画像化技術
本発明は、特徴付けが必要とされる被検者の組織機能を特徴付ける方法に関する。該方法は、関心のある組織空間の内部で定義されるボクセル(voxel)に対して画像化技術を実施することを含み、被検者は少なくとも2つの異なる分圧の常磁性ガスを含むガスを吸入する期間中、画像データが発生する。コンパートメントモデル・アルゴリズムが、ボクセルで発生した画像データに適用され、組織の代謝機能に関する情報を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織を画像化する方法に関するもので、特に、酸素造影MRI(OE−MRI: Oxygen-Enhanced Magnetic Resonance Imaging)(但し、これに限定されない)へのコンパートメントモデル(compartmental model)の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)は、分数スピン量子数を持つ原子核に作用して分極させる磁界を印加することを含む。測定の際、所定の共鳴エネルギーの高周波パルスが印加され、核スピンを反転させ、配向分布を攪乱する。そして、核が、時間依存の指数関数で初期状態に戻って(緩和し)、これにより記録可能なデータへ電子的に処理できる信号を与える。信号が空間的に微分され、十分なレベルである場合、データは体系化でき、スクリーン上に画像として表示される。例えば、有機組織内にある水のプロトンによって発生した信号の計算によって磁気共鳴映像(MRI)を構築することが可能になり、生体中の内蔵の直接視覚化が可能になる。従って、NMRは、診断、医学治療、手術において強力なツールである。
【0003】
臨床医は、多くの理由のため、被検者内にある組織の代謝機能を検査することを望んでいることは理解されよう。被検者の健康について殆ど判明していない患者診断の初期段階では、代謝機能検査は、患者の全体的な健康の指標を与える。さらに、多くの病気では、病巣が患者の組織エリアに発生し得る。こうした組織エリアは、診断、治療、手術計画または予後評価の目的で臨床医にとって関心の中心となるであろう。関心のあるこうした組織エリアの代謝機能を特徴付けることは、病気を診断したり、治療または手術を案内するのを支援したり、あるいは、臨床医が病気の進行について予後診断を下すのを支援する。例えば、何らかの方法で損傷を受けた組織は、変化した代謝機能を示したり、あるいは代謝機能を全く示さないことがある。特に、腫瘍性組織は、増進または低減した代謝機能を示すことがある。臨床医は、例えば、変化した代謝機能を用いて、被検者内の腫瘍の識別または特徴付けを行うことができる。幾つかの場合、増進した代謝機能は、腫瘍の新たな成長エリアなどに関する予後診断を提供する。
【0004】
ポジトロンCT(PET)が、低い分解能画像を生成できる核医学技術であり、被検者内の組織機能を特徴付けめために使用できる。PETスキャンの際、放射性同位体が被検者内に導入され、スキャナが放射性同位体のシンチレーションを検出する。こうして放射性同位体は、被検者内に位置し、被検者内のその通過が追跡できる。15Oは、PET撮影で広く用いられている造影剤である。残念ながら、この技術は、生成される画像の分解能および放射性同位体の使用の必要性によって限定されている。
【0005】
ダイナミック造影MRI(DCE−MRI: Dynamic contrast-enhanced MRI)も、過去において組織機能を特徴付けるために使用されていた。不活性外因性造影剤は、MRIスキャンによって生成される画像で視認できるもので、被検者の血液供給に導入され、被検者が走査される。得られた画像は、被検者を通る造影剤の灌流(perfusion)を示しており、組織機能の要素、例えば、組織を通る血液灌流、および造影剤に対する組織の浸透性(permeability)などを特徴付けるために使用できる。しかしながら、これらの方法は、酸素運搬または組織内代謝に関する直接的な情報を提供していない。判別されているが普通ではない代替のMRI造影剤は、17Oであり、高価であって入手困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の画像化技術は、被検者の組織機能の特徴付けが可能である。しかしながら、これらの使用は、造影剤(しばしば核医学ベース)の使用を必要とする点で制限される。被検者への「異物」の造影剤の導入は、重大な病態生理学的結果を示すことがある。例えば、放射性造影剤を被検者へ導入するリスクがきちんと文書化されている。これらの理由により、最も脆弱な患者がこれらの画像化技術に適していないケースはよくある。
【0007】
OE−MRIは、肺換気を視覚化する間接的な方法として実演されている。分子酸素(同位体のO2、重要には非放射性である16O)は常磁性であり、実質(parenchymal)水に溶解した場合、T1への影響に起因してNMR造影剤として機能する。(T1は、NMR分野の当業者にとってスピン格子緩和時間という名称で知られており、印加磁界と平行なz方向に沿った時定数である。)100%酸素の呼吸は、肺組織内で溶解した酸素の濃度の増加をもたらし、対応したT1の減少を生じさせ、これはT1加重画像の局部的な信号強度の増加として検出される。100%酸素の呼吸の場合、肺組織内で酸素飽和に到達するのに要する時間、および100%酸素の呼吸の終了後、肺組織内の酸素濃度が通常に戻るのに要する時間を分析した研究が行われている。これらはウォッシュイン(wash-in)時間およびウォッシュアウト(wash-out)時間として知られている。
【0008】
OE−MRIは、身体内の多くのエリア、例えば、腎皮質、脾臓、肝臓、筋肉および腫瘍にある組織機能を分析するためにも用いられている。
【0009】
OE−MRIは、DCE−MRI、MRI用17O、およびPETイメージング用15Oに比べて、大気酸素16Oが豊富に入手可能であり、使用が安全である点で多くの利点を提供する。16Oは、15Oとは反対に非電離性であり、使用をより安全にする。また、16Oは安価であり、15Oや17Oよりも入手が容易である。
【0010】
従って、本発明の目的は、先行技術のスキャン方法(例えば、PET、DCE−MRI、OE−MRI法)に関連した問題を克服することであり、健康状態および病的状態の両方での組織機能および生理機能に関して臨床的に重要な情報を提供する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様によれば、特徴付けが必要とされる被検者の組織機能を特徴付ける方法を提供するものである。該方法は、被検者内で定義されるボクセル(voxel)に対して画像化技術を実施することを含み、被検者が少なくとも2つの異なる分圧の常磁性ガスを含むガスを吸入する期間中に画像データが発生し、さらに、コンパートメントモデル・アルゴリズムを、ボクセルで発生した画像データに適用して、ボクセル内の組織の代謝機能に関する情報を提供することを含む。
【0012】
画像化技術は、当業者に知られている任意の適当な画像化技術でもよい。例えば、MRI、CTスキャン、X線など何れの形態のものでもよい。しかしながら、画像化技術はMRIであることが好ましい。
【0013】
常磁性ガスは、任意の適当な常磁性ガスでもよいが、常磁性ガスは酸素であることが好ましい。
【0014】
画像化技術がMRIである場合、常磁性ガスは酸素であることが好ましい。代替として、MRIを用いた場合、常磁性ガスは、エアロゾルまたは他の造影剤、例えば、MRIで観察した場合、組織内の信号変化を生じさせるガドリニウムベースのエアロゾルであってもよい。
【0015】
画像化技術は、酸素造影磁気共鳴映像法(OE−MRI)であることが最も好ましい。
【0016】
画像データは、組織への酸素運搬および組織内の酸素代謝消費に関する情報を提供することが好ましい。
【0017】
本発明の第1態様の方法により、正常および異常な組織機能を評価することが可能になり、病気を持つ被検者(例えば、腫瘍などの病巣または他の機能不全組織エリアを持つ被検者)あるいは、こうした傷害または病気にかかりやすい者(例えば、環境的原因や遺伝子理由から)について診断を行ったり予後診断を提供するのに有用な重要なデータを提供する。
【0018】
用語「ボクセル(voxel)」とは、被検者内の3次元空間によって定義される格子状の体積要素を意味する。本発明では、被検者は、典型的には数立方ミリメートルである、マトリクス状のボクセルに分割されることが好ましい。
【0019】
本発明は、MRI、特に、OE−MRIと、画像処理の分野での発明者の知識をベースとしている。彼らは、OE−MRIが組織内の酸素運搬および代謝機能を可視化するのに有用であることを評価している。理由は、水性環境(例えば、間質液内、細胞内またはプラズマ(plasma)内)において、酸素が水中のプロトンと相互作用して、変化したNMR信号を生じさせるためである。酸素についてのこれらのMRI特性により、OE−MRIから、組織機能に関係した有意なデータを得ることが可能になるか否かを発明者が検討しているときに、本発明が行われた。彼らは、組織内と血液中との酸素濃度の相違により、OE−MRIを用いて、酸素が組織へ運搬され、関心のある組織内の代謝プロセスで消費されるレートを測定できることを理解した。こうしたデータは、関心のある組織の健康状態に関する有益なデータを臨床医に提供する点で、大きな価値がある。臨床医は、多数の状況(例えば、癌などの腫瘍性疾患)が存在しており、酸素レベル、個別には代謝レート、一般には細胞呼吸機能が、健康な組織の良好な健康指標であり、また腫瘍性組織での新たな成長のエリアなどの良好な指標であり、そして、機能の増強または障害を受けた組織エリアを視覚化するための技術は、診断または予後評価を行うのに極めて強力なものであると評価するであろう。
【0020】
また、発明者は、OE−MRIが強力な技術となり得ることを理解した。理由は、ボクセルサイズをかなり小さく設定でき、全体の組織または腫瘍および周囲エリアまたはその一部に渡って広がるマトリクス状のボクセルからNMR信号を検出することによって、全体の組織または腫瘍および周囲エリアを視覚化するために、NMRが使用できるからである。
【0021】
従って、本発明の方法は、好ましくは、関心のある組織内のマトリクスを形成する「n」個のボクセルについてOE−MRIを実施することを含む。ガス交換の効率は、各ボクセルについて測定可能であり、臨床医には、関心のある組織エリアの個別エリアにおける灌流、酸素拡散および酸素代謝に関する個別の情報が提示できる。
【0022】
発明者は、関心のある組織エリア内の酸素消費レートを計算する最善の方法は、組織からのNMRデータの連続的な動的収集によって、動脈および静脈スペース(第1コンパートメント)から組織(第2コンパートメント)への酸素の移送を分析することであり、一方、ガス供給は、変化する酸素分圧のガス混合物の間で切り替えられ、組織に到着する酸素ガス濃度での変動をもたらすことを理解した。原理上、これは、被検者に少なくとも2つの異なる濃度の酸素を吸い込むことを要求することによって達成し得る。被検者が異なる濃度の酸素を吸い込むときに収集されるMRIデータは、より詳しく後述するアルゴリズムを用いて、代謝酸素消費レートを計算するために使用できる。
【0023】
本発明の実現に寄与するさらに重要な要因は、組織内に拡散した酸素は、組織内で活動する代謝プロセスによって消費されることを発明者が理解した点である。さらに、発明者は、酸素の代謝消費は、被検者の病態生理学的評価を行う場合、極めて重要な要因となり得ることを理解し、そのため組織内の酸素の代謝消費を評価するのに特に有用な方法を開発する努力を行った。従って、本発明の方法の1つの重要な特徴は、この効果が、本発明に従って用いられるアルゴリズムに取り込まれる点である。
【0024】
酸素の代謝消費の測定は、ガドリニウムベースのDCE−MRIなどの他の多くの医学画像化方法を用いても可能ではない。これらの画像化様式は、酸素含有量を測定しないためである。発明者は、酸素の代謝消費は、酸素に関連した画像化データ、例えば、OE−MRIデータからは直接測定できないが、被検者内の周囲媒質にある酸素の結果として時間とともに生成されるMR信号から、測定値が推測できることを理解した。こうして本発明のアルゴリズムにおける代謝要因の組み込みは、組織機能を画像化する何れの先行技術の方法と比べて著しく有利である。こうした要因なしでは、MRIデータから代謝機能の測定値は得られないためである。
【0025】
本発明の方法に従って検査される被検者は、細胞呼吸機能または組織の代謝機能を検査することが望ましい何れの被検者でもよい。被検者は、好ましくは、哺乳類(該手法は、一般に任意の生物、例えば、鳥類、爬虫類、両生類などにも適用可能である)であり、該方法は、獣医学的に重要な動物(例えば、馬、牛、犬または猫)あるいは治療(これに限定されないが、薬理学的なものを含む)開発業務で重要な動物(例えば、マウスやラット)の組織機能を検査するのに特に適している。しかしながら、被検者は、好ましくは人間であることは理解されよう。
【0026】
該方法は、人間の被検者が、細胞呼吸機能の変化(即ち、酸素代謝の変化)によって特徴付けられる条件を有するか否かを調査するために特に有用である。代替として、被検者の組織は、こうした条件が時間とともにどのように進行するか(例えば、医療または手術の診療行為に応答して)を評価するために画像化してもよい。こうした条件は、しばしば「正常」組織とは異なるレートで酸素を消費する癌/腫瘍を含む。感染症(例えば、髄膜炎)、炎症状態(例えば、クローン病)、線維症(例えば、肺線維症)、免疫学的状態(例えば、自己免疫疾患)は全て、組織が、変化した代謝活性を示すようになり、従って、本発明の方法に従って画像化できる。該方法は、腫瘍を画像化するために使用されることが好ましい。
【0027】
本発明の方法は、候補薬物に対して被検者がどのように応答するかを検査するために利用できることも理解されよう。薬物は、関心のある組織中での酸素レベルに対する影響(直接または間接)を有するか否かを査定するために評価される。これは、人間の被検者の臨床試験で行われたり、動物の被検者での候補薬物を検査するため研究プログラムの一部として行われることがある。
【0028】
特に、該方法は、候補薬物が、作用する組織の代謝活性を調節し得るか否かを検査するために採用できる。例えば、癌治療で使用される候補薬物は、薬物投与前の腫瘍の代謝活性(即ち、酸素消費)を検査し(非形質転換細胞ではより大きいであろう)、そして、これと、候補薬物を用いた被検者の治療後の腫瘍の代謝活性とを比較することによって評価してもよい(有用な候補は、腫瘍の代謝活性を減少させると予想できる)。こうしたスクリーンは、好ましくは、充実性腫瘍(例えば、肝臓、膀胱、胃、大腸または肺の腫瘍)を治療するための候補薬物の有用性を評価するために使用してもよい。
【0029】
代替として、スクリーンは、候補抗炎症剤である薬物について実施してもよい(炎症組織は、高い酸素消費を示すと予想され、一方、有効な抗炎症剤は、炎症組織での酸素消費を減少させると予想される)。
【0030】
当業者は、該方法は、正常な健康組織と比較して、増加または減少した酸素消費によって特徴付けられることが知られている多くの病態生理学的症状のスクリーンとして有用になることは理解するであろう。
【0031】
検査される被検者は、MRI装置において、典型的には、必ずしもそうではないが、1.5テスラの磁界強度で位置決めする必要がある。該方法は、専門設備をほとんど必要としないため、人間または動物の用途に設計された任意のMRI装置においてOE−MRIを使用することが可能である。少なくとも2つの異なる分圧の常磁性ガスを含むガスを吸入する被検者は、MRIスキャンの実施中に異なるガスが吸入できるように、ガス配給用のマスクまたは呼吸装置を装着してもよい。ガスが酸素である場合、一方の分圧酸素として大気を用いてもよく、この場合、被検者は装置の使用なしで普通に呼吸する。
【0032】
被検者は、2つのガス(第1ガスは、比較的低い濃度の酸素(例えば、10%〜35%)を有し、他方のガスは、比較的高い濃度の酸素(例えば、45%〜100%)を含有する)を吸入することが好ましい。第1ガスは空気(約21%の酸素を含む)で、他方は90%〜100%の酸素含量を含むガスであることが最も好ましい。使用するガスの選択は、被検者の健康状態に依存するであろうことは理解されよう。
【0033】
造影剤として溶存酸素を用いたスキャンの開始前、生きている被検者の組織内の溶存酸素濃度は、常にゼロより大きい。被検者は連続的に空気を呼吸しているためであり、空気から酸素が取り込まれ、被検者の血液中で組織へ灌流される。これは、15Oや17Oなどの人工造影剤を使用する撮像化技術とは相違している。これらは、豊富な量の天然素材ではなく、被検者の組織内のこれらの濃度はスキャン前はゼロと推定できるためである。第1濃度の酸素の第1ガスを供給することにより、関心のあるエリアの組織内での溶存酸素濃度についてベースライン信号が検出可能になる。スキャンの際、異なる濃度の他のガスを供給することにより、被検者の呼吸による酸素濃度の増加に起因して組織内の酸素濃度が増加する過渡期において、組織内での溶存酸素濃度の変化が検出可能になる。更なる測定を、このガスの呼吸時に行ってもよい。
【0034】
被検者は、第1ガスの呼吸または他の濃度のガスに戻ってもよい。この場合、この更なる過渡期において組織内の溶存酸素濃度の変化を検出する測定を行うことが好ましい。各ガス間の過渡期は、必要に応じて繰り返してもよい。この方法は、組織内の局部酸素濃度および酸素の代謝消費レートについて、単一のガスについて酸素濃度を単に測定することで得られるものより正確な測定を提供する。低濃度酸素から高濃度酸素への変化に要する時間は、「ウォッシュイン(wash-in)」時間として知られている。高濃度酸素から低濃度酸素への変化に要する時間は、「ウォッシュアウト(wash-out)時間」として知られている。ウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間の長さは、単一スキャン期間中の単一被検者についてほぼ等しい。従って、単一スキャン期間中の単一被検者についてのウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間の秒単位の長さは、ここでは単一の値で示している。
【0035】
被検者の所定ボクセル内のMRI可視の酸素分圧(または濃度)の合計(mmHg単位)は、ここではPO2として定義される。血液中だけの酸素濃度は、PaO2として定義される。他の組織(即ち、非血液)での酸素濃度は、PeO2として定義される。従って、PO2=PaO2+PeO2である。本開示の状況において特定の組織内の酸素分圧を参照することが明らかである場合など、幾つかの場合にPO2を参照してもよいことは理解されよう。例えば、血液のPO2への参照は、PaO2との参照と明らかに同じである。
【0036】
血管は、吸入した酸素を肺から関心のある組織へ運搬することは理解されよう。従って、本発明に係るコンパートメントモデル・アルゴリズムは、血液についてウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間を考慮することが好ましい(これらは、動脈酸素濃度が最大値に到達したり、ベースラインに戻るのに要する時間を含み、換気効率および他の肺健康因子の関数である)。血液についてのウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間は、ここでは値(TOIF)で示す。TOIFは、既知の生理的平均値から推定可能であり、被検者の脈管系全体に渡って均一な値をとり得る。後述するように、TOIFは、本発明に従って有用なものになる。それは血液中の酸素分圧(PaO2)を計算するために使用でき、コンパートメントモデル・アルゴリズムへの入力として用いられる。代替として、血液中の酸素濃度(PaO2)の測定は、血液を含むだけのボクセルに焦点を合わせたOE−MRI法(例えば、実施例4の方法を参照のこと)、あるいは血液サンプリングなどの代替の方法を用いて実施してもよい。これらの測定は、被検者の脈管系全体に渡ってPaO2を表す、より正確な値を生成するために使用できる。幾つかの実施形態では、PaO2)の値は、大動脈の領域から採られたOE−MRIデータを用いて測定される。
【0037】
低濃度酸素にある被検者から開始して、吸入したガスをある期間だけ高濃度酸素と交換し、そして、被検者は低濃度酸素ガスを再び吸入するように戻ることによって、OE−MRIデータは各ボクセルごとに記録することが好ましい。本発明の方法は、100%酸素を吸入する前後で個々の人が通常の空気(例えば、21%の酸素を含む医療空気)を呼吸する場合、100%酸素が吸入、排出される被検者からOE−MRIデータを生成するのが最も好ましい。造影剤として作用する異なる酸素濃度は、プロトン(主として組織内の水または液体からであるが、可能性としてNMRを用いて可視化される他のプロトン運搬分子、例えば、N−アセチル・アスパラギン酸、クレアチン、乳酸またはコリンなど)あるいは、他のNMR感度の原子核(例えば、31P,19F,23Na,17O)を含む分子から検出されるNMR信号に影響を及ぼす。そして、このOE−MRIデータは、本発明に従って用いられるアルゴリズムのための入力を生成するために使用してもよい。本発明に係るコンパートメントモデル・アルゴリズムは、OE−MRIデータに適合させてもよい。最も好ましい形態は、実施例において説明している。
【0038】
OE−MRIデータは、s−1単位のT1スピン−格子緩和時間R1(これは、T1信号からR1=T1−1として直接導かれる)でもよい。R1値を、PO2を示す値に変換するために、変換係数を用いることが必要である。任意の所望の変換係数が使用できることは理解されるが、好ましい変換係数はr1=4×10−4 s−1mmHg−1であり、実験的に確定し容認された係数である。代替の変換係数が、2.49×10−4であり、これはZaharchuk G, Busse RFらによって認証された(文献:Acad Radiol 2006; 13: 1016-1024)。R1(単位s−1)は、R1をr1(単位s−1mmHg−1)で除算することによってPO2(単位mmHg−1)に変換できる。変換係数を、リニア係数としてR1値のMRIデータセット全体に適用したと考えると、該方法が、酸素レベル、特に代謝消費での差を評価するために用いられる場合、変換係数の個別の値は重要でないことは理解されよう。係数は、MRIデータ値を、酸素分圧(または濃度)の範囲に変換するために用いられる。
【0039】
健康な肺機能および健康な脈管系を持つ人では、関心のある組織の酸素造影MRI信号は、増加して約5分間で飽和に到達するであろう。ガスが空気に切り替わる場合、信号がその正常なベースラインに減少する時間も、約5分間という同じ時間フレーム内になる。しかしながら、これらの時間スケールは、臓器や病気ごとに変化し得る。典型的には、被検者は、ガス混合物または高濃度酸素との混合物を、約10分間の最大期間、呼吸することが要求されるようになる。高濃度酸素呼吸による副作用は、約24時間露出後であることに注意すると、この露出時間は安全と考えられ、大多数の被検者にとって有害な影響はない。
【0040】
生きている被検者を撮像するMRIを使用する際の挑戦は、スキャン時に被検者の動きによって発生する問題である。例えば、被検者の胸郭が呼吸とともに動いて、被検者が多くの無意識な運動、あるいは自発的な運動が起こるのを防止できないことがあるであろう。これは、MRI信号を単一ボクセルから時間とともに測定することが必要である場合、技術的な挑戦をもたらす。従って、同じ体積の組織から測定できることを確保するために、画像レジストレーション(registration)手法を適用することが好ましい。本発明の方法に従って使用できる好ましい画像レジストレーション手法の一例は、Naishらによって開発されたものである(文献: Naish et al. (2005) Magnetic Resonance in Medicine 54:464-469)。
【0041】
本発明は、コンパートメントモデル化手法をOE−MRIに適用して、組織内の局所代謝機能に関してより個別の情報を供与する、補強情報からのパラメータ抽出を可能にすることの実現化を基礎としている。コンパートメントモデルは、脈管性間隙(空気呼吸時に、動脈内で約95mmHg、静脈内で40mmHgの分圧で酸素を含有する)である第1コンパートメントと、組織細胞および間質(空気呼吸時に、約40mmHgの酸素分圧を持つ組織液に溶解した酸素を含有する)を含む第2コンパートメントとをベースにしてもよい。
【0042】
こうしたモデルの開発はかなりの技術的ハードルを意味することは理解されよう。発明者は、相当な発明努力を発揮して、身体組織のOE−MRI用のコンパートメントモデルを開発し、組織内の酸素代謝を記述するパラメータの計算を可能にした。
【0043】
発明者の1つの特定の実現例は、OE−MRIデータを使用して、他のコントラスト増強法、例えば、17Oを用いたMRI、15Oを用いたPETなどでは測定できないような組織機能の状況に関する情報を生成できることである。関心のある組織空間のOE−MRIによって生成したデータを解析することによって、組織空間内の酸素代謝に直接関係した情報が生成される。この情報は、OE−MRIを用いて直接に測定可能ではないが、発明者は、コンパートメントモデル化を用いて時間とともに直接測定から推定できることを実現した。
【0044】
本発明に係る方法は、好ましくは、血液および組織内の酸素濃度に関する既知の生理学的パラメータをベースとした2−コンパートメントモデルである。こうしたコンパートメントモデルは、好ましくは、被検者の血管、特に、動脈、細動脈および毛細血管の中に存在する血液を含む第1コンパートメント(Cb)と、変化するNMR信号値から得られる、組織細胞および細胞間の間質腔を含む第2コンパートメント(Ce)とからなる、ボクセルの複合(combined)酸素濃度(CT)をモデル化している。
【0045】
測定した値、例えば、溶存酸素濃度の値は、本発明に従って用いられるコンパートメントモデル・アルゴリズムへの入力としてもよく、及び/又は、本発明に係るコンパートメントモデルを測定値に適合させてもよいことは理解されよう。従って、上述のようにR1から導かれる値PO2は、CTと等価であるモデルへの入力として使用してもよい。この点に関して、モデルパラメータCTは、スキャン期間中のボクセル内の全体酸素濃度を表し、モデルは、各ボクセルについての溶存酸素濃度の測定値(即ち、ΔR1から導かれるPO2値)に適合される。さらに、Cbを推定したり測定してもよく(Cbは、PaO2と等しくてもよく、後者は推定したり測定してもよい)、アルゴリズムへの入力として用いてもよいことは理解されよう。
【0046】
幾つかの実施形態では、Cbは、推定したり測定しなくてもよく、従って、アルゴリズムへの入力ではない。むしろCbは、Cbの形状を定義するパラメータをモデルに導入することによって、コンパートメントモデルにおいてモデル化できる。Cbの基本的な形状は、台形関数(trapezoidal function)に追従することが知られている。この台形関数の1つ又はそれ以上のパラメータ(例えば、TOIF:増加した酸素濃度へのウォッシュインおよびそこからのウォッシュアウトの際、台形関数の傾斜を決定する)は、モデルへのパラメータとして使用できる。こうしたモデル公式化において、Cbはおよびそのパラメータ、例えば、TOIFは、モデルからの出力としてもよく、科学的かつ臨床的に有用な情報を表す。
【0047】
コンパートメントモデルは、下記パラメータの1つ又はそれ以上を考慮したり、こうしたパラメータの計算を促進することも好ましい。即ち、MRI可視物質(visible matter)当たりの血液の分数体積(Vb)と、MRI可視物質当たりの組織の分数体積(Ve)と、血管系の拡散能力(Kox)と、第2コンパートメント内の酸素の代謝消費レート(Mox)と、関心のある組織エリアに到着する血液中の予測酸素濃度を定義する入力関数の形状を記述するパラメータ(即ち、上昇する酸素レベルの吸入と、組織内の最大入力酸素濃度との間の時間遅れ(time-lag)、あるいはウォッシュイン時間TOIF)などである。
【0048】
Koxを測定する好ましい実施形態の1つにおいて、Koxは、DCE−MRI法で出力されるktransとは全く相違することは理解されよう。ktransは、血液から組織への造影剤(例えば、ガドリニウムベースの造影剤)の拡散の測定値である。造影剤は、既に存在するものに対してコントラストを提供するものであり、それ自体は被検者にとって異物であり、組織内へ自然に拡散するものではない(あるいは、少なくともDCE−MRIの場合ほど多量ではない)。こうしてktrans測定値は、異質媒体に対する血管系の特定エリアの「漏洩(leakiness)」を示す。これに対してKoxは、血液から組織への酸素の拡散の測定値であり、これは自然なプロセスである。従って、Koxは、酸素が血液から組織へどのように移動するかを測定するのに有用であり、ktransの目的は全く不適当である。
【0049】
コンパートメントモデルは、血液中の酸素量、組織中の拡散酸素量および、酸素が血液から組織へ溶解するレートを考慮することが特に好ましい。
【0050】
コンパートメントモデルは、溶存酸素が代謝消費によって組織から除去されるレート(Mox)に関する出力データを考慮し、提供できることが最も好ましい。モデルが酸素の代謝レートに関する情報を提供できることの実現は、本発明の方法の特定の利点と考えられる。
【0051】
本発明に従って使用されるモデルは、別の数(即ち、2つより大きい)のモデルコンパートメント、例えば、動脈を第1コンパートメントとして割り当て、組織および間質を第2コンパートメントとして割り当て、静脈を第3コンパートメントとして割り当てる3つのコンパートメントモデルをベースとしてもよい。
【0052】
ここで説明するコンパートメントモデルの特定の公式化は、本発明に係るアルゴリズムの応用可能性の制限として解釈されるべきでないことは、一般には理解されよう。一般に、所定ボクセル内の総酸素濃度に関与する(あるいは影響を及ぼす)関心のある任意のパラメータ、例えば、MoxやKoxなどをモデルに盛り込むことは容易である。そして、モデルを、ボクセルごとの酸素濃度に関連する医療画像データにフィッティングさせることによって、そのパラメータに関する値が取得できる。
【0053】
コンパートメントモデルは、Ketyによって開発された方程式の適合であることが好ましい(文献:Kety, SS (1951) Pharmacological Reviews. 3: 1-41)、これは肺胞の細胞膜を通って肺毛細管の血液への拡散レートを説明している。
【0054】
ガス輸送に関するこのモデルが、組織内の酸素代謝をモデル化するために利用可能なように修正できるという実現は、発明者によって克服された大きな技術的課題である。
【0055】
従って、本発明の第1態様の方法は、好ましくは、Ketyの2つのコンパートメントモデルをベースとしたコンパートメントモデル・アルゴリズムを応用する。アルゴリズムは、少なくとも2つの異なる酸素分圧を持つウォッシュイン吸入ガスおよびウォッシュアウト吸入ガスによって得られるOE−MRIデータに適用される。好ましくは、MRI測定は、関心のある組織エリアについて行われ、被検者は、通常の空気(21%酸素)の呼吸から開始し、そして、100%酸素が吸入され所定の期間(例えば、5分間)維持され、そして、100%酸素が排出されて通常の空気(21%酸素)の呼吸に戻る。異なる酸素濃度は、造影剤として機能し、プロトンから検出されるNMR信号に影響を及ぼし、そして、このOE−MRIデータは、本発明に係る2−コンパートメントモデルによってフィッティングされる関数として用いられる。
【0056】
本発明の第1態様の方法に従った使用のために、数多くの異なるアルゴリズムが開発できることは理解されよう。本発明の方法の発明ステップについての1つの理由は、発明者が、コンパートメントモデル、特に、Ketyモデルの修正が、肺内部の組織ではない組織からのOE−MRIデータに適用できること(こうした手法を用いて遭遇する問題にも関わらず)を理解した最初の者であったことは、さらに理解されよう。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、発明者は、下記の証明を適用することによってアルゴリズムを開発した。
【0058】
即ち、第1コンパートメントは血液であり、第1コンパートメントでの酸素濃度はCb(PaO2に対応)で表記でき、第2コンパートメントは組織および組織間にある間質腔を含み、複合酸素濃度はCe(PeO2に対応)で表記できる(図1参照)。血液であるボクセルの部分体積はVbで表記され、組織または間質であるボクセルの部分体積はVeで表記される。従って、測定した酸素濃度CT(PO2に対応)は、下記式(I)から導出できる。
【0059】
【数1】
【0060】
そして、発明者は、Vb=1−Vbeを仮定することによってモデルを開発した。従って、式(I)は、下記式(II)のように近似できる。
【0061】
【数2】
【0062】
Ketyは、不活性ガス輸送のモデル化に関係した2−コンパートメントモデルを導入した。発明者は、2−コンパートメントモデルが、Ketyモデルを適合させることによってOE−MRIデータから組織機能をモデル化するために使用できることを実現した。従って、発明者は、Ketyモデルを適合させて、上昇する酸素濃度の管理下(即ち、>室内空気の21%)で、血管外コンパートメントでの酸素濃度Ceの観測した変化レートが、毛細血管の境界を通る酸素輸送レート(Kox)についての項を組み込んだ表現を用いてモデル化できるようにした。追加の項は、酸素が組織内で吸収されたり代謝されるレート(Mox)を定義するために用いられ、下記の式(III)となる。
【0063】
【数3】
【0064】
Moxについての追加の項は、Ketyモデルでも、後の任意のDCE−MRIベースのコンパートメントモデルでも存在していない。この項は、項Moxは、関心のあるボクセル内の酸素の代謝消費レートを示すという発明者による実現後に、ここで追加された。従って、この項は、診断または予後診断の測定値を表現するものであり、これは実施例2の結果によって生まれている。項Moxは、組織内の酸素濃度に線形的に依存する酸素の代謝消費を表現するものと推定できる。代替の公式化が、別の形式をこの関係に強制してもよく、例えば、組織の代謝消費がこれ以上変化しない最大濃度の定義などである。所定ボクセル内の総酸素濃度に関与する(あるいは影響を及ぼす)組織機能の任意の態様は、この例示モデルでのMoxやKoxと同じように、式(III)に盛り込むことは容易であることは、一般には理解されよう。
【0065】
これらの計算に基づいて、発明者は、式(IV)を用いてCe(即ち、PeO2、組織または間質を含む第2コンパートメントの複合酸素濃度。上述したように計算)を解くことが可能であることを実現した。
【0066】
【数4】
【0067】
式(IV)の同一性は発明者によって使用され、式(IV)を式(II)に代入することによって、式(V)で示すように、任意の所定ボクセル内の測定した酸素濃度CT(即ち、PO2)に関係する方程式を開発した。
【0068】
【数5】
【0069】
臨床的に意味のある情報は、Mox,Kox,Veについての値に付随してもよい。モデルは、任意の適切なアルゴリズム(例えば、レーベンバーグ・マルカート(Levenberg Marquardt)非線形最小二乗フィッティングアルゴリズム)を用いて、これらのパラメータの計算を可能にする。これは、関心のある組織エリアで変化するNMR信号から計算される動的な酸素濃度データセットに対して、コンパートメントモデルCTで記述される関数形式のフィッティングを可能にする(上記式(V)を参照)。
【0070】
そして、フィッティングアルゴリズムの適用によって生成されたデータは、被検者の画像(2次元または3次元)として表示できる。画像の各画素のトーンは、対応するボクセルについてモデルによって出力されたパラメータのうちの1つを表す。
【0071】
本発明の方法は、組織機能に関する予後および診断の両目的にとって、特に腫瘍などの組織病変の場合に、特に有用である。しかしながら、好ましい実施形態において、該方法は、予後および薬物治療の開発および監視において特に有用なものになるであろう。予後的な使用はまた、所定の治療オプションに対して多かれ少なかれ反応する患者の識別を含み、治療のための患者選択基準を改善できる。局所的な組織機能を測定するこの手法は、広範な疾病および症状(例えば、上述したもの)において組織の酸素化および代謝の測定を可能にすることになる。
【0072】
本発明の方法は、先行技術の手法と比べて多くの利点を有することは理解されよう。本発明の以前では、他の作業者が、変化する酸素濃度で達成される信号変化の大きさの単純な比較によって、及び/又は、信号が最大増強に達するの要する時間、または信号がベースラインに落ちるのに要する時間によってOE−MRI信号を解析していた。これらの単純化した手法は、血液による酸素の灌流、組織の酸素化および組織内の酸素代謝の間の複雑な根本的な相互作用を考慮していなかった。
【0073】
本発明の主要な利点は、臨床医が、高価で時間を要する核医学検査、例えば、PETなどを実施する必要がなく、組織機能に関するデータを入手できることである。該方法により、検査を実行する人間が、迅速で比較的標準的なMRIを実施でき(但し、被検者は、異なる酸素濃度を含む第1および追加のガスの供給のためにマスクを着ける必要がある。)、関心のある組織エリアにおける代謝機能、特に酸素の代謝消費の画像を極めて素早く生成できる。
【0074】
DCE−MRIは、ktrans,νe,νbについてのパラメータを生成できることが知られている。これらのパラメータは、組織機能を示すものであるが、これらの意味は本発明に従って生成されるパラメータとはしばしば異なる。DCE−MRIでのktransは、血漿から間質への造影剤の拡散の測定値であり、酸素に関する組織の拡散能力を推定するためには用いられない。これに対して本発明に係るKoxは、血液から組織への酸素の拡散を直接示すものである。DCE−MRIでのνpは、ボクセル内の血漿の比例体積の測定値である。DCE−MRI造影剤は、血漿のみ存在し、血球には存在しないからである。これに対して本発明に係るνbは、ボクセル内の血液の比例体積の測定値である。酸素は血漿および血球の両方に存在するからである。DCE−MRIでのνeは、ボクセル内の間質の比例体積の測定値である。DCE−MRI造影剤は、組織細胞の中に入ることができず、間質腔内に存在するためである。本発明に係るνeは、ボクセル内の、細胞および間質を含む非血液成分の比例体積の測定値である。酸素が細胞内に入ることができるためである。
【0075】
各ケースにおいて、測定タイプの相違は、DCE−MRIで使用する造影剤は細胞内に入ることができず、酸素(OE−MRIでの造影剤)は細胞中に入ることができることを発明者が理解した点に基づいている。
【0076】
本発明に係るMoxは、組織内の酸素の代謝消費の測定値である。DCE−MRIで使用する人工造影剤が何れの代謝プロセスでも消費されないことから、以前はDCE−MRIによる代謝消費を測定することは不可能であった。本発明によって提供される顕著な利点は、以前にはDCE−MRIでもOE−MRIでも測定することが不可能であった酸素の代謝、生物学的プロセスを示す測定値を配給するコンパートメントモデル化またはOE−MRIデータの使用において提供される。
【0077】
組織機能の画像化に適用されるコンパートメントモデルの概念は、患者によって呼吸可能であり、関心のある組織エリアで観測される信号での変化を引き起こす他のガスまたはエアロゾルにも適用可能であることに留意すべきである。特に、関心のある組織エリアで代謝プロセスの一部として消費され得るガスまたはエアロゾルが、コンパートメントモデルが適用できるデータを生成するのに適している。
【0078】
関心のある組織エリアでの酸素濃度および入力関数の測定と関連して、コンパートメントモデルの使用は、スキャン装置またはデータ取得方法から独立した値を有する生理学的パラメータの導出を可能にすることは理解されよう(但し、これらの要因は、導出したパラメータの品質に影響を及ぼし得ることを理解されている)。これは、NMR信号またはT1値に基づいた酸素増強比またはウォッシュイン・レートを測定しようとする方法と比較した利点であり、これらの各々が磁界強度、ガスまたはエアロゾルの性質およびNMRデータ取得技術の選択肢に依存することがある。
【0079】
酸素を造影剤として使用する更なる利点は、無毒性であって、純粋酸素の供給源の設置以上に特別な準備を要しない点である。他の造影剤、例えば、DCE−MRIで使用するもの等は、しばしば毒性があり、及び/又は、正常な組織機能または代謝に人工的な影響を及ぼすことがある。これは、病気で弱っている被検者に特別の問題を意味することがある。さらに、被検者に導入された造影剤は、腎臓によって除去されるる必要があるが、もし正常に機能していなければ、追加の負担になることがある。これらの要因は、撮像被検者が特に弱っており、及び/又は、一定の腎臓症状で苦しんでいる状況では、こうした造影剤の使用を許容しないことがある。
【0080】
さらに、コンパートメントモデルで使用できる他の可能性のある造影剤は、一般に専門家の性質のもので(例えば、ガドリニウムベースのエアロゾル)、酸素よりも実用的でない選択肢になる。さらに、酸素は、実地訓練や生理学的問題なしで、数分間安心して呼吸できる。他の可能性のある造影剤(例えば、ガドリニウムベースのエアロゾル)は、一般には単一の呼吸管理に制限され、実用性を制限するであろう。
【0081】
従って、造影剤としての酸素の使用は多くの利点を提供すること理解されよう(例えば、上述した問題の点で)。
【0082】
本発明の第2態様によれば、組織機能に関するデータを生成するためのコンピュータ装置が提供される。該装置は、
プロセッサ読み取り可能な命令を格納するメモリと、
前記メモリに格納された命令を読み取って実行するように構成されたプロセッサとを備え、
前記プロセッサ読み取り可能な命令は、前記プロセッサを制御し、本発明の第1態様で定義されたアルゴリズムを組織画像データに適用する命令を含む。
【0083】
本発明の第2態様に係る装置は、アルゴリズムの適用に追従する出力を計算し表示するのに必要なコンピュータハードウエアおよびディスプレイ装置を備えてもよい。ハードウエアおよびディスプレイ装置は、該方法で使用するスキャン装置(例えば、MRIスキャナ)とは分離した構成要素でもよく、あるいは、多くの生体医用デジタル画像化システム、例えば、MRIスキャナのように、スキャナ内に一体化していてもよい。従って、コンピュータ装置は、スキャン装置の一部であってもよい。
【0084】
コンピュータソフトウエアが、該モデルをフィットさせるのに必要なアルゴリズムを生のOE−MRIデータに適用して、出力パラメータを組織機能のヒストグラムやマップ、あるいは局所平均値に変換してもよいことは理解されよう。こうしたヒストグラムおよびマップが、MRI用に定常的に生成される。こうしたソフトウエアを用いたOE−MRIデータの操作は、使用者の入力なしで、多数のボクセルからのデータを迅速に操作でき、被検者全体またはある領域について機能の詳細な画像を提供できるという利点を有する。
【0085】
本発明のアルゴリズムは、コンピュータソフトウエアに埋め込んでもよく、画像化装置とは分離または一体化したコンピュータハードウエアおよびディスプレイ装置を用いて実行してもよい。こうしたソフトウエアは、本発明の更なる態様を意味しており、本発明の第3態様に従って、本発明の第1態様で定義されたようなアルゴリズムを適用する方法をコンピュータに実行させるように構成された、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを搭載したキャリア媒体が提供される。
【0086】
本発明を具現化したコンピュータプログラムが何れか所望の方法で提供できることは理解されよう。こうしたコンピュータプログラムは、何れの形式であっても本発明の更なる態様を意味し、本発明の第4態様に従って、本発明の第1態様で定義されたようなアルゴリズムを適用する方法をコンピュータに実行させるように構成された、コンピュータプログラムが提供される。
【0087】
本発明の第4態様に係るソフトウエアは、何れか所望のプログラミング言語、例えば、Java TM(Sun Microsystems, Inc. 901 San Antonio Road Palo Alto, CA 94303, USA)、C++(One Microsoft Way Redmond, WA 98052-6399, USA)、Matlab(The MathWorks, Inc. P.O. Box 845428 Boston, MA, USA)などで提供してもよい。
【0088】
本発明に係るソフトウエアの使用者は、好ましくは、該ソフトウエアを入手し、該ソフトウエアを、適切なMR画像データ、例えば、OE−MRIデータを受け取るように構成された適当なコンピュータシステムにインストールするであろう。
本発明の実施形態について、下記の例および図面を参照しつつ一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】OE−MRIを用いた組織内での酸素運搬についての2−コンパートメントモデルを示す。第1コンパートメントは、ガス分圧濃度PAO2に比例した溶存酸素濃度Cbを持つ血液である。定数Koxは、組織および間質を含む第2コンパートメントとの拡散レートを示す。酸素が、第2コンパートメント内で代謝プロセスにより、代謝消費レートMoxで定義されるレートで消費される。
【図2】本発明の一実施形態に係る方法を表現したフローチャートを示す。
【図3】4人の患者の著しいΔR1を示すボックスプロット(患者1は2つの腫瘍を持つ)。異常値(outliers)は円(○)で示す。
【図4】7つの腫瘍を持つ5人の患者でのグループ平均ΔR1。100%酸素(O2)および医療空気(Air)の呼吸の切り替えを矢印で示す。
【図5】100%酸素の吸入時の患者人口統計データおよびΔR1。平均ΔR1、95%信頼区間およびp値を示す。
【図6】入力酸素圧力PIO2に対する酸素動脈圧PaO2の推定した変化のグラフ。TOIFが定義される。
【図7】本発明に従って計算されるパラメータ:(a)Kox,(b)Mox,(c)Vb,(d)TOIFについてパラメータマップを示す画像。
【図8】比較のため、DCE−MRIで測定されたパラメータ:(a)ktrans,(b)νp,(c)νe,(d)腫瘍領域のみのktransについてパラメータマップを示す画像。
【図9】TI=217msを持つ医療空気を呼吸する被検者の30枚の画像の平均を示す画像。大動脈(符号A)を明確に示している。
【図10A】喫煙者についてΔPO2を時間の関数として示すグラフ。各被験者についてプロットし(薄いライン)、全被験者の平均を単一の太いラインとして示す。
【図10B】非喫煙者についてΔPO2を時間の関数として示すグラフ。各被験者についてプロットし(薄いライン)、全被験者の平均を単一の太いラインとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本発明の一実施形態に従って、図2のフローチャートに示した手順について説明する。被検者の組織は、OE−MRIを用いて走査され、OE−MRIから生成されたデータは、コンパートメントモデルへの入力として用いられ、被検者内の組織機能について臨床的に重要な測定値を出力する。
【0091】
ステップS1において、患者が、最初に空気を約21%のO2濃度(PIO2)で呼吸し、そして、より高いPIO2を含むガス、例えば100%のO2を呼吸し、続いて空気の呼吸に戻るようにした期間内で、磁気共鳴映像(MRI)を用いて患者が画像化される。PIO2のグラフ、即ち、被検者によって呼吸されたO2濃度は、スキャン期間に渡って、図6においてPIO2を付与した破線で示すようにトップハット関数に従う。MRIプロセスは、先行技術で知られており、被検者の3次元領域内にあるボクセルの各フィールドごとに一連の時間依存の値を出力する。個々の一連の値は、スキャン期間内で時間tごとにボクセルでMRスキャナによって生成された一連のT1測定値に関連する。従って、各値は、時間tにおけるボクセル内の総酸素濃度の指標を与える。
【0092】
ステップS2において、3次元のボクセルフィールドは、各時間ポイントごとに位置合わせ(register)が行われ、もし被検者がスキャン期間内に動いた場合でも、これらの動きがスキャンによって出力されたデータから修正可能になる。こうしてレジストレーションが完了して、動きを計算に入れると、ボクセルのフィールドにおいて対応するボクセルは、各時間tについて被検者での同じ物理的位置から取得したT1測定値と関連すると言える。レジストレーションが本発明の任意の要素であることは理解されよう。例えば、動かないように固定された被検者のエリアをスキャンする場合、レジストレーションは必要でない。被検者での動きが存在する場合であっても、本発明は、ボクセルのフィールドを位置合わせすることなく実用的である。但し、ある組織に関するボクセルデータの品質を改善するために、レジストレーションを使用してもよい。
【0093】
ステップS3において、被検者が呼吸した既知の酸素濃度(PIO2)を用いて、被検者の血液内の酸素濃度(PaO2)の推定を行う。この推定は、血液中の増加した酸素レベル(TOIF)に関してウォッシュイン(wash-in)時間およびウォッシュアウト(wash-out)時間に割り当てられた値を用いて、PIO2から行う。TOIFの値は、既知である生理学的平均から推定される。しかしながら、PaO2の値は、種々の手法で直接または間接的に測定してもよいことは理解されよう。大動脈のOE−MRIデータを用いた一手法は、実施例4において記述している。
【0094】
ステップS4において、式(I)〜(V)で上述したコンパートメントモデルは、ステップS1で生成された各ボクセルごとのデータ(即ち、ΔR1値)にフィットされる。モデル出力CT(即ち、PO2)は、式(V)で定義され、パラメータCb,Kox,Mox,Veによって制御された関数を表す。Cbは、血液コンパートメントモデルでの酸素濃度であり、血液中の酸素圧力、即ち、ステップS3で定義されたPaO2(例えば、CbはPaO2と等しいと仮定する)から直接推定してもよい。従って、この推定したCbは、コンパートメントモデルへの入力である。
【0095】
関数を一連のデータにフィットさせることは、数多くの方法によって達成できることは理解されよう。しかしながら、好ましいフィッティング方法は、例えば、レーベンバーグ・マルカート(Levenberg Marquardt)アルゴリズムなどの非線形最小二乗法を使用することである。
【0096】
スキャン期間で各ボクセルごとのデータにモデルをフィッティングすることは、各ボクセルについてKox,Mox,Veの各々の値を提供し、これらは、モデルに送った場合、該ボクセルのOE−MRIとの最小二乗誤差または差分が存在する関数を出力する。こうしてステップS4の結果は、スキャン期間に渡って3次元のボクセルフィールドでの各ボクセルと関連した一組のパラメータ(Kox,Mox,Ve)である。下記の実施例では、パラメータKox,Mox,Veは、被検者の拡散能力、代謝能力および非血液物質の部分体積(ボクセル当り)を示している点で、臨床的に有用であることが立証されている。そして、パラメータVbは、式(II)に関連して説明したように、Veから計算される。
【0097】
ステップS5において、ボクセルフィールドをスライスする2次元平面を定義することによって、画像がボクセルフィールドから出力される。平面上に位置するボクセルは、平面上に形成された画像に含まれる。こうして各パラメータ(Kox,Mox,Ve)について画像が形成可能である。実施例2において各パラメータについて生成した例示の画像を、図6に示している。データの他の表現は、3次元ポリゴン表現または体積表現を含むモデル出力から構築することが容易であることは理解されよう。データは、数値的またはグラフ、あるいは、データが、アクセス可能な診断情報を容易に提供できる何れのフォーマットで表現してもよい。
【0098】
特に、KoxやMoxの値は、比較用のテーブル、グラフまたは画像の形式で表示してもよく、同じ被検者または2つ又はそれ以上の被検者間についての2つ又はそれ以上の別々のスキャンの際、組織内での酸素の代謝消費または拡散を比較するようにしてもよい。この手法では、有用な診断または予後の情報を、本発明に係るコンパートメントモデル化アルゴリズムの結果から収集できることは理解されよう。
【0099】
(実施例1)
本実施例は、OE−MRIスキャンデータが多数の被検者から収集された検査について説明する。このデータは、本発明に従って使用するのに適した性質のものである。本発明によれば、コンパートメントモデルがこのデータにフィットされ、組織機能に関連したパラメータ(例えば、Kox,Mox,Vb)を出力する。本発明に係るこうしたデータの使用の一例は、実施例2において提供している。
【0100】
ここで、我々は、腫瘍縦緩和レート(R1)の酸素誘導変調−正常な組織における前述の効果(文献:RA Jones et al., (2002) MRM 47: 728-35; and JP O'Connor et al., (2007) MRM 58: 490-6)について説明する。これは、血液酸素化レベル依存(BOLD)法とは区別される。我々は、進行癌を持つ患者の集団においてこの手法を評価した。
【0101】
(a)方法
倫理的承認を得た。患者は、フィリップスInteraシステム(Philips Medical Systems, Best, Netherlands)において1.5テスラで撮像した。被検者は、医療空気(21%酸素)を吸入し、続いて100%酸素を、そして、第2段の医療空気を15L/分で非再呼吸回路を通してリザーバ付きマスクを用いて吸入した。初期のT1重み付けおよびT2重み付けした解剖学的手順を行って腫瘍を描写した。面内で≧3cmで、少なくとも3スライスに存在する病巣だけを含めた。
【0102】
全身送信/受信コイルを送信/受信用に選択した。一連の3D T1重み付け高速フィールドエコー画像を取得し(TR 3.5ms,TE 0.9ms,α=2°/8°/17°,1平均,FOV 375mm,マトリクス128×128,4mmスライス厚)、組織T1を推定した。腫瘍をカバーするように、各患者で10cm体積を選択した。測定値は、穏やかな呼吸で、呼吸停止なしで取得した。医療空気を呼吸しつつ24個のべースライン測定値を収集し、続いて100%酸素で48個、そして、医療空気で24個の測定値を収集した。各T1測定の全体取得時間は、19.5秒であった。全体画像化時間は31分12秒であった。最後に、0.1mmol/kgのOmniscan(Amersham Health, Amersham, UK)を自動注入器によって3ml/sで静脈内投与した。フリップ角2°/10°/20°/30°と4NSAを用いて、T1の高速フィールドエコー計算ベースラインに続いて、ダイナミック造影MRIを行った(TR 4.0ms,TE 0.82ms,α=20°,ガス吸入手順と同じ平均,FOV,マトリクスおよびスライス厚)。時間分解能は4.97sであった。
【0103】
画像解析を、社内ソフトウエアでボクセル単位のフィッティング処理を用いて行った。腫瘍体積は、T1重み付けおよびT2重み付けした解剖学的画像と同じであり、病巣全体を包囲するようにして、関心のある体積(VOI)を線引きした。縦緩和レートの変化(ΔR1(t)=R1(t)−R1(air))を各時間ポイントごとに計算した(文献:JP O'Connor et al., (2007) MRM 58: 490-6)。ΔR1は、時間ポイント(t)での酸素濃度の変化に比例し、比例係数は酸素についての縦緩和定数r1である。R1(t)は、各時間ポイントでのR1値である。R1(air)は、平均ベースラインR1値(空気の呼吸時)である。測定したR1変化の意味は、SPSS 13.0. IAUCでの一元配置分散分析によって検査した。Ktransは、仮の動脈入力関数を持つ拡張Toftsモデルを用いて計算し(文献:GJ Parker et al., (2006) MRM 56: 993-1000)、スピアマン(Spearman)のρを用いて酸素誘導ΔR1との相関をとった。
【0104】
(b)結果
進行性固形癌を持つ5人の患者を採用した(全て女性、平均年齢62.6才)。画像化手順は、全ての被検者にうまく許容された。全体として、7個の病巣を識別した。100%酸素の呼吸時に、各腫瘍につき0.0087〜0.0526s−1の平均ΔR1値を測定した。この変化は、5個の病巣において統計的に有意であった(図3と図5)。ΔR1は、1個の腫瘍のみ、医療空気に切り替えたときにベースラインに戻った(患者1 腫瘍2;p=0.02)。グループ解析は、酸素吸入時にΔR1の明らかな上昇を示し(p<0.001)、患者が医療空気の呼吸に戻った時、ベースライン値に向かうΔR1の無意味な減少を示した(p=0.117)(図4)。患者人口統計データおよび腫瘍の詳細を表1に集約している。酸素誘導ΔR1の大きさと腫瘍メジアンIAUCまたはKtransとの間に有意な相関は存在しなかった。
【0105】
(c)検討
酸素過剰ガスの吸入によるR1マッピングでの画像コントラストは、動脈血漿および組織液での溶解分子酸素の常磁性効果に起因する。この研究は、人間の腫瘍での効果を説明した最初のものであり、進行性上皮性卵巣癌を持つ4人の患者において、被検者が医療空気から100%酸素に切り替えた時に有意なΔR1を報告している。胃腺癌を持つ患者では2つの肝転移において、緩慢で無意味なΔR1を検出した。動脈血流が信号変化に寄与する重要な要因になるであろうが、測定したΔR1は、IAUCおよびKtransの両方によって推定される腫瘍血流から独立しており、酸素誘導ΔR1は、酸素の運搬、拡散、代謝の複合測定になるであろうことを示唆する。一般に、該手順はうまく許容され、許容できる信号対ノイズ比を持つ測定可能な信号変化を出力した。これらの予備結果は、有望であり、腫瘍変調R1が酸素化状態についての新規なバイオマーカーを出力し得ることを示唆しており、更なる研究に値するものである。
【0106】
こうして本実施例は、被検者が2つの異なる分圧の常磁性ガス(酸素)を呼吸する期間において、腫瘍の酸素化の差がOE−MRIによって測定可能であることを示す。従って、このデータは、本発明に係る方法においてコンパートメントモデル化への適用に適している。
【0107】
(実施例2)
本実施例は、コンパートメントモデルを、例えば、実施例1で生成されたようなOE−MRIデータにフィッティングすることについて説明する。例示のコンパートメントモデルの適用の結果は、DCE−MRIから生成される標準パラメータを参照して説明する。DCE−MRIは、実績のある診断および予後の能力を備えた、許容された医用画像取得手段(modality)である。
【0108】
第1実施例の方法セクションで説明したデータ取得方法を、腫瘍を有することが判明した被検者に適用して、本発明の方法の有用性を立証できた。本発明の方法に従って生成された結果は、従来の画像化手法(DCE−MRI)を用いて得られたものに匹敵するものであった。
【0109】
(a)方法
更なる被検者のスキャンから取得したデータは、第1実施例と関連して上述のスキャンに従って実施されたものであり、式(I)〜(V)と関連して、上述したコンパートメントモデルのフィットへの入力データとして使用した。
【0110】
溶存酸素は、周囲の水プロトンのR1の増加(上述したように)を誘導し、これは、T1重み付け画像において増加した信号によって測定される。上述のように、R1と局所酸素濃度との関係は、変化するヘマトクリット値を持つ血液において、HeuckelおよびSilvennoinenによって測定された。典型的なヘマトクリット値0.41についてこれらの実験からの適切な平均は、r1=4×10−4 s−1mmHg−1である。この係数は、R1をr1で除算することによって、R1をPO2に変換するために使用できる。そして、得られたPO2の値は、CTとして、式(I)〜(V)で説明したモデルへの入力となり得る。
【0111】
Cbとして入力されるデータは、図6に示すように、酸素の呼吸圧力(PIO2)についての値に対して、変換係数を適用することによって生成した。図6は、既知の入力(即ち、呼吸)酸素圧力(PIO2)に対して、推定した動脈酸素圧力(PaO2)を示す。PIO2の入力圧力が増加した後、動脈圧力PaO2は相応に増加して、最大圧力に増加するまでの時間TOIFを要することが判る。患者が呼吸した酸素圧力の続く低下は、動脈分圧PaO2での低下を引き起こし、そして、動脈分圧が入力分圧PIO2の変化に追従するのに要する時間は、TOIFで示される。
【0112】
PaO2の直接測定(例えば、実施例4を参照)を、Cbの入力として用いてもよいことは理解されよう。
【0113】
(b)結果
変換したOE−MRIデータ(PO2)およびPaO2データは、式(V)にCTおよびCbとしてそれぞれ入力し、レーベンバーグ・マルカート(Levenberg Marquardt)非線形最小二乗フィッティングアルゴリズムを適用した。
【0114】
これにより、発明者は、Kox,Mox,Veおよび、関心のある走査組織の画像として提示できる他のパラメータに関連した、臨床的に有用な情報を提供できる(図7)。
【0115】
比較のために、図7と図8は、(a)〜(d)を付与した被検者の4つの軸方向像をそれぞれ示している。各画像は、被検者で同じエリアから採られたデータから生成されており、健康組織および腫瘍組織の両方からの値を示す。図7は、式(I)〜(V)を参照して上述したコンパートメントモデルを用いたOE−MRIの結果を示す。図8は、同じ被検者のDCE−MRIから得られた標準値を示す。
【0116】
図7は、被検者についてコンパートメントモデルから計算した多数のパラメータについての組織マップを示す。図7aは、Kox値を示すもので、被検者の腫瘍が画像の左側において比較的明るい卵形として見えることが判る。これは、腫瘍組織の酸素化が周囲の組織よりも良好であることを示す。腫瘍の上側エッジ部は、特によく見えており、周囲の腫瘍性組織および非腫瘍性組織よりも、影で明るい。
【0117】
図7bは、被検者の同じ場所で、Mox値または酸素の代謝消費を示す。画像は、腫瘍領域でより明るく、腫瘍は周囲の組織より高いレートで酸素を消費していることを示す。より明るい腫瘍の上側エッジ部が見えており、この領域での代謝活性が高いことを示す。このようにして腫瘍による酸素の消費を直接観測することは、他の知られた方法では可能ではないであろう。従って、本発明の方法は、可能性のある将来の腫瘍成長を直接評価するという優れた利点を提供する。これはDCE−MRIでは生成できないパラメータである。DCE−MRIで用いられる可視造影剤は、代謝消費には適していないためである。その結果、Moxは、本発明の例示の実施形態によって生成された成果であり、診断医にとって以前は利用できなかった診断情報を提供できる。
【0118】
図7cは、図7aと図7bに示した被検者の同じ領域を通る、Ve値または組織対血液の比率を示す。図7cは、腫瘍は、その周囲エリアよりも多くの血液を有することを示している。腫瘍内の高い血液濃度は、腫瘍を検出し、より多くの血液を受け取る腫瘍は代謝活性がより高くなる点で、その機能を特徴付けるために使用できる。また、多くの腫瘍治療は、腫瘍への血流を減少させることに取り組んでおり、本発明を用いたこの値の計算は、治療などの成功を評価するために有用であろう。
【0119】
図7dは、被検者の組織内で最大酸素濃度についてのTOIF遅れ時間を示す。図7dから、腫瘍は、周囲の組織とは異なって見えることが判る。但し、この画像だけは、腫瘍の検出および特徴付けにはあまり有効でないであろうことも判る。組織内のウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間に関してあまり正確でない値は、腫瘍のOE−MRIについて過去に計算されている。
【0120】
図8a〜図8cは、DCE−MRI走査によって生成される標準的な値であるKtrans,Vp,Ve,の値を示す。ktransは、Koxと同一視できない。DCE−MRIでのktransは、血漿から間質への人工造影剤の拡散の測定値であるのに対して、本発明に係るKoxは、血液から組織への酸素の拡散の測定値であるためである。同様に、DCE−MRIでのνpは、ボクセル内での血漿の部分体積の測定値であるのに対して、本発明に係るνbは、ボクセル内での血液の部分体積の測定値である。DCE−MRIでのνeは、ボクセル内での間質の部分体積の測定値であるのに対して、本発明に係るνeは、ボクセル内での、細胞および間質を含む非血液部の部分体積の測定値である。
【0121】
各ケースにおいて、測定タイプの差は、DCE−MRIで用いられる人工造影剤は、細胞内に入れないが、酸素は入ることができる点で根拠付けされる。こうしてνpは、血液全体の測定値ではなく、血漿だけのものである。DCE−MRI造影剤は、赤血球内に入り込まず、νe(DCE−MRI用)は、間質の測定値だけである。造影剤は細胞中に入らないためである。
【0122】
ktransは、血管中の「漏洩(leakiness)」、即ち、造影剤を血漿から周囲の間質腔へ拡散させる血管の能力の測定値である。一方、Koxは、酸素を血液から周囲の組織へ拡散させる血管の能力の測定値である。測定したktransは、酸素を血液から局所組織へ拡散させる血管の能力を特徴付けためには使用できないことは理解されよう。従って、Koxは、DCE−MRIでは測定できない測定値を意味する。
【0123】
本発明に係るMoxは、組織内での酸素の代謝消費の測定値である。図8は、DCE−MRIで生成された画像のうち同程度のものを示していない。これは、人工造影剤は消費されないことから、DCE−MRIによって代謝消費を測定することが以前は不可能であったためである。従って、本発明で提供される利点は、以前には測定できなかった生物学的プロセスを測定する能力である。
【0124】
本発明に従って決定されるKox,Mox,Veの値は、OE−MRIデータから直接測定できないため、コンパートメントモデルを、直接測定可能な値(例えば、PO2)にフィッティングさせることによって推定する必要がある。Kox,Mox,Veに関する値を決定する本発明に係る方法は、DCE−MRI、あるいはコンパートメントモデル使用なしのOE−MRIでは得られない測定値が得られる点で有利である。
【0125】
図8に示す画像は、図7に示すようなコンパートメントモデルの研究成果を立証するために使用してもよい。腫瘍が存在し、図7の結果で描かれたものと同じ寸法を有することは、図8から明らかなためである。しかしながら、図8に示した腫瘍は、その中央で暗いように見える。これは、DCE−MRIで用いられた造影剤の腫瘍中心への灌流が欠落していることと、DCE−MRIでは、造影剤が代謝プロセスで消費されず、代謝消費を特徴付けることができないことに起因している。図8dは、明確化のために腫瘍領域だけについてktransを示している。
【0126】
Kox,MoxまたはVeの値の何れかからの図面で示された腫瘍を検出し可視化することが可能であることは図7から明らかである。しかし、Mox値は、腫瘍を検出すること、および周囲の組織とは異なるように腫瘍の代謝機能を特徴付けることの両方の点で、特に有用である。このことは、本発明がOE−MRIの診断能力および予後能力で明確な利益を提供すること、そして、同じ患者のDCE−MRIの診断能力について可能性のある改善が存在することを示している。
【0127】
(実施例3)
本実施例において、発明者は、本発明の一態様に係るコンパートメントモデル・アルゴリズムを実施した。アルゴリズムは、Matlabスクリプト言語でソウトウエアとして実行した。発明者は、コンパクトディスクで配布するために、コンパートメントモデル・アルゴリズムを実行するMatlabスクリプトをパッケージ化した。
【0128】
該ソウトウエアを含むコンパクトディスクは、1.5T フィリップスGyroscan NT Intera MRスキャナを所有する操作者に内密で提供した。操作者は、スキャナを使用し、第1実施例で説明した方法に従って、医療分野で広く利用されている酸素吸入装置とともにOE−MRIスキャンを人間の患者に対して行った。そして、操作者は、コンパクトディスクのソウトウエアを使用し、本発明の一態様に従って、患者のOE−MRIスキャンによって生成されたデータを解析し、患者の組織機能の特徴付けを行った。
【0129】
コンパートメントモデルは、Kox,Mox,Veなど、患者の組織機能を示す値を生成した。ソウトウエアは、コンパートメントモデルによって生成された値を、一連のグラフ、組織パラメータマップなどの種々の手法で表示した。データ値、グラフおよび組織パラメータマップは、医療専門家によって使用され、患者の代謝組織機能を解析し、患者の病気を診断した。患者内の関心のある比較的小さい組織エリアの機能に対するモデルの感度により、医療専門家は、組織内の異常酸素代謝の局所エリアを診断し、それに応じて治療を目標とすることが可能になった。コンパートメントモデル化ソウトウエアに入力されるデータを生成するために、OE−MRIの使用は特に新しく、医療専門家が酸素代謝に関連して組織機能を直接解析できる点で興味深い。この直接解析は、本発明以前では不可能であった。
【0130】
(実施例4)
式(V)のコンパートメントモデルにおけるパラメータCb(血液コンパートメントでの酸素濃度)は、モデルへの入力であり、これは、実施例2において、血液中の分圧PaO2の推定から直接導出される。PaO2は、推定可能な血液のウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間(TOIF)の考慮により、被検者が呼吸する酸素の分圧から推定される。しかしながら、PaO2が直接測定が可能であれば、これらの推定は、Cbへの入力としてもはや必要でない。本実施例は、PaO2およびCbが、被検者の大動脈領域から走査したOE−MRIデータから直接測定可能であることの実証を提示する。本実施例から得られるデータは、実施例2のコンパートメントモデルのCbパラメータへの入力として用いられる推定PaO2データと容易に置換できることは理解されよう。さらに、PO2を測定する本例示の方法は、特に大動脈からのPO2測定での誤差を修正する観点から、実施例2の推定と上手く組み合わせが可能であることは理解されよう。
【0131】
本実施例では、酸素の動脈圧PaO2の変化を表す入力関数は、実施例1,2で推定からモデル化され、MRIデータから直接測定した。これは、図6に示したような推定PaO2データの代わりに、測定したPaO2をモデルパラメータCbへ入力することによって、モデルへの直接入力が可能であった。
【0132】
(a)方法
24人の被検者が、1.5テスラのダイナミックOE−MRIを受診した。14人のボランティア(7人の喫煙者(S)と7人の非喫煙者(NS))が、視野内に大動脈を有し、更なる解析のために選択した。全被検者からインフォームド・コンセントを得た。図8に示すように、44.5cm×44.5cmの視野で、15mm厚の冠状スライスを後方に位置決めした。この体積は、反転回復ターボ磁界エコーシーケンス(TR/TE 2.2/1.0ms、フリップ角5°、取得マトリクス128×256ゼロ充填256×256)を用いて画像化して、初期の非選択反転パルス(25回の反転回数を使用。143msの間隔で最短74ms)から反転を通じて画像を取得し、T1の測定を行った。取得は、18分間連続的に繰り返し、6秒の時間分解能でT1の測定を行った。ボランティアは、医療空気をハドソン(Hudson)マスクを介して最初3分間呼吸し、そして、マスクへの供給を100%酸素に切り替えた。更に9分間後、画像取得の残りのために、供給を空気に戻した。ガスは15L/分で供給した。
【0133】
関心のある領域は、大動脈(図9中の符号A)についてマークし、T1のダイナミック測定値を、Look−Locker信号方程式(文献:Henderson E, McKinnon G,et al. Magn Reson Imaging 1999;17:1163-1171)をフィッティングさせることによって抽出した。酸素吸入によるT1の変化は、緩和定数r1=2.49×10−4(文献:Zaharchuk G, Busse RF, et al. Acad Radiol 2006;13: 1016-1024)を用いて、血漿の酸素分圧の変化(ΔPO2)に変換した。ダイナミックカーブの平坦域(8〜12分の領域として選択される)での平均ΔPO2は、各被験者ごとに記録した。ウィルコクソン順位和検定(Wilcoxon rank sum test)を用いて、喫煙者と非喫煙者についてこれらの値を比較した。Sは、可能性のある減少した酸素交換効率に起因してNSよりも低い平坦域ΔPO2値を有するという仮定を検定した。
【0134】
(b)結果
関心のある領域、即ち、大動脈を示す画像エリアは、42±20画素の平均(mean)を含む。平均ベースライン値および平坦域T1値は、Sに関して1300±200msと1200±100msであり、NSに関して1300±200msと1100±100msであった。図10Aと図10Bは、2つのグループでの各被験者について時間の関数としてプロットしたΔPO2を示すもので、5点移動平均を用いて平滑化している。太いラインは、全ボランティアについて平均時間コースを示す(平滑化なし)。平均の平坦域値は、Sに関して350±90mmHg、NSに関して430±40mmHg(p=0.049)であった。
【0135】
(c)検討
少数のボランティアでは、平坦域ΔPO2値は、2つのグループ間で際どく有意な差を示し、Sは、NSよりも低い平坦域ΔPO2値を示した。Sにおける平坦域ΔPO2値の標準偏差は、NSの2倍であった。空気および100%酸素の呼吸時に、正常なボランティアにおけるPO2動脈血液ガス測定値に関する文献値は、予想ΔPO2は490±20mmHgであることを示唆しており(文献:Floyd TF, Clark JM, et al. J Appl Physiol 2003;95:2453-2461)、これは我々の所見と一致する。動脈血液ガスサンプリングとの直接比較は、測定を正当化するために有利であり、より多くの被検者についての研究は、SとNSと間の差に関して強力な結論を引き出すことが可能であろう。
【0136】
これらのカーブは、OE−MRIで用いたガス運搬システムは予想したとおり機能しており、肺が血液をどのように酸素化するかを示すことによって、包括的な肺機能の指標を与えることを示す。但し、これらはヘモグロビン運搬に関する情報を提供するものではない。動脈血漿酸素化の測定値は、実施例1,2のコンパートメントモデル、または実際には組織機能の任意の適当なモデルへの入力可能として容易に使用できる。
【0137】
結論として、我々は、喫煙者と非喫煙者について大動脈でのT1変化を測定した。これは、r1に関する値を推定すると、ΔPO2の測定値(大動脈で全体として測定した場合、PaO2と等しい)に変換することができ、これは文献値と一致している。これらの非侵襲測定は、広範囲の組織への酸素取り込みのモデル化、そして肺でのガス交換のモデル化に可能性を有する。
【0138】
これは、本発明のコンパートメントモデル・アルゴリズムへの入力PaO2(Cb)を決定する好ましい方法を意味する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織を画像化する方法に関するもので、特に、酸素造影MRI(OE−MRI: Oxygen-Enhanced Magnetic Resonance Imaging)(但し、これに限定されない)へのコンパートメントモデル(compartmental model)の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)は、分数スピン量子数を持つ原子核に作用して分極させる磁界を印加することを含む。測定の際、所定の共鳴エネルギーの高周波パルスが印加され、核スピンを反転させ、配向分布を攪乱する。そして、核が、時間依存の指数関数で初期状態に戻って(緩和し)、これにより記録可能なデータへ電子的に処理できる信号を与える。信号が空間的に微分され、十分なレベルである場合、データは体系化でき、スクリーン上に画像として表示される。例えば、有機組織内にある水のプロトンによって発生した信号の計算によって磁気共鳴映像(MRI)を構築することが可能になり、生体中の内蔵の直接視覚化が可能になる。従って、NMRは、診断、医学治療、手術において強力なツールである。
【0003】
臨床医は、多くの理由のため、被検者内にある組織の代謝機能を検査することを望んでいることは理解されよう。被検者の健康について殆ど判明していない患者診断の初期段階では、代謝機能検査は、患者の全体的な健康の指標を与える。さらに、多くの病気では、病巣が患者の組織エリアに発生し得る。こうした組織エリアは、診断、治療、手術計画または予後評価の目的で臨床医にとって関心の中心となるであろう。関心のあるこうした組織エリアの代謝機能を特徴付けることは、病気を診断したり、治療または手術を案内するのを支援したり、あるいは、臨床医が病気の進行について予後診断を下すのを支援する。例えば、何らかの方法で損傷を受けた組織は、変化した代謝機能を示したり、あるいは代謝機能を全く示さないことがある。特に、腫瘍性組織は、増進または低減した代謝機能を示すことがある。臨床医は、例えば、変化した代謝機能を用いて、被検者内の腫瘍の識別または特徴付けを行うことができる。幾つかの場合、増進した代謝機能は、腫瘍の新たな成長エリアなどに関する予後診断を提供する。
【0004】
ポジトロンCT(PET)が、低い分解能画像を生成できる核医学技術であり、被検者内の組織機能を特徴付けめために使用できる。PETスキャンの際、放射性同位体が被検者内に導入され、スキャナが放射性同位体のシンチレーションを検出する。こうして放射性同位体は、被検者内に位置し、被検者内のその通過が追跡できる。15Oは、PET撮影で広く用いられている造影剤である。残念ながら、この技術は、生成される画像の分解能および放射性同位体の使用の必要性によって限定されている。
【0005】
ダイナミック造影MRI(DCE−MRI: Dynamic contrast-enhanced MRI)も、過去において組織機能を特徴付けるために使用されていた。不活性外因性造影剤は、MRIスキャンによって生成される画像で視認できるもので、被検者の血液供給に導入され、被検者が走査される。得られた画像は、被検者を通る造影剤の灌流(perfusion)を示しており、組織機能の要素、例えば、組織を通る血液灌流、および造影剤に対する組織の浸透性(permeability)などを特徴付けるために使用できる。しかしながら、これらの方法は、酸素運搬または組織内代謝に関する直接的な情報を提供していない。判別されているが普通ではない代替のMRI造影剤は、17Oであり、高価であって入手困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の画像化技術は、被検者の組織機能の特徴付けが可能である。しかしながら、これらの使用は、造影剤(しばしば核医学ベース)の使用を必要とする点で制限される。被検者への「異物」の造影剤の導入は、重大な病態生理学的結果を示すことがある。例えば、放射性造影剤を被検者へ導入するリスクがきちんと文書化されている。これらの理由により、最も脆弱な患者がこれらの画像化技術に適していないケースはよくある。
【0007】
OE−MRIは、肺換気を視覚化する間接的な方法として実演されている。分子酸素(同位体のO2、重要には非放射性である16O)は常磁性であり、実質(parenchymal)水に溶解した場合、T1への影響に起因してNMR造影剤として機能する。(T1は、NMR分野の当業者にとってスピン格子緩和時間という名称で知られており、印加磁界と平行なz方向に沿った時定数である。)100%酸素の呼吸は、肺組織内で溶解した酸素の濃度の増加をもたらし、対応したT1の減少を生じさせ、これはT1加重画像の局部的な信号強度の増加として検出される。100%酸素の呼吸の場合、肺組織内で酸素飽和に到達するのに要する時間、および100%酸素の呼吸の終了後、肺組織内の酸素濃度が通常に戻るのに要する時間を分析した研究が行われている。これらはウォッシュイン(wash-in)時間およびウォッシュアウト(wash-out)時間として知られている。
【0008】
OE−MRIは、身体内の多くのエリア、例えば、腎皮質、脾臓、肝臓、筋肉および腫瘍にある組織機能を分析するためにも用いられている。
【0009】
OE−MRIは、DCE−MRI、MRI用17O、およびPETイメージング用15Oに比べて、大気酸素16Oが豊富に入手可能であり、使用が安全である点で多くの利点を提供する。16Oは、15Oとは反対に非電離性であり、使用をより安全にする。また、16Oは安価であり、15Oや17Oよりも入手が容易である。
【0010】
従って、本発明の目的は、先行技術のスキャン方法(例えば、PET、DCE−MRI、OE−MRI法)に関連した問題を克服することであり、健康状態および病的状態の両方での組織機能および生理機能に関して臨床的に重要な情報を提供する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様によれば、特徴付けが必要とされる被検者の組織機能を特徴付ける方法を提供するものである。該方法は、被検者内で定義されるボクセル(voxel)に対して画像化技術を実施することを含み、被検者が少なくとも2つの異なる分圧の常磁性ガスを含むガスを吸入する期間中に画像データが発生し、さらに、コンパートメントモデル・アルゴリズムを、ボクセルで発生した画像データに適用して、ボクセル内の組織の代謝機能に関する情報を提供することを含む。
【0012】
画像化技術は、当業者に知られている任意の適当な画像化技術でもよい。例えば、MRI、CTスキャン、X線など何れの形態のものでもよい。しかしながら、画像化技術はMRIであることが好ましい。
【0013】
常磁性ガスは、任意の適当な常磁性ガスでもよいが、常磁性ガスは酸素であることが好ましい。
【0014】
画像化技術がMRIである場合、常磁性ガスは酸素であることが好ましい。代替として、MRIを用いた場合、常磁性ガスは、エアロゾルまたは他の造影剤、例えば、MRIで観察した場合、組織内の信号変化を生じさせるガドリニウムベースのエアロゾルであってもよい。
【0015】
画像化技術は、酸素造影磁気共鳴映像法(OE−MRI)であることが最も好ましい。
【0016】
画像データは、組織への酸素運搬および組織内の酸素代謝消費に関する情報を提供することが好ましい。
【0017】
本発明の第1態様の方法により、正常および異常な組織機能を評価することが可能になり、病気を持つ被検者(例えば、腫瘍などの病巣または他の機能不全組織エリアを持つ被検者)あるいは、こうした傷害または病気にかかりやすい者(例えば、環境的原因や遺伝子理由から)について診断を行ったり予後診断を提供するのに有用な重要なデータを提供する。
【0018】
用語「ボクセル(voxel)」とは、被検者内の3次元空間によって定義される格子状の体積要素を意味する。本発明では、被検者は、典型的には数立方ミリメートルである、マトリクス状のボクセルに分割されることが好ましい。
【0019】
本発明は、MRI、特に、OE−MRIと、画像処理の分野での発明者の知識をベースとしている。彼らは、OE−MRIが組織内の酸素運搬および代謝機能を可視化するのに有用であることを評価している。理由は、水性環境(例えば、間質液内、細胞内またはプラズマ(plasma)内)において、酸素が水中のプロトンと相互作用して、変化したNMR信号を生じさせるためである。酸素についてのこれらのMRI特性により、OE−MRIから、組織機能に関係した有意なデータを得ることが可能になるか否かを発明者が検討しているときに、本発明が行われた。彼らは、組織内と血液中との酸素濃度の相違により、OE−MRIを用いて、酸素が組織へ運搬され、関心のある組織内の代謝プロセスで消費されるレートを測定できることを理解した。こうしたデータは、関心のある組織の健康状態に関する有益なデータを臨床医に提供する点で、大きな価値がある。臨床医は、多数の状況(例えば、癌などの腫瘍性疾患)が存在しており、酸素レベル、個別には代謝レート、一般には細胞呼吸機能が、健康な組織の良好な健康指標であり、また腫瘍性組織での新たな成長のエリアなどの良好な指標であり、そして、機能の増強または障害を受けた組織エリアを視覚化するための技術は、診断または予後評価を行うのに極めて強力なものであると評価するであろう。
【0020】
また、発明者は、OE−MRIが強力な技術となり得ることを理解した。理由は、ボクセルサイズをかなり小さく設定でき、全体の組織または腫瘍および周囲エリアまたはその一部に渡って広がるマトリクス状のボクセルからNMR信号を検出することによって、全体の組織または腫瘍および周囲エリアを視覚化するために、NMRが使用できるからである。
【0021】
従って、本発明の方法は、好ましくは、関心のある組織内のマトリクスを形成する「n」個のボクセルについてOE−MRIを実施することを含む。ガス交換の効率は、各ボクセルについて測定可能であり、臨床医には、関心のある組織エリアの個別エリアにおける灌流、酸素拡散および酸素代謝に関する個別の情報が提示できる。
【0022】
発明者は、関心のある組織エリア内の酸素消費レートを計算する最善の方法は、組織からのNMRデータの連続的な動的収集によって、動脈および静脈スペース(第1コンパートメント)から組織(第2コンパートメント)への酸素の移送を分析することであり、一方、ガス供給は、変化する酸素分圧のガス混合物の間で切り替えられ、組織に到着する酸素ガス濃度での変動をもたらすことを理解した。原理上、これは、被検者に少なくとも2つの異なる濃度の酸素を吸い込むことを要求することによって達成し得る。被検者が異なる濃度の酸素を吸い込むときに収集されるMRIデータは、より詳しく後述するアルゴリズムを用いて、代謝酸素消費レートを計算するために使用できる。
【0023】
本発明の実現に寄与するさらに重要な要因は、組織内に拡散した酸素は、組織内で活動する代謝プロセスによって消費されることを発明者が理解した点である。さらに、発明者は、酸素の代謝消費は、被検者の病態生理学的評価を行う場合、極めて重要な要因となり得ることを理解し、そのため組織内の酸素の代謝消費を評価するのに特に有用な方法を開発する努力を行った。従って、本発明の方法の1つの重要な特徴は、この効果が、本発明に従って用いられるアルゴリズムに取り込まれる点である。
【0024】
酸素の代謝消費の測定は、ガドリニウムベースのDCE−MRIなどの他の多くの医学画像化方法を用いても可能ではない。これらの画像化様式は、酸素含有量を測定しないためである。発明者は、酸素の代謝消費は、酸素に関連した画像化データ、例えば、OE−MRIデータからは直接測定できないが、被検者内の周囲媒質にある酸素の結果として時間とともに生成されるMR信号から、測定値が推測できることを理解した。こうして本発明のアルゴリズムにおける代謝要因の組み込みは、組織機能を画像化する何れの先行技術の方法と比べて著しく有利である。こうした要因なしでは、MRIデータから代謝機能の測定値は得られないためである。
【0025】
本発明の方法に従って検査される被検者は、細胞呼吸機能または組織の代謝機能を検査することが望ましい何れの被検者でもよい。被検者は、好ましくは、哺乳類(該手法は、一般に任意の生物、例えば、鳥類、爬虫類、両生類などにも適用可能である)であり、該方法は、獣医学的に重要な動物(例えば、馬、牛、犬または猫)あるいは治療(これに限定されないが、薬理学的なものを含む)開発業務で重要な動物(例えば、マウスやラット)の組織機能を検査するのに特に適している。しかしながら、被検者は、好ましくは人間であることは理解されよう。
【0026】
該方法は、人間の被検者が、細胞呼吸機能の変化(即ち、酸素代謝の変化)によって特徴付けられる条件を有するか否かを調査するために特に有用である。代替として、被検者の組織は、こうした条件が時間とともにどのように進行するか(例えば、医療または手術の診療行為に応答して)を評価するために画像化してもよい。こうした条件は、しばしば「正常」組織とは異なるレートで酸素を消費する癌/腫瘍を含む。感染症(例えば、髄膜炎)、炎症状態(例えば、クローン病)、線維症(例えば、肺線維症)、免疫学的状態(例えば、自己免疫疾患)は全て、組織が、変化した代謝活性を示すようになり、従って、本発明の方法に従って画像化できる。該方法は、腫瘍を画像化するために使用されることが好ましい。
【0027】
本発明の方法は、候補薬物に対して被検者がどのように応答するかを検査するために利用できることも理解されよう。薬物は、関心のある組織中での酸素レベルに対する影響(直接または間接)を有するか否かを査定するために評価される。これは、人間の被検者の臨床試験で行われたり、動物の被検者での候補薬物を検査するため研究プログラムの一部として行われることがある。
【0028】
特に、該方法は、候補薬物が、作用する組織の代謝活性を調節し得るか否かを検査するために採用できる。例えば、癌治療で使用される候補薬物は、薬物投与前の腫瘍の代謝活性(即ち、酸素消費)を検査し(非形質転換細胞ではより大きいであろう)、そして、これと、候補薬物を用いた被検者の治療後の腫瘍の代謝活性とを比較することによって評価してもよい(有用な候補は、腫瘍の代謝活性を減少させると予想できる)。こうしたスクリーンは、好ましくは、充実性腫瘍(例えば、肝臓、膀胱、胃、大腸または肺の腫瘍)を治療するための候補薬物の有用性を評価するために使用してもよい。
【0029】
代替として、スクリーンは、候補抗炎症剤である薬物について実施してもよい(炎症組織は、高い酸素消費を示すと予想され、一方、有効な抗炎症剤は、炎症組織での酸素消費を減少させると予想される)。
【0030】
当業者は、該方法は、正常な健康組織と比較して、増加または減少した酸素消費によって特徴付けられることが知られている多くの病態生理学的症状のスクリーンとして有用になることは理解するであろう。
【0031】
検査される被検者は、MRI装置において、典型的には、必ずしもそうではないが、1.5テスラの磁界強度で位置決めする必要がある。該方法は、専門設備をほとんど必要としないため、人間または動物の用途に設計された任意のMRI装置においてOE−MRIを使用することが可能である。少なくとも2つの異なる分圧の常磁性ガスを含むガスを吸入する被検者は、MRIスキャンの実施中に異なるガスが吸入できるように、ガス配給用のマスクまたは呼吸装置を装着してもよい。ガスが酸素である場合、一方の分圧酸素として大気を用いてもよく、この場合、被検者は装置の使用なしで普通に呼吸する。
【0032】
被検者は、2つのガス(第1ガスは、比較的低い濃度の酸素(例えば、10%〜35%)を有し、他方のガスは、比較的高い濃度の酸素(例えば、45%〜100%)を含有する)を吸入することが好ましい。第1ガスは空気(約21%の酸素を含む)で、他方は90%〜100%の酸素含量を含むガスであることが最も好ましい。使用するガスの選択は、被検者の健康状態に依存するであろうことは理解されよう。
【0033】
造影剤として溶存酸素を用いたスキャンの開始前、生きている被検者の組織内の溶存酸素濃度は、常にゼロより大きい。被検者は連続的に空気を呼吸しているためであり、空気から酸素が取り込まれ、被検者の血液中で組織へ灌流される。これは、15Oや17Oなどの人工造影剤を使用する撮像化技術とは相違している。これらは、豊富な量の天然素材ではなく、被検者の組織内のこれらの濃度はスキャン前はゼロと推定できるためである。第1濃度の酸素の第1ガスを供給することにより、関心のあるエリアの組織内での溶存酸素濃度についてベースライン信号が検出可能になる。スキャンの際、異なる濃度の他のガスを供給することにより、被検者の呼吸による酸素濃度の増加に起因して組織内の酸素濃度が増加する過渡期において、組織内での溶存酸素濃度の変化が検出可能になる。更なる測定を、このガスの呼吸時に行ってもよい。
【0034】
被検者は、第1ガスの呼吸または他の濃度のガスに戻ってもよい。この場合、この更なる過渡期において組織内の溶存酸素濃度の変化を検出する測定を行うことが好ましい。各ガス間の過渡期は、必要に応じて繰り返してもよい。この方法は、組織内の局部酸素濃度および酸素の代謝消費レートについて、単一のガスについて酸素濃度を単に測定することで得られるものより正確な測定を提供する。低濃度酸素から高濃度酸素への変化に要する時間は、「ウォッシュイン(wash-in)」時間として知られている。高濃度酸素から低濃度酸素への変化に要する時間は、「ウォッシュアウト(wash-out)時間」として知られている。ウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間の長さは、単一スキャン期間中の単一被検者についてほぼ等しい。従って、単一スキャン期間中の単一被検者についてのウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間の秒単位の長さは、ここでは単一の値で示している。
【0035】
被検者の所定ボクセル内のMRI可視の酸素分圧(または濃度)の合計(mmHg単位)は、ここではPO2として定義される。血液中だけの酸素濃度は、PaO2として定義される。他の組織(即ち、非血液)での酸素濃度は、PeO2として定義される。従って、PO2=PaO2+PeO2である。本開示の状況において特定の組織内の酸素分圧を参照することが明らかである場合など、幾つかの場合にPO2を参照してもよいことは理解されよう。例えば、血液のPO2への参照は、PaO2との参照と明らかに同じである。
【0036】
血管は、吸入した酸素を肺から関心のある組織へ運搬することは理解されよう。従って、本発明に係るコンパートメントモデル・アルゴリズムは、血液についてウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間を考慮することが好ましい(これらは、動脈酸素濃度が最大値に到達したり、ベースラインに戻るのに要する時間を含み、換気効率および他の肺健康因子の関数である)。血液についてのウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間は、ここでは値(TOIF)で示す。TOIFは、既知の生理的平均値から推定可能であり、被検者の脈管系全体に渡って均一な値をとり得る。後述するように、TOIFは、本発明に従って有用なものになる。それは血液中の酸素分圧(PaO2)を計算するために使用でき、コンパートメントモデル・アルゴリズムへの入力として用いられる。代替として、血液中の酸素濃度(PaO2)の測定は、血液を含むだけのボクセルに焦点を合わせたOE−MRI法(例えば、実施例4の方法を参照のこと)、あるいは血液サンプリングなどの代替の方法を用いて実施してもよい。これらの測定は、被検者の脈管系全体に渡ってPaO2を表す、より正確な値を生成するために使用できる。幾つかの実施形態では、PaO2)の値は、大動脈の領域から採られたOE−MRIデータを用いて測定される。
【0037】
低濃度酸素にある被検者から開始して、吸入したガスをある期間だけ高濃度酸素と交換し、そして、被検者は低濃度酸素ガスを再び吸入するように戻ることによって、OE−MRIデータは各ボクセルごとに記録することが好ましい。本発明の方法は、100%酸素を吸入する前後で個々の人が通常の空気(例えば、21%の酸素を含む医療空気)を呼吸する場合、100%酸素が吸入、排出される被検者からOE−MRIデータを生成するのが最も好ましい。造影剤として作用する異なる酸素濃度は、プロトン(主として組織内の水または液体からであるが、可能性としてNMRを用いて可視化される他のプロトン運搬分子、例えば、N−アセチル・アスパラギン酸、クレアチン、乳酸またはコリンなど)あるいは、他のNMR感度の原子核(例えば、31P,19F,23Na,17O)を含む分子から検出されるNMR信号に影響を及ぼす。そして、このOE−MRIデータは、本発明に従って用いられるアルゴリズムのための入力を生成するために使用してもよい。本発明に係るコンパートメントモデル・アルゴリズムは、OE−MRIデータに適合させてもよい。最も好ましい形態は、実施例において説明している。
【0038】
OE−MRIデータは、s−1単位のT1スピン−格子緩和時間R1(これは、T1信号からR1=T1−1として直接導かれる)でもよい。R1値を、PO2を示す値に変換するために、変換係数を用いることが必要である。任意の所望の変換係数が使用できることは理解されるが、好ましい変換係数はr1=4×10−4 s−1mmHg−1であり、実験的に確定し容認された係数である。代替の変換係数が、2.49×10−4であり、これはZaharchuk G, Busse RFらによって認証された(文献:Acad Radiol 2006; 13: 1016-1024)。R1(単位s−1)は、R1をr1(単位s−1mmHg−1)で除算することによってPO2(単位mmHg−1)に変換できる。変換係数を、リニア係数としてR1値のMRIデータセット全体に適用したと考えると、該方法が、酸素レベル、特に代謝消費での差を評価するために用いられる場合、変換係数の個別の値は重要でないことは理解されよう。係数は、MRIデータ値を、酸素分圧(または濃度)の範囲に変換するために用いられる。
【0039】
健康な肺機能および健康な脈管系を持つ人では、関心のある組織の酸素造影MRI信号は、増加して約5分間で飽和に到達するであろう。ガスが空気に切り替わる場合、信号がその正常なベースラインに減少する時間も、約5分間という同じ時間フレーム内になる。しかしながら、これらの時間スケールは、臓器や病気ごとに変化し得る。典型的には、被検者は、ガス混合物または高濃度酸素との混合物を、約10分間の最大期間、呼吸することが要求されるようになる。高濃度酸素呼吸による副作用は、約24時間露出後であることに注意すると、この露出時間は安全と考えられ、大多数の被検者にとって有害な影響はない。
【0040】
生きている被検者を撮像するMRIを使用する際の挑戦は、スキャン時に被検者の動きによって発生する問題である。例えば、被検者の胸郭が呼吸とともに動いて、被検者が多くの無意識な運動、あるいは自発的な運動が起こるのを防止できないことがあるであろう。これは、MRI信号を単一ボクセルから時間とともに測定することが必要である場合、技術的な挑戦をもたらす。従って、同じ体積の組織から測定できることを確保するために、画像レジストレーション(registration)手法を適用することが好ましい。本発明の方法に従って使用できる好ましい画像レジストレーション手法の一例は、Naishらによって開発されたものである(文献: Naish et al. (2005) Magnetic Resonance in Medicine 54:464-469)。
【0041】
本発明は、コンパートメントモデル化手法をOE−MRIに適用して、組織内の局所代謝機能に関してより個別の情報を供与する、補強情報からのパラメータ抽出を可能にすることの実現化を基礎としている。コンパートメントモデルは、脈管性間隙(空気呼吸時に、動脈内で約95mmHg、静脈内で40mmHgの分圧で酸素を含有する)である第1コンパートメントと、組織細胞および間質(空気呼吸時に、約40mmHgの酸素分圧を持つ組織液に溶解した酸素を含有する)を含む第2コンパートメントとをベースにしてもよい。
【0042】
こうしたモデルの開発はかなりの技術的ハードルを意味することは理解されよう。発明者は、相当な発明努力を発揮して、身体組織のOE−MRI用のコンパートメントモデルを開発し、組織内の酸素代謝を記述するパラメータの計算を可能にした。
【0043】
発明者の1つの特定の実現例は、OE−MRIデータを使用して、他のコントラスト増強法、例えば、17Oを用いたMRI、15Oを用いたPETなどでは測定できないような組織機能の状況に関する情報を生成できることである。関心のある組織空間のOE−MRIによって生成したデータを解析することによって、組織空間内の酸素代謝に直接関係した情報が生成される。この情報は、OE−MRIを用いて直接に測定可能ではないが、発明者は、コンパートメントモデル化を用いて時間とともに直接測定から推定できることを実現した。
【0044】
本発明に係る方法は、好ましくは、血液および組織内の酸素濃度に関する既知の生理学的パラメータをベースとした2−コンパートメントモデルである。こうしたコンパートメントモデルは、好ましくは、被検者の血管、特に、動脈、細動脈および毛細血管の中に存在する血液を含む第1コンパートメント(Cb)と、変化するNMR信号値から得られる、組織細胞および細胞間の間質腔を含む第2コンパートメント(Ce)とからなる、ボクセルの複合(combined)酸素濃度(CT)をモデル化している。
【0045】
測定した値、例えば、溶存酸素濃度の値は、本発明に従って用いられるコンパートメントモデル・アルゴリズムへの入力としてもよく、及び/又は、本発明に係るコンパートメントモデルを測定値に適合させてもよいことは理解されよう。従って、上述のようにR1から導かれる値PO2は、CTと等価であるモデルへの入力として使用してもよい。この点に関して、モデルパラメータCTは、スキャン期間中のボクセル内の全体酸素濃度を表し、モデルは、各ボクセルについての溶存酸素濃度の測定値(即ち、ΔR1から導かれるPO2値)に適合される。さらに、Cbを推定したり測定してもよく(Cbは、PaO2と等しくてもよく、後者は推定したり測定してもよい)、アルゴリズムへの入力として用いてもよいことは理解されよう。
【0046】
幾つかの実施形態では、Cbは、推定したり測定しなくてもよく、従って、アルゴリズムへの入力ではない。むしろCbは、Cbの形状を定義するパラメータをモデルに導入することによって、コンパートメントモデルにおいてモデル化できる。Cbの基本的な形状は、台形関数(trapezoidal function)に追従することが知られている。この台形関数の1つ又はそれ以上のパラメータ(例えば、TOIF:増加した酸素濃度へのウォッシュインおよびそこからのウォッシュアウトの際、台形関数の傾斜を決定する)は、モデルへのパラメータとして使用できる。こうしたモデル公式化において、Cbはおよびそのパラメータ、例えば、TOIFは、モデルからの出力としてもよく、科学的かつ臨床的に有用な情報を表す。
【0047】
コンパートメントモデルは、下記パラメータの1つ又はそれ以上を考慮したり、こうしたパラメータの計算を促進することも好ましい。即ち、MRI可視物質(visible matter)当たりの血液の分数体積(Vb)と、MRI可視物質当たりの組織の分数体積(Ve)と、血管系の拡散能力(Kox)と、第2コンパートメント内の酸素の代謝消費レート(Mox)と、関心のある組織エリアに到着する血液中の予測酸素濃度を定義する入力関数の形状を記述するパラメータ(即ち、上昇する酸素レベルの吸入と、組織内の最大入力酸素濃度との間の時間遅れ(time-lag)、あるいはウォッシュイン時間TOIF)などである。
【0048】
Koxを測定する好ましい実施形態の1つにおいて、Koxは、DCE−MRI法で出力されるktransとは全く相違することは理解されよう。ktransは、血液から組織への造影剤(例えば、ガドリニウムベースの造影剤)の拡散の測定値である。造影剤は、既に存在するものに対してコントラストを提供するものであり、それ自体は被検者にとって異物であり、組織内へ自然に拡散するものではない(あるいは、少なくともDCE−MRIの場合ほど多量ではない)。こうしてktrans測定値は、異質媒体に対する血管系の特定エリアの「漏洩(leakiness)」を示す。これに対してKoxは、血液から組織への酸素の拡散の測定値であり、これは自然なプロセスである。従って、Koxは、酸素が血液から組織へどのように移動するかを測定するのに有用であり、ktransの目的は全く不適当である。
【0049】
コンパートメントモデルは、血液中の酸素量、組織中の拡散酸素量および、酸素が血液から組織へ溶解するレートを考慮することが特に好ましい。
【0050】
コンパートメントモデルは、溶存酸素が代謝消費によって組織から除去されるレート(Mox)に関する出力データを考慮し、提供できることが最も好ましい。モデルが酸素の代謝レートに関する情報を提供できることの実現は、本発明の方法の特定の利点と考えられる。
【0051】
本発明に従って使用されるモデルは、別の数(即ち、2つより大きい)のモデルコンパートメント、例えば、動脈を第1コンパートメントとして割り当て、組織および間質を第2コンパートメントとして割り当て、静脈を第3コンパートメントとして割り当てる3つのコンパートメントモデルをベースとしてもよい。
【0052】
ここで説明するコンパートメントモデルの特定の公式化は、本発明に係るアルゴリズムの応用可能性の制限として解釈されるべきでないことは、一般には理解されよう。一般に、所定ボクセル内の総酸素濃度に関与する(あるいは影響を及ぼす)関心のある任意のパラメータ、例えば、MoxやKoxなどをモデルに盛り込むことは容易である。そして、モデルを、ボクセルごとの酸素濃度に関連する医療画像データにフィッティングさせることによって、そのパラメータに関する値が取得できる。
【0053】
コンパートメントモデルは、Ketyによって開発された方程式の適合であることが好ましい(文献:Kety, SS (1951) Pharmacological Reviews. 3: 1-41)、これは肺胞の細胞膜を通って肺毛細管の血液への拡散レートを説明している。
【0054】
ガス輸送に関するこのモデルが、組織内の酸素代謝をモデル化するために利用可能なように修正できるという実現は、発明者によって克服された大きな技術的課題である。
【0055】
従って、本発明の第1態様の方法は、好ましくは、Ketyの2つのコンパートメントモデルをベースとしたコンパートメントモデル・アルゴリズムを応用する。アルゴリズムは、少なくとも2つの異なる酸素分圧を持つウォッシュイン吸入ガスおよびウォッシュアウト吸入ガスによって得られるOE−MRIデータに適用される。好ましくは、MRI測定は、関心のある組織エリアについて行われ、被検者は、通常の空気(21%酸素)の呼吸から開始し、そして、100%酸素が吸入され所定の期間(例えば、5分間)維持され、そして、100%酸素が排出されて通常の空気(21%酸素)の呼吸に戻る。異なる酸素濃度は、造影剤として機能し、プロトンから検出されるNMR信号に影響を及ぼし、そして、このOE−MRIデータは、本発明に係る2−コンパートメントモデルによってフィッティングされる関数として用いられる。
【0056】
本発明の第1態様の方法に従った使用のために、数多くの異なるアルゴリズムが開発できることは理解されよう。本発明の方法の発明ステップについての1つの理由は、発明者が、コンパートメントモデル、特に、Ketyモデルの修正が、肺内部の組織ではない組織からのOE−MRIデータに適用できること(こうした手法を用いて遭遇する問題にも関わらず)を理解した最初の者であったことは、さらに理解されよう。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、発明者は、下記の証明を適用することによってアルゴリズムを開発した。
【0058】
即ち、第1コンパートメントは血液であり、第1コンパートメントでの酸素濃度はCb(PaO2に対応)で表記でき、第2コンパートメントは組織および組織間にある間質腔を含み、複合酸素濃度はCe(PeO2に対応)で表記できる(図1参照)。血液であるボクセルの部分体積はVbで表記され、組織または間質であるボクセルの部分体積はVeで表記される。従って、測定した酸素濃度CT(PO2に対応)は、下記式(I)から導出できる。
【0059】
【数1】
【0060】
そして、発明者は、Vb=1−Vbeを仮定することによってモデルを開発した。従って、式(I)は、下記式(II)のように近似できる。
【0061】
【数2】
【0062】
Ketyは、不活性ガス輸送のモデル化に関係した2−コンパートメントモデルを導入した。発明者は、2−コンパートメントモデルが、Ketyモデルを適合させることによってOE−MRIデータから組織機能をモデル化するために使用できることを実現した。従って、発明者は、Ketyモデルを適合させて、上昇する酸素濃度の管理下(即ち、>室内空気の21%)で、血管外コンパートメントでの酸素濃度Ceの観測した変化レートが、毛細血管の境界を通る酸素輸送レート(Kox)についての項を組み込んだ表現を用いてモデル化できるようにした。追加の項は、酸素が組織内で吸収されたり代謝されるレート(Mox)を定義するために用いられ、下記の式(III)となる。
【0063】
【数3】
【0064】
Moxについての追加の項は、Ketyモデルでも、後の任意のDCE−MRIベースのコンパートメントモデルでも存在していない。この項は、項Moxは、関心のあるボクセル内の酸素の代謝消費レートを示すという発明者による実現後に、ここで追加された。従って、この項は、診断または予後診断の測定値を表現するものであり、これは実施例2の結果によって生まれている。項Moxは、組織内の酸素濃度に線形的に依存する酸素の代謝消費を表現するものと推定できる。代替の公式化が、別の形式をこの関係に強制してもよく、例えば、組織の代謝消費がこれ以上変化しない最大濃度の定義などである。所定ボクセル内の総酸素濃度に関与する(あるいは影響を及ぼす)組織機能の任意の態様は、この例示モデルでのMoxやKoxと同じように、式(III)に盛り込むことは容易であることは、一般には理解されよう。
【0065】
これらの計算に基づいて、発明者は、式(IV)を用いてCe(即ち、PeO2、組織または間質を含む第2コンパートメントの複合酸素濃度。上述したように計算)を解くことが可能であることを実現した。
【0066】
【数4】
【0067】
式(IV)の同一性は発明者によって使用され、式(IV)を式(II)に代入することによって、式(V)で示すように、任意の所定ボクセル内の測定した酸素濃度CT(即ち、PO2)に関係する方程式を開発した。
【0068】
【数5】
【0069】
臨床的に意味のある情報は、Mox,Kox,Veについての値に付随してもよい。モデルは、任意の適切なアルゴリズム(例えば、レーベンバーグ・マルカート(Levenberg Marquardt)非線形最小二乗フィッティングアルゴリズム)を用いて、これらのパラメータの計算を可能にする。これは、関心のある組織エリアで変化するNMR信号から計算される動的な酸素濃度データセットに対して、コンパートメントモデルCTで記述される関数形式のフィッティングを可能にする(上記式(V)を参照)。
【0070】
そして、フィッティングアルゴリズムの適用によって生成されたデータは、被検者の画像(2次元または3次元)として表示できる。画像の各画素のトーンは、対応するボクセルについてモデルによって出力されたパラメータのうちの1つを表す。
【0071】
本発明の方法は、組織機能に関する予後および診断の両目的にとって、特に腫瘍などの組織病変の場合に、特に有用である。しかしながら、好ましい実施形態において、該方法は、予後および薬物治療の開発および監視において特に有用なものになるであろう。予後的な使用はまた、所定の治療オプションに対して多かれ少なかれ反応する患者の識別を含み、治療のための患者選択基準を改善できる。局所的な組織機能を測定するこの手法は、広範な疾病および症状(例えば、上述したもの)において組織の酸素化および代謝の測定を可能にすることになる。
【0072】
本発明の方法は、先行技術の手法と比べて多くの利点を有することは理解されよう。本発明の以前では、他の作業者が、変化する酸素濃度で達成される信号変化の大きさの単純な比較によって、及び/又は、信号が最大増強に達するの要する時間、または信号がベースラインに落ちるのに要する時間によってOE−MRI信号を解析していた。これらの単純化した手法は、血液による酸素の灌流、組織の酸素化および組織内の酸素代謝の間の複雑な根本的な相互作用を考慮していなかった。
【0073】
本発明の主要な利点は、臨床医が、高価で時間を要する核医学検査、例えば、PETなどを実施する必要がなく、組織機能に関するデータを入手できることである。該方法により、検査を実行する人間が、迅速で比較的標準的なMRIを実施でき(但し、被検者は、異なる酸素濃度を含む第1および追加のガスの供給のためにマスクを着ける必要がある。)、関心のある組織エリアにおける代謝機能、特に酸素の代謝消費の画像を極めて素早く生成できる。
【0074】
DCE−MRIは、ktrans,νe,νbについてのパラメータを生成できることが知られている。これらのパラメータは、組織機能を示すものであるが、これらの意味は本発明に従って生成されるパラメータとはしばしば異なる。DCE−MRIでのktransは、血漿から間質への造影剤の拡散の測定値であり、酸素に関する組織の拡散能力を推定するためには用いられない。これに対して本発明に係るKoxは、血液から組織への酸素の拡散を直接示すものである。DCE−MRIでのνpは、ボクセル内の血漿の比例体積の測定値である。DCE−MRI造影剤は、血漿のみ存在し、血球には存在しないからである。これに対して本発明に係るνbは、ボクセル内の血液の比例体積の測定値である。酸素は血漿および血球の両方に存在するからである。DCE−MRIでのνeは、ボクセル内の間質の比例体積の測定値である。DCE−MRI造影剤は、組織細胞の中に入ることができず、間質腔内に存在するためである。本発明に係るνeは、ボクセル内の、細胞および間質を含む非血液成分の比例体積の測定値である。酸素が細胞内に入ることができるためである。
【0075】
各ケースにおいて、測定タイプの相違は、DCE−MRIで使用する造影剤は細胞内に入ることができず、酸素(OE−MRIでの造影剤)は細胞中に入ることができることを発明者が理解した点に基づいている。
【0076】
本発明に係るMoxは、組織内の酸素の代謝消費の測定値である。DCE−MRIで使用する人工造影剤が何れの代謝プロセスでも消費されないことから、以前はDCE−MRIによる代謝消費を測定することは不可能であった。本発明によって提供される顕著な利点は、以前にはDCE−MRIでもOE−MRIでも測定することが不可能であった酸素の代謝、生物学的プロセスを示す測定値を配給するコンパートメントモデル化またはOE−MRIデータの使用において提供される。
【0077】
組織機能の画像化に適用されるコンパートメントモデルの概念は、患者によって呼吸可能であり、関心のある組織エリアで観測される信号での変化を引き起こす他のガスまたはエアロゾルにも適用可能であることに留意すべきである。特に、関心のある組織エリアで代謝プロセスの一部として消費され得るガスまたはエアロゾルが、コンパートメントモデルが適用できるデータを生成するのに適している。
【0078】
関心のある組織エリアでの酸素濃度および入力関数の測定と関連して、コンパートメントモデルの使用は、スキャン装置またはデータ取得方法から独立した値を有する生理学的パラメータの導出を可能にすることは理解されよう(但し、これらの要因は、導出したパラメータの品質に影響を及ぼし得ることを理解されている)。これは、NMR信号またはT1値に基づいた酸素増強比またはウォッシュイン・レートを測定しようとする方法と比較した利点であり、これらの各々が磁界強度、ガスまたはエアロゾルの性質およびNMRデータ取得技術の選択肢に依存することがある。
【0079】
酸素を造影剤として使用する更なる利点は、無毒性であって、純粋酸素の供給源の設置以上に特別な準備を要しない点である。他の造影剤、例えば、DCE−MRIで使用するもの等は、しばしば毒性があり、及び/又は、正常な組織機能または代謝に人工的な影響を及ぼすことがある。これは、病気で弱っている被検者に特別の問題を意味することがある。さらに、被検者に導入された造影剤は、腎臓によって除去されるる必要があるが、もし正常に機能していなければ、追加の負担になることがある。これらの要因は、撮像被検者が特に弱っており、及び/又は、一定の腎臓症状で苦しんでいる状況では、こうした造影剤の使用を許容しないことがある。
【0080】
さらに、コンパートメントモデルで使用できる他の可能性のある造影剤は、一般に専門家の性質のもので(例えば、ガドリニウムベースのエアロゾル)、酸素よりも実用的でない選択肢になる。さらに、酸素は、実地訓練や生理学的問題なしで、数分間安心して呼吸できる。他の可能性のある造影剤(例えば、ガドリニウムベースのエアロゾル)は、一般には単一の呼吸管理に制限され、実用性を制限するであろう。
【0081】
従って、造影剤としての酸素の使用は多くの利点を提供すること理解されよう(例えば、上述した問題の点で)。
【0082】
本発明の第2態様によれば、組織機能に関するデータを生成するためのコンピュータ装置が提供される。該装置は、
プロセッサ読み取り可能な命令を格納するメモリと、
前記メモリに格納された命令を読み取って実行するように構成されたプロセッサとを備え、
前記プロセッサ読み取り可能な命令は、前記プロセッサを制御し、本発明の第1態様で定義されたアルゴリズムを組織画像データに適用する命令を含む。
【0083】
本発明の第2態様に係る装置は、アルゴリズムの適用に追従する出力を計算し表示するのに必要なコンピュータハードウエアおよびディスプレイ装置を備えてもよい。ハードウエアおよびディスプレイ装置は、該方法で使用するスキャン装置(例えば、MRIスキャナ)とは分離した構成要素でもよく、あるいは、多くの生体医用デジタル画像化システム、例えば、MRIスキャナのように、スキャナ内に一体化していてもよい。従って、コンピュータ装置は、スキャン装置の一部であってもよい。
【0084】
コンピュータソフトウエアが、該モデルをフィットさせるのに必要なアルゴリズムを生のOE−MRIデータに適用して、出力パラメータを組織機能のヒストグラムやマップ、あるいは局所平均値に変換してもよいことは理解されよう。こうしたヒストグラムおよびマップが、MRI用に定常的に生成される。こうしたソフトウエアを用いたOE−MRIデータの操作は、使用者の入力なしで、多数のボクセルからのデータを迅速に操作でき、被検者全体またはある領域について機能の詳細な画像を提供できるという利点を有する。
【0085】
本発明のアルゴリズムは、コンピュータソフトウエアに埋め込んでもよく、画像化装置とは分離または一体化したコンピュータハードウエアおよびディスプレイ装置を用いて実行してもよい。こうしたソフトウエアは、本発明の更なる態様を意味しており、本発明の第3態様に従って、本発明の第1態様で定義されたようなアルゴリズムを適用する方法をコンピュータに実行させるように構成された、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを搭載したキャリア媒体が提供される。
【0086】
本発明を具現化したコンピュータプログラムが何れか所望の方法で提供できることは理解されよう。こうしたコンピュータプログラムは、何れの形式であっても本発明の更なる態様を意味し、本発明の第4態様に従って、本発明の第1態様で定義されたようなアルゴリズムを適用する方法をコンピュータに実行させるように構成された、コンピュータプログラムが提供される。
【0087】
本発明の第4態様に係るソフトウエアは、何れか所望のプログラミング言語、例えば、Java TM(Sun Microsystems, Inc. 901 San Antonio Road Palo Alto, CA 94303, USA)、C++(One Microsoft Way Redmond, WA 98052-6399, USA)、Matlab(The MathWorks, Inc. P.O. Box 845428 Boston, MA, USA)などで提供してもよい。
【0088】
本発明に係るソフトウエアの使用者は、好ましくは、該ソフトウエアを入手し、該ソフトウエアを、適切なMR画像データ、例えば、OE−MRIデータを受け取るように構成された適当なコンピュータシステムにインストールするであろう。
本発明の実施形態について、下記の例および図面を参照しつつ一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】OE−MRIを用いた組織内での酸素運搬についての2−コンパートメントモデルを示す。第1コンパートメントは、ガス分圧濃度PAO2に比例した溶存酸素濃度Cbを持つ血液である。定数Koxは、組織および間質を含む第2コンパートメントとの拡散レートを示す。酸素が、第2コンパートメント内で代謝プロセスにより、代謝消費レートMoxで定義されるレートで消費される。
【図2】本発明の一実施形態に係る方法を表現したフローチャートを示す。
【図3】4人の患者の著しいΔR1を示すボックスプロット(患者1は2つの腫瘍を持つ)。異常値(outliers)は円(○)で示す。
【図4】7つの腫瘍を持つ5人の患者でのグループ平均ΔR1。100%酸素(O2)および医療空気(Air)の呼吸の切り替えを矢印で示す。
【図5】100%酸素の吸入時の患者人口統計データおよびΔR1。平均ΔR1、95%信頼区間およびp値を示す。
【図6】入力酸素圧力PIO2に対する酸素動脈圧PaO2の推定した変化のグラフ。TOIFが定義される。
【図7】本発明に従って計算されるパラメータ:(a)Kox,(b)Mox,(c)Vb,(d)TOIFについてパラメータマップを示す画像。
【図8】比較のため、DCE−MRIで測定されたパラメータ:(a)ktrans,(b)νp,(c)νe,(d)腫瘍領域のみのktransについてパラメータマップを示す画像。
【図9】TI=217msを持つ医療空気を呼吸する被検者の30枚の画像の平均を示す画像。大動脈(符号A)を明確に示している。
【図10A】喫煙者についてΔPO2を時間の関数として示すグラフ。各被験者についてプロットし(薄いライン)、全被験者の平均を単一の太いラインとして示す。
【図10B】非喫煙者についてΔPO2を時間の関数として示すグラフ。各被験者についてプロットし(薄いライン)、全被験者の平均を単一の太いラインとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本発明の一実施形態に従って、図2のフローチャートに示した手順について説明する。被検者の組織は、OE−MRIを用いて走査され、OE−MRIから生成されたデータは、コンパートメントモデルへの入力として用いられ、被検者内の組織機能について臨床的に重要な測定値を出力する。
【0091】
ステップS1において、患者が、最初に空気を約21%のO2濃度(PIO2)で呼吸し、そして、より高いPIO2を含むガス、例えば100%のO2を呼吸し、続いて空気の呼吸に戻るようにした期間内で、磁気共鳴映像(MRI)を用いて患者が画像化される。PIO2のグラフ、即ち、被検者によって呼吸されたO2濃度は、スキャン期間に渡って、図6においてPIO2を付与した破線で示すようにトップハット関数に従う。MRIプロセスは、先行技術で知られており、被検者の3次元領域内にあるボクセルの各フィールドごとに一連の時間依存の値を出力する。個々の一連の値は、スキャン期間内で時間tごとにボクセルでMRスキャナによって生成された一連のT1測定値に関連する。従って、各値は、時間tにおけるボクセル内の総酸素濃度の指標を与える。
【0092】
ステップS2において、3次元のボクセルフィールドは、各時間ポイントごとに位置合わせ(register)が行われ、もし被検者がスキャン期間内に動いた場合でも、これらの動きがスキャンによって出力されたデータから修正可能になる。こうしてレジストレーションが完了して、動きを計算に入れると、ボクセルのフィールドにおいて対応するボクセルは、各時間tについて被検者での同じ物理的位置から取得したT1測定値と関連すると言える。レジストレーションが本発明の任意の要素であることは理解されよう。例えば、動かないように固定された被検者のエリアをスキャンする場合、レジストレーションは必要でない。被検者での動きが存在する場合であっても、本発明は、ボクセルのフィールドを位置合わせすることなく実用的である。但し、ある組織に関するボクセルデータの品質を改善するために、レジストレーションを使用してもよい。
【0093】
ステップS3において、被検者が呼吸した既知の酸素濃度(PIO2)を用いて、被検者の血液内の酸素濃度(PaO2)の推定を行う。この推定は、血液中の増加した酸素レベル(TOIF)に関してウォッシュイン(wash-in)時間およびウォッシュアウト(wash-out)時間に割り当てられた値を用いて、PIO2から行う。TOIFの値は、既知である生理学的平均から推定される。しかしながら、PaO2の値は、種々の手法で直接または間接的に測定してもよいことは理解されよう。大動脈のOE−MRIデータを用いた一手法は、実施例4において記述している。
【0094】
ステップS4において、式(I)〜(V)で上述したコンパートメントモデルは、ステップS1で生成された各ボクセルごとのデータ(即ち、ΔR1値)にフィットされる。モデル出力CT(即ち、PO2)は、式(V)で定義され、パラメータCb,Kox,Mox,Veによって制御された関数を表す。Cbは、血液コンパートメントモデルでの酸素濃度であり、血液中の酸素圧力、即ち、ステップS3で定義されたPaO2(例えば、CbはPaO2と等しいと仮定する)から直接推定してもよい。従って、この推定したCbは、コンパートメントモデルへの入力である。
【0095】
関数を一連のデータにフィットさせることは、数多くの方法によって達成できることは理解されよう。しかしながら、好ましいフィッティング方法は、例えば、レーベンバーグ・マルカート(Levenberg Marquardt)アルゴリズムなどの非線形最小二乗法を使用することである。
【0096】
スキャン期間で各ボクセルごとのデータにモデルをフィッティングすることは、各ボクセルについてKox,Mox,Veの各々の値を提供し、これらは、モデルに送った場合、該ボクセルのOE−MRIとの最小二乗誤差または差分が存在する関数を出力する。こうしてステップS4の結果は、スキャン期間に渡って3次元のボクセルフィールドでの各ボクセルと関連した一組のパラメータ(Kox,Mox,Ve)である。下記の実施例では、パラメータKox,Mox,Veは、被検者の拡散能力、代謝能力および非血液物質の部分体積(ボクセル当り)を示している点で、臨床的に有用であることが立証されている。そして、パラメータVbは、式(II)に関連して説明したように、Veから計算される。
【0097】
ステップS5において、ボクセルフィールドをスライスする2次元平面を定義することによって、画像がボクセルフィールドから出力される。平面上に位置するボクセルは、平面上に形成された画像に含まれる。こうして各パラメータ(Kox,Mox,Ve)について画像が形成可能である。実施例2において各パラメータについて生成した例示の画像を、図6に示している。データの他の表現は、3次元ポリゴン表現または体積表現を含むモデル出力から構築することが容易であることは理解されよう。データは、数値的またはグラフ、あるいは、データが、アクセス可能な診断情報を容易に提供できる何れのフォーマットで表現してもよい。
【0098】
特に、KoxやMoxの値は、比較用のテーブル、グラフまたは画像の形式で表示してもよく、同じ被検者または2つ又はそれ以上の被検者間についての2つ又はそれ以上の別々のスキャンの際、組織内での酸素の代謝消費または拡散を比較するようにしてもよい。この手法では、有用な診断または予後の情報を、本発明に係るコンパートメントモデル化アルゴリズムの結果から収集できることは理解されよう。
【0099】
(実施例1)
本実施例は、OE−MRIスキャンデータが多数の被検者から収集された検査について説明する。このデータは、本発明に従って使用するのに適した性質のものである。本発明によれば、コンパートメントモデルがこのデータにフィットされ、組織機能に関連したパラメータ(例えば、Kox,Mox,Vb)を出力する。本発明に係るこうしたデータの使用の一例は、実施例2において提供している。
【0100】
ここで、我々は、腫瘍縦緩和レート(R1)の酸素誘導変調−正常な組織における前述の効果(文献:RA Jones et al., (2002) MRM 47: 728-35; and JP O'Connor et al., (2007) MRM 58: 490-6)について説明する。これは、血液酸素化レベル依存(BOLD)法とは区別される。我々は、進行癌を持つ患者の集団においてこの手法を評価した。
【0101】
(a)方法
倫理的承認を得た。患者は、フィリップスInteraシステム(Philips Medical Systems, Best, Netherlands)において1.5テスラで撮像した。被検者は、医療空気(21%酸素)を吸入し、続いて100%酸素を、そして、第2段の医療空気を15L/分で非再呼吸回路を通してリザーバ付きマスクを用いて吸入した。初期のT1重み付けおよびT2重み付けした解剖学的手順を行って腫瘍を描写した。面内で≧3cmで、少なくとも3スライスに存在する病巣だけを含めた。
【0102】
全身送信/受信コイルを送信/受信用に選択した。一連の3D T1重み付け高速フィールドエコー画像を取得し(TR 3.5ms,TE 0.9ms,α=2°/8°/17°,1平均,FOV 375mm,マトリクス128×128,4mmスライス厚)、組織T1を推定した。腫瘍をカバーするように、各患者で10cm体積を選択した。測定値は、穏やかな呼吸で、呼吸停止なしで取得した。医療空気を呼吸しつつ24個のべースライン測定値を収集し、続いて100%酸素で48個、そして、医療空気で24個の測定値を収集した。各T1測定の全体取得時間は、19.5秒であった。全体画像化時間は31分12秒であった。最後に、0.1mmol/kgのOmniscan(Amersham Health, Amersham, UK)を自動注入器によって3ml/sで静脈内投与した。フリップ角2°/10°/20°/30°と4NSAを用いて、T1の高速フィールドエコー計算ベースラインに続いて、ダイナミック造影MRIを行った(TR 4.0ms,TE 0.82ms,α=20°,ガス吸入手順と同じ平均,FOV,マトリクスおよびスライス厚)。時間分解能は4.97sであった。
【0103】
画像解析を、社内ソフトウエアでボクセル単位のフィッティング処理を用いて行った。腫瘍体積は、T1重み付けおよびT2重み付けした解剖学的画像と同じであり、病巣全体を包囲するようにして、関心のある体積(VOI)を線引きした。縦緩和レートの変化(ΔR1(t)=R1(t)−R1(air))を各時間ポイントごとに計算した(文献:JP O'Connor et al., (2007) MRM 58: 490-6)。ΔR1は、時間ポイント(t)での酸素濃度の変化に比例し、比例係数は酸素についての縦緩和定数r1である。R1(t)は、各時間ポイントでのR1値である。R1(air)は、平均ベースラインR1値(空気の呼吸時)である。測定したR1変化の意味は、SPSS 13.0. IAUCでの一元配置分散分析によって検査した。Ktransは、仮の動脈入力関数を持つ拡張Toftsモデルを用いて計算し(文献:GJ Parker et al., (2006) MRM 56: 993-1000)、スピアマン(Spearman)のρを用いて酸素誘導ΔR1との相関をとった。
【0104】
(b)結果
進行性固形癌を持つ5人の患者を採用した(全て女性、平均年齢62.6才)。画像化手順は、全ての被検者にうまく許容された。全体として、7個の病巣を識別した。100%酸素の呼吸時に、各腫瘍につき0.0087〜0.0526s−1の平均ΔR1値を測定した。この変化は、5個の病巣において統計的に有意であった(図3と図5)。ΔR1は、1個の腫瘍のみ、医療空気に切り替えたときにベースラインに戻った(患者1 腫瘍2;p=0.02)。グループ解析は、酸素吸入時にΔR1の明らかな上昇を示し(p<0.001)、患者が医療空気の呼吸に戻った時、ベースライン値に向かうΔR1の無意味な減少を示した(p=0.117)(図4)。患者人口統計データおよび腫瘍の詳細を表1に集約している。酸素誘導ΔR1の大きさと腫瘍メジアンIAUCまたはKtransとの間に有意な相関は存在しなかった。
【0105】
(c)検討
酸素過剰ガスの吸入によるR1マッピングでの画像コントラストは、動脈血漿および組織液での溶解分子酸素の常磁性効果に起因する。この研究は、人間の腫瘍での効果を説明した最初のものであり、進行性上皮性卵巣癌を持つ4人の患者において、被検者が医療空気から100%酸素に切り替えた時に有意なΔR1を報告している。胃腺癌を持つ患者では2つの肝転移において、緩慢で無意味なΔR1を検出した。動脈血流が信号変化に寄与する重要な要因になるであろうが、測定したΔR1は、IAUCおよびKtransの両方によって推定される腫瘍血流から独立しており、酸素誘導ΔR1は、酸素の運搬、拡散、代謝の複合測定になるであろうことを示唆する。一般に、該手順はうまく許容され、許容できる信号対ノイズ比を持つ測定可能な信号変化を出力した。これらの予備結果は、有望であり、腫瘍変調R1が酸素化状態についての新規なバイオマーカーを出力し得ることを示唆しており、更なる研究に値するものである。
【0106】
こうして本実施例は、被検者が2つの異なる分圧の常磁性ガス(酸素)を呼吸する期間において、腫瘍の酸素化の差がOE−MRIによって測定可能であることを示す。従って、このデータは、本発明に係る方法においてコンパートメントモデル化への適用に適している。
【0107】
(実施例2)
本実施例は、コンパートメントモデルを、例えば、実施例1で生成されたようなOE−MRIデータにフィッティングすることについて説明する。例示のコンパートメントモデルの適用の結果は、DCE−MRIから生成される標準パラメータを参照して説明する。DCE−MRIは、実績のある診断および予後の能力を備えた、許容された医用画像取得手段(modality)である。
【0108】
第1実施例の方法セクションで説明したデータ取得方法を、腫瘍を有することが判明した被検者に適用して、本発明の方法の有用性を立証できた。本発明の方法に従って生成された結果は、従来の画像化手法(DCE−MRI)を用いて得られたものに匹敵するものであった。
【0109】
(a)方法
更なる被検者のスキャンから取得したデータは、第1実施例と関連して上述のスキャンに従って実施されたものであり、式(I)〜(V)と関連して、上述したコンパートメントモデルのフィットへの入力データとして使用した。
【0110】
溶存酸素は、周囲の水プロトンのR1の増加(上述したように)を誘導し、これは、T1重み付け画像において増加した信号によって測定される。上述のように、R1と局所酸素濃度との関係は、変化するヘマトクリット値を持つ血液において、HeuckelおよびSilvennoinenによって測定された。典型的なヘマトクリット値0.41についてこれらの実験からの適切な平均は、r1=4×10−4 s−1mmHg−1である。この係数は、R1をr1で除算することによって、R1をPO2に変換するために使用できる。そして、得られたPO2の値は、CTとして、式(I)〜(V)で説明したモデルへの入力となり得る。
【0111】
Cbとして入力されるデータは、図6に示すように、酸素の呼吸圧力(PIO2)についての値に対して、変換係数を適用することによって生成した。図6は、既知の入力(即ち、呼吸)酸素圧力(PIO2)に対して、推定した動脈酸素圧力(PaO2)を示す。PIO2の入力圧力が増加した後、動脈圧力PaO2は相応に増加して、最大圧力に増加するまでの時間TOIFを要することが判る。患者が呼吸した酸素圧力の続く低下は、動脈分圧PaO2での低下を引き起こし、そして、動脈分圧が入力分圧PIO2の変化に追従するのに要する時間は、TOIFで示される。
【0112】
PaO2の直接測定(例えば、実施例4を参照)を、Cbの入力として用いてもよいことは理解されよう。
【0113】
(b)結果
変換したOE−MRIデータ(PO2)およびPaO2データは、式(V)にCTおよびCbとしてそれぞれ入力し、レーベンバーグ・マルカート(Levenberg Marquardt)非線形最小二乗フィッティングアルゴリズムを適用した。
【0114】
これにより、発明者は、Kox,Mox,Veおよび、関心のある走査組織の画像として提示できる他のパラメータに関連した、臨床的に有用な情報を提供できる(図7)。
【0115】
比較のために、図7と図8は、(a)〜(d)を付与した被検者の4つの軸方向像をそれぞれ示している。各画像は、被検者で同じエリアから採られたデータから生成されており、健康組織および腫瘍組織の両方からの値を示す。図7は、式(I)〜(V)を参照して上述したコンパートメントモデルを用いたOE−MRIの結果を示す。図8は、同じ被検者のDCE−MRIから得られた標準値を示す。
【0116】
図7は、被検者についてコンパートメントモデルから計算した多数のパラメータについての組織マップを示す。図7aは、Kox値を示すもので、被検者の腫瘍が画像の左側において比較的明るい卵形として見えることが判る。これは、腫瘍組織の酸素化が周囲の組織よりも良好であることを示す。腫瘍の上側エッジ部は、特によく見えており、周囲の腫瘍性組織および非腫瘍性組織よりも、影で明るい。
【0117】
図7bは、被検者の同じ場所で、Mox値または酸素の代謝消費を示す。画像は、腫瘍領域でより明るく、腫瘍は周囲の組織より高いレートで酸素を消費していることを示す。より明るい腫瘍の上側エッジ部が見えており、この領域での代謝活性が高いことを示す。このようにして腫瘍による酸素の消費を直接観測することは、他の知られた方法では可能ではないであろう。従って、本発明の方法は、可能性のある将来の腫瘍成長を直接評価するという優れた利点を提供する。これはDCE−MRIでは生成できないパラメータである。DCE−MRIで用いられる可視造影剤は、代謝消費には適していないためである。その結果、Moxは、本発明の例示の実施形態によって生成された成果であり、診断医にとって以前は利用できなかった診断情報を提供できる。
【0118】
図7cは、図7aと図7bに示した被検者の同じ領域を通る、Ve値または組織対血液の比率を示す。図7cは、腫瘍は、その周囲エリアよりも多くの血液を有することを示している。腫瘍内の高い血液濃度は、腫瘍を検出し、より多くの血液を受け取る腫瘍は代謝活性がより高くなる点で、その機能を特徴付けるために使用できる。また、多くの腫瘍治療は、腫瘍への血流を減少させることに取り組んでおり、本発明を用いたこの値の計算は、治療などの成功を評価するために有用であろう。
【0119】
図7dは、被検者の組織内で最大酸素濃度についてのTOIF遅れ時間を示す。図7dから、腫瘍は、周囲の組織とは異なって見えることが判る。但し、この画像だけは、腫瘍の検出および特徴付けにはあまり有効でないであろうことも判る。組織内のウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間に関してあまり正確でない値は、腫瘍のOE−MRIについて過去に計算されている。
【0120】
図8a〜図8cは、DCE−MRI走査によって生成される標準的な値であるKtrans,Vp,Ve,の値を示す。ktransは、Koxと同一視できない。DCE−MRIでのktransは、血漿から間質への人工造影剤の拡散の測定値であるのに対して、本発明に係るKoxは、血液から組織への酸素の拡散の測定値であるためである。同様に、DCE−MRIでのνpは、ボクセル内での血漿の部分体積の測定値であるのに対して、本発明に係るνbは、ボクセル内での血液の部分体積の測定値である。DCE−MRIでのνeは、ボクセル内での間質の部分体積の測定値であるのに対して、本発明に係るνeは、ボクセル内での、細胞および間質を含む非血液部の部分体積の測定値である。
【0121】
各ケースにおいて、測定タイプの差は、DCE−MRIで用いられる人工造影剤は、細胞内に入れないが、酸素は入ることができる点で根拠付けされる。こうしてνpは、血液全体の測定値ではなく、血漿だけのものである。DCE−MRI造影剤は、赤血球内に入り込まず、νe(DCE−MRI用)は、間質の測定値だけである。造影剤は細胞中に入らないためである。
【0122】
ktransは、血管中の「漏洩(leakiness)」、即ち、造影剤を血漿から周囲の間質腔へ拡散させる血管の能力の測定値である。一方、Koxは、酸素を血液から周囲の組織へ拡散させる血管の能力の測定値である。測定したktransは、酸素を血液から局所組織へ拡散させる血管の能力を特徴付けためには使用できないことは理解されよう。従って、Koxは、DCE−MRIでは測定できない測定値を意味する。
【0123】
本発明に係るMoxは、組織内での酸素の代謝消費の測定値である。図8は、DCE−MRIで生成された画像のうち同程度のものを示していない。これは、人工造影剤は消費されないことから、DCE−MRIによって代謝消費を測定することが以前は不可能であったためである。従って、本発明で提供される利点は、以前には測定できなかった生物学的プロセスを測定する能力である。
【0124】
本発明に従って決定されるKox,Mox,Veの値は、OE−MRIデータから直接測定できないため、コンパートメントモデルを、直接測定可能な値(例えば、PO2)にフィッティングさせることによって推定する必要がある。Kox,Mox,Veに関する値を決定する本発明に係る方法は、DCE−MRI、あるいはコンパートメントモデル使用なしのOE−MRIでは得られない測定値が得られる点で有利である。
【0125】
図8に示す画像は、図7に示すようなコンパートメントモデルの研究成果を立証するために使用してもよい。腫瘍が存在し、図7の結果で描かれたものと同じ寸法を有することは、図8から明らかなためである。しかしながら、図8に示した腫瘍は、その中央で暗いように見える。これは、DCE−MRIで用いられた造影剤の腫瘍中心への灌流が欠落していることと、DCE−MRIでは、造影剤が代謝プロセスで消費されず、代謝消費を特徴付けることができないことに起因している。図8dは、明確化のために腫瘍領域だけについてktransを示している。
【0126】
Kox,MoxまたはVeの値の何れかからの図面で示された腫瘍を検出し可視化することが可能であることは図7から明らかである。しかし、Mox値は、腫瘍を検出すること、および周囲の組織とは異なるように腫瘍の代謝機能を特徴付けることの両方の点で、特に有用である。このことは、本発明がOE−MRIの診断能力および予後能力で明確な利益を提供すること、そして、同じ患者のDCE−MRIの診断能力について可能性のある改善が存在することを示している。
【0127】
(実施例3)
本実施例において、発明者は、本発明の一態様に係るコンパートメントモデル・アルゴリズムを実施した。アルゴリズムは、Matlabスクリプト言語でソウトウエアとして実行した。発明者は、コンパクトディスクで配布するために、コンパートメントモデル・アルゴリズムを実行するMatlabスクリプトをパッケージ化した。
【0128】
該ソウトウエアを含むコンパクトディスクは、1.5T フィリップスGyroscan NT Intera MRスキャナを所有する操作者に内密で提供した。操作者は、スキャナを使用し、第1実施例で説明した方法に従って、医療分野で広く利用されている酸素吸入装置とともにOE−MRIスキャンを人間の患者に対して行った。そして、操作者は、コンパクトディスクのソウトウエアを使用し、本発明の一態様に従って、患者のOE−MRIスキャンによって生成されたデータを解析し、患者の組織機能の特徴付けを行った。
【0129】
コンパートメントモデルは、Kox,Mox,Veなど、患者の組織機能を示す値を生成した。ソウトウエアは、コンパートメントモデルによって生成された値を、一連のグラフ、組織パラメータマップなどの種々の手法で表示した。データ値、グラフおよび組織パラメータマップは、医療専門家によって使用され、患者の代謝組織機能を解析し、患者の病気を診断した。患者内の関心のある比較的小さい組織エリアの機能に対するモデルの感度により、医療専門家は、組織内の異常酸素代謝の局所エリアを診断し、それに応じて治療を目標とすることが可能になった。コンパートメントモデル化ソウトウエアに入力されるデータを生成するために、OE−MRIの使用は特に新しく、医療専門家が酸素代謝に関連して組織機能を直接解析できる点で興味深い。この直接解析は、本発明以前では不可能であった。
【0130】
(実施例4)
式(V)のコンパートメントモデルにおけるパラメータCb(血液コンパートメントでの酸素濃度)は、モデルへの入力であり、これは、実施例2において、血液中の分圧PaO2の推定から直接導出される。PaO2は、推定可能な血液のウォッシュイン時間およびウォッシュアウト時間(TOIF)の考慮により、被検者が呼吸する酸素の分圧から推定される。しかしながら、PaO2が直接測定が可能であれば、これらの推定は、Cbへの入力としてもはや必要でない。本実施例は、PaO2およびCbが、被検者の大動脈領域から走査したOE−MRIデータから直接測定可能であることの実証を提示する。本実施例から得られるデータは、実施例2のコンパートメントモデルのCbパラメータへの入力として用いられる推定PaO2データと容易に置換できることは理解されよう。さらに、PO2を測定する本例示の方法は、特に大動脈からのPO2測定での誤差を修正する観点から、実施例2の推定と上手く組み合わせが可能であることは理解されよう。
【0131】
本実施例では、酸素の動脈圧PaO2の変化を表す入力関数は、実施例1,2で推定からモデル化され、MRIデータから直接測定した。これは、図6に示したような推定PaO2データの代わりに、測定したPaO2をモデルパラメータCbへ入力することによって、モデルへの直接入力が可能であった。
【0132】
(a)方法
24人の被検者が、1.5テスラのダイナミックOE−MRIを受診した。14人のボランティア(7人の喫煙者(S)と7人の非喫煙者(NS))が、視野内に大動脈を有し、更なる解析のために選択した。全被検者からインフォームド・コンセントを得た。図8に示すように、44.5cm×44.5cmの視野で、15mm厚の冠状スライスを後方に位置決めした。この体積は、反転回復ターボ磁界エコーシーケンス(TR/TE 2.2/1.0ms、フリップ角5°、取得マトリクス128×256ゼロ充填256×256)を用いて画像化して、初期の非選択反転パルス(25回の反転回数を使用。143msの間隔で最短74ms)から反転を通じて画像を取得し、T1の測定を行った。取得は、18分間連続的に繰り返し、6秒の時間分解能でT1の測定を行った。ボランティアは、医療空気をハドソン(Hudson)マスクを介して最初3分間呼吸し、そして、マスクへの供給を100%酸素に切り替えた。更に9分間後、画像取得の残りのために、供給を空気に戻した。ガスは15L/分で供給した。
【0133】
関心のある領域は、大動脈(図9中の符号A)についてマークし、T1のダイナミック測定値を、Look−Locker信号方程式(文献:Henderson E, McKinnon G,et al. Magn Reson Imaging 1999;17:1163-1171)をフィッティングさせることによって抽出した。酸素吸入によるT1の変化は、緩和定数r1=2.49×10−4(文献:Zaharchuk G, Busse RF, et al. Acad Radiol 2006;13: 1016-1024)を用いて、血漿の酸素分圧の変化(ΔPO2)に変換した。ダイナミックカーブの平坦域(8〜12分の領域として選択される)での平均ΔPO2は、各被験者ごとに記録した。ウィルコクソン順位和検定(Wilcoxon rank sum test)を用いて、喫煙者と非喫煙者についてこれらの値を比較した。Sは、可能性のある減少した酸素交換効率に起因してNSよりも低い平坦域ΔPO2値を有するという仮定を検定した。
【0134】
(b)結果
関心のある領域、即ち、大動脈を示す画像エリアは、42±20画素の平均(mean)を含む。平均ベースライン値および平坦域T1値は、Sに関して1300±200msと1200±100msであり、NSに関して1300±200msと1100±100msであった。図10Aと図10Bは、2つのグループでの各被験者について時間の関数としてプロットしたΔPO2を示すもので、5点移動平均を用いて平滑化している。太いラインは、全ボランティアについて平均時間コースを示す(平滑化なし)。平均の平坦域値は、Sに関して350±90mmHg、NSに関して430±40mmHg(p=0.049)であった。
【0135】
(c)検討
少数のボランティアでは、平坦域ΔPO2値は、2つのグループ間で際どく有意な差を示し、Sは、NSよりも低い平坦域ΔPO2値を示した。Sにおける平坦域ΔPO2値の標準偏差は、NSの2倍であった。空気および100%酸素の呼吸時に、正常なボランティアにおけるPO2動脈血液ガス測定値に関する文献値は、予想ΔPO2は490±20mmHgであることを示唆しており(文献:Floyd TF, Clark JM, et al. J Appl Physiol 2003;95:2453-2461)、これは我々の所見と一致する。動脈血液ガスサンプリングとの直接比較は、測定を正当化するために有利であり、より多くの被検者についての研究は、SとNSと間の差に関して強力な結論を引き出すことが可能であろう。
【0136】
これらのカーブは、OE−MRIで用いたガス運搬システムは予想したとおり機能しており、肺が血液をどのように酸素化するかを示すことによって、包括的な肺機能の指標を与えることを示す。但し、これらはヘモグロビン運搬に関する情報を提供するものではない。動脈血漿酸素化の測定値は、実施例1,2のコンパートメントモデル、または実際には組織機能の任意の適当なモデルへの入力可能として容易に使用できる。
【0137】
結論として、我々は、喫煙者と非喫煙者について大動脈でのT1変化を測定した。これは、r1に関する値を推定すると、ΔPO2の測定値(大動脈で全体として測定した場合、PaO2と等しい)に変換することができ、これは文献値と一致している。これらの非侵襲測定は、広範囲の組織への酸素取り込みのモデル化、そして肺でのガス交換のモデル化に可能性を有する。
【0138】
これは、本発明のコンパートメントモデル・アルゴリズムへの入力PaO2(Cb)を決定する好ましい方法を意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特徴付けが必要とされる被検者の組織機能を特徴付ける方法であって、
関心のある組織空間内で定義されるボクセルに対して画像化技術を実施することを含み、被検者が少なくとも2つの異なる分圧の常磁性ガスを含むガスを吸入する期間中に画像データが発生し、
さらに、コンパートメントモデル・アルゴリズムを、ボクセルで発生した画像データに適用して、組織の代謝機能に関する情報を提供することを含む方法。
【請求項2】
画像化技術は、酸素造影磁気共鳴映像法(OE−MRI)であり、常磁性ガスは酸素である請求項1記載の方法。
【請求項3】
組織は、マトリクス状のボクセルに分割され、OE−MRIデータは各ボクセルについて生成される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
被検者が、最初に0%〜35%の酸素分圧を持つ第1ガスを吸入し、続いて45%〜100%の酸素分圧を持つ第2ガスを呼吸し、最後に第1ガスを再吸入するときに、OE−MRIデータが生成される。請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
第1ガスは空気であり、第2ガスは100%酸素である請求項4記載の方法。
【請求項6】
組織は、腫瘍を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
画像化技術が時間とともに同じボクセルについて実施されることを確保するための画像レジストレーションを改善する手法が適用される請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、運搬、拡散および代謝のレートについての生理学的パラメータをベースとした2−コンパートメントモデルである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、細胞および間質を含む第2コンパートメント(Ce)の複合酸素濃度を計算するようにした請求項8記載の方法。
【請求項10】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、MRI可視物質当たりの血液の分数体積(Vb)を計算するようにした請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、血管系の拡散能力(Kox)を計算するようにした請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、代謝消費レート(Mox)を計算するようにした請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、血液中の酸素濃度(Cb)を示す項を組み込むようにした請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
血液中の酸素濃度(Cb)は、呼吸した酸素濃度PIO2から計算される請求項13記載の方法。
【請求項15】
Cbは、血液について推定したウォッシュイン時間またはウォッシュアウト時間(TOIF)に関して計算される請求項13記載の方法。
【請求項16】
Cbは、血液中の酸素濃度の測定値から決定される請求項13記載の方法。
【請求項17】
血液中の酸素濃度の測定値は、OE−MRIデータから測定される請求項16記載の方法。
【請求項18】
OE−MRIデータは、大血管を含む、被検者のある領域から採られる請求項17記載の方法。
【請求項19】
アルゴリズムは、Ketyによって開発され、(文献:Kety, SS (1951) Pharmacological Reviews. 3: 1-41)に公開された方程式をベースとしている請求項8〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
アルゴリズムは、ここで定義されたような下記の式である請求項8〜19のいずれかに記載の方法。
【数1】
【請求項21】
コンパートメントモデルまたはアルゴリズムは、代替の用語または異なる数のコンパートメントを組み込むように変更されるとともに、Ketyによって開発され、(文献:Kety, SS (1951) Pharmacological Reviews. 3: 1-41)に公開された方程式に基づいて、自由拡散するトレーサのコンパートメントモデル化の使用を基礎とする基本原理に従うようにした請求項8〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
診断または予後の目的のため、あるいは治療開発のため、人間または動物での組織機能を評価するようにした請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
組織機能に関するデータを生成するためのコンピュータ装置であって、
プロセッサ読み取り可能な命令を格納するメモリと、
前記メモリに格納された命令を読み取って実行するように構成されたプロセッサとを備え、
前記プロセッサ読み取り可能な命令は、前記プロセッサを制御し、請求項8〜21のいずれかに記載のアルゴリズムを、請求項1〜7のいずれかに記載の画像データに適用する命令を含むようにした装置。
【請求項24】
請求項8〜21のいずれかに記載のアルゴリズムを、請求項1〜7のいずれかに記載の画像データに適用する方法をコンピュータに実行させるように構成された、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを搭載したキャリア媒体。
【請求項25】
請求項8〜21のいずれかに記載のアルゴリズムを、請求項1〜7のいずれかに記載の画像データに適用する方法をコンピュータに実行させるように構成されたコンピュータプログラム。
【請求項1】
特徴付けが必要とされる被検者の組織機能を特徴付ける方法であって、
関心のある組織空間内で定義されるボクセルに対して画像化技術を実施することを含み、被検者が少なくとも2つの異なる分圧の常磁性ガスを含むガスを吸入する期間中に画像データが発生し、
さらに、コンパートメントモデル・アルゴリズムを、ボクセルで発生した画像データに適用して、組織の代謝機能に関する情報を提供することを含む方法。
【請求項2】
画像化技術は、酸素造影磁気共鳴映像法(OE−MRI)であり、常磁性ガスは酸素である請求項1記載の方法。
【請求項3】
組織は、マトリクス状のボクセルに分割され、OE−MRIデータは各ボクセルについて生成される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
被検者が、最初に0%〜35%の酸素分圧を持つ第1ガスを吸入し、続いて45%〜100%の酸素分圧を持つ第2ガスを呼吸し、最後に第1ガスを再吸入するときに、OE−MRIデータが生成される。請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
第1ガスは空気であり、第2ガスは100%酸素である請求項4記載の方法。
【請求項6】
組織は、腫瘍を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
画像化技術が時間とともに同じボクセルについて実施されることを確保するための画像レジストレーションを改善する手法が適用される請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、運搬、拡散および代謝のレートについての生理学的パラメータをベースとした2−コンパートメントモデルである請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、細胞および間質を含む第2コンパートメント(Ce)の複合酸素濃度を計算するようにした請求項8記載の方法。
【請求項10】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、MRI可視物質当たりの血液の分数体積(Vb)を計算するようにした請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、血管系の拡散能力(Kox)を計算するようにした請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、代謝消費レート(Mox)を計算するようにした請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
コンパートメントモデル・アルゴリズムは、血液中の酸素濃度(Cb)を示す項を組み込むようにした請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
血液中の酸素濃度(Cb)は、呼吸した酸素濃度PIO2から計算される請求項13記載の方法。
【請求項15】
Cbは、血液について推定したウォッシュイン時間またはウォッシュアウト時間(TOIF)に関して計算される請求項13記載の方法。
【請求項16】
Cbは、血液中の酸素濃度の測定値から決定される請求項13記載の方法。
【請求項17】
血液中の酸素濃度の測定値は、OE−MRIデータから測定される請求項16記載の方法。
【請求項18】
OE−MRIデータは、大血管を含む、被検者のある領域から採られる請求項17記載の方法。
【請求項19】
アルゴリズムは、Ketyによって開発され、(文献:Kety, SS (1951) Pharmacological Reviews. 3: 1-41)に公開された方程式をベースとしている請求項8〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
アルゴリズムは、ここで定義されたような下記の式である請求項8〜19のいずれかに記載の方法。
【数1】
【請求項21】
コンパートメントモデルまたはアルゴリズムは、代替の用語または異なる数のコンパートメントを組み込むように変更されるとともに、Ketyによって開発され、(文献:Kety, SS (1951) Pharmacological Reviews. 3: 1-41)に公開された方程式に基づいて、自由拡散するトレーサのコンパートメントモデル化の使用を基礎とする基本原理に従うようにした請求項8〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
診断または予後の目的のため、あるいは治療開発のため、人間または動物での組織機能を評価するようにした請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
組織機能に関するデータを生成するためのコンピュータ装置であって、
プロセッサ読み取り可能な命令を格納するメモリと、
前記メモリに格納された命令を読み取って実行するように構成されたプロセッサとを備え、
前記プロセッサ読み取り可能な命令は、前記プロセッサを制御し、請求項8〜21のいずれかに記載のアルゴリズムを、請求項1〜7のいずれかに記載の画像データに適用する命令を含むようにした装置。
【請求項24】
請求項8〜21のいずれかに記載のアルゴリズムを、請求項1〜7のいずれかに記載の画像データに適用する方法をコンピュータに実行させるように構成された、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを搭載したキャリア媒体。
【請求項25】
請求項8〜21のいずれかに記載のアルゴリズムを、請求項1〜7のいずれかに記載の画像データに適用する方法をコンピュータに実行させるように構成されたコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−519291(P2011−519291A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504528(P2011−504528)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000979
【国際公開番号】WO2009/127827
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(505395858)ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター (18)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000979
【国際公開番号】WO2009/127827
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(505395858)ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター (18)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
【Fターム(参考)】
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