説明

画像変換処理装置

【課題】デジタル写真画像をスケッチ風の絵画調画像に変換して自然な感じで画面表示し又は印刷出力する画像変換処理装置を提供する。
【解決手段】読み込んだデジタル写真画像をその上下が画面の上下と一致するように画面表示する。トリミングしないときは、そのまま、横長の齣にトリミングしたときはそのまま拡大して画面に全面表示し、斜め左下がりの通常運筆のスケッチ風絵画調画像に変換する。縦長の齣にトリミングしたときは左右いずれかへ90°回転させてから拡大して画面に全面表示し、斜め右下がりの逆運筆のスケッチ風絵画調画像に変換し、変換後の画像の上下を天地に合わせて見たとき、斜め左下がりの通常運筆のスケッチ風絵画調画像に見えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像変換処理装置に係わり、更に詳しくはデジタル写真画像をスケッチ風の絵画調画像に変換して自然な感じで画面表示し又は印刷出力する画像変換処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラの普及により、デジタルデータで記録された写真画像を得ることが一般的となっている。この場合、撮影された写真画像は、撮影したデジタルカメラの表示面に表示して閲覧したり、デジタルカメラからデジタル画像データとして取り込んだパーソナルコンピュータなどに表示して閲覧したりすることができる。
【0003】
また、現今では標準規格となっているピクトブリッジと呼ばれるソフトウエアを用いると、デジタルカメラとプリンタをUSBケーブルで直接接続し、デジタルカメラで撮影した画像をパソコンを介さずにプリンタで印刷したり、又は専用機器を用いて画像を表示したり画像を加工したりすることができる。
【0004】
また、表示対象の写真を、特定の効果を与えることによって、人が書いたような絵画風の画像(以下、絵画風画像という)に変換する機能を備えた表示装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
また、絵画調変換では、写真印刷装置において、ノイズ発生器により画像に絵画調効果を付与して印刷するものや、実際の油絵に近い絵画調を表現するためにキャンバス加工処理を行うもの、あるいは、絵画風の重厚感のある画像形成を行うべく、特殊加工したシートに輪郭強調データに基づいてゲル状塗料を塗布して凹凸を形成させるものなども提案されている。(例えば、特許文献2、3、4参照。)
【0006】
このように、デジタルデータで記録された写真画像や加工後の画像は、パーソナルコンピュータを介して或いは直接にプリンタからプリントアウトして、従来同様のプリント写真として容易に得ることができる。
【0007】
周知のプリンタ方式としては、電子写真方式、熱転写方式、インクジェット方式があり、それぞれの長所・短所に基づいて使い分けされる。近年、フォトプリンタと呼ばれるデジタル写真画像用の印刷に特化した印刷機器も出てきたが、印刷方式としては上記いずれかを採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−213598号公報
【特許文献2】特開平10−341403号公報
【特許文献3】特開平08−036636号公報
【特許文献4】特許第3967022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のようにプリンタで通常の写真画像を印刷する場合は問題ない。ところが上述した絵画調変換したような画像を普通に印刷すると、基本的に光沢度の高いカレンダー状印刷になってしまう。これは特にフォトプリンタでは顕著である。
【0010】
絵画調に変換処理した画像は、印刷では光沢度は寧ろ無いほうが望ましいにも拘わらず、上記のように折角絵画調に変換処理したものを印刷物としたときに光沢があったのでは、違和感があって不満が残るという問題があった。
【0011】
また、上記の特許文献2では、感熱式ビデオプリンタでノイズを付与して絵画調シールプリントを得るものがあるが、高精細写真画像を画像変換した画像を忠実に印刷再現するようには意図されていない。
【0012】
また、上記の特許文献3では、写真から絵画調画像を生成する処理方法を開示しているが加工方法が複雑で、上記の特許文献2と同様に、処理機器の表示画面で確認した画像を忠実に印刷再現するようには意図されていない。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、デジタル写真をスケッチ風の絵画調画像に変換して自然な感じで表示し又は印刷出力する画像変換処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の画像変換処理装置は、デジタル写真画像データを読み込む読込手段と、該読込手段が読み込んだ上記デジタル写真画像データのデジタル写真画像をその上下方向が表示画面の上下方向と一致するように上記表示画面に表示する一致表示手段と、該一致表示手段により上記表示画面に表示された上記デジタル写真画像をトリミングするトリミング手段と、該トリミング手段によりトリミングされた画像が横長画像であるとき該横長画像を上記表示画面に全面表示する無変化全面表示手段と、上記トリミング手段によりトリミングされた画像が縦長画像であるとき左右いずれかに90°回転させてから上記表示画面に全面表示する回転全面表示手段と、上記表示画面に表示された上記デジタル写真画像を絵画調画像に変換処理する変換手段と、を有し、上記変換手段は、上記デジタル写真画像データをスケッチ風の絵画調画像データに変換する場合に、斜め左下がりに鉛筆を走らせた痕跡を表現する通常調変換手段と、斜め右下がりに鉛筆を走らせた痕跡を表現する逆調変換手段と、を有し、上記デジタル写真画像が上記一致表示手段、又は上記無変化全面表示手段により上記表示画面に表示されているとき上記通常調変換手段による変換を行い、上記デジタル写真画像が上記回転全面表示手段により上記表示画面に表示されているとき上記逆調変換手段による変換を行う、ように構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、デジタル写真画像をスケッチ風の絵画調画像に変換して自然な感じで画面表示し又は印刷出力する画像変換処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係る画像印刷装置の外観斜視図である。
【図2】実施例1に係る画像印刷装置の制御装置を含む回路ブロック図である。
【図3】実施例1に係る画像印刷装置においてデジタル写真をスケッチ風の絵画調画像に変換する場合の通常調の変換と逆調の変換の2通りの処理結果を示す図である。
【図4】(a)はデジタル写真画像の一例を示す図、(b)は実施例1に係る画像印刷装置において(a)のデジタル写真画像にスケッチ風の絵画調に変換処理をした後の変換画像を示す図である。
【図5】(a)は実施例1に係る画像印刷装置において図4(a)の写真画像を取り込んで右半分を切り取って残すようにトリミングした図、(b)はトリミング画像を右90°回転させて表示画面に全面表示した図、(c)はトリミング画像を左90°回転させて表示画面に全面表示した図である。
【図6】(a)は実施例1に係る画像印刷装置において図5(c)の左90°回転した全面表示画像を通常調のスケッチ風絵画調画像に変換した結果を示す図、(b)は変換後に印刷出力された画像を本来の上下と天地を合わせて見た図である。
【図7】(a)は実施例1に係る画像印刷装置において図5(c)の右90°回転した全面表示画像を逆調のスケッチ風絵画調画像に変換した結果を示す図、(b)は変換後に印刷出力された画像を本来の上下と天地を合わせて見た図である。
【図8】(a)は実施例1に係る画像印刷装置において図5(c)の左90°回転した全面表示画像を逆調のスケッチ風絵画調画像に変換した結果を示す図、(b)は変換後に印刷出力された画像を本来の上下と天地を合わせて見た図である。
【図9】実施例1に係る画像印刷装置の制御装置におけるデジタル写真画像をスケッチ風絵画調画像に変換して表示又は印刷出力する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係る画像変換処理装置としての画像表示印刷装置を示す外観斜視図である。図1に示す画像表示印刷装置1は、住所録を作成するとともに葉書などの文面や所望の文書を編集し、葉書の宛名印刷及び葉書の文面を印刷したり、文書を印刷したりするワードプロセッサ(以下、ワープロという)機能を有している。
【0019】
また、この画像表示印刷装置1は、デジタルカメラで撮影した写真画像(以下、デジタル写真画像という)を取り込んで、そのまま印刷したり、また、デジタル写真画像をスケッチ風の絵画調画像に変換して、その絵画調画像を印刷する印刷機能を有している。
【0020】
図1に示すように、この画像表示印刷装置1は、箱型の装置本体2を備え、装置本体2の前面の手前側には、ワープロとして使用する場合に文書データを入力したり編集するために必要な各種のキーや、編集した文書データを印刷するために必要なキーや、読み込んだデジタル写真画像を手書き風に加工する指示を入力するキー等を備えたキーボード3が設けられている。
【0021】
このキーボード3は装置本体2の本体側部4の下部に着脱可能に取り付けられており、上述したようなキー入力を行なう場合には、装置本体2の本体側部4から取り外し、キーが配置された上面を上向きにして装置本体2の前部に略水平状態に配置する。
【0022】
キーボード3は、基台5とこの基台5上に多数配置されたデータ入力キー6を備えている。そして、キーボード3は、本体側部4から取り外しても、キーボード3と装置本体2とは、コード7によって通信上の接続は保たれている。このキーボード3を使用しない場合には、これを垂直向きに起し、装置本体2の本体側部4に当接させて収納する。
【0023】
また、装置本体2の前面下部には、装置本体2内の印刷機構によって印刷された用紙Pを装置本体2外に排出させる排紙口8が設けられている。また、本体側部4には、図では本体側部4は紙面奥行き方向の向こう側面になるため見えないが、複数種類のメモリカードの挿入が可能なカードスロットや複数のUSBコネクタが設けられている。
【0024】
そのカードスロットにメモリカードが挿入されると、メモリカードの端子がカードスロット内のコネクタ端子に接続してメモリカードに記録されている画像データの読取りが可能となるように構成されている。また、USBコネクタにUSBフラッシュメモリが挿入された場合には、USBフラッシュメモリに記録されている画像データが読み取られる。
【0025】
装置本体2の上面部には表示パネル収納部9が設けられている。この表示パネル収納部9は、装置本体2が使用されていないときは、表示パネル11をパネル面12を下向きにして収納するように構成されている。
【0026】
図1は、装置本体2の使用時の状態を示しており、表示パネル11は、ヒンジ13を回動軸にして装置本体2の上方手前に垂直に引き起こされ、さらに手前下方に180度引き倒され、図1に示すように、パネル面12を本体装置2の前方に向けて位置固定される。
【0027】
表示パネル11のパネル面12は液晶表示面からなり、この液晶表示面には、キーボード3から入力されたデータや各種の設定に必要なメニュー画面、またメモリカードやUSBフラッシュメモリから取り込んだデジタルカメラの写真画像、さらにはこの印刷装置で必要とする各種のデータが表示されるようになっている。
【0028】
また、この画像表示印刷装置1の装置本体2の上部には、装置本体2の後方側と装置本体2の上面上方との間で回動可能な取っ手14が設けられている。この取っ手14を用いて画像表示印刷装置1を持ち運びすることが可能になっている。
【0029】
装置本体2の背面部には、図では陰になって見えないが、給紙トレイが設けられている。この給紙トレイの上部には開口部が設けられ、その開口部から給紙トレイの内側に印刷用の用紙Pを複数枚重ねて収容することができるようになっている。
【0030】
この給紙トレイの内部には、重ねて収容された用紙Pを1枚ずつ装置本体2内に送り出すピックアップローラが設けられ、このピックアップローラは印刷開始時に図示しない駆動モータにより回転駆動される。
【0031】
装置本体2の内部には、ピックアップローラで送り出された用紙Pを搬送案内する用紙搬送路が設けられている。用紙搬送路の前後には、用紙搬送路に沿って装置本体2内部の背面側から前面側に向けて用紙Pを挟んで搬送する給紙ローラ対と排紙ローラ対が配設されている。その用紙搬送路の途中にインクジェット方式の印刷機構が設けられている。
【0032】
図2は、上記の画像表示印刷装置1の制御装置を含む回路ブロック図である。図2に示すように回路ブロックは、CPU(central processing unit)15を中心にして、このCPU15に、それぞれデータバスを介してROM(read only memory)16、RAM(Random Access Memory)17が接続されている。
【0033】
上記のROM16には、システムプログラムが記憶されている。CPU15は、このシステムプログラムに従って、CPU15に接続されている他の回路ブロックを介し、画像表示印刷装置1の各部を制御する。
【0034】
他の回路ブロックとしては、画像変換処理部18、キーボード3、ネットワーク(外部)データ入出力部19、表示部21、プリンタコントローラ22、用紙種類検出センサ23、読取制御部24等がCPU15に接続されている。
【0035】
画像変換処理部18は、表示パネル11のパネル面12に表示中又はRAM17等に記憶する写真画像データ(元画像)をスケッチ風絵画調画像データに変換する機能を備えている。
【0036】
ネットワーク(外部)データ入出力部19は、画像データとその画像データに関る印刷コマンドを、不図示の無線LANルータを介して他の無線送受信装置付きの機器、例えば電子写真プリンタ等の外付け無線LAN通信装置との間で入出力する。
【0037】
表示部21には表示パネル11が接続されている。表示部21は表示パネル11のパネル面に表示される画像の表示出力を制御する。プリンタコントローラ22には印刷機構25が接続されている。
【0038】
プリンタコントローラ22は、印刷すべき画像データに従って印刷機構25における給紙トレイから用紙Pの搬入、その用紙Pへの印刷、印刷した用紙Pの搬出を制御する。
【0039】
読取制御部24には、図1では陰になって見えなかった複数種類のメモリカード装着部(カードスロット)26とUSBコネクタ27が接続されている。読取制御部24は、カードスロット26に装着されたメモリカード、又はUSBコネクタ27に装着されたUSBフラッシュメモリの画像データを読み出してCPU15に送信する。
【0040】
図3(a),(b)は、変換手段としての画像変換処理部18において、デジタル写真画像データをスケッチ風の絵画調画像データに変換する場合に、2通りの変換処理方法が使用される例を示す図である。
【0041】
図3(a)は、象の頭と前足の部分を撮影したデジタル写真画像をスケッチ風の絵画調画像として、3本の矢印aで示すように、斜め左下がりに鉛筆を走らせた痕跡を表現するように画像変換処理した通常調の変換を行った場合の変換後の画像を示している。
【0042】
そして、図3(b)は、同じく象の頭と前足の部分を撮影したデジタル写真画像をスケッチ風の絵画調画像として、3本の矢印bで示すように、斜め右下がりに鉛筆を走らせた痕跡を表現するように画像変換処理した逆調の変換を行った場合の変換後の画像を示している。
【0043】
本来、スケッチ画では、鉛筆を走らせた痕跡は、図3(a)のように斜め左下がりになるのが一般的である。すなわち、通常、人は右利きが多く、鉛筆を持つ手が右になり、鉛筆を走らせた痕跡が斜め左下がりになる。したがって、デジタル写真画像をスケッチ風の絵画調画像に変換するときは、図3(a)の通常調の変換処理方法のみを用いればよい。それにも拘わらず、本例において、図3(b)に示す逆調の変換処理方法も用いるようにした理由を以下に説明する。
【0044】
図4(a)は像の全身を撮影したデジタル写真画像であり、同図(b)は、デジタル写真画像を変換処理したスケッチ風絵画調画像を示す図である。ここで表現されている鉛筆を走らせた痕跡は、一般的な斜め左下がりとなっている。
【0045】
図5(a)は、図4(a)の像の全身像を、頭と前足を残すようにトリミングした状態を示す図である。このようにトリミングした結果が縦長の画像になった場合、トリミング後の頭と前足の部分だけとなった象の画像をスケッチ風の絵画調画像に変換する前に、図5(b)に示すように右90°に回転、又は図5(c)に示すように左90°に回転して横長画像としてから、拡大し、表示画面に全面表示する。
【0046】
これは、スケッチ風の絵画調画像に変換した後、印刷出力する場合に、図5(a)のトリミングしたままの状態で、スケッチ風絵画調画像に変換して印刷出力すると、図5(a)の大きさのものが拡大されて印刷出力される。すなわち、鉛筆を走らせた痕跡が拡大されて、大きく荒れた状態になるので、乱暴な筆運びのスケッチ画となる。
【0047】
そのような不具合を避けるため、スケッチ風絵画調画像に変換する前に、拡大のため元画素の間に挿入する画素に補完処理を施しながら拡大して、拡大前と同様な肌理の細かい画像としてから、この画像にスケッチ風絵画調画像の変換処理をして印刷出力する。そうすると、鉛筆を走らせた痕跡が自然な粗さのスケッチ風絵画調の画像となる。
【0048】
図6(a)は、図5(c)の拡大画像に、斜め左下がりの通常調の変換処理を施した状態の画像を示す図であり、図6(b)は、その変換処理後の画像を、その上下を天地に合わせて印刷出力した状態を示す図である。図6(b)に見るように、鉛筆を走らせた痕跡が右下がりの逆調となっている。
【0049】
この図6(b)のように、筆運びが右下がりの逆調となっている画像と、図4(b)に示した筆運びが左下がりの通常調となっている画像とが、画像表示印刷装置1のメモリ内に混在していると、これらを印刷出力してアルバム等に貼り付けて一覧表示したとき、あるいは画像表示印刷装置1の表示パネル11のパネル面12にスクロール表示又はサムネイル表示したとき、目にするスケッチ風絵画調画像の筆運びが左下りであったり右下がりであったりと、まちまちでは、見苦しく、不自然である。
【0050】
そこで、スケッチ風絵画調画像に変換した画像を、その上下を天地に合わせて表示又は印刷出力したときに、全ての画像が通常調の斜め左下がりの筆運びとなっていれば、調和の取れた画像データベースが出来上がる。
【0051】
図4(a)のように表示画面に全面表示された画像の上下が天地に合っている場合は、斜め左下がりの通常調の変換処理で図4(b)に示すように何ら問題はない。問題は、トリミングして小さくなった齣を拡大した場合に生じる。
【0052】
それも、特には図示しないが、画像を十字の線引きで分けて全画面の1/4にトリミングした場合は、トリミングして小さくなった齣は横長画像であるので、この横長画像をそのまま表示画面に全面表示するよう拡大しても、画像の上下が天地に合っているので、左下がりの通常調の変換処理で、通常調のスケッチ風絵画調画像に変換できるので問題はない。
【0053】
図5(a)のようにトリミングして小さくなった齣が縦長画像のときに、図6(b)に示したような問題が生じる。そこで、本例では、図3(b)に示したように、斜め右下がりに鉛筆を走らせた痕跡を表現する逆調の変換処理を用意しておく。
【0054】
そして、トリミングして齣が小さくなった縦長画像を、図5(b)又は図5(c)に示すように左右いずれかに90°回転し、画素補完を施して拡大表示したときには、その拡大画像に対して筆運びが逆調の変換処理を施す。
【0055】
図7(a)は、図5(b)のように右に90°回転して全面表示に拡大した画像に、筆運びが逆調の変換処理を施した図であり、図7(b)はその変換処理した画像を、上下を天地に合わせて印刷出力した図である。このように、右に90°回転した画像に逆調の変換処理を施こすと、上下を天地に合わせて印刷出力したとき筆運びが通常調のスケッチ画像に見えるようになる。
【0056】
また、図8(a)は、図5(c)のように左に90°回転して全面表示に拡大した画像に、筆運びが逆調の変換処理を施した図であり、図8(b)はその変換処理した画像を、上下を天地に合わせて印刷出力した図である。このように、左に90°回転した画像の場合も、逆調の変換処理を施こすと、上下を天地に合わせて印刷出力したとき筆運びが通常調のスケッチ画像に見えるようになる。
【0057】
本例の画像表示印刷装置1が、図3(a)の通常調の変換処理機能と、図3(b)に示す逆調の変換処理機能の2通りの変換処理機能を備えている理由は、上述した通りである。
【0058】
図9は、上記のように2通りの変換処理機能を備えた画像表示印刷装置1の制御装置のCPU15によるデジタル写真画像をスケッチ風絵画調画像に変換する処理の動作を説明するフローチャートである。
【0059】
図9において、処理が開始されると、CPU15は、先ず画像データを読み込む(ステップS1)。この処理では、カードスロットにメモリカードが挿入されていればメモリカードから画像データを読み込む。又はUSBコネクタにUSBフラッシュメモリが挿入されていた場合にはUSBフラッシュメモリから画像データを読み込む。
【0060】
続いて、CPU15は、表示パネル11のパネル面12に、「画像の上下方向は画面の上下方向に合っていますか?」を表示して(ステップS2)、ユーザから「ハイ」ボタン又は「いいえ」ボタンが押されたか、ユーザからの入力を待つ(ステップS3)。
【0061】
そして、「いいえ」ボタンが押されていれば、表示中の画像の上下を画面の上下に合わせる(ステップS4)。この処理では、例えばペイント(画像処理アプリケーション)の「変形」ボタンのように、ユーザに処理を任せるようにしてもよく、又は、画像の上下を自動認識して、処理するようにしてもよい。
【0062】
次に、CPU15は、「トリミングしますか?」と表示して(ステップS5)、ユーザから「ハイ」ボタン又は「いいえ」ボタンが押されたか、ユーザからの入力を待つ(ステップS6)。
【0063】
尚、上記ステップS3の判別で、「はい」ボタンが押されているときは、CPU15は直ちにステップS5及びS6の処理に進む。そして、ステップS6で、「はい」ボタンが押されていれば、トリミング処理を開始する(ステップS7)。
【0064】
このトリミング処理は、例えば図5(a)に示したようなトリミングの処理であり、一般的にはトリミング処理のアプリケーションを用いて行うことができる。そしてトリミングが終了したら、CPU15は、トリミング後の画像を直ちに拡大するか否か判別する(ステップS8)。
【0065】
この処理は、トリミング後の画像が図5(a)のように縦長画像でなく、例えば画像を十字の線引きで分けて全画面の1/4にトリミングした場合は、トリミングして小さくなった齣は横長画像であり、更に画像の上下が天地に合っているので(S8の判別がYes)、そのままトリミング部分を表示パネル11のパネル面12の大きさに拡大表示する(ステップS9)。
【0066】
続いて、CPU15は、パネル面12の全面に拡大表示した画像に対して、左下がりの筆運び、つまり通常調のスケッチ絵画調の画像変換処理を行う(ステップS10)。そして、そのスケッチ絵画調に変換した画像データをメモリに保存する(ステップS11)。
【0067】
尚、ステップS6の判別で、「いいえ」ボタンが押されているときは、CPU15は直ちにステップS10及びS11の処理に進む。
【0068】
また、ステップS8の判別で、トリミング後の画像が図5(a)のように縦長画像の場合は、そのまま拡大したのでは、画像の上下が画面からはみ出してしまうので(S8の判別がNo)、CPU15は、「90°回転してください」の文字を画像上にオーバーラップ表示して、ユーザが左右いずれかに画像を90°回転させるまで待機する(ステップS13、判別がNo)。
【0069】
そして、CPU15は、画像が90°回転したことを判別すると(S13の判別がYes)、その回転した画像を表示パネル11のパネル面12の大きさに拡大表示する(ステップS14)。尚、上記の回転は。90°でさえあれば、左右いずれの方向への回転であってもよい。
【0070】
続いて、CPU15は、拡大表示した画像に対して、図7(a)又は図8(a)に示したように、右下がりの筆運び、つまり逆調のスケッチ絵画調の画像変換処理を行う(ステップS15)。そして、ステップS11に進み、いまスケッチ絵画調に変換した画像データをメモリに保存する。
【0071】
尚、上記のステップS1〜S15の処理は、読み込んだ画像データに対し、ユーザが所望する数の画像データに対して行われる。
【0072】
スケッチ絵画調の変換と、変換した画像のメモリへの保存が全て終了すると、CPU15は、CPU15、表示パネル11のパネル面12に「表示しますか?」と表示して(ステップS16)、ユーザから「ハイ」ボタン又は「いいえ」ボタンが押されたか、ユーザからの入力を待つ(ステップS17)。
【0073】
このステップS17の判別で、「はい」ボタンが押されたときは、CPU15は、ステップS11でメモリに保存した画像を、画像の上下をパネル面12の天地に合わせて、スクロール表示又はサムネイル画像として一覧表示する(ステップS18)。
【0074】
尚、スクロール表示であるか、サムネイル画像の一覧表示であるかは、ユーザからの画面上のツールボタンの操作によって決定される。
【0075】
上記に続いて、CPU15は、ユーザから表示終了の指示入力があるか否か判別する(ステップS19)。そして、表示終了の指示入力がなければ(S19の判別がNo)、ステップS18に戻って、スクロール表示、又はサムネイル画像の一覧表示を続ける。
【0076】
他方、ステップS19の判別で、表示終了の指示入力があったときは(S19の判別がYes)、続いて、CPU15は、表示パネル11のパネル面12に「印刷しますか?」と表示して(ステップS20)、ユーザから「ハイ」ボタン又は「いいえ」ボタンが押されたか、ユーザからの入力を待つ(ステップS21)。
【0077】
尚、上記ステップS17の判別で、「いいえ」ボタンが押されているときは、CPU15は、直ちに上記ステップS20及びS21の処理に進む。そして、ステップS21の判別で、「はい」ボタンが押されていれば、指定された画像の印刷を実行して(ステップS22)、処理を終了する。また、ステップS21の判別で、「いいえ」ボタンが押されていれば、直ちに処理を終了する。
【0078】
このように。本例の画像表示印刷装置1によれば、図3(a)の通常調のスケッチ風絵画調の変換処理機能と、図3(b)に示す逆調のスケッチ風絵画調の変換処理機能の2通りの変換処理機能を備えている。
【0079】
したがって、読み込んだデジタル写真画像データを、そのままは勿論、どのようにトリミングした画像でも、スケッチ風絵画調画像に変換し、画像の上下を天地に合わせて見たときには、図4(b)、図7(b)又は図8(b)に示すように全て通常調のスケッチ風絵画調画像となっているので、見た目に調和のとれたスケッチ風絵画調画像のデータベースを作成することができる。
【0080】
尚、図3(a),(b)ないし図8(a),(b)では、いずれも白黒調のスケッチ風絵画調画像への変換として説明しているが、本例の画像表示印刷装置1はフルカラーのインクジェット方式の印字機構を内蔵している。
【0081】
したがって、読み込んだデジタル写真画像がフルカラーであれば、色鉛筆を用いて描いたスケッチ風絵画調画像のように、斜め左下がりの色鉛筆の筆致で描いたようなスケッチ風絵画調画像に変換することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
【0083】
デジタル写真画像データを読み込む読込手段と、
該読込手段が読み込んだ前記デジタル写真画像データのデジタル写真画像をその上下方向が表示画面の上下方向と一致するように前記表示画面に表示する一致表示手段と、
該一致表示手段により前記表示画面に表示された前記デジタル写真画像をトリミングするトリミング手段と、
該トリミング手段によりトリミングされた画像が横長画像であるとき該横長画像を前記表示画面に全面表示する無変化全面表示手段と、
前記トリミング手段によりトリミングされた画像が縦長画像であるとき左右いずれかに90°回転させてから前記表示画面に全面表示する回転全面表示手段と、
前記表示画面に表示された前記デジタル写真画像を絵画調画像に変換処理する変換手段と、
を有し、
前記変換手段は、前記デジタル写真画像データをスケッチ風の絵画調画像データに変換する場合に、
斜め左下がりに鉛筆を走らせた痕跡を表現する通常調変換手段と、
斜め右下がりに鉛筆を走らせた痕跡を表現する逆調変換手段と、
を有し、
前記デジタル写真画像が前記一致表示手段、又は前記無変化全面表示手段により前記表示画面に表示されているとき前記通常調変換手段による変換を行い、
前記デジタル写真画像が前記回転全面表示手段により前記表示画面に表示されているとき前記逆調変換手段による変換を行う、
ことを特徴とする画像変換処理装置。
[付記2]
【0084】
前記痕跡は、色鉛筆を走らせた痕跡である、ことを特徴とする請求項1記載の画像変換処理装置。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、デジタル写真画像をスケッチ風の絵画調画像に変換して自然な感じで画面表示し又は印刷出力する画像表示印刷装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 画像表示印刷装置
2 装置本体
3 キーボード
4 本体側部
5 基台
6 データ入力キー
7 コード
8 排紙口
9 表示パネル収納部
P 用紙
11 表示パネル
12 パネル面
13 ヒンジ
14 取っ手
15 CPU(central processing unit)
16 ROM(read only memory)
17 RAM(Random Access Memory)
18 画像変換処理部
19 ネットワーク(外部)データ入出力部
21 表示部
22 プリンタコントローラ
23 用紙種類検出センサ
24 読取制御部
25 印刷機構
26 メモリカード装着部(カードスロット)
27 USBコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル写真画像データを読み込む読込手段と、
該読込手段が読み込んだ前記デジタル写真画像データのデジタル写真画像をその上下方向が表示画面の上下方向と一致するように前記表示画面に表示する一致表示手段と、
該一致表示手段により前記表示画面に表示された前記デジタル写真画像をトリミングするトリミング手段と、
該トリミング手段によりトリミングされた画像が横長画像であるとき該横長画像を前記表示画面に全面表示する無変化全面表示手段と、
前記トリミング手段によりトリミングされた画像が縦長画像であるとき左右いずれかに90°回転させてから前記表示画面に全面表示する回転全面表示手段と、
前記表示画面に表示された前記デジタル写真画像を絵画調画像に変換処理する変換手段と、
を有し、
前記変換手段は、前記デジタル写真画像データをスケッチ風の絵画調画像データに変換する場合に、
斜め左下がりに鉛筆を走らせた痕跡を表現する通常調変換手段と、
斜め右下がりに鉛筆を走らせた痕跡を表現する逆調変換手段と、
を有し、
前記デジタル写真画像が前記一致表示手段、又は前記無変化全面表示手段により前記表示画面に表示されているとき前記通常調変換手段による変換を行い、
前記デジタル写真画像が前記回転全面表示手段により前記表示画面に表示されているとき前記逆調変換手段による変換を行う、
ことを特徴とする画像変換処理装置。
【請求項2】
前記痕跡は、色鉛筆を走らせた痕跡である、ことを特徴とする請求項1記載の画像変換処理装置。

【図2】
image rotate

【図9】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−164174(P2012−164174A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24529(P2011−24529)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】