説明

画像形成方法

【課題】低温定着および低圧定着により低エネルギー化が実現されながらも、高い定着強度を有する画像を形成することのできる画像形成方法の提供。
【解決手段】画像形成方法は、静電潜像担持体の表面にトナーにより形成したトナー像を画像支持体に転写して転写トナー像を形成するトナー像形成工程と、転写トナー像を加熱定着部材と加圧定着部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部において画像支持体に定着して定着画像を形成する定着工程とを含み、トナーが結着樹脂を含有するトナー粒子よりなり、その粒径が個数基準のメディアン径で16〜40μmであり、かつ、そのガラス転移点(TgA)が25℃以上55℃未満であり、定着工程が、前記加熱定着部材の表面温度が(TgA−10)〜(TgA+20)℃に設定され、かつ、前記定着ニップ部における定着圧力が0.01〜0.1MPaに設定される条件で行われることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、種々の分野で省エネルギー化が検討されており、画像形成装置などの情報機器においても、待機時の省電力化など低エネルギーで使用できるよう取り組みが進められてきており、一方では、最もエネルギーを消費する定着工程において、低温定着や低圧定着を図る検討がなされている。
【0003】
このような定着温度の低下を実現させるために、例えば特許文献1および特許文献2には、圧力定着トナーとしてカプセルトナーを用いた、圧力転写方式による画像形成方法や圧力転写定着方式による画像形成方法が提案されている。このような画像形成方法は、定着時に必要とされる熱エネルギーが不要または少ないのみならず、画像形成装置本体の電源を入れてから印刷可能となるまでの時間が少ないという利点を有している。
【0004】
しかしながら、圧力転写方式や圧力転写定着方式による画像形成方法においては、カプセルトナーは現像装置内における撹拌によっても破壊されない程度の強度を有していなければならず、従って、このようなカプセルトナーを圧力転写または圧力転写定着する場合においては、非常に高い圧力が必要とされる。
【0005】
そこで、例えば特許文献3には、圧力転写(圧力転写定着)を行う前に予めカプセルトナーにおけるカプセルを破壊する事前破壊手段を設けることにより、圧力転写(圧力転写定着)時における圧力が低減される方法が提案されている。このような方法によれば、カプセルトナーは事前破壊手段によりカプセルが破壊され、これにより、圧力転写(圧力転写定着)時においてカプセル内に含有されるコア材が滲出し、紙などの画像支持体に転写(転写定着)される。
しかしながら、カプセルトナーがある程度の大きさの粒径を有しているものであれば、カプセル内に含有されるコア材の量が十分に確保されるため、画像支持体に対する接着力が十分に得られるが、カプセルトナーが小粒径のものである場合においては、カプセル内に含有されるコア材の量が少量であるため、事前破壊手段によりそのほとんどのコア材が滲出してしまい、圧力転写(圧力転写定着)時に必要とされる量のコア材が不足し、画像支持体に対して高い接着力が得られないという問題がある。
【0006】
さらに、近年、画像の高画質化の要請に伴って、トナーの粒径が小粒径化される傾向にあるが、圧力転写方式(圧力転写定着方式)による画像形成方法に用いられる圧力定着トナーが、その粒径が小さいもの、例えば粒径が10μmよりも小さいものである場合においては、当該トナーを構成するトナー粒子が紙の繊維間に入り込むことにより、圧力がかかりにくい状態となり、十分な定着強度が得られないという問題が生じることも発覚した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−125961号公報
【特許文献2】特開昭59−184385号公報
【特許文献3】特開昭63−43163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、低温定着および低圧定着が図られて低エネルギー化が実現されながらも、高い定着強度を有する画像を形成することのできる画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体の表面にトナーにより形成したトナー像を画像支持体に転写して転写トナー像を形成するトナー像形成工程と、
前記転写トナー像を、加熱定着部材と加圧定着部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部において前記画像支持体に定着して定着画像を形成する定着工程とを含む画像形成方法において、
前記トナーが結着樹脂を含有するトナー粒子よりなり、当該トナーの粒径が個数基準のメディアン径(D50)で16〜40μmであり、かつ、当該トナーのガラス転移点(TgA)が25℃以上55℃未満であり、
前記定着工程が、前記加熱定着部材の表面温度が(TgA−10)〜(TgA+20)℃に設定され、かつ、前記定着ニップ部における定着圧力が0.01〜0.1MPaに設定される条件で行われることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成方法においては、前記トナーを構成するトナー粒子は、コア−シェル構造を有するものであることが好ましい。
【0011】
本発明の画像形成方法においては、前記トナーは、個数基準のメディアン径(D50)の粒度分布における変動係数(CV値)が5〜20%のものであることが好ましい。
【0012】
本発明の画像形成方法においては、前記トナーは、個数基準のメディアン径(D50)の粒度分布における変動係数(CV値)が5〜15%のものであることが好ましい。
【0013】
本発明の画像形成方法においては、前記トナーを構成するトナー粒子に含有される結着樹脂が、非晶性樹脂よりなるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成方法によれば、特定の定着温度条件下および特定の定着圧力条件下において、特定範囲の大粒径トナーが用いられることにより、低温定着および低圧定着が図られて低エネルギー化が実現されながらも、高い定着強度を有する画像を形成することができる。このような効果が得られる理由は以下のように推察される。
すなわち、画像形成に供されるトナーを構成する結着樹脂は、当該トナーのガラス転移点近傍においては、結着樹脂における分子鎖の一部がミクロブラウン運動を開始し、粘着性が発生し始める状態となる。本発明の画像形成方法においては、結着樹脂がこのような粘着性の発生し始める状態の温度において定着工程が行われるが、トナーが特定範囲の大きい粒径を有するものであることにより、当該トナーの画像支持体に対する接触面積が十分に確保されるので、高い定着圧力を要することなく、当該トナーの画像支持体への高い接着性が得られ、従って、低温定着および低圧定着が図られて低エネルギー化が実現されながらも、高い定着強度を有する画像を形成することができると推察される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
〔画像形成方法〕
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体の表面にトナーにより形成したトナー像を画像支持体に転写して転写トナー像を形成するトナー像形成工程と、前記転写トナー像を、加熱定着部材と加圧定着部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部において前記画像支持体に定着して定着画像を形成する定着工程とを経ることにより、画像支持体上に転写トナー像が定着された定着画像を可視画像として得る方法である。
【0018】
本発明の画像形成方法においては、例えば図1に示すような画像形成装置が用いられる。
この画像形成装置は、円筒状の基体の外周面上に導電層および有機感光体(OPC)よりなる光導電体層が形成され、図示しない駆動源からの動力により時計方向に回転される静電潜像担持体である感光体ドラム10と、当該感光体ドラム10の表面に一様な電位を与える帯電手段11と、一様に帯電された感光体ドラム10の表面上に画像データに基づいて露光を行い、露光部分の電位を低下させることにより静電潜像を形成する露光手段12と、回転する現像スリーブ131を備え、この上に保持されたトナーを感光体ドラム10の表面に搬送し、これにより感光体ドラム10の表面において静電潜像をトナーにより現像する現像手段13と、現像手段13により形成されたトナー像を画像支持体P上に転写する転写手段14と、転写手段14により転写トナー像が形成された画像支持体Pを除電作用によって感光体ドラム10から分離させる分離手段16と、加熱定着部材である加熱ローラ17Aおよび加圧定着部材である加圧ローラ17Bを備え、転写トナー像を画像支持体Pに加熱加圧定着する定着手段17とを有する構成とされている。
【0019】
このような画像形成装置においては、先ず、帯電手段11により感光体ドラム10の表面が一様に帯電され(帯電過程)、この露光手段12により帯電された感光体ドラム10上に、露光手段12により、露光光源からのスポット光を、例えばポリゴンミラーなどによって感光体ドラム10の回転軸と平行に走査させ、これにより像露光することによって静電潜像が形成され(露光過程)、感光体ドラム10に形成された静電潜像が現像手段13により搬送されたトナーによって現像され(現像過程)、感光体ドラム10上に形成されたトナー像が、タイミングを合わせて搬送される画像支持体P上に転写手段14により転写されて転写トナー像が形成され(転写過程)、このようにして、帯電過程、露光過程、現像過程および転写過程をこの順に経るトナー像形成工程において、画像支持体上に転写トナー像が形成される。
次いで、このようにして得られた転写トナー像が形成された画像支持体Pが、定着手段17において定着され定着画像が形成される定着工程を経ることにより可視画像が形成されることとなる。
【0020】
本発明の画像形成方法においては、定着工程は特定範囲の定着温度および特定範囲の定着圧力に設定される条件で加熱加圧定着が行われる。
定着手段17は、加熱源171を有する加熱ローラ17Aと加圧ローラ17Bとの圧接ローラ対を基本構成とし、当該圧接ローラ対が回転することにより、圧接ローラ対が相互に圧接されることにより形成される定着ニップ部Nにおいて、転写トナー像が形成された画像支持体Pが挟圧・搬送されて、加熱ローラ17Aによる熱と、加熱ローラ17Aおよび加圧ローラ17Bによる圧力とにより、転写トナー像を画像支持体Pに加熱圧力定着する。
【0021】
加熱ローラ17Aとしては、特に限定されず、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。例えば、円筒の芯金上にフッ素系樹脂(例えばテフロン(登録商標))、シリコーン系樹脂、パーフルオロあるキレートなどが被覆された加熱ローラを挙げることができ、また、高い定着圧力を得るためには、ステンレス鋼(SUS)製の加熱ローラを使用することもできる。
定着工程においては、一般に2つのローラ間に画像支持体を通過させることにより行われるが、2つのローラは同一の材料から構成されるものであってもよいし、異なる材料から構成されるものであってもよい。例えば、加熱ローラと加圧ローラが、SUS/SUS、SUS/シリコーン系樹脂、SUS/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、PFA/PFAなどの組み合わせが挙げられる。
【0022】
(定着温度)
本発明の画像形成方法における定着工程においては、加熱ローラ17Aの表面温度が、(TgA−10)〜(TgA+20)℃に設定される条件で行われ、好ましくは(TgA−10)〜(TgA+15)℃に設定される条件で行われる。なお、「TgA」とは、後述する本発明に係るトナーのガラス転移点をいう。
加熱ローラ17Aの表面温度は、加熱ローラ17Aの表面に対向配置された温度検知手段172の温度計測値に基づいて、画像形成装置における制御部(図示せず)により加熱ローラ17Aの加熱源171の出力を制御することにより設定される。
【0023】
(定着圧力)
本発明の画像形成方法における定着工程においては、定着ニップ部Nにおける定着圧力が0.01〜0.1MPaに設定される条件で行われ、好ましくは0.03〜0.07MPaに設定される条件で行われる。
定着圧力が0.01MPa未満である場合においては、コールドオフセット現象が発生するおそれがある。
【0024】
なお、本発明において、「定着圧力」とは、定着ニップ部Nにおいて画像支持体Pに加えられる圧力であって、定着時における最大圧力をいう。具体的には、画像支持体Pの搬送方向において、定着ニップ部Nの入口から出口に至るまでの圧力の変化における最大値をいう。このような定着ニップ部Nの入口から出口に至る圧力分布は、圧力分布測定センサー「ローラ間圧力測定システム」(蒲田工業社製)を用いて測定される。
【0025】
(定着速度)
本発明の画像形成方法における定着工程においては、定着速度が低速〜中速、具体的には、80〜200mm/分であることが好ましい。
なお、「定着速度」とは、画像支持体Pが定着ニップ部Nを通過する速度である。
【0026】
(画像支持体)
本発明の画像形成方法に用いられる画像支持体としては、坪量50g/m2 以下の薄紙が好ましい。具体的には、普通紙、トレーシングペーパー、ノンカーボン紙、インディアペーパー(薄葉印刷用紙)などが挙げられる。
【0027】
〔トナー〕
本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子よりなるものであって、特定範囲の粒径および特定範囲のガラス転移点を有するものである。
本発明に係るトナーは、必要に応じて、着色剤、磁性粉および荷電制御剤などの内添剤を含有するトナー粒子よりなるものとすることができる。
【0028】
(トナーの粒径)
本発明に係るトナーの粒径は、個数基準のメディアン径(D50)で16〜40μmとされ、好ましくは16〜35μmとされ、特に好ましくは25〜35μmとされる。
トナーの粒径が上記の範囲であることにより、高い画質が確保されると共に、定着工程において、トナーの画像支持体への高い接着性が得られ、従って、高い定着強度を有する画像が形成される。
【0029】
トナーの個数基準のメディアン径(D50)は、個数粒度分布におけるメディアン径であり、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出される。
具体的には、測定用試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散処理を1分間行い、トナーの分散液を調製し、このトナーの分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5〜10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、個数積算分率の大きい方から50%の粒径を個数基準のメディアン径とする。
【0030】
(CV値)
本発明に係るトナーにおいては、個数基準のメディアン径(D50)の粒度分布における変動係数(CV値)が5〜20%のものが好ましく、より好ましくは5〜15%のものである。
トナーの変動係数(CV値)が上記範囲であることにより、トナー粒子の大きさが揃った状態となって微細なドット画像や細線をより高精度で再現することが可能となり、また、定着工程において、各々のトナー粒子に均等に定着圧力が付与され、定着に寄与しないトナー粒子の量を低減させることができる。
【0031】
この個数基準のメディアン径(D50)の粒度分布における変動係数(CV値)とは、トナー粒子の粒度分布における分散度を個数基準で示すものをいい、下記の数式(1)によって算出されるものをいう。このCV値が小さくなるほど粒度分布がシャープであることを示し、従ってトナー粒子の大きさが揃っていることを意味する。
数式(1):CV値(%)=粒度分布における標準偏差/粒度分布におけるメディアン径(D50)×100
【0032】
(トナーの平均円形度)
本発明に係るトナーにおいては、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950〜0.995である。平均円形度が小さくなるほど形成される可視画像が画質の低いものとなるおそれがある。
平均円形度は、下記数式(2)によって算出される円形度の平均値を示す。
数式(2):円形度T=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影像の周囲長
この円形度は、例えば「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
【0033】
(ガラス転移点)
本発明に係るトナーのガラス転移点(TgA)は、25℃以上55℃未満とされ、好ましくは25℃以上45℃未満とされる。
トナーのガラス転移点(TgA)が25℃未満である場合においては、耐熱保管性が得られないおそれがある。一方、トナーのガラス転移点(TgA)が55℃以上である場合においては、低温定着を図る目的が達成されない。
【0034】
ガラス転移点は、示差走査カロリメーター「Diamond DSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定される。
具体的には、測定用試料(トナー)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、サンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行う。ガラス転移点は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線との交点の値とする。
【0035】
(結着樹脂)
本発明に係るトナーを構成するトナー粒子に含有される結着樹脂としては、特に限定されないが、非晶性樹脂よりなるものであることが好ましい。
トナーが粉砕法などにより製造される場合には、例えばスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などを用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、トナーが懸濁重合法、乳化重合法などにより製造される場合には、トナー粒子を構成する結着樹脂を得るための重合性単量体として、公知の種々の重合性単量体を用いることができ、重合性単量体としては、例えばビニル系単量体などが挙げられ、またイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。また、重合性単量体として多官能性ビニル系単量体を用いることによっては、架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0036】
(着色剤)
本発明に係るトナーを構成するトナー粒子に含有される着色剤としては、公知の無機または有機着色剤を使用することができる。以下に、具体的な着色剤を示す。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックや、マグネタイト、フェライトなどの磁性粉が挙げられる。
また、マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
また、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0037】
以上の着色剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、着色剤の含有量は、トナー全体に対して1〜30質量%とされ、好ましくは2〜20質量%とされる。
【0038】
着色剤としては、表面改質されたものを使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などが好ましく用いることができる。
【0039】
(磁性粉)
本発明に係るトナーを構成するトナー粒子に含有される磁性粉としては、例えばマグネタイト、γ−ヘマタイト、または各種フェライトなどを用いることができる。
磁性粉の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜200質量部である。
【0040】
(荷電制御剤)
本発明に係るトナーを構成するトナー粒子に含有される荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤および負帯電制御剤を用いることができる。
具体的には、正帯電制御剤としては、例えば「ニグロシンベースEX」(オリエント化学工業社製)などのニグロシン系染料、「第4級アンモニウム塩P−51」(オリエント化学工業社製)、「コピーチャージPX VP435」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料、および「PLZ1001」(四国化成工業社製)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。
また、負帯電制御剤としては、例えば、「ボントロンS−22」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンS−34」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンE−81」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンE−84」(オリエント化学工業社製)、「スピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)などの金属錯体、チオインジゴ系顔料、「コピーチャージNX VP434」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、「ボントロンE−89」(オリエント化学工業社製)などのカリックスアレーン化合物、「LR147」(日本カーリット社製)などのホウ素化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カーボンなどのフッ素化合物などが挙げられる。負帯電制御剤として用いられる金属錯体としては、上記に示したもの以外にもオキシカルボン酸金属錯体、ジカルボン酸金属錯体、アミノ酸金属錯体、ジケトン金属錯体、ジアミン金属錯体、アゾ基含有ベンゼン−ベンゼン誘導体骨格金属体、アゾ基含有ベンゼン−ナフタレン誘導体骨格金属錯体などの各種の構造を有するものが挙げられる。
【0041】
荷電制御剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0042】
また、本発明に係るトナーを構成するトナー粒子には、離型剤を含有するものとすることもできる。
【0043】
(外添剤)
本発明の画像形成方法においては、本発明に用いられるトナーが特定範囲の大きい粒径を有することにより、トナー像形成工程における転写過程において高い転写率が得られるという観点から、外添剤を用いる必要がないという利点を有するが、トナー粒子に外添剤を補助的に用いることもできる。
【0044】
外添剤の具体例としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいはチタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。
これら無機微粒子は、耐熱保管性および環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
【0045】
外添剤を構成する無機粒子は、一次粒子径が30nm以下のものであることが好ましい。
無機粒子よりなる外添剤が上記の粒径を有するものであることにより、トナーが、画像形成時において外添剤の遊離が生じにくいものとなる。
【0046】
外添剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.05〜5質量部とされ、好ましくは0.1〜3質量部とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0047】
(現像剤)
本発明に係るトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
本発明に係るトナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛などの合金、フェライトおよびマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散したバインダー型キャリアなどを用いることもできる。コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0048】
キャリアの粒径については、その個数基準のメディアン径で12〜50μmであることが好ましい。
【0049】
キャリアの個数基準のメディアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0050】
本発明に係るトナーを構成するトナー粒子においては、結着樹脂および必要に応じて内添剤を含有するコア粒子と、当該コア粒子の外周面を被覆するシェル層用結着樹脂からなるシェル層とよりなるコア−シェル構造を有するものであることが好ましい。
シェル層については、当該シェル層がコア粒子の外周面を完全に被覆している形態のみならず、コア粒子の外周面の一部を被覆していてもよい。また、シェル層は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよい。
【0051】
〔トナーの製造方法〕
本発明に係るトナーを製造する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、混練、粉砕および分級工程を経ることによってトナーを得る粉砕法、重合性単量体を重合させると共に形状や大きさを制御しながら粒子形成を行う、いわゆる重合法(具体的には、例えば懸濁重合法、乳化重合法、ポリエステル分子伸長法など)その他の公知の方法などを挙げることができる。
【0052】
また、本発明に係るトナーを構成するトナー粒子がコア−シェル構造を有するものである場合においては、その製造方法としては、例えば以下のような工程を挙げることができる。
(1)着色剤の微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)が分散されてなる分散液を調製する工程。
(2−1)必要に応じて内添剤を含有したコア用結着樹脂の微粒子(以下、「コア樹脂微粒子」ともいう。)が分散されてなる分散液を調製する工程。
(2−2)シェル用結着樹脂の微粒子(以下、「シェル樹脂微粒子」ともいう。)が分散されてなる分散液を調製する工程。
(3)コア樹脂微粒子と着色剤微粒子とを水系媒体中で凝集、融着させてコア粒子となるべき会合粒子を形成する工程。
(4)会合粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御し、コア粒子を形成する工程。
(5)コア粒子の分散液中に、シェル層を形成すべきシェル樹脂微粒子を添加してコア粒子の表面に当該シェル樹脂微粒子を凝集、融着させてシェル層を形成する工程。
(6)コア−シェル構造の粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御し、コア−シェル構造のトナー粒子を形成する工程。
(7)トナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去して乾燥する工程。
(8)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程。
【0053】
(1)着色剤微粒子の分散液調製工程
この工程においては、水系媒体中に着色剤を添加して分散機によって分散処理することにより、着色剤が微粒子状に分散されてなる分散液を調製する処理が行われる。具体的には、着色剤の分散処理は界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態の水系媒体中で行われる。分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは、超音波分散機、機械式ホモジナイザ、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザなどの加圧分散機、サンドグラインダ、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミルなどの媒体型分散機が挙げられる。
この分散液における着色剤微粒子の分散径としては、体積基準のメディアン径で40〜200nmであることが好ましい。
【0054】
(2−1)コア樹脂微粒子の分散液調製工程
この工程においては、重合処理を行ってコア樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する処理が行われる。
この工程における重合処理の好適な一例においては、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、必要に応じて内添剤が含有された重合性単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで水溶性の重合開始剤を添加し、当該液滴中において重合反応を進行させる。なお、前記液滴中に油溶性ラジカル重合開始剤が含有されていてもよい。この様な工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的な乳化(液滴の形成)を行う処理が必須となる。係る機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサ、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌または超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0055】
(界面活性剤)
上記(1)着色剤微粒子の分散液調製工程や(2−1)コア樹脂微粒子の分散液調製工程において用いられる界面活性剤について説明する。
界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えばスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウムなど)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなど)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなど)などのイオン性界面活性剤を好適なものとして例示することができる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。
【0056】
(重合開始剤)
上記(2−1)コア樹脂微粒子の分散液調製工程において用いられる重合開始剤について説明する。
水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素などが挙げられる。
また、油溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などが挙げられる。
【0057】
(連鎖移動剤)
上記(2−1)コア樹脂微粒子の分散液調製工程においては、得られるコア用結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばn−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステルなどのメルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、及び、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0058】
(2−2)シェル樹脂微粒子の分散液調製工程
この工程においては、上記(2−1)のコア樹脂微粒子の分散液調製工程と同様に重合処理を行って、シェル樹脂微粒子の分散液を調製する処理が行われる。
【0059】
(3)コア樹脂微粒子と着色剤微粒子との凝集・融着工程
この工程は、コア樹脂微粒子と着色剤微粒子とを水系媒体中で凝集、融着させてコア粒子となるべき会合粒子を形成する工程である。この工程における凝集、融着の方法としては、着色剤微粒子およびコア樹脂微粒子を用いた塩析/融着法が好ましい。また、この工程においては、コア樹脂微粒子や着色剤微粒子と共に離型剤や荷電制御剤などよりなる内添剤微粒子を凝集、融着させることができる。
ここで、「塩析/融着」とは、凝集と融着を並行して進め、所望の粒子径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するための加熱を継続して行うことをいう。
塩析/融着法は、コア樹脂微粒子と着色剤微粒子とが存在している水系媒体中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩及び3価の塩などからなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、コア樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ、コア樹脂微粒子と着色剤微粒子の融解ピーク温度以上の温度に加熱することで塩析を進行させると同時に凝集・融着を行うものである。ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。
【0060】
この工程を塩析/融着によって行う場合においては、塩析剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くすることが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒度分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。また、塩析剤を添加する温度としては少なくともコア樹脂微粒子のガラス転移点以下であることが必要である。この理由としては、塩析剤を添加する温度がコア樹脂微粒子のガラス転移点以上であると、コア樹脂微粒子の塩析/融着は速やかに進行するものの、粒径の制御を行うことができず、大粒径の粒子が発生したりする問題が発生する。この添加温度の範囲としては樹脂のガラス転移点以下であればよいが、一般的には5〜55℃、好ましくは10〜45℃である。
また、塩析剤をコア樹脂微粒子のガラス転移点以下で加え、その後にできるだけ速やかに昇温し、コア樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、かつ、コア樹脂微粒子と着色剤微粒子の融解ピーク温度以上の温度に加熱する。この昇温までの時間としては1時間未満が好ましい。さらに、昇温を速やかに行う必要があるが、昇温速度としては、0.25℃/分以上が好ましい。上限としては特に明確ではないが、瞬時に温度を上げると塩析が急激に進行するため、粒径制御が困難という問題があり、5℃/分以下が好ましい。以上の塩析/融着法により、コア樹脂微粒子、着色剤微粒子及び任意の微粒子が塩析/融着されてなる会合粒子の分散液が得られる。
【0061】
また、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、生成される樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0062】
(4)コア粒子の形成工程
この工程においては、会合粒子を熱エネルギーにより熟成させる熟成処理が行われる。そして、(3)凝集・融着工程における加熱温度や特に当該(4)コア粒子の形成工程における加熱温度と時間を制御することにより、粒径が一定で分布が狭く形成されたコア粒子表面が平滑だが均一的な形状を有するものになる様に制御することができる。具体的には、上記(3)凝集・融着工程において加熱温度を低めに設定し、コア樹脂微粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、(4)コア粒子の形成工程において加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてコア粒子の表面が均一な形状のものに制御する。
【0063】
(5)シェル層の形成工程
この工程においては、コア粒子の分散液中にシェル樹脂微粒子の分散液を添加してコア粒子の表面にシェル樹脂微粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面にシェル樹脂微粒子を被覆させてシェル層を形成する処理が行われる。
この工程は、低温定着性と耐熱保管性の両方の性能を付与するための好ましい製造条件である。また、カラー画像を形成する場合においては、二次色について高い色再現性を得るために、このシェル層を有するトナーにより画像形成を行うことが好ましい。
具体的には、コア粒子の分散液を上記(3)凝集・融着工程および上記(4)コア粒子の形成工程における加熱温度を維持した状態でシェル樹脂微粒子の分散液を添加し、加熱撹拌を継続しながら数時間かけてゆっくりとシェル樹脂微粒子をコア粒子表面に被覆させてシェル層を形成させる。加熱撹拌時間は、1〜7時間が好ましく、3〜5時間が特に好ましい。
【0064】
(6)トナー粒子の形成工程
上記(5)シェル層の形成工程により、コア−シェル構造の粒子が所定の粒径になった段階で塩化ナトリウムなどの停止剤を添加して粒子成長を停止させ、その後もコア粒子に付着させたシェル樹脂微粒子を融着させるために数時間加熱撹拌を継続する。そして、コア粒子の表面を被覆するシェル樹脂微粒子による層の厚さを例えば100〜300nmとする。このようにして、コア粒子の表面にシェル樹脂微粒子を固着させてシェル層を形成し、丸みを帯び、かつ、形状の揃ったコア−シェル構造のトナー粒子が形成される。
【0065】
(7)トナー粒子の洗浄・乾燥工程
この工程においては、トナー粒子が分散されてなる分散液を冷却処理する。冷却処理条件としては、1〜20℃/分の冷却速度で冷却することが好ましい。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
次いで、所定温度まで冷却されたトナー粒子の分散液から当該トナー粒子を固液分離し、その後、固液分離されたトナーケーキ(ウエット状態にあるトナー粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理が施される。ここで、ろ過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧ろ過法、フィルタープレスなどを使用して行うろ過法など特に限定されるものではない。
【0066】
(8)外添剤の添加工程
この工程は、一般的に行われる公知の外添剤の添加工程に従って行うことができる。
【0067】
本発明によれば、特定の定着温度条件下および特定の定着圧力条件下において、特定範囲の大粒径トナーが用いられることにより、低温定着および低圧定着が図られて低エネルギー化が実現されながらも、高い定着強度を有する画像を形成することができる。
【0068】
以上、本発明の電子写真画像形成方法の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
〔トナーの作製例1〕
(1)着色剤微粒子の分散液調製工程
界面活性剤「ダウファクス 2A−1」(ダウケミカル社製)7.0質量部をイオン交換水に撹拌溶解し、この界面活性剤水溶液に、着色剤としてカーボンブラック20質量部を徐々に添加し、「SCミル」(三菱鉱山社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子の分散液(以下、「着色剤分散液〔1〕」ともいう。)を調製した。
ここに、着色剤分散液〔1〕における着色剤微粒子の分散径は、体積基準のメディアン径で200nmであった。この体積基準のメディアン径は、「MICROTRAC UPA−150」(HONEYWELL社製)を用い、サンプル屈折率1.59、サンプル比重1.05(球状粒子換算)、溶媒屈折率1.33、溶媒粘度0.797(30℃)、1.002(20℃)、および測定セルにイオン交換水を投入することによって0点調整を行う測定条件により測定されたものである。
【0071】
(2−1)コア樹脂微粒子の分散液調製工程
(a)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に下記構造式(1)に示すアニオン系界面活性剤4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
構造式(1): C1021(OCH2 CH2 2 SO3 Na
この界面活性剤溶液に、重合開始剤として過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン 532質量部
n−ブチルアクリレート 200質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
前記単量体混合液を滴下後、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌して重合(第1段重合)して樹脂微粒子〔A1〕の分散液を調製した。
【0072】
(b)第2段重合(中間層の形成)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に下記化合物よりなる単量体混合液を調製し、80℃に加温して溶解させて単量体溶液を調製した。
スチレン 101.1質量部
n−ブチルアクリレート 62.2質量部
メタクリル酸 12.3質量部
n−オクチルメルカプタン 1.75質量部
一方、上記構造式(1)に示すアニオン系界面活性剤3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤溶液を80℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、樹脂微粒子〔A1〕の分散液を固形分換算で32.8部添加した。添加後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、単量体溶液を8時間混合分散させ、分散径が340nmである乳化粒子の分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて3時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行い樹脂微粒子〔A2〕の分散液を調製した。
【0073】
(c)第3段重合(外層の形成)
樹脂微粒子〔A2〕の分散液に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン 293.8質量部
n−ブチルアクリレート 154.1質量部
n−オクチルメルカプタン 7.08質量部
前記単量体混合液の滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却し、コア樹脂微粒子〔1〕の分散液(以下、「コア樹脂分散液〔1〕」という。」を調製した。
【0074】
(2−2)シェル樹脂微粒子の分散液調製工程
上記(2−1)コア樹脂微粒子の分散液調製工程において、(a)第1段重合に用いた単量体混合液を、下記化合物と添加量に変更した単量体混合溶液を用いた以外は同様にしてシェル樹脂微粒子〔1〕の分散液(以下、「シェル樹脂分散液〔1〕」という。)を調製した。
スチレン 624質量部
2−エチルヘキシルアクリレート 120質量部
メタクリル酸 56質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
【0075】
(3)コア樹脂微粒子と着色剤微粒子との凝集・融着工程
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器内に、
コア樹脂分散液〔1〕 420.7質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤分散液〔1〕 200質量部
を投入して撹拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜11に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。その状態で「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、個数基準のメディアン径(D50)が21μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させた。
【0076】
(4)コア粒子の形成工程
会合粒子を熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、コア粒子〔1〕を作製した。コア粒子〔1〕の平均円形度は0.912であった。なお、平均円形度は上述した方法により測定されたものである。
【0077】
(5)シェル層の形成工程
65℃において、シェル樹脂分散液〔1〕96質量部(固形分換算)を添加し、さらに塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した。添加後、70℃(シェル化温度)まで昇温させ、1時間にわたり撹拌を継続し、コア粒子〔1〕の表面にシェル樹脂微粒子〔1〕を融着させた後、75℃で20分間熟成処理を行い、シェル層を形成させた。
【0078】
(6)トナー粒子の形成工程
さらに、塩化ナトリウム40.2質量部を添加し、イオン交換水1000質量部に溶解させた水溶液を添加して粒子成長を停止させ、熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより融着を継続させることにより、トナー粒子〔1〕の分散液(以下、「トナー粒子分散液〔1〕」ともいう。)を調製した。このトナー粒子〔1〕の平均円形度は0.940であった。なお、平均円形度は上述した方法により測定されたものである。
【0079】
(7)トナー粒子の洗浄・乾燥工程
トナー粒子分散液〔1〕を、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、トナー粒子〔1〕をろ過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥した。
【0080】
(8)外添剤の添加工程
洗浄・乾燥処理されたトナー粒子〔1〕に対して、ヘキサメチルシラザン処理したシリカ粒子(平均一次粒子径:12nm)0.6質量部およびn−オクチルシラン処理した二酸化チタン粒子(平均一次粒子径:24nm)0.8質量部を添加し、ヘンシェルミキサーを用い、撹拌羽根の周速40m/秒、処理温度25℃の条件で混合することによって外添剤を添加し、コア−シェル構造を有するトナー粒子〔1〕よりなるトナー〔1〕を得た。
トナー〔1〕においては、粒径が個数基準のメディアン径(D50)で21μm、ガラス転移点が45℃、CV値が16%、平均円形度が0.940であった。なお、この個数基準のメディアン径、ガラス転移点、CV値および平均円形度は上述した方法により測定されたものである。
【0081】
〔トナーの製造例2〜5〕
トナーの製造例1における(3)コア樹脂微粒子と着色剤微粒子との凝集・融着工程において、粒子成長反応を、表1に示す最終的に得られるトナーの粒径(個数基準のメディアン径)に応じたタイミングで停止させたこと、および、(8)外添剤の添加工程を行わないことの他は同様にしてトナー〔2〕〜〔5〕を得た。トナー〔2〕〜〔5〕の各々について、個数基準のメディアン径、ガラス転移点、CV値および平均円形度を測定した。結果を下記表1に示す。
【0082】
〔現像剤の作製例1〜5〕
トナー〔1〕〜〔5〕の各々にシリコーン樹脂を被覆したフェライトキャリアを、トナーの濃度が8質量%になるように混合することにより、現像〔1〕〜〔5〕を作製した。
【0083】
【表1】

【0084】
〔実施例1〜5〕
現像剤〔1〕〜〔5〕を画像形成装置「bizhub C500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に各々投入し、画像を形成して下記評価を行った。なお、この画像形成装置において、定着ニップ部における定着圧力を表2に示す通りに設定した。
【0085】
〔最低定着温度の評価〕
上記の画像形成装置における加熱定着部材の表面温度が50〜130℃の範囲を5℃刻みで変更されるように改造したものを用いて、各々の加熱定着部材の表面温度について、画像支持体の搬送方向に対して垂直方向に5mm幅のベタ黒画像を形成した。その直後に、画像支持体の搬送方向に対して垂直方向に白紙を通し、当該白紙において画像汚れが発生しなくなる温度を最低定着温度として評価した。なお、画像支持体としては「三菱トレーシングペーパー(坪量40g/m2 )」(三菱製紙社製)を用いた。結果を表2に示す。
【0086】
〔文字つぶれの評価〕
上記の最低定着温度の評価において測定された最低定着温度条件下において、画像支持体「三菱トレーシングペーパー(坪量40g/m2 )」(三菱製紙社製)上に、3ポイントおよび5ポイントの文字サイズを有する画像を形成し、下記の評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
−評価基準−
A:3ポイントおよび5ポイントとも明瞭であり、容易に判読可能な状態。
B:3ポイントは、一部判読不能な文字が発生しているが、5ポイントは明瞭であり、容易に判読可能な状態。
C:3ポイントは、殆どの文字が判読不能であり、5ポイントも一部あるいは全部が判読不能な状態。
【0087】
【表2】

【0088】
表2の結果より、本発明に係る実施例によれば、基本的に高い画質が確保されると共に、低温定着および低圧定着が図られて低エネルギー化が実現されながらも、高い定着強度を有する画像が形成されることが確認された。
【符号の説明】
【0089】
10 感光体ドラム
11 帯電手段
12 露光手段
13 現像手段
131 現像スリーブ
14 転写手段
16 分離手段
17 定着手段
17A 加熱ローラ
17B 加圧ローラ
171 加熱源
172 温度検知手段
P 画像支持体
N 定着ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体の表面にトナーにより形成したトナー像を画像支持体に転写して転写トナー像を形成するトナー像形成工程と、
前記転写トナー像を、加熱定着部材と加圧定着部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部において前記画像支持体に定着して定着画像を形成する定着工程とを含む画像形成方法において、
前記トナーが結着樹脂を含有するトナー粒子よりなり、当該トナーの粒径が個数基準のメディアン径(D50)で16〜40μmであり、かつ、当該トナーのガラス転移点(TgA)が25℃以上55℃未満であり、
前記定着工程が、前記加熱定着部材の表面温度が(TgA−10)〜(TgA+20)℃に設定され、かつ、前記定着ニップ部における定着圧力が0.01〜0.1MPaに設定される条件で行われることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記トナーを構成するトナー粒子は、コア−シェル構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記トナーは、個数基準のメディアン径(D50)の粒度分布における変動係数(CV値)が5〜20%のものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記トナーは、個数基準のメディアン径(D50)の粒度分布における変動係数(CV値)が5〜15%のものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記トナーを構成するトナー粒子に含有される結着樹脂が、非晶性樹脂よりなるものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像形成方法。


【図1】
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【公開番号】特開2012−3101(P2012−3101A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138957(P2010−138957)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】