説明

画像印画装置、その制御方法およびプログラム

【課題】見開きレイアウト印画において1つの画像を複数の画像に分割して印画した場合に、分割した画像間のつなぎ目が不連続となることを回避する。
【解決手段】画像を印画用紙43に印画し、印画した印画用紙43を切断して印画物を生成する画像印画装置20であって、1つの画像を複数の画像に分割する画像分割手段と、前記画像分割手段によって分割された画像に対して分割された一辺に沿って切代画像を合成する画像合成手段と、前記画像合成手段によって合成された画像を印画用紙に印画する印画手段と、前記印画手段により印画された印画用紙を切断する際に、前記切代画像が印画された領域内で切断する切断手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像印画装置、その制御方法およびプログラムに関するものである。特に1つの画像を複数の画像に分割して印画する見開きレイアウト印画に用いられて好適である。
【背景技術】
【0002】
ロール紙等の印画用紙に対して画像の印画処理を行い、カッタ機構を駆動し印画用紙をカットすることで印画物を生成する昇華型熱転写式の画像印画装置が知られている。このような画像印画装置では、発熱させたサーマルヘッドをインクシートに押圧し、昇華したインクを印画用紙に熱転写させることで画像を形成する。
【0003】
図10は、インクシート100の一部の構成を示す図である。インクシート100は、各斜線部分にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のインク層およびオーバコート(OC)のオーバコート層が一面ずつ順番に並べて形成されている。各インク層およびオーバコート層の先頭にはインク先頭検出センサが検出するための頭出しマーカ101が形成されている。1回の印画処理は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバーコート(OC)の転写を繰り返すことで完了する。1回の印画処理で印画される印画サイズは、インクシート100の各層の一面サイズによって規定される。
【0004】
また、画像印画装置によって印画された印画物を整理するためにフォトブックが利用されている。フォトブックはフォトブック作成キットに印画物を貼り付けることで作成される。図11は、フォトブック作成キットの構成を示す図である。図11(a)に示すようにフォトブック作成キット111は厚紙等の台紙を複数枚綴った一冊の本であり、各ページには予め接着材が塗布された接着領域112(図11(a)に示す二点鎖線内)が設けられている。1ページの接着領域112に対して1枚分の印画物を貼り付けることができる。フォトブック作成キット111のレイアウトとしては通常レイアウトと見開きレイアウトとを選択できる。図11(b)に示すように通常レイアウト113は1ページに1つの画像を形成するものである。図11(c)に示すように見開きレイアウト114は見開き2ページに1つの画像を形成するものである。見開きレイアウト114は1つの画像を2回の印画処理に分割して2枚の印画物を生成し、生成した印画物を1ページに1枚ずつ貼り付けることで完成する。
【0005】
従来、上述したような画像印画装置のカッタ機構によって印画された印画用紙をカットするとき、精度の都合上カット位置がばらついてしまい、カットされた印画紙の端部に余白が残ってしまうことがあった。特許文献1に開示されたプリンタホストでは、印画サイズをカット位置のばらつきを許容する大きなサイズに設定することで余白が残るのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−91723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図11(c)に示す見開きレイアウト114を作成するために、1つの画像を2枚の印画用紙に印画すると、2回の印画処理に分割したときのつなぎ目が不連続な画像になってしまう問題がある。図12を参照して、画像のつなぎ目が不連続に印画される場合について説明する。従来では印画サイズをカット位置のばらつきを許容する大きなサイズに設定するために、図12(a1)に示す印画用紙121のように画像の端部を切り捨ててしまう。この場合、図12(a2)のように見開きレイアウト122にしたとき、切り捨てた部分だけつなぎ目が不連続な画像となってしまう。また、画像の端部に沿ってカットするように設定するとカット位置がばらつくため、図12(b1)に示す印画用紙123のように画像の端部に余白が残ってしまう場合がある。この場合、図12(b2)のように見開きレイアウト124にしたとき、余白が残ることでつなぎ目が不連続な画像となってしまう。
【0008】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、見開きレイアウトのために1つの画像を複数の画像に分割して印画する場合に、分割した画像間のつなぎ目が不連続となることを回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、画像を印画用紙に印画し、印画した印画用紙を切断して印画物を生成する画像印画装置であって、1つの画像を複数の画像に分割する画像分割手段と、前記画像分割手段によって分割された画像に対して分割された一辺に沿って切代画像を合成する画像合成手段と、前記画像合成手段によって合成された画像を印画用紙に印画する印画手段と、前記印画手段により印画された印画用紙を切断する際に、前記切代画像が印画された領域内で切断する切断手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つの画像を複数の画像に分割して印画する場合に、分割した画像間のつなぎ目が不連続となることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プリントシステムの構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る画像印画装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】画像印画装置を側面から見た模式図である。
【図4】画像印画装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】画像印画装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】印画サイズの設定を説明するための図である。
【図7】印画物をフォトブック作成キットの台紙に貼り付けた状態を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る切代画像の選択画面の一例を示す図である。
【図9】第3の実施形態に係る見開きレイアウト印画を説明するための図である。
【図10】インクシートの構成を示す図である。
【図11】フォトブック作成キットの構成を示す図である。
【図12】見開きレイアウト印画について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態について添付の図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る昇華型熱転写式の画像印画装置を用いたプリントシステムの構成を示す図である。
図1に示すプリントシステム1には、デジタルカメラ(以下、カメラという)10と昇華型熱転写式の画像印画装置(以下、印画装置という)20とがUSBケーブル15により通信可能に接続されている。プリントシステム1では、印画装置20がカメラ10で撮影したJPEG圧縮画像をJPEGファイルのまま受信し印画することができる。また、印画装置20はコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリ(CF)、SDメモリカード(SD)、メモリスティック(MS)等のメモリ媒体が挿入される複合カードスロット21を備えている。印画装置20はメモリ媒体に保存されたJPEG圧縮画像を印画することができる。
【0013】
印画装置20はJPEG圧縮画像を伸張してYUVデータに変換した後、リサイズおよびイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)からなるYMCデータに変換し、印画用紙上に印画する。LCD(液晶表示装置)22にはカメラ10やメモリ媒体から取得したJPEG圧縮画像や操作メニューが表示される。各種スイッチ23は印画装置20の電源スイッチや操作スイッチ等の操作部を構成している。
【0014】
図2は、印画装置20の内部構成を示すブロック図である。印画装置20はLCD22、操作部23、CPU(中央処理装置)24、画像処理部25、通信制御部26、LCDドライバ27、カードコネクタ29、SDRAM30、Flash ROM31を備えている。また、印画装置20はサーマルヘッド制御部32、サーマルヘッド33、モータ駆動制御部38、搬送モータ39、センサ駆動制御部40、先端検出センサ41等を備えている。
【0015】
CPU24は印画装置20のシステム制御や演算処理を行う。画像処理部25はカメラ10およびメモリ媒体から取得したJPEG圧縮画像を処理する画像処理エンジン等からなっている。画像処理部25は取得したJPEG圧縮画像に対して伸長等の各種画像処理を行ってYMCデータに変換する。通信制御部26は接続されるカメラ10との通信を制御する。LCDドライバ27はLCD22を駆動する。カードコネクタ29はJPEG圧縮画像を保存しておくためのメモリ媒体28を複合カードスロット21に装着するためのコネクタである。SDRAM30はJPEG圧縮画像の一時保存およびデータ処理の作業用に用いられるメモリである。Flash ROM31はCPU24が実行するためのシステム制御用プログラム等が格納される書き換え可能なROMである。
【0016】
サーマルヘッド制御部32は画像処理部25で変換されたYMCデータを、サーマルヘッド33を通電するためのラインデータに変換する。サーマルヘッド33はシフトレジスタ34、ラッチ回路35、発熱抵抗体36を備える。シフトレジスタ34はサーマルヘッド制御部32より送出される1ライン分のシリアルラインデータをパラレルに変換する。ラッチ回路35はサーマルヘッド制御部32からのラッチ信号によってシフトレジスタ34のデータをラッチし、このラッチデータとサーマルヘッド制御部32からのストローブ信号によって発熱抵抗体36を発熱させる。このように、サーマルヘッド制御部32はサーマルヘッド33を通電することで印画用紙に印画する。
【0017】
サーマルヘッド33には温度センサ37が直接取り付けられている。CPU24は温度センサ37の出力信号を取得してサーマルヘッド33の温度を検知し、サーマルヘッド過熱時には温度が低下するまで印画を一時停止したり、異常過熱時には印画を中止したりする制御を行う。
モータ駆動制御部38は、印画用紙搬送用、インクシート巻き取り用およびカッタ駆動用のモータの駆動を制御する。センサ駆動制御部40は印画用紙先端検知を行う先端検出センサ41の駆動を制御する。先端検出センサ41には光センサ等が用いられる。
【0018】
次に、印画装置20の印画処理について図3に示す印画装置20の側面から見た模式図を参照して説明する。
印画装置20では、図示しないサイドドアを開けて外部から印画用紙カセット42およびインクカセット44が装着されることで印画の準備を行う。印画用紙カセット42の内部にはロール状に巻かれた印画用紙43が収納されている。印画装置20は印画用紙43の中心部に印画用紙43と一体的に回動するボビン軸53を駆動させることで印画用紙43を印画用紙カセット42から引き出す。
【0019】
印画装置20は印画用紙カセット42から引き出した印画用紙43をカール取りローラ部45まで搬送する。カール取りローラ部45はカール取りローラおよび対向するカール取り従動ローラによって構成されている。カール取りローラ部45は印画用紙43がカール取りローラ部45に搬送されたときに離反状態から圧接状態へ移行し印画用紙43を挟み込む。カール取りローラ部45はロール状に巻かれている方向と反対側にテンションを加えることによって印画用紙43の巻き癖を矯正する。印画装置20はカール取りローラ部45を駆動させることで矯正した印画用紙43を搬送ローラ部46に搬送する。搬送ローラ部46はピンチローラ46aとグリップローラ46bによって構成されている。グリップローラ46bは図示しないステッピングモータの出力軸に減速機構を介して直結され、ステッピングモータの回転制御により正逆自在に駆動される。搬送ローラ部46は印画用紙43が搬送ローラ部46に搬送されたときに離反状態から圧接状態へ移行し印画用紙43を挟み込む。印画用紙43は搬送ローラ部46によって挟持された状態で往復搬送されるので、ステッピングモータの回転制御により正確に位置制御が行われる。
【0020】
ここで、サーマルヘッド33による1ライン分の記録ピッチを85μmとし、印画用紙43を1ライン分搬送するためのステッピングモータのステップ数を4ステップとする。印画用紙43はステッピングモータを4ステップで回転制御することにより1ライン、すなわち85μm搬送される。印画範囲が用紙搬送方向において144mmとすると、1694ライン印画可能であり、ステッピングモータは印画用紙を144mm搬送させるためには6776ステップ分回転すればよい。
【0021】
搬送ローラ部46の近傍には、印画用紙43の先端を検出する先端検出センサ41が配置されている。印画装置20は印画用紙43の先端を先端検出センサ41を介して検出した後、印画用紙43を所定ライン分搬送させた位置で停止させる。印画装置20は印画用紙43を印画用紙カセット42内部に引き込む方向に搬送しながら印画する。すなわち、印画用紙43の先端はサーマルヘッド33の真下の印画開始位置から排紙口51に向かって印画範囲分だけ搬送された位置にセットされる。
【0022】
印画装置20の印画部には、印画用紙43の搬送経路を挟んでプラテンローラ47とYMCデータに応じて発熱するサーマルヘッド33が対向して配置されている。インクカセット44に収納されるインクシート48は、熱溶融性または熱昇華性インクを塗布したインク層および印画面の保護を目的として印画面上にオーバコートを施すためのオーバコート層が形成されている。印画時にはインクシート48がサーマルヘッド33によって印画用紙43に押圧され、YMCデータに応じてサーマルヘッド33の発熱抵抗体36が選択的に加熱されることによって印画用紙43に画像が転写記録される。
【0023】
インクシート48は、所定のサイズでイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各インク層とオーバコート(OC)層が各一面ずつ順番に並べて形成されている(図10を参照)。1回の印画処理で印画される印画サイズはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバコート(OC)の各層の一面サイズによって規定され、これを定形サイズとする。印画装置20は印画用紙43を印画開始位置から所定ライン数搬送して1層分を熱転写した後、再び印画用紙43を印画開始位置に戻す。このようにして印画装置20はイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)各色およびオーバコート(OC)の転写を計4回繰り返すことで1回の印画処理が完了する。印画装置20はオーバコート(OC)の印画を終了すると、搬送ローラ部46を駆動して、印画用紙43の印画終端をカッタユニット49まで搬送する。
【0024】
カッタユニット49はカッタ歯49aとカッタ受け歯49bとにより構成されている。印画装置20は不図示のカッタモータによりカッタ歯49aを印画用紙43の搬送方向に対して垂直に駆動させ、カッタ歯49aとカッタ受け歯49bとをはさみのように擦り合わせることで印画用紙43をカットする。また、カッタユニット49は印画装置20に外部から着脱可能であり、カッタ歯49aおよびカッタ受け歯49bの歯が欠けた場合に容易に交換できる。印画装置20は印画用紙43の印画終端をカッタユニット49に搬送すると、図示しないステッピングモータによって排紙ローラ部50を駆動して印画用紙43を挟み込む。このとき、印画装置20は搬送ローラ部46を駆動して印画用紙43を印画用紙カセット42側に所定量だけ巻き取り印画用紙43のたるみをなくした状態でカッタユニット49のカッタモータを駆動して印画用紙43をカットする。カットされて生成された印画物は排紙ローラ部50によって後端部が挟持された状態である。印画装置20はこの状態から排紙ローラ部50を排紙方向に駆動して印画物を排紙口51まで搬送し外部に排紙する。
【0025】
印画装置20は排紙ローラ部50を所定時間駆動した後に停止する。また、巻き取り側の印画用紙43の端部には画像の一部が切り残されている。したがって、印画装置20は搬送ローラ部46を所定ライン分駆動して画像の一部が印画されている印画用紙43の端部をカッタユニット49まで搬送する。印画装置20はカッタユニット49のカッタモータを駆動して巻き取り側の印画用紙43の切り残し画像をカットする。カットされた切り残し画像は切り屑箱52に落下して収納される。印画終了後、印画装置20は巻き取り側の印画用紙43を搬送ローラ部46によって印画用紙カセット42側に所定ライン分巻き取り、次の印画処理を開始するまで待機する。
【0026】
次に、印画装置20が行う処理を図4および図5に示すフローチャートを参照して更に詳細に説明する。図4および図5に示すフローチャートは、CPU24がFlash ROM31に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
図4(a)のフローチャートに示すように、CPU24は操作部23を介した印画画像の選択およびレイアウトの設定等により印画命令を受付ける(S101)。通常レイアウトが設定された場合(S102からnoに進む)、CPU24は通常レイアウト印画を行う(S103)。
【0027】
図4(b)のフローチャートは図4(a)に示す通常レイアウト印画(S103)の処理を示している。
まず、画像処理部25は印画するJPEG圧縮画像に対してJPEG伸張を行いYUVデータに変換する(S111)。YUVデータは、画像を輝度信号(Y)、輝度信号と青色成分の差(U)、輝度信号と赤色成分の差(V)の情報で示すものである。画像処理部25は変換したYUVデータを印画サイズにリサイズする(S112)。
【0028】
図6(a)に通常レイアウト印画におけるYUVデータを印画サイズにリサイズする設定を示す。印画用紙43をカット位置(切断位置)54a、54bでカットした領域が用紙サイズ55(図6(a)に示す斜線部内)である。一方、印画サイズ56(図6(b)に示す一点鎖線)は用紙サイズ55よりも大きなサイズにリサイズされる。このように設定することでカット位置54a、54bがばらついた場合であっても印画物の端部に余白が残ることを回避できる。また、画像データの展開に必要なSDRAM30のメモリサイズが小さくてもいいように、CPU24はJPEG伸張後のYUVデータをSDRAM30から消去し、リサイズ後のYUVデータに上書きする。
【0029】
次に、画像処理部25はリサイズ後のYUVデータをイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色からなるYMCデータに変換する(S113)。CPU24はサーマルヘッド制御部32およびモータ駆動制御部38を介して印画用紙43にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバコート(OC)の印画およびカットして、印画物を生成する(S114)。
【0030】
図5(a)のフローチャートは図4(b)のS114を示している。
まず、CPU24はインクシート48の巻き取りを行い、インクシート48のイエロー層の先頭に形成された頭出しマーカ(不図示)をインク先頭検出センサ(不図示)を介して検出した時点で停止させてイエロー印画開始位置にセットする(S131)。次に、CPU24は印画用紙43を印画開始位置まで搬送する(S132)。CPU24はYMCデータのうちイエローデータ(Yデータ)をサーマルヘッド制御部32に転送し、サーマルヘッド制御部32はサーマルヘッド33を通電するためのラインデータに変換する。サーマルヘッド制御部32は印画用紙43およびインクシート48を搬送するのに同期して、イエローデータの先頭ラインデータから終端ラインデータまで1ラインずつ順番にサーマルヘッド33に通電してイエローの印画を行う(S133)。
【0031】
CPU24はイエローデータの印画終了後、イエロー先頭検出(S131)と同様にして、インクシート48のマゼンタ先頭検出を行う(S134)。CPU24はステッピングモータをイエロー印画開始から完了までと同ステップ分逆回転させて、印画用紙43をイエロー印画完了位置から印画開始位置まで戻すように搬送する(S135)。サーマルヘッド制御部32はイエロー印画(S133)と同様にしてマゼンタデータ(Mデータ)を用いてサーマルヘッド33を通電してマゼンタの印画を行う(S136)。
【0032】
CPU24はマゼンタデータの印画終了後、イエロー先頭検出(S131)と同様にして、インクシート48のシアン先頭検出を行う(S137)。CPU24は印画用紙43をマゼンタ印画完了位置から印画開始位置まで戻すように搬送する(S138)。サーマルヘッド制御部32はイエロー印画(S133)と同様にしてシアンデータ(Cデータ)を用いてサーマルヘッド33を通電してシアンの印画を行う(S139)。
【0033】
CPU24はシアンデータの印画終了後、イエロー先頭検出(S131)と同様にして、インクシート48のオーバコート先頭検出を行う(S140)。CPU24は印画用紙43をシアン印画完了位置から印画開始位置まで戻すように搬送する(S141)。画像処理部25は印画するYMCデータとは別に予め一定の階調値に設定されているオーバコートデータ(OCデータ)を有している。サーマルヘッド制御部32は印画用紙43およびインクシート48を搬送するのに同期して、同一のラインデータを所定ライン分だけ繰り返しサーマルヘッド33に通電してオーバコートデータの印画を行う(S142)。
【0034】
CPU24は印画用紙43を所定ライン数搬送して印画終端をカッタユニット49のカット位置に合わせる(S143)。CPU24はカッタユニット49のカッタモータを駆動して印画用紙43をカットする(S144)。CPU24はカットした印画物を排紙口51まで搬送して外部に排紙する(S145)。CPU24は巻き取り側の印画用紙43を所定ライン数搬送して切り残し画像をカッタユニット49のカット位置に合わせてカットする(S146)。以上のように通常レイアウト印画では1回の印画処理(イエロー、マゼンタ、シアン、オーバコート印画を各1回実行)により完了する。
【0035】
図4(a)のフローチャートに戻り、見開きレイアウトが設定された場合(S102からyesに進む)、CPU24は見開きレイアウト印画を行う(S104〜S105)。見開きレイアウト印画では、1つの画像を2回の印画処理に分割して印画する。まず、CPU24は印画処理1回目を行い(S104)、続いて印画処理2回目を行う(S105)。
【0036】
図5(b)のフローチャートは図4(a)に示す見開きレイアウト印画(S104〜S105)の処理を示している。
まず、画像処理部25は印画するJPEG圧縮画像に対してJPEG伸張を行いYUVデータに変換する(S151)。画像処理部25は変換したYUVデータを用紙搬送方向に対して分割する(S152)。換言すると、画像処理部25はYUVデータを印画用紙がカットされるラインを挟んで分割する。この処理は、画像分割手段により処理の一例に対応する。この分割は、画像を2つに分割するものであって分割箇所の画素を変更、損失するものではない。また、印画処理1回目は分割後YUVデータの片側、印画処理2回目は分割後YUVデータのもう片側のみを使用するので、CPU24は使用しない側の分割後YUVデータをSDRAM30から消去する(S153)。画像処理部25は分割後YUVデータを印画サイズにリサイズする(S154)。この処理は、リサイズ処理手段による処理の一例に対応する。
【0037】
図6(b)に見開きレイアウト印画における分割後YUVデータを印画サイズにリサイズする設定を示す。通常レイアウト印画と同様に印画サイズ56(図6(b)に示す一点鎖線)は用紙サイズ55(図6(b)に示す斜線部内)よりも大きなサイズにリサイズされる。ここで、見開きレイアウト印画では、印画サイズ56が分割後YUVデータの印画サイズ57と切代画像の印画サイズ58とを組み合わせたものになる。
【0038】
切代画像とは、見開きレイアウト印画における画像間のつなぎ目の不連続を回避する目的の画像であって、分割後の画像に付加される画像である。切代画像はフォトブック作成キットの台紙と同一の色および図柄の矩形画像である。ここでの図柄とは無地を含むものとする。
ここで、切代画像の詳細について説明する。
見開きレイアウトはフォトブックの見開き2ページ分にまたがって1つの画像をレイアウトする。つまり、1つの画像を2回の印画処理に分割して印画し、印画して生成された2枚の印画物を台紙に貼り付ける。この2回の印画処理を通常レイアウト印画と同様にして行った場合、図6(a)に示すように画像の端部が切り捨てられてしまうので画像間のつなぎ目が不連続になってしまう。そこで、分割後YUVデータの分割箇所である一辺59に隣接させて切代画像を合成する。この切代画像はフォトブック作成キットの台紙と同一の色および図柄である。フォトブック作成キットが1種類のみ存在する場合は台紙と同じ色および図柄を切代画像として予め設定する。また、フォトブック作成キットが複数種類存在する場合は切代画像の図柄をユーザが任意に選択できるようにする。この場合、CPU24は印画画像およびレイアウトの設定により印画命令を受付けるときに、ユーザに選択された切代画像も受付けるようにすることができる。
【0039】
また、切代画像は用紙搬送方向に垂直な方向の長さが一辺59と同じ長さであり、用紙搬送方向の長さ(一辺59に直交する方向の長さ)がカット位置54aがばらついても確実に切代画像内で収まる長さに予め設定される。すなわち、切代画像の用紙搬送方向の長さは、カッタユニット49によるカット位置54aが最もカット位置54b側に変動したときと最もその反対側に変動したときの差から生じる誤差長さよりも大きな長さに設定される。したがって、カット位置54aがカット位置54b側に変動しても分割後YUVデータの画像内でカットされることがなく、反対側に変動しても切代画像が印画されていない未印画部分でカットされることがない。
カットされた後の印画物は、端部に切代画像の一部が残るものの、切代画像はフォトブック作成キットの台紙と同一の色および図柄であることから、台紙に貼り付けた際に見開きレイアウトの画像間のつなぎ目が不連続になることを回避できる。
【0040】
このように、CPU24は見開きレイアウトの画像間のつなぎ目の不連続の回避を目的としてリサイズ後の分割後YUVデータと切代画像のYUVデータを合成する(S155)。この処理は、画像合成手段による処理の一例に対応する。分割後YUVデータと切代画像のYUVデータとを合成することで印画されたときの切代画像の色味を台紙と略同一にすることができる。また、印刷対象の画像データに対して、リサイズや色変換、補正処理等を行う場合は、印刷対象の画像データと切代画像データとを合成する前に行う。これは、印刷対象の画像データと切代画像データとを合成した後に、切代画像データを含んだ状態で画像処理を行うと、切代画像データの色や形状が、印刷対象の画像によって変化してしまう恐れがあるためである。
次に、画像処理部25は切代画像を合成したYUVデータをイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色からなるYMCデータに変換する(S156)。CPU24はサーマルヘッド制御部32およびモータ駆動制御部38を介して印画用紙43にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバコート(OC)の印画およびカットして、印画物を生成する(S156)。S156の処理は、図5(a)のフローチャートに示される。見開きレイアウト印画では2回の印画処理(イエロー、マゼンタ、シアン、オーバコート印画各2回実行)により完了する。図7は、見開きレイアウト印画により印画された2枚の印画物62、63をフォトブック作成キットの台紙61に貼り付けた状態を示す図である。図7に示す各印画物62、63には、画像間のつなぎ目となる各辺に台紙61と同一の色および図柄の切代画像60が印画されていて、2つの画像間のつなぎ目の不連続が解消されている。
【0041】
このように本実施形態によれば、見開きレイアウト印画では1つの画像を、カットされるラインを挟んで2つの画像に分割し、2回の印画処理によって印画を行う。このとき、フォトブック作成キットの台紙と同一の色および図柄の切代画像を分割後の画像のそれぞれ分割箇所の一辺に隣接させて合成して画像を印画し、その後、切代画像が印画された領域をカットして印画物を生成する。したがって、カット位置がばらついたとしても、生成された印画物を台紙に貼り付けたとき、2つの画像間のつなぎ目が不連続となることを回避することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、フォトブック作成キットが複数種類存在し、ユーザが任意に切代画像を選択できる構成について説明する。その他の構成は、第1の実施形態と同様であり、その説明を省略する。
フォトブック作成キットが複数種類存在する場合、見開きレイアウトで画像間のつなぎ目が不連続となることを回避するためには、各々のフォトブック作成キットの台紙と同一の色および図柄を切代画像として設定する必要がある。そこで、本実施形態では、CPU24は図5(a)のフローチャートの印画命令受付(S101)において、切代画像として設定可能な切代画像をLCD22に一覧表示する。
【0043】
図8(a)は、フォトブック作成キットの台紙の図柄をサムネイル画像71で一覧表示した選択画面である。CPU24はユーザがサムネイル画像71から選択した図柄を切代画像として設定する。
図8(b)は、フォトブック作成キットの商品名72およびアイコン73を一覧表示した選択画面である。CPU24はユーザが商品名72から選択したフォトブック作成キットの台紙の図柄を切代画像として設定する。図8(b)では実際に選択するのはフォトブック作成キットの商品名72なので、切代画像の設定をユーザに意識させることなく、切代画像の設定を行うことができる。また、フォトブック作成キットの商品1点に対して切代画像だけでなく、印画サイズ等その他の設定を関連付けておき、フォトブック作成キットの商品名72を選択することで種々の設定を一括して完了できるようにしてもよい。
【0044】
このように本実施形態によれば、切代画像として設定可能な図柄を一覧表示してユーザに選択させることで、複数種類のフォトブック作成キットに対して見開きレイアウトの2つの画像間のつなぎ目が不連続となることを回避することができる。
【0045】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、分割後の画像と切代画像とを合成した画像を印画する場合、切代画像が先に印画されるように切代画像が印画開始位置となるように画像の向きを回転させる構成について説明する。その他の構成は、第1の実施形態と同様であり、その説明を省略する。
図9は、見開きレイアウト印画時の印画処理1回目および2回目の画像と印画開始位置との設定を示す図である。図9では、81、82がそれぞれ1つの画像を分割した分割画像、60が切代画像、83が印画開始位置、84が印画終了位置である。
【0046】
図9(a)、(b)、(c)は、印画処理1回目または2回目の何れかにおいて、切代画像60よりも先に分割画像81、82から印画を開始している見開きレイアウトの印画物を示す図である。この場合、切代画像60を印画する時点のサーマルヘッド33の発熱状態が分割画像81、82を印画したときの蓄熱により影響を受けてしまう。すなわち、印画処理1回目および2回目で切代画像60を印画するときのサーマルヘッド33の発熱状態が異なってしまうために、印画処理1回目と2回目とで切代画像60に濃度差が生じてしまう。そのため、フォトブック作成キットの台紙に貼り付けたときに切代画像60の濃度差が目立ち、つなぎ目が不連続であるように見える一因となってしまう。
【0047】
そこで、本実施形態では、画像処理部25は、図5(b)に示すS152のYUVデータを2分割したときに、分割画像を回転させる。この処理は、回転処理手段による処理の一例に対応する。すなわち、印画処理1回目および2回目共に切代画像60が分割画像81、82よりも先に印画されるように、切代画像60の側端部が印画開始位置となるように設定する。図9(d)では、分割画像81を回転させて印画して、印画処理1回目または2回目共に、分割画像81、82よりも先に切代画像60の印画を開始している見開きレイアウトの印画物を示す図である。この結果、印画処理1回目および2回目の切代画像60を印画する時点のサーマルヘッド33の発熱状態を同一条件にすることができ、印画処理1回目および2回目の切代画像60の濃度差を軽減することができる。したがって、フォトブック作成キットの台紙に貼り付けた際に画像間のつなぎ目が不連続となることを回避することができる。
【0048】
上述した本実施形態における印画装置20の各手段、または印画装置20の制御方法の各ステップは、CPU24がFlash ROM31等に格納されたプログラムを動作することによって実現できる。このプログラムおよびこのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。本実施形態では、分割した2つの画像のうち、先に印画する画像は限定されず、どちらを先に印画してもよい。また、本実施形態では、1つの画像を2つの画像に分割する場合について説明したが、この場合に限られず、1つの画像を3つ以上の複数の画像に分割する場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:プリントシステム 20:画像印画装置 23:操作部 24:CPU 25:画像処理部 32:サーマルヘッド制御部 33:サーマルヘッド 34:シフトレジスタ 35:ラッチ回路 36:発熱抵抗体 37:温度センサ 38:モータ駆動制御部 39:モータ 43:印画用紙 48:インクシート 49:カッタユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を印画用紙に印画し、印画した印画用紙を切断して印画物を生成する画像印画装置であって、
1つの画像を複数の画像に分割する画像分割手段と、
前記画像分割手段によって分割された画像に対して分割された一辺に沿って切代画像を合成する画像合成手段と、
前記画像合成手段によって合成された画像を印画用紙に印画する印画手段と、
前記印画手段により印画された印画用紙を切断する際に、前記切代画像が印画された領域内で切断する切断手段とを有することを特徴とする画像印画装置。
【請求項2】
前記画像合成手段は、前記画像分割手段によって分割された画像のYUVデータに前記切代画像のYUVデータを合成することを特徴とする請求項1に記載の画像印画装置。
【請求項3】
前記画像分割手段によって分割された画像を前記印画物のサイズよりも大きくリサイズするリサイズ処理手段を更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像印画装置。
【請求項4】
前記切代画像は、前記一辺に直交する方向の長さが前記切断手段が切断するときに生じる切断位置の誤差長さよりも大きな長さに設定されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の画像印画装置。
【請求項5】
前記画像合成手段は、ユーザの選択に応じた切代画像を合成することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の画像印画装置。
【請求項6】
前記画像合成手段により合成された画像のうち、前記分割された画像よりも先に前記切代画像を印画するように前記画像を回転させる回転処理手段を更に有することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の画像印画装置。
【請求項7】
前記切代画像は、前記印画物を貼り付ける台紙と同一の色および図柄であることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の画像印画装置。
【請求項8】
画像を印画用紙に印画し、印画した印画用紙を切断して印画物を生成する画像印画装置の制御方法であって、
1つの画像を複数の画像に分割する画像分割ステップと、
前記画像分割ステップによって分割された画像に対して分割された一辺に沿って切代画像を合成する画像合成ステップと、
前記画像合成ステップによって合成された画像を印画用紙に印画する印画ステップと、
前記印画ステップにより印画された印画用紙を切断する際に、前記切代画像が印画された領域内で切断する切断ステップとを有することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
画像を印画用紙に印画し、印画した印画用紙を切断して印画物を生成する画像印画装置を制御するためのプログラムであって、
1つの画像を複数の画像に分割する画像分割ステップと、
前記画像分割ステップによって分割された画像に対して分割された一辺に沿って切代画像を合成する画像合成ステップと、
前記画像合成ステップによって合成された画像を印画用紙に印画する印画ステップと、
前記印画ステップにより印画された印画用紙を切断する際に、前記切代画像が印画された領域内で切断する切断ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−28077(P2013−28077A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165867(P2011−165867)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】