説明

画像取得装置

【課題】各結像系の光学調整を容易に行うことのできる画像取得装置を得る。
【解決手段】プライマリ検出器2は、共通の光学系1の光軸と視軸が等しく、焦点調整が行われており再調整の不要な光学配置とする。セカンダリ検出器3と光学系1との間にダブルウェッジ型スキャナ4を設ける。ダブルウェッジ型スキャナ4は、各々の任意の一面を平行に配置した2枚のウェッジプリズムから構成され、第1のウェッジプリズムと第2のウェッジプリズムは共通または平行な回転軸を持ち、かつ少なくとも一方のウェッジプリズムは平行移動が可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の結像光学系から視軸の異なる画像を取得する画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
単一の結像光学系により複数の異なる波長域での画像を取得する手段の一つとして、反射光と透過光の波長分離が可能なダイクロックミラーを用いて、異なる検出器へ結像を行う方法が提案されている。たとえば、非特許文献1に示されているような光学系では、ダイクロイックビームスプリッターを用いて可視領域を反射させ、赤外領域を透過させることによって帯域を分離し、異なる波長域の画像を取得している。この画像取得装置では赤外領域に4バンド(3.5〜4.0μm、6.5〜7.0μm、10.3〜11.3μm、11.5〜12.5μm)を有しており、広域の波長領域において各波長帯のSN比の向上が求められる。しかし、複数の波長帯において全てが低光量損失となる基盤材料を選択することは困難であるといった問題があった。
【0003】
この問題を解決する手段の一つとして、視軸の異なる画像を取得する技術が提案されている。例えば、特許文献1による光学系では、共通光学系が光強度画像を電気信号に変換する第1の検出器と第2の検出器に結像し、それらを保護する第1のパッケージと第2のパッケージと、光線がパッケージを透過する窓を有している。さらに第1の検出器をb群、第2の検出器をc群とすると、反射ミラーを第1のパッケージに設けられた窓に有することによってc群に光学結像することができる。視軸の異なる検出器b群とc群はダイクロックミラーを有することなく画像取得を行うことが出来るため、各々の波長に対する光損失低減処理を各々の窓に対して施すことが可能となる。従って、複数の波長帯における光量の損失を低減した光強度画像を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−278724号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.J.Puschell,‘Japanese Advanced Meteorological Imager(JAMI):Design,Characterization and Expected On-Orbit Performance’,Proc. of the 13th Int. TOVS Study Conference,Sainte Adele,Canada,2003(617-633,fig.4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述にあるような光量損失を低減するために、共通の光学系を使用して視軸の異なる画像を取得する場合、各々の結像面に対して視軸や焦点が異なる。その際に共通の光学系において同時に各結像系の光学調整を行うことは困難であるといった問題があった。また、視軸が光学系の光軸と異なる結像面ではコマ収差が発生する場合、結像性能を低下させるといった問題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、各結像系の光学調整を容易に行うことのできる画像取得装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る画像取得装置は、被写体の光学像を結像させるための光学系と、光学系から光線によって結像された光学像の光強度を電気信号に変換する第1の変換装置と、光学系から第1の変換装置への光路とは異なる光路で結像された光学像の光強度を電気信号に変換する第2の変換装置と、各々の任意の一面を平行に配置した2枚のウェッジプリズムから構成され、第1のウェッジプリズムと第2のウェッジプリズムは共通または平行な回転軸を持ち、かつ少なくとも一方のウェッジプリズムは平行移動が可能なダブルウェッジ型スキャナとを備え、第1の変換装置または第2の変換装置のうち少なくともいずれか一方と光学系との間にダブルウェッジ型スキャナを設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の画像取得装置は、第1の変換装置または第2の変換装置のうち少なくともいずれか一方と光学系との間にダブルウェッジ型スキャナを設けたので、各結像系の光学調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による画像取得装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による画像取得装置のダブルウェッジ型スキャナの説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による画像取得装置の1枚のウェッジプリズムに対する視軸の変化を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態2による画像取得装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による画像取得装置を示す構成図である。
図1に示す画像取得装置は、光学系1、プライマリ検出器(第1の変換装置)2、セカンダリ検出器(第2の変換装置)3、ダブルウェッジ型スキャナ4を備えている。光学系1は、プライマリ検出器2およびセカンダリ検出器3に結像させるこれら検出器に共通の光学系である。プライマリ検出器2は、共通の光学系1の光軸と視軸が等しく、焦点調整が行われており再調整の不要な光学配置とする。一方、セカンダリ検出器3は、共通の光学系1の光軸と異なる視軸を持ち、プライマリ検出器2と独立した結像が可能な配置とする。ダブルウェッジ型スキャナ4は、セカンダリ検出器3の光学調整を行うために、共通の光学系1とセカンダリ検出器3の間に挿入する独立した光学調整機構である。
【0012】
図2は、ダブルウェッジ型スキャナ4の説明図である。
ダブルウェッジ型スキャナ4は、ウェッジプリズム5とウェッジプリズム6の二つのウェッジプリズムで構成され、ウェッジプリズム5とウェッジプリズム6の向かい合う面を、面5a,6aとすると、面5aと面6aは平行に配置する。さらに、面5a上にプリズム厚が最小となる点と最大となる点を結び、最小となる点を始点としてプリズム厚が増加する方向にベクトル線5bを設定する。同様に、ウェッジプリズム6に対してベクトル線6bを設定する。また、これらの面5aと面6aに対して垂直な軸Aを設定する。ウェッジプリズム5および6は軸A中心に回転可能であり、ウェッジプリズム5はベクトル線5b方向にスライド可能な構成とする。
【0013】
図1に示す構成例において、ダブルウェッジ型スキャナ4を用いることによって視軸補正に必要な調整を全て行うことが可能である。すなわち、ウェッジプリズム5をベクトル線5b方向に平行にスライドさせることによって、ダブルウェッジ構造を透過する光路長を変化させることができるため、焦点合わせを行うことが可能である。また、ウェッジプリズム5とウェッジプリズム6を軸A中心に回転させることによって、軸ずれの補正が可能である。
【0014】
次に、軸ずれ補正について説明する。説明を簡略化するため、ウェッジプリズム厚および2枚のウェッジプリズム間の空隙を無視する。
1枚のウェッジプリズムに対する視軸の変化を図3に示す。軸Aに対して垂直な面をx−y平面とし、ベクトル線5bのx成分が最大となる点をウェッジプリズム5の回転角α=0とする。α=0のときの偏向角のx成分θx5は最大となり、この角をδとする。θx5は図3より明らかなように、−δ(α=π)から+δ(α=0)まで変位する。さらに、ウェッジプリズム6についても同様に回転角βを設定し、ベクトル線6bのx成分が最大となる点をウェッジプリズム回転角β=0とする。2枚のウェッジプリズムを通過した光線の偏向角は、式1,式2によって表すことが出来る。
θ=δcosα+δcosβ・・・(式1)
θ=δsinα+δsinβ・・・(式2)
従って、これらの2式より偏向角θ,θは、
θ+θ≦(δ+δ
の範囲でα,βより任意に決定することが可能である。
【0015】
また、ダブルウェッジ型スキャナ4を、視軸が斜めに入射する構成としても良い。すなわち、入射視軸と軸Aを一致させない構成とする。視軸が光軸上にない光学系ではコマ収差等が発生する場合がある。このコマ収差と、ダブルウェッジ型スキャナ4に斜入射することにより発生する偏心コマ収差とを相殺させることで結像性能を向上することが可能である。
【0016】
また、ダブルウェッジ型スキャナ4が平行平板と等価な状態にないとき、すなわちウェッジプリズム5が持つベクトル線5bと、ウェッジプリズム6が持つベクトル線6bが完全に重ならないときを視軸の補正原点としても良い。ダブルウェッジ型スキャナは平行平板に近い状態で視軸補正を行うと、スキャナの回転量が大きくなり不安定となりやすい(例えば、特開2009−236580号公報参照)。従って、補正原点をベクトル線5bとベクトル線6bが完全に重ならない状態とすることによって安定性の高い調整を行うことが可能である。
【0017】
また、ダブルウェッジ型スキャナ4の材料として、高屈折率材料であるゲルマニウム、シリコン、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、またはカルコゲナイドガラスを使用することにより、屈折角および光路長の変化が大きくなるため薄型のスキャナを得ることが可能となる。
【0018】
以上説明したように、実施の形態1の画像取得装置によれば、被写体の光学像を結像させるための光学系と、光学系から光線によって結像された光学像の光強度を電気信号に変換する第1の変換装置と、光学系から第1の変換装置への光路とは異なる光路で結像された光学像の光強度を電気信号に変換する第2の変換装置と、各々の任意の一面を平行に配置した2枚のウェッジプリズムから構成され、第1のウェッジプリズムと第2のウェッジプリズムは共通または平行な回転軸を持ち、かつ少なくとも一方のウェッジプリズムは平行移動が可能なダブルウェッジ型スキャナとを備え、第1の変換装置または第2の変換装置のうち少なくともいずれか一方と光学系との間にダブルウェッジ型スキャナを設けたので、各結像系の光学調整を容易に行うことができる。
【0019】
また、実施の形態1の画像取得装置によれば、ダブルウェッジ型スキャナは、2枚のウェッジプリズムの向かい合う面に対して非対称な配置を補正原点としたので、安定性の高い調整を行うことができる。
【0020】
実施の形態2.
図4は、この発明を実施するための実施の形態2における画像取得装置を示す。実施の形態1における図1との対応部分については同一番号を付与し、説明を省略する。本実施形態2における画像取得装置は、実施の形態1における画像取得装置に、セカンダリ検出器3へ再結像するためのリレーレンズ7を配置したものである。それ以外は図1と同様である。
【0021】
プライマリ検出器2とセカンダリ検出器3の検出波長が異なる場合、倍率色収差により像の大きさが異なる場合がある。このような場合に、光学系1において形成される像を、プライマリ検出器2とセカンダリ検出器3の比と等しく拡大あるいは縮小した大きさとなるようにリレーレンズ7を用いて再結像することによって、異なる波長帯で任意の分解能を持った光強度画像を得ることが可能となる。
さらに、リレーレンズ7を用いる場合、共通の光学系1の中間像を再結像することによって、セカンダリ検出器3の視軸方向に対する位置を任意に設定可能である。
【0022】
以上のように、実施の形態2の画像取得装置によれば、ダブルウェッジ型スキャナと第1の変換装置または第2の変換装置のうち少なくともいずれか一方との間に、第1の変換装置または第2の変換装置で再結像するためのリレーレンズを設けたので、異なる波長帯で任意の分解能を持った光強度画像を得ることができると共に、ダブルウェッジ型スキャナを設けた側の変換装置の視軸方向に対する位置を任意に設定することができる。
【0023】
尚、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 光学系、2 プライマリ検出器(第1の変換装置)、3 セカンダリ検出器(第2の変換装置)、4 ダブルウェッジ型スキャナ、5,6 ウェッジプリズム、5a,6a 面、5b,6b ベクトル線、7 リレーレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の光学像を結像させるための光学系と、
前記光学系から光線によって結像された光学像の光強度を電気信号に変換する第1の変換装置と、
前記光学系から前記第1の変換装置への光路とは異なる光路で結像された光学像の光強度を電気信号に変換する第2の変換装置と、
各々の任意の一面を平行に配置した2枚のウェッジプリズムから構成され、第1のウェッジプリズムと第2のウェッジプリズムは共通または平行な回転軸を持ち、かつ少なくとも一方のウェッジプリズムは平行移動が可能なダブルウェッジ型スキャナとを備え、
前記第1の変換装置または前記第2の変換装置のうち少なくともいずれか一方と前記光学系との間に前記ダブルウェッジ型スキャナを設けたことを特徴とする画像取得装置。
【請求項2】
ダブルウェッジ型スキャナは、2枚のウェッジプリズムの向かい合う面に対して非対称な配置を補正原点としたことを特徴とする請求項1記載の画像取得装置。
【請求項3】
ダブルウェッジ型スキャナと第1の変換装置または第2の変換装置のうち少なくともいずれか一方との間に、当該第1の変換装置または第2の変換装置で再結像するためのリレーレンズを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247842(P2012−247842A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117047(P2011−117047)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】