説明

画像形成方法及びインクジェット記録装置

【課題】 本発明の目的は、硬化膜の臭気を低減し、更に硬化膜の記録媒体との密着性、硬化性を向上させた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【解決手段】 光硬化性成分としてカチオン硬化性モノマーを含有する1種以上のインクを記録媒体上に吐出させる記録ヘッドと、該記録媒体上に着弾したインクに光を照射してインクを硬化させる光照射装置とを用いた画像形成方法において、1回の光照射によって硬化される総インク量が10.0g/m2未満であり、かつ、該インクが消臭能を有する化合物を含有することを特徴とする画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線硬化型組成物及び活性光線硬化型インクを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線や電子線などの活性エネルギー線または熱により硬化する硬化組成物は、プラスチック、紙、木工及び無機質材等の塗料、接着剤、印刷インキ、印刷回路基板及び電気絶縁関係等の種々の用途に実用化されている。近年、その中でも印刷インキ、塗料、接着剤等ではより一層の耐候性と付着性の改善が望まれている。また、これらを使用したインクジェット用インクとしては、紫外線で硬化する紫外線硬化型ジェトインクがある。この紫外線硬化インクを用いたインクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、例えば、特開平6−200204号、特表2000−504778号の各公報において、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている。
【0003】
ラジカル重合性化合物を用いたインクは酸素阻害作用を受けるため、インク液滴量が少ない場合には硬化阻害が起こりやすい。また、カチオン重合性化合物を用いたインクは酸素阻害作用を受けることがなく、硬化感度に優れている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかしながら、硬化の際の臭気については更なる改良が望まれている。
【0004】
上記臭気に関する課題に対し、カチオン重合性化合物の硬化物の臭気の原因は、光照射時における光重合開始剤(例えば、スルホニウム塩光開始剤等)の分解物が起因しており、それを防止するために防臭剤を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、本発明者が検討を進めた結果、特許文献5に記載のように防臭剤を添加するだけでは臭気改良は不十分であることが判明し、更なるな改良が求められている。
【特許文献1】特開2001−220526号公報 (請求項、実施例)
【特許文献2】特開2002−188025号公報 (請求項、実施例)
【特許文献3】特開2002−317139号公報 (請求項、実施例)
【特許文献4】特開2003−55449号公報 (請求項、実施例)
【特許文献5】特表2005−501149号公報 (請求項、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、硬化膜の臭気を低減し、更に硬化膜の記録媒体との密着性、硬化性を向上させた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0007】
(請求項1)
光硬化性成分としてカチオン硬化性モノマーを含有する1種以上のインクを記録媒体上に吐出させる記録ヘッドと、該記録媒体上に着弾したインクに光を照射してインクを硬化させる光照射装置とを用いた画像形成方法において、1回の光照射によって硬化される総インク量が10.0g/m2未満であり、かつ、該インクが消臭能を有する化合物を含有することを特徴とする画像形成方法。
【0008】
(請求項2)
前記1回の光照射によって硬化される総インク量が5.0g/m2未満であることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【0009】
(請求項3)
前記インク中での前記消臭能を有する化合物の含有量が、0.01質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【0010】
(請求項4)
光硬化性成分である前記カチオン硬化性モノマーが、少なくともエポキシ化合物及びオキセタン環を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0011】
(請求項5)
前記インクを硬化させる時の絶対湿度が、0.014kg/kg未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0012】
(請求項6)
前記絶対湿度が0.010kg/kg未満であることを特徴とする請求項5記載の画像形成方法。
【0013】
(請求項7)
光硬化性成分としてカチオン硬化性モノマーを含有する1種以上のインクを記録媒体上に吐出させる記録ヘッドと、該記録媒体上に着弾したインクに光を照射してインクを硬化させる光照射装置とを備えたインクジェット記録装置において、1回の光照射によって硬化される総インク量が10.0g/m2未満であり、かつ、該インクが消臭能を有する化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【0014】
(請求項8)
前記1回の光照射によって硬化される総インク量が5.0g/m2未満であることを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録装置。
【0015】
(請求項9)
前記インク中での前記消臭能を有する化合物の含有量が、0.01質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェット記録装置。
【0016】
(請求項10)
光硬化性成分である前記カチオン硬化性モノマーが、少なくともエポキシ化合物及びオキセタン環を有する化合物であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【0017】
(請求項11)
前記インクを硬化させる時の絶対湿度が、0.014kg/kg未満であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【0018】
(請求項12)
前記絶対湿度が0.010kg/kg未満であることを特徴とする請求項11記載のインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、硬化膜の臭気を低減し、更に硬化膜の記録媒体との密着性、硬化性を向上させた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、光硬化性成分としてカチオン硬化性モノマーを含有する1種以上のインク、すなわち活性光線硬化型インクを記録媒体上に吐出させる記録ヘッドと、該記録媒体上に着弾したインクに光を照射してインクを硬化させる光照射装置とを用い、1回の光照射によって硬化される総インク量が10.0g/m2未満で、かつ該インクが消臭能を有する化合物を含有することを特徴とする画像形成方法あるいはインクジェット記録装置により、硬化膜の臭気を低減し、更に硬化膜の記録媒体との密着性、硬化性を向上させた画像形成方法及びインクジェット記録装置を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0022】
活性光線硬化型インクを用いた画像形成においては、耐久性に優れた皮膜形成と環境適性とを両立する方法の開発が長い間検討されていた。現在、迅速に重合し、優れた皮膜形成させる手段の一つとして、インク中に光重合開始剤として芳香族スルホニウム塩錯体を使用することが知られている。このスルホニウム塩系光重合開始剤は、活性光線の照射を受けた際にカチオンを放出し、インク中に含まれているカチオン硬化性モノマーのカチオン重合または架橋を開始させる機能を有している。これらスルホニウム塩系光重合開始剤は、多くの優れた特性を備えている反面、スルホニウム塩重合開始剤は、活性光線の照射による分解から生じる臭気(例えば、メルカプタンおよびその他の有機硫黄化合物等)を発生するという課題を抱えている。
【0023】
本発明者は、上記のような光重合開始剤、例えば、スルホニウム塩系光重合開始剤に起因する臭気を抑制あるいは低減する方法について検討を行った結果、消臭能を有する化合物を用いると共に、その消臭能を有する化合物の消臭効果をいかんなく発揮させる観点から、記録媒体上に付与する総インク量の最適条件を精査した結果、1回の光照射あたりの総インク付与量を10.0g/m2未満とすることにより、優れた硬化膜の形成を行うと共に、臭気を低減できることができることを見出した。
【0024】
更に、上記請求項1または7で規定する構成に加え、1回の光照射によって硬化される総インク量を更には5.0g/m2未満とすること、インク中での消臭能を有する化合物の含有量を0.01質量%以上、20質量%以下とすること、光硬化性成分であるカチオン硬化性モノマーとして、少なくともエポキシ化合物及びオキセタン環を有する化合物を用いること、あるいはインクを硬化する際の環境として絶対湿度を0.014kg/kg未満、より好ましくは絶対湿度を0.010kg/kg未満とすることにより、本発明の上記目的効果がより一層発揮することできる。
【0025】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0026】
《インク:活性光線硬化型インク》
はじめに、本発明に係るインクについて説明する。
【0027】
本発明に係るインクは、光硬化性成分としてカチオン硬化性モノマーを含有すると共に、消臭能を有する化合物を含有することを特徴とする。
【0028】
〔消臭能を有する化合物〕
本発明に係る消臭能を有する化合物とは、光照射時に発生する不快な臭気を防止、低減できる効果を備えていれば特に制限はないが、本発明においては防臭剤、消臭剤または香料であることが好ましい。
【0029】
防臭剤としては、光重合開始剤に起因する臭気を防止する観点からは、ラジカル禁止剤またはフェノール系化合物を挙げることができる。
【0030】
ラジカル禁止剤とは、ラジカル重合を禁止または停止するために、ラジカル重合性組成物に添加された化合物である。
【0031】
ラジカル禁止剤としては具体的には、重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤が挙げられる。
【0032】
重合禁止剤は、光照射による重合プロセスを遅らせる、あるいは禁止する添加剤である。安定剤は、活性光線硬化型組成物を安定化させる添加剤である。
【0033】
酸化防止剤は、有機物質が大気中酸素によってヒドロペルオキシド(容易に開裂してラジカルを生成する)になるのを阻止する。特に、エチレン性不飽和オリゴマーおよびオリゴマーに対する添加剤として使用されたときに、この過程を阻止する酸化防止剤は、通常、ラジカル禁止剤と称されている(エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジー第3巻(第4版、ウィリー・インターサイエンス、ニューヨーク、1992年)J.I. Kroschwitz編の第424〜447頁のM Dexterによる「アンチオキシダンツ(Antioxidants)」)。
【0034】
従来より、多数のラジカル禁止剤が知られており、例えば、U.V. and E.B. Curing Formulations for Printing Inks, Coatings and Paints, SITA−Technology(ロンドン、1988年)の第22頁(R. HolmanとP. Oldringによる)に記載されている。
【0035】
また、他のラジカル禁止剤としては、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジー(Encyclopedia of Chemical Technology)第3巻(第4版、ウィリー・インターサイエンス、ニューヨーク、1992年)J.I. Kroschwitz編の第424〜447頁のM. Dexterによる「アンチオキシダンツ」の表4に挙げられており、モルフェノール類としては、例えば、次のようなCAS登録番号のもの:128−39−2、128−37−0、4130−42−1、4306−88−1、1879−09−0、110553−27−0、61788−44−1、17540−75−9、2082−79−3、103−99−1、88−27−7、991−84−4を挙げることができる。
【0036】
また、ジフェノール類としては、例えば、次のようなCAS登録番号のもの:119−47−1、88−24−4、118−82−1、35958−30−6、36443−68−2、85−60−9、96−69−5、96−66−2、35074−77−2、41484−35−9、23128−74−7、65140−91−2、30947−30−9、70331−94−1、32687−78−8、32509−66−3、105350−68−3を挙げることができる。
【0037】
また、ポリフェノール類としては、例えば、次のようなCAS登録番号のもの:68610−51−5、6683−19−8、1709−70−2、27676−62−6、1843−03−4、34137−09−2、40601−76−1を挙げることができる。
【0038】
また、ヒドロキノン類としては、例えば、次のようなCAS登録番号のもの:79−74−3、1948−33−0、121−00−6を挙げることができる。
【0039】
また、ジアリールアミン類としては、例えば、次のようなCAS登録番号のもの:90−30−2、68442−68−2、68259−36−9、101−67−7、10081−67−1を挙げることができる。
【0040】
また、アルキル化p−フェニレンジアミン類としては、例えば、次のようなCAS登録番号のもの:793−24−8、101−72−4、69796−47−0、15233−47−3、101−87−1、74−31−7、93−46−9、3081−14−9、139−60−6、793−24−8、103−96−8、100−93−6を挙げることができる。
【0041】
また、ジヒドロキノン類としては、例えば、次のようなCAS登録番号のもの:26780−96−1、89−28−1、91−53−2を挙げることができる。
【0042】
また、チオエーテル類としては、例えば、次のようなCAS登録番号のもの:2500−88−1、123−28−4、693−36−7、16545−54−3、10595−72−9、29598−76−3、53988−10−6、61617−00−3、26523−78−4、26741−53−7、3806−34−6、31570−04−4、38613−77−3、118337−09−0を挙げることができる。
【0043】
また、ヒンダードアミン類としては、例えば、次のようなCAS登録番号のもの:70624−18−9、82541−48−7、106990−43−6を挙げることができる。
【0044】
重合禁止剤の具体的化合物としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メトキシベンゾキノン、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル類、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、などが挙げられ、特にp−メトキシフェノール、カテコール類、フェノール類が好ましい。
【0045】
カテコール類としては、例えば、p−t−ブチルカテコールが挙げられる。
【0046】
また、フェノール類としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、2,2′メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4′ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルベンジル)4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2′−メチル−5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3′−5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートなどが挙げられ、本発明においては油溶性であることが好ましい。
【0047】
また、本発明に用いることのできる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、ホスフォナイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。本発明において、フェノール系酸化防止剤としては特に限定されないが、下記の構造を部分構造として有する化合物やハイドロキノン類が例示される。
【0048】
【化1】

【0049】
式中、R1は低級アルキル基を、R2は水素原子又は低級アルキル基を表し、nは1〜2の整数を表す。中でも下記一般式〔I〕または一般式〔II〕で表される構造を有するものを用いることが好ましい。
【0050】
【化2】

【0051】
式中、R3は低級アルキル基を、R4、R5は水素原子又は低級アルキル基を、nは1〜4を表す。nが1の場合は、Xは単なる結合又はアルキレンカルボニルオキシ基を表し、Xが前者を表すときはR6は水素原子、アルコキシ基又はアルコキシ基もしくはアミノ基が置換していることもある低級アルキル基を表し、Xが後者を表す時はR6は水素原子またはアルキル基を表す。nが2〜4の場合は、Xはアルキレンカルボニルオキシ基を表し、R6は残基内にヘテロ原子を含むこともある2〜4価のアルコール残基を表す。またnが3の場合は、Xはアルキレン基で、R6はイソシアヌル酸残基であることもできる。
【0052】
【化3】

【0053】
式中、R3、R4は上記と同じ意味を、Yはアルキレン基または硫黄原子を表す。R7は水素原子、アクリル酸残基又はメタクリル酸残基を表す。
【0054】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、4,4′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、3,9′−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−4,6−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(4−sec−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、ビス[2−t−ブチル−4−メチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2′−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン等が挙げられる。
【0055】
本発明において、イオウ系酸化防止剤としては特に限定されないが、下記の一般式(1)、一般式(2)で表される化合物が例示される。
【0056】
一般式(1)
S−(CH2CH2−COOR32
式中、R3はアルキル基を、好ましくはC12〜C18のアルキル基を表す。
【0057】
一般式(2)
(R4S−CH2CH2−COOCH24−C
式中、R4はアルキル基を、好ましくはC12のアルキル基を表す。
【0058】
イオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、テトラキス(3−ラウリルチオプロピオニルオキシメチル)メタン等が挙げられる。
【0059】
本発明において、ホスファイト系酸化防止剤及びホスフォナイト系酸化防止剤としては特に限定されないが、下記一般式(3)〜(8)で表される化合物が挙げられる。
【0060】
一般式(3)
P−(OR53
式中、R5は置換されていてもよいアルキル基又はアリール基を表す。
【0061】
【化4】

【0062】
式中、R6は置換されていてもよいアルキル基又はアリール基を表し、R7、R8及びR9は、各々独立に水素原子又はC1〜C8のアルキル基を表し、R10はフッ素原子又はアルキル基を表し、Xは単結合、酸素原子又は窒素原子を表す。
【0063】
【化5】

【0064】
式中、R11及びR12は各々独立に水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又はアルキル基を表す。但し、R13が水素原子である場合、
【0065】
【化6】

【0066】
という共鳴構造が存在し、ホスフィネート化合物になっている。
【0067】
ホスファイト系酸化防止剤及びホスフォナイト系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール・ジホスファイト・ジステアリルペンタエリスリトール・ジホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、4,4′−イソプロピリデンビス(フェニルジアルキルホスファイト)、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスフォナイト等が挙げられる。
【0068】
本発明において、ヒンダードアミン系酸化防止剤としては特に限定されないが、下記の構造を部分構造として有する化合物が例示される。
【0069】
【化7】

【0070】
式中、R14は水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を表す。
【0071】
ヒンダードアミン系酸化防止剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチル{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔(6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、N,N′−4,7−テトラキス〔4,6−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が挙げられる。
【0072】
他に酸化防止剤としては、例えば、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号の各公報に記載の酸化防止剤、特開昭61−154989号公報に記載のヒドラジド類、特開昭61−146591号公報に記載のヒンダードアミン系酸化防止剤、特開昭61−177279号公報に記載の含窒素複素環メルカプト系化合物、特開平1−115677号公報および同1−36479号公報に記載のチオエーテル系酸化防止剤、特開平1−36480号公報に記載の特定構造のヒンダードフェノール系酸化防止剤、特開平7−195824号公報および同8−150773号公報に記載のアスコルビン酸類、特開平7−149037号公報に記載の硫酸亜鉛、特開平7−314882号公報に記載のチオシアン酸塩類など、特開平7−314883号公報に記載のチオ尿素誘導体など、特開平7−276790号公報および同8−108617号公報に記載の糖類、特開平8−118791号公報に記載のリン酸系酸化防止剤が、特開平8−300807号公報に記載の亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩などが、また、特開平9−267544号公報に記載のヒドロキシルアミン誘導体等を酸化防止剤として挙げることができる。更に、特開2000−263928号公報等に記載のジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物なども用いることができる。
【0073】
本発明に係る酸化防止剤は当業者公知の方法に従って合成して得ることができ、また市販品として容易に入手することができる。
【0074】
本発明において、酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましく、フェノール系酸化防止剤とホスファイト系酸化防止剤、ホスフォナイト系酸化防止剤またはイオウ系酸化防止剤を併用することが更に好ましい。これら酸化防止剤の添加量としては、インク全体の0.05〜5質量%であることが好ましい。添加量が0.05質量%より少ないと本発明の効果が得られない。また、添加量が5質量%を越えると活性光線硬化型組成物の硬化性が低下する。
【0075】
また、本発明に適用可能な消臭剤は、特に限定されないが、硫黄を含む臭気成分を化学的に酸化あるいは化学反応による置換により消臭することができる物質が好ましい。具体的には、リンゴ酸とグリオキザールの混合物を挙げることができる。また、酸化による消臭では酵素系の消臭剤を挙げることができる。これら消臭剤の具体例として「バイオC」(コンソルコーポレーション社製)、「ユーコーデルセン」(有恒薬品工業社製)を挙げることができる。
【0076】
また、消臭剤は天然抽出成分であることが更に好ましい。カテキン類やタンニン類などの植物からの抽出物であるカテキン、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレード、ガロタンニン、エラジタンニン、またローズマリー、ヒマワリ種子、生コーヒー、茶、ブドウの果皮、ブドウの種子、リンゴ等の天然物からの抽出物、またフェノール性化合物を酸化する酵素を含むもの等がある。また、キトサン等に代表される多糖類、またはヒノキオイル、ドクダミエキス、オレンジの精油等に代表される植物抽出成分等が好ましい。これらの消臭剤は一種単独でも、複数の種類のものを併用してもよい。
【0077】
消臭剤の添加量は0.01質量%以上20質量%以下が好ましい。0.01質量%未満では十分な効果が得られない。また、20質量%を超えると膜強度の低下、硬化感度の低下を招く可能性がある。
【0078】
また、本発明に係るインクにおいて、消臭能を有する化合物の一つとして、香料を用いることができる。
【0079】
本発明に用いることができる香料としては下記のものが挙げられる。
【0080】
(1)グレープフルーツ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ナツメッグ油、カツシア油、ラベンダー油、ヒノキ油、フェンネル油、イランイラン油、カモミル油、ジャスミン油、ヒバ油、ペパーミント油、ラベンダー油、ローズマリー油等の精油類。
【0081】
(2)ヘキシルアルコール、フェニルエチルアルコール(ローズP)、フルフリルアルコール、シクロテン、ゲラニオールリナロール、1−メントール、ボルネオール、ランバズロール、ヘキシルアルコール、シクロテン、マルトール、オイゲノール、α−フエニルエタノール等のアルコール類。
【0082】
(3)テトラデカナール、ヘキサデカナール、オクタデカナール、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類。
【0083】
(4)エチルアセトアセテート、プロピルアセテート、アミルアセテート、リナリルアセテート、ベンジルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ベンジルプロピオネート、ヘプタナール、オクタナール、ドデカナール、シトラール、リラール、シクラメンアルデヒド、バニリン等のアルデヒド類。
【0084】
(5)ヌートカトン、エチルピラジン、レモンターペンレス、オレンジターペンレス、ワニリン、エチルワニリン、フルフリルメルカプタン、ボーネオール及びヘリオトロープ等の芳香族化合物。
【0085】
(6)エチルアセテート(酢酸エチル)、プロピルアセテート(酢酸プロピル)、アミルアセテート、リナリルアセテート、ベンジルアセテート(酢酸ベンジル)、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ベンジルプロオピオネート等のエステル類。
【0086】
本発明では、上記各々の香料を好適に組み合わせた調合香料、例えば、ババナ香料、ブルベリー香料、バニラ香料、ミント香料、アップル香料、ピーチ香料、メロン香料、パイナップル香料、グレープ香料、ライラック香料、ジャスミン香料などの各種調合香料を処方して使用することもできる。また、市販の処方された各種調合香料、例えば、バニラ香料(バニラBVK−3359(高砂香料社製))、ミント香料(ミントTHP−8148(長谷川香料社製))、バナナ香料(バナナT−1510(山本香料社製))、ブルーベリー香料(ブルーベリーV−647(山本香料社製))、フェンネルオイルN−3707(高砂香料社製)なども用いることができる。
【0087】
これら香料の含有量は、活性光線硬化型インク全量に対して0.01〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%の範囲、特に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で用いられる。これらの香料の含有量が0.01質量%未満であると、香りを殆ど感じることができなくなり、また20質量%を越えると硬化性に影響を与えるため好ましくない。
【0088】
〔カチオン硬化性モノマー〕
本発明に係るラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどの様なものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。ラジカル重合性モノマーは1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。
【0089】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79ページ、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0090】
上記ラジカル重合性化合物の添加量は好ましくは1〜97質量%であり、より好ましくは30〜95質量%である。
【0091】
本発明に係るインクにおいては、カチオン硬化性モノマーが、少なくともエポキシ化合物及びオキセタン環を有する化合物であることが好ましい。
【0092】
(オキセタン化合物)
以下、本発明に係るオキセタン環を有する化合物について説明する。
【0093】
〈2位が置換されているオキセタン環を有するオキセタン化合物〉
本発明に係るインクでは、下記一般式(9)で表される2位が置換されているオキセタン環を分子中に少なくとも1つ有するオキセタン化合物を用いることが好ましい。
【0094】
【化8】

【0095】
上記一般式(9)において、R1〜R6は各々水素原子または置換基を表す。但し、R3〜R6で表される基の少なくとも一つは置換基である。一般式(9)において、R1〜R6で表される置換基としては、例えば、フッ素原子、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等)、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、フリル基またはチエニル基を表す。また、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0096】
(分子中に1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物)
更に、上記一般式(9)の中でも、下記一般式(10)〜(13)で表されるオキセタン環を有する化合物が好ましく用いられる。
【0097】
【化9】

【0098】
式中、R1〜R6は水素原子または置換基を表し、R7、R8は各々置換基を表し、Zは各々独立で酸素または硫黄原子、あるいは主鎖に酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基を表す。一般式(10)〜(13)において、R1〜R6で表される置換基は前記一般式(9)のR1〜R6で表される置換基と同義である。
【0099】
一般式(10)〜(13)において、R7、R8で表される置換基としては、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基または3−ブテニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基等)、炭素数1〜6個のアシル基(例えば、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基またはペンチルカルボニル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、炭素数1〜6個のアルキルカルバモイル基(例えば、プロピルカルバモイル基、ブチルペンチルカルバモイル基等)、アルコキシカルバモイル基(例えば、エトキシカルバモイル基等)を表す。
【0100】
一般式(10)〜(13)において、Zで表される酸素または硫黄原子、あるいは主鎖に酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基としては、アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等)、アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基等)、アルキニレン基(例えば、エチニレン基、3−ペンチニレン基等)が挙げられ、また前記のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基の炭素原子は酸素原子や硫黄原子に置き換わっていてもよい。
【0101】
上記の置換基の中でも、R1が低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)が好ましく、特に好ましく用いられるのはエチル基である。また、R7及びR8としてはプロピル基、ブチル基、フェニル基またはベンジル基が好ましく、Zは酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基(アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基等)が好ましい。
【0102】
〈分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物〉
また、本発明では、下記一般式(14)、(15)で表されるような分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物を用いることができる。
【0103】
【化10】

【0104】
式中、Zは前記一般式(10)〜(13)において用いられる基と同義であり、mは2、3または4を表す。R1〜R6は水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)またはフリル基を表す。但し、一般式(14)においては、R3〜R6の少なくとも一つは置換基である。
【0105】
式中、R9は炭素数1〜12の線形または分岐アルキレン基、線形または分岐ポリ(アルキレンオキシ)基、または下記一般式(17)、(19)及び(20)からなる群から選択される2価の基を表す。
【0106】
上記の炭素数1〜12の分岐アルキレン基の一例としては、下記一般式(16)で表されるアルキレン基が好ましく用いられる。
【0107】
【化11】

【0108】
式中、R10は低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
【0109】
【化12】

【0110】
式中、nは0または1〜2000の整数を表し、R12は炭素数1〜10個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)を表し、R11は炭素数1〜10個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)または下記一般式(18)で表される基を表す。
【0111】
【化13】

【0112】
式中、jは0または1〜100の整数を表し、R13は炭素数1〜10個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)を表す。
【0113】
【化14】

【0114】
式中、R14は水素原子、炭素数1〜10個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)、炭素数1〜10個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アルコキシカルボニル基((例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)またはカルボキシル基を表す。
【0115】
【化15】

【0116】
式中、R15は酸素原子、硫黄原子、−NH−、−SO−、−SO2−、−CH2−、−C(CH32−、または、−C(CF32−を表す。
【0117】
本発明で使用されるオキセタン環を有する化合物の好ましい部分構造の態様としては、例えば、上記一般式(14)、(15)において、R1が低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)であることが好ましく、特に好ましくはエチル基である。また、R9としてはヘキサメチレン基、または上記一般式(19)において、R14が水素原子であるものが好ましく用いられる。
【0118】
上記一般式(16)において、R10がエチル基、R12及びR13がメチル基、Zが酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基が好ましい。
【0119】
更に、本発明に係るオキセタン環を有する化合物の好ましい態様の一例としては、下記一般式(21)で表される化合物が挙げられる。
【0120】
【化16】

【0121】
式中、rは25〜200の整数であり、R16は炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)またはトリアルキルシリル基を表す。R1、R3、R5、R6は、上記一般式(9)においてR1〜R6で表される置換基と同義である。但し、R3〜R6の少なくとも一つは置換基である。
【0122】
以下、本発明に係る2位が置換されているオキセタン環を有する化合物の具体例を例示化合物1〜15として示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0123】
1:trans−3−tert−ブチル−2−フェニルオキセタン
2:3,3,4,4−テトラメチル−2,2−ジフェニルオキセタン
3:ジ[3−エチル(2−メトキシ−3−オキセタニル)]メチルエーテル
4:1,4−ビス(2,3,4,4−テトラメチル−3−エチル−オキセタニル)ブタン
5:1,4−ビス(3−メチル−3−エチルオキセタニル)ブタン
6:ジ(3,4,4−トリメチル−3−エチルオキセタニル)メチルエーテル
7:3−(2−エチル−ヘキシルオキシメチル)−2,2,3,4−テトラメチルオキセタン
8:2−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−2,3,3,4,4−ペンタメチル−オキセタン
9:4,4′−ビス[(2,4−ジメチル−3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビフェニル
10:1,7−ビス(2,3,3,4,4−ペンタメチル−オキセタニル)ヘプタン)
11:オキセタニル・シルセスキオキサン
12:2−メトキシ−3,3−ジメチルオキセタン
13:2,2,3,3−テトラメチルオキセタン
14:2−(4−メトキシフェニル)−3,3−ジメチルオキセタン
15:ジ(2−(4−メトキシフェニル)−3−メチルオキセタン−3−イル)エーテル
本発明に係る少なくとも2位が置換されているオキセタン環を有する化合物の合成は、下記に記載の文献を参考に合成することができる。
【0124】
(1)Hu Xianming,Richard M.Kellogg,Synthesis,533〜538,May(1995)
(2)A.O.Fitton,J.Hill,D.Ejane,R.Miller,Synth.,12,1140(1987)
(3)Toshiro Imai and Shinya Nishida,Can. J.Chem.Vol.59,2503〜2509(1981)
(4)Nobujiro Shimizu,Shintaro Yamaoka,and Yuho Tsuno,Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,3853〜3854(1983)
(5)Walter Fisher and Cyril A.Grob,Helv.Chim.Acta.,61,2336(1978)
(6)Chem.Ber.101,1850(1968)
(7)“Heterocyclic Compounds with Three− and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley&Sons,New York(1964)
(8)Bull.Chem.Soc.Jpn.,61,1653(1988)
(9)Pure Appl.Chem.,A29(10),915(1992)
(10)Pure Appl.Chem.,A30(2&3),189(1993)
(11)特開平6−16804号公報
(12)ドイツ特許第1,021,858号明細書
本発明に係る少なくとも2位が置換されているオキセタン環を有する化合物のインク中の含有量は、1〜97質量%が好ましくは、より好ましくは30〜95質量%である。
【0125】
〈オキセタン化合物とその他のモノマーとの併用〉
また、本発明に係る少なくとも2位が置換されているオキセタン環を有する化合物は、単独で用いてもよいが、構造の異なる2種を併用してもよく、また、後述する、光重合性モノマーや重合性モノマー等の光重合性化合物等を併用して使用することができる。併用する場合、混合比は少なくとも2位が置換されているオキセタン環を有する化合物が混合物中、10〜98質量%になるように調製することが好ましく、またその他の光重合性モノマーや重合性モノマー等の光重合性化合物が2〜90質量%になるように調整することが好ましい。
【0126】
〈3位のみに置換基を有するオキセタン化合物〉
本発明では、上記の2位に置換基を有するオキセタン化合物と従来公知のオキセタン化合物とを併用することができるが、中でも3位のみに置換基を有するオキセタン化合物が好ましく併用できる。
【0127】
ここで、3位のみに置換基を有するオキセタン化合物としては、例えば、特開2001−220526号公報、同2001−310937号公報に紹介されているような公知のものを使用することができる。
【0128】
3位のみに置換基を有する化合物としては、下記一般式(22)で示される化合物が挙げられる。
【0129】
【化17】

【0130】
一般式(22)において、R1は水素原子やメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基である。R2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等の芳香環を有する基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、またはエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等の炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基等である。本発明で使用するオキセタン化合物としては、1個のオキセタン環を有する化合物を使用することが粘着性に優れ、低粘度で作業性に優れるため特に好ましい。
【0131】
2個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、下記一般式(23)で示される化合物等が挙げられる。
【0132】
【化18】

【0133】
一般式(23)において、R1は上記一般式(22)におけるそれと同様の基である。R3は、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の線状または分枝状アルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の線状または分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等の線状または分枝状不飽和炭化水素基、またはカルボニル基またはカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基等である。
【0134】
また、R3としては下記一般式(24)、(25)及び(26)で示される基から選択される多価基も挙げることができる。
【0135】
【化19】

【0136】
一般式(24)において、R4は水素原子やメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基またはカルバモイル基である。
【0137】
【化20】

【0138】
一般式(25)において、R5は酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32またはC(CH32を表す。
【0139】
【化21】

【0140】
一般式(26)において、R6はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。nは0〜2000の整数である。R7はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。R7としては、更に下記一般式(27)で示される基から選択される基も挙げることができる。
【0141】
【化22】

【0142】
一般式(27)において、R8はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。mは0〜100の整数である。
【0143】
2個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0144】
【化23】

【0145】
例示化合物1は、前記一般式(23)においてR1がエチル基、R3がカルボキシル基である化合物である。また、例示化合物2は、前記一般式(23)においてR1がエチル基、R3が前記一般式(26)でR6及びR7がメチル基、nが1である化合物である。
【0146】
2個のオキセタン環を有する化合物において、上記の化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(28)で示される化合物がある。一般式(28)において、R1は前記一般式(22)のR1と同義である。
【0147】
【化24】

【0148】
また、3〜4個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、下記一般式(29)で示される化合物が挙げられる。
【0149】
【化25】

【0150】
一般式(29)において、R1は前記一般式(22)におけるR1と同義である。R9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基または下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは3または4である。
【0151】
【化26】

【0152】
上記Aにおいて、R10はメチル基、エチル基またはプロピル基等の低級アルキル基である。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0153】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、例示化合物3が挙げられる。
【0154】
【化27】

【0155】
更に、上記説明した以外の1〜4個のオキセタン環を有する化合物の例としては、下記一般式(30)で示される化合物が挙げられる。
【0156】
【化28】

【0157】
一般式(30)において、R8は前記一般式(27)のR8と同義である。R11はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基またはトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0158】
本発明に係るオキセタン化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物4、5、6がある。
【0159】
【化29】

【0160】
上述したオキセタン環を有する各化合物の製造方法は、特に限定されず、従来知られた方法に従えばよく、例えば、パティソン(D.B.Pattison,J.Am.Chem.Soc.,3455,79(1957))が開示している、ジオールからのオキセタン環合成法等がある。また、これら以外にも、分子量1000〜5000程度の高分子量を有する1〜4個のオキセタン環を有する化合物も挙げられる。これらの具体的化合物例としては、以下の例示化合物7、8、9が挙げられる。
【0161】
【化30】

【0162】
〔エポシキ化合物〕
本発明に係るエポキシ化合物としては、エポキシ基を有する化合物のモノマー及びそのオリゴマーのいずれも使用できる。具体的には、従来公知の芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物が挙げられる。なお、以下エポキシ化合物とは、モノマーまたはそのオリゴマーを意味する。本発明におけるオリゴマーとしては、低分子量の化合物が好ましく、分子量が1000未満のオリゴマーがより好ましい。
【0163】
芳香族エポキシ化合物として好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0164】
脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては、以下に示す化合物等が挙げられる。
【0165】
脂肪族エポキシ化合物の好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0166】
更に、これらの化合物の他に、分子内に1個のオキシラン環を有するモノマーである脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル及びフェノール、クレゾールのモノグリシジルエーテル等も用いることができる。これらのエポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシ化合物及び脂環式エポキシ化合物が好ましく、特に脂環式エポキシ化合物が好ましい。本発明では、上記エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0167】
本発明に係るインクにおいては、エポシキ化合物として脂環式エポキシ化合物であることが好ましく、より好ましくは脂環式エポキシ化合物が、下記一般式(A)で表される化合物であることが好ましい。
【0168】
【化31】

【0169】
上記一般式(A)において、R100は置換基を表し、m0は0〜2を表す。r0は1〜3を表す。L0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr0+1価の連結基または単結合を表す。
【0170】
更に、上記一般式(A)で表される化合物が、下記一般式(I)、(II)であることが好ましい。
【0171】
【化32】

【0172】
上記一般式(I)において、R101は置換基を表し、m1は0〜2を表す。r1は1〜3を表す。L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr1+1価の連結基または単結合を表す。
【0173】
【化33】

【0174】
上記一般式(II)において、R102は置換基を表し、m2は0〜2を表す。r2は1〜3を表す。L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr2+1価の連結基または単結合を表す。
【0175】
上記一般式(A)、(I)、(II)で表される脂環式エポキシ化合物について説明する。
【0176】
一般式(A)、(I)または(II)において、R100、R101、R102、は置換基を表す、置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
【0177】
m0、m1、m2は0〜2の整数を表し、0または1が好ましい。また、m0、m1、m2はそれぞれ同一分子内で異なっていてもよい。
【0178】
0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr0+1価の連結基あるいは単結合を、L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr1+1価の連結基あるいは単結合を、L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr2+1価の連結基あるいは単結合を表す。
【0179】
主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15の2価の連結基の例としては、以下の基およびこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0180】
メチレン基[−CH2−]
エチリデン基[>CHCH3
イソプロピリデン[>C(CH32
1,2−エチレン基[−CH2CH2−]
1,2−プロピレン基[−CH(CH3)CH2−]
1,3−プロパンジイル基[−CH2CH2CH2−]
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH32CH2−]
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(OCH32CH2−]
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH2OCH32CH2−]
1−メチル−1,3−プロパンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2−]
1,4−ブタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2−]
1,5−ペンタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2CH2−]
オキシジエチレン基[−CH2CH2OCH2CH2−]
チオジエチレン基[−CH2CH2SCH2CH2−]
3−オキソチオジエチレン基[−CH2CH2SOCH2CH2−]
3,3−ジオキソチオジエチレン基[−CH2CH2SO2CH2CH2−]
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基[−CH(CH3)CH2O−CH(CH3)CH2−]
3−オキソペンタンジイル基[−CH2CH2COCH2CH2−]
1,5−ジオキソ−3−オキサペンタンジイル基[−COCH2OCH2CO−]
4−オキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−]
3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−]
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH(CH3)CH2O−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH32CH2OCH2CH2−]、
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(OCH32CH2OCH2CH2−]
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH2OCH32CH2OCH2CH2−]
4,7−ジオキソ−3,8−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2O−COCH2CH2CO−OCH2CH2−]
3,8−ジオキソ−4,7−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2CO−OCH2CH2O−COCH2CH2−]
1,3−シクロペンタンジイル基[−1,3−C58−]
1,2−シクロヘキサンジイル基[−1,2−C610−]
1,3−シクロヘキサンジイル基[−1,3−C610−]
1,4−シクロヘキサンジイル基[−1,4−C610−]
2,5−テトラヒドロフランジイル基[2,5−C46O−]
p−フェニレン基[−p−C64−]
m−フェニレン基[−m−C64−]
α,α′−o−キシリレン基[−o−CH2−C64−CH2−]
α,α′−m−キシリレン基[−m−CH2−C64−CH2−]
α,α′−p−キシリレン基[−p−CH2−C64−CH2−]
フラン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42O−CH2−]
チオフェン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42S−CH2−]
イソプロピリデンビス−p−フェニレン基[−p−C64−C(CH32−p−C64−]。
【0181】
3価以上の連結基としては、以上に挙げた2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基およびそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0182】
0、L1、L2は各々置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。L0、L1、L2としては、各々主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜8の2価の連結基が好ましく、主鎖が炭素のみからなる炭素数1〜5の2価の連結基がより好ましい。
【0183】
本発明においては、カチオン硬化性モノマーとしてオキセタン環を有する化合物及びエステル結合を2つ以上有する脂環式エポキシ化合物を含有することが好ましい。エステル結合を2つ以上有する脂環式エポキシ化合物としては、下記一般式(III)、(IV)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0184】
【化34】

【0185】
上記一般式(III)において、R200はオキシラン環のα、β位以外の脂肪族基を表し、m3は0〜2を表す。X1は−(CH2n0−または−(O)n0−を表し、n0は0または1を表す。p1、q1はそれぞれ0または1を表し同時に0となることはない。r3は1〜3を表す。L3は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr3+1価の分岐構造を有する連結基または単結合を表す。
【0186】
【化35】

【0187】
上記一般式(IV)において、R201はオキシラン環のα、β位以外の脂肪族基を表し、m4は0〜2を表す。X2は−(CH2n1−または−(O)n1−を表し、n1は0または1を表す。p2、q2はそれぞれ0または1を表し同時に0となることはない。r4は1〜3を表す。L4は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr4+1価の分岐構造を有する連結基または単結合を表す。
【0188】
上記一般式(III)、(IV)において、R200、R201は脂肪族基を表す。脂肪族基としては炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、等)、炭素数3〜6個のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、等)、炭素数1〜6個のアルキ二ル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、等)が挙げられる。好ましくは炭素数1〜3個のアルキル基であり、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0189】
m3、m4は0〜2を表し、1以上が好ましい。
【0190】
1は−(CH2n0−または−(O)n0−を、X2は−(CH2n1−または−(O)n1−を表す。n0、n1は0または1を表し、n0、n1が0の場合はX1、X2が存在しないことを表す。
【0191】
m3+n0またはm4+n1は1以上が好ましい。
【0192】
3は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr3+1価の分岐構造を有する連結基あるいは単結合を、L4は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr4+1価の分岐構造を有する連結基あるいは単結合を表す。主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15の2価の連結基の例としては、以下の基およびこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0193】
エチリデン基[>CHCH3
イソプロピリデン[>C(CH32
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH32CH2−]
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(OCH32CH2−]
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH2OCH32CH2−]
1−メチル−1,3−プロパンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2−]
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH32CH2OCH2CH2−]
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(OCH32CH2OCH2CH2−]
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH2OCH32CH2OCH2CH2−]
イソプロピリデンビス−p−フェニレン基[−p−C64−C(CH32−p−C64−]。
【0194】
3価以上の連結基としては、以上に挙げた2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基およびそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0195】
3、L4は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基である。
【0196】
以下に一般式(A)、(I)、(II)、(III)、(IV)の例示化合物を示す。
【0197】
【化36】

【0198】
【化37】

【0199】
【化38】

【0200】
脂環式エポキシ化合物の添加量としては、10〜80質量%含有することが好ましい。10質量%未満であると硬化環境(温度、湿度)により硬化性が著しく変わってしまい使えない。80質量%を超えると、硬化後の膜物性が弱く使えない。本発明では、脂環式エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0201】
また、これらの脂環式エポキシ化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John&Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号、特許2906245号、特許2926262号の各公報等の文献を参考にして合成できる。
【0202】
本発明に係るインクにおいては、エポキシ化合物として、エポキシ化脂肪酸エステルまたはエポキシ化脂肪酸グリセライドを含有する。
【0203】
エポキシ化脂肪酸エステルまたはエポキシ化脂肪酸グリセライドをオキセタン化合物/脂環式エポキシ化合物の系に併用することにより、AMES及び感作性、皮膚刺激性、臭気等の安全・環境の観点で好ましいだけでなく、硬化環境(温度、湿度)により硬化収縮による皺の発生、硬化性・吐出性の不良等の従来からの問題点を解決することができる。
【0204】
本発明で用いることのできるエポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドとしては、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0205】
エポキシ化脂肪酸エステルは、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0206】
〔光重合開始剤〕
本発明に係るインクでは、ラジカル重合性モノマーと共に、光重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0207】
ラジカル重合開始剤としては、特公昭59−1281号、同61−9621号、及び特開昭60−60104号等の各公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号及び同61−243807号等の各公報に記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号、同44−6413号、同44−6413号及び同47−1604号等の各公報並びに米国特許第3,567,453号明細書に記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,848,328号、同2,852,379号及び同2,940,853号各明細書に記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号、同37−13109号、同38−18015号、同45−9610号等の各公報に記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号、特開昭59−14023号等の各公報及び「マクロモレキュルス(Macromolecules)、第10巻、第1307ページ(1977年)に記載の各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109,851号、同126,712号等の各明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス」(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174ページ(1986年)に記載の金属アレン錯体、特開平4−213861号及び同4−255347号の各公報に記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordinantion Chemistry Review)」、第84巻、第85〜第277ページ(1988年)及び特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0208】
本発明に係るインクにおいては、上記光重合開始剤の中でも活性光線照射によりベンゼンを発生しないオニウム塩型の光酸発生剤であることが好ましく、より好ましくはオニウム塩型の光酸発生剤がスルホニウム塩であり、特に好ましくはスルホニウム塩が下記一般式(B)〜(E)から選ばれる少なくとも1種であること。
【0209】
【化39】

【0210】
上記一般式(B)〜(E)において、R1〜R17はそれぞれ水素原子または置換基を表す。但し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。Xは非求核性のアニオン残基を表す。
【0211】
本発明における「活性光線照射によりベンゼンを発生しない」とは、実質的にベンゼンを発生しないことを指し、具体的にはインク組成物中にオニウム塩(光酸発生剤)を5質量%含有したインクを用いて、厚さ15μmで約100m2の画像を印字し、インク膜面を30℃に保った状態で光酸発生剤が十分分解する量の活性光線を照射した際に発生するベンゼンの量が、5μg以下の極微量あるいは皆無であることを指す。該オニウム塩としては、スルホニウム塩あるいはヨードニウム塩が好ましく、S+あるいはI+と結合するベンゼン環に置換基をもつものであれば、上記条件を満たす。該スルホニム塩としては、上記一般式(B)〜(E)で表されるスルホニウム塩化合物が好ましく、S+と結合するベンゼン環に置換基をもつものであれば、上記条件を満たす。
【0212】
上記一般式(B)〜(E)において、R1〜R17はそれぞれ水素原子または置換基を表す。但し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。
【0213】
1〜R17で表される置換基としては、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニル基、フェニルチオ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基等を挙げることができる。
【0214】
Xは非求核性のアニオン残基を表し、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、B(C654、R18COO、R19SO3、SbF6、AsF6、PF6、BF4等を挙げることができる。但し、R18およびR19はそれぞれメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等で置換されていもよいアルキル基もしくはフェニル基を表す。この中でも、安全性の観点からB(C654、PF6が好ましい。
【0215】
上記化合物はTHE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Vol.71 No.11,1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0216】
本発明においては、一般式(B)〜(E)で表されるスルホニウム塩は、特に、下記一般式(F)〜(N)から選ばれるスルホニウム塩の少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0217】
【化40】

【0218】
【化41】

【0219】
上記一般式(F)〜(N)において、Xは非求核性のアニオン残基を表し、前述と同様である。
【0220】
ヨードニウム塩を含めた例示化合物としては、上記一般式(F)〜(N)のX=PF6の他に下記の化合物が挙げられる。
【0221】
【化42】

【0222】
【化43】

【0223】
【化44】

【0224】
これらの重合開始剤はラジカル重合可能なエチレン不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で含有されるのが好ましい。
【0225】
〔顔料及び顔料分散〕
(顔料)
本発明に係るインクは色材として顔料を含有する。本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
【0226】
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、42、74、81、83、87、93、95、109、120、128、138、139、151、166、180、185
C.I Pigment Orange−16、36、38
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、101、122、144、146、177、185
C.I Pigment Violet−19、23
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29
C.I Pigment Green−7、36
C.I Pigment White−6、18、21
C.I Pigment Black−7
(顔料分散)
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。分散媒体は光重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0227】
顔料の分散は顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によってヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0228】
本発明の画像形成方法においては1種以上のインクを用いて画像形成するが、インクの種類としては、例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクの他に、淡色インクとしてライトマゼンタインク、ライトシアンインク、ライトブラックインクやその他の特色インクを構成して、インクセットとして用いることができる。
【0229】
色材濃度としてはインク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0230】
顔料分散剤としては、塩基性のアンカー部を有するものを用いることが好ましく、且つ櫛形構造を有する高分子分散剤を用いることが更に好ましい。
【0231】
本発明で用いることのできる顔料分散剤の具体例としては、Avecia社製ソルスパース9000、同17000、同18000、同19000、同20000、同24000SC、同24000GR、同28000、同32000、味の素ファインテクノ社製アジスパーPB821、同PB822、楠本化成社製PLAAD ED214、同ED251、DISPARLON DA−325、同DA−234、EFKA社製EFKA−5207、同5244、同6220、同6225等が挙げられる。また、顔料分散剤と併せて顔料誘導体(シナジスト)を用いることができる、顔料誘導体の具体例としては、Avecia社製ソルスパース5000、同12000、同22000、EFKA社製EFKA−6746、同6750等が挙げられる。
【0232】
〔脂肪酸環状エステル化合物〕 ←記載が必要か否か判断願います
本発明に係るインクでは、4〜10員環の脂肪族環状エステル化合物または5員環以上の環状エーテル化合物を含有することが、硬化性や各種基材への密着性が向上するため好ましい。
【0233】
環状エステル化合物としては、4〜10員環の脂肪族環状エステル化合物である。具体的には、ε−カプロラクトン−6−ヒドロキシヘキサン酸−1,6ラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、α−メチル−β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタノラクトン、クマリン、テトロン酸、ピロン、フタリド、3−メチル−1,4−ジオキサ−2,5−ジオン、p−ジオキサノン、モリホリンジオン、モリホリン等である。また、その使用に当たってはそれらの混合物でも構わない。
【0234】
環状エーテル化合物としては、5員環以上の環状エーテル化合物である。更に好ましくは、炭酸エステル構造を有しない環状エーテル化合物である。具体的には、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、クラウンエーテル(12−crown−4等)、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−メチルジオキソラン、4−メチルジオキソラン等である。
【0235】
4〜10員環の脂肪族環状エステル化合物および5員環以上の環状エーテル化合物の含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。
【0236】
〔その他の添加剤〕
本発明に係るインクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、各種界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、保存安定性を改良する目的で、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。また、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0237】
塩基性化合物も添加することができる。塩基性化合物を含有することで、吐出安定性が良好となるばかりでなく、低湿下においても硬化収縮による皺の発生が抑制される。塩基性化合物としては公知のあらゆるものを用いることができるが、代表的なものとして塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。
【0238】
前記の塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等)が挙げられる。前記の塩基性アルカリ土類金属化合物としては、同様にアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属のアルコラート(マグネシウムメトキシド等)が挙げられる。
【0239】
塩基性有機化合物としては、アミンならびにキノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物などが挙げられるが、これらの中でも、光重合性モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0240】
塩基性化合物を存在させる際のその濃度は、光重合性モノマーの総量に対して10〜1000質量ppm、特に20〜500質量ppmの範囲であることが好ましい。なお、塩基性化合物は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0241】
本発明に係るインクにおいては、活性光線硬化型組成物の25℃における粘度が7〜40mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【0242】
〔記録媒体〕
本発明の画像形成方法で用いることのできる記録媒体としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録媒体の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0243】
これら各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは、素材の特性により大きく異なり、記録媒体によってはインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録媒体に良好な高精細な画像を形成できる。
【0244】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録媒体のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録媒体を使用する方が有利である。
【0245】
《本発明の画像形成方法》
本発明の画像形成方法は、本発明に係る消臭能を含有するインクをインクジェット記録方式により記録媒体上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法であって、1回の光照射によって硬化される総インク量を10.0g/m2未満で行うことを特徴とする。
【0246】
すなわち、紫外線等の活性光線を照射する際、本発明に係る消臭能を含有する1種以上のインクの記録媒体上への付与量を10.0g/m2未満、好ましくは5.0g/m2未満とすることにより、光重合の際に発生する臭気を効率よく低減することができる。付与量の下限値は、所望の画像濃度により自ずと制限はあるが、好ましくは0.5g/m2以上である。
【0247】
また、本発明の画像形成方法においては、記録媒体上に付与したインクに活性光線を照射して硬化させる環境の絶対湿度が、0.014kg/kg未満であることが好ましく、より好ましくは0.010kg/kg未満であり、更に好ましくは0.001kg/kg以上、0.010kg/kg未満である。
【0248】
上記で規定する湿度環境下でインクの硬化を行うことにより、高い膜強度を達成すると共に、臭気の発生を効率よく抑制することができる。
【0249】
次いで、本発明の画像形成方法の好ましい態様について、更に説明する。
【0250】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明では、記録媒体上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜25μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が25μmを越えているのが現状であるが、記録媒体が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録媒体のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0251】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録媒体に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0252】
(インクの吐出条件)
インクの吐出条件としては、記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性光線硬化型インクジェットインクは温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。
【0253】
(インク着弾後の光照射条件)
本発明の画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0254】
本発明によるインクジェット記録方法にあっては、インク組成物を記録媒体に付着させた後に、光照射を行う。光照射は可視光照射、紫外線照射であってもよく、特に紫外線照射が好ましい。紫外線照射を行う場合、紫外線照射量は100mJ/cm2以上、好ましくは500mJ/cm2以上であり、また10,000mJ/cm2以下、好ましくは5,000mJ/cm2以下の範囲で行う。かかる程度の範囲内における紫外線照射量であれば、十分硬化反応を行うことができ、また紫外線照射によって着色剤が退色してしまうことも防止できるので有利である。紫外線照射はメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等のランプが挙げられる。例えば、Fusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。
【0255】
メタルハライドランプは高圧水銀ランプ(主波長は365nm)に比べてスペクトルが連続しており、200〜450nmの範囲で発光効率が高く、且つ長波長域が豊富である。従って、本発明に係るインクの様に顔料を使用している場合はメタルハライドランプが適している。
【0256】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号公報に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射はインク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号明細書では、照射方法として光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0257】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、且つ全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録媒体の収縮を抑えることが可能となる。
【0258】
従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、光源の総消費電力が1kW・hrを超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特にシュリンクラベルなどへの印字では、記録媒体の収縮があまりにも大きく、実質上使用出来ないのが現状であった。
【0259】
本発明では、254nmの波長領域に最高照度をもつ活性光線を用いることが好ましく、総消費電力が1kW・hr以上の光源を用いても、高精細な画像を形成出来、且つ記録媒体の収縮も実用上許容レベル内に収められる。
【0260】
本発明においては、更に活性光線を照射する光源の総消費電力が1kW・hr未満であることが好ましい。総消費電力が1kW・hr未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、熱陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0261】
《インクジェット記録装置》
次いで、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0262】
以下、本発明の記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明の記録装置はこの図面に限定されない。
【0263】
図1は本発明の記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1はヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録媒体Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録媒体Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0264】
記録媒体Pはガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0265】
ヘッドキャリッジ2は記録媒体Pの上側に設置され、記録媒体P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0266】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)の7色の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0267】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インクジェットインク(例えば、UV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録媒体Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0268】
記録ヘッド3は記録媒体Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録媒体Pの他端まで移動するという走査の間に、記録媒体Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0269】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録媒体Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0270】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録媒体P上に画像が形成される。
【0271】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(Light Emitting Diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管及び殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行なえ、好ましい。ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0272】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0273】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録媒体Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0274】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録媒体Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録媒体Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。また、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0275】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0276】
本発明に係るインクは、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成することも可能である。
【0277】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。図2で示したインクジェット記録装置はラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0278】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0279】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録媒体Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。なお、本発明において、記録媒体Pは35〜60℃に加温して、画像形成を行うことが好ましい。
【実施例】
【0280】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0281】
《インクセットの調製》
分散剤(PB822 味の素ファインテクノ社製)の5質量部と、表1に記載の各光重合性化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて撹拌、混合して溶解させた。次いで、この溶液に各種顔料(7種)をそれぞれ添加した後、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にポリ瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて2時間分散処理を行った。次いで、ジルコニアビーズを取り除き、各光重合開始剤、界面活性剤、塩基性化合物、香料、防臭剤等の各種添加剤を表1に記載の組み合わせで添加し、これをプリンター目詰まり防止のため0.8μmメンブランフィルターで濾過して、濃色インク(イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)、ブラックインク(K))、淡色インク(ライトマゼンタインク(Lm)、ライトシアンインク(Lc)、ライトブラックインク(Lk))の各硬化組成物インクから構成されるインクセット1〜6を調製した。なお、各色インクの調製において、K、C、M、Yの濃色インクでは、各顔料の添加量を表1に記載のように4質量%とし、淡色インクであるLk、Lc、Lmの硬化組成物インクでは、各顔料の添加量を0.8質量%とした。なお、インク粘度はオキセタン環を有する化合物とエポキシ化合物の添加量を調整することで、20mPaS〜30mPaSになるようにした。
【0282】
【表1】

【0283】
なお、上記表1に略称で記載の各化合物の詳細は、以下の通りである。
【0284】
〔光重合性化合物〕
〈オキセタン環を有する化合物〉
OXT221:OXT−221(東亞合成社製) ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(例示化合物24)
OXT212:OXT−212(東亞合成社製) 3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン
OXT101:OXT−101(東亞合成社製) 3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン
〈オキシラン化合物〉
*A:セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製
〔光重合開始剤〕
UVI6992:ダウ・ケミカル社製 プロピオンカーボネート50%液
〔界面活性剤〕
KF−351:シリコーンオイル(信越化学株式会社製)
〔分散剤〕
PB822:味の素ファインテクノ社製
〔防臭剤〕
MDP−S:スミライザーMDP−S、住友化学工業株式会社製 2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
HQ:ハイドロキノン
MEHQ:メチルエーテルハイドロキノン
BHT:ヨシノックスBHT、エーピーアイコーポレーション株式会社製 2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
IN259:イルガノックス259、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
〔塩基性化合物〕
トリブチルアミン
〔顔料〕
表1に詳細は記載していないが、インクセットを構成する各色インクで用いた顔料は、以下の通りである。
【0285】
イエローインク(Y):C.I.Pigment Yellow 13
マゼンタインク(M):C.I.Pigment Red 57:1
シアンインク(C):C.I.Pigment Blue 15:3
ブラックインク(K):C.I.Pigment Black 7
ライトマゼンタインク(Lm):C.I.Pigment Red 57:1
ライトシアンインク(Lc):C.I.Pigment Blue 15:3
ライトブラックインク(Lk):C.I.Pigment Black 7
《インクジェット画像形成方法》
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物セットを装填し、巾600mm、長さ20mの長尺の各記録材料へ、下記の画像記録を連続して行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。なお、各インク組成物セットを構成する各硬化組成物インクの粘度にあわせてヘッド部を加温し、2〜15plの液滴量のマルチサイズドットを720×720dpi(本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。)の解像度で吐出できるよう駆動して、上記各色インクを連続吐出した。なお、記録媒体は面ヒーター及び冷却装置により40℃になるように適宜調整した。
【0286】
次いで、各色インクが記録媒体に着弾した後、キャリッジ両脇に配置した光源であるメタルハライドランプにより、300mJ/cm2の紫外線を照射し、瞬時(着弾後0.5秒未満)に硬化させて、画像1〜14を作成した。総インク吐出量は、1回の紫外線照射時の総インク量が表2に記載のインク量となるように調製した。また、上記のインクジェット画像形成は、表2に記載の絶対湿度条件下で行った。なお、照射光源の照度は、岩崎電機社製のUVPF−A1を用いて、254nmの積算照度を測定した。
【0287】
上記画像形成に用いた各記録材料は、以下の通りである。
【0288】
合成紙:ユポコーポレーション社製合成紙 ユポFGS
PVC:polyvinyl chioride
《印刷物の評価》
〔臭気耐性の評価〕
上記硬化後1時間経過した各画像について、臭気を嗅いで官能評価を行い、下記の基準に従って臭気耐性に評価を行った。
【0289】
5:全く臭気が感じられない
4:極僅かの臭気が感じられるが、問題のないレベルである
3:やや臭気は感じられるが、実用上使用可能な臭気レベルである
2:やや強い臭気が感じられ、実用上問題となる臭気レベルである
1:不快で強い臭気が感じられ、実用に耐えない臭気レベルである
〔密着性の評価〕
合成紙及びPVCに記録した各画像について、JIS K5400に準じて碁盤目試験により、密着性の評価を行った。具体的には、画像形成面に1mm間隔で縦横に11本の切れ目を入れ、1mm角の碁盤目を100個つくつた。この上にセロハンテープを張り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれた部分の有無を目視観察し、下記の基準に従って密着性を評価した。
【0290】
5:各碁盤目で、全く画像部の剥離が認められない
4:合成紙あるいはPVCに記録した画像で、極僅かな画像部の剥離が認められるが、良好な密着性である
3:合成紙及びPVCに記録した画像で、僅かな画像部の剥離が認められるが、実用上許容される品質である
2:合成紙及びPVCに記録した画像で、画像部の剥離が認められ、実用上懸念される品質である
1:合成紙及びPVCに記録した画像の大部分で剥離が認められ、実用に耐えない品質である
〔硬化性の評価〕
合成紙に記録した各画像について、着弾後0.1秒後に形成した画像面を爪で擦り、下記の基準に従って、硬化性の評価を行った。
【0291】
5:爪で強く擦っても全く画像膜の剥離が認められない
4:爪で強く擦ってもほぼ画像膜の剥離が認められない
3:爪で強く擦ると僅かに画像膜の剥離が認められるが、実用上問題はない
2:爪で強く擦ると画像膜の剥離が認められ、実用上問題となる品質である
1:爪で弱く擦っても、容易に画像膜の剥離が認められ、実用に耐えない品質である
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0292】
【表2】

【0293】
表2に記載の結果より明らかなように、消臭能を有する化合物を含有するインクを用い、1回の光照射あたりの総インク量を10.0g/m2未満とした本発明の画像形成方法で形成した画像は、比較例に対し、形成した画像の臭気が低く、かつ記録媒体との密着性及び硬化性に優れていることが分かる。更に、本発明の画像形成方法で形成した画像においては、絶対湿度が0.014kg/kg未満の環境下でインクを硬化させることにより、密着性及び硬化性がより向上していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0294】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0295】
1 インクジェット記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 インクジェット記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
P 記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性成分としてカチオン硬化性モノマーを含有する1種以上のインクを記録媒体上に吐出させる記録ヘッドと、該記録媒体上に着弾したインクに光を照射してインクを硬化させる光照射装置とを用いた画像形成方法において、1回の光照射によって硬化される総インク量が10.0g/m2未満であり、かつ、該インクが消臭能を有する化合物を含有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記1回の光照射によって硬化される総インク量が5.0g/m2未満であることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記インク中での前記消臭能を有する化合物の含有量が、0.01質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
光硬化性成分である前記カチオン硬化性モノマーが、少なくともエポキシ化合物及びオキセタン環を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記インクを硬化させる時の絶対湿度が、0.014kg/kg未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記絶対湿度が0.010kg/kg未満であることを特徴とする請求項5記載の画像形成方法。
【請求項7】
光硬化性成分としてカチオン硬化性モノマーを含有する1種以上のインクを記録媒体上に吐出させる記録ヘッドと、該記録媒体上に着弾したインクに光を照射してインクを硬化させる光照射装置とを備えたインクジェット記録装置において、1回の光照射によって硬化される総インク量が10.0g/m2未満であり、かつ、該インクが消臭能を有する化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記1回の光照射によって硬化される総インク量が5.0g/m2未満であることを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記インク中での前記消臭能を有する化合物の含有量が、0.01質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
光硬化性成分である前記カチオン硬化性モノマーが、少なくともエポキシ化合物及びオキセタン環を有する化合物であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記インクを硬化させる時の絶対湿度が、0.014kg/kg未満であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記絶対湿度が0.010kg/kg未満であることを特徴とする請求項11記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−334925(P2006−334925A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162450(P2005−162450)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】