説明

画像形成方法および画像形成装置

【課題】中間転写体上に形成された、光硬化性成分を含むインク像に対し記録媒体を接触させることでインク像を記録媒体に転写する画像形成において、インク像の硬化効率が高く、定着工程の生産性に優れ、かつ画像の乱れが極めて少ない上に表面平滑性の高い記録が行えるようにする。
【解決手段】中間転写体上に形成された、光硬化性成分を含むインク像に記録媒体が接触している状態で、当該インク像に対し前記活性エネルギー線を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法および画像形成装置に関し、特にインクジェット記録を適用した中間転写方式の画像形成方法および画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録において、光硬化性インクを用いた記録方法が提案および実用化されている。一般的に、インクの硬化に用いられる光は紫外線であることが多い。組み合わされるインクは紫外線照射により重合反応が進み硬化するため、記録直後でも耐擦性が高い記録物が得られるという利点を持つ。しかし、インクジェット記録に用いられるインクは一般に低粘度であることが要求される。このため、インクの硬化速度より速く多量のインクを付与してしまうと記録媒体上でインクが流れて画像を乱してしまったり、また多色インクを用いる場合には好ましくない混色が生じてしまったりするという問題がある。
【0003】
従って、光硬化性インクを用いたインクジェット記録の画像出力速度はインクの硬化速度に制約されることが大きい。さらに、色インクはそれに含まれる色材が硬化光を吸収してしまうので、硬化させるにはより多くの光エネルギーが必要となる。これらの理由から、光硬化性インクを用いるインクジェット記録装置には、強力な光源を搭載し瞬時に硬化が生じるようにするか、あるいはシリアルタイプの記録装置では所謂マルチパス記録のパス数を増やすなどして低速で記録を行わざるを得ないのが現状である。
【0004】
さらに、光硬化インクを用いたインクジェット記録装置で記録された記録物は、光沢性に劣ることが多い。これは、付与されたインクが記録媒体の面方向に広がり、平滑な状態となる(レベリング)前に光硬化させなければ、上記混色等が混ざってしまうという問題に由来する問題である。この問題は硬化が高速に行われるほど顕著になる。すなわち、硬化速度を高めれば高めるほどレベリングするまでの時間を短縮することが要求され、着色部の表面平滑性が得られにくくなってしまうからである。
【0005】
これに対し、中間転写体上にインク像を形成し、その転写体上に形成されたインク像を記録媒体に転写することで画像を形成する方式(転写式インクジェット記録方法)が提案されている。特に、特許文献1には、インクとして光硬化性インクを用いる提案がなされている。この特許文献1では、中間転写体上にインク像を形成した状態で最初の光照射をすることでインクを増粘させ、その後に記録媒体にインク像を転写し、再び2回目の光照射を行うことで画像を定着させる方法が提案されている。この方法によると、記録媒体にインク像を転写する段階でインクが増粘しているので、上述したインクの流れや混色の問題を解決することができる。
【0006】
しかし、前述したような表面平滑性の課題は残っている。すなわち、記録媒体に転写されたインク像が2回目の光照射により硬化するまでインクは流動性を有しており、転写工程後に光照射を行うまでにインク像の変形が起こり得るため、表面平滑性が損なわれることがある。また逆に、記録媒体上での流動性を極力低減するべく最初の光照射を強力に行った場合には、当然にレベリング前にインクが固定化されることとなるので、課題は解決されない。
【0007】
さらに言えば、特許文献1においては中間転写体上にインク像を形成する段階ではインクは低粘度のままであるので、インク像形成を高速に行うほど、インク流れや混色など、画像品位を損なう現象が起こりやすい。
【0008】
一方、光硬化性材料の印刷分野への応用としては、光硬化性の透明材料を用いたニスで表面加工を行うために実用化されたものがある。これは、ロールコーター等の塗布装置で透明な光硬化性ニスを記録物上に塗布し、レベリングするのを待って光硬化させる方法である。光硬化性ニスは単独で用いられるため、流れても混ざっても影響が無い。また透明であるため色材が硬化光を吸収してしまうこともなく、実用的な硬化速度が得られやすい。
【0009】
かかる光硬化性ニスを用いた表面加工法で優れた技術が特許文献2に開示されている。これは、印刷物上に光硬化性ニスを塗布した後、透明フィルムを密着させた状態で光照射を行う方法である。この方法によると、従来法に比べて高い表面平滑性が得られる上、光硬化効率が高いのでより少ない照射量でより速く硬化させることが可能である。
【0010】
しかし特許文献2は、既に定着が完了した流動性が無い画像上に、全面にわたり透明なニスをコーティングする技術であって、画像定着工程の生産性や画像の乱れといった課題に対して何ら解決策を与えるものではない。特に本発明が属する、選択的にインクを付与して画像を形成するインクジェット記録技術に対してそのまま適用することはできない。
【0011】
【特許文献1】特開平10−250052号公報
【特許文献2】特開2005−225130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、光硬化性インクを用いたインクジェット記録方法には、硬化ないしは記録の高速化を達成するためには大きな光エネルギーが必要となることとや、高速に記録された記録物の表面は光沢性に劣るといった課題がある。
【0013】
よって本発明は、光硬化性成分を含むインク像の硬化効率が高く、定着工程の生産性に優れ、かつ画像の乱れが極めて少ない上に表面平滑性の高い記録が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのために、本発明は、中間転写体上に形成された、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像に対し記録媒体を接触させることで前記インク像を前記記録媒体に転写する画像形成方法であって、
インクジェットヘッドを用い、前記インク像を形成するためにインクを付与する工程と、
前記中間転写体上の前記インク像に前記記録媒体が接触している状態で、前記インク像に対し前記活性エネルギー線を照射する工程と、
を具えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、中間転写体上に形成された、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像に対し記録媒体を接触させることで前記インク像を前記記録媒体に転写する画像形成装置であって、
インクジェットヘッドを用い、前記インク像を形成するためにインクを付与する手段と、
前記中間転写体上の前記インク像に前記記録媒体が接触している状態で、前記インク像に対し前記活性エネルギー線を照射する手段と、
を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像の硬化効率が高く、定着工程の生産性に優れ、かつ画像の乱れが極めて少ない上に表面平滑性の高い記録が行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(1)概要
本発明は、中間転写体上に形成された、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像に記録媒体が接触している(すなわちインク像が外気に触れていな)状態で、当該インク像に対し前記活性エネルギー線を照射することを主たる特徴としている。これによれば、高い耐擦性と表面平滑性を持つ記録物を、高速でかつ少ないエネルギーの使用で得ることができる。このような効果が得られるメカニズムはまだ明らかではないが、本発明者らは次のように推測している。
【0018】
光硬化性インクの硬化効率を低下させている要因としては、酸素の影響が大きいと考えられる。光硬化性インクの硬化機構を一般的なラジカル重合型の紫外線硬化インクを例に挙げると次のようになる。まず、インク中に配合された光重合開始剤が吸収波長の紫外線を受けるとラジカルを発生する。このラジカルを受けて樹脂成分が硬化を開始する。この際にインク表面が開放されていると、ラジカルが大気中の酸素に奪われてしまうため、硬化反応の効率が大きく低下してしまうのである。
【0019】
また表面平滑性に関しては、インクに硬化光を照射して液体成分を固体化するタイミングおよび転写体に記録媒体を接触させるタイミングの影響が大きいと推測される。すなわち、転写体への接触に先んじて硬化光を照射すると、濡れや重力の影響によって生じるべきレベリングが抑制されてしまう。逆に、接触後に硬化光を照射する形態であると、転写時および転写体からの記録媒体の剥離時の物理的な力によって表面の平滑性が損なわれてしまうし、濡れや重力によるレベリングも期待できないものとなってしまうのである。
【0020】
(2)実施形態
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では活性エネルギー線は主に紫外線として例示され、またこれを硬化光と称する場合もある。さらに、活性エネルギー線の照射により硬化するインクまたは成分を光硬化性インクまたは光硬化性成分と称することもある。
【0021】
本発明の一実施形態に係る画像形成方法では、次の工程を採用する。すなわち、
a.中間転写体上に、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像を形成する工程、
b.中間転写体上のインク像の流動性を低下させる工程、および
c.記録媒体に中間転写体上のインク画像を接触・転写させつつ活性エネルギー線を照射する工程
である。
【0022】
図1は、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態の模式図である。
符号1で示すものは無端ベルト状の中間転写体であり、ローラ11A〜11Cに架けられて矢印Aの方向に搬送される。中間転写体1は、インク硬化に使用する光波長域の透過性の高い表面をもつものが望ましい。また、その表面は非吸収面であることが望ましい。中間転写体1の外周すなわち表面に対向する部位には、塗布装置2、インクジェットヘッド3、余剰液体分除去促進装置4、加圧ローラ6およびクリーニングユニット7などが設けられている。
【0023】
塗布装置2はロールコーターの形態を有し、インク滴の移動を制限する第一の液体を中間転写体1上に付与する。インクジェットヘッド3は、光硬化性のインクを中間転写体1上に吐出してインク像を形成する。吐出されたインクは、中間転写体1上に塗布されていた第一の液体との接触して反応し、インク滴の面内移動が制限されるためインク像の乱れは最小限に抑えられる。
【0024】
次に、余剰液体分除去促進装置4により、中間転写体1上のインク像から最終画像形成成分ではない液体成分を適正量まで減少させる。この時点でインク画像は十分に流動性が抑えられた状態となっている。
【0025】
この状態のインク像に記録媒体5を加圧ローラ6で接触・転写させ、同時に硬化光光源7で硬化光をインク像に照射し硬化させる。このとき、インクは記録媒体5と加圧ローラ6とに挟まれてほぼ密閉状態となっているので硬化効率が高い。そして転写と同時にインク像は硬化するので、記録直後でも記録物の耐擦性は高い。さらに、インク像の表面は中間転写体1の表面にならって平滑化するので、記録物の表面平滑性ないしは光沢性が非常に優れたものとなる。
【0026】
その後、中間転写体1上に残留物等がある場合は次のインク像形成のためにクリーニングユニット7により除去し、清浄面としたのち以上の画像形成工程が繰り返される。
【0027】
次に、本発明に係る工程a〜cと、これに適用可能な要素とを詳述する。
【0028】
(2.1)中間転写体上に、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像を形成する工程(a)
中間転写体
本発明に適用される中間転写体1に適する材料は、中間転写体1の裏面側から照射を行う場合、インク硬化に用いる光波長の透過性が高いことが望ましい。中間転写体の硬化光の透過率は高いほど好ましいが、好ましくは20%以上、さらに好ましくは60%以上である。本発明の概念によれば、インク像を中間転写体と記録媒体とで挟んだ状態でエネルギー線の照射が行われればよいので、記録媒体5の側から照射を行うこともできる。また、中間転写体と記録媒体との双方を光透過性とし、両面からインクが層に対し照射することも好ましい形態の一つであり、図1はその形態を示している。
【0029】
また、中間転写体1の表面は、所定の弾性を有し、離型性が高いゴムやプラスチックなどを用いることが好ましい。タイプAのデュロメータ(JIS K 6253準拠)で測定したときに硬度10〜100°の範囲の弾性を持つものを用いれば効果が得られ、さらには40〜80°の範囲のものであれば、殆どの記録用紙に対応できる。
【0030】
また、離型性とは、インク像が中間転写体表面に固着することなく除去可能である状態を言う。中間転写体1の表面に離型性がない場合、光照射時にインクには硬化反応と共に接着性が生じるので、記録媒体5と中間転写体1がインク硬化に伴い接着してしまう恐れがある。本発明で好適に用いられる離型性材料は、表面エネルギーが30mJ/m2以下であることが好ましく、具体的には、シリコーンゴムやフロロシリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。フッ素もしくはシリコーン材料で弾性体表面をコーティングすることでも好ましい特性を得ることができる。
【0031】
ただし、離型性が高いと言うことは一般的に撥水性も高くなり、インクなどの画像形成材料を弾いてしまいやすいので、必要に応じて表面処理を行うことが好ましい。表面処理としては、界面活性剤塗布、紫外線もしくはエキシマ照射、フレーム処理、オゾン処理、コロナもしくはプラズマ処理などがあげられる。中でも、シリコーンゴムにプラズマ処理を施した表面は本発明に好適である。
【0032】
また、中間転写体の形状としては、図1に示したようなベルト状とするほか、ローラ(ドラム)状やシート状等、少なくとも記録媒体と接触しうる形状であれば制限は受けない。図2はドラム形状の中間転写体21を適用した場合を例示している。また、バッチ処理とはなるが、パッド印刷のようなゴムパッド形状であっても適用可能である。
【0033】
なお、上述したように中間転写体の表面は離型性が高いことが好ましく、また離型性の表面を有していればインク像の完全転写が見込めるので、記録物の画像表面は中間転写体の表面にほぼならった形状となる。すなわち、平滑な表面を有する中間転写体を用いれば記録媒体上の画像も平滑となり、高い光沢性が得られる。逆に、平滑性の小さい表面を持つ中間転写体を用いれば意図的に光沢のない(マットな)画像を作り出すこともできる。さらに、中間転写体表面の一部をマットとすることで、所望の部分のみをマット画像とすることもできる。
【0034】
また、中間転写体1の表面層が離型性表面であった場合、クリーニングユニット7は不要となるか、もしくはクリーニングユニット7の軽微な動作で済ませることができる。
【0035】
第一の液体
本発明において、インク像形成時のインクの流れや混色防止、および転写・光照射時の画像乱れを防止するために、インク像の形成に先立って第一の液体を塗布しておくことが好ましい。第一の液体は反応液とも呼ばれ、中間転写体1上に付与されたインクと接触・反応することでインク滴の移動を制限する効果がある。これら反応液を用いない場合、揮発成分の蒸発などを利用することも可能であるが、生産性(速度)の面では不利となる。
【0036】
インクの流動性を低下させる反応としては、インクの分散破壊(凝集、析出、分離)、増粘、濃縮等が挙げられ、これらを加速させる作用を持つ材料を反応液として付与する。用いられる反応材料は画像形成に使用するインクの種類によって適宜に選択することができる。その形態としては、液体、固体、さらに場合によっては気体であっても目的を達成することができる。例えば、増粘させるのであればインク溶剤に対しソルベントショックを引き起こすような溶剤が、濃縮させるのであれば蒸発を促進させる共沸溶剤等が挙げられる。中でも、水系インクを用いた場合の凝集反応は本発明に好適であり、顔料インクに対する金属イオンは本発明の反応液として好ましい。
【0037】
金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+およびZn2+等の二価の金属イオンや、Fe3+およびAl3+等の三価の金属イオンが挙げられる。一価の金属イオンでも反応は起こるが速度や強度の面から使用が限定される。そして、これらのイオンを付与する場合には、金属塩水溶液として付与することが望ましい。金属塩の陰イオンとしては、Cl-、NO3-、SO42-、I-、Br-、ClO3-、RCOO-(Rは、アルキル基)等が挙げられる。また、使用するインクと逆性を持つ材料は反応液として用いることができる。たとえばインクがアニオン性もしくはアルカリ性であれば、その逆性であるカチオン性もしくは酸性材料が反応液として使用できる。
【0038】
第一の液体の付与手段(塗布装置2)としての限定はなく、液体材料に応じて適宜選択すればよい。例えば液体であれば、図1で示したロールコーターが一例である。その他の塗布方法としては、ドクターコート、ダイコート、ワイヤーバーコート、グラビアローラー等の接触式塗布方法や、スプレーコート等の非接触塗布方法を用いることもできる。また非接触塗布方法の他の例として、インクジェット方式による液滴付与を行うものでもよい。インクジェット方式を用いると簡便であり、かつ必要な部分のみに必要な量だけ付与することができるなど好適である。また、適用の範囲は限定されるが、スピンコートや引き上げ塗布、エアナイフによる塗布等であっても特性的には問題なく使用できる。また、これらを組み合わせてもよい。
【0039】
なお第一の液体を用いる場合、この第一の液体に光硬化性成分を添加することも可能であり、この場合はインク中に光硬化性成分が無くとも本発明を実施し得る。すなわち、本発明における「活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像」とは、上記実施形態では当該成分を予め含有しているインクを中間転写体1に付与することにより形成されたものを意味する。しかしインクが光硬化性成分を含有したものでなくても、第一の液体が光硬化性成分を含有している場合には、両者の混合によって、中間転写体1上に形成されたインク像は「活性エネルギー線の照射により硬化する成分」を含むものとなる。つまり本発明に言う「活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像」とは、予め光硬化性成分を含むインクの付与によって形成されたものだけでなく、付与後に後発的に当該成分を含むに至ったものをも意味する。但し、いずれの場合でも、インクジェットヘッド3はインク像を形成するためのインクの付与に用いられるものである。
【0040】
インクジェットヘッド
使用されるインクジェットヘッド3についての制限はない。インクを吐出するために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを用いるもの(サーマルジェット方式)や、機械的エネルギーを用いるもの(ピエゾ方式)などを利用可能である。また、オンデマンドタイプだけでなく、コンティニュアスタイプのインクジェット記録方式などを、適宜に選択して使用することができる。さらに、インクジェットヘッドの形態としては、例えば図1の構成に関して言えば、図面に交差する方向にインク吐出口を配列してなるラインヘッド形態のインクジェットヘッドを用いるものとすることができる。また、図面に交差する方向とは異なる方向、例えば中間転写体1の搬送方向の所定範囲に吐出口が配列されたヘッドを用い、これを図面に交差する方向に移動させながら記録を行うものでもよい。加えて、画像形成に使用するインクの色に応じた数のヘッドを用いることができる。
【0041】
また、記録する画像についても制約はなく、文字やイラスト、自然画のほか、単純なパターンや電子回路等の工業パターン等、あらゆるものに対応できる。画像を形成する際は、転写により像が反転することを考慮して、ミラー画像を形成すべくインク吐出を行うようにすればよい。
【0042】
インク
使用されるインクは特に限定されるものではない。場合によっては、着色剤(色材)を含有しない透明インクが用いられる場合がある。また、光硬化性成分を予め含有させたインクだけでなく、上記第一の液体との混合によって結果的に光硬化性成分を含有するに至るものであってもよい。
【0043】
但しいずれの場合であっても、転写・エネルギー線照射時にインクには流動性が少ない方が好ましい。従って、インクジェットヘッド3を用いた中間転写体上へのインク像形成からそのインク像に記録媒体を圧着するまでの間に、余剰液体成分除去装置4によってインク像成分中の最終画像形成成分ではない液体成分を減少させておくことが望ましい。この場合の「最終画像形成成分ではない液体成分」とは主にインクの溶媒成分のことであり、特に限定はないが安全面から水を用いた水系インクが好適である。
【0044】
一方、「最終画像形成成分ではない液体成分」をほとんど含まないインク、すなわちインクジェットヘッド3から付与されたインクのほぼ全てが硬化して最終的に画像を形成する100%硬化型のインクを用いる場合にも本発明は好適に用いられるのは勿論である。この場合、余剰液体成分除去装置4は不要となるか、またはこれを作動させる必要がなくなる。
【0045】
インクの着色剤としては、一般的に染料や顔料、またこれらの分散体が好適に用いられる。特に、顔料分散体は金属塩を第一の液体の反応材料に用いた場合に好適である。
【0046】
染料としても限定を受けず、一般的に使われる染料であれば問題なく用いることができる。例としては、C.Iダイレクトブルー6,8,22,34,70,71,76,78,86,142,199、C.Iアシッドブルー9,22,40,59,93,102,104,117,120,167,229、C.Iダイレクトレッド1,4,17,28,83,227、C.Iアシッドレッド1,4,8,13,14,15,18,21,26,35,37,249,257,289、C.Iダイレクトイエロー12,24,26,86,98,132,142、C.Iアシッドイエロー1,3,4,7,11,12,13,14,19,23,25,34,44,71、C.Iフードブラック1,2、C.Iアシッドブラック2,7,24,26,31,52,112,118等が挙げられる。
【0047】
顔料としても特に限定を受けず、一般的に使われる顔料であれば問題なく用いることができる。例としては、C.Iピグメントブルー1,2,3,15:3,16,22、C.Iピグメントレッド5,7,12,48(Ca),48(Mn)57(Ca),112,122、C.Iピグメントイエロー1,2,3,13,16,83、カーボンブラックNo2300,900,33,40,52、MA7,8,MCF88(三菱化成製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL330R、660R、MOGUL(キャボット)、Color Black FW1,FW18,S170,S150,Printex35(デグッサ製)等が挙げられる。
【0048】
分散樹脂としては、水溶性で重量平均分子量が1000から15000程度のものが好適に使用される。例としては、スチレンおよびその誘導体、ビニルナフタレンおよびその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸およびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、イタコン酸およびその誘導体、フマール酸およびその誘導体からなるブロック共重合体あるいはランダム共重合体、またこれらの塩等が挙げられる。また、分散樹脂を用いず、光硬化性樹脂を単独で用いることもできる。
【0049】
また本発明は、インクの形態による限定を受けず、自己分散タイプ、樹脂分散タイプ、マイクロカプセルタイプ等、いずれの形態のものも適宜使用可能である。
【0050】
活性エネルギー線の照射により硬化する成分としては未硬化の状態では液体であり、硬化光照射により固体となる成分を用いる。例としては一般的な紫外線硬化樹脂を用いることができる。紫外線硬化性樹脂は水に溶けないものが多いが、本発明に好適に用いられる水系インクに適応できる材料としては、その構造に紫外線で硬化可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも2官能以上もち、かつ親水性の結合基を持つことが好ましい。親水性をもつための結合基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、およびこれらの塩、エーテル結合、アミド結合などが挙げられる。なお、本発明に用いられる材料は水に5重量%以上溶解することが好ましい。
【0051】
また活性エネルギー線の照射により硬化する成分と組み合せて用いられる活性エネルギー線硬化触媒としては、αヒドロキシケトン、ベンジルケタール、アシルフォスフィン、チオキサントン等の骨格をもち、かつ反応性を最大限に発揮するためにも親水性であることが好ましい。親水性をもつための結合基としては例えば、水酸基、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、およびこれらの塩、エーテル結合、アミド結合などが挙げられそのいずれも好適に用いることができる。なお、本発明に用いられる材料は水に1重量%以上溶解することが好ましい。
【0052】
さらに、反応速度を向上させるために光の吸収波長を広げる役割を有する増感材を併用することも極めて好ましい形態の一つである。
【0053】
インク中には、インクジェットヘッドの吐出性や乾燥性を制御するために有機溶剤が含まれていてもよい。記録媒体に転写するときのインク像は、ほぼ色材と有機溶剤だけとすることが好ましく、その最適値になるよう処方を設計する。使用する有機溶剤は高沸点で蒸気圧の低い水溶性の材料が好ましく、例としてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン等が挙げられる。また、粘度,表面張力等を調整する成分としてエチルアルコールやイソプロピルアルコール等のアルコール類や各種界面活性剤を添加することもできる。
【0054】
配合比についても限定を受けることなく、選択したインクジェット方式やヘッドの吐出性,ノズル径などから吐出可能な範囲で調整可能である。一般的には色材0.1〜10%、樹脂0.1〜10%、溶剤5〜40%、界面活性剤0.1〜5%であり、残りは純水である
【0055】
(2.2)中間転写体上のインク画像の流動性を低下させる工程(b)
これは、中間転写体1上のインク像の流動性をプロセス的に低下させる工程である。このプロセスは、次の転写・活性エネルギー線照射工程でのインク像の乱れを低減させるために重要である。
【0056】
本発明の一実施形態において好適に用いられる方法は、最終画像形成成分ではない水などの液体成分を蒸発により減少させる蒸発濃縮であり、具体的手段としては余剰液体分除去促進装置4のような送風もしくは加熱を行うものが用いられる。また、これらを組み合わせて用いることもできる。さらに、中間転写体1を適切に温度調節することも効果的であり、送風する空気の湿度をコントロールすることも有効である。さらに、これらの蒸発濃縮を促進する手段以外にも、例えばインク像を半硬化もしくは部分硬化の状態にすることで流動性を低下させることも効果的である。
【0057】
但し、インク画像の流動性を完全に失わせてしまうと表面粘着性を失ってしまい、記録媒体への接着性が弱くなってしまうことがある。よって、転写時のインク像には若干のインク流動性を残すことが望ましい。記録媒体の表面特性やインク画像の膜厚、転写条件などによって最適値は異なるが、100から5000mPa・s程度の範囲の粘度にすることが好ましい。
【0058】
また、蒸発濃縮を用いた場合でも、液体成分を蒸発させすぎるとインク像の記録媒体への密着性が不足してしまうことがある。これを防ぎ、かつプロセスマージンを拡大するためにも蒸発特性の異なる複数の材料をインクもしくは反応液に添加することが望ましい。具体的には、沸点の異なる溶剤や、蒸気圧の異なる高沸点溶剤を用いることが好適である。
【0059】
(2.3)記録媒体に中間転写体上のインク画像を接触・転写させつつ活性エネルギー線を照射する工程(c)
十分に流動性を低下させたインク像に記録媒体を接触させ、インク硬化に用いる活性エネルギー線を照射する。この場合、中間転写体1および記録媒体5の一方が活性エネルギー線の透過性を有していればその一方の側から照射を行うことが可能であり、さらに双方が活性エネルギー線の透過性を有していればその双方の側から照射を行うこともできる。記録媒体が活性エネルギー線の透過性を有していない場合も考慮し、中間転写体1の側から照射を行うことができるようにすれば、より多品種の記録媒体に対応することができる。また、図1および図2に示したように、インクは中間転写体と記録媒体に挟まれた状態で硬化光を受光すれば、高速で、しかも黒色のような光を通しにくい色のインクであっても効率的に硬化させることができる。
【0060】
なお、本発明ないしは実施形態の画像記録方法は転写時に同時にインクを硬化させてしまうが、より強固なインク画像の硬化を求める場合は記録物に対し追加的に光照射もしくは加熱を行うことにより、最終的な硬化度を高めるようにしてもよい。また活性エネルギー線の照射と同時に別の硬化促進エネルギー、例えば加熱エネルギー等を同時に印加することも勿論可能であり、かつこれが好ましいこともある。
【0061】
(3)実施例
以下に、本発明のより具体的な実施例および比較例を説明する。なお、以下の説明において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0062】
(3.1)実施例1
中間転写体上に、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像を形成する工程(a)
本実施例では、中間転写体基材として、0.2mmの透明PETフィルム表面に、ゴム硬度40°のシリコーンゴム(信越化学製 KE42TS)を0.2mmの厚さでコーティングした材料を用いた。この中間転写体の表面平滑性はRa=0.062、紫外光透過率=61%であった。
【0063】
まず、中間転写体基材表面に平行平板型大気圧プラズマ処理装置(積水化学製 APT−203)を用いて表面親水化を行った。
【0064】
(表面改質条件)
使用ガス;流量:air;1000cc/min
2 ;6000cc/min
入力電圧:230V
周波数:10kHz
処理速度:200mm/min
次いで、ロールコーターを用いて中間転写体上に下記組成の反応液を塗布した。
【0065】
(反応液組成)
MgNO3・6H2O:10%
界面活性剤(川研ファインケミカル製 アセチレノールEH):1%
ジエチレングリコール:5%
純水:84%
そして、インクジェットヘッド3(ノズル密度1200dpi、吐出量4.8pl、駆動周波数12kHz)にて、4色のインクを用いてミラー反転させた文字画像を形成した。ここでは、下記処方のインク(色材として各色顔料をそれぞれ含む4色のインク)を用いた。
【0066】
(インク処方)
・下記の各顔料 : 3部
ブラック:カーボンブラック(三菱化学製 MCF88)
シアン :ピグメントブルー15
マゼンタ:ピグメントレッド7
イエロー:ピグメントイエロー74
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体
(酸価180、重量平均分子量4000) : 1部
・光硬化性樹脂(水溶性3官能アクリレート) : 2部
【0067】
【化1】

【0068】
・光反応開始剤(水溶性アシルホフィン) : 0.2部
【0069】
【化2】

【0070】
・ジエチレングリコール :6部
・エチレングリコール :3部
・界面活性剤(川研ファインケミカル製アセチレノールEH)
:1部
・イオン交換水 :83.8部
【0071】
中間転写体上のインク画像の流動性を低下させる工程(b)
中間転写体を裏面からヒータで加熱し、中間転写体温度を60℃に保ちつつ、インク画像表面に60℃の温風を10m/secの風速で4秒間送風した。
【0072】
記録媒体に中間転写体上のインク画像を接触・転写させつつ活性エネルギー線を照射する工程(c)
中間転写体上のインク像に記録媒体を加圧ローラーにて接触させつつ、中間転写体裏面から紫外線ランプ(波長365nm、強度6.5mw/cm2)で硬化光を39mJ照射し、記録媒体を中間転写体から剥離した。記録媒体には日本製紙製オーロラコート73.3g/m2を用いた。この結果、記録媒体上には高品質な画像が形成された。また、転写後の中間転写体表面には残存インクが殆どなく、そのまま次のインク像をけいせいしても、悪影響は見られなかった。
【0073】
なお、記録物の光沢度は52度(HORIBA製 IG−330で測定)、耐擦性は加重1200g(新東科学製 トライポギアによるアクリルボールテスト)であった。
【0074】
(4)比較例
(4.1)比較例1
実施例1において記録媒体に接触させずに中間転写体上のインク像に対し大気開放下で硬化光39mJ照射した後、記録媒体に圧接転写した。この結果、記録物の光沢度は50度であり、実施例1とほぼ同じ値を示したが、耐擦性は200g以下であって、測定できなかった。
【0075】
(4.2)比較例2
比較例1と同様にして硬化光照射量を160mJとし、記録物を得た。光沢度は50度であり、実施例1とほぼ同じ値を示したが、硬化光照射量を4倍にしたにもかかわらず、耐擦性は500gであり、実施例1の半分以下であった。
【0076】
(4.3)比較例3
実施例1において、転写時に硬化光を当てずに記録媒体に画像を転写させ、得られた記録物表面に、大気開放下で硬化光を39mJ照射した。光沢度は52度と実施例1とほぼ同じであったが、インク画像表面はべたつきが残った未硬化の状態であって、耐擦性は測定不可能であった。
【0077】
(4.4)比較例4
比較例3と同様にして硬化光照射量を400mJとして記録物を得た。光沢度は53度と実施例1とほぼ同じであったが、硬化光照射量を10倍にしたにもかかわらず、耐擦性は600gであり、実施例1の半分程度であった。
【0078】
(4.5)比較例5
実施例1において、中間転写体表面に記録媒体を貼り付け、加圧転写を行わずに記録物を得た。光沢度は39度と実施例1に比べ明らかに低く、インク画像表面はべたつきが残った未硬化の状態であって、耐擦性は測定不可能であった。
【0079】
(4.6)比較例6
比較例3と同様にして硬化光照射量を800mJとして記録物を得た。光沢度は21度と明らかに低光沢であり、硬化光照射量を20倍にしたにもかかわらず、耐擦性は700gであり、実施例1に大きく及ばなかった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置を示す模式図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0081】
1、21 中間転写体
2 塗布装置
3 インクジェットヘッド
4 余剰液体分除去促進装置
5 記録媒体
6 加圧ローラ
7 硬化光光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体上に形成された、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像に対し記録媒体を接触させることで前記インク像を前記記録媒体に転写する画像形成方法であって、
インクジェットヘッドを用い、前記インク像を形成するためにインクを付与する工程と、
前記中間転写体上の前記インク像に前記記録媒体が接触している状態で、前記インク像に対し前記活性エネルギー線を照射する工程と、
を具えたことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記中間転写体および前記記録媒体の少なくとも一方が前記活性エネルギー線を透過することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記インクが前記成分を含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記インク像の形成に先立って、前記中間転写体上に、前記インク像を形成するために付与されたインクの移動を制限する液体を付与することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記液体が前記成分を含有していることを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記液体が金属イオンを含む水溶液であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記インク像が形成されてから前記記録媒体に接触するまでの間に、当該インク像から、最終的に前記記録媒体に転写されるインク像の形成成分ではない液体成分を減少させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
中間転写体上に形成された、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含むインク像に対し記録媒体を接触させることで前記インク像を前記記録媒体に転写する画像形成装置であって、
インクジェットヘッドを用い、前記インク像を形成するためにインクを付与する手段と、
前記中間転写体上の前記インク像に前記記録媒体が接触している状態で、前記インク像に対し前記活性エネルギー線を照射する手段と、
を具えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−143073(P2010−143073A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322582(P2008−322582)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】