説明

画像形成方法および印画物

【課題】 画像濃度が高い画像を表示する場合においても、粘着層の剥離が生じずに、高い耐久性を有する印画物が得られる画像形成方法および印画物の提供。
【解決手段】 静電潜像を現像してトナー像を形成し、粘着層上に転写し、押圧して粘着層にトナー粒子を埋没させる工程を有し、原画像データに基づいて形成される静電潜像を現像した場合において、得られるトナー像を区分することによって形成された、それぞれ単位面積を有する複数の画像領域のうちの1つ以上が、平均トナー付着量が2.5g/m2 を超える高濃度画像領域であると想定されるときに、前記原画像データについて、前記高濃度画像領域に1個当たりの面積が6×10-11 2 以上1000×10-11 2 以下である微小なトナー非着領域を形成させる画像処理を行うことにより修正画像データを取得し、この修正画像データに基づいて、静電潜像を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着層中にトナー粒子が埋没されることによって画像が表示された印画物、およびこれを形成するための画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成方法としては、オフセット方式、インクジェット方式、電子写真方式など様々なものがあるが、どの方式の画像形成方法においても、近年、印画物の出力時の環境負担を考慮して省エネルギー化が求められている。
電子写真方式の画像形成方法においては、定着方法が加熱方式の場合、定着工程にランニングエネルギー中の多くを要することから、省エネルギー化が図られる非加熱方式の定着方法として、画像支持基材上に形成されたゲル粘着剤などを用いた粘着層(マトリックス)にトナー粒子を埋没させることによりトナー像を保持、固定して印画物を形成する方法(以下、この方法を「マトリックス固定法」ともいう。)が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−145440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このマトリックス固定法によって得られる印画物においては、以下の問題点が生じることが判明した。
マトリックス固定法によって得られる印画物おいては、画像濃度が高い、フルカラー画像やベタ部の多い画像を表示する場合には、トナー像が多層にトナー粒子が重ねられたものとなる。然るに、当該トナー像を粘着層に保持させた状態において、トナー像の内部を構成するトナー粒子間、あるいは、画像支持基材とトナー粒子との間には粘着材はほとんど浸透されないため、当該トナー像の表面部や側面部(エッジ部)は粘着層と接するが、それ以外の部分には粘着層との接点がなく、これに起因して、それ自体に接着力を有さないトナー粒子を使用して画像濃度が高い画像を表示した印画物において、トナー像を保持した粘着層が画像支持基材から剥離する、という問題が生じることが判明した。特に、粘着層の剥離の問題は、トナー像の側面部が外部に露出されるために、画像濃度が高いフチなし画像を表示する場合に顕著に発生すると考えられる。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、画像支持基材上にゲル状の粘着材よりなる粘着層が積層され、当該粘着層にトナー像が保持されてなる印画物を得る画像形成方法において、画像濃度が高い画像を表示する場合においても、粘着層の剥離が生じずに、高い耐久性を有する印画物が得られる画像形成方法および印画物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成方法は、画像支持基材上にゲル状の粘着材よりなる粘着層が積層され、当該粘着層にトナー像が保持されてなる印画物を得る画像形成方法であって、
一様に帯電された感光体を露光することによって静電潜像を形成し、当該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成し、当該トナー像を、画像支持基材上にゲル状の粘着材よりなる粘着層が積層されてなる基材シートの当該粘着層上に静電転写し、静電転写されたトナー像を担持する基材シートを押圧して前記粘着層に当該トナー像を構成するトナー粒子を埋没させることによりトナー像を保持させる工程を有し、
原画像データに基づいて形成される静電潜像を現像した場合において、得られるトナー像を区分することによって形成された、それぞれ単位面積を有する複数の画像領域のうちの1つ以上が、平均トナー付着量が2.5g/m2 を超える高濃度画像領域であると想定されるときに、前記原画像データについて、前記高濃度画像領域に1個当たりの面積が6×10-11 2 以上1000×10-11 2 以下である微小なトナー非着領域を形成させる画像処理を行うことにより修正画像データを取得し、この修正画像データに基づいて、静電潜像を形成することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の画像形成方法は、画像支持基材上にゲル状の粘着材よりなる粘着層が積層され、当該粘着層にトナー像が保持されてなる印画物を得る画像形成方法であって、
一様に帯電された感光体を露光することによって静電潜像を形成し、当該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成し、当該トナー像を画像支持基材上に静電転写し、静電転写されたトナー像を担持する画像支持基材に、ゲル状の粘着材よりなる粘着層を積層させた状態で押圧して当該粘着層に前記トナー像を構成するトナー粒子を埋没させることによりトナー像を保持させる工程を有し、
原画像データに基づいて形成される静電潜像を現像した場合において、得られるトナー像を区分することによって形成された、それぞれ単位面積を有する複数の画像領域のうちの1つ以上が、平均トナー付着量が2.5g/m2 を超える高濃度画像領域であると想定されるときに、前記原画像データについて、前記高濃度画像領域に1個当たりの面積が6×10-11 2 以上1000×10-11 2 以下である微小なトナー非着領域を形成させる画像処理を行うことにより修正画像データを取得し、この修正画像データに基づいて、静電潜像を形成することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の画像形成方法においては、前記画像領域に係る単位面積が1×10-52 〜5×10-42 であり、
各画像領域について、
平均トナー付着量に従ってトナー非着領域を形成すべき画像領域であるか否かを判定する画像解析工程、および、トナー非着領域を形成すべき画像領域については、当該解析工程において判定された画像領域に前記画像処理を行う画像処理工程を経ることにより、修正画像データを取得することが好ましい。
【0009】
また、本発明の画像形成方法においては、前記画像処理において、前記高濃度画像領域におけるトナー非着領域の総面積比率(トナー非着領域の総面積(m2 )/単位面積(m2 ))が、0.1以上となるようトナー非着領域が形成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明の画像形成方法においては、前記粘着層を構成する粘着材が、シリコーンゲルおよびアクリル樹脂架橋体ゲルの少なくともいずれかであり、前記粘着層の厚みが30〜120μmであることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の画像形成方法においては、前記トナー粒子の体積基準のメディアン径が3〜10μmであることが好ましい。
【0012】
本発明の印画物は、上記の画像形成方法によって得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成方法によれば、トナー像が、原画像データにおける画像濃度の高い画像領域に微小なトナー非着領域が形成された修正画像データに従って形成されたものとなるので、トナー像の表面部やエッジ部以外にも、トナー像にトナー非着領域が反映されて形成される空ドットに、積極的に粘着層との接点が設けられることになり、従って、粘着層とトナー像の接着性および粘着層と画像支持基材の接着性に優れ、これにより、画像濃度が高い画像を表示した場合にも、粘着層の剥離が生じない、高い耐久性を有する印画物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成方法の転写工程およびトナー埋没工程の一例を説明するための模式図であって、(a)は透明シート材上にトナー像が担持された状態を示す図、(b)は基材シートの粘着層上にトナー像が転写された状態を示す図、(c)は粘着層にトナー像が保持された状態を示す図である。
【図2】本発明の画像形成方法において基材シートの粘着層上にトナー像が担持された状態のものの一部を厚み方向に切り取って示す模式図である。
【図3】本発明の画像形成方法における画像処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の画像形成方法における画像処理を説明するための原画像データの概略図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成方法における転写工程およびトナー埋没工程の一例を説明するための模式図であって、(a)は画像支持基材上にトナー像が転写された状態、(b)は粘着層にトナー像が保持された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の画像形成方法における転写工程およびトナー埋没工程の一例を説明するための模式図であって、(a)は透明シート材上にトナー像が担持された状態を示す図、(b)は基材シートの粘着層上にトナー像が転写された状態を示す図、(c)は粘着層にトナー像が保持された状態を示す図であり、図2は、本発明の画像形成方法において基材シートの粘着層上にトナー像が担持された状態のものの一部を厚み方向に切り取って示す模式図である。
本発明の画像形成方法は、図1に示すように、画像支持基材11上にゲル状の粘着材よりなる粘着層15が積層され、当該粘着層15にトナー像Tが保持されてなる印画物Pを得る方法である。
具体的には、一様に帯電された感光体(図示せず)を露光することによって静電潜像を形成する静電潜像形成工程(1)と、当該静電潜像をトナーにより現像してトナー像Tを形成するトナー像形成工程(2)と、当該トナー像Tを、画像支持基材11上にゲル状の粘着材よりなる粘着層15が積層されてなる基材シート17の当該粘着層15上に、透明シート材13を介して静電転写する、具体的にはトナー像Tを透明シート材13上に一旦静電転写し、トナー像Tが担持された透明シート材13を当該トナー像Tと粘着層15が接触する状態に基材シート17と積層させる転写工程(3)(図1(a)参照)と、静電転写されたトナー像Tを担持する基材シート17を押圧して粘着層15に当該トナー像Tを構成するトナー粒子を埋没させることにより、トナー像Tを保持させる(図1(b)参照)トナー埋没工程(4)を有し、これらの工程を行うことにより、基材シート17にトナー像Tが定着されて当該トナー像Tによる画像が表示された印画物Pを形成する方法である。
【0017】
(1)静電潜像形成工程
そして、本発明においては、この静電潜像形成工程において、以下のように取得される修正画像データに基づいて、静電潜像が形成される。
すなわち、修正画像データは、原画像データに基づいて形成される静電潜像を現像した場合において得られるトナー像を区分することによって形成された、それぞれ単位面積を有する複数の画像領域のうちの1つ以上が、平均トナー付着量が2.5g/m2 を超える高濃度画像領域であると想定されるときに、原画像データについて、高濃度画像領域に1個当たりの面積が6×10-11 2 以上1000×10-11 2 以下である微小なトナー非着領域を形成させる画像処理を行うことにより、取得される。
【0018】
具体的には、図3および図4に示されるように、原画像データ(S1)を単位面積を有する画像領域に区分し(S2)、各画像領域における平均トナー付着量に従って、トナー非着領域を形成すべき画像領域であるか否かを判定する画像解析工程(S3)を行い、当該画像解析工程においてトナー非着領域を形成すべき画像領域であると判定された高濃度画像領域20の全部からなる空ドット形成領域21を選定し(S4)、当該空ドット形成領域21の各高濃度画像領域20にトナー非着領域を形成させる(S5)画像処理工程を経ることにより、原画像データにおける空ドット形成領域21に係るデータについてはトナー非着領域が形成されたデータに変更され、原画像データにおける空ドット形成領域21以外の領域、すなわち、空ドット形成領域21の選定と共に自動的に決定される、前記画像解析工程においてトナー非着領域を形成する必要がない画像領域であると判定された低濃度画像領域25の全部からなる非形成領域26(S6)に係るデータについては何も手を加えられず、これらが合わせらることによって、修正画像データ(S7)が得られる。
【0019】
本発明において、原画像データとしては、例えば、外部から取得されるデジタルデータや、原稿を適宜の読み取り装置で読み取ってデジタルに変換したデジタルデータがある。
【0020】
トナー非着領域 の1個当たりの面積が6×10-11 2 以上1000×10-11 2 以下であることにより、得られる印画物Pにおいてトナー非着領域が反映されて形成される空ドットT0 と粘着層15とトナー粒子や画像支持基材11との接点(以下、「内部接点」ともいう。)として作用させることができるにも拘わらず、原画像データから得られる所期の画像濃度との濃度差が目視で認識されない濃度の画像を表示することができる。一方、トナー非着領域の1個当たりの面積が6×10-11 2 未満である場合は、当該トナー非着領域が反映されて形成される空ドットT0 に粘着材を浸透させることができず、当該が空ドットT0 を内部接点として作用させることができない。また、トナー非着領域の1個当たりの面積が1000×10-11 2 を超える場合は、原画像データから得られる所期の画像濃度との濃度差が目視で認識されてしまうために、所期の画像を表示することができない。
【0021】
原画像データを区分すべき単位面積は、1×10-52 〜5×10-42 とされ、2×10-42 であることが特に好ましい。
単位面積が上記の範囲内の大きさとされることにより、画像濃度の高い画像領域のみに的確にトナー非着領域を形成することができる。一方、単位面積が小さすぎる場合は、画像処理に多大な手間を要することとなるので処理効率が低い。なお、単位面積が1×10-52 未満として得た画像は、単位面積を1×10-52 として得た画像と比較して、目視でその差はほとんど認識されない。また、単位面積が大きすぎる場合は、トナー非着領域を的確な画像領域に形成させることができず、粘着層の剥離が生じるおそれがある。
【0022】
画像処理工程においては、空ドット形成領域21の各高濃度画像領域20におけるトナー非着領域の総面積比率(トナー非着領域の総面積(m2 )/単位面積(m2 ))が、0.1以上、好ましくは0.1〜0.3となるようトナー非着領域が形成されることが好ましい。
トナー非着領域の総面積比率が0.1以上であることにより、粘着層15の剥離が防止される程度の数の内部接点が設けられることとなる。一方、トナー非着領域の総面積比率が過小である場合は、内部接点の数が少なくなり、十分な粘着層の剥離の防止効果が得られないおそれがある。また、トナー非着領域の総面積比率が過大である場合は、原画像データから得られる所期の画像濃度との濃度差が目視で認識されるおそれがある。
【0023】
(2)トナー像形成工程
本発明の画像形成方法におけるトナー像形成工程は、下記のトナーを用いて、従来公知の電子写真方式の方法を利用して行うことができる。
【0024】
〔トナー〕
本発明の画像形成方法のトナー像形成工程に用いられるトナーは、例えば樹脂に着色剤が分散されてなるトナー粒子よりなるものであり、トナー粒子には、さらに所望に応じて荷電制御剤、磁性粉、ワックスなどが含有されていてもよい。
【0025】
〔トナー樹脂〕
トナー粒子を構成するトナー樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを用いて得られるスチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂を得るための(メタ)アクリル酸系単量体は、メタクリル酸系単量体とアクリル酸系単量体を総称したもので、メタクリル酸系単量体の具体例としては、メタクリル酸(CH2 =C(CH3 )COOH)およびメタクリル酸エステル誘導体などが挙げられる。また、アクリル酸系単量体としては、アクリル酸(CH2 =CHCOOH)とアクリル酸エステル誘導体などが挙げられる。
【0026】
〔着色剤〕
トナー粒子を構成する着色剤としては、下記に例示するような有機または無機の各種、各色の顔料を使用することができる。
黒トナー用の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどを挙げることができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどを挙げることができる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどを挙げることができる。
イエロートナー用のイエロー着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162など、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などを挙げることができ、これらの混合物も挙げることができる。
マゼンタトナー用のマゼンタ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122など、顔料としてC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などを挙げることができ、これらの混合物も挙げることができる。
シアントナー用のシアン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、C.I.ソルベントブルー36、C.I.ソルベントブルー60、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ソルベントブルー93、C.I.ソルベントブルー95など、顔料としてC.I.ピグメントブルー1、7、15、60、62、66、76などを挙げることができる。
これらの着色剤は、1種単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
着色剤の添加量は、トナー樹脂100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0027】
〔磁性粉〕
また、トナー粒子が磁性粉を含有するものとして構成される場合において、磁性粉としては、例えばマグネタイト、γ−ヘマタイト、または各種フェライトなどを挙げることができる。
磁性粉の添加量は、トナー樹脂100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜200質量部である。
【0028】
〔荷電制御剤〕
また、トナー粒子が荷電制御剤を含有するものとして構成される場合において、荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々のものを挙げることができる。
このようにトナー粒子が荷電制御剤を含有するものとして構成されることにより、トナーの帯電性が向上される。
荷電制御剤の添加量は、トナー樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0029】
〔ワックス〕
さらに、トナー粒子がワックスを含有するものとして構成される場合において、ワックスとしては、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、特に低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型のポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックスを用いることが好ましい。
ワックスの添加量は、トナー樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0030】
〔トナー粒子の製造方法〕
このようなトナー粒子を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、その他の公知の方法などを挙げることができる。
【0031】
〔トナーの平均粒径〕
トナーの平均粒径は、体積基準のメディアン径で3〜10μmであることが好ましい。トナーの平均粒径が3〜10μmであることにより、粘着層15にトナー粒子を確実に埋没させることができ、優れた細線の再現性が得られる。トナーの平均粒径が10μmを超える場合は、粘着層15にトナー粒子を埋没させることが困難な場合があり、トナーの平均粒径が3μm未満である場合は、トナー粒子間の静電的反発力によるトナー飛散などが生じるおそれがあるなど、トナー像形成時の制御性に劣る。
【0032】
トナー粒子の体積基準のメディアン径は「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメディアン径とされる。
【0033】
〔トナー粒子の平均円形度〕
以上のトナー粒子は、下記式(S)で示される平均円形度が0.700〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.850〜1.000である。
式(S);平均円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影像の周囲長
【0034】
〔外添剤〕
上記のトナー粒子は、そのままでトナーを構成することができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加してトナーを構成してもよい。
後処理剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0035】
〔現像剤〕
以上のようなトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として画像形成に供することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として供してもよい。トナーを一成分現像剤として画像形成に供する場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させて磁性一成分現像剤としたもののいずれも使用することができる。また、トナーを二成分現像剤として画像形成に供する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
【0036】
(3)転写工程
本発明の画像形成方法における転写工程は、従来公知の電子写真方式の方法を利用して行うことができる。
【0037】
〔基材シート〕
本発明の画像形成方法に用いられる基材シート17は、画像支持基材11の表面上に粘着層15が形成されてなるものである。
この基材シート17の厚みは、例えば100〜250μmとされることが好ましい。
【0038】
〔画像支持基材〕
画像支持基材11としては、適宜のものを用いることができ、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、ポリプロピレン合成紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリイミドフィルム、布などの各種を挙げることができる。
画像支持基材11の厚みは、例えば50〜150μmとされることが好ましい。
【0039】
〔粘着層〕
本発明において、粘着層15を構成する粘着材は、ゲル状のものであり、トナー粒子を埋没させることのできるトナー粒子埋没性を有するものである。
【0040】
粘着材としては、トナー粒子埋没性を確実に得る観点から、押圧力などの外力を付与されていない状態においては流動性を有さず、外力を付与されることによって流動状態を発現するものであることが好ましい。具体的には、例えば常態においてはゲル状であり、外力を付与されることによってゾル状に変化するチクソトロピー性を有するものとすることができる。
特に、外力によりトナー粒子を埋没させるときに、その粒子形状度の変化の程度が小さく抑制される程度の流動性(以下、「特定の流動性」ともいう。)を有するものであることが好ましい。
特定の流動性を有するものとは、具体的には、トナー粒子を埋没させるための外力を付与した状態において、JIS K2207に準じて測定される針入度が30以上であるものをいい、粘着材としてはこの針入度が高いものほど好ましいが、特に好ましくは針入度が100以下であるものである。
このような特定の流動性を有するものを用いることにより、感光体上に各トナー粒子が静電的に付着して形成されているトナー像Tを、各トナー粒子における静電電荷を維持した状態において埋没させて粘着層15に保持させることができる。
また、粘着層15を構成する粘着材は、ヤング率が103 〜106 N/m2 のものであることが好ましい。
粘着材が上記の範囲のヤング率を有するものであることにより、トナー像Tを構成するトナー粒子が埋没した状態を十分に維持して固定することができる。
【0041】
また、粘着層15を形成する粘着材は、トナー粒子埋没性を確実に得る観点から、トナー粒子を構成する樹脂(以下、「トナー樹脂」ともいう。)と非相溶性のものとされる。また、粘着材としては、トナー粒子との親和性の高い材料が好ましい。
【0042】
粘着材としては、シリコーン系、アクリル系、ビニル系、ウレタン系などの樹脂、エラストマーまたはゴムなどの高分子化合物と有機溶剤またはオイルとのゲルや、水溶性高分子と水系溶媒とのゲルなどを用いることができる。
具体的には、シリコーン系の樹脂としては、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルビニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、フルオロシロキサン、トリフルオロシロキサン、トリフルオロプロピルシロキサン、クロロメチルシロキサン、シアノエチルシロキサン、ポリエーテルシロキサン、フルオロポリエーテルシロキサン、アミノシロキサンなどによるものが挙げられる。
また、アクリル系の樹脂としては、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレートなどやメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド誘導体、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなどによる共重合物が挙げられる。
また、ビニル系の樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、フェノール-ビニルブチラール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
また、ウレタン系の樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートを反応して得られるポリウレタンプレポリマーが挙げられ、ポリオールとしては1,2−ポリブタジエンポリオール、1,4−ポリブタジエンポリオール、ポリ(ペンタジエン・ブタジエン)ポリオール、ポリ(ブタジエン・スチレン)ポリオール、ポリ(ブタジエン・アクリロニトリル)ポリオールなどがあり、ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などがある。
さらに、水溶性高分子としては、キサンタンガム、カラギナン、プルラン、ファーセレラン、カードラン、ゼラチン、コラーゲンなどの天然高分子多糖類;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム天然低分子多糖類;ポリアクリル酸;ポリアクリル酸ナトリウム;ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
水系溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0043】
粘着材を構成するゲルとしては、特に、シリコーンゲルまたはアクリル樹脂架橋体ゲルを用いることが好ましい。
シリコーンゲルやアクリル樹脂架橋体ゲルなどの架橋構造を有する高分子体は、その柔軟性から、表面部やエッジ部、あるいはトナー非着領域の周囲部のみならず、その近傍のトナー粒子間もしくはトナー粒子と画像支持基材11との間に浸透しやすいものと推測される。従って、このような架橋構造を有する高分子体を含む粘着材を用いることにより、確実に粘着層の剥離の防止効果が得られる。
【0044】
粘着層15の厚みは、保持すべきトナー像Tの厚みや粘着材の種類によって異なるが、例えば粘着材に含有されるゲルがシリコーンゲルまたはアクリル樹脂架橋体ゲルである場合は、30〜120μmとされることが好ましい。粘着層15の厚みが上記の範囲内であることにより、トナー像Tを十分に内包することができ、印画物として求められるハンドリング性が十分に確保される。一方、粘着層15の厚みが30μm未満である場合は、トナー像Tを構成するトナー粒子が粘着層15の表面から突出してトナー粒子が印画物Pから脱落するおそれがある。また、粘着層15の厚みが120μmを超える場合は、得られる印画物の重さや厚みが増すために、紙状媒体としてのハンドリング性の観点から好ましくない。
【0045】
〔透明シート材〕
この画像形成方法に用いられる透明シート材13は、透光性を有し、シート形状を有するものである。
透明シート材13としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)からなるシートなどが挙げられる。
【0046】
透明シート材13の厚みは10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは25〜100μmである。
【0047】
(4)トナー埋没工程
トナー埋没工程において、トナー像Tを構成するトナー粒子を粘着層15に埋没させるためには、外力を付与することができ、トナー粒子を埋没させるために付与する外力は、当該トナー像Tを構成するトナー粒子の機械的強度や、粘着層15を構成する粘着材の種類によっても異なるが、例えば1.00×103 〜1.00×108 Paの大きさの押圧力とすることができる。
粘着層15にトナー粒子を埋没させる外力は、例えば適宜の転写装置によって与えられる静電的な力、適宜の押圧装置によって与えられる押圧力、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
なお、トナー粒子を粘着層15に埋没させる際には加熱を要さないが、高い画質の印画物を得るために低温例えば60〜80℃程度で加熱処理してもよい。
【0048】
本発明の画像形成方法においては、トナー像Tの形成に供されるトナー粒子の粒子形状度をA、粘着層に保持されたトナー像Tを構成するトナー粒子の粒子形状度をBとしたときに下記関係式(I)を満たすことが好ましい。
関係式(I):1.0≧B/A≧0.9
ここに、トナー粒子の粒子形状度とは、(投影像の最小径/当該投影像の最大径)で表されるものである。
トナー像Tの形成に供する前と粘着層15に埋没された後のトナー粒子の粒子形状度の変化の程度を示す(B/A)が上記関係式(I)の範囲にあることにより、小さな外力によってすなわち少量のエネルギーによって印画物を形成することができる。一方、粒子形状度の変化の程度を示す(B/A)が0.9未満である場合は、印画物Pを得るために必要とされるエネルギーが多量となり、環境負荷が大きいために好ましくない。
【0049】
トナー像Tの形成に供されるトナー粒子の粒子形状度Aは、具体的には、感光体上に静電的に形成されたトナー像Tを剥離し、走査型電子顕微鏡(SEM)「JSM−7401F」(日本電子社製)によって観察し、2,000倍の倍率の画像を「ルーゼックス画像解析装置」(ニレコ社製)に取り込み、個々のトナー粒子について、それぞれ、粒子の投影像の最大径と最小径を測定し、当該最小径を当該最大径で除した粒子形状度を求め、100個のトナー粒子についての粒子形状度の平均値を算出することにより、求められるものである。
【0050】
また、粘着層15に埋没された後のトナー粒子の粒子形状度Bは、具体的には、この画像形成方法により得られた印画物Pの断面切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)「JEM−1400」(日本電子社製)によって観察し、2,000倍の倍率の画像を「ルーゼックス画像解析装置」(ニレコ社製)に取り込み、個々のトナー粒子について、それぞれ、粒子の投影像の最大径と最小径を測定し、当該最小径を当該最大径で除した粒子形状度を求め、100個のトナー粒子についての粒子形状度の平均値を算出することにより、求められるものである。
【0051】
このトナー像Tの形成に供されるトナー粒子の粒子形状度Aは、具体的には0.40〜1.00であることが好ましく、より好ましくは0.60〜1.00である。また、粘着層15に埋没された後のトナー粒子の粒子形状度Bは、具体的には0.40〜1.00であることが好ましく、より好ましくは0.60〜1.00である。
【0052】
上記関係式(I)は、例えば、10%変形強度が1〜100MPaである硬質なトナー粒子を用いることにより、達成することができる。
この10%変形強度は、微小圧縮試験機「MCT−W201」(島津製作所社製)を用いて圧縮試験モードで測定される値である。
【0053】
〔印画物〕
以上の画像形成方法によって得られた印画物Pは、画像支持基材11上の粘着層15中に、トナー非着領域が反映されて形成される空ドットT0 を有するトナー像Tが保持され、さらに粘着層15上に透明シート材13が積層されたものである。透明シート材13は、粘着層15にトナー像Tを構成するトナー粒子が埋没されて当該トナー像Tが定着された後、剥離してもよく、また、図1(c)に示されるように剥離せずに表面保護材として機能させてもよい。
このような印画物Pは、例えば、画像支持基材11を剥離してその剥離面を接着面としてシールとして使用することができる。
【0054】
以上のような画像形成方法によれば、トナー像Tが、原画像データにおける画像濃度の高い画像領域に微小なトナー非着領域が形成された修正画像データに従って形成されたものとなるので、トナー像Tの表面部やエッジ部以外にも、トナー像にトナー非着領域が反映されて形成される空ドットT0 に積極的に粘着層との接点が設けられることになり、従って、粘着層15とトナー像Tの接着性および粘着層15と画像支持基材11の接着性に優れ、これにより、画像濃度が高い画像を表示した場合にも、粘着層15の剥離が生じない、高い耐久性を有する印画物Pが得られる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、転写工程においては透明シート材13を介してトナー像Tを粘着層15上に転写することに限定されず、粘着層15上に直接転写してもよい。
【0056】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る画像形成方法は、図5に示されるように、例えば透明シート材13上に粘着層15が形成されてなる画像固定シート12を用いて、トナー像形成工程において形成したトナー像Tを、当該トナー像Tを画像支持基材11上に、直接または中間転写体を介して静電転写し(図5(a)参照)、静電転写されたトナー像Tを担持する画像支持基材11に、画像固定シート12を、当該画像固定シート12の粘着層15がトナー像Tに接触する状態に積層させ、この状態で押圧して当該粘着層15にトナー像Tを構成するトナー粒子を埋没させることによりトナー像Tを保持させる(図5(b)参照)ことにより、画像支持基材11上の粘着層15にトナー像Tが定着されて当該トナー像Tによる画像が表示された印画物Pを形成することの他は、第1の実施の形態と同様の要件を有する方法である。
透明シート材13は、粘着層15にトナー像Tを構成するトナー粒子が埋没されて当該トナー像Tが定着された後、剥離してもよく、また、図5(b)に示されるように剥離せずに表面保護材として機能させてもよい。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
(1)画像固定シートの作製
厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムベース(透明シート材)上に、シリコーンゲルA「SEI891H」(東レ・ダウコーニング社製)をバーコーターで塗布したのち、硬化させることにより、厚みが50μm、針入度が45である柔軟な粘着層を形成させ、これにより、透明シート材上に粘着層が積層されてなる画像固定シート〔1〕を得た。
(2)現像剤の調製
体積基準のメディアン径が50μmのフェライトコア粒子にシクロヘキシルメタクリレート樹脂を被覆したフェライトキャリアと、ガラス転移点(Tg)が40℃、体積基準のメディアン径が6.5μmのトナー粒子からなるトナーとを、十分に混合し、トナー濃度が7%である2成分現像剤を調製した。
(3)画像形成
定着器を取り外したフルカラー複合機「bizhub C 253」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)によって、下記の原画像データに画像処理を行った修正画像データに基づいて、上記の2成分現像剤を用いて白の光沢紙「POD128」(王子製紙社製)(画像支持基材)上にトナー像を転写した後、上記の画像固定シート〔1〕を、粘着層がトナー像に接触する状態に重畳し、その後、前記の取り外した定着器を加熱しない状態で通過させて押圧(押圧力:5×105 Pa)することにより、画像支持基材上にトナー像が保持された粘着層が積層され、さらに最表面に透明シート材が積層された印画物〔1〕を得た。
【0059】
原画像データおよび画像処理条件は以下の通りである。
○原画像データ
・トナー付着量8g/m2 のベタパッチ(4cm×2.5cm、面積10cm2 )が形成された画像
○画像処理条件
・単位面積:2×10-42
・トナー非着領域の1個当たりの面積:8×10-11 2
・トナー非着領域の総面積比率:0.15
【0060】
<実施例2>
(1)基材シートの作製
白の光沢紙「POD128」(王子製紙社製)(画像支持基材)上に、シリコーンゲルA「SE1891H」(東レ・ダウコーニング社製)をバーコーターで塗布したのち、硬化させることにより、厚みが50μm、針入度が45である柔軟な粘着層を形成させ、これにより、画像支持基材上に粘着層が積層されてなる基材シート〔1〕を得た。
(2)現像剤の調製
体積基準のメディアン径が50μmのフェライトコア粒子にシクロヘキシルメタクリレート樹脂を被覆したフェライトキャリアと、ガラス転移点(Tg)が40℃、平均粒子径が6.5μmのトナーとを、十分に混合し、トナー濃度が7%である2成分現像剤を調製した。
(3)画像形成
定着器を取り外した「bizhub C 253」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)によって、下記の原画像データに画像処理を行った修正画像データに基づいて、上記の2成分現像剤を用いて厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムベース(透明シート材)上にトナー像を転写した後、上記の基材シート〔1〕上に、トナー像が粘着層に接触する状態に重畳し、その後、前記の取り外した定着器を加熱しない状態で通過させて押圧することにより、画像支持基材上にトナー像が保持された粘着層が積層され、さらに最表面に透明シート材が積層された印画物〔2〕を得た。
【0061】
<実施例3>
厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムベース(透明シート材)上に、シリコーンゲルB「SE1740」(東レ・ダウコーニング社製)をバーコーターで塗布したのち、硬化させることにより、厚みが50μmである粘着層を形成させ、これにより、透明シート材上に粘着層が積層されてなる画像固定シート〔2〕を得た。
実施例1において、画像固定シート〔1〕の代わりに画像固定シート〔2〕を用いたことの他は同様にして、印画物〔3〕を得た。
【0062】
<実施例4>
厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムベース(透明シート材)上に、アクリル系樹脂架橋体ゲル「テクノゲルAG」(積水化成品工業社製)を50μmの厚みで塗付することにより粘着層を形成させ、これにより、透明シート材上に粘着層が積層されてなる画像固定シート〔3〕を得た。
実施例1において、画像固定シート〔1〕の代わりに画像固定シート〔3〕を用いたことの他は同様にして、印画物〔4〕を得た。
【0063】
<比較例1>
実施例1において、画像処理を行わずに、原画像データに従ってトナー像を形成したことの他は同様にして、印画物〔5〕を得た。この印画物〔5〕のトナー像は、トナー非着領域が形成されていないものである。
【0064】
<比較例2>
実施例1において、以下の画像処理条件に従って画像処理を行うことの他は同様にして、印画物〔6〕を得た。この印画物〔6〕は、トナー非着領域の総面積比率は実施例1と同じであるが、トナー非着領域の1個当たりの面積が過小のものである。
○画像処理条件
・単位面積:2×10-42
・トナー非着領域の1個当たりの面積:4×10-11 2
・トナー非着領域の総面積比率:0.15
【0065】
<比較例3>
実施例1において、以下の画像処理条件に従って画像処理を行うことの他は同様にして、印画物〔7〕を得た。この印画物〔7〕は、トナー非着領域の総面積比率は実施例1と同じであるが、トナー非着領域の1個当たりの面積が過大であるものである。
○画像処理条件
・単位面積:2×10-42
・トナー非着領域の1個当たりの面積:1200×10-11 2
・トナー非着領域の総面積比率:0.15
【0066】
<実施例5>
実施例1において、以下の画像処理条件に従って画像処理を行うことの他は同様にして、印画物〔8〕を得た。
○画像処理条件
・単位面積:2×10-42
・トナー非着領域の1個当たりの面積:8×10-11 2
・トナー非着領域の総面積比率:0.08
【0067】
<比較例4>
実施例1において、以下の画像処理を行うことの他は同様にして、印画物〔9〕を得た。
画像処理は、原画像データの2×10-42 の単位面積当たりの平均トナー付着量がいずれの単位面積においても2.5g/m2 以下になるように行った。
この印画物〔9〕は、画像全体の画像濃度が低くされたものである。
【0068】
<比較例5>
厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムベース(透明シート材)上に、接着剤「RCペーパーセメント」(福岡工業株式会社製)をバーコーターで塗布したのち、乾燥硬化させることにより、厚みが50μmである粘着層を形成させ、これにより、透明シート材上に粘着層が積層されてなる画像固定シート〔4〕を得た。
実施例1において、画像固定シート〔1〕の代わりに画像固定シート〔4〕を用いたことの他は同様にして、印画物〔10〕を得た。この印画物〔10〕は、粘着層を構成する粘着材として、接着剤を用いたものである。なお、接着剤は、シリコーンゲルやアクリル系樹脂架橋体ゲルと異なり、トナー粒子間もしくはトナー粒子と画像支持基材との間に浸透しない。
【0069】
<実施例6>
厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムベース(透明シート材)上に、シリコーンゲルA「SE1891H」(東レ・ダウコーニング社製)をバーコーターで塗布したのち、硬化させることにより、厚みが30μmである粘着層を形成させ、これにより、透明シート材上に粘着層が積層されてなる画像固定シート〔5〕を得た。
実施例1において、画像固定シート〔1〕の代わりに画像固定シート〔5〕を用いたことの他は同様にして、印画物〔11〕を得た。
【0070】
<実施例7>
厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムベース(透明シート材)上に、シリコーンゲルA「SE1891H」(東レ・ダウコーニング社製)をバーコーターで塗布したのち、硬化させることにより、厚みが120μmである粘着層を形成させ、これにより、透明シート材上に粘着層が積層されてなる画像固定シート〔6〕を得た。
実施例1において、画像固定シート〔1〕の代わりに画像固定シート〔6〕を用いたことの他は同様にして、印画物〔12〕を得た。
【0071】
<実施例8>
実施例1において、平均粒子径が6.5μmのトナーの代わりに、平均粒子径が13.4μmのトナーを用いたことの他は同様にして、印画物〔13〕を得た。
【0072】
〔評価〕
以上の印画物〔1〕〜〔13〕について、画像濃度差および接着性について評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(1)画像濃度差
印画物を透明シート材側からスキャナ「GT−9800F」(EPSON社製)で600dpiで読み込み、各色レベルの画素数を解析して色レベル平均値Cを得、下記式(R)に従って色レベル平均値の差の程度Rを算出してこれに従って評価した。
式(R):R=(|C0 −C|)/C0
ただし、上記式(R)において、C0 は、本発明に係る画像処理を行っていない比較例1の印画物〔5〕の各色レベルの平均値である。
なお、Rが小さい程、画像処理前後での濃淡差が小さい、すなわち画像濃度差が小さいと判断できる。
R≦5%であると、画像処理を行っていない比較例1の印画物〔5〕と並べても目視では画像濃度差がほとんど認識できない(実用可)。
5%<R≦10%であると、画像処理を行っていない比較例1の印画物〔5〕と別々に比較したときに目視では画像濃度差がほとんど認識できない。もしくは気になる差ではない(実用可)。
10%<R≦20%であると、画像処理を行っていない比較例1の印画物〔5〕と別々に比較したときに目視で画像濃度差が認識される(実用不可)。
20%<Rであると、画像処理を行っていない比較例1の印画物〔5〕と別々に比較したときであっても画像濃度差が大きく、同じ画像とは認識できない(実用不可)。
【0074】
(2)接着性A
印画物における4cm×2.5cmのベタパッチ部(画像領域)を厚み方向に切り出した。この切り出したサンプルの画像支持基材(紙)側を、表面が平滑なアクリル製の円筒体(a:φ4cm、b:φ10cm、c:φ15cm)に、サンプルの長辺(4cm)が円筒体の円孤に沿うよう貼り付け、どの直径の円筒体において粘着層が剥がれるかによって、下記の評価基準に従ってその接着性を評価した。粘着層が剥がれることがない円筒体の直径の小さい、すなわち曲率の高いほど、接着性が高いと判断できる。
−評価基準−
3:a、b、cのいずれに貼り付けた場合にも粘着層の浮きがなく、十分な接着性を有する。
2:aに貼り付けた場合にはサンプルの端が浮くが、b、cに貼り付けた場合には粘着層の浮きはない。接着性に若干不足はあるが、印画物としての使用には問題がないレベル。
1:a、bに貼り付けた場合にはサンプルの端が浮くが、cに貼り付けた場合には粘着層の浮きはない。接着性に不足があり、印画物としての使用には問題がある。
0:a、b、cのいずれに貼り付けた場合でも粘着層が浮く。接着性が不十分であり、印画物として使用不可。
【0075】
(3)接着性B
印画物における4cm×2.5cmのベタパッチ部(画像領域)を厚み方向に切り出した。この切り出したサンプルの画像支持基材(紙)側を、表面が平滑なアクリル製の平面板に貼り付け、平面板を鉛直な状態に保って3日間放置し、粘着層が平面板から剥離するかどうかによって、下記の評価基準に従ってその接着性を評価した。粘着層が剥がれることがない円筒体の直径の小さい、すなわち曲率の高いほど、接着性が高いと判断できる。
−評価基準−
3:3日間以内に粘着層の剥離が生じない。十分な接着性が得られる。
2:24時間以上3日間以内に粘着層の剥離が生じた。接着性に不足はあるが、印画物としての使用には問題がないレベル。
1:実験開始直後には粘着層の剥離は生じないが、24時間以内に粘着層の剥離が生じる。接着性に不足があり、印画物としての使用には問題がある。
0:実験開始直後に粘着層の剥離が生じる。接着性が不十分であり、印画物として使用することはできない。
【0076】
【表1】

【符号の説明】
【0077】
11 画像支持基材
12 画像固定シート
13 透明シート材
15 粘着層
17 基材シート
20 高濃度画像領域
21 空ドット形成領域
25 低濃度画像領域
26 非形成領域
P 印画物
T トナー像
0 空ドット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像支持基材上にゲル状の粘着材よりなる粘着層が積層され、当該粘着層にトナー像が保持されてなる印画物を得る画像形成方法であって、
一様に帯電された感光体を露光することによって静電潜像を形成し、当該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成し、当該トナー像を、画像支持基材上にゲル状の粘着材よりなる粘着層が積層されてなる基材シートの当該粘着層上に静電転写し、静電転写されたトナー像を担持する基材シートを押圧して前記粘着層に当該トナー像を構成するトナー粒子を埋没させることによりトナー像を保持させる工程を有し、
原画像データに基づいて形成される静電潜像を現像した場合において、得られるトナー像を区分することによって形成された、それぞれ単位面積を有する複数の画像領域のうちの1つ以上が、平均トナー付着量が2.5g/m2 を超える高濃度画像領域であると想定されるときに、前記原画像データについて、前記高濃度画像領域に1個当たりの面積が6×10-11 2 以上1000×10-11 2 以下である微小なトナー非着領域を形成させる画像処理を行うことにより修正画像データを取得し、この修正画像データに基づいて、静電潜像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
画像支持基材上にゲル状の粘着材よりなる粘着層が積層され、当該粘着層にトナー像が保持されてなる印画物を得る画像形成方法であって、
一様に帯電された感光体を露光することによって静電潜像を形成し、当該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成し、当該トナー像を画像支持基材上に静電転写し、静電転写されたトナー像を担持する画像支持基材に、ゲル状の粘着材よりなる粘着層を積層させた状態で押圧して当該粘着層に前記トナー像を構成するトナー粒子を埋没させることによりトナー像を保持させる工程を有し、
原画像データに基づいて形成される静電潜像を現像した場合において、得られるトナー像を区分することによって形成された、それぞれ単位面積を有する複数の画像領域のうちの1つ以上が、平均トナー付着量が2.5g/m2 を超える高濃度画像領域であると想定されるときに、前記原画像データについて、前記高濃度画像領域に1個当たりの面積が6×10-11 2 以上1000×10-11 2 以下である微小なトナー非着領域を形成させる画像処理を行うことにより修正画像データを取得し、この修正画像データに基づいて、静電潜像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項3】
前記画像領域に係る単位面積が1×10-52 〜5×10-42 であり、
各画像領域について、
平均トナー付着量に従ってトナー非着領域を形成すべき画像領域であるか否かを判定する画像解析工程、および、トナー非着領域を形成すべき画像領域については、当該解析工程において判定された画像領域に前記画像処理を行う画像処理工程を経ることにより、修正画像データを取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記画像処理において、前記高濃度画像領域におけるトナー非着領域の総面積比率(トナー非着領域の総面積(m2 )/単位面積(m2 ))が、0.1以上となるようトナー非着領域が形成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記粘着層を構成する粘着材が、シリコーンゲルおよびアクリル樹脂架橋体ゲルの少なくともいずれかであり、前記粘着層の厚みが30〜120μmであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記トナー粒子の体積基準のメディアン径が3〜10μmであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の画像形成方法によって得られることを特徴とする印画物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−25207(P2013−25207A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161594(P2011−161594)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】