説明

画像形成物、画像形成物の製造方法

【課題】亀裂による光の散乱効果により新たな外観を有する画像形成物を提供する。
【解決手段】基材上に、画像が形成された画像層と前記基材よりも延伸率が低い低延伸部材層とを積層して画像物を形成する画像物形成工程と、前記画像物を引き伸ばして、前記低延伸部材層に亀裂を形成する亀裂形成工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成物、画像形成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、基板上に紫外線硬化型インクを塗布し、塗布された紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射し、紫外線硬化型インクを硬化させることにより、硬化されたインク層に亀裂を生じさせる建築用板の化粧法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−102887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法では、亀裂を生じさせるために、紫外線硬化型インクを急激に硬化させる必要がある。すなわち、紫外線の照射量を短時間に多量に照射する必要がある。このため、例えば、比較的薄いフィルム等の基材を用いたい場合には、基材が紫外線の照射により劣化し、品質が低下してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる画像形成物の製造方法は、基材上に、画像が形成された画像層と前記基材よりも延伸率が低い低延伸部材層とを積層して画像物を形成する画像物形成工程と、前記画像物を引き伸ばして、前記低延伸部材層に亀裂を形成する亀裂形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、基材上に画像層と低延伸部材層とが積層された画像物が形成される。ここで、低延伸部材層は、基材よりも延伸率が低い。そして、画像物を引き伸ばす。この際、低延伸部材層と基材との延伸率の差により、低延伸部材層に応力が集中し、低延伸部材層に亀裂が形成される。これにより、基材を劣化させることなく、容易に亀裂を形成することができる。そして、亀裂が形成された低延伸部材層を介して画像層を見ると、亀裂による光の散乱効果により新たな外観を有する画像形成物を提供することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる画像形成物の製造方法の前記画像物形成工程では、所定の領域に前記低延伸部材層を形成することを特徴とする。
【0009】
この構成よれば、所定の領域に亀裂が形成された低延伸部材層が形成される。従って、低延伸部材層を介して画像層を見た場合に、亀裂による光の散乱効果が有る領域と無い領域の存在により新たな外観を有する画像形成物を提供することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる画像形成物の製造方法の前記画像物形成工程では、前記低延伸部材層の表面に凹凸部を形成することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、画像物を引き伸ばしたときに、凹凸部の凹部に応力が集中するので、容易に亀裂を形成することができる。また、凹凸部の形成により更に光散乱効果を生じさせることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる画像形成物の製造方法の前記画像物形成工程では、前記低延伸部材層の表面の所定位置に凹凸部を形成することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、例えば、亀裂を生じさせたい位置に凹凸部を形成することで、容易に所望の位置に亀裂を生じさせることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる画像形成物の製造方法の前記画像物形成工程では、前記基材と前記画像層とを接続する接続層を形成することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、画像物を引き伸ばした際に、画像層が基材に追従して引き伸ばすことができる。これにより、品質の高い画像形成物を形成することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる画像形成物の製造方法の前記画像物形成工程では、前記基材と前記低延伸部材層とを接続する接続層を形成することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、画像物を引き伸ばした際に、低延伸部材層が基材とともに引き伸ばされる。これにより、確実に亀裂を形成することができる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる画像形成物は、基材と、前記基材上に、画像が形成された画像層と前記基材よりも延伸率が低い低延伸部材層とが積層された画像物と、を備え、前記低延伸部材層に亀裂が形成されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、亀裂が形成された低延伸部材層を介して画像層を見ると、亀裂による光の散乱効果により新たな外観を有する画像形成物を提供することができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかる画像形成物では、前記低延伸部材層の表面に凹凸部が形成されたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、更に光散乱効果を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態にかかる画像形成物の構成を示す断面図。
【図2】液滴吐出装置の構成を示す模式図。
【図3】第1実施形態にかかる画像形成物の製造方法を示す工程図。
【図4】第2実施形態にかかる画像形成物の構成を示す断面図。
【図5】第2実施形態にかかる画像形成物の製造方法を示す工程図。
【図6】第3実施形態にかかる画像形成物の構成を示す断面図。
【図7】第3実施形態にかかる画像形成物の製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1〜第3実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせて示している。
【0024】
[第1実施形態]
(画像形成物の構成)
まず、画像形成物の構成について説明する。図1は、画像形成物の構成を示し、同図(a)は、断面図であり、同図(b)は、一部拡大断面図である。図1(a)に示すように、画像形成物100は、基材10と、基材10上に、画像が形成された画像層120と基材10よりも延伸率が低い低延伸部材層110とが積層された画像物150を備えている。そして、低延伸部材層110には、亀裂111が形成されている。
【0025】
本実施形態では、基材10上に低延伸部材層110が形成され、低延伸部材層110上に画像層120が形成されている。さらに、基材10と画像層120とを接続する接続層130が形成されている。さらに詳細には、画像層120と低延伸部材層110を覆うように接続層130が形成されている。
【0026】
また、図1(b)に示すように、低延伸部材層110の表面に凹凸部112が形成されている。そして、凹部112aを起点として亀裂111が形成されている。
【0027】
(液滴吐出装置の構成)
次に、液滴吐出装置の構成について説明する。図2は、液滴吐出装置の構成を示す模式図である。液滴吐出装置1は、基材10に画像物150を形成する装置である。図1に示すように、液滴吐出装置1は、基材10に向けて機能液を液滴として吐出する吐出ヘッド22を含むヘッドユニット20と、基材10を載置するステージ30と、基材10を搬送する搬送部50等と、これらの部材を制御する制御部(図示せず)等を備えている。本実施形態の搬送部50は、ロール・ツー・ロール方式を用いており、基材10をステージ30側に供給する供給ローラー51と基材10を巻き取って除材する除材ローラー52等を有している。基材10は、例えば、プラスチックフィルムの他、綿布、麻布、絹布等の織布(布帛)や紙等を適用することができる。
【0028】
また、本実施形態では、画像層の材料となる機能液としての紫外線硬化型インクを用いており、ヘッドユニット20は、紫外線硬化型インクを液滴として吐出する吐出ヘッド22と、吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射部23を備えている。
【0029】
さらに、本実施形態では、画像層120に対応して適用される機能液と低延伸部材層110に対応して適用される機能液とが異なる。従って、吐出ヘッド22は、画像層120の材料を含む第1機能液を吐出する第1吐出ヘッド22aと低延伸部材層110の材料を含む第2機能液を吐出する第2吐出ヘッド22bを備えている。さらには、接続層130の材料を含む第3機能液を吐出する第3吐出ヘッド22cを備えている。
【0030】
なお、画像層120は、基材10の延伸率と同等またはそれ以上の材料を含む第1機能液を塗布して形成され、低延伸部材層110は基材10よりも延伸率が低い材料を含む第2機能液で形成される。接続層130は、基材10の延伸率と同等またはそれ以上の材料を含む第3機能液を塗布して形成される。第1及び第3機能液は、例えば、フレックスインクであり、第2機能液はリジッドインクである。
【0031】
吐出ヘッド22は、例えば、圧力発生手段としての圧電素子を備えたインクジェットヘッドである。なお、圧力発生手段として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用してもよい。さらには、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液を液滴として吐出させる構成を有する吐出ヘッドであってもよい。
【0032】
紫外線照射部23は、紫外線光源を備え、紫外線光源から紫外線が照射される。なお、紫外線光源は、例えば、LED、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等適宜適用することができる。
【0033】
ヘッドユニット20は、例えば、ステージ30上に搬送される基材10の幅方向(Y軸方向)に移動軸を有するキャリッジ21に搭載され、当該キャリッジ21に接続された移動部(図示せず)を駆動させることにより、ヘッドユニット20をY軸方向の所定の位置に移動させることができる。そして、ヘッドユニット20を移動させながら、基材10に向けて吐出ヘッド22(22a,22b,22c)から紫外線硬化型インクを吐出するととともに、紫外線照射部23から紫外線を照射させて紫外線硬化型インクを固化することにより、基材10上に画像層120等を形成することができる。
【0034】
(画像形成物の製造方法)
次に、画像形成物の製造方法について説明する。画像形成物の製造方法は、基材上に、画像が形成された画像層と基材よりも延伸率が低い低延伸部材層とを積層して画像物を形成する画像物形成工程と、画像物を引き伸ばして、低延伸部材層に亀裂を形成する亀裂形成工程と、を含むものである。なお、本実施形態では、液滴吐出装置1を用いて場合を例にして説明する。以下、具体的に説明する。
【0035】
図3は、画像形成物の製造方法を示す工程図である。画像物形成工程では、ステージ30上の所定の載置位置に基材10を設定する。なお、本実施形態の基材10は、透光性を有するフィルム部材等である。そして、基材10上に低延伸部材層110を形成する。具体的には、図3(a)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22bを駆動させる。そして、基材10に向けて低延伸部材層110の材料を含む第2機能液を液滴Dとして吐出して、基材10上に第2機能液110aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22bの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、基材10上に塗布された第2機能液110aに向けて紫外線を照射させる。そうすると、紫外線が照射された第2機能液110aが硬化され、低延伸部材層110が形成される。そして、図3(c)に示すように、基材10上に低延伸部材層110が形成される。
【0036】
なお、本実施形態では、低延伸部材層110の表面に凹凸部112を形成する。具体的には、図3(b)に示すように、液滴Dの大きさ(吐出量)を変えながら吐出する。本実施形態では、基材10側に、比較的ドット径が小さい液滴D1を塗布し、液滴D1上に比較的ドット径が大きい液滴D2を塗布する。また、液滴D2を所定の間隔をおいて塗布する。このように塗布された第2機能液110aを硬化させることにより、塗布された液滴D2に対応する位置に凸部112bが形成され、隣接する凸部112bの間に凹部112aが形成される。このようにして、低延伸部材層110の表面に凹部112aと凸部11bを含む凹凸部112が形成される。
【0037】
次いで、低延伸部材層110上に画像層120を形成する。具体的には、図3(d)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22aを駆動させる。そして、基材10上に形成された低延伸部材層110に向けて画像層120の材料を含む第1機能液を液滴Dとして吐出して、低延伸部材層110上に第1機能液120aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22aの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、低延伸部材層110上に塗布された第1機能液120aに向けて紫外線を照射させる。紫外線が照射された第1機能液120aが硬化され、画像層120が形成される。そして、図3(e)に示すように、基材10と、基材10上に形成された低延伸部材層110と、低延伸部材層110上に形成された画像層120と、を備えた画像物150が形成される。
【0038】
次いで、基材10と画像層120とを接続する接続層130を形成する。具体的には、図3(f)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22cを駆動させる。そして、画像層120に向けて接続層130の材料を含む第3機能液を液滴Dとして吐出して、画像層120上に第3機能液130aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22cの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、画像層120上に塗布された第3機能液130aに向けて紫外線を照射させる。紫外線が照射された第3機能液130aが硬化され、接続層130が形成される。これにより、基材10と画像層120とが接続層130を介して接続される。
【0039】
次いで、亀裂形成工程では、画像物150を引き伸ばして、低延伸部材層110に亀裂111を形成する。本実施形態では、接続層130を含む画像物150を引き伸ばす。この場合、亀裂形成工程を、例えば、金型や真空を用いて画像物150を成形する成形工程として適用してもよい。画像物150を引き伸ばす(成形する)ことにより、基材10と画像層120と接続層130は同様に伸びるが、低延伸部材層110は、基材10よりも延伸率が低いため、基材10よりも伸び率が低い。このため、低延伸部材層110に応力が生じる。そして、低延伸部材層110に対する外力が許容値を超えると、低延伸部材層110に亀裂が生じる。本実施形態では、低延伸部材層110の表面に凹凸部112が形成されているため、特に、凹部112aに応力が集中し、凹部112aを起点として亀裂111が形成される。
【0040】
上記の工程を経ることにより、図3(g)に示すように、基材10上に形成された低延伸部材層110と、低延伸部材層110上に形成された画像層120を有する画像物150を備え、画像物150を引き伸ばすことにより、低延伸部材層110に亀裂111が形成された画像形成物100が形成される。
【0041】
以上、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0042】
(1)基材10上に低延伸部材層110が形成され、低延伸部材層110上に画像層120が形成される。これにより、基材10上に低延伸部材層110と画像層120とが積層された画像物150が形成される。ここで、低延伸部材層110は、基材10よりも延伸率が低い材料で形成される。そして、画像物150を引き伸ばして、低延伸部材層110に亀裂111を形成する。このようにして、基材10に損傷を与えることなく、画像形成物100を形成することができる。さらに、亀裂111が形成された低延伸部材層110を介して画像層120を見ると、亀裂111による光の散乱効果により新たな外観を有する画像形成物100を提供することができる。
【0043】
(2)低延伸部材層110の表面に凹凸部112を形成した。このため、画像物150を引き伸ばしたときに、凹凸部の凹部112aに応力が集中して、容易に亀裂111を形成することができる。また、凹凸部112の形成により更に光散乱効果を生じさせることができる。
【0044】
(3)基材10と画像層120とを接続する接続層130を形成した。このため、画像物150を引き伸ばした際に、画像層120と基材10とがともに引き伸ばされる。これにより、画像層120が所望の範囲まで伸ばされるので、品質の高い画像形成物100を形成することができる。
【0045】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0046】
(画像形成物の構成)
まず、画像形成物の構成について説明する。図4は、画像形成物の構成を示し、同図(a)は、断面図であり、同図(b)は、一部拡大断面図である。図4(a)に示すように、画像形成物200は、基材10と、基材10上に、画像が形成された画像層120と基材10よりも延伸率が低い低延伸部材層110とが積層された画像物160を備えている。そして、低延伸部材層110には、亀裂111が形成されている。
【0047】
本実施形態では、基材10上に画像層120が形成され、画像層120上に低延伸部材層110が形成されている。さらに、基材10と低延伸部材層110とを接続する接続層130が形成されている。さらに詳細には、画像層120と低延伸部材層110を覆うように接続層130が形成されている。
【0048】
また、図4(b)に示すように、低延伸部材層110の表面に凹凸部112が形成されている。そして、凹部112aを起点として亀裂111が形成されている。
【0049】
(画像形成物の製造方法)
次に、画像形成物の製造方法について説明する。画像形成物の製造方法は、基材上に、画像が形成された画像層と基材よりも延伸率が低い材料で形成された低延伸部材層とを積層して画像物を形成する画像物形成工程と、画像物を引き伸ばして、低延伸部材層に亀裂を形成する亀裂形成工程と、を含むものである。本実施形態では、液滴吐出装置1を用いて場合を例にして説明する。なお、液滴吐出装置1の構成等については第1実施形態と同様なので説明を省略する。以下、具体的に説明する。
【0050】
図5は、画像形成物の製造方法を示す工程図である。画像物形成工程では、ステージ30上の所定の載置位置に基材10を設定する。本実施形態の基材10は、例えば、プラスチックフィルムの他、綿布、麻布、絹布等の織布(布帛)や紙等を適用することができる。そして、基材10上に画像層120を形成する。具体的には、図5(a)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22aを駆動させる。そして、基材10に向けて画像層120の材料を含む第1機能液を液滴Dとして吐出して、基材10上に第1機能液120aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22aの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、基材10上に塗布された第1機能液120aに向けて紫外線を照射させる。そうすると、紫外線が照射された第1機能液120aが硬化され、画像層120が形成される。そして、図5(b)に示すように、基材10上に画像層120が形成される。
【0051】
次いで、画像層120上に低延伸部材層110を形成する。具体的には、図5(c)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22bを駆動させる。そして、画像層120に向けて低延伸部材層110の材料を含む第2機能液を液滴Dとして吐出して、画像層120上に第2機能液110aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22bの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、画像層120上に塗布された第2機能液110aに向けて紫外線を照射させる。そうすると、紫外線が照射された第2機能液110aが硬化され、低延伸部材層110が形成される。そして、図5(e)に示すように、基材10と、基材10上に形成された画像層120と、画像層120上に形成された低延伸部材層110と、を備えた画像物160が形成される。
【0052】
なお、本実施形態では、低延伸部材層110の表面に凹凸部112を形成する。具体的には、図5(d)に示すように、液滴Dの大きさ(吐出量)を変えながら吐出する。本実施形態では、画像層120側に、比較的ドット径が小さい液滴D1を塗布し、液滴D1上に比較的ドット径が大きい液滴D2を塗布する。また、液滴D2を所定の間隔をおいて塗布する。このように塗布された第2機能液110aを硬化させることにより、塗布された液滴D2に対応する位置に凸部112bが形成され、隣接する凸部112bの間に凹部112aが形成される。このようにして、低延伸部材層110の表面に凹部112aと凸部11bを含む凹凸部112が形成される。
【0053】
次いで、基材10と低延伸部材層110とを接続する接続層130を形成する。具体的には、図5(f)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22cを駆動させる。そして、低延伸部材層110上に向けて接続層130の材料を含む第3機能液を液滴Dとして吐出して、低延伸部材層110上に第3機能液130aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22cの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、低延伸部材層110上に塗布された第3機能液130aに向けて紫外線を照射させる。紫外線が照射された第3機能液130aが硬化され、接続層130が形成される。これにより、基材10と低延伸部材層110とが接続層130を介して接続される。
【0054】
次いで、亀裂形成工程では、画像物160を引き伸ばして、低延伸部材層110に亀裂111を形成する。本実施形態では、接続層130を含む画像物160を引き伸ばす。この場合、亀裂形成工程を、例えば、金型や真空を用いて画像物160を成形する成形工程として実施してもよい。画像物160を引き伸ばす(成形する)ことにより、基材10と画像層120と接続層130は同様に伸びるが、低延伸部材層110は、基材10よりも延伸率が低い材料で形成されているため、基材10よりも伸び率が低い。このため、低延伸部材層110に応力が生じる。そして、低延伸部材層110に対する外力が許容値を超えると、低延伸部材層110に亀裂が生じる。本実施形態では、低延伸部材層110の表面に凹凸部112が形成されているため、特に、凹部112aに応力が集中し、凹部112aを起点として亀裂111が形成される。
【0055】
上記の工程を経ることにより、図5(g)に示すように、基材10上に形成された画像層120と、画像層120上に形成された低延伸部材層110を備え、画像物160を引き伸ばすことにより、低延伸部材層110に亀裂111が形成された画像形成物200が形成される。
【0056】
以上、第2実施形態によれば、第1実施形態における効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0057】
(1)基材10上に画像層120が形成され、画像層120上に低延伸部材層110が形成される。これにより、基材10上に画像層120と低延伸部材層110とが積層された画像物160が形成される。ここで、低延伸部材層110は、基材10よりも延伸率が低い。そして、画像物160を引き伸ばして、低延伸部材層110に亀裂111を形成する。このようにして、基材10に損傷を与えることなく、画像形成物200を形成することができる。さらに、亀裂111が形成された低延伸部材層110を介して画像層120を見ると、亀裂111による光の散乱効果により新たな外観を有する画像形成物200を提供することができる。
【0058】
(2)基材10と低延伸部材層110とを接続する接続層130を形成した。このため、画像物160を引き伸ばした際に、基材10の伸びとともに低延伸部材層110も引き伸ばされる。これにより、低延伸部材層110が伸ばされることにより、確実に亀裂111を形成することができる。
【0059】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
【0060】
(画像形成物の構成)
まず、画像形成物の構成について説明する。図6は、画像形成物の構成を示した断面図である。図6に示すように、画像形成物300は、基材10と、基材10上に、画像が形成された画像層120と基材10よりも延伸率が低い低延伸部材層110とが積層された画像物170を備えている。そして、低延伸部材層110には、亀裂111が形成されている。
【0061】
本実施形態では、基材10上に低延伸部材層110が形成され、低延伸部材層110上に画像層120が形成されている。さらに、所定の領域に低延伸部材層110が形成されている。本実施形態では、断面視において、画像層120に対して点在して形成されている。さらに、基材10と画像層120とを接続する接続層130が形成されている。また、隣接する低延伸部材層110の間には、接続層140が形成されている。
【0062】
(画像形成物の製造方法)
次に、画像形成物の製造方法について説明する。画像形成物の製造方法は、基材上に、画像が形成された画像層と基材よりも延伸率が低い材料で形成された低延伸部材層とを積層して画像物を形成する画像物形成工程と、画像物を引き伸ばして、低延伸部材層に亀裂を形成する亀裂形成工程と、を含むものである。なお、本実施形態では、液滴吐出装置1を用いて場合を例にして説明する。以下、具体的に説明する。
【0063】
図7は、画像形成物の製造方法を示す工程図である。画像物形成工程では、ステージ30上の所定の載置位置に基材10を設定する。なお、本実施形態の基材10は、透光性を有するフィルム部材等である。そして、基材10上に低延伸部材層110を形成する。本実施形態では、所定の領域に低延伸部材層110を形成する。具体的には、図7(a)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22bを駆動させる。そして、基材10に向けて低延伸部材層110の材料を含む第2機能液を液滴Dとして吐出して、基材10上に第2機能液110aを塗布する。この際、基材10上の所定の領域に第2機能液110aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22bの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、基材10上に塗布された第2機能液110aに向けて紫外線を照射させる。そうすると、紫外線が照射された第2機能液110aが硬化され、低延伸部材層110が形成される。そして、図7(b)に示すように、基材10上の所定の領域に低延伸部材層110が形成される。
【0064】
次いで、低延伸部材層110の間に接続層140を形成する。具体的には、図7(b)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22cを駆動させる。そして、基材10に向けて接続層140の材料を含む第3機能液を液滴Dとして吐出して、基材10上に第3機能液140aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22cの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、基材10上に塗布された第3機能液140aに向けて紫外線を照射させる。紫外線が照射された第3機能液140aが硬化され、接続層140が形成される。
【0065】
次いで、低延伸部材層110及び接続層140上に画像層120を形成する。具体的には、図7(c)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22aを駆動させる。そして、低延伸部材層110及び接続層140に向けて画像層120の材料を含む第1機能液を液滴Dとして吐出して、低延伸部材層110及び接続層140上に第1機能液120aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22aの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、低延伸部材層110及び接続層140上に塗布された第1機能液120aに向けて紫外線を照射させる。紫外線が照射された第1機能液120aが硬化され、画像層120が形成される。そして、図7(d)に示すように、基材10と、基材10上の所定の領域に形成された低延伸部材層110と、低延伸部材層110間に形成された接続層140と、低延伸部材層110及び接続層140上に形成された画像層120と、を備えた画像物170が形成される。
【0066】
次いで、基材10と画像層120とを接続する接続層130を形成する。具体的には、図7(e)に示すように、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、吐出ヘッド22cを駆動させる。そして、画像層120に向けて接続層130の材料を含む第3機能液を液滴Dとして吐出して、画像層120上に第3機能液130aを塗布する。さらに、吐出ヘッド22cの駆動とともに、紫外線照射部23を駆動させ、画像層120上に塗布された第3機能液130aに向けて紫外線を照射させる。紫外線が照射された第3機能液130aが硬化され、接続層130が形成される。これにより、基材10と画像層120とが接続層130を介して接続される。
【0067】
次いで、亀裂形成工程では、画像物170を引き伸ばして、低延伸部材層110に亀裂111を形成する。本実施形態では、接続層130を含む画像物170を引き伸ばす。この場合、亀裂形成工程を、例えば、金型や真空を用いて画像物170を成形する成形工程として実施してもよい。画像物170を引き伸ばす(成形する)ことにより、基材10と画像層120と接続層130は同様に伸びるが、低延伸部材層110は、基材10よりも延伸率が低い材料で形成されているため、基材10よりも伸び率が低い。このため、低延伸部材層110に応力が生じる。そして、低延伸部材層110に対する外力が許容値を超えると、低延伸部材層110に亀裂が生じる。
【0068】
上記の工程を経ることにより、図7(f)に示すように、基材10上の所定の領域に形成された低延伸部材層110と、低延伸部材層110間に形成された接続層140と、低延伸部材層110上に形成された画像層120を有する画像物170を備え、画像物170を引き伸ばすことにより、低延伸部材層110に亀裂111が形成された画像形成物300が形成される。
【0069】
以上、第3実施形態によれば、第1及び第2実施形態にかかる効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0070】
(1)基材10上の所定の領域に亀裂111が形成された低延伸部材層110が形成される。従って、低延伸部材層110を介して画像層120を見た場合に、亀裂111による光の散乱効果が有る領域と無い領域が存在するため、さらに新たな外観を有する画像形成物300を提供することができる。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0072】
(変形例1)第1及び第2実施形態では、低延伸部材層110の表面に凹凸部112を形成したが、凹凸部112を形成しなくともよい。このようにしても、画像物150,160を引き伸ばしたとき、低延伸部材層110は、基材10の伸びに追従できないので、低延伸部材層110に応力が発生し亀裂111を形成することができる。
【0073】
(変形例2)第1〜第3実施形態における低延伸部材層110の色要素は特に限定されない。透明色を有していてもよいし、有彩色等を有していてもよい。このようにすれば、画像層120の外観が異なる複数のバリエーションを有する画像形成物100,200,300を提供することができる。
【0074】
(変形例3)第1及び第2実施形態では、低延伸部材層110の表面の全体に凹凸部112を形成したが、これに限定されない。例えば、低延伸部材層110の表面の所定位置に凹凸部112を形成してもよい。このようにすれば、所望の位置に亀裂111を形成することができる。
【0075】
(変形例4)第3実施形態では、低延伸部材層110に凹凸部112を形成しなかったが、凹凸部112を形成してもよい。このようにすれば、容易に亀裂111を形成することができる。また、第3実施形態では、基材10上に低延伸部材層110を形成し、低延伸部材層110上に画像層120を形成したが、これに限定されない。例えば、基材10上に画像層120を形成し、画像層120上に低延伸部材層110を形成してもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【0076】
(変形例5)第1〜第3実施形態を適宜組み合わせて適用してもよい。このようにすれば、基材10を劣化させることなく、亀裂111が形成された低延伸部材層110を介して画像層120を見ることにより、亀裂111による光の散乱効果により新たな外観を有する画像形成物100,200,300を提供することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…液滴吐出装置、10…基材、20…ヘッドユニット、21…キャリッジ、22…吐出ヘッド、22a,22b,22c…吐出ヘッド、23…紫外線照射部、30…ステージ、100,200,300…画像形成物、110…低延伸部材層、111…亀裂、112…凹凸部、112a…凹部、112b…凸部、120…画像層、130…接続層、140…接続層、150,160,170…画像物、100,200,300…画像形成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、画像が形成された画像層と前記基材よりも延伸率が低い低延伸部材層とを積層して画像物を形成する画像物形成工程と、
前記画像物を引き伸ばして、前記低延伸部材層に亀裂を形成する亀裂形成工程と、を含むことを特徴とする画像形成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成物の製造方法において、
前記画像物形成工程では、
所定の領域に前記低延伸部材層を形成することを特徴とする画像形成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成物の製造方法において、
前記画像物形成工程では、
前記低延伸部材層の表面に凹凸部を形成することを特徴とする画像形成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成物の製造方法において、
前記画像物形成工程では、
前記低延伸部材層の表面の所定位置に凹凸部を形成することを特徴とする画像形成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の画像形成物の製造方法において、
前記画像物形成工程では、
前記基材と前記画像層とを接続する接続層を形成することを特徴とする画像形成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の画像形成物の製造方法において、
前記画像物形成工程では、
前記基材と前記低延伸部材層とを接続する接続層を形成することを特徴とする画像形成物の製造方法。
【請求項7】
基材と、
前記基材上に、画像が形成された画像層と前記基材よりも延伸率が低い低延伸部材層とが積層された画像物と、を備え、
前記低延伸部材層に亀裂が形成されたことを特徴とする画像形成物。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成物において、
前記低延伸部材層の表面に凹凸部が形成されたことを特徴とする画像形成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107230(P2013−107230A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252348(P2011−252348)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】