説明

画像合成装置

【課題】1枚の撮像画像から焦点を合わせたい位置に焦点の合った画像を合成する。
【解決手段】撮影光学系3と、二次元状に配列した複数のマイクロレンズを有し、撮影光学系3の背後に配置されたマイクロレンズアレイ4aと、マイクロレンズアレイ4aの背後に配置され、複数のマイクロレンズごとに複数の光電変換領域が割り当てられた光電変換装置4bと、焦点を合わせる被写体を特定する被写体特定手段5a、5b、5cと、被写体特定手段5a、5b、5cにより特定された被写体に焦点のあった画像を光電変換装置の出力に基づき合成する画像作成手段5dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のマイクロレンズを二次元状に配列したマイクロレンズアレイと、光電変換素子を二次元状に配列した光電変換素子アレイとを撮影光学系の背後に順次配置し、任意の奥行き位置(撮影光学系の光軸方向)に焦点の合った画像を合成するようにした画像合成カメラが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−004471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の画像合成カメラは、撮像画像の任意の奥行き位置に焦点の合った画像を合成するもので、どのような画像を合成するかについては何も触れていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1) 請求項1の発明は、撮影光学系と、二次元状に配列した複数のマイクロレンズを有し、撮影光学系の背後に配置されたマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイの背後に配置され、複数のマイクロレンズごとに複数の光電変換領域が割り当てられた光電変換装置と、焦点を合わせる被写体を特定する被写体特定手段と、被写体特定手段により特定された被写体に焦点のあった画像を光電変換装置の出力に基づき合成する画像作成手段とを有する。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載の画像合成装置において、被写体特定手段は焦点検出手段を有し、画像作成手段は焦点検出手段による焦点検出に先立ち予め取得した光電変換装置の出力に基づき、焦点検出手段が焦点検出した被写体に焦点の合った画像を作成する。
(3) 請求項3の発明は、請求項2に記載の画像合成装置において、光電変換装置の光電変換領域は撮影光学系の射出瞳と共役であり、焦点検出手段はマイクロレンズごとに割り当てられた複数の光電変換領域のうちの一対の光電変換領域の出力に基づき被写体までの焦点外れ量を検出する。
(4) 請求項4の発明は、請求項1に記載の画像合成装置において、被写体特定手段は、被写体の予め指定された特徴を識別し、この特徴部分に焦点検出手段により焦点検出を行い、焦点検出対象となった被写体に焦点の合った画像を合成するよう画像作成手段に指示する指示手段を有する。
(5) 請求項5の発明は、請求項1に記載の画像合成装置において、画像合成手段は、撮像素子の出力に基づき焦点深度の深い画像を作成し表示する表示手段を有し、被写体特定手段は、表示手段の表示に基づき、焦点を合わせたい被写体を設定する設定手段を有し、設定手段にて設定された被写体に焦点のあった画像を得る。
(6) 請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像合成装置において、被写体特定手段は、撮影光学系の光軸方向へ異なる位置の被写体を特定し、画像作成手段は特定した複数の被写体に焦点の合った一つの画像を作成する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、1枚の撮像画像から焦点を合わせたい位置で焦点の合った画像を合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の画像合成装置をデジタルカメラに適用した一実施の形態を説明する。図1は一実施の形態のデジタルカメラの構成を示す図であり、この図により一実施の形態の構成について説明する。なお、図1では本発明に直接関係のあるカメラの装置および機器のみを図示する。
【0007】
一実施の形態のデジタルカメラ1には、カメラボディ2に撮影レンズ3が装着されている。カメラボディ2は撮像素子4、駆動制御装置5、メモリ6などを備えている。撮像素子4は、微小なマイクロレンズを平面上に稠密に配列したマイクロレンズアレイ4aと、微小な光電変換素子を平面上に稠密に配列した光電変換素子アレイ4bとから構成される。
【0008】
光電変換素子アレイ4bの受光面はマイクロレンズの焦点距離の位置に配置されている。そして、マイクロレンズアレイ4aと光電変換素子アレイ4bとは、光電変換素子アレイ4bの受光面が撮影レンズ3の射出瞳面と共役になる位置に配置される。
【0009】
撮影レンズ3による被写体像は、被写体の奥行き方向の位置関係(撮影レンズ3の光軸方向の位置)によって決まり、マイクロレンズ頂点面の前側(撮影レンズ3側)で焦点を結ぶ被写体、後側で焦点を結ぶ被写体、あるいはマイクロレンズ頂点面で焦点を結ぶ被写体が存在する。
【0010】
図2は、一実施の形態のマイクロレンズアレイ4aを撮影レンズ3側から見た図である。この一実施の形態では微小なマイクロレンズを千鳥状に稠密に配列した例を示し、奇数列(または奇数行)と偶数列(または偶数行)とが互い違い配置されている。なお、マイクロレンズの配列は千鳥状配列に限定されず、例えば正方配列でもよいし、あるいはハニカム状配列(六方稠密配列)でもよい。
【0011】
図3は、マイクロレンズアレイ4aの一つのマイクロレンズの外径を光電変換素子アレイ4b上に投影した図である(光電変換素子アレイ4bの光電変換素子は説明に必要なマイクロレンズの外径に含まれるもののみを示した)。光電変換素子アレイ4bは、微小な光電変換素子がマイクロレンズの焦点距離の位置にある受光面に正方格子状に配列されている。図3から明らかなように、マイクロレンズアレイ4aの各マイクロレンズは、光電変換素子アレイ4bの複数の光電変換素子を被覆している。
【0012】
図1において、駆動制御装置5は、図示しないマイクロコンピューターとメモリ、A/Dコンバーター、駆動回路などの周辺部品から構成され、カメラ1の種々の演算制御やシーケンス制御を実行する。駆動制御装置5には、マイクロコンピューターのソフトウエア形態により瞳データ抽出部5a、データ列形成部5b、焦点演算部5c、画像合成部5dなどが構成されている。これらの各部5a〜5dの詳細については後述する。
【0013】
メモリ6は種々のデータや画像を記憶する。画像メモリ6aは撮像素子4により撮像された画像を記憶する。光軸データメモリ6bは、マイクロレンズアレイ4aを構成する各マイクロレンズの光軸の、光電変換素子アレイ4b上における位置データを記憶するメモリである。このマイクロレンズの光軸位置データは、光電変換素子アレイ4bの光電変換素子位置の座標を小数レベルまで展開したものである。つまり、光電変換素子1個を1とした単位よりも小さい値、例えば光電変換素子0.5個を0.5というように光軸位置を正確に表したものである。
【0014】
駆動制御装置5の瞳データ抽出部5aは、光電変換素子4bから出力され画像メモリ6aに記憶されている光電変換素子ごとの光電変換データの中から、光軸データメモリ6bに記憶されている各マイクロレンズの光軸位置を中心とする左右対象位置の光電変換素子(通常は複数)の光電変換データを抽出する。この一実施の形態では、図3に示すように、マイクロレンズ光軸位置を中心とする左右対象位置にあるそれぞれ3個の光電変換素子の光電変換データをそれぞれ積算し、右瞳データおよび左瞳データとする。瞳データ抽出部5aは、各マイクロレンズごとに左右一対の瞳データを抽出して画像データメモリ6aに一時的に記憶する。
【0015】
図3において、マイクロレンズ光軸位置を中心とする左右対象位置にあるそれぞれ3個の光電変換素子は、対応するマイクロレンズにより撮影レンズ3の射出瞳上に投影され、射出瞳上に一対の投影領域を形成する。撮影レンズ3の射出瞳上のこの一対の投影領域を通過する一対の光束は、撮影レンズ3およびマイクロレンズを介してマイクロレンズ光軸位置を中心とする左右対象位置にあるそれぞれ3個の光電変換素子へ導かれ、それぞれ3個の光電変換素子上に一対の像が結像される。この一対の像の位相差すなわち像ずれ量は撮影レンズ3の焦点調節状態に応じて変化するため、それぞれ3個の光電変換素子から出力される一対の像に対応する一対の画像データに基づいて像ずれ量を演算すれば、いわゆる瞳分割位相差検出方式により撮影レンズ3の焦点調節状態、つまりマイクロレンズ頂点面からの焦点の外れ量を検出することができる。各マイクロレンズの背後にある光電変換素子による右瞳、左瞳の焦点はずれ量は、各マイクロレンズの頂点位置に対応する被写体像の焦点外れ量を示すことになる(特開2007−11314号公報などを参照)。
【0016】
なお、左右一対の瞳データを抽出する光電変換素子の位置および個数は、図3に示す一実施の形態の位置および個数に限定されない。
【0017】
駆動制御装置5のデータ列形成部5bは、左右方向に配列されている所定数のマイクロレンズに対応する左右一対の瞳データを、右瞳データと左瞳データに分けてマイクロレンズの順に並べ、右瞳データ列と左瞳データ列を構成する。
【0018】
図4は、左右の瞳データ列を抽出するためにマイクロレンズアレイ4aから11個のマイクロレンズを選択した例を示す。マイクロレンズアレイ4aはマイクロレンズが千鳥格子状に配列されているので、図中に黒丸を繋げて示すように、偶数列のマイクロレンズと奇数列のマイクロレンズとを交互に選択して13個の焦点検出用のマイクロレンズ配列とする。この例では左から7番目のマイクロレンズが焦点検出用マイクロレンズ配列の中心になり、この位置を焦点検出位置と決める。
【0019】
駆動制御装置5の焦点演算部5cは、画像メモリ6aから左右一対の瞳データ列を読み出し、上述した瞳分割位相差検出方式により焦点検出演算(相関演算)を行い、撮影レンズ3の焦点調節状態を検出する。
【0020】
一対のデータ列に基づく焦点検出演算については周知であるが、ここでその概要を説明する。上述した左右一対の瞳データ列をA{ai}、B{bi}とし、データの個数をそれぞれN個(i=1,2,・・,N)とする。一対のデータ列A、Bのずらし量をkとしたとき、データ列AとBの差分Dは次式で表される。
Dk=Σ|ai+k−bi| ・・・(1)
(1)式により差分Dが最も小さくなるずらし量kを求める。一対のデータ列A、Bは離散的な数列であるから、マイクロレンズの間隔以上の分解能で差分Dが最小値となる真のずらし量kを得ることはできない。
【0021】
ここで、一対のデータ列A、Bは正弦波の合成とみなすことができるので、その内のある空間周波数ωを持つ正弦波信号に注目すると、(1)式は次式(2)とみなすことができる。
D(θ)=K∫|sin(ωx+θ)−sinωx|dx ・・・(2)
さらに(2)式を変形すると次式が得られる。
D(θ)=K’|sin(θ/2)・sin(ωx+φ)| ・・・(3)
(3)式は他の空間周波数にも適用でき、これらもすべてθに関する項が独立に乗ぜられていることから、差分式は正弦波の絶対値で変化することがわかる。また、θが0付近では正弦波は線形であるから、図5に示すように左右同じ傾きの直線に挟まれた、谷間の底が最小値であると見なせる。
【0022】
以下の三点内挿演算により差分Dが最小となる真のずらし量kを求める。まず、(1)式により差分Dの最小値Diとその時のずらし量kを求める。次に、最小値Diを与えるずらし量kに隣接するずらし量(k−1)と(k+1)の内、差分Dが大きい方Di-1を選び、二点(k,Di)と(k−1,Di-1)を結ぶ直線を引く。そして、この直線の傾きをaとすると、二番目に小さい差分Di+1を与えるずらし量k+1の点(k+1,Di+1)を通る傾き(−a)の直線を引き、2本の直線の交点を差分Dの真の最小値Dminとし、その真の最小差分Dminを与えるずらし量kを真のずらし量kminとする。
【0023】
この真のずらし量kminに所定の変換係数mを乗じ、撮影レンズ3による被写体像面のマイクロレンズ頂点面からの焦点外れ量、すなわちデフォーカス量DEFを求める。
DEF=m・kmin ・・・(4)
【0024】
以上の方法により、図4に示す焦点検出用マイクロレンズ配列の中心のマイクロレンズ位置において、撮影レンズ3の焦点調節状態を検出することができる。
【0025】
駆動制御装置5の瞳データ抽出部5a、データ列形成部5bおよび焦点演算部5cは、以上の焦点検出処理を撮像素子4の撮影画面内のすべてのマイクロレンズに対して行う。なお、図1に破線で囲む駆動制御装置5の瞳データ抽出部5a、データ列形成部5bおよび焦点演算部5cは上述した被写体特定手段を構成する。撮影画面内のすべてのマイクロレンズに対し水平方向位置を表す添え字pと垂直方向位置を表す添え字qを付して表すと、撮影画面内の各マイクロレンズ位置のデフォーカス量はDEFpqで表される。
【0026】
ただし、撮影画面内の焦点検出が可能な範囲は、撮影画面の縦および横の長さよりも焦点検出用マイクロレンズ配列の長さ分だけ狭い範囲になるが、検出できない部分については検出可能な範囲の検出結果に基づいて推定するか、あるいは焦点検出用マイクロレンズ配列の長さを短くして撮影画面の全範囲、もしくはそれに近い範囲において焦点検出を行う。
【0027】
なお、撮影画面内のコントラスト変化が少ない部分では、焦点検出が不能、もしくは検出結果の信頼性が低くなる。このような場合にはその周辺の信頼性が高い焦点検出結果が得られた範囲の検出値を用いて補間により求める。補間方法は単なる線形補間でもよいし、スプライン曲線補間でもよい。これにより、撮影画面の全範囲における焦点情報あるいは焦点曲面を得ることができる。
【0028】
また、この一実施の形態では、撮影画面の左右方向の焦点検出を例に挙げて説明するが、撮影画面の上下方向や斜め方向についても上記左右方向の焦点検出手法と同様な手法で焦点検出を行うことができる。
【0029】
駆動制御装置5の画像合成部5dは、焦点演算部5cにより検出された撮影画面内のすべてのマイクロレンズ位置の焦点情報を用いて、撮像素子4から出力される光電変換データから任意の位置あるいはすべての位置に焦点の合った画像を合成する。図6および図7を参照して画像合成部5dによる画像合成方法を説明する。
【0030】
図6は、撮影画面内の注目するマイクロレンズ(焦点検出位置)m0の焦点検出結果が、マイクロレンズ頂点面S0に焦点があるとされた場合の、該マイクロレンズm0位置の画像合成方法を説明する図である。この焦点面S0を通る光束は、撮影レンズ3の開口径とマイクロレンズの開口径とが同一、ないしは撮影レンズ3の開口径の方が小さくなるように設定されているので、マイクロレンズm0に対応した光電変換素子へ導かれる。したがって、マイクロレンズm0に被覆される光電変換素子(図中に黒く塗りつぶした光電変換素子)の出力を積算すれば、マイクロレンズ頂点面(予定焦点面)に焦点を持つマイクロレンズm0に対応する部分の画素出力(画像)が得られる。
【0031】
図7は、撮影画面内の注目するマイクロレンズ(焦点検出位置)m1の焦点検出結果が、マイクロレンズ頂点面からyの距離にある面S1に焦点があるとされた場合の、撮影画面内のマイクロレンズm1位置の画像合成方法を説明する図である。図6および図7において、マイクロレンズアレイ4aのマイクロレンズ間隔をdとし、マイクロレンズ頂点面から光電変換素子アレイ4bの受光面までの距離、つまりマイクロレンズの焦点距離をfとする。また、注目するマイクロレンズm1の光軸と焦点面S1との交点P1を通り、マイクロレンズm1に隣接するマイクロレンズm2を介して光電変換素子アレイ4bの受光面へ光束が到達する位置と、マイクロレンズm2の光軸との間の距離をxとすると、図7から明らかなように次の関係が成立する。
y/d=f/x ・・・(5)
【0032】
焦点面S1の点P1を通る光束は、注目するマイクロレンズm1の光軸上にある光電変換素子e1へ到達するとともに、注目マイクロレンズm1に隣接するマイクロレンズm2の光軸から距離xだけ遠ざかる位置にある光電変換素子e2へ到達する。同様に、注目マイクロレンズm1の反対側に隣接するマイクロレンズm6では、マイクロレンズm6の光軸から距離xだけ遠ざかる位置にある光電変換素子e6へ到達する。
【0033】
さらに、注目するマイクロレンズm1から距離n・d(n=2、3、・・)の位置にある周辺のマイクロレンズm3、m4、・・に対しても(5)式の関係が成立する。nとxにマイクロレンズの二次元位置を表す添え字“ij”を付け、(5)式を注目するマイクロレンズm1の周辺のマイクロレンズm3、m4、・・に拡張する。
y/(nij・d)=f/xij ・・・(6)
そして、注目するマイクロレンズm1に対する焦点面S1までの距離yを固定し、距離xを周辺のマイクロレンズm3、m4、・・に被覆される光電変換素子の範囲内で動かすと、焦点面S1の点P1を通る光束が注目するマイクロレンズm1の周辺のマイクロレンズm3、m4、・・のどの光電変換素子へ到達するかを知ることができる。
【0034】
図7に示す例では、焦点面S1の点P1を通る光束が、注目マイクロレンズm1から距離2dにあるマイクロレンズm3およびm7の光電変換素子e3およびe7へ到達する。注目マイクロレンズm1の周辺のすべてのマイクロレンズm2、m3、・・に対して(6)式により光電変換素子を特定し、それらの光電変換素子の出力を積算すれば、マイクロレンズ頂点面から距離yの位置に焦点面S1を持つ注目マイクロレンズm1に対応する画素出力(画像)が得られる。
【0035】
図6に示す例では、予定焦点面に焦点を持つマイクロレンズm0部分の画素出力(画像)が得られ、図7に示す例では、予定焦点面から距離yの位置に焦点を持つマイクロレンズm1部分の画素出力(画像)が得られる。これらの部分画素出力つまり画像はそれぞれピントが合った画像である。
【0036】
なお、それぞれのマイクロレンズに対応する画素出力は、複数の光電変換素子の出力を積算して求められるが、積算値を積算した光電変換素子数で正規化する。撮影画面の端にあるマイクロレンズでは、そのマイクロレンズの360度全周に亘って周辺のマイクロレンズが存在しないために積算値が小さくなるが、上記の正規化処理により画面端のマイクロレンズの画像も画面中央のマイクロレンズの画像と同じ明るさにすることができる。また、撮影レンズ3の絞り開口が小さくなると、積算する光電変換素子数が撮影画面内で均等にならず、同様な問題を生じるが、積算値を積算数で正規化することによって解決できる。
【0037】
上述したように、焦点演算部5cにより撮影画面内のすべてのマイクロレンズ位置におけるデフォーカス量DEFpqが求められているので、画像合成部5dによる上記手法を撮影画面内のすべてのマイクロレンズのデフォーカス量DEFpqに応じて画像合成処理を行えば、マイクロレンズと同じ数の画素出力すなわち画像が得られ、これらを二次元平面上のマイクロレンズ位置に応じて展開すれば、それぞれのマイクロレンズに対応するピントのあった画像が展開される。このようにして一度光電変換素子アレイ4bの信号を取り込むことにより、撮影画面内のどの位置にもピントの合った画像を合成することができる。
【0038】
なお、一部のマイクロレンズ位置の焦点を意図的に外すようにしたり、指定された範囲にのみ、焦点の合った画像を合成することもできる。例えば、撮影画像を処理して画像内から人物の顔を検出し、人物の顔部分に対応するマイクロレンズに対して上述した画像合成処理を行えば、すべての顔部分に焦点の合った画像を合成することもできる。
【0039】
上述した実施の形態とその変形例によれば以下のような作用効果を奏することができる。まず、複数のマイクロレンズを平面上に配列したマイクロレンズアレイ4aを撮影レンズ3の予定焦点面近傍に配置するとともに、複数の光電変換素子を平面上に配列した光電変換素子アレイ4をマイクロレンズアレイ4aの背後のマイクロレンズの焦点位置に配置し、撮影レンズ3により予定焦点面に結像された被写体像を撮像する撮像素子4と、マイクロレンズが被覆する複数の光電変換素子の内の一対の光電変換素子の出力に基づいて、撮影レンズ3の射出瞳を通過した一対の光束による一対の像のズレ量を検出し、被写体像の中のマイクロレンズに対応する位置の撮影レンズ3の焦点外れ量を検出する瞳データ抽出部5a、データ列形成部5bおよび焦点演算部5cと、被写体像の中のマイクロレンズに対応する位置の焦点はずれ量に応じて、該マイクロレンズとその周辺のマイクロレンズにそれぞれ被覆される光電変換素子の出力を積算し、被写体像の中の該マイクロレンズに対応する位置に焦点の合った画像を合成する画像合成部5dとを備える。これにより、1枚の撮像画像から焦点を合わせたい位置で焦点の合った画像を合成することができる。
【0040】
次に、被写体像を処理して人物の顔部分を検出し、人物の顔部分を焦点を合わせたい位置に設定し、設定位置の焦点外れ量に応じて被写体像の中の設定位置に焦点のあった画像を合成するようにしたので、1枚の撮像画像から人物の顔部分に焦点の合った画像を合成することができる。この場合、背景は適当にボケた画像を用いることができる。
【0041】
なお、上述した被写体特定手段により被写体像のすべての位置を特定することによって、被写体像のすべての位置においてピントの合った画像を合成することができる。また、上述した焦点検出方法によれば画面内のあらゆる位置における焦点調節状態を検出することができるので、全画面または任意の位置に焦点の合った画像を合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】一実施の形態のデジタルカメラの構成を示す図
【図2】マイクロレンズアレイを撮影レンズ側から見た図
【図3】一つのマイクロレンズの外径を光電変換素子アレイ上に投影した図
【図4】焦点検出用のマイクロレンズ配列の一例を示す図
【図5】三点内挿方法を説明するための図
【図6】撮影画面内の注目するマイクロレンズ(焦点検出位置)m0の焦点検出結果が、マイクロレンズ頂点面(撮影レンズの予定焦点面)S0に焦点があるとされた場合の、該マイクロレンズm0位置の画像合成方法を説明する図
【図7】撮影画面内の注目するマイクロレンズ(焦点検出位置)m1の焦点検出結果が、マイクロレンズ頂点面(撮影レンズの予定焦点面)からyの距離にある面S1に焦点があるとされた場合の、撮影画面内のマイクロレンズm1位置の画像合成方法を説明する図
【符号の説明】
【0043】
1;カメラ、2;カメラボディ、3;撮影レンズ、4;撮像素子、4a;マイクロレンズアレイ、4b;光電変換素子アレイ、5;駆動制御装置、5a;瞳データ抽出部、5b;データ列形成部、5c;焦点演算部、5d;画像合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系と、
二次元状に配列した複数のマイクロレンズを有し、前記撮影光学系の背後に配置されたマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイの背後に配置され、前記複数のマイクロレンズごとに複数の光電変換領域が割り当てられた光電変換装置と、
焦点を合わせる被写体を特定する被写体特定手段と、
前記被写体特定手段により特定された被写体に焦点のあった画像を前記光電変換装置の出力に基づき合成する画像作成手段とを有することを特徴とする画像合成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像合成装置において、
前記被写体特定手段は焦点検出手段を有し、
前記画像作成手段は前記焦点検出手段による焦点検出に先立ち予め取得した前記光電変換装置の出力に基づき、前記焦点検出手段が焦点検出した被写体に焦点の合った画像を作成することを特徴とする画像合成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像合成装置において、
前記光電変換装置の前記光電変換領域は前記撮影光学系の射出瞳と共役であり、前記焦点検出手段は前記マイクロレンズごとに割り当てられた複数の光電変換領域のうちの一対の光電変換領域の出力に基づき被写体までの焦点外れ量を検出することを特徴とする画像合成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像合成装置において、
前記被写体特定手段は、被写体の予め指定された特徴を識別し、この特徴部分に前記焦点検出手段により焦点検出を行い、焦点検出対象となった被写体に焦点の合った画像を合成するよう前記画像作成手段に指示する指示手段を有することを特徴とする画像合成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像合成装置において、
前記画像合成手段は、前記撮像素子の出力に基づき焦点深度の深い画像を作成し表示する表示手段を有し、
前記被写体特定手段は、前記表示手段の表示に基づき、焦点を合わせたい被写体を設定する設定手段を有し、
前記設定手段にて設定された被写体に焦点のあった画像を得ることを特徴とする画像合成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像合成装置において、
前記被写体特定手段は、前記撮影光学系の光軸方向へ異なる位置の被写体を特定し、前記画像作成手段は前記特定した複数の被写体に焦点の合った一つの画像を作成することを特徴とする画像合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−109921(P2010−109921A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282295(P2008−282295)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】