説明

画像形成方法及び画像処理方法

【課題】レーザ光により形成する画像を印字品質よく効率的に描画することが可能で、熱可逆記録媒体における繰り返し耐久性を向上させることが可能な画像形成方法を提供すること。
【解決手段】セル内にレーザ光を照射することにより描画される描画セルを含む2次元コードを形成する画像形成方法において、前記描画セルが密集する領域における前記セルを連続して描画する際に、少なくとも1つの前記セルに照射する前記レーザ光のエネルギー密度をEとし、描画セルが密集しない領域における前記セルに照射するレーザ光のエネルギー密度をEとしたとき、前記Eを前記Eよりも低くすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光により形成する画像を印字品質よく効率的に描画することができ、また熱可逆記録媒体においては繰り返し耐久性に優れた画像を得ることができる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、熱可逆記録媒体(以下、「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある)への画像形成及び画像消去は、加熱源を記録媒体に接触させて該媒体を加熱する接触式で行われている。該加熱源としては、通常、画像形成にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
【0003】
このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像形成及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像形成装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。
しかし、熱可逆記録媒体が、特許文献1及び特許文献2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、熱可逆記録媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる(特許文献1及び2参照)。
また、接触式であるために、印字と消去を繰り返すと記録媒体表面が削れて凹凸が生じ、サーマルヘッドやホットスタンプ等の加熱源に接触しない部分が出てきて均一に加熱されないため濃度低下や消去不良がおこるという問題がある(特許文献3及び4参照)。
そこで例えば熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから均一に画像形成及び画像消去する方法として、レーザを用いる方法が提案されている(特許文献5参照)。この方法は、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用して非接触記録を行うものであり、書き込みはレーザで実施し、消去は熱風、温水、又は赤外線ヒータで行うと記載されている。
【0004】
このようなレーザによる記録方法としては、高出力のレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、その位置をコントロール可能なレーザ記録装置(レーザマーカー)が提供されている。このレーザマーカーを用いて、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、媒体中の光熱変換材料が光を吸収して熱に変換し、その熱で記録及び消去を行うことが可能である。これまでレーザによる画像形成及び消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録する方法が提案されている(例えば、特許文献6及び7参照)。
しかしながらこのようなレーザ記録方法においては、描画セルが密集する2次元コードのような画像を形成しようとすると、蓄熱の影響で過加熱されるために、要求した描画セルの大きさよりも大きくなってしまうという問題がある。また、この問題は、熱可逆記録媒体のみならず、レーザ加工においても生じる。
【0005】
上記問題を解決するため、隣接した単位照射領域としてのセルを連続してマーキングしないレーザマーキング方法が提案されている(特許文献8参照)。
しかしながら、セルの終端から隣接しない位置に存在する次のセルの始端までレーザ光を毎回移動させなければならないので、画像形成に時間がかかってしまうという問題がある。
また、セルの外周から中心に向けてレーザ光のビームスポットを渦巻き状にスキャニングして単位照射領域を形成し、所定の順番で1セルずつ渦巻き状のスキャニングを行うことで、画像形成時間の短縮するレーザマーキング方法が提案されている(特許文献9参照)。
しかしながら、この方法においては、隣接したセルを連続して画像形成する際に過加熱を十分防止することができず、特に渦の中心に熱が集中するという問題がある。
上記のことから、印字品質よく効率的に描画することができる画像形成方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、レーザ光により形成する画像を印字品質よく効率的に描画することが可能で、熱可逆記録媒体における繰り返し耐久性を向上させることが可能な画像形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、以下の知見を得た。
レーザ光によりセルが密集する2次元コードのような画像を形成しようとすると、複数のセルを連続して描画する際に、描画セルが密集すると蓄熱の影響で過加熱されるために、要求した描画セルの大きさよりも大きくなってしまう。特にサイズの小さな2次元コードを形成しようとすると、蓄熱の影響は顕著になる。描画セルが大きくなると、本来描画しないセルにも画像が一部描画されることになってしまい、モジュレーションの低下を招く(モジュレーションの定義は、ISO15415に準ずる)。モジュレーションが低下すると画像品質が低下してしまうため、2次元コードリーダーによる画像の読み取りにおいて、読み取り性能が低下してしまうという問題がある。また蓄熱の影響を少なくするために照射するレーザ光のエネルギー密度を全体的に下げると、セルの画像濃度が低下して、全体的にモジュレーションが低下してしまい読み取り性能が低下してしまうことがある。ここで描画セルとは、図1aに示すベタ画像を示す。図1bは、ベタ画像を形成するためのレーザ光の動きを示している。なお、図1bにおいて、矢印は、レーザ光の進む方向を示し、実線は、描画を行う描画線を示し、破線は、描画は行わずレーザ光の移動のみを示している。
しかしながら、この場合、描画セルが密集している領域に照射するレーザ光のエネルギー密度を、描画セルが密集しない領域に照射するレーザ光のエネルギー密度よりも低くして画像形成を行うと、描画セルが密集している領域における過加熱を抑制することができ、印字品質よく効率的に画像を形成することができることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> セル内にレーザ光を照射することにより描画される描画セルを含む2次元コードを形成する画像形成方法において、前記描画セルが密集する領域における前記セルを連続して描画する際に、少なくとも1つの前記セル内に照射する前記レーザ光のエネルギー密度をEとし、前記描画セルが密集しない領域における前記セル内に照射するレーザ光のエネルギー密度をEとしたとき、前記Eを前記Eよりも低くすることを特徴とする画像形成方法である。
<2> EとEとが、次式、70%≦(E/E)×100≦98%の関係を満たす前記<1>に記載の画像処理方法である。
<3> 描画セルが密集する領域に照射するレーザ光のパワーをPとし、描画セルが密集しない領域に照射するレーザ光のパワーをPとしたとき、前記Pを前記Pよりも低いパワーとする前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<4> PとPとが、次式、70%≦(P/P)×100≦98%の関係を満たす前記<3>に記載の画像処理方法である。
<5> 描画セルが密集する領域に照射するレーザ光の走査線速度をVとし、描画セルが密集しない領域に照射するレーザ光の走査線速度をVとしたとき、前記Vを前記Vよりも大きい走査線速度とする前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<6> VとVとが、次式、102%≦(V/V)×100≦140%の関係を満たす前記<5>に記載の画像形成方法である。
<7> レーザー光を照射するレーザ光源が、半導体レーザ光、固体レーザ光、及びファイバーレーザ光の少なくともいずれかである前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<8> レーザ光の波長が700nm以上1,500nm以下である前記<7>に記載の画像形成方法である。
<9> レーザ光を照射するレーザ光源が、COレーザ光である前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<10> 2次元コードを形成する媒体が、支持体と、該支持体上に、少なくとも、第1の熱可逆記録層と、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含む光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有してなり、前記第1の熱可逆記録層及び前記第2の熱可逆記録層が、いずれも温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体である前記<1>から<9>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<11> 第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層のそれぞれが、ロイコ染料と可逆性顕色剤とを含有する前記<10>に記載の画像形成方法である。
<12> 光熱変換材料が、近赤外領域に吸収ピークを有する材料である前記<10>から<11>のいずれか記載の画像形成方法である。
<13> 光熱変換材料が、フタロシアニン系化合物である前記<10>から<12>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<14> 前記<10>から前記<13>のいずれかに記載の画像形成方法により2次元コードを形成する媒体に対して前記2次元コードを形成する画像形成工程と、前記媒体を加熱することにより該媒体に形成された前記2次元コードを消去する画像消去工程を含むことを特徴とする画像処理方法である。
<15> 描画セルが密集する領域が、1つのセルを中心セルとして、該中心セルを同心状に取り囲む8個のセルのうち、少なくとも4個以上のセルを描画する領域である前記<1>から<13>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<16> 描画セルが密集する領域におけるセルを連続して描画する際に、前記描画セルが密集する領域における全てのセル内に照射するレーザ光のエネルギー密度をEとする前記<1>から<13>に記載の画像形成方法である。
<17> 描画セルが密集する領域における描画セルが、中心セルに並置される位置に存在する4つのセルを含む前記<1>から<13>に記載の画像形成方法である。
<18> 前記<1>から<17>のいずれかに記載の画像形成方法に用いられ、レーザ光出射手段と、該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置される光走査手段と、レーザ光の光照射強度分布を変化させる光照射強度分布調整手段と、レーザ光を集光させるfθレンズと、を少なくとも有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決でき、前記目的を達成することができ、レーザ光により形成する画像を印字品質よく効率的に描画することが可能で、熱可逆記録媒体における繰り返し耐久性を向上させることが可能な画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】図1aは、ベタ画像の一例を説明する図である。
【図1b】図1bは、ベタ画像を形成するためのレーザ光の走査方法の一例を説明する図である。
【図2a】図2aは、対象セル及び描画セルが密集する領域の配置の一例を示す図である。
【図2b】図2bは、対象セル及び描画セルが密集する領域の配置の他の一例を示す図である。
【図3a】図3aは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図3b】図3bは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。
【図3c】図3cは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の更に他の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、RF−IDタグの一例を示す概略図である。
【図5A】熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図5B】熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図6】図6は、画像処理装置の一例を説明する図である。
【図7a】図7aは、実施例及び比較例において形成する2次元コードを示す図である。
【図7b】図7bは、実施例及び比較例におけるセルの描画方法を示す図である。
【図8a】図8aは、描画セルが密集する領域A(8セル分)を含む2次元コードを示す図である。
【図8b】図8bは、描画セルが密集する領域A(4セル分)を含む2次元コードを示す図である。
【図8c】図8cは、描画セルが密集する領域A(5セル分)を含む2次元コードを示す図である。
【図8d】図8dは、描画セルが密集する領域A(6セル分)を含む2次元コードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(画像形成方法及び画像処理方法)
本発明の画像形成方法は、セル内にレーザ光を照射することにより描画される描画セルを含む2次元コードを形成する画像形成方法において、前記描画セルが密集する領域における前記セルを連続して描画する際に、少なくとも1つの前記セルに照射する前記レーザ光のエネルギー密度をEとし、描画セルが密集しない領域におけるセルに照射するレーザ光のエネルギー密度をEとしたとき、前記Eを前記Eよりも低くすることを含む。
本発明の前記画像形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非可逆の記録媒体に対する画像形成方法として用いることもできるが、可逆性を有する熱可逆記録媒体に対して画像の形成及び消去を行う画像処理方法における画像形成方法として用いることが好ましい。
この場合、前記画像処理方法としては、本発明の前記画像記録方法を画像形成工程とし、更に、前記画像形成工程により形成された画像を消去する画像消去工程を含む。以下では、本発明の前記画像形成方法を画像形成工程と称することがある。
【0012】
前記Eと前記Eとの比、(E/E)×100(%)の上限としては、特に制限はなく、描画する環境温度、並びに前記対象セルの周囲に描画するセルの個数、セルの配置、セルの書き順、及びセルの大きさにより適宜選択することができるが、98%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下が特に好ましい。98%を超えると蓄熱が解消されず、要求したセルの大きさよりも画像形成後のセルが大きくなってしまい、モジュレーションが低下することがある。
前記(E/E)×100(%)の下限としては、描画する環境温度、並びに前記対象セルの周囲に描画するセルの個数、セルの配置、セルの書き順、及びセルの大きさにより適宜選択することができるが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、82%以上が特に好ましい。70%未満であると、描画セルそのもののモジュレーションが低下してしまうことや読み取りに十分な濃度の画像を形成できなくなることで、読み取りができなくなることがある。
【0013】
本明細書において、前記エネルギー密度は、前記画像形成方法において、前記レーザ光を重複させて画像形成する場合と、前記レーザ光を重複させずに画像形成する場合とで、それぞれに定義される。
前記レーザ光を重複させて画像形成する場合、前記エネルギー密度は、前記レーザ光の出力をP、前記レーザ光の走査線速度をV、前記レーザ光の副走査方向の間隔をIとしたとき、P/(V*I)で表される。
他方、前記レーザ光を重複させずに画像形成する場合、前記エネルギー密度は、前記レーザ光の出力をP、前記レーザ光の走査線速度をV、前記レーザ光の照射方向に対して垂直方向に配される媒体上に照らされるスポット径をrとしたとき、P/(V*r)で表される。
【0014】
前記画像形成方法におけるエネルギー密度を変更する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Pのみを変更する、Vのみを変更する、Iまたはrのみを変更するなどが挙げられる。
また、これらエネルギー密度変更の方法は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いることもできる。中でも、照射するレーザ光のエネルギー密度を変更する方法としては、P及びVのいずれかを変更する方法が好ましい。
【0015】
前記画像形成方法においては、前記描画セルが密集する領域に対して複数の前記描画セルを連続して描画する。ここで、本明細書において連続とは、一の描画セルの画像形成終了時点から他の描画セルの画像形成を開始するまでの間の時間が5s以内であることを示す。
また、前記描画セルが密集する領域は、1つのセルを中心セルとして、該中心セルを同心状に取り囲む8個のセルのうち、少なくとも4個以上のセルを描画する領域であり、5個以上のセルを描画する領域であることが好ましく、6個以上のセルを描画する領域であることがより好ましく、7個以上のセルを描画する領域であることがさらにより好ましく、8個以上のセルを描画する領域であることが特に好ましい。
ここで、前記中心セルは、描画を行わない対象セルとし、蓄熱の影響を受けやすいことからモジュレーション値を測定する対象とする。
前記描画セルが密集する領域において、前記エネルギー密度Eで描画される描画セルとしては、描画される全セルのうち、少なくとも1つであれば特に制限はないが、特に印字品質に優れた画像形成を行う観点からは、描画セルされる全セルが前記エネルギー密度Eで描画されることが好ましい。
【0016】
前記描画セルの密集する領域について、図を用いて説明する。図2aは、対象セル50を中心として同心状に取り囲む8個のセル70のうち、4個のセルを描画セルとした例を示す図である。
この図2aで示した前記セルの密集する領域の例においては、対象セル50を含む9個のセルで構成される全セル領域の4隅に位置するセル70に描画して描画セル60としたものを含んでいる。
一方、図2bは、対象セル50を中心として同心状に取り囲む8個のセルのうち、対象セル50に並置される4つのセル70を描画セル60とした例を示している。
これらの例において、図2aのように全セル領域の4隅に位置するセル70を描画する場合よりも、図2bのように対象セル50に並置される位置に存在する4つのセル70の全てを描画する場合に、前記エネルギー密度Eを前記エネルギー密度Eよりも低くすると、対象セル50のモジュレーションを特に改善できる。なお、ここで並置とは、セル70が対象セル50と一辺を共有することをいう。
前記図示した例は、前記描画セルの密集する領域の一例を挙げたものであり、対象セルの周囲に描画する描画セルの個数、配置は、適宜選択することができる。
【0017】
前記描画セルの密集する領域において、セルの個数、配置が密である場合としては、特に制限はないが、疎になっている場合に比べエネルギー密度の低下量を大きくして描画すること好ましい。このような描画方法により、描画セルの蓄熱によりモジュレーションが低下することを改善することができる。
より具体的には、2つの隣接するセルを連続して描画する場合、先に描画するセルにおけるエネルギー密度よりも低いエネルギー密度で後に描画するセルを描画することが好ましい。
また、隣接する関係にある3つのセルを連続して描画する場合、その描き順、及びエネルギー密度に制限はないが、以下の描き順、及びエネルギー密度で描画することが好ましい。
前記描画する3つのセルが横、及び縦のいずれかの方向に直線的に配される場合、一端側のセルを描画した後、中間のセルを描画し、その後、他端側のセルを描画することとし、前記中間のセルと前記他端側のセルとを前記一端側の描画セルよりも低いエネルギー密度で描画することが好ましい。この場合、前記一端側のセルから前記他端側のセルまで、隣接する順に描画を行っていくため、レーザ光の移動距離が短く、効率のより画像形成を行うことができる。
【0018】
また、前記描画セルが密集しない領域とは、1つのセルを中心として、該セルを同心状に取り囲む8個のセルのうち、3個以下のセルを描画する領域を示す。
前記画像形成方法においては、複数のセルを連続して描画する際に、前記描画セルが密集する領域に照射するレーザ光のエネルギー密度Eを描画セルが密集しない領域に照射するレーザ光のエネルギー密度Eよりも低くすることで、画像を印字品質よく効率的に描画することが可能となる。また、前記画像形成方法により、熱可逆記録媒体に画像形成を行った場合、過加熱による前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができるので、繰り返し耐久性を向上させることができる。
このようなエネルギー密度の異なる描画方法としては、特に制限はないが、(1)前記描画セルが密集する領域に照射するレーザ光のパワーPを、前記描画セルが密集しない領域に照射するレーザ光のパワーPよりも低くする、(2)前記描画セルが密集する領域に照射するレーザ光の走査線速度Vを、前記描画セルが密集しない領域に照射するレーザ光の走査線速度Vよりも大きくすることが好ましい。
【0019】
前記(1)の方法において、前記Pと前記Pとの比である、(P/P)×100(%)の上限としては、特に制限はなく、描画する環境温度、並びに前記対象セルの周囲に描画するセルの個数、セルの配置、セルの書き順、及びセルの大きさにより適宜選択することができるが、98%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下が特に好ましい。98%を超えると蓄熱が解消されず、要求したセルの大きさよりも画像形成後のセルが大きくなってしまい、モジュレーションが低下することがある。
前記(P/P)×100(%)の下限としては、描画する環境温度、並びに前記対象セルの周囲に描画するセルの個数、セルの配置、セルの書き順、及びセルの大きさにより適宜選択することができるが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、82%以上が特に好ましい。(P/P)×100(%)が、70%未満であると、描画セルそのもののモジュレーションが低下してしまうことや読み取りに十分な濃度の画像を形成できなくなることで、読み取りができなくなることがある。
【0020】
前記(2)の方法において、前記Vと前記Vとの比である、(V/V)×100(%)の上限としては、描画する環境温度、並びに前記対象セルの周囲に描画するセルの個数、セルの配置、セルの書き順、及びセルの大きさにより適宜選択することができるが、140%以下が好ましく、120%以下がより好ましく、118%以下が特に好ましい。140%を超えると、読み取りに十分な濃度の画像を形成できなくなることで、読み取りができなくなることがある。
前記(V/V)×100(%)の下限としては、描画する環境温度、並びに前記対象セルの周囲に描画するセルの個数、セルの配置、セルの書き順、及びセルの大きさにより適宜選択することができるが、102%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、105%以上が特に好ましい。前記(V/V)×100(%)が、102%未満であると蓄熱が解消されず、要求したセルの大きさよりも画像形成後の描画セルが大きくなってモジュレーションが低下することがある。
【0021】
前記画像形成工程において照射されるレーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1W以上が好ましく、3W以上がより好ましく、5W以上が特に好ましい。1W未満であると、画像形成に時間がかかり、画像形成時間を短くしようとすると出力が不足してしまう。
また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が特に好ましい。200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くことがある。
【0022】
前記画像形成工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が特に好ましい。300mm/s未満であると、画像形成に時間がかかる。
また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15,000mm/s以下が好ましく、10,000mm/s以下がより好ましく、8,000mm/s以下が特に好ましい。15,000mm/sを超えると、均一な画像が形成し難くなる。
【0023】
前記画像形成工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.02mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が特に好ましい。0.02mm未満であると、画像の線幅が細くなり、視認性が低下する。
また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が特に好ましい。3.0mmを超えると、画像の線幅が太くなり、隣接する線が重なり、小さいサイズの画像形成が不可能となる。
【0024】
前記レーザ光のレーザ光源としては、特に制限はないが、半導体レーザ光、固体レーザ光、ファイバーレーザ光、及びCOレーザ光の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0025】
<画像消去工程>
前記画像消去工程は、前記画像形成方法により2次元コードが形成された媒体に対して、前記媒体を加熱することにより該媒体に形成された前記2次元コードを消去する工程である。
前記媒体としては、特に制限はないが、熱可逆記録媒体が挙げられる。
【0026】
前記熱可逆記録媒体を加熱する方法としては、特に制限はないが、従来既知の加熱方法(レーザ光照射、熱風、温水、赤外線ヒータなどの非接触加熱方法、サーマルヘッド、ホットスタンプ、ヒートブロック、ヒートローラーなどの接触加熱方法)を挙げられるが、物流ラインを想定した場合、熱可逆記録媒体にレーザ光を照射して加熱する方法が非接触の状態で画像の消去を行うことができるため好ましい。
【0027】
前記熱可逆記録媒体に対し、前記画像消去工程において照射される前記レーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5W以上が好ましく、7W以上がより好ましく、10W以上が特に好ましい。5W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。
また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が特に好ましい。200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くおそれがある。
【0028】
前記熱可逆記録媒体に対し、前記画像消去工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100mm/s以上が好ましく、200mm/s以上がより好ましく、300mm/s以上が特に好ましい。100mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。
また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が特に好ましい。前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
【0029】
前記画像消去工程において照射されるレーザ光のレーザ光源としては、特に制限はないが、半導体レーザ光、固体レーザ光、ファイバーレーザ光、及びCOレーザ光の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0030】
前記熱可逆記録媒体に対し、前記画像消去工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。0.5mm未満であると、画像消去に時間がかかる。
また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、14.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、7.0mm以下が更に好ましい。14.0mmを超えると、出力が不足して画像の消去不良が発生することがある。
【0031】
<熱可逆記録媒体>
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有することが好ましく、更に必要に応じて適宜選択した、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、紫外線吸収層、バック層、保護層、中間層、アンダーコート層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有することが好ましい。
これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。ただし、前記光熱変換層の上に設ける層においては、照射する特定波長のレーザ光のエネルギーロスを少なくするために該特定波長において吸収の少ない材料を用いて層を構成させることが好ましい
【0032】
ここで、前記熱可逆記録媒体100の層構成としては、特に制限はなく、例えば、図3aに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104とをこの順に有する態様が挙げられる。
また、図3bに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有する態様が挙げられる。
また、図3cに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、紫外線吸収層107と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有してなり、支持体101の熱可逆記録層等を有していない側の面にバック層108を有する態様が挙げられる。
なお、図示を省略しているが、図3aの第2の熱可逆記録層104上、図3bの第2の酸素バリア層106上、図3cの第2の酸素バリア層106上の最表層に保護層を形成してもよい。
【0033】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0034】
前記支持体の材料としては、特に制限はなく、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、特に制限はなく、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、特に制限はなく、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料としては、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0035】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
また、前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜1,000μmがより好ましい。
【0036】
−第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層−
前記第1の熱可逆記録層及び前記第2の熱可逆記録層は、熱により色調が可逆的に変化する。
前記第1及び第2の熱可逆記録層(以下、「熱可逆記録層」と称することがある)のそれぞれは、電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料と、電子受容性化合物である顕色剤とを含み、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0037】
前記熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
【0038】
−ロイコ染料−
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0039】
−可逆性顕色剤−
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
【0040】
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
【0041】
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0042】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【化1】

【化2】

ただし、前記一般式(1)及び(2)中、Rは、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。Rは、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
【0043】
前記R、前記R、及び前記Rの炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
【0044】
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
【0045】
前記一般式(1)及び(2)における、前記X及び前記Yは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
前記一般式(1)及び(2)におけるnは、0〜1の整数を示す。
【0046】
前記電子受容性化合物(顕色剤)としては、特に制限はないが、消色促進剤として、分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ以上有する化合物を併用することが好ましい。このような態様であると、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上する。
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
前記熱可逆記録層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて熱可逆記録層の塗布特性や発色消色特性を改善、制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0048】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、支持体上に熱可逆記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が好適である。該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0049】
前記熱可逆記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)としては、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記熱可逆記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0050】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量としては、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0051】
前記熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率としては、特に制限はないが、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0052】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0053】
前記熱可逆記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
前記熱可逆記録層用塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・硬化方法等は公知の方法を用いることができる。
なお、熱可逆記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
【0054】
前記熱可逆記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を溶媒中に溶解乃至分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶媒に前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記樹脂と前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
【0055】
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記熱可逆記録層中では粒子状に分散して存在している。
【0056】
前記熱可逆記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0057】
前記熱可逆記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法で塗布する。
【0058】
前記熱可逆記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記熱可逆記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記熱可逆記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、目的とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
【0059】
−光熱変換層−
前記光熱変換層は、前記レーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。また熱可逆記録層と光熱変換層の間に両層が相互作用を抑制する目的でバリア層を形成することがあり、材料として熱伝導性のよい層が好ましい。前記熱可逆記録層と光熱変換層の間に挟む層は、目的に応じて適宜選択することができ、これらに限定されるものではない。
【0060】
前記光熱変換材料としては、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、特に制限はなく、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、特に制限はなく、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700nm〜1,500nmの波長範囲内に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系化合物などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系化合物が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。
該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましく、前記記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱架橋樹脂が好ましい。前記バインダー樹脂において、その水酸基価は50mgKOH/g〜400mgKOH/gであることが好ましい。
前記光熱変換層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜20μmであることが好ましい。
【0062】
−第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層−
第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層(以下、酸素バリア層ということがある)は、熱可逆記録層に酸素が進入することを防ぐことにより、前記第1及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を防止する目的で、第1及び第2の熱可逆記録層の上下に酸素バリア層を設けることが好ましい。即ち支持体と第1の熱可逆記録層との間に第1の酸素バリア層を設け、第2の熱可逆記録層上に第2の酸素バリア層を設けることが好ましい。
【0063】
前記酸素バリア層には、可視部の透過率が大きく、酸素透過度が低い樹脂又は高分子フィルム等が挙げられる。
該酸素バリア層としては、その用途、酸素透過性、透明性、塗工のしやすさ、接着性等によって選択される。
前記酸素バリア層の具体例としては、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリロニトリル、ポリアルキルビニルエステル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリフッ素化ビニル、ポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アセトニトリル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6及びポリアセタール等の樹脂、又はポリエチレンテレフタレートやナイロン等の高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したシリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ蒸着フィルムなどが挙げられる。これらの中でも高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したフィルムが好ましい。
【0064】
前記酸素バリア層の酸素透過度としては、20ml/m/day/MPa以下が好ましく、5ml/m/day/MPa以下がより好ましく、1ml/m/day/MPa以下が更に好ましい。前記酸素透過度が、20ml/m/day/MPaを超えると、前記第1及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を抑制できないことがある。
前記酸素透過度は、例えばJIS K7126 B法に準じた測定法により測定することができる。
【0065】
前記酸素バリア層は、前記第1の酸素バリア層と前記第2の酸素バリア層とで前記熱可逆記録層を挟み込むように設けることもできる。これにより、前記熱可逆記録層への酸素侵入をより効果的に防ぐことができ、ロイコ染料の光劣化をより少なくすることができる。
【0066】
前記酸素バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、溶融押出し法、コーティング法、ラミネート法、などが挙げられる。
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層のそれぞれ厚みとしては、特に制限はなく、樹脂又は高分子フィルムの酸素透過性によって異なるが、0.1μm〜100μmが好ましい。0.1μmより薄いと酸素バリアが不完全であり、100μm厚いと透明性が低下するので好ましくない。
【0067】
前記酸素バリア層と下層の間には、接着層を設けてもよい。
前記接着層の形成方法としては、特に制限なく、公知のコーティング法、ラミネート法等を挙げることができる。
前記接着層の厚みとしては、特に制限ないが、0.1μm〜5μmが好ましい。前記接着層は、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記熱可逆記録層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
【0068】
−保護層−
前記熱可逆記録媒体には、前記熱可逆記録層を保護する目的で該熱可逆記録層上に保護層を設けることが好ましい。
該保護層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
【0069】
前記保護層としては、バインダー樹脂、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記保護層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
【0070】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
また、前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量は、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0071】
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射としては、特に制限はなく、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
前記光源としては、例えば水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
【0072】
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
【0073】
また、搬送性を良好にするため、重合性基を持つシリコーン、シリコーングラフトをした高分子;ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤;シリコーンオイル等の滑剤を添加することができる。これらの添加量としては、保護層の樹脂成分全質量に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、静電気対策として導電性フィラーを用いることが好ましく、更に針状導電性フィラーを用いることが好ましい。
【0074】
前記無機顔料の粒径としては、特に制限はなく、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。
前記無機顔料の添加量としては、特に制限はなく、前記耐熱性樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
【0075】
なお、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
また、前記熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、前記熱可逆記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
【0076】
前記熱硬化性樹脂は、架橋されていることが好ましい。従って熱硬化性樹脂としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し画像記録・消去を行っても熱可逆記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0077】
前記硬化剤としては、特に制限はなく、例えば、前記熱可逆記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に用いることができる。
【0078】
前記保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等は前記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
【0079】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが特にに好ましい。0.1μm未満であると、熱可逆記録媒体の保護層としての機能を十分に果たすことができず、熱による繰り返し履歴によりすぐに劣化し、繰り返し使用することができなくなってしまうことがあり、20μmを超えると、保護層の下層にある感熱に十分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像記録と消去が十分にできなくなってしまうことがある。
【0080】
−紫外線吸収層−
前記熱可逆記録層中のロイコ染料の紫外線による着色及び光劣化による消え残りを防止する目的で、支持体と反対側に位置する熱可逆記録層の支持体とは反対側に紫外線吸収層を設けることが好ましく、これによって前記記録媒体の耐光性が改善できる。紫外線吸収層は390nm以下の紫外線を吸収するように、紫外線吸収層の厚みを適宜選択することが好ましい。
前記紫外線吸収層は、少なくともバインダー樹脂と紫外線吸収剤を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0081】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
【0082】
また、紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いることが好ましい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、ロイコ染料の光劣化の原因である340〜400nmの紫外線を吸収することからベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
【0083】
前記紫外線吸収ポリマーとしては、特に制限はないが、架橋されていることが好ましい。従って紫外線吸収ポリマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0084】
前記紫外線吸収層の厚みとしては、特に制限はないが、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。前記紫外線吸収層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、紫外線吸収層の塗工方法、紫外線吸収層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0085】
−中間層−
前記熱可逆記録層と前記保護層の接着性向上、保護層の塗布による熱可逆記録層の変質防止、保護層中の添加剤の熱可逆記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。
前記中間層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0086】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0087】
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。該紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
【0088】
前記中間層の厚みとしては、特に制限はないが、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0089】
−アンダー層−
印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と熱可逆記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記熱可逆記録層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層は、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0090】
前記中空粒子としては、特に制限はなく、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば10質量%〜80質量%が好ましい。
【0092】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、前記熱可逆記録層、又は前記紫外線吸収構造を持つポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
【0093】
前記アンダー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが更に好ましい。
【0094】
−バック層−
前記熱可逆記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために支持体の熱可逆記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0095】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記熱可逆記録層、又は前記保護層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
【0096】
−接着層又は粘着層−
前記支持体の記録層形成面の反対面に接着剤層又は粘着剤層を設けて熱可逆記録ラベルとすることができる。前記接着剤層又は粘着剤層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。
【0097】
前記接着剤層又は粘着剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0098】
前記接着剤層又は粘着剤層の材料としては、特に制限はなく、ホットメルトタイプでもよい。剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように接着剤層又は粘着剤層を設けることにより、記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤層又は粘着剤層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。
【0099】
前記熱可逆記録媒体には、前記支持体と前記記録層との間に視認性を向上させる目的で、着色層を設けてもよい。前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し、乾燥するか、あるいは単に着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0100】
前記熱可逆記録媒体には、カラー印刷層を設けることもできる。前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられ、前記樹脂バインダーとしては各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。該カラー印刷層の厚みとしては、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0101】
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、非可逆性記録層を併用しても構わない。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じでも異なってもよい。また、本発明の熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部もしくは全面、又は/もしくは反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けてもよく、更に着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
【0102】
前記熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0103】
前記熱可逆記録媒体としては、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。また、カード状に加工されたものについてはプリペイドカードやポイントカード、更にはクレジットカードなどへの応用が挙げられる。カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは値札等に利用できる。また、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは工程管理や出荷指示書、チケット等に使用できる。ラベル状のものは貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰り返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは画像記録する範囲が広くなるため一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0104】
−熱可逆記録部材とRF−IDとの組み合わせ例−
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えた時には熱可逆記録部の表示を書き換えることで、熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
【0105】
前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RF−IDタグなどが好ましく用いられる。工程管理や物品管理等に使用する場合には特にRF−IDタグが好ましく用いられる。なお、前記RF−IDタグはICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
【0106】
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適なものとしてRF−IDタグが挙げられる。
ここで、図4は、RF−IDタグ85の概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85はICチップ81と、該ICチップに接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は記憶部、電源調整部、送信部、受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグとリーダライタのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−IDのアンテナがリーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式の2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ内のICチップが起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグから信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
【0107】
前記RF−IDタグはラベル状又はカード状に加工されており、RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。RF−IDタグは記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼ることが好ましい。RF−IDタグと熱可逆記録媒体を貼り合わせるためには公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、熱可逆記録媒体とRF−IDをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
【0108】
<画像形成及び画像消去メカニズム>
前記画像形成及び画像消去メカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
【0109】
図5Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図5Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
【0110】
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度Tにて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度Tにて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
【0111】
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図5Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもTで凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
【0112】
更に図5Aにおいて、前記記録層を溶融温度T以上の温度Tに繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図5Aの前記溶融温度Tと前記温度Tの差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
【0113】
(画像形成装置)
画像形成装置は、セル内にレーザ光を照射することにより描画される描画セルを含む2次元コードを形成する画像形成装置であって、前記描画セルが密集する領域における前記セルを連続して描画する際に、少なくとも1つの前記セル内に照射する前記レーザ光のエネルギー密度をEとし、前記描画セルが密集しない領域における前記セル内に照射するレーザ光のエネルギー密度をEとしたとき、前記Eより前記Eよりも低くする画像形成手段を有し、必要に応じて、画像形成に必要なその他の手段を有する。
【0114】
前記画像形成装置としては、前記画像形成手段を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2次元コードを形成する媒体として、熱可逆性記録媒体に対する可逆的な画像形成及び画像消去に用いられる場合、該媒体に形成された前記2次元コードを該媒体を加熱することにより消去する画像消去手段を含む画像形成装置として構成されることが好ましい。
【0115】
前記画像処理装置は、前記画像処理方法に用いられ、レーザ光照射手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。また本発明においては画像を形成する媒体において、高効率でレーザ光を吸収するように、出射するレーザ光の波長を選択する必要がある。例えば本発明における熱可逆記録媒体はレーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。よって含有させる光熱変換材料が他材料に比べ最も高効率でレーザ光を吸収するように、出射するレーザ光の波長を選択する必要がある。
このような前記画像形成装置としては、レーザ光出射手段と、該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置される光走査手段と、レーザ光の光照射強度分布を変化させる光照射強度分布調整手段と、レーザ光を集光させるfθレンズと、を少なくとも有することが好ましい。
【0116】
−レーザ光出射手段−
前記レーザ光出射手段としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば半導体レーザ、固体レーザ、ファイバーレーザ、及びCOレーザが挙げられる。これらの中でも波長選択性が広いこと、レーザ装置としてはレーザ光源自体が小さく、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという点から、半導体レーザ光が特に好ましい。
【0117】
前記レーザ光出射手段から出射される半導体レーザ、固体レーザ、ファイバーレーザ光の波長としては、700nm以上が好ましく、720nm以上がより好ましく、750nm以上が更に好ましい。前記レーザ光の波長の上限としては、目的に応じて適宜選択することができるが、1,500nm以下が好ましく、1,300mm以下がより好ましく、1,200nm以下が特に好ましい。
前記レーザ光の波長を700nmより短い波長にすると、可視光領域では媒体の画像形成時のコントラストが低下したり、媒体が着色してしまうという問題がある。更に短い波長の紫外光領域では、媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。また熱可逆記録媒体に添加する光熱変換材料には、繰返し画像処理に対する耐久性を確保するために高い分解温度を必要とし、光熱変換材料に有機色素を用いる場合、分解温度が高く吸収波長が長い光熱変換材料を得るのは難しい。これよりレーザ光の波長としては1,500nm以下が好ましい。
【0118】
COレーザから出射されるレーザ光の波長は、遠赤外領域の10.6μmであり、レーザ光を吸収して発熱させるための添加物を添加しなくとも媒体表面でレーザ光を吸収する。また、該添加物は、近赤外領域の波長を有するレーザ光を用いても、若干ではあるが、可視光をも吸収することがあるため、該添加物が不要となるCOレーザは、画像コントラストの低下を防ぐことができるという利点がある。
【0119】
前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるものと同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。
【0120】
ここで、図6に、前記画像処理装置の一例についてレーザ照射ユニットを中心に示す。
発振器ユニットは、レーザ発振器1、ビームエキスパンダ2、スキャンニングユニット5、fθレンズ6などで構成されている。前記光走査手段としては、図6に示すスキャニングユニット5等が挙げられる。
レーザ発振器1は、光強度が強く、指向性の高いレーザ光を得るために必要なものであり、例えば、レーザ媒質の両側にミラーを配置し、該レーザ媒質をポンピング(エネルギー供給)し、励起状態の原子数を増やし反転分布を形成させて誘導放出を起こさせる。そして、光軸方向の光のみが選択的に増幅されることにより、光の指向性が高まり出力ミラーからレーザ光が放出される。
【0121】
前記スキャンニングユニット5は、ガルバノメータ4と、該ガルバノメータ4に取り付けられたミラー4Aとで構成されている。そして、前記レーザ発振器1から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ4に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のミラー4Aで高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体7上に、画像の形成又は消去を行うようになっている。
前記電源制御ユニットは、レーザ媒質を励起する光源の駆動電源、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部等などで構成されている。
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の記録又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作製及び編集を行うユニットである。
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像形成/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を有している。
前記画像形成装置におけるその他の事項については、特に制限はなく、本発明の画像形成方法において説明した事項、及び公知の事項を適用することができる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0123】
(製造例1)
<熱可逆記録媒体の作製>
熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0124】
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0125】
−第1の熱可逆記録層の形成−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0126】
【化3】

【化4】

【化5】

次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌して、熱可逆記録層用塗布液を調製した。
【0127】
得られた熱可逆記録層用塗布液を、前記支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6μmの第1の熱可逆記録層を形成した。
【0128】
−光熱変換層の形成−
フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR−14、吸収ピーク波長:824nm)1質量%溶液を4質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン20質量部、架橋剤としてイソシアネート(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製)5質量部をよく攪拌し、光熱変換層塗布液を作製した。得られた光熱変換層用塗布液を、前記第1の熱可逆記録層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚さ4μmの光熱変換層を形成した。
【0129】
−第2の熱可逆記録層の形成−
前記第1の熱可逆記録層と同じ熱可逆記録層用組成物を、前記光熱変換層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6μmの第2の熱可逆記録層を形成した。
【0130】
−紫外線吸収層の形成−
紫外線吸収ポリマーの40質量%溶液(株式会社日本触媒製、UV−G300)10質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン12質量部を加え、よく攪拌して紫外線吸収層用塗布液を調製した。
【0131】
次に、前記第1の熱可逆記録層、前記光熱変換層、及び前記第2の熱可逆記録層が形成された支持体に、前記紫外線吸収層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60度にて24時間加熱し、厚み4μmの紫外線吸収層を形成した。
次に、前記紫外線吸収層上、及び前記第1の熱可逆記録層と支持体との間に、下記の第1及び第2の酸素バリア層を設けた。
【0132】
−第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の形成−
ウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部を加え、よく攪拌して酸素バリア層用塗布液を調製した。
【0133】
次に、シリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、酸素透過度:0.5ml/m/day/MPa)上に、上記酸素バリア層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、80℃にて1分間加熱及び乾燥した後、前記紫外線吸収層上、及び支持体上に貼合せ、50℃にて24時間加熱し、厚み12μmの第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層を形成した。
【0134】
−バック層の形成−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
【0135】
次に、前記層が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1における熱可逆記録媒体を作製した。
【0136】
(製造例2)
<熱可逆記録媒体の作製>
製造例1において、光熱変換材料としてフタロシアニン系光熱変換材料の代わりにシアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−2900、吸収ピーク波長:830nm)を添加し、よく撹拌させて調製した光熱変換層用塗布液を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、製造例2における熱可逆記録媒体を作製した。なお、シアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−2900)は製造例1と同様な感度になる添加量とした。
【0137】
(製造例3)
製造例1において、光熱変換材料と、第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層とを形成しないこと以外は、製造例1と同様にして製造例3における熱可逆記録媒体を作製した。
【0138】
−画像印字品質の評価−
前記製造例1〜3における熱可逆記録媒体に対して、下記実施例1〜18、比較例1〜7、及び参考例1〜6のように画像を形成し、画像の印字品質の評価を行った。画像の印字品質の評価は、2次元コード読取装置(WEBSCAN TruCheck 401−RL ムナゾウ株式会社)により描画画像を読み取り、図8a〜dにおける対象セル10のモジュレーション値を測定することにより評価した。なお、モジュレーション値のグレードは、50より大きいときはA、40以上のときにB、30以上のときにC、20以上のときにD、20より小さいときにFと定義され、Aを大変よい、Bをよい、Cを普通、Dを悪い、Fを極めて悪いと評価する。
なお、前記モジュレーションの定義は、ISO15415に準ずる。
【0139】
(実施例1)
<画像形成>
得られた製造例1における熱可逆記録媒体に対して、QPC Laser社製半導体レーザES-6200-A(中心波長:808nm)により、照射距離145mm、線速2,000mm/sとなるように調整して、1つのセルに対して間隔0.10mmの2本のレーザ光を長さ0.20mmで直線状に走査して描画セルを形成した。
この1つのセルに対する描画セル(ベタ画像、図1a参照)の描画方法は、図1bに示す、一行ずつ折返して描画する方法とし、図7bの矢印の向きにセルを1行ずつ描画し、矢印に示した数字の順番に1行ずつ描画して行った。
この描画方法により複数のセルに連続してベタ画像を形成し、図7aに示す2次元コードを記録した。
この際、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(8セル分)に着目し、該描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)とし、描画セルが密集しない領域Bを含む斜線部以外のセルに照射するレーザ光の出力を13.8W(エネルギー密度:69mJ/mm)として、実施例1における画像形成を行った。
【0140】
(実施例2)
実施例1において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から13.5W(エネルギー密度:67.5mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における画像形成を行った。
【0141】
(実施例3)
実施例1において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から10.0W(エネルギー密度:50mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における画像形成を行った。
【0142】
(比較例1)
実施例1において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から13.8W(エネルギー密度:69mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における画像形成を行った。
【0143】
(参考例1)
実施例1において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から9.3W(エネルギー密度:47mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、参考例1における画像形成を行った。
なお、本明細書における実施条件においては、50mJ/mmが2次元コード読取装置で画像を認識することが可能な最低エネルギー密度であり、50mJ/mm未満の実施条件のものについては、参考例とした。
【0144】
以上、実施例1〜3、比較例1、及び参考例1における画像形成により形成された画像に対する印字品質の評価結果を下記表1に示す。
【表1】

【0145】
(実施例4)
<画像形成>
実施例1において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(8セル分)に代えて、図8bの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(4セル分)に着目して画像形成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における画像形成を行った。なお、図8bの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(4セル分)に照射するレーザ光の出力は、実施例1と同様に、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)であり、描画セルが密集しない領域Bを含む斜線部以外のセルに照射するレーザ光の出力を13.8W(エネルギー密度:69mJ/mm)である。
【0146】
(実施例5)
実施例4において、図8bの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から13.5W(エネルギー密度:67.5mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5における画像形成を行った。
【0147】
(実施例6)
実施例4において、図8bの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から10.0W(エネルギー密度:50mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例6における画像形成を行った。
【0148】
(比較例2)
実施例4において、図8bの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から13.8W(エネルギー密度:69mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例4と同様にして、比較例2における画像形成を行った。
【0149】
(参考例2)
実施例4において、図8bの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から9.3W(エネルギー密度:47mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例4と同様にして、参考例2における画像形成を行った。
【0150】
以上、実施例4〜6、比較例2、及び参考例2における画像形成により形成された画像に対する印字品質の評価結果を下記表2に示す。
【表2】

【0151】
(実施例7)
<画像形成>
実施例1において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(8セル分)に代えて、図8cの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(5セル分)に着目して画像形成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7における画像形成を行った。なお、図8cの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(5セル分)に照射するレーザ光の出力は、実施例1と同様に、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)であり、描画セルが密集しない領域Bを含む斜線部以外のセルに照射するレーザ光の出力を13.8W(エネルギー密度:69mJ/mm)である。
【0152】
(実施例8)
実施例7において、図8cの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から13.5W(エネルギー密度:67.5mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例7と同様にして、実施例8における画像形成を行った。
【0153】
(実施例9)
実施例7において、図8cの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から10.0W(エネルギー密度:50mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例7と同様にして、実施例9における画像形成を行った。
【0154】
(比較例3)
実施例7において、図8cの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から13.8W(エネルギー密度:69mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例7と同様にして、比較例3における画像形成を行った。
【0155】
(参考例3)
実施例7において、図8cの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から9.3W(エネルギー密度:47mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例7と同様にして、参考例3における画像形成を行った。
【0156】
以上、実施例7〜9、比較例3、及び参考例3における画像形成により形成された画像に対する印字品質の評価結果を下記表3に示す。
【表3】

【0157】
(実施例10)
<画像形成>
実施例1において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(8セル分)に代えて、図8dの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(6セル分)に着目して画像形成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10における画像形成を行った。なお、図8dの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(6セル分)に照射するレーザ光の出力は、実施例1と同様に、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)であり、描画セルが密集しない領域Bを含む斜線部以外のセルに照射するレーザ光の出力を13.8W(エネルギー密度:69mJ/mm)である。
【0158】
(実施例11)
実施例10において、図8dの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から13.5W(エネルギー密度:67.5mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例11における画像形成を行った。
【0159】
(実施例12)
実施例10において、図8dの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から10.0W(エネルギー密度:50mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例12における画像形成を行った。
【0160】
(比較例4)
実施例10において、図8dの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から13.8W(エネルギー密度:69mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例10と同様にして、比較例4における画像形成を行った。
【0161】
(参考例4)
実施例10において、図8dの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を、11.4W(エネルギー密度:57mJ/mm)から9.3W(エネルギー密度:47mJ/mm)に変えたこと以外は、実施例10と同様にして、参考例4における画像形成を行った。
【0162】
以上、実施例10〜12、比較例4、及び参考例4における画像形成により形成された画像に対する印字品質の評価結果を下記表4に示す。
【表4】

【0163】
(実施例13)
<画像形成>
実施例1において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の線速を2,000mm/sから2,400mm/sに変え、かつ、該レーザ光の出力を11.4Wから13.8Wに変えることにより、エネルギー密度を69mJ/mmから57.5mJ/mmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例13における画像形成を行った。なお、描画セルが密集しない領域Bを含む斜線部以外のセルに照射するレーザ光の線速は、2,000mm/sであり、該レーザ光の出力は、13.8Wである(エネルギー密度:69mJ/mm)。
【0164】
(実施例14)
実施例13において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の線速を2,400mm/sから2,040mm/sに変え、エネルギー密度を69mJ/mmから67.5mJ/mmに変えたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例14における画像形成を行った。
【0165】
(実施例15)
実施例13において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の線速を2,400mm/sから2,750mm/sに変え、エネルギー密度を69mJ/mmから50mJ/mmに変えたこと以外は、実施例13と同様にして、実施例15における画像形成を行った。
【0166】
(参考例5)
実施例13において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の線速を2,350mm/sから2,900mm/sに変え、エネルギー密度を69mJ/mmから47.5mJ/mmに変えたこと以外は、実施例13と同様にして、参考例5における画像形成を行った。
【0167】
以上、実施例13〜15及び参考例5における画像形成により形成された画像に対する印字品質の評価結果を下記表5に示す。
【表5】

【0168】
(実施例16)
<繰り返し画像処理>
実施例1における画像形成と、下記の条件による画像消去とによる画像処理を1回として、これを2,000回繰り返して行った。その後、実施例1における画像形成と同様の画像形成を1回行って、実施例16における画像形成を行った。
【0169】
<画像消去>
得られた製造例1における熱可逆記録媒体に対して、QPC Laser社製半導体レーザES−6200−A(中心波長:808nm)により出力18W、線速500mm/s、照射距離195mmとなるように調整し、ベタ画像にレーザ光を直線状に走査しつつ、これを複数回折り返して行い(図1b参照)、画像を消去した。折返しの消去間隔は、0.5mmとした。
【0170】
(実施例17)
実施例16において、画像処理を実施例1における画像形成に代えて実施例4における画像形成により行い、画像処理後、実施例1における画像形成を1回行うことに代えて、実施例4における画像形成を1回行ったと以外は、実施例16と同様にして、実施例17における画像形成を行った。
【0171】
(比較例5)
実施例16において、画像処理を、実施例1における画像形成に代えて比較例1における画像形成により行い、画像処理後、実施例1における画像形成を1回行うことに代えて、比較例1における画像形成を1回行ったこと以外は、実施例16と同様にして、比較例5における画像形成を行った。
【0172】
(参考例6)
実施例16において、製造例1における熱可逆記録媒体を製造例2における熱可逆記録媒体に代えたこと以外は、実施例16と同様にして、参考例6における画像形成を行った。
【0173】
(比較例6)
参考例6において、画像処理を、実施例1における画像形成に代えて比較例1における画像形成により行い、画像処理後、実施例1における画像形成を1回行うことに代えて、比較例1における画像形成を1回行ったこと以外は、参考例6と同様にして、比較例6における画像形成を行った。
【0174】
以上、実施例16、17、比較例5、6、及び参考例6における画像形成により形成された画像に対する印字品質の評価結果を下記表6に示す。
【表6】

【0175】
(実施例18)
<画像形成>
得られた製造例3における熱可逆記録媒体に対して、サンクス株式会社製COレーザ LP−440により、照射距離246mm、線速2,000mm/sとなるように調整して、1つのセルに対して間隔0.10mmの2本のレーザ光を長さ0.20mmで直線状に走査して描画セルを形成した。
この1つのセルに対する描画セル(ベタ画像、図1a参照)の描画方法は、図1bに示す、一行ずつ折返して描画する方法とし、図7bの矢印の向きにセルを1行ずつ描画し、矢印に示した数字の順番に1行ずつ描画して行った。
この描画方法により複数のセルに連続してベタ画像を形成し、図7aに示す2次元コードを記録した。
この際、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域A(8セル分)に着目し、該描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を14.6W(エネルギー密度:73mJ/mm)とし、描画セルが密集しない領域Bを含む斜線部以外のセルに照射するレーザ光の出力を17.7W(エネルギー密度:89mJ/mm)として、実施例18における画像形成を行った。
【0176】
(比較例7)
実施例18において、図8aの斜線部で示した描画セルが密集する領域Aに照射するレーザ光の出力を14.6Wから17.7Wに変えたこと以外は、実施例18と同様にして、比較例7における画像形成を行った。
【0177】
以上、実施例18及び比較例7における画像形成により形成された画像に対する印字品質の評価結果を下記表7に示す。
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の画像形成方法は、2次元コードをレーザ光により印字品質よく効率的に描画することができ、また、熱可逆記録媒体を用いる画像形成において繰り返し耐久性を向上させることができ、物流及び配送システムにおける媒体に対する画像形成に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0179】
1 レーザ発振器
2 ビームエキスパンダ
3 マスクまたは非球面レンズ
4 ガルバノメータ
4A ガルバノミラー
5 スキャニングユニット
6 fθレンズ
7 熱可逆記録媒体
10、50 対象セル
60 描画セル
70 セル
81 ICチップ
82 アンテナ
85 RF−IDタグ
100 熱可逆記録媒体
101 支持体
102 第1の熱可逆記録層
103 光熱変換層
104 第2の熱可逆記録層
105 第1の酸素バリア層
106 第2の酸素バリア層
107 紫外線吸収層
108 バック層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0180】
【特許文献1】特開2004−265247号公報
【特許文献2】特許第3998193号公報
【特許文献3】特許第3161199号公報
【特許文献4】特開平9−30118号公報
【特許文献5】特開2000−136022号公報
【特許文献6】特開平5−8537号公報
【特許文献7】特開平11−151856号公報
【特許文献8】特開2001−232848号公報
【特許文献9】特許3557512号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル内にレーザ光を照射することにより描画される描画セルを含む2次元コードを形成する画像形成方法において、前記描画セルが密集する領域における前記セルを連続して描画する際に、少なくとも1つの前記セル内に照射する前記レーザ光のエネルギー密度をEとし、前記描画セルが密集しない領域における前記セル内に照射するレーザ光のエネルギー密度をEとしたとき、前記Eを前記Eよりも低くすることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
とEとが、次式、70%≦(E/E)×100≦98%の関係を満たす請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
描画セルが密集する領域に照射するレーザ光のパワーをPとし、描画セルが密集しない領域に照射するレーザ光のパワーをPとしたとき、前記Pを前記Pよりも低いパワーとする請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項4】
とPとが、次式、70%≦(P/P)×100≦98%の関係を満たす請求項3に記載の画像処理方法。
【請求項5】
描画セルが密集する領域に照射するレーザ光の走査線速度をVとし、描画セルが密集しない領域に照射するレーザ光の走査線速度をVとしたとき、前記Vを前記Vよりも大きい走査線速度とする請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
とVとが、次式、102%≦(V/V)×100≦140%の関係を満たす請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
レーザ光を照射するレーザ光源が、半導体レーザ光、固体レーザ光、及びファイバーレーザ光の少なくともいずれかである請求項1から6のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
レーザ光の波長が700nm以上1,500nm以下である請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
レーザ光を照射するレーザ光源が、COレーザ光である請求項1から6のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項10】
2次元コードを形成する媒体が、支持体と、該支持体上に、少なくとも、第1の熱可逆記録層と、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含む光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有してなり、前記第1の熱可逆記録層及び前記第2の熱可逆記録層が、いずれも温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体である請求項1から9のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項11】
第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層のそれぞれが、ロイコ染料と可逆性顕色剤とを含有する請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
光熱変換材料が、近赤外領域に吸収ピークを有する材料である請求項10から11のいずれか記載の画像形成方法。
【請求項13】
光熱変換材料が、フタロシアニン系化合物である請求項10から12のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項14】
請求項10から請求項13のいずれかに記載の画像形成方法により2次元コードを形成する媒体に対して前記2次元コードを形成する画像形成工程と、前記媒体を加熱することにより該媒体に形成された前記2次元コードを消去する画像消去工程を含むことを特徴とする画像処理方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【公開番号】特開2011−56910(P2011−56910A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212035(P2009−212035)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】