。
次に、各ブロック(Mブロック分)に対して、次式[数10]により、SSIMを下記の手順に計算する(シ)。
【0027】
【数10】

ここで、CとCはSSIMの値を安定させるために導入された定数である。
【0028】
次いで、基準画像Xと評価画像YのMSSIMを、次式[数11]により計算する。
【0029】
【数11】

ここで、MSSIM(x,y)の値は1に近い程、評価画像が基準画像と類似していることを意味し、0に近い程、評価画像が基準画像と類似していない、すなわち劣化していると判定するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開平10−112775公報
【特許文献2】特開2006−203474公報
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】2004年4月アイ・イー・イー・イー・トランザクションズ・オン・イメージ・プロセッシング、第13巻4号(mage Quality Assessment:From Error Visibility to Structural Similality”IEEE TRANSACTIONS ON IMAGE PROCESSING Vol.13,No4,April,2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
しかしながら、上記特許文献1に開示された関連技術では、白黒の2値情報で構成される画像を平均オピニオン評価の対象としており、高階調のカラー画像などの画像情報を有する画像の品質劣化を評価することができないという不都合があった。
【0033】
また、上記特許文献2に開示された関連技術では、標準偏差算出や、輝度ずれ、平均自乗誤差といった評価指標が人間の目視による感覚的な評価と必ずしも一致しないため、例えば、評価対象の画像として、人間の目視による評価判定では、明らかに劣化しているように見える評価画像Aと、ほとんど劣化しているとは感じられない評価画像Bとがあった場合に、評価画像Bの方が評価画像Aよりも平均自乗誤差大きいと誤って判定してしまう不都合があった。
【0034】
更に、MOS推定対象を白黒の2値情報で構成される画像に限定していることにより、多階調(N階調)の画素情報を持った画像の品質劣化を客観的に評価することが考慮されておらず、このため、たとえファクシミリ装置に代えて、他の画像再生装置や画像撮影装置に応用したとしても、品質の劣化を客観的に評価することができず、ファクシミリ以外の画像を扱う電子機器に対する電磁妨害効果の定量的な評価を行うことが困難であるという不都合がある。
【0035】
[発明の目的]
本発明は、上記関連技術の有する不都合を改善し、画像情報を扱う画像撮影装置における妨害電磁波による影響の評価判定を行う画像劣化評価システム、画像劣化評価方法、および画像劣化評価プログラムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像劣化評価システムは、画像情報の読み込みを行う画像読込装置と、この画像撮影装置に対して妨害電磁波を放射する妨害電磁波発生装置と、前記画像読込装置で読み込まれた画像情報の劣化の度合いを算出する画像劣化度演算装置とを備えた画像劣化評価システムであって、前記画像劣化度演算装置は、前記画像読込装置から前記妨害電磁波が印加されないときに読み込まれた画像情報である基準画像と前記妨害電磁波が印加されているときに読み込まれた画像情報である評価画像とを取得する画像情報取得部と、前記取得された画像情報を記憶するデータ管理部と、前記基準画像と前記評価画像との比較を行うと共に、当該比較の結果値および画像編集処理された編集画像の画像劣化度を示す編集画像劣化指標値に基づき前記評価画像における画像劣化度の算出を行う劣化度演算部を備えた構成をとっている。
【0037】
また、本発明にかかる画像劣化評価方法は、画像情報の読み込みを行う画像読込装置と、この画像撮影装置に対して妨害電磁波を放射する妨害電磁波発生装置と、前記画像読込装置で読み込まれた画像情報の劣化の度合いを算出する画像劣化度演算装置とを備えた画像劣化評価システムにあって、前記画像読込装置における妨害電磁波の影響を測定する画像劣化評価方法であって、画像読込装置が、前記電磁波が放射されるのに先立ち基準画像の読込みを行うと共に前記妨害電磁波の印加時に画像の読み込みを行い、画像劣化度演算装置が、前記基準画像および前記評価画像を取得すると共にこれら画像情報を記憶し、当該記憶された前記基準画像および前記評価画像の比較を行うと共に、当該比較の結果値および画像編集処理された編集画像の画像劣化度を示す編集画像劣化指標値に基づき前記評価画像における画像劣化度の算出を行うことを特徴としている。
【0038】
又、本発明にかかる画像劣化評価プログラムは、画像情報の読み込みを行う画像読込装置と、この画像撮影装置に対して妨害電磁波を放射する妨害電磁波発生装置と、前記画像読込装置で読み込まれた画像情報の劣化の度合いを算出する画像劣化度演算装置とを備えた画像劣化評価システムにあって、前記画像読込装置における妨害電磁波の影響を測定するための画像劣化評価プログラムであって、前記妨害電磁波が放射されていないときに読み込みを行った基準画像と前記妨害電磁波が印加されているときに読み込みを行った評価画像とを取得する処理を行う画像情報取得機能と、前記基準画像および前記評価画像の比較を行うと共に、当該比較の結果値および画像編集処理された編集画像の画像劣化度を示す編集画像劣化指標値に基づき前記評価画像における画像劣化度の算出を行う画像劣化度算出機能とを、前記画像劣化度演算装置の備えたコンピュータに実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、以上のように構成され機能するので、妨害電磁波が印加されないときに読み込まれた基準画像と妨害電磁波が印加されているときに読み込まれた評価画像とを取得する画像情報取得部と、前記基準画像および評価画像の比較を行い比較の結果値および画像編集処理された編集画像の画像劣化度を示す編集画像劣化指標値に基づき評価画像の劣化度を算出する劣化度演算部とを有する構成としたことにより、画像情報を扱う画像撮影装置における妨害電磁波による影響をより正確に評価判定することを可能とする画像劣化評価システム、画像劣化評価方法、画像劣化評価プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による画像劣化評価システムの一実施形態を示す概略ブロック図である。
【図2】図1に開示した画像劣化評価システムにかかる関連技術の一実施形態を示す概略ブロック図である。
【図3】図1に開示した画像劣化評価システムにおける基準画像および評価画像に対する処理内容を示す説明図である。
【図4】図1に開示した画像劣化評価システムにおける画像劣化度の算出処理の手法を示す説明図である。
【図5】図1に開示した画像劣化評価システムの一実施形態(変形例)を示す概略ブロック図である。
【図6】図5に開示した画像劣化評価システムにおける画像劣化度の算出処理の手法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[実施形態]
次に、本発明の実施形態について、その基本的構成内容について説明する。
【0042】
本実施形態の画像劣化評価システムは、図1に示すように、静止物の撮影を行う画像撮影装置1と、予め設定されたアンテナを介して画像撮影装置1に対し妨害電磁波を印加する妨害電磁波発生装置2と、プログラム制御により動作し、画像撮影装置1から読み込まれた画像の評価判定を行う画像評価判定装置9とを備えた構成となっている。
【0043】
尚、画像評価判定装置9は、その内部にCPU(Central Processing Unit)と、メモリ、HDD(Hard Disc Drive)などの記憶装置を備えた構成であって、記憶装置内にあらかじめ設定されたプログラムを実行処理することにより、以下に示す機能処理などを実現するものとする。
【0044】
以下、これを詳説する。
画像撮影装置(画像読込装置)1は、予め設定された静止物の動画撮影を行い、撮影された動画像の読み込みを行う動画撮影読込機能を備えている。
尚、画像撮影装置1は、外部から入力された動画情報を再生する動画再生機能を備えた構成であってもよい。
【0045】
次に、画像評価装置9は、撮影された動画像を取得する動画像読込部4と、取得された動画像を格納する画像記憶手段を内部に備えたデータ管理部5と、データ管理部5から予め設定された画像情報(フレーム情報)の抽出を行う静止画像抽出部6と、データ管理部5および静止画像抽出部6から特定の画像情報を読み出すと共に画像情報の劣化度を算出する劣化度演算部7を有した構成となっている。
【0046】
尚、データ管理部5は、動画像読込部4から取得した動画像は、静止物を撮影対象としているため、どのフレームを静止画像として切出してもほとんど相違がないものとする。
静止画抽出部6は、データ管理部5に格納保存された動画像(フレーム画像群)の任意のフレーム画像を読み出すと共に、読み出されたフレーム画像を基準画像(X)として設定する。尚、この基準画像(X)は、画像撮影装置1に電磁波が印加されていないときに撮影された画像である。
【0047】
妨害電磁波発生装置2は、所望の周波数の電磁波を発生させると共に、予め設置されたアンテナ3を介して妨害電波として、画像撮影装置1に対して照射する妨害電波送出機能を備えている。
このとき、画像撮影装置1は、妨害電磁波を受けた状態で上記静止物の撮影を行っているものとする。
尚、妨害電磁波の印加時および無印加時に撮影された静止物(物体)は異なる静止物であってもよい。
【0048】
データ管理部5は、妨害電磁波の印加時に撮影された動画像を評価動画像として保存する。尚、評価動画像は、複数の静止画像(フレーム画像)で構成される。ここで、データ管理部5は、各フレーム画像を評価画像として設定するものとする。
【0049】
劣化度演算部7は、妨害電磁波が印加されない状態で取得された基準画像(X)と、妨害電磁波が印加されている(電磁波印加時撮影された)ときに取得された評価画像(Y)とを取得(抽出)すると共に比較して、画像(Y)における劣化の度合いを算出する処理を行う(画像劣化度算出機能、画像劣化度算出工程)。
【0050】
[実施形態の動作説明]
次に、画像劣化評価システムの全体の動作について概説する。
まず、画像撮影装置1が、妨害電磁波発生装置から妨害電磁波が放射されるのに先立ち基準画像の読込みを行い、次いで妨害電磁波の印加時に評価画像の読み込みを行い、次いで、画像評価装置9が、基準画像および評価画像を取得する(画像情報取得工程)と共に、これら画像情報を記憶する。
次いで、画像評価装置9は、記憶された基準画像および評価画像の比較を行い、この比較の結果値および画像編集処理された編集画像の画像劣化度を示す編集画像劣化指標値に基づき前記評価画像における画像劣化度の算出を行う(画像劣化度算出工程)。
【0051】
ここで、上記画像劣化度算出工程、操作体系判定工程、および操作体系情報提供行程については、その実行内容をプログラム化し、コンピュータに実行させるように構成してもよい。
【0052】
次に、画像劣化評価システムの本実施形態の動作について詳説する。
まず、妨害電磁波を印加しない状態で、画像撮影装置1が、画像の撮影を行う。
ここで、画像撮影装置1は静止物を撮影しているものとする。
次に、撮影された動画像が動画像読込部4により読み込まれ、データ管理部5が、動画像の保存処理を行う。
【0053】
このとき、保存された動画像は、静止物を撮影対象としているため、どのフレームを静止画像として切り出してもほとんど相違が無い。このため、任意のフレーム画像を任意に選択(抽出)することができる。
【0054】
次いで、静止画抽出部6が、保存された動画像(フレーム画像群)の任意のフレームを切り出して、(読出し)これを基準画像(X)として設定する。
【0055】
次に、妨害電磁波発生装置2が、測定したい諸元の電磁波を発生させアンテナ3を介し、測定対象である画像撮影装置1に対して妨害電磁波を照射する。
このとき、画像撮影装置1は画像の撮影を行う(電磁波印加時撮影工程)。
尚、この撮影対象は静止している物体(静止物)とする。
また、この時の撮影対象は上記無印加時に撮影された静止物体と異なる静止物体であってもよい。
【0056】
次いで、動画像読込部4が撮影された動画像を読み込み、読み込まれた動画像をデータ管理部5が保存する処理を行う(動画像格納処理工程)。
ここで、データ管理部5は、保存した動画像を構成するフレーム画像群の各フレーム画像を評価画像(Y)として設定する。
【0057】
次いで、劣化度演算部7が、妨害電磁波が印加されない状態で取得された基準画像(X)と、妨害電磁波が印加されている(電磁波印加時撮影された)ときに取得された評価画像(Y)とを比較して、画像(Y)における劣化の度合いを算出する処理を行う(画像劣化度算出工程)。
【0058】
ここで、上記画像劣化度算出工程について説明する。
まず、基準画像(X)を図2に示すようにM個の単位ブロック(1〜Mブロック)に分割する(ステップS1)。尚、単位ブロックは、予め設定されたN個の画素から構成されるものとする。
【0059】
次いで、第1ブロック(左上のブロックを第1ブロックとする)について、上記SSIMの算出手順のステップA2と同様に、各画素の振幅値Xを用いて、以下に示す[数5]、[数6]に基づいて、平均値μおよびδの算出を行う(ステップS2)。
【0060】
【数5】

【0061】
【数6】

ここでは、第1ブロック〜Mブロックそれぞれに対して(ステップS2)に示す計算を行う(ステップS3)。
【0062】
次いで、評価対象の動画像(以下「評価対象動画像」という)の1フレーム目(Y)を上記(ア)に示すのと同様にして、M個のブロックに分割する(ステップS4)。
次いで、第1ブロックに関して、各画素の振幅値Xを用いて、以下に示す[数7]、[数8]、[数9]に基づき、平均値μと分散δ、δxyを算出する(ステップS5)。
【0063】
【数7】

【0064】
【数8】

【0065】
【数9】

【0066】
また、第2〜Nブロックそれぞれについて、各画素の振幅値Xを用いて、上記に示す(7)、(8)、(9)式により平均値μと分散δ、δxyを算出する(ステップS6)。
【0067】
次いで、第1〜Nの各ブロック(Mブロック分)についてSSIMを、以下に示す[数10]に基づき算出する(ステップS7)。
【0068】
【数10】

次に、基準画像Xと評価画像YのMSSIMを(式11)により計算する(ステップS8)。
【0069】
次いで、記憶された各画像フレーム(Y)に対して、上記(ステップS4)〜(ステップS8で示される処理を行う。
これにより、図4に示すように、フレーム画像おける画像劣化度を、時系列に沿って評価することができる。
【0070】
また、対象の画像(動画像)がカラー画像である場合、RGB(赤緑青)、YUV(輝度信号(Y)と、輝度信号と青色成分の差(U)、輝度信号と赤色成分の差(V))等の成分ごとに、上記MSSIMを計算すると共に、各成分のMSSIMを予め設定されたウェイトで平均化する。
【0071】
これにより、客観的な評価を行うことが可能となり、且つ人の目視による評価に近似した正確な画像劣化の評価を行うことができる。
【0072】
[変形例]
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0073】
この変形例では、図5に示すように、画像撮影装置1に代えて画像再生装置8を備えた点が上記実施形態と異なる。
【0074】
また、データ管理部5から画像再生装置8に接続され、データ管理部に予め基準となる動画像を保存しておく。これを基準画像Xとする。
更に、妨害電磁波発生装置2において、測定したい諸元の電磁波を発生させ、アンテナ3を通じて測定対象である画像再生装置8に照射しつつ、基準画像Xを、画像再生装置8により再生し、動画像読込部4により読み込み、データ管理部5において動画像を保存する。この時保存された動画像を評価画像Yとする。
【0075】
劣化度演算部7において、基準画像Xと、妨害電磁波を印加した状態で取得した評価画像Yを比較して、劣化度の算出を行う。
【0076】
ここで、上記変形例の動作について、図6に基づき説明する
まず、基準画像(X)の1フレーム目の画像を、図2に示すように、Mブロックに分割する。単位ブロックはN画素から構成される(ステップS21)。
次いで、第1ブロックに関して、各画素の振幅値を用いて[数5]、[数6]により平均値μおよびδを算出する。
ステップS22に示す計算を1〜Mブロックまでそれぞれ行う(ステップS23)。
評価対象の動画像の1フレーム目(Y)を(ステップS21)と同様なMブロックに分割する(ステップS24)。
第1ブロックに関して、各画素の振幅値を用いて[数7]、[数8]、[数9]により平均値μと分散δ、δxyを算出する(ステップS25)。
ステップS25の計算を1〜Mブロックまで繰り返す(ステップS26)。
各ブロック(Mブロック分)に対してSSIMを[数10]により計算する(ステップS27)。
【0077】
基準画像Xと評価画像YのMSSIMを[数11]により計算する(ステップS28)。
以下、上記(ステップS21)〜(ステップS28)に示す動作処理を全フレームに対して行うより、MSSIMを時系列に沿って算出し、評価画像における劣化度評価を行う(ステップS29)。
【0078】
この変形例により、画像の撮影を行う画像撮影装置だけでなく、送り込まれた画像情報(映像情報)の再生を行う画像再生装置に妨害電磁波を印加した際の画像の劣化度を客観的に評価することができる。
【0079】
以上のように、上記実施形態および変形例では、画像撮影装置に対して妨害電磁波を印加し、品質の劣化を客観的に評価することができ、且つその時の評価対象となる装置が再生、記録する画像の階調に制限なく、画像の劣化度をより正確に算出することを可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、画像の撮影、再生、編集、記録などを行う画像処理装置で、扱う画像の階調に関わらず画像処理装置内における画像品質の測定を行うシステムに適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 画像撮影装置
2 妨害電磁波発生装置
3 アンテナ
4 動画像読込部
5 データ管理部
6 静止画像抽出部
7 劣化度演算部
8 動画像再生装置
9 画像評価装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報の読み込みを行う画像読込装置と、この画像撮影装置に対して妨害電磁波を放射する妨害電磁波発生装置と、画像編集処理された編集画像の画像劣化度を示す編集画像劣化指標値に基づき前記画像読込装置で読み込まれた画像情報の劣化の度合いを算出する画像劣化度演算装置とを有し、
前記画像劣化度演算装置は、
前記画像読込装置から前記妨害電磁波が印加されないときに読み込まれた画像情報である基準画像と前記妨害電磁波が印加されているときに読み込まれた画像情報である評価画像とを取得する画像情報取得部と、前記取得された画像情報を記憶するデータ管理部と、
前記基準画像と前記評価画像との比較を行うと共に、当該比較の結果値を用いて計算した前記編集画像劣化指標値に基づき前記評価画像における画像劣化度の算出を行う劣化度演算部を備えたことを特徴とする画像劣化評価システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載の操作体系設定システムにおいて、
前記画像が複数の異なるフレーム画像からなるフレーム画像群である場合に前記フレーム画像群から任意のフレーム画像を抽出する静止画像抽出部を備え、
前記劣化度演算部は、前記抽出されたフレーム画像に基づき前記評価画像の劣化度を前記画像劣化指標値に基づき算出するフレーム画像劣化度算出機能を備えたことを特徴とする画像劣化評価システム。
【請求項3】
前記請求項1に記載の画像劣化評価システムにおいて、
前記編集画像劣化指標値は、前記基準画像および評価画像に基づくSSIM(Stractual Similality)であることを特徴とする画像劣化評価システム。
【請求項4】
前記請求項2に記載の画像劣化評価システムにおいて、
前記劣化度演算部は、前記基準画像および前記評価画像を予め設定された領域群に分割すると共に、前記基準画像および前記評価画像それぞれの対応する領域を比較して前記評価画像における劣化度を前記画像劣化指標値に基づき算出する分割比較機能を備えたことを特徴とする画像劣化評価システム。
【請求項5】
前記請求項1に記載の画像劣化評価システムにおいて、
前記基準画像および評価画像が予め設定された撮影対象物を連続的に撮影した複数のフレーム画像からなる基準フレーム画像群および評価画像群である場合に、前記劣化度演算部は、前記基準画像群および評価画像群から時系列に沿った順にそれぞれ基準画像情報および評価画像を抽出し比較を行う動画像比較機能を備えたことを特徴とする画像劣化評価システム。
【請求項6】
前記請求項1に記載の画像劣化評価システムにおいて、
前記画像読込装置は前記データ管理部に記憶された画像情報を再生する画像再生機能を備え、
前記画像劣化度演算装置は、前記画像情報が画像読込装置で再生されているときに前記基準画像および前記評価画像を取得する再生画像取得機能を備えたことを特徴とする画像劣化評価システム。
【請求項7】
前記請求項5、6に記載の画像劣化評価システムにおいて、
前記劣化度演算部は、前記基準画像および前記評価画像を予め設定された領域群に分割すると共に、前記基準画像および前記評価画像それぞれの対応する領域を比較して前記評価画像における劣化度を前記画像劣化指標値に基づき算出する分割比較機能を備えたことを特徴とする画像劣化評価システム。
【請求項8】
画像情報の読み込みを行う画像読込装置と、この画像撮影装置に対して妨害電磁波を放射する妨害電磁波発生装置と、前記画像読込装置で読み込まれた画像情報の劣化の度合いを算出する画像劣化度演算装置とを備えた画像劣化評価システムにあって、前記画像読込装置における妨害電磁波の影響を測定する画像劣化評価方法であって、
画像読込装置は、前記電磁波が放射されるのに先立ち基準画像の読込みを行うと共に前記妨害電磁波の印加時に画像の読み込みを行い、画像劣化度演算装置が、前記基準画像および前記評価画像を取得すると共にこれら画像情報を記憶し、当該記憶された前記基準画像および前記評価画像の比較を行うと共に、当該比較の結果値および画像編集処理された編集画像の画像劣化度を示す編集画像劣化指標値に基づき前記評価画像における画像劣化度の算出を行うことを特徴とする画像劣化評価方法。
【請求項9】
画像情報の読み込みを行う画像読込装置と、この画像撮影装置に対して妨害電磁波を放射する妨害電磁波発生装置と、前記画像読込装置で読み込まれた画像情報の劣化の度合いを算出する画像劣化度演算装置とを備えた画像劣化評価システムにあって、前記画像読込装置における妨害電磁波の影響を測定するための画像劣化評価プログラムであって、
前記妨害電磁波が放射されていないときに読み込みを行った基準画像と前記妨害電磁波が印加されているときに読み込みを行った評価画像とを取得する処理を行う画像情報取得機能と、
前記基準画像および前記評価画像の比較を行うと共に、当該比較の結果値および画像編集処理された編集画像の画像劣化度を示す編集画像劣化指標値に基づき前記評価画像における画像劣化度の算出を行う画像劣化度算出機能とを、前記画像劣化度演算装置の備えたコンピュータに実行させることを特徴とする画像劣化評価プログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−206244(P2010−206244A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46276(P2009−46276)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】