説明

画像形成システム

【課題】本発明は、用紙の種別に係わりなく光沢ムラない高画質な画像を高速に形成することが可能な画像形成システムの提供を目的にする。
【解決手段】定着手段で処理された用紙をカール矯正手段に搬送する第1搬送路と、第1搬送路より長い搬送路を有し定着手段で処理された用紙を前記カール矯正手段に搬送する第2搬送路と、定着手段で処理された用紙の種別に基づき用紙を第1搬送路で搬送させる、あるいは第2搬送路で搬送させるよう用紙の搬送を切替える切替手段を制御する制御手段とを備えることによって、用紙の種別に係わりなく光沢ムラない高画質な画像を高速に形成する画像形成システムの提供を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙上のトナーを用紙上に定着する加熱定着手段を備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置の用途は、オフィス用から印刷分野へと拡大しており、また、電子写真画像形成装置はカラー画像の形成に広く用いられている。このような用途の拡大に伴って、多種多様な種別の用紙に高い光沢度をもつ鮮やかな画像の形成を可能にする性能が電子写真装置に要求される。
【0003】
上記要求に合わせるように用紙上のトナー像の光沢度(平滑度)を高める定着方法、例えば、未定着トナー像が形成された用紙を2つの定着装置に通紙して2重の定着処理を行う方法等が提案されている。一方、高光沢性能を有する定着装置で用紙を処理すると、定着装置の下流側に併設されたカール矯正手段、排紙ローラ等により特定の用紙上に光沢ムラが発生するという問題があり、下記文献に示す光沢ムラ防止策を備えた画像形成システムが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の画像形成システムは、装置内の定着手段と装置に接続された排紙オプションとの間に定着手段で処理された用紙を冷却する中間排紙ユニットを配設し、特定用紙の場合には中間排紙ユニットの通過に要する時間が特定用紙以外の用紙の場合よりも長くなるように、中間排紙ユニット内における特定用紙の搬送を制御するものである。結果として、特定用紙上のトナー像が排紙ユニットのローラによる光沢ムラが生じない温度にまで冷却された後に排紙ユニットに至るよう用紙搬送を制御し、光沢ムラの発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−62970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の技術は、特定用紙を1枚処理するための所要時間が、中間排紙ユニットで停止する時間分だけ特定用紙以外の用紙の場合より長くなり、特定用紙における画像形成の生産性を特定用紙以外の用紙より低下させるものである。
【0007】
従って、特許文献1に記載の技術は、光沢ムラを防止できるが、高速処理を必須とするオフィス又は印刷分野の用途に用いられる画像形成システムには適さないものである。
【0008】
本発明は、用紙の種別に拘わりなく光沢ムラのない高画質な画像を高速に形成することを可能にする画像形成システムの提供を目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記の構成により上記の目的を達成する。
【0010】
1.用紙上に形成されたトナー像に熱及び圧力を作用させて前記トナー像を前記用紙上に定着する定着手段と、
用紙に形成されたカールを矯正し、前記用紙を前記定着手段に対し用紙搬送方向下流側に搬送するカール矯正手段と、
前記定着手段で処理された用紙を前記カール矯正手段に搬送する第1搬送路と、
前記第1搬送路より長い路長を有し、前記定着手段で処理された用紙を前記カール矯正手段に搬送する第2搬送路と、
前記定着手段で処理された用紙を前記第1搬送路、あるいは第2搬送路に案内させるように用紙の搬送を切替える切替手段と、
前記定着手段で処理された用紙の種別に基づき前記用紙を前記第1搬送路で搬送させる、あるいは前記第2搬送路で搬送させるよう前記切替手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成システム。
【0011】
2.前記制御手段は前記用紙の種別が特定用紙である場合に前記用紙を前記第2搬送路で搬送させ、前記用紙の種別が特定用紙以外の用紙である場合に前記用紙を前記第1搬送路で搬送させることを特徴とする前記1に記載の画像形成システム。
【0012】
3.前記第2搬送路は、前記定着手段から排出された前記用紙を前記カール矯正手段に搬送する間に前記用紙をトナーに含有するワックスの結晶化温度未満に冷却することが可能な路長を有することを特徴とする前記1、又は2に記載の画像形成システム。
【0013】
4.前記第1搬送路は、前記定着手段から排出された前記用紙を前記カール矯正手段に搬送する間に前記用紙を前記結晶化温度以上に維持することが可能な路長を有することを特徴とする前記1から3までの何れか1項に記載の画像形成システム。
【0014】
5.用紙を冷却する用紙冷却手段が第2搬送路に配設されていることを特徴とする前記1から4までの何れか1項に記載の画像形成システム。
【0015】
6.前記定着手段は、少なくとも、用紙上の未定着トナー像を定着処理する第1定着装置と、前記第1定着装置の下流側に配設し前記第1定着装置で定着処理された用紙に再度定着処理を施す第2定着装置により構成されることを特徴とする前記1から5までの何れか1項に記載の画像形成システム。
【0016】
7.前記第1定着装置を有する画像形成装置と、前記画像形成装置に接続し前記第2定着装置を有する第2定着処理装置と、前記第2定着処理装置に接続し前記第1搬送路、前記第2搬送路、前記カール矯正手段及び前記制御手段を有する用紙後処理装置と、を備えることを特徴とする前記6に記載の前記画像形成システム。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、定着装置とカール矯正手段との間に第1搬送路と第1搬送路より路長の長い第2搬送路を設けて用紙の種別が特定用紙の場合に第2搬送路に用紙を経由させ、用紙の種別が特定用紙以外の用紙の場合に第1搬送路に用紙を経由させるよう用紙の搬送を切替える切替手段を制御して、用紙の種別に拘わりなく光沢ムラのない高画質な画像を高速に形成する画像形成装置及び画像形成システムの提供を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る画像形成システムTの構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の一例を示す構成図である。
【図3】本発明に係る定着装置30を示す断面図である。
【図4】画像形成装置の下流側に接続される2次定着処理装置Cを示す断面図である。
【図5】本発明に係る2次定着装置300の概略を示す、断面正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る用紙後処理装置Dの全体構成を示す図である。
【図7】本発明に係るカール矯正手段200の構成を示す拡大図である。
【図8】用紙後処理装置Dの制御を司る後処理制御部CDの制御関連を示すブロック図である。
【図9】2次定着装置とカール矯正手段200との関係において光沢ムラの防止可能条件を得るための、本発明に係る実験図である。
【図10】搬送ローラ対の形態としての団子ローラと通しローラを示す平面図である。
【図11】本発明に係る光沢ムラ防止技術の原理を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本欄の記載は請求項の技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0020】
図1は、本発明に係る画像形成システムTの構成図である。
【0021】
画像形成システムTは、本発明に係る第1定着装置を有する画像形成装置Aと、本発明に係る定着手段としての第2定着装置を有する2次定着処理装置Cと、本発明に係る用紙のカールを矯正するカール矯正手段を有する用紙後処理装置Dとから構成される。
【0022】
〈画像形成装置〉
図2は、本発明に係る画像形成装置の一例を示す構成図である。
【0023】
画像形成装置Aは装置本体に載置されている画像読取装置Bを備えている。
【0024】
画像形成装置Aはタンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成手段10Y、10M、10C、10K、ベルト状の中間転写体6、給紙搬送手段及び定着装置30等からなる。
【0025】
画像形成装置Aの上部には、自動原稿送り装置DFと原稿画像走査露光装置SCから成る画像読取装置Bが設置されている。自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿dは、搬送手段により搬送され原稿画像走査露光装置SCの光学系により原稿の片面又は両面の画像が走査露光され、ラインイメージセンサCCDに読み込まれる。
【0026】
ラインイメージセンサCCDにより光電変換されて形成された信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに送られる。
【0027】
イエロー(Y)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Yは、感光体1Yの周囲に帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段8Yを配置している。マゼンタ(M)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Mは、感光体1Mの周囲に帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段8Mを配置している。シアン(C)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Cは、感光体1Cの周囲に帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段8Cを配置している。黒(K)色のトナー画像を形成する画像形成手段10Kは、感光体1Kの周囲に帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段8Kを配置している。帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C、及び帯電手段2Kと露光手段3Kは、潜像形成手段を構成する。
【0028】
なお、現像手段4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。
【0029】
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、図示しない駆動手段により回動可能に支持されている。
【0030】
定着装置30は、加熱された定着部材(定着ローラともいう。)31と加圧ベルト32との間に形成された定着ニップ部で用紙P上の未定着トナー像を加熱、加圧して定着する。
【0031】
画像形成手段10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に一次転写手段7Y、7M、7C、7Kにより逐次転写されて(1次転写)、カラー画像合成されたトナー像が形成される。給紙カセット20内に収容された用紙Pは、給紙手段21により給紙され、給紙ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23等を経て、二次転写手段7Aに搬送されて、二次転写手段で用紙P上にカラー画像が転写される。
【0032】
カラー画像が転写された用紙Pは、定着装置30において加熱、加圧され、用紙P上のカラートナー像が定着される。その後、排紙ローラ24に挟持されて機外の排紙トレイ25上に載置される。
【0033】
一方、二次転写手段7Aにより用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した中間転写体6は、クリーニング手段8Aにより残留トナーが除去される。
【0034】
なお、以上はカラー画像を形成する画像形成装置であったが、モノクロ画像を形成する画像形成装置であってもよいし、中間転写体を用いても用いなくてもよい。
【0035】
《第1定着装置》
次に、本発明に係る第1定着手段としての定着装置30の主要構成について説明する。
【0036】
図3は、本発明に係る定着装置30を示す断面図である。
【0037】
本発明に係る定着装置30は、通紙路上方の定着ローラ31と、通紙路下方の加圧ベルト32を有する。
【0038】
定着ローラ31と加圧ベルト32との間に形成される定着ニップ部を通して、加熱と加圧とにより用紙P上の単色トナー像、或いは多色トナー像を定着する。
【0039】
定着ローラ31は、内部にハロゲンランプHを内蔵し、アルミニウムや鉄等から形成された外径80mmの円筒状芯金31Aと、円筒状芯金31Aを被覆し耐熱性の高いシリコーンゴムから成る肉厚1.5mmの弾性層31Bと、更に弾性層31Bを被覆しPFA(パーフルオロアルキルビニルエーテル)若しくはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から成る肉厚30μmの離型層31Cと、により構成されている。
【0040】
定着ローラ31の外周面には、外部加熱手段42、クリーニング手段43、分離爪44、及び図示しない温度センサ等が配置されている。
【0041】
加圧ベルト32は、外径75mm、約70μmの厚みのポリイミドにより形成された基体と、基体の外表面を被覆する約25μmの厚みのPFA若しくはPTFEで形成された離型層とにより構成されていて、無端状に形成されている。
【0042】
加圧ベルト32は、用紙Pの導入部に近い入口ローラ33、用紙Pの出口部に近い分離ローラ34、ステアリングローラ35の各支持ローラの外周を巻回して張設し、定着ローラ31の外周面に当接する。
【0043】
分離爪45は、分離ローラ34を巻回する加圧ベルト32の外周面に当接して、加圧ベルト32から用紙Pを剥離する。
【0044】
分離ローラ34は、加圧ベルト32を回転駆動させるための駆動ローラである。また、ステアリングローラ35は、加圧ベルト32の幅方向への寄り(蛇行)を制御し、安定走行させるためのローラである。
【0045】
昇降手段46は、加圧ベルト32、入口ローラ33、分離ローラ34、ステアリングローラ35等を有する加圧ユニットを昇降自在に保持して、加圧ベルト32及び押圧手段36を定着ローラ31に圧接する。
【0046】
加圧ベルト32を内部から押圧する押圧手段36は、押圧部材としての押圧パッド361と、押圧パッド361を定着ローラ31側に押圧するよう加圧ユニットに取り付けられた保持部材362と、から構成されている。押圧パッド361は、入口ローラ33と分離ローラ34との間に張架された加圧ベルト32の内面側を押圧して、定着ローラ31の外周面に加圧ベルト32を圧接させる。押圧パッド361は、通紙方向幅が20mm、耐熱樹脂、例えば硬度JISA約10°のシリコーンゴムから形成されている。シリコーンゴムは、加圧ベルト内面に塗布するシリコーン潤滑剤で膨潤する場合があるので、PFAやPTFE等の耐熱樹脂でコーティングしても良い。定着ローラ31への加圧ベルトの押圧荷重は400〜800Nである。
【0047】
《トナーの処方》
本発明の実施形態に用いられたトナーは、樹脂100質量部に対し、10質量部のオフセット防止剤が含有されている。
【0048】
オフセット防止剤は、トナーの主樹脂に比較して低分子量であり且つ融点も低いために、定着装置の定着ニップを通過する際に粘弾性状態に留まる主樹脂と異なり溶融状態となり、トナー層の表面を覆うように展開し、定着部材(定着ローラ)の表面層とトナー層の界面に占有し、定着部材(定着ローラ)の表面層に対するトナー層の離型性を飛躍的に高めること可能するものである。
【0049】
ここではオフセット防止剤としては低分子量ポリプロピレンのワックスを使用しているが、以下に示すワックス類を用いることができる。後述においてオフセット防止剤をワックスと称する。
【0050】
具体的には、低分子量ポリエチレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス;ベヘン酸エステル、モンタン酸エステル、ステアリン酸エステル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;長鎖脂肪族アルコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと長鎖脂肪酸との(部分)エステル;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、等が例示される。
【0051】
〈2次定着処理装置〉
図4は、画像形成装置の下流側に接続される2次定着処理装置Cを示す断面図である。
【0052】
2次定着処理装置Cには、本発明に係る定着手段としての2次定着装置300と、搬入された用紙を複数の搬送路RD6、RD7と有する。2次定着装置300は画像形成装置の定着装置(1次定着装置)で処理された用紙上のトナー像に対し熱と圧力を再度作用させてトナー像の平滑度(光沢度)及び透明度を高めるものである。
【0053】
RD6は用紙を2次定着装置300に経由させて2次定着処理装置Cの排紙側に搬送させる用紙の搬送路であり、RD7は用紙を2次定着装置300に対し迂回させて排紙側に搬送させる搬送路である。搬送路RD7には搬送ローラ対322、323、324、325が配設されている。
【0054】
図示のCP1は搬入された用紙が搬送路RD6、あるいは搬送路RD7に分岐する分岐位置であり、CP2は搬送路RD6と搬送路RD7が合流する合流位置である。
【0055】
分岐位置CP1には搬入された用紙を搬送路RD6、あるいは搬送路RD7に案内する複数の切替爪G1が配設され、複数の切替爪G1は2次定着処理装置Cに回動可能に支持されている切替軸331に用紙搬送方向に直交する幅方向に渡って固設されている。
【0056】
切替軸331は非図示のソレノイド等に連係されており、非図示の2次定着処理装置内の2次定着制御部によりソレノイドは作動される。切替爪G1は、2次定着制御部により実線で示す2次定着案内状態、あるいは破線で示す迂回案内状態に適宜切替可能に制御されている。
【0057】
図5は、本発明に係る2次定着装置300の概略を示す、断面正面図である。
【0058】
2次定着装置300は、画像形成装置の定着装置による定着処理では厚紙に高光沢で鮮やかな高画質な画像が得られない、あるいは処理速度を大幅に低下させて高画質な画像を得るために生産性が大きく低下するという従来からの問題を解消可能にするものである。
【0059】
2次定着装置300は、画像形成装置で定着処理された用紙の表裏に形成されたトナー像の平滑度(光沢度)、透明度を向上させるものであり、表裏のトナー像に及ぼす定着諸因子が同等であることが適している。つまり、表裏の用紙上に形成されたトナーに直接的に接触する定着部材が同一温度に加熱されていることが好ましく。ここでは複数の加熱されたベルトが用紙の表裏から相互に圧接するベルト定着タイプが用いられる。なお、ベルトタイプに限定されるものではなく、ローラタイプでもよい。
【0060】
2次定着装置300の定着部材は無端状の上定着ベルト303及び下定着ベルト306であり、上定着ベルト303は上加熱ローラ301及び上定着ローラ302で、下定着ベルト306は下加熱ローラ304及び下定着ローラ305で張架される。用紙が通過するニップNは、相互に圧接する上定着ローラ302及び下定着ローラ305によって形成されている。
【0061】
加熱ローラは、外径52mm、肉厚3mmのアルミニウム製のローラであり、内部にハロゲンヒータ等の上熱源311が配設されている。上熱源312は非図示の上加熱ローラ301に周囲に配設された温度センサの信号に応じて点灯して、上加熱ローラ301の温度は所定温度に維持されている。
【0062】
上定着ベルトは、その周長が外径80mmであり、厚さ70μmのポリイミド樹脂で成る基体と、基体上に形成された厚さ200μmのシリコーンゴム層で成る中間層と、中間層の表面に形成された厚さ30μmのポリフェニルアルコキシ樹脂層で成る表面とで構成される。
【0063】
上定着ローラ302は、外径26mmであり、ステンレス製の芯金に厚み2mmのシリコーンゴム層が形成されている。
【0064】
下加熱ローラ304は上加熱ローラ301と、下定着ベルト306は上定着ベルト303と同一の構成であり、下定着ローラ305は基本的には上定着ローラ302と類似した構成であるが、ここでは用紙の分離性を考慮して上定着ローラ302と異なる外径24mm、シリコーンゴム層の厚み1.5mmとしている。
【0065】
〈用紙後処理装置〉
図6は、本発明の実施の形態に係る用紙後処理装置Dの全体構成を示す図である。
【0066】
第1搬送部100は搬送路RD1と搬送路RD1の下流側に配設される搬送路RD2を有する。第2搬送部150は搬送路RD1と搬送路RD2より路長が長く且つ並列に配設された搬送路RD3を有する。搬送路RD1は第1搬送部100と第2搬送部150で共有している。
【0067】
第2搬送部150の搬送路RD3に、搬送路RD3を搬送される用紙Pの表裏面に送風して用紙Pを積極的に冷却することを可能にする用紙冷却手段151が配設されている。
【0068】
用紙冷却手段151はファン151A、151Bを有し、用紙Pの両面に乾燥風を吹き付け、非図示の後処理制御部によって必要に応じて作動、あるいは非作動状態に切替可能である。
【0069】
カール矯正手段200は両搬送部100、150の下流側に配設され用紙のカールを矯正する第1〜第3デカーラ210、220、230で構成され、搬送路RD4を有する。
【0070】
排紙搬送部170はカール矯正手段200の下流側には配設され、搬送ローラ対171、172、173、174と複数のガイド部材で構成された搬送路RD5を有する。
【0071】
搬送路RD1〜RD5は図示のように、複数のガイド部材により形成される。
【0072】
用紙後処理装置Dに搬入された用紙Pは、本発明に係る切替手段としての切替ゲートG2の切替動作により、第1搬送部100、あるいは第2搬送部150に案内され、第1搬送部100、あるいは第2搬送部150を経由し、その後にカール矯正手段200及び排紙搬送部170を経て用紙後処理装置Dから排出される。
【0073】
図7を参照して各デカーラを説明する。
【0074】
カール矯正手段200は第1デカーラ210と、第2デカーラ220と、第3デカーラ230とを有する。
【0075】
第1デカーラ210において、一対のローラ211、212にはベルト213が張架され、ベルト213には、押圧ローラ214が接触する。
【0076】
押圧ローラ214は図示のように、ローラ211と212間の中間位置でベルト213を押圧しベルト213との間に円弧状のニップを形成する。
【0077】
その結果、ローラ211、212と、ベルト213と、押圧ローラ214とにより用紙Pを図の右方向に曲げる搬送路H1が形成される。
【0078】
215は用紙Pを搬送路H1又はH2に切替てガイドする切替爪であり実線の位置では用紙Pを搬送路H1にガイドし、点線の位置では用紙Pを搬送路H2にガイドする。
【0079】
搬送路H1にガイドされた用紙Pはローラ211、212、ベルト213及び押圧ローラ214により屈曲され、カールが矯正される。
【0080】
搬送路H2にガイドされた用紙Pは緩い曲率の搬送路H2を搬送されるので、カーラ矯正されず第2デカーラ側に搬送される。
【0081】
第1デカーラ210からは、用紙Pは搬送ローラ217により搬送されて第2デカーラ220に搬送される。
【0082】
第2デカーラ220において、一対のローラ221、222はベルト223が張架され、ベルト223には、押圧ローラ224が接触する。
【0083】
押圧ローラ224は図示のように、ローラ221と222間の中間位置でベルト223を押圧し、ベルト223を屈曲させる。
【0084】
その結果、ローラ221、222、ベルト223及び押圧ローラ224により用紙Pを図の左方向に曲げる搬送路H4が形成される。
【0085】
225は用紙Pを搬送路H3又はH4に切替ガイドする切替ゲートであり実線の位置では用紙Pを搬送路H4にガイドし、点線の位置では用紙Pを搬送路H3にガイドする。
【0086】
搬送路H4にガイドされた用紙Pはローラ221、222、ベルト223及び押圧ローラ224により屈曲され、カールが矯正される。
【0087】
搬送路H3にガイドされた用紙Pは緩い曲率の搬送路を搬送されるので、デカーラで矯正されることはない。
【0088】
第3デカーラ230では、ローラ231、232、237及び239にベルト233が張架され、ローラ235、236及び238にベルト240が張架される。
【0089】
図示のように、ローラ231、232、235〜239は、ベルト233、240を蛇行させるように配置される。
【0090】
ベルト233とベルト240とは接触し、接触部において、用紙Pを挟持し搬送する。
【0091】
234は第3デカーラ230に用紙Pを導入する搬送ローラである。
【0092】
ローラ237、239はベルト233を張架する、即ち、ベルト233の内周面に接触するとともに、ベルト240をその外周面側から押圧する。
【0093】
ローラ238はベルト240を張架する、即ち、ベルト240の内周面に接触するとともに、ベルト233をその外周面側から押圧する。
【0094】
ローラ237、239はそれぞれ実線の位置と点線の位置とに変位可能である。
【0095】
ローラ237、239は実線の位置にあって、用紙Pを左向きに屈曲させてカールを矯正し、点線の位置にあるときは、用紙矯正(カール矯正)を行わない。
【0096】
また、ローラ238は、ローラ237、239が実線の位置にあるときは、用紙Pを右向きに屈曲させてカールを矯正する。
【0097】
第3デカーラ230は、微少なカールを矯正するものである。即ち、第1デカーラ210と第2デカーラ220とにおいて、大きなカールが矯正され、第3デカーラ230において、残った微少なカールが矯正される。
【0098】
切替爪215、225及びローラ237、239の位置を、例えば、用紙Pの種類に応じて制御することにより、用紙Pのカール矯正が適切に行われる。
【0099】
〈後処理制御部〉
本発明に係る制御手段としての後処理制御部の構成と後処理制御部が司る光沢ムラ防止の制御について以下に説明する。
【0100】
図8は用紙後処理装置Dの制御を司る後処理制御部CDの制御関連を示すブロック図である。図示のように、後処理制御部CDは画像形成装置の制御を司る本体制御部CAと、2次定着処理装置の制御を司る2次定着制御部CCと、バス603を介して各種制御データ(ジョブ、ステータス)を交信している。後処理制御部CDは本発明に係る図6の切替ゲートG2の位置を切替えるゲート駆動部601を制御し、また、図7のカール矯正手段200内にある切替爪215、225及びローラ237、239の位置を切替えるデカーラ駆動部602を制御する。後処理制御部CDは本体制御部CAから送信された制御データに基づきゲート駆動部601、デカーラ駆動部602及び用紙冷却手段151を制御して、用紙Pが上流側の画像形成装置及び2次定着処理装置で先行的に処理される条件に応じて図6のゲートG12の位置を、図7の切替爪215、225及びローラ237、239の位置を、又は用紙冷却手段151のファン151A、151Bの作動を適宜切替可能にする。
【0101】
なお、制御データには自装置でこれから処理する用紙に関する用紙情報が含まれ、用紙情報は用紙の種別情報と、上流側の画像形成装置及び2次定着処理装置で用紙に施される定着処理に関する処理情報とを含むものである。
【0102】
〈光沢ムラ防止技術〉
次に本発明に係る画像形成システムで達成可能な光沢ムラ防止技術について以下説明する。
【0103】
コート紙等の平滑紙に形成されたトナー像を上記の1次定着装置及び2次定着装置で処理することによって、高い光沢度を有し色再現範囲の広い鮮やかな画像が得られるが、図5のカール矯正手段200のベルトやローラに接触するトナー画像の接触領域に光沢ムラが発生する。光沢ムラはベルトやローラに接触しないトナー画像の非接触領域には発生せず、非接触領域に比較して光沢度が高くなる。
【0104】
この光沢ムラは目視で検出できる程度の小さな光沢度差であり、高い光沢度(平滑度)に処理されたトナー画像において目視判別されるものである。従って、平滑紙以外の用紙では、例えば、粗い表面を有する普通紙の場合では、画像形成装置の定着装置と2次定着処理装置の2次定着装置との両方で用紙上のトナー画像を定着処理しても光沢ムラが出現する程度に高い光沢画像が得られないために、光沢ムラとして目視判別されない。
【0105】
図9は2次定着装置300とカール矯正手段200との関係において光沢ムラの防止可能条件を得るための、本発明に係る実験図である。
【0106】
FFは画像形成システム内を搬送する用紙Pが最終的に定着処理を受ける定着装置を示す。つまり、図1の画像形成システムTにおいて用紙Pが2次定着処理装置C内の2次定着装置300を経由して搬送される場合2次定着装置300がFFに相当し、用紙Pが2次定着処理装置C内で2次定着装置300を迂回して搬送路CR2を経由して搬送される場合には画像形成装置A内の第1定着装置がFFに相当する。ここに示す実験ではFFが2次定着装置300である。
【0107】
DCは図7のカール矯正手段200に相当するデカーラ機構である。P1dcはDD内の最も用紙搬入側に配設された第1デカーラの配設位置であり、TSはP1dcに配設され用紙Pの温度を検出する温度センサである。GRはFFとDCとの間に配設され用紙PをDCに案内、搬送する搬送路であり、GP1及びGP2、GP3のガイド板対とRR及びFRの搬送ローラ対で構成されている。LpはGRの路長である。Vsは用紙Pの搬送速度である。
【0108】
用紙Pの搬送速度Vs及びGRの路長Lpを適宜変更して第1デカーラ位置における用紙Pの温度Tsと用紙上のトナー画像に発生する光沢ムラとの関係を調べると、表1に纏まる。
【0109】
【表1】

【0110】
表1の“×”は、カール矯正手段(デカーラのベルト)に対応する光沢ムラ(ベルト跡)が目視判定で検出されたこと示し、光沢ムラの不良範囲である。“○”は光沢ムラ(ベルト跡)が目視判定で検出されなかったことを示し、光沢ムラの良好な範囲である。
【0111】
表1の結果をまとめると以下のようになる。
(1)ベルト跡の光沢ムラは定着処理によって高光沢度の画像を出力できる平滑紙において発生するが、普通紙では発生せず、目視判定できない。
(2)カール矯正手段に搬入する平滑紙(平滑紙上のトナー像)の温度がトナーに含有するオフセット防止剤(以下ではワックスと称す)の結晶化温度Twaxより高い場合にベルト跡の光沢ムラが発生する。逆に、ワックスの結晶化温度Twax未満の場合にベルト跡の光沢ムラは発生しない。
【0112】
このまとめに基づき、定着処理後の平滑紙をトナーに含有するワックスの結晶化温度Twax未満にまで冷却した後にカール矯正手段に搬入させるとベルト跡状の光沢ムラを防止できる。換言すると、用紙の温度Tsをワックス結晶化温度Twax未満に低下させる程にGRの路長Lpを長くすることにより、生産性を低下させることなく平滑紙における光沢ムラを防止できる。
【0113】
なお、ワックスの結晶化温度は、トナーに含有されるワックスを示差走査熱量分析法(DSC)で得たワックスの凝固点温度であり、ここで用いたトナー含有のワックスは、結晶化温度Twaxとして55℃〜59℃の範囲を示すものである。
【0114】
《示差走査熱量分析法》
ワックスの凝固点温度は、DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー製)を用い、後述の要領に基づき得ることができる。
【0115】
測定手順;トナー4.5mg〜5.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パン(KITNO.0219−0041)に封入し、DSC−7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。
【0116】
測定条件;測定温度0℃〜100℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行う。
【0117】
ワックス凝固点の解析・決定;cool過程におけるDSC−7の出力データに基づきワックス発熱分布を解析して、ワックス発熱分布におけるピークトップを示す温度をワックスの凝固点温度、つまりワックスの結晶化温度とした。
【0118】
次に、搬送ローラ対FR、RRの形態と光沢ムラ(ローラ跡)との関係を調べた。
【0119】
図10は、搬送ローラ対の形態としての団子ローラBRと通しローラCRを示す平面図である。
【0120】
図示のように、団子ローラBRは軸BR1と軸BR1に固設されたゴム等の弾性材で成る複数のローラBR2で構成され、通しローラCRは軸CR1と軸CR1に固設されたゴム等の弾性材で成る単一のローラCR2で構成される。ローラCR2は用紙の搬送方向と直交する幅方向における用紙の全領域に対し同一の外径を有する。つまり、軸方向に用紙Pの幅寸法より長い同一の外径を有し、用紙Pに全幅に渡って連続的に接触している。
【0121】
搬送ローラ対FR、RRの形態と光沢ムラとの関係を調べた結果を表2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
表2の評価は表1と同様に目視判定により、“×”は光沢ムラの不良範囲を示し、“○”は光沢ムラの良好範囲を示す。
【0124】
図10に示すように団子ローラBRの場合には、用紙P上にローラBR2が接触する接触領域とローラBR2が全く接触しない非接触領域とが生じる。そして、用紙上の接触領域に光沢度に高い部分が生じ、用紙上のトナー像に筋状の光沢ムラが発生した。
【0125】
図示のように通しローラCRの場合には、ローラCR2用紙P上の全域に接触するために搬送ローラによる光沢ムラは発生しない。ローラCR2の材質を金属等の剛体にすると、微視的な観点において、用紙Pに強く接触する領域と全く接触ない、あるいは弱く接触する領域とが混在するような状態が用紙上に生じるために、平滑紙上に形成され定着処理で高平滑化されたトナー画像に団子ローラの場合と異なる形態の光沢ムラが発生する場合があるので、通しローラ表面の材質はゴム等の弾性を持った材料が好ましい。さらに用紙表裏で接触状態を同等するために、表面に接触するローラと裏面に接触するローラの材質は同一であることが好ましい。
【0126】
次に、図7カール矯正手段200による用紙矯正の効果とGRの路長Lpとの関係を示す。用紙を1次定着装置及び2次定着装置で定着処理を施すと、表面及び裏面を含めた用紙上に形成されたトナー像の形態及び、用紙自体の特性により用紙上に様々な歪みが発生する。
【0127】
カール矯正手段200は、定着装置に近づける程に用紙矯正の効果を高めることができる。換言すると、定着処理された用紙の温度が高い位置にカール矯正手段200を設ける程に用紙矯正の効果を高めることができる。実験では、DD(カール矯正手段200)に到達した時点における用紙の温度Tsが概ね60℃以上であれば、殆ど種別の用紙に対しカール矯正手段200によって十分な用紙の矯正が達成可能であった。この60℃という温度は、概ねワックス結晶化温度Twax以上に相当する。
【0128】
また、コート紙等の平滑紙に場合には、定着処理後に生じる用紙の歪み(カール等)は小さく、用紙の温度Tsがワックス結晶化温度Twaxより大きく低下した状態でDDに搬送しても十分な用紙の矯正が達成可能であった。
【0129】
以上より、普通紙等の光沢ムラの発生しない用紙では、定着処理した用紙は用紙の温度Tsが可能な限り高い状態でデカーラ矯正手段200に搬送すること、換言すると、GRの路長Lpを可能な限り短くすることが有利である。特に、カール矯正手段200に到達した時点における用紙の温度Tsを概ね60℃以上、即ちワックス結晶化温度Twax以上に維持することが可能な長さ(路長Lp)にすることにより優れた用紙矯正を達成できる。
【0130】
図11は、本発明に係る光沢ムラ防止技術の原理を示す概念図である。
【0131】
本発明に係る定着処理後の用紙後処理に関するものであり、生産性(単位時間あたりに処理可能な用紙枚数)を低下することなく多種の用紙に対し光沢ムラのない、カール等の用紙歪みの小さい高画質な画像を出力可能にするものである。
【0132】
図示のFFは画像形成システム内を搬送する用紙Pが最終的に定着処理を受ける定着装置で、DCは図7のカール矯正手段200に相当するデカーラ機構で、CDは図8の本発明の制御手段としての後処理制御部である。
【0133】
GR1はFFとDCとの間に配設され用紙PをDCに案内、搬送する第1搬送路で、GR2は搬送路長が第1搬送路GR1より長く用紙PをDCに案内、搬送する第2搬送路である。第2搬送路GR2はFFから搬入された用紙をDCに搬送する間に用紙の温度Tsをトナーに含有するワックスの結晶化温度Twax未満に低下することが可能な長さ(路長)を有している。又は、第2搬送路GR2には、用紙を積極的に冷却するための図6に示す用紙冷却手段151が配設されている。
【0134】
GTはFFから搬入された用紙を第1搬送路GR1、あるいは第2搬送路GR2に案内する切替ゲートである。
【0135】
後処理制御部CDはFFから搬入される用紙の種別等を判定し、上流側の定着装置で高光沢度処理が施された特定用紙(例えば、コート紙等の平滑紙)であると判定すると、矢印bのように搬入された用紙を第2搬送路GR2に案内させるよう、用紙の搬送を制御する。後処理制御部CDはFFから搬入される用紙の種別が特定用紙以外の用紙(例えば、普通紙)であると判定すると、矢印aのように搬入された用紙を第1搬送路GR1に案内させるよう、用紙の搬送を制御する。また、後処理制御部CDはFFから搬入される用紙が上流側の定着装置で高光沢度処理を施されていないと判定すると、矢印aのように搬入された用紙を第1搬送路GR1に案内させるよう、用紙の搬送を制御する。
【0136】
また、用紙冷却手段151を作動させる場合の実施形態では、後処理制御部CDは、FFから搬入される用紙の種別等を判定し、上流側の定着装置で高光沢度処理が施された第2の特定用紙(例えば、特定用紙より用紙厚が大きい)であると判定すると、矢印bのように搬入された用紙を第2搬送路GR2に案内させるよう、用紙の搬送を制御すると共に、第2搬送路GR2に配設された用紙冷却手段151を作動させるよう制御して積極的に用紙Pを冷却させる。
【0137】
なお、第2の特定用紙に拘わらず特定用紙であると判定すると、用紙冷却手段151を作動させるよう制御してもよい。
【0138】
第2搬送路GR2に配設された用紙を搬送する搬送ローラ対R21、R22を図10に示す通しローラCRにする。一方、第1搬送路に配設される用紙を搬送する搬送ローラ対R11は通しローラにする必要がなく、図10に示す団子ローラBRにしてもよい。
【0139】
図6に戻り本発明に係る光沢ムラ防止技術の実施形態について後述する。図11に示す本発明に係る第1の搬送路GR1は、図6の搬送ローラ対101の上流部から搬送ローラ対108の下流部に至る搬送路であり、搬送路RD1と搬送路RD2とを含む搬送路である。図11に示す本発明に係る第2の搬送路GR2は、図6の搬送ローラ対101の上流部から搬送ローラ108の下流部に至る搬送路であり、搬送路RD1と搬送路RD3とを含む搬送路である。搬送ローラ対101〜108の全ては図10に示す通しローラCRの形態である。搬送路RD2に配設される搬送ローラ対109は通しローラCRに限定されず、図10に示す団子ローラBRでもよい。搬送ローラ対101〜108及び109は、外径22mmで、表面材質がゴムのローラとした。
【0140】
図6の切替ゲートG2の位置は図8のゲート駆動部601によって作動する。
【0141】
用紙後処理装置Dの全体制御を司る今発明の制御手段としての後処理制御部CD(図8、11に示す)は、2次定着処理装置Cから搬入される用紙の種別を判定し、用紙の種別が特定用紙(例えば、平滑紙)であると判定すると用紙Pを搬送路RD3に搬送させる信号を図8のゲート駆動部601に出力する。ゲート駆動部601は後処理制御部CDからの信号に基づき、切替ゲートG2の位置を用紙Pが搬送路RD3に搬送される状態に切替える。
【0142】
実験では、用紙Pの搬送速度Vsが400mm/sの時、経路長を950mmとすることで、Dに進入した時の用紙Pの温度は概ね85℃だったが、カール矯正手段200に到達した時点における用紙の温度Tsは55℃以下にまで低くすることができた。
【0143】
Dに進入する時の用紙Pの温度は、2次定着装置300の定着温度、紙の種類(普通紙、コート紙)、紙の坪量に関係がある。また、画像上のトナーの量にも関係がある。坪量が大きくなると、又はトナー量が多くなると、Dに進入する時の紙温度は高くなる。また、同一坪量の場合でもコート紙は普通紙に比較して上記紙温度が高くなる。
【0144】
2次定着装置300の定着温度を160℃、用紙Pの搬送速度は400mm/s、且つ用紙P上にトナー付着量約8g/mのブルーベタ画像(シアンとマゼンタの2層で成るベタ画像)が形成される条件下において、Dに進入した時の用紙の温度は、坪量128g/mのコート紙の場合には概ね85℃であり、一方、坪量80g/mの普通紙の場合には、75℃であった。
【0145】
用紙冷却装置151を動作させる場合は、経路を950mmより短くしても、カール矯正手段200に到達した時点における用紙の温度Tsを55℃より低くすることができる。例えば図6の151Aと151Bを大きさ60mm×60mm、風速7m/sの軸流ファンを通紙方向と垂直方向151Aに3個、151Bにも3個、合計6個配置した場合、経路長を500mmとしても経路長950mmで冷却装置なしの場合と同等に低下させることができた。
【0146】
一方、後処理制御部CDは、用紙の種別が特定用紙以外の用紙(例えば、普通紙)であると判定すると、用紙Pを第1搬送路GR1に搬送させる信号を図8のゲート駆動部601に出力する。この信号に応じてゲート駆動部601は切替ゲートG2の位置を用紙Pが第1搬送路GR1に搬送される状態に切替える。
【0147】
特に、第1搬送路GR1がFFから搬入された用紙をDCに搬送する間に用紙の温度Tsを概ね60℃以上、即ちトナーに含有するワックスの結晶化温度Twax以上に維持することが可能な長さ(路長)を有していると、デカーラ機構DCに優れた用紙矯正を達成させることができる。
【0148】
実験では、この経路長を460mm、2次定着装置300の定着温度を160℃、用紙Pの搬送速度400mm/s、且つ用紙P上に約8g/mのブルーベタ画像が形成される条件下において、Dに進入した時の用紙の温度は概ね75℃であったが、カール矯正手段200に到達した時点における用紙の温度Tsは60℃以上に維持できた。
【0149】
以上のように画像形成システムは、生産性(単位時間あたりに処理可能な用紙枚数)を低下することなく多種の用紙に対し光沢ムラのない、カール等の用紙歪みの小さい高画質な画像を出力可能にしている。
【0150】
なお、上記の画像形成システムは画像形成装置Aと2次定着処理装置Cと用紙後処理装置Dを含むものであるが、本発明に係る画像形成システムはこれに限定されるものでなく、画像形成装置Aの下流側に用紙後処理装置Dが接続させる形態でも適用可能である。又、装置内に本発明に係る定着手段及びカール矯正手段を備える画像形成装置でも本発明に係る画像形成システムの権利範囲である。
【0151】
なお、上記の用紙後処理装置Dの用紙冷却手段151は、特開2007−286151号公報に記載された加湿手段の下流側に一体構成で配設され、加湿直後の用紙Pから余分な水分を蒸発させ、搬送ローラ等の搬送路形成部材に水分が蓄積するのを防止するために用紙Pの両面に乾燥風を吹き付ける複数のファンで兼ねるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0152】
30 第1定着装置(第1定着手段)
151 用紙冷却手段
200 カール矯正手段
210 第1デカーラ(デカーラ)
220 第2デカーラ(デカーラ
230 第3デカーラ(デカーラ
300 2次定着装置(定着手段)
A 画像形成装置
C 第2定着処理装置
D 用紙後処理装置
P 用紙
CD 後処理制御部(制御手段)
GR1 第1搬送路
GR2 第2搬送路
Lp 路長
CR 通しローラ
Ts 用紙の温度
Twax ワックスの結晶化温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に形成されたトナー像に熱及び圧力を作用させて前記トナー像を前記用紙上に定着する定着手段と、
用紙に形成されたカールを矯正し、前記用紙を前記定着手段に対し用紙搬送方向下流側に搬送するカール矯正手段と、
前記定着手段で処理された用紙を前記カール矯正手段に搬送する第1搬送路と、
前記第1搬送路より長い路長を有し、前記定着手段で処理された用紙を前記カール矯正手段に搬送する第2搬送路と、
前記定着手段で処理された用紙を前記第1搬送路、あるいは第2搬送路に案内させるように用紙の搬送を切替える切替手段と、
前記定着手段で処理された用紙の種別に基づき前記用紙を前記第1搬送路で搬送させる、あるいは前記第2搬送路で搬送させるよう前記切替手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記制御手段は前記用紙の種別が特定用紙である場合に前記用紙を前記第2搬送路で搬送させ、前記用紙の種別が特定用紙以外の用紙である場合に前記用紙を前記第1搬送路で搬送させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記第2搬送路は、前記定着手段から排出された前記用紙を前記カール矯正手段に搬送する間に前記用紙をトナーに含有するワックスの結晶化温度未満に冷却することが可能な路長を有することを特徴とする請求項1、又は2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記第1搬送路は、前記定着手段から排出された前記用紙を前記カール矯正手段に搬送する間に前記用紙を前記結晶化温度以上に維持することが可能な路長を有することを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
用紙を冷却する用紙冷却手段が第2搬送路に配設されていることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記定着手段は、少なくとも、用紙上の未定着トナー像を定着処理する第1定着装置と、前記第1定着装置の下流側に配設し前記第1定着装置で定着処理された用紙に再度定着処理を施す第2定着装置により構成されることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記第1定着装置を有する画像形成装置と、前記画像形成装置に接続し前記第2定着装置を有する第2定着処理装置と、前記第2定着処理装置に接続し前記第1搬送路、前記第2搬送路、前記カール矯正手段及び前記制御手段を有する用紙後処理装置と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の前記画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−190073(P2011−190073A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58993(P2010−58993)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】