説明

画像形成システム、画像形成装置およびコンピュータープログラム

【課題】利用者が複数の画像形成装置の一つを選択して料金を支払って使用するシステムの利便性を高める。
【解決手段】画像形成システムは、それぞれに接続される金銭入力装置に入金された金額分の使用が可能な複数の画像形成装置を有する。複数の画像形成装置のうちの第1の画像形成装置は、操作者による指示に従って、自己に接続されている第1の金銭入力装置に入金された金額のうちの残金額を示す金額情報を、複数の画像形成装置のうちの第1の画像形成装置ではない第2の画像形成装置へ送信する。第2の画像形成装置は、第1の画像形成装置から受信した金額情報が示す残金額分のジョブの投入を受け付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用に際して料金の入金が必要な画像形成装置、この種の画像形成装置を複数有する画像形成システム、および画像形成装置のためのコンピュータープログラムに関する。画像形成装置には、複写機、プリンター、ファクシミリ装置およびこれらの機器の機能を合わせ持つMFP(Multi-functional Peripheral)が含まれる。
【背景技術】
【0002】
不特定の顧客が有償で使用することのできる複写機が、コンビニエンスストアをはじめとする種々の店舗に設置されている。近年ではMFPの持つ様々な機能を有償で開放するオフィスサービスも提供されている。このような有償サービスを提供する店舗において、複写機やMFPといった画像形成装置には課金用のコインベンダーが接続されており、サービスの利用客はコインベンダーに貨幣を投入したりプリペイドカードを読み取らせたりして料金を支払う。コインベンダーは画像形成装置に入金情報を伝え、必要に応じて釣銭を出力する。複数台の画像形成装置が設置される店舗では、一般に、全ての画像形成装置を独立にかつ同時に使用することができるように各画像形成装置に個別にコインベンダーが接続される。
【0003】
複数台の画像形成装置を有するシステムに関する先行技術として、特許文献1に開示されているように、印刷途中のプリンターに障害が発生したときに、ネットワーク上の他のプリンターに印刷ジョブを転送して印刷ジョブの実行を継続させる技術がある。
【0004】
また、特許文献2にはサービスを利用する権利の証である権利情報(電子情報)を装置間で移動することが記載されている。特許文献2では、権利情報の移動を安全かつ容易に行うために暗号鍵を用いる通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−314438号公報
【特許文献2】特開2006−295519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の画像形成装置を提供するサービスの利用者(顧客)が、使用したい1台の画像形成装置Aに付随するコインベンダーに貨幣を投入して入金を済ませた後、何らかの理由で画像形成装置Aに代えて他の画像形成装置Bを使用したいと思う状況が有り得る。例えば、カラーコピーを行いたいにもかかわらず、既に入金を済ませた画像形成装置Aがカラー複写機ではなくモノクロ複写機であることに気付いた、という状況が考えられる。また、複数枚のコピーの途中でトナーや用紙が無くなるというような利用者(顧客)自身では対処することができないエラーが発生した、という状況も考えられる。
【0007】
従来、入金を済ませた後に画像形成装置を変更するには、(1)コインベンダーに設けられている返金(釣銭)ボタンを押し、(2)返却口から返金された貨幣を取り出し、(3)返却金額を確認し、(4)改めて使用したい近くの画像形成装置まで移動してそのコインベンダーに貨幣を再投入する、という作業を利用者が行なわなければならない。この一連の作業は利用者にとって面倒である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、利用者が複数の画像形成装置の一つを選択して料金を支払って使用するシステムの利便性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するシステムは、それぞれに接続される金銭入力装置に入金された金額分のジョブを受け付ける複数の画像形成装置を有する画像形成システムであって、前記複数の画像形成装置のうちの第1の画像形成装置は、操作者による指示に従って、自己に接続されている第1の金銭入力装置に入金された金額のうちの残金額を示す金額情報を、前記複数の画像形成装置のうちの前記第1の画像形成装置ではない第2の画像形成装置へ送信する金額情報送信部を備え、前記第2の画像形成装置は、前記第1の画像形成装置から受信した前記金額情報が示す前記残金額分のジョブの投入を受け付けるジョブ管理部を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、料金を支払った後に使用する画像形成装置を変更する場合に貨幣の返却と再投入の手間を無くすことができ、利用者が複数の画像形成装置の一つを選択して料金を支払って使用するシステムの利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成システムの構成を示すブロック図である。
【図2】画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】画像形成装置における課金に関わる機能の構成を示す図である。
【図4】画像形成システムの動作を示すシーケンス図である。
【図5】エラー発生時の操作画面の一例を示す図である。
【図6】他の画像形成装置へ金額情報を引き渡す画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】他の画像形成装置から金額情報を引き継ぐ画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図7の認証処理のフローチャートである。
【図9】図7の釣銭出力処理Aのフローチャートである。
【図10】図7の釣銭出力処理Bのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に例示される画像形成システム1は、顧客が画像形成装置をセルフサービス形式で一時使用する有償サービスのためのシステムである。画像形成システム1は、サービス提供者が運営する店舗に設置されており、所定の間隔で並ぶ複数の画像形成装置2,3を有している。図示では2台の画像形成装置2,3が描かれているが、台数は3以上であってもよい。画像形成装置2,3は共にMFPであり、コピー、ファクシミリ通信、電子メール送受を含む種々の用途で使用することができる。ただし、本実施形態では、一方の画像形成装置2はカラープリントおよびモノクロプリントを行うことができるのに対して、他方の画像形成装置3はモノクロプリントを行うことができるがカラープリントを行うことができないものとする。これら画像形成装置2,3はLAN(Local Area Network)8に接続されており、相互の通信およびインターネット9へのアクセスが可能である。
【0013】
画像形成装置2の近傍には画像形成装置2を使用したい利用客が料金を支払うための金銭入力装置であるベンダー4が画像形成装置2に付随する装置として設置されている。ベンダー4は硬貨投入口42、返却口44および投入金額を表示するディスプレイを有している。画像形成装置2とベンダー4とはケーブル6によって接続されており、ベンダー4から画像形成装置2へ投入金額が通知され、必要に応じて画像形成装置2からベンダー4へ釣銭の出力が指示される。同様に、画像形成装置3の近傍にはベンダー5が設置されている。ベンダー5も、硬貨投入口52、返却口54およびディスプレイを有している。画像形成装置3とベンダー5とはケーブル7によって接続されており、これらの間で連携動作のための通信が行なわれる。
【0014】
なお、ベンダー4,5は、硬貨だけを扱うコインベンダーであってもよく、硬貨および紙幣の投入が可能な装置であってもよく、さらにプリペイドカードやクレジットカードによる支払いにも対応した装置であってもよい。
【0015】
図2は画像形成装置2のハードウェア構成を示している。画像形成装置2の構成と画像形成装置3の構成は基本的には同様である。ただし、上述のようにプリント可能な色の差異はある。ブロックで表す構成がほぼ等しいので、図2では代表として画像形成装置2の構成が示されている。
【0016】
画像形成装置2は、操作パネル20、メインコントローラー21、ADF(Auto Document Feeder)22、イメージスキャナー23、エンジンコントローラー24、プリンターエンジン25、用紙スタッカー26、ファクシミリユニット27、通信インタフェース28、ストレージ29、およびベンダー6との接続のためのインタフェース30を有する。
【0017】
操作パネル20はタッチパネル201を備える。タッチパネル201は、操作画面を表示するディスプレイとその表示面に密着する透光性のタッチ入力デバイスとから構成される。メインコントローラー21は、制御プログラムや各種アプリケーションを実行するコンピューターとしてのCPU(central processing unit)212、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)213、プログラム実行のワークエリアとされるS−RAM(Static Random Access Memory)215、および動作の設定値を記憶するバッテリバックアップされたNV−RAM(不揮発性メモリ)216を有する。ADF22は、原稿台を有しており、コピー、イメージ入力、またはファクシミリ送信において、原稿台にセットされた原稿シートをイメージスキャナー23の読取り位置へ搬送する。ADF22には、原稿台と原稿排出トレイとイメージスキャナー23の読取り位置とのそれぞれにおける原稿シートの有無を検出するセンサー221を有する。イメージスキャナー23は原稿シートに記録されている画像情報を光学的に読み取る。エンジンコントローラー24は、プリンターエンジン25の動作を制御する。プリンターエンジン25は、多段式の用紙スタッカー26から供給される用紙の片面または両面に電子写真法によってモノクロまたはカラーの画像をプリントする。ファクシミリユニット27は、図示しない電話回線またはLAN8を用いるファクシミリ送受信のためのデータ処理を担う。通信インタフェース28は画像形成装置2をLAN8に接続する。ストレージ29はハードディスクドライブ(HDD)のような大容量記憶デバイスである。ストレージ29には、制御プログラムや操作画面の表示のための画面データを含む制御用のデータを記憶する媒体としてのメモリ領域が設けられている。課金に関わるプログラムもストレージ19に格納され、必要に応じてワークエリアにロードされる。
【0018】
このようなハードウェア構成をもつ画像形成装置2および画像形成装置3における課金に関わる機能の構成が図3に示されている。図3のように、画像形成装置2および画像形成装置3において、課金に関わる機能の構成は共通である。すなわち、画像形成装置2および画像形成装置3のそれぞれが、入金額のうちの残金額分の使用権利を他の画像形成装置へ引き渡す装置(これを「転送元」という)としての機能と、他の画像形成装置から使用権利を引き継ぐ装置(これを「転送先」という)としての機能との両方を有する。したがって、画像形成装置2および画像形成装置3は、相互に使用権利の授受を行うことができる。
【0019】
転送元としての機能に関わる構成要素は、金銭情報送信部101、出金禁止部103、入金禁止部104、および要求依頼部105である。転送元としての機能および転送先としての機能の両方に関わる構成要素は、画面表示部102および釣銭出力指示部106である。そして、転送先としての機能に関わる構成要素は、ジョブ管理部107および状態通知部108である。転送元および転送先の一方または両方としての機能に関わるこれら構成要素は全て、メインコントローラー21におけるコンピューターとしてのCPU212がプログラムを実行することによって実現される。図3中の破線矢印は画像形成装置3から画像形成装置2へ使用権利を転送する場合における構成要素の連携関係を示している。以下、図3に示された構成要素のそれぞれの機能をシーケンス図およびフローチャートを参照して説明する。
【0020】
図4のシーケンス図によって示される動作は、使用権利の転送が行なわれる場合の動作である。例示では、モノクロプリントの可能な画像形成装置3が転送元とされ、カラープリントの可能な画像形成装置2が転送先とされている。図4の例示において、有償サービスの利用者(すなわち画像形成システム1を一時的に使用する使用者)の行動と、それに伴う画像形成システム1の動作は次のとおりである。
【0021】
利用者が画像形成装置3を使用しようとして画像形成装置3に付随するベンダー5に所定の貨幣を投入する。ベンダー5は入金を受け付け(S1)、入金額を画像形成装置3に通知する(S2)。画像形成装置3のジョブ管理部101は、操作パネル20におけるジョブの指定操作を受け付ける(S3)。通常であれば、ジョブが指定され、その後のスタート操作に呼応してジョブが実行される(S4)。しかし、常にそうなるとは限らない。例えば、次のような状況が考えられる。
【0022】
通常どおりにジョブが指定されてジョブが実行されている途中で、トナーや用紙が不足したエラー状態になる場合がある。また、他の状況として、カラーコピーを望んでいた利用者が、ジョブを指定する時点で画像形成装置3ではカラーコピージョブを指定できないことに気付き、他の画像形成装置を使用しようと思う場合がある。これらの場合、利用者は投入金額からそれまでの課金分を差し引いた残金額分の使用権利を他の画像形成装置に転送することができる。そのための図示しない操作ボタンが操作パネル20に配置されている。エラーが生じた場合には、画面表示部102がタッチパネル201のディスプレイに図5に示される操作画面W1を表示させる(S5)。図5の操作画面W1は、残金で他の画像形成装置を使用するかどうかを利用者に問うメッセージ91と、「はい」および「いいえ」の選択ボタン95,96とを有する。「はい」の選択ボタン95を押下すると、画像形成装置3は残金を返却せずに残金額分の使用権利を他の画像形成装置に転送するモードに移行する。
【0023】
図4に戻って、使用権利を転送するモードにおいて、画像形成装置3は画像形成システム1内のネットワーク接続されている連携可能な転送先候補を検知し、画面表示部102が転送先候補リストをディスプレイに表示させる(S6)。利用者が転送先(ここでは画像形成装置2)を選択すると、画面表示部102は所定の画面を表示させてパスワード(PW)の入力を利用者に促す(S7)。パスワードが入力されて転送の開始が指示されると、金額情報送信部101が、画像形成装置3に対して入金された金額のうちの残金額および入力されたパスワードを示す金額情報75を、転送先である画像形成装置2へ送信する(S8)。これにより、残金分の使用権利が画像形成装置3から画像形成装置2へ移るので、利用者がベンダー5から残金(当然、課金額が0であれば投入金額と等しい)を受け取ってしまうことのないように、出金禁止部103がベンダー5に対して出金(返金)の禁止を指示し(S9)、ベンダー5は出金禁止状態になる(S10)。
【0024】
一方、金額情報75を受信した画像形成装置2(転送先)では、画面表示部102がディスプレイにパスワード入力画面を表示させる(S11)。転送先のジョブ管理部107は、入力されたパスワードと金額情報75が示すパスワードとを照合し(S12)、両者が一致すれば、操作者を正規の利用者とみなして、金額情報75が示す残金額分のジョブの投入する操作を受け付ける。課金額が残金額の範囲内である適切なジョブが指定されると、ジョブ管理部107はジョブ実行を制御するコントローラーにジョブを伝える。その後、スタート操作に呼応してジョブが実行される(S13)。本実施形態では、釣銭を転送元の画像形成装置3に付随するベンダー5から出力する場合があるので、転送先の状態通知部108が転送元へジョブの実行を通知する(S14)。この通知を受けて、転送元の入金禁止部104がベンダー5に対して入金の禁止を指示し(S15)、ベンダー5は入金禁止状態になる(S16)。これにより、転送先でジョブが実行されている間に他の利用者が転送元の画像形成装置3を使用しようとしてベンダー5に貨幣を投入するのを防ぐことができる。
【0025】
転送先でジョブが実行されているとき、転送元の画像形成装置3ではセンサー221の出力に基づいて原稿シートの有無が検知される(S17)。原稿シートが残存する場合、利用者が転送元に原稿シートを置きっ放しにして転送先の画像形成装置2を使用している。この場合、原稿シートを取りに戻った利用者が転送元で釣銭を受け取ることができるようにするため、転送元の要求依頼部105が、釣銭を出力する必要があるときに釣銭出力を転送元(自己)に要求するよう転送先に依頼しておく(S18)。
【0026】
転送先において、ジョブの実行が終了すると、釣銭出力の要否をチェックする課金処理が行なわれる(S19)。釣銭を出力する必要がある場合、原則的には、転送先のベンダー4から釣銭が出力される。転送先の画像形成装置2の近くに利用者の居るのが通常と考えられるからである。したがって、通常、転送先の釣銭出力指示部106は、ベンダー4に対して釣銭の出力を指示する(S20)。指示を受けたベンダー4は指定された金額の釣銭を出力し(S25)、出力後に返金完了を画像形成装置2に通知する(S26)。
【0027】
しかし、転送先のベンダー4において釣銭が不足している場合がある。この場合、ベンダー4は画像形成装置2からの釣銭出力指示に応えて釣銭不足を通知し、釣銭出力指示を無効とする(S21)。ベンダー4が釣銭を出力することのできない状態である場合、および転送先から上述のように釣銭出力要求の依頼(S18)が前もって届いている場合、転送先の釣銭出力指示部106は、転送元に対して釣銭出力を要求する(S22)。要求を受けた転送元の釣銭出力指示部106は、転送元のベンダー5に対して釣銭の出力を指示する(S23)。ベンダー5は指定された金額の釣銭を出力し(S24)、入力禁止状態を解除して以降の貨幣投入を受け付ける(S29)。また、転送先のベンダー4から釣銭が出力されるかまたは釣銭の出力が不要である場合には、転送先の画像形成装置2から転送元の画像形成装置3へ完了通知が送信される(S27)。完了通知を受信した画像形成装置3はベンダー5に対して解除指示を与える(S28)。これによって、ベンダー5において、入金禁止が解除される。
【0028】
以上のとおり、画像形成システム1の利用者は、一つの画像形成装置に対して入金すれば、その後に貨幣を返却させることも再投入をすることもなしに、最初に投入した貨幣の金額に応じた使用権利を他の画像形成装置で行使することができる。図4の例は画像形成装置3から画像形成装置2へ使用権利を転送する例であるが、上述したように画像形成システム1の複数の画像形成装置2,3の課金機能は同様であるので、画像形成装置2から画像形成装置3へ使用権利を転送する場合も有り得る。
【0029】
図6のフローチャートは各画像形成装置2,3が転送元となる場合の動作を示し、図7は各画像形成装置2,3が転送先となる場合の動作を示している。
【0030】
図6のように、転送元としての画像形成装置2,3は自己に接続されたベンダー(ベンダー4またはベンダー5)から入金情報を取得する(S31)。ジョブ管理部107が入金額分のジョブの投入を受け付け、利用者が指定したジョブをそれに対応する実行手段に実行させる(S32、S33)。ジョブの実行途中でエラーが発生すると(S34でYES)、画面表示部102が上述の操作画面W1をタッチパネル201のディスプレイに表示させる(S35)。ジョブの実行開始以前または実行途中で利用者が使用したい画像形成装置の変更を指示すると(S36でYES)、画像形成装置2,3はネットワーク通信によって転送先候補を認識する(S37)。利用者が転送先を指定してパスワードを設定すると(S38)、金額情報送信部101が使用権利に相当する残金額およびパスワードを示す金額情報(課金情報)75を転送先に送信し(S39)、出金禁止部103が転送元のベンダーに出金禁止を指示する(S40)。
【0031】
転送先から送信される「転送先においてジョブが実行されている」ことを示す状態通知を受信すると(S41でYES)、入金禁止部104が転送元のベンダーに入金禁止を指示する(S42)。センサー221によって原稿シートの残存を検知すると(S43でYES)、釣銭出力指示部106が転送先に対して転送元で釣銭を出力する旨の通知(釣銭出力要求の依頼)を送信する(S44)。そして、転送元としての画像形成装置2,3は転送先からの釣銭出力要求を待ち受ける(S45)。釣銭出力要求を受けると(S45でYES)、釣銭出力指示部106が転送元のベンダーに対して指定された金額の釣銭出力を指示する(S46)。
【0032】
次に、図7のように、転送先としての画像形成装置2,3は、転送元である他の画像形成装置から金額情報75を受信すると(S51でYES)、認証処理を実行する(S52)。課金額が金額情報75の示す残金額の範囲内であるジョブが投入されて実行されると(S53でYES)、状態通知部108が転送先でジョブが実行されていることを転送元に通知する(S54)。ジョブの実行が終了すると(S55でYES)、釣銭出力指示部106が転送元からの釣銭出力要求の依頼の有無をチェックする(S56)。釣銭出力要求の依頼が無ければ(S56でNO)、釣銭出力指示部106は釣銭出力処理Aを実行し(S57)、釣銭出力要求の依頼が有れば(S56でYES)、釣銭出力指示部106は釣銭出力処理Bを実行する(S58)。
【0033】
図8は図7の認証処理のフローチャートである。転送元からの金額情報75にパスワードが含まれる場合(S201でYES)、画面表示部102が図示しないパスワード入力画面をタッチパネル201に表示させる(S202)。ジョブ管理部107は、転送先において入力されたパスワードが転送元からの金額情報75に含まれるパスワードと一致する場合に(S203でYES)、金額情報75が示す残金額分の使用(ジョブの投入)を許可する(S204)。パスワードの照合結果が不一致であれば(S203でNO)、ジョブ管理部107はジョブの投入を拒否する(S206)。
【0034】
図9は図7の釣銭出力処理Aのフローチャートである。釣銭出力指示部106は、転送先で実行されたジョブの課金額が金額情報75の示す残金額より少ない場合、すなわち釣銭を出力する必要がある場合(S701でYES)、転送先のベンダー(ベンダー4またはベンダー5)に対して釣銭の出力を指示する(S702)。指示を与えたベンダーから釣銭不足といった出金不可の応答があった場合(S703でYES)、釣銭出力指示部106は転送元に釣銭出力を要求する(S704)。釣銭出力が不要であれば(S701でNO)、フローは直ちに図7のフローに戻る。
【0035】
図10は図7の釣銭出力処理Bのフローチャートである。釣銭出力指示部106は、釣銭を出力する必要がある場合(S801でYES)、釣銭出力要求を依頼した転送元に釣銭の出力を要求する(S802)。釣銭出力が不要であれば(S801でNO)、フローは直ちに図7のフローに戻る。
【0036】
以上の実施形態によれば、釣銭を出力する必要が生じた場合に、利用者がお金を投入したベンダーでなく、最後に使用した画像形成装置に付随しているベンダーから釣銭を出力するので、利用者は最初に使用しようとしまたは使用した画像形成装置(転送元)の設置位置まで戻ることなく釣銭を受け取ることができる。最後に使用した画像形成装置に付随しているベンダーが釣銭の出力が可能な状態でない場合、利用者は転送元の画像形成装置に付随しているベンダーから釣銭を受け取ることができる。それにより、釣銭不足のために利用者に釣銭を渡すことができないという利用者にとって不便な状況の発生を低減することができる。また、原稿シートを転送元の画像形成装置に置いたままである場合には、原稿シートを取りに戻った転送元の画像形成装置に付随しているベンダーから釣銭を受け取ることができる。
【0037】
使用権利の転送先でジョブが実行されている間は転送元での出金が禁止されるので、課金中であるにもかかわらず返金されてしまうというサービス提供者に不利な状況は生じない。また、転送先でジョブが実行されている間は転送元での入金が禁止されるので、転送元のベンダーに他のユーザが間違って貨幣を投入する不都合が生じない。
【0038】
上述の実施形態において、転送元(第1の画像形成装置)と転送先(第2の画像形成装置)とが隣接する画像形成装置どうしである必要はなく、互いの間に他の画像形成装置が存在する画像形成装置どうしであってもよい。転送先候補リストの表示に際して、その時点で使用されていない空き状態の画像形成装置のみをリストアップしてもよい。原稿シートが残存する場合に限らず、プリント済みの用紙が排紙トレイ上に残存している場合を含め、利用者が転送元の設置場所に戻ると考えられる場合に、転送元のベンダーから釣銭を出力するようにしてもよい。
【0039】
転送先の画像形成装置からさらに別の画像形成装置へと、最初の入金額から使用分の課金額を差し引いた残金額が0になるまで、次々と使用権利を転送することができるようにしてもよいし、転送は1回だけというように転送回数を制限してもよい。
【0040】
画像形成装置2,3はMFP、複写機、プリンター、ファクシミリ装置、および他の画像形成装置のいずれであってもよく、画像形成システム1は画像形成装置としてMFPばかりを有する例示のように同種の装置ばかりで構成されてもよいし、MFPと複写機との組合せのように、2種以上の装置によって構成されてもよい。返金および釣銭出力を画像形成装置2,3に接続された出金専用機で行なうようにシステムを構成することができるので、ベンダー4,5は少なくとも入金が可能な装置であればよい。その他、操作画面W1のデザインを含め、画像形成装置2,3のハードウェア構成、動作、および機能を本発明の趣旨に沿う範囲内で種々変形することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 画像形成システム
2,3 画像形成装置(第1の画像形成装置、第2の画像形成装置)
75 金額情報
W1 操作画面
101 金額情報送信部
102 画面表示部
103 出金禁止部
104 入金禁止部
105 要求依頼部
106 釣銭出力指示部
107 ジョブ管理部
108 状態通知部
23 イメージスキャナー
201 タッチパネル(ディスプレイ)
221 センサー
29 ストレージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに接続される金銭入力装置に入金された金額分のジョブを受け付ける複数の画像形成装置を有する画像形成システムであって、
前記複数の画像形成装置のうちの第1の画像形成装置は、操作者による指示に従って、自己に接続されている第1の金銭入力装置に入金された金額のうちの残金額を示す金額情報を、前記複数の画像形成装置のうちの前記第1の画像形成装置ではない第2の画像形成装置へ送信する金額情報送信部を備え、
前記第2の画像形成装置は、前記第1の画像形成装置から受信した前記金額情報が示す前記残金額分のジョブの投入を受け付けるジョブ管理部を備える
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記第2の画像形成装置は、投入されたジョブの課金額が前記残金額よりも少ない場合に、自己に接続されている第2の金銭入力装置に釣銭の出力を指示する釣銭出力指示部を備える
請求項1記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記第1の画像形成装置は、
原稿シートの画像を読み取るイメージスキャナーと、
当該第1の画像形成装置における前記原稿シートの有無を検出するセンサーと、
前記金額情報を送信した後の時点で前記センサーが前記シートを検出した場合に、前記第2の画像形成装置に対して自己への釣銭出力要求を依頼する要求依頼部と、
前記第2の画像形成装置からの前記釣銭出力要求を受けて、前記第1の金銭入力装置に前記釣銭の出力を指示する釣銭出力指示部と、をさらに備え、
前記第2の画像形成装置は、
前記第1の画像形成装置からの前記釣銭出力要求の依頼がありかつ投入されたジョブの課金額が前記残金額よりも少ない場合には、前記第1の画像形成装置に釣銭の出力を要求し、前記釣銭出力要求の依頼がなくかつ投入されたジョブの課金額が前記残金額よりも少ない場合には、前記第2の金銭入力装置に前記釣銭の出力を指示する釣銭出力指示部をさらに備える
請求項1記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記第1の画像形成装置は、前記金額情報を送信した場合に、前記第1の金銭入力装置に対して出金の禁止を指示する出金禁止部を備える
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記第2の画像形成装置は、課金額が前記残金額の範囲内である投入されたジョブの実行を前記第1の画像形成装置に通知する状態通知部を備え、
前記第1の画像形成装置は、前記第2の画像形成装置からの通知を受けて、前記第1の金銭入力装置に対して入金の禁止を指示する入金禁止部を備える
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記第1の画像形成装置において、前記金額情報送信部は、前記金額情報と合わせて前記操作者が指定したパスワードを前記第2の画像形成装置に送信し、
前記第2の画像形成装置において、前記ジョブ管理部は、使用者に対して前記パスワードの入力を要求し、入力されたパスワードと前記パスワードとが一致した場合に限って、前記金額情報が示す前記残金分のジョブの投入を受け付ける
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記第1の画像形成装置は、投入されたジョブを中断するエラーが生じた場合に、他の画像形成装置で当該ジョブを継続させるかどうかを前記操作者が選択するための操作画面をディスプレイに表示させる画面表示部を備え、
前記第1の画像形成装置において、前記金額情報送信部は、前記操作画面が表示された状態で前記中断されたジョブの継続が選択された場合に、第2の画像形成装置へ前記金額情報を送信する
請求項1ないし6記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記第2の画像形成装置における前記釣銭出力指示部は、前記第2の金銭入力装置が前記釣銭の出力指示に応じられない場合に、前記第1の画像形成装置に前記釣銭の出力を要求し、
前記第1の画像形成装置における前記釣銭出力指示部は、前記第2の画像形成装置からの要求を受けて、前記第1の金銭入力装置に前記釣銭の出力を指示する
請求項2記載の画像形成システム。
【請求項9】
金銭入力装置に入金された金額分のジョブを受け付ける画像形成装置であって、
操作者による指示に従って、前記金銭入力装置に入金された前記金額のうちの残金額を示す金額情報を、当該金額情報が示す前記残金額分のジョブの投入を受け付ける他の画像形成装置へ送信する金額情報送信部と、
前記金額情報送信部が前記金額情報を送信した場合に、前記金銭入力装置に対して出金の禁止を指示する出金禁止部と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記他の画像形成装置からのジョブ実行の通知を受けて、前記金銭入力装置に対して入金の禁止を指示する入金禁止部を備える
請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
投入されたジョブを中断するエラーが生じた場合に、前記他の画像形成装置で当該ジョブを継続させるかどうかを前記操作者が選択するための操作画面をディスプレイに表示させる画面表示部を備え、
前記金額情報送信部は、前記操作画面が表示された状態で前記中断されたジョブの継続が選択された場合に、前記他の画像形成装置へ前記金額情報を送信する
請求項9または10記載の画像形成装置。
【請求項12】
金銭入力装置に入金された金額分のジョブを受け付ける画像形成装置であって、
他の画像形成装置から送信される当該他の画像形成装置に対して入金された金額のうちの残金額を示す金額情報を受信した場合に、当該金額情報が示す前記残金額分のジョブの投入を受け付けるジョブ管理部を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
投入されたジョブの課金額が前記残金額よりも少ない場合に、自己に接続されている前記金銭入力装置に釣銭の出力を指示する釣銭出力指示部を備える
請求項12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記ジョブ管理部は、使用者に対してパスワードの入力を要求し、入力されたパスワードと前記他の画像形成装置から送信されたパスワードとが一致した場合に限って、前記金額情報が示す前記残金分のジョブの投入を受け付ける
請求項12または13記載の画像形成装置。
【請求項15】
金銭入力装置に入金された金額分のジョブを受け付ける画像形成装置において実行されるコンピュータープログラムであって、
前記画像形成装置が有するコンピューターに、
操作者による指示に従って、前記金銭入力装置に入金された前記金額のうちの残金額を示す金額情報を、当該金額情報が示す前記残金額分のジョブの投入を受け付ける他の画像形成装置へ送信する処理と、
前記金額情報が送信された場合に、前記金銭入力装置に対して出金の禁止を指示する処理と、を実行させる
ことを特徴とするコンピュータープログラム。
【請求項16】
金銭入力装置に入金された金額分のジョブを受け付ける画像形成装置において実行されるコンピュータープログラムであって、
前記画像形成装置が有するコンピューターに、
他の画像形成装置から送信される当該他の画像形成装置に対して入金された金額のうちの残金額を示す金額情報を受信する処理と、
前記金額情報が示す前記残金額分のジョブの投入を受け付ける処理と、を実行させる
ことを特徴とするコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−76747(P2013−76747A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215194(P2011−215194)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】