画像形成装置、エンコーダ寿命予測方法及びプログラム
【課題】 エンコーダ寿命によるエンコーダ信号エラーが予期しないタイミングで発生することにより、プリント出力を中断し、エラーの発生からエンコーダ交換までの間がダウンタイムとなる不都合を回避する。
【解決手段】 チェック時点で光学式エンコーダの出力パルスに抜けが起きる検知限界まで光源光量を低下させ限界光量を得(S105)、その時のインク積算使用量を算出し(S106)、対にして記憶媒体に保存する。各チェック時点で対にして保存された限界光量とインク積算使用量の履歴からこれらの量の関係を示す曲線を近似し(S109)、得られた予測寿命関数に基づいて、現在得られた限界光量が予め定められた寿命の光量に達するまで、どれだけ使用できるかの余寿命をインクの積算量で表す。
【解決手段】 チェック時点で光学式エンコーダの出力パルスに抜けが起きる検知限界まで光源光量を低下させ限界光量を得(S105)、その時のインク積算使用量を算出し(S106)、対にして記憶媒体に保存する。各チェック時点で対にして保存された限界光量とインク積算使用量の履歴からこれらの量の関係を示す曲線を近似し(S109)、得られた予測寿命関数に基づいて、現在得られた限界光量が予め定められた寿命の光量に達するまで、どれだけ使用できるかの余寿命をインクの積算量で表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙面に対して画像形成部を移動させ、走査形式で画像を形成するプリンタ等の画像形成装置に関し、より詳しくは、画像形成部の移動を制御するために位置信号を生成する光学式エンコーダの寿命を予測する機能を備えた画像形成装置、エンコーダ寿命予測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、画像形成部としての記録ヘッドをキャリッジに搭載し、記録ヘッドを画像データで駆動することによりインクの吐出動作を行わせながらキャリッジを記録用紙面に対して主走査方向に直線移動させ、画像形成動作を行う形式を採用した装置が広く普及している。
こうした画像形成部を走査させる形式の画像形成装置において、キャリッジの移動制御は、画像品質を左右する大きな要素であるから、移動時に変位するキャリッジの位置を精度良く検出することが求められる。
移動するキャリッジの位置を検出する手段は、移動方向に設置されたスケールの目盛を検知し(読取り)、位置信号を生成するエンコーダが用いられる。
【0003】
移動時にキャリッジの位置信号を生成するエンコーダは、キャリッジの可動範囲にわたってスケールを設置しておき、キャリッジ側に搭載されたセンサでこのスケールを読取ることで、キャリッジの位置情報を取得している。この種の画像形成装置では、このエンコーダとして、光学スケールを光源で照明し、移動時にスケールによる光の明暗変化を光センサで検知し、位置パルス信号として出力するものがよく用いられる(後記図1,2、参照)。なお、画像形成動作との関係は、キャリッジの移動時にエンコーダから出力される位置信号パルスを機器上に定めた基準位置からカウントすることによってキャリッジの位置情報を得ることができ、得た位置情報をもとに、画像データの転送やインクの吐出タイミングを決定して画像形成を行う。
【0004】
ところで、インクジェットプリンタで光学式エンコーダを用いる場合、インクミストや紙粉等がスケールに付着することで、スケールを読取るセンサが誤検知をしてしまい、キャリッジの正確な位置情報が把握できないことがある。
インクミストや紙粉等による光学式エンコーダの誤検知の問題に対し、インクミストを帯電させて集塵する方法によって正常な印字動作を保つようにする提案がなされている(下記特許文献1、参照)。
また、インクミスト等による汚れによってスケールを読取るセンサへの入力光量が減ることによる感度劣化をセンサの位置信号パルスから検出し、検出量に応じて光源光量を上げる制御を行うことで誤検出を防ぐ方法が提案なされている(下記特許文献2、参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の集塵電極を用いる方法では、飛散するインクミスト個々の条件は、例えば、色毎のインク物性、インクミストの質量、インクミストがもつ運動エネルギー等が違い、多様であるから、全てのインクミストを集塵することが難しい。このため、集塵しきれなかったインクミストのリニアスケールへの付着は避けられず、正常な印字動作の妨げになる。これが、位置検出エラーや印字画像ズレ等のサービスマンコールが必要な不具合の発生となって現れた場合、エンコーダを交換する等のマシン修理のためにダウンタイムが発生する。
また、特許文献2の感度劣化の検出量に応じて光源光量を上げる制御を行う方法による場合に、最大定格等の素子特性上、所定値以上に光源光量を上げることができず、その上マージンを考慮して実施するので、エンコーダが寿命になり、サービスマンコールが予期しないタイミングで生じることは避けることができない。このため、この方法による場合にも、エンコーダを交換する等のマシン修理のためにダウンタイムが発生する。
本発明の目的は、エンコーダ寿命によるエンコーダ信号エラーが予期しないタイミングで発生することにより、プリント出力を中断し、或いは待機させた状態で当該エラーの発生からエンコーダ交換までの間がダウンタイムとなる、という従来技術によって起きる不都合を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走査方向に記録面上を移動する画像形成部の位置を、光量が制御可能な光源により照明されるスケールからの光を受け位置信号を出力するエンコーダによって検出し、検出した位置信号をもとに該画像形成部の移動を制御し、記録面にインクを用いて画像を形成する画像形成装置であって、前記エンコーダの位置信号出力が異常であるか否かを検知する出力異常検知手段と、前記エンコーダの光源光量を低下させながら前記出力異常検知手段によってエンコーダの位置信号出力を検知し、位置信号出力に異常が検知された時の光源光量を取得する異常検知制御手段と、インクの積算使用量を算出するインク積算使用量算出手段と、エンコーダにおける信号出力の異常時に前記異常検知制御手段によって取得された光量とその時に前記インク積算使用量算出手段によって算出されたインク積算使用量とが対にして保存される記憶手段と、前記記憶手段に対にして保存された光源光量とインク積算使用量の履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する関係予測手段と、前記関係予測手段によって予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて、現在検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでのエンコーダの余寿命を算出する余寿命算出手段を有したことを特徴とする。
本発明は、走査方向に記録面上を移動する画像形成部の位置を、光量が制御可能な光源により照明されるスケールからの光を受け位置信号を出力するエンコーダによって検出し、検出した位置信号をもとに該画像形成部の移動を制御し、記録面にインクを用いて画像を形成する画像形成装置における該エンコーダの余寿命を予測するエンコーダ寿命予測方法であって、前記エンコーダの光源光量を低下させながらエンコーダの位置信号出力が異常であるか否かを検知する出力異常検知工程と、前記出力異常検知工程でエンコーダの信号出力に異常が検知された時の光源光量を取得する異常検知時光量取得工程と、インクの積算使用量を算出するインク積算使用量算出工程と、前記異常検知時光量取得工程で取得された光量とその時に前記インク積算使用量算出工程で算出されたインク積算使用量を対にして保存する記憶工程と、前記記憶工程で対にして保存された光量とインク積算使用量の履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する関係予測工程と、前記関係予測工程によって予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて、現在検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでの余寿命を算出する余寿命算出工程を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、エンコーダの余寿命を予測することで、エンコーダの寿命がくる前の適当な時期を選んで、エンコーダ交換を行うことができるので、プリント出力を中断し、或いは待機させた状態でエンコーダ信号エラーの発生からエンコーダ交換までの間がダウンタイムとなる、という従来技術によって起きる不都合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの作像エンジン(画像形成部)の概略構成を示す図である。
【図2】エンコーダの余寿命の予測処理系の構成を示すブロック図である。
【図3】エンコーダ寿命チェックの処理プロセスに係る制御フロー(基本形態)図である。
【図4】図3のパルス抜け検知ステップのサブルーチンを示すフロー図である。
【図5】図3のパルス抜け検知ステップの他のサブルーチンを示すフロー図である。
【図6】図3のインク積算使用量を算出するステップのサブルーチンを示すフロー図である。
【図7】予測寿命関数の求め方及び余寿命を算出する方法を説明する図である。
【図8】予測寿命関数の他の求め方を説明する図である。
【図9】エンコーダ寿命チェックに係る処理プロセスの制御フロー(第2の実施形態)図である。
【図10】エンコーダ寿命チェックに係る処理プロセスの制御フロー(第3の実施形態)図である。
【図11】エンコーダ寿命チェックに係る処理プロセスの制御フロー(第4の実施形態)図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
本発明に係る画像形成装置の以下に示す実施形態は、画像形成にインクジェットヘッドを用いた画像形成装置(以下「インクジェットプリンタ」ともいう)への適用例を示す。
インクジェットプリンタは、画像データによってインクジェットヘッドを駆動し、インク滴を吐出させながらキャリッジを記録用紙面に対して主走査方向に直線移動させ、画像形成動作を行う。
画像形成動作を行う際、記録紙面に対し形成する画像の位置は出力条件として設定されるので、機器上に定められた基準位置から主走査方向に移動するキャリッジの位置を検出し、検出値をもとに画像データの転送やインクの吐出タイミングを決定する。
【0010】
移動するキャリッジの位置検出には、リニアエンコーダ(以下単に「エンコーダ」ともいう)を用いる。エンコーダは、キャリッジの可動範囲にわたってスケールを設置しておき、キャリッジ側に搭載されたセンサでこのスケールを読取る。本実施形態のエンコーダは、光学的に作動するもので、光学スケール(通常、スケールの目盛として等間隔に透過型又は反射型の格子を有する)を光源で照明し、移動時にスケールによる光の明暗変化を光センサで検知し、位置パルス信号として出力するものである。
インクジェットプリンタに光学式のエンコーダを上記のような形で用いることは、従来から採用されているが、上述の[背景技術]の項で述べたように、インクミスト等の付着の影響により誤検出が発生する問題があり、経時的には、正常な検出ができない状態に徐々に近づき、最終的にはエンコーダの定格に基づいて定めた限界を超え、エンコーダの交換時期になる。
本実施形態のインクジェットプリンタは、このエンコーダの交換が必要になる時期が予期しないタイミングで生じることを避けるために、エンコーダが使用不能になる、即ち寿命になるまでの余寿命を予測し、予測結果をユーザに知らせる機能(以下「エンコーダ寿命チェック機能」ともいう)を持ち、この点を特徴とする。
【0011】
以下に、本実施形態の画像形成装置のエンコーダ寿命チェック機能について詳細に説明するが、その前に、実施の対象としたインクジェットプリンタについてその概要を説明する。
「インクジェットプリンタの概要」
図1は、インクジェットプリンタの作像エンジンの概略構成を示す図である。
なお、図1は、主走査方向に移動するキャリッジの動きとキャリッジの移動を検出するエンコーダの関連構成を主に示すものである。よって、エンコーダと直接関係のないインクジェットヘッドや記録用紙給紙機構の詳細、或いは排紙機構等の構成については、既存の構成を用いることができ、説明を要しないので、省略している。
【0012】
図1において、キャリッジ23は、前側板101Fと後側板101Rとの間に横架したキャリッジガイド21と後ステー101Bに設けた図示しないガイドステーで、主走査方向に移動可能に保持され、主走査モータ27で駆動プーリ28Aと従動プーリ28B間に架け渡したタイミングベルト29を介して駆動力が与えられると、主走査方向に移動する。
キャリッジ23上には、それぞれブラック(Bk)インクを吐出する2個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド24k1、24k2と、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクを吐出するそれぞれ1個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド24c、24m、24y(以下、色を区別しないとき及び総称するときは「記録ヘッド24」という)の計5個の液滴吐出ヘッドを搭載する。
キャリッジ23を主走査方向に移動させ、搬送ベルト31によって記録媒体5を用紙搬送方向(副走査方向)に送りながら記録ヘッド24から液滴を吐出させて画像形成を行うシャトル型としている。
記録ヘッド24としては、インク流路内(圧力発生室)のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、或いは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のもの、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの等を用いることができる。
【0013】
また、キャリッジ23の主走査方向(図中、上下の矢印にて示す)に沿って前側板101Fと後側板101Rとの間に張り渡したリニア型のエンコーダスケール(以下単に「スケール」ともいう)128と、キャリッジ23の背面(後ステー101B側)に設けたエンコーダセンサ(以下単に「センサ」ともいう)129とからなるエンコーダ(後記図2のエンコーダ60、参照)を備えている。このリニアエンコーダからキャリッジ23の移動に応じて出力される位置信号に基づいて主走査モータ27を駆動制御して所要の速度及び移動量でキャリッジ23の主走査制御が行なわれる。
【0014】
さらに、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド24のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構121を配置している。この維持回復機構121は、5個の記録ヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップ部材である、1個の保湿用を兼ねた吸引用キャップ122aと、4個の保湿用キャップ122b〜122eと、記録ヘッド24のノズル面をワイピングするためのワイピング部材であるワイパーブレード124と、空吐出を行うための第1の空吐出受け125とが配置されている。
さらに、キャリッジ23の走査方向の他方側の非印字領域には、空吐出を行うための第2の空吐出受け126を配置している。この第2の空吐出受け126には開口127a〜127eを形成している。
【0015】
副走査搬送部は、下方から給紙された記録媒体5を略90度搬送方向を転換させて画像形成部に対向させて搬送するための、駆動ローラである搬送ローラ32とテンションローラである従動ローラ33間に架け渡した無端状の搬送ベルト31とを備えている。
この副走査搬送部の搬送ベルト31は、副走査モータ131からタイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ32が回転されることで、用紙搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。
【0016】
次に、上記したインクジェットプリンタにおいて、キャリッジ23の移動に応じて位置信号を出力するリニアエンコーダの寿命をチェックするエンコーダ寿命チェック機能について説明する。
このチェック機能は、インクミスト等の付着の影響により、リニアスケールを読取るセンサの感度が徐々に低下し、誤検出が起き、エンコーダの出力に異常が生じるようになるが、現在の出力状態が異常出力状態に対してどれだけの余裕があるかをチェックする機能である。ここでは、異常出力状態をエンコーダが寿命に達した状態と定め、現在の状態を余寿命(寿命に達するまでの残余を表す)で把握し、余寿命によってエンコーダの交換時期を事前に知ることができるようにする。なお、余寿命は、現在までの履歴として取得できる、記録ヘッドから吐出されたインクの量即ちインク積算使用量と正常な出力状態を保つために制御されるエンコーダ内の光源(後記図2の発光部129c)光量の関係に基づいて予測する(余寿命の予測方法については、後記で図7,8を参照して詳述)。
【0017】
「余寿命の予測処理系」
本実施形態では、エンコーダ寿命チェック機能を実現する手段として予測処理系を構成する。この処理系は、現在のエンコーダの出力状態を検知する手段と、現在までに記録ヘッドから吐出されたインクの量即ちインク積算使用量を得る手段と、現在に至るまでに出力状態をチェックし得た履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する予測演算手段と、予測結果に従い現在のエンコーダの余寿命を算出する手段を構成要素として有する。
図2は、エンコーダの余寿命の予測処理系の構成を示すブロック図である。
移動するキャリッジの位置を検出するエンコーダ60は、等間隔に透過型又は反射型の格子(メモリ)を有するスケール128と、スケールを照明する光源としての発光部129e及び移動時にスケールから受光側の格子等を通して受光する光の明暗変化を光電変換する受光部129rを備えたセンサ129よりなる。本実施形態のセンサ129は、検出感度を調整するために発光部129eの光量を制御することができ、また、検出精度を高め、移動方向等を判別するために90度位相のずれた位置パルス信号(図2中にA相及びB相として示す)を出力する。なお、この90度位相のずれた位置パルス信号は、次に示すパルス抜けの検知にも用いる。
【0018】
パルス抜けの検知は、リニアスケールを読取るセンサの感度が経時に低下すると、誤検出が起きるようになるので、誤検出が起きる異常な状態であることを検知する方法の一つであり、この実施形態ではこの方法を採用する。ここで採用するパルス抜けの検知は、位相のずれたA相及びB相の位置のどちらかでスケールを正常に読取ることができない(パルス抜け)状態を異常が生じた状態と認識する。
パルス抜け検知手段70は、エンコーダ60のセンサ129から出力される位置パルス信号のA相を立ち上がりエッジ又は立下りエッジでカウントするA相カウンタ71a、同じくエンコーダのB相をカウントするB相カウンタ71b、A相とB相のカウンタ値を比較するカウンタ比較部73、及びカウンタ比較部73による比較結果が等しいか否かによって、パルス抜け有り、無しを判断するパルス抜け判定部75を有する。
【0019】
また、エンコーダの余寿命の算出は、経時的に低下するリニアスケールを読取るセンサの感度が現在どのような状態にあるかを先ず求める。ここでは、上記したパルス抜けが生じる限界まで光源の光量を下げ、その限界の光量を取得し、同時に現在のインク積算使用量も取得する。次いで、これまでに履歴として取得した限界光量とその時のインク積算使用量から、寿命に至るまでの両者の関係(以下、「予測寿命関数」という)を予測する。この後、予測寿命関数に基づいて現在の状態で検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでの余寿命を算出する。
上記余寿命の算出動作を行うための手段として、センサの129の発光部129eの光量を変更する光量変更手段61、インク積算使用量算出手段81、限界光量とその時のインク積算使用量の関係の履歴を記憶する記憶手段83、予測寿命関数を求め、余寿命を算出する余寿命予測算出手段85を有する。光量変更手段61は、例えば、LEDを発光部129eとする場合、任意のDUTYでPWM波形を出力するPWM生成モジュール、PWM生成モジュールによって発生したPWM波形を平滑化する積分回路、積分回路によって平滑化された電圧波形を発光部へ流れる電流へ変換する電流回路によって構成する。PWM生成モジュールにて、発光部へ流したい電流値となるようにDUTYを可変することで、発光部の光量が変更できる。
また、算出されたエンコーダの余寿命をユーザやサービスマンへ報知する報知手段101を有する。なお、余寿命の予測処理系の動作の詳細は、後記するエンコーダ寿命チェックの制御フローに記載する。
【0020】
次に、余寿命の予測処理系を動作させて行うエンコーダ寿命チェックの処理プロセスに係る実施形態を説明する。
この処理プロセスは、インクジェットプリンタのメイン制御部が、エンコーダ寿命チェックの開始条件として予め定められた条件を満たしたときに起動するプログラムに従って実行される。
インクジェットプリンタのメイン制御部は、図示しないが、ハードウェア構成として、ソフトウェア(プログラム)を動作させるCPU(Central Processing Unit)、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、プログラムを動作させるときのワークメモリとして使用するRAM(Random Access Memory)等を構成要素として有する。
このメイン制御部を構成するROMには、機器の動作状態を正常に保つためのプログラムの一部に後述する図3〜6,9,10,12の制御フロー図に示すエンコーダ寿命チェック機能等を実行するためのプログラムを記録しておくことで、メイン制御部のCPUが、この機能を実現する手段を構成する(本実施形態に即して言うと、図2の余寿命の予測処理系を構成する)。なお、上記プログラムを記録する媒体としては、上記のROMに限らず、HDD(ハードディスク)、CD−ROM,MO(Magnet Optical Disk)等のディスク型を含む各種記憶媒体を用いることができる。
【0021】
以下に、エンコーダ寿命チェックに係る処理プロセスの実施形態を図示の制御フローI〜IVに基づいて説明する。
「制御フローI」
図3は、この実施形態のエンコーダ寿命チェックの制御フローを示す図である。
制御フローIは、エンコーダ寿命チェックの実施条件が満たされたタイミングで制御フローを起動してから余寿命を算出し、ユーザ等に算出結果を報知するまでの処理の基本形態を示す。
図3の制御フローによると、先ず、エンコーダ60のセンサ129の発光部129eの光量を初期化する(ステップS101)。
次いで、エンコーダ寿命チェックの実施条件が満たされるか否かを確認し(ステップS102)、実施タイミングの発生が確認できれば(ステップS102-YES)、エンコーダ寿命チェックの実行手順に移行する。エンコーダ寿命チェックの実施条件は、本機(プリンタ)のステータスが電源ON、省エネ復帰(消費電力を低減した状態をとるいわゆる省エネルギーモードから使用状態への復帰)となった場合や通算通紙枚数、インク積算使用量等の情報をもとに、これらが予め定めた量に達した場合を定めることができる。ここでは、実施タイミングの発生が確認できなければ(ステップS102-NO)、所定の周期でこの確認を繰返す。
エンコーダ寿命チェックの実施タイミングである場合には、エンコーダ60のセンサ内の発光部129eの光量を所定量下げる制御を光量変更手段61によって行う(ステップS103)。このとき、発光部129eの光量は、初期状態或いは使用中の適正な状態にあるので、そこから所定量だけ光量を下げる。
【0022】
次に、光量を下げた状態でパルス抜け検知手段70を動作させ、パルス抜けの検知を行う(ステップS104)。
“パルス抜け検知I”
このときパルス抜け検知手段70が行うパルス抜けの検知動作を図4に示すサブルーチンに基づいて説明する。
図4のフローによると、エンコーダ60のスケール128又はセンサ129を移動する(ステップS104−1)。なお、図1に示すこの実施形態のプリンタでは、スケール128は不動であるからセンサ129を移動する。
この移動の間、エンコーダ60の出力信号パルスをA相、B相別々にそれぞれのカウンタ71で同時にスタートさせてパルス数をカウントし、所定のタイミングでA相のカウンタ値とB相のカウンタ値を取得する(ステップS104−2)。このとき、取得するタイミングは、任意に定める。
【0023】
次いで、取得したA相とB相のカウンタ値の差分をカウンタ値比較部73によって算出し(ステップS104−3)、算出した差分がパルス抜けの検知基準として予め定めた所定値以上であるか否かをパルス抜け判定部75によって判断する(ステップS104−4)。なお、エンコーダ60からのA相とB相の出力信号パルスは、90度位相がずれて出力されるので、パルス抜け検知基準の上記所定値は、少なくとも2以上とする。
ステップS104−4でA相とB相のカウンタ値の差の絶対値が所定値以上である場合には(ステップS104−4-YES)、パルス抜けがあると判断し、他方、A相とB相のカウンタ値の差の絶対値が所定値以上ではない場合には(ステップS104−4-NO)、パルス抜けが無いと判断し、このサブルーチンを抜け、図3のメインルーチンに戻る。
【0024】
“パルス抜け検知II”
ここで、上記した図4に示した検知動作に代えて適用できる他のパルス抜けの検知動作について図5に基づいて説明する。
図4のフローによると、先ずエンコーダ60の位置アドレス(AD1)を取得する(ステップS104−11)。なお、エンコーダ60の位置アドレスは、キャリッジ23の移動に用いる主走査モータ27の回転同期信号(パルス)のカウント値から得ることができ、この実施形態では、この主走査モータ27のカウント値がエンコーダ60の適正な位置アドレスを表すデータであることが前提となる。
次に、エンコーダ60のスケール128又はセンサ129をカウンタ71がエンコーダ60の出力信号パルスを所定数(n)分(なお、この数は任意に定める)カウントするまで移動する(ステップS104−12)。なお、図1に示すこの実施形態のプリンタでは、スケール128は不動であるからセンサ129を移動する。
この後、移動後のエンコーダ60の位置アドレス(AD2)を取得する。位置アドレスの取得は、上記ステップS104−11と同様に、主走査モータ27の回転同期パルスのカウント値から得る。この場合、エンコーダ60の出力信号パルス数は、A相、B相別々にそれぞれのカウンタ71でカウントするので、一方にパルス抜けがあると、出力信号パルスを所定数分カウントするまでの移動距離、即ち位置アドレスAD2が変わる。
【0025】
次いで、移動前後のエンコーダ60の位置アドレスの差(AD1−AD2)とエンコーダ60の出力信号パルスの所定カウント数(n)との差分を算出し、算出した差分がパルス抜けの検知基準として予め定めた所定値以上であるか否かを判断する(ステップS104−14)。
ステップS104−14で位置アドレスの差(AD1−AD2)とエンコーダ60の所定カウント数(n)との差の絶対値が所定値以上である場合には(ステップS104−14-YES)、パルス抜けがあると判断し、他方、当該差の絶対値が所定値以上ではない場合には(ステップS104−14-NO)、パルス抜けが無いと判断する。
なお、エンコーダ60の出力信号は、A相とB相があるので、図5の検知方法を適用し、ステップS104−14の判断をする際に、A相とB相の一方のみについて判断する、或いはA相とB相の両方について判断し、いずれか一方にパルス抜けが検知された場合又は両方パルス抜けが検知された場合のどちらかを最終的な判断とする,等のバリエーションで検知が可能になるが、どの方法を採用してもよい。
パルス抜けの有無を判断した後、このサブルーチンを抜け、図3のメインルーチンに戻る。
上記のように、図4及び図5を参照して説明したパルス抜けの検知動作は、いずれもキャリッジが加速又は減速の動作領域にある時でも、エンコーダのパルス抜け検知を行うことができるので、定速を条件とする検知方法にないメリットを有する。
【0026】
図3のメインルーチンに戻ると、ステップS104でパルス抜けの検知を行い、パルス抜けが無いと検知された場合(ステップS104-NO)、ステップS103に戻し、再びエンコーダ60のセンサ内の発光部129eの光量を所定量下げる制御を光量変更手段61によって行う。このステップS104⇔ステップS103のループは、パルス抜けが生じる、即ち、ステップS104-YESになるまで、発光部129eの光量を所定量ずつ下げてパルス抜け検知を行なう。
ステップS104でパルス抜けが検知されると(ステップS104-YES)、次に、このパルス抜けを検知した時の光量(限界光量)を取得する(ステップS105)。
また、限界光量の取得と同時に、このときのセンサ129の検出感度に影響するインク付着状態を表す量としてインク積算使用量(Ia)を算出する(ステップS106)。
【0027】
“インク積算使用量Iaの算出”
このときインク積算使用量算出手段81が行うインク積算使用量の算出動作を図6に示すサブルーチンに基づいて説明する。
図6のフローによると、先ず、画像形成に用いる画像データが入力されたか否かを確認し、画像データの入力が確認できれば(ステップS106−1-YES)、入力されたデータからインクの液滴サイズ及びインク滴数をカウントする(ステップS106−2)。なお、このインク液滴のカウントは、カラー対応のプリンタでは、インク色毎に行う。
また、インク液滴サイズ毎のインク量(例えば、大滴:20pl、中滴:10pl、小滴:2pl)を予め保存しておいた記憶媒体から取得する(ステップS106−3)。
次いで、入力画像データのインク使用量を算出する(ステップS106−4)。この処理は、ステップS106−2で得たインク色毎の液滴サイズ及びインク滴数のカウント値、並びにステップS106−3で得た液滴サイズ毎のインク量に基づいて算出する。
例えば、下記式(1)及び式(2)の計算式、即ち、
インク色(C,Bk,M,Y)毎のインク使用量(Vc,Vbk,Vm,Vy)=大滴(20pl)×a滴+中滴(10pl)×b滴+小滴(2pl)×c滴 ・・・式(1)
入力画像の全インク使用量=Vc+Vbk+Vm+Vy ・・・式(2)
に従い、今回入力された画像のインク積算使用量を算出する。
ここでは、インク積算使用量(Ia)を求めるので、算出した入力画像のインク積算使用量をこれまでの積算量に加算する(ステップS106−5)。
【0028】
この後、今回入力された画像データを用いて印字動作を行う(ステップS106−6)。
また、この印字動作を行う際に、動作中に行った空吐出回数をインク色毎に取得する(ステップS106−7)。空吐出は、入力された画像の印字以外にインクが吐出されるので、この回数をカウントし、インク積算使用量に反映させる必要がある。
また、インク色毎の空吐出量(例えば、C:1000pl、Bk:1000pl、M:1000pl、Y:1000pl)を予め保存しておいた記憶媒体から取得する(ステップS106−8)。
次いで、空吐出によるインク消費量を算出する(ステップS106−9)。この処理は、ステップS106−7で得たインク色毎の空吐出回数のカウント値、ステップS106−8で得たインク色毎の空吐出量及び補正係数に基づいて算出する。
【0029】
上記補正係数は、通常印字時のインク使用量から推定されるミスト量に空吐出時のミスト量を合わせるための係数である。通常印字では、ヘッドからあまり距離のない用紙上に殆どのインクが載るため、ミストが発生し難い条件となるが、空吐出はヘッドから距離が離れて配置されている廃液タンクへと一度に大量のインクを吐出するので、ミストが発生し易くなる。このため、通常印字時のインク滴数と空吐出時のインク滴数が同じ滴数であっても、空吐出時の方がミストが多く発生する。このために必要な補正である。この補正係数は、実験より求められ予め記憶媒体に保存されている。
補正を掛けた今回の印字動作の空吐出によるインク使用量の算出は、例えば、下記式(3)の計算式、即ち、
空吐出のインク使用量={C(1000pl)×空吐出回数+Bk(1000pl)×空吐出回数+M(1000pl)×空吐出回数+Y(1000pl)×空吐出回数}×補正係数 ・・・式(3)
に従い、算出する。
ここでは、インク積算使用量(Ia)を求めるので、算出した空吐出によるインク使用量をこれまでの積算量に加算する(ステップS106−10)。
インク積算使用量(Ia)の算出後、このサブルーチンを抜け、図3のメインルーチンに戻る。
【0030】
“余寿命の算出”
ステップS106で現在のインク積算使用量(Ia)を算出した後、ステップS105で取得したパルス抜けを検知した時の光量(限界光量)と、ステップS106で算出したインク積算使用量を対にして、記憶手段83によって記憶媒体に保存する(ステップS107)。この保存処理は、この制御フローが実行されるたびに行われるので、記憶媒体には、対にして保存された光量とインク積算使用量の履歴が蓄積されることになる。
次に、現在のエンコーダの検出状態、即ちステップS105で得た限界光量とインク積算使用量により表される状態から余寿命を算出する処理手順に移行する。
ここで算出される余寿命は、記憶手段83によって記憶媒体に対にして保存された限界光量とインク積算使用量の履歴から予測寿命関数を求め、得られた予測寿命関数に基づいて現在の状態で検知された限界光量が予め定められた寿命(使用限界)の光量に達するまで、どれだけ使用できるかをインクの積算量で表す。つまり、使用限界の光量に対応するインクの積算使用量(Ie)と現在のインク積算使用量(Ia)の差分(Ie−Ia)を余寿命として算出する。
【0031】
余寿命予測算出手段85が行う寿命予測及び余寿命算出の処理手順を図3の制御フローに基づいて説明する。
図3のフローによると、先ず、記憶媒体に保存された限界光量(ステップS104でパルス抜けを検知したときの光源光量)と対にしたインク積算使用量のこれまでの履歴を全て取得する(ステップS108)。
次に、前段で取得した限界光量と対にしたインク積算使用量の全履歴情報から限界光量とインク積算使用量の関係を表す近似曲線(予測寿命関数)を算出する(ステップS109)。
【0032】
上記近似曲線(予測寿命関数)の算出方法について、図7を参照して説明する。
図7に示すグラフは、Y軸に限界光量(ステップS104でパルス抜けを検知したときの光源光量)をとり、X軸にインク積算使用量(ml)をとっている。インク積算使用量が0の初期状態から図3に示す制御フローを実施するたびに、パルス抜け検知を行い(ステップS104)、検知結果として得られる限界光量とインク積算使用量の関係は、図7中の黒丸に示すようになる。
図7のグラフは、初期状態からのパルス抜けの検知結果の全履歴(全黒丸サンプル)から同図中に記される曲線によって近似した関数で表される例を示している。この近似曲線を算出することにより、Y(限界光量)とX(インク積算使用量)の関係が関数で表現されるので、使用を続けると、到達するであろう使用限界を予測することができる。ここでは、実験的に寿命に対応する使用限界値(光量)を予め定め、近似曲線と光量の使用限界値との交点のインク積算使用量を求めることにより、使用限界をインクの積算量Ieで表すことができる。
【0033】
ここで、上記で図7を参照して示した近似曲線の算出方法に代えて適用できる他の算出方法について図8に基づいて説明する。
図8に示すグラフは、図3に示す制御フローを実施するたびに、パルス抜け検知を行い、得られる限界光量とインク積算使用量の関係を、同図中の黒丸で示しており、この点では上記算出方法(図7、参照)と変わらない。
ただ、図8に示す方法では、予測に用いる履歴の範囲を図7に示した全履歴ではなく、履歴のうち現在に近い部分のみに限定している。つまり、図8に示すように、現在値で示す最新サンプルからX(インク積算使用量)が所定値少なかった状態にあったときまでの一部の範囲に限定し、この範囲のサンプルデータ(同図中、白抜き丸で示す)を用いて予測をする。図8の例に示すように、光量が使用限界に近づくと、インク積算使用量に対する限界光量の変化が徐々に小さくなる傾向にあり、範囲を限定した場合には、図7の全履歴によって予測する場合よりも寿命を長く予測する。
この近似曲線の算出方法によると、エンコーダのスケールやセンサがインクミスト等によって汚れ、経時的にエンコーダの検知感度が限界に近づいた場合にも、より正確な寿命予測ができる。
【0034】
図3のフローに戻ると、ステップS109で近似曲線(予測寿命関数)を算出した後、算出した予測寿命関数に基づいて予測寿命をインク積算使用量(Ie)として算出する(ステップS110)。つまり、図7,8を参照して説明したように、予測した近似曲線と光量の使用限界値との交点のインク積算使用量を求めることにより、予測寿命値をインクの積算量Ieで表す。
次に、予測結果をユーザ等に報知する(ステップS111)。ここでは、単に使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを知らせるのではなく、余寿命として、使用限界に達するまで、どれだけ使用できるかをインクの積算使用量で示す。この使用できるインク積算使用量は、使用限界の光量に対応するインクの積算使用量(Ie)と現在のインク積算使用量(Ia)の差分(Ie−Ia)を求める。求めた量を報知手段101としての操作パネル(図示せず)の表示画面を通して表示等を行う。なお、使用できるインク積算使用量を標準的なチャートの何枚分の出力に相当するかを表す方法で知らせる記録用紙にしてもよい。
この後、初期状態で待機するために、エンコーダ寿命チェック動作によって制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS101に戻る。
【0035】
上記のように、エンコーダのスケールやセンサがインクミスト等によって汚れ、経時的にエンコーダの検知感度が低下し、使用限界に達する寿命を予測し、余寿命をユーザに報知する機能を備えることにより、エンコーダの寿命がくる前の適当な時期を選んで、エンコーダ交換を行うことができるので、プリント出力を中断した状態或いは待機させた状態でエンコーダ信号エラー(パルス抜け)の発生からエンコーダ交換までの間がダウンタイムとなる、という従来技術によって起きる不都合を回避できる。
【0036】
「制御フローII」
エンコーダ寿命チェックの上記制御フローIでは、寿命チェック処理の基本形態を示したが、この実施形態では、上記制御フローIの処理手順に改良を加えたものである。
本実施形態では、制御フローIと同様に寿命予測及び余寿命算出の処理を行うが、これらの処理を行う意味がない場合には、処理を省略できるようにする手順を設ける改良を行っている。
ここでは、処理を省略する条件として、エンコーダを使用し始めた当初においては、インクミスト等による汚れがエンコーダ出力信号のエラーに影響することはほとんどなく、寿命予測及び余寿命算出の処理負担を負ってまで、エンコーダの余寿命をユーザ等に報知する意味がない。
【0037】
そこで、本実施形態では、現在のエンコーダの検出状態を表す限界光量、即ち、エンコーダセンサの光源光量を徐々に下げることで検出感度を低下させ、パルス抜けを検知した時の光量(図3のフローにおけるステップS103〜S105の処理、参照)を取得し、取得した限界光量が所定値より大きいか否かを確認し、その結果、限界光量が所定値に満たない場合には、寿命予測及び余寿命算出を省略できるようにする。なお、上記所定値は、エンコーダ寿命チェックをかける必要がない期間を予め実験的に確認し、光量に対応する数値で定めておくことが必要になる。
ただ、寿命予測及び余寿命算出を省略した場合にも、現在のエンコーダの検出状態、即ち限界光量とインク積算使用量により表される検出状態は、履歴として残しておく必要があるので、寿命予測及び余寿命算出を省略しても、履歴を残すまでの処理手順は、上記制御フローIと同様に行う。
【0038】
図9は、この実施形態のエンコーダ寿命チェックの制御フローIIを示す図である。
図9に示す制御フローにおいて、ステップS208が新たに付加したステップである。
なお、ステップS208以外のステップS201〜S207及びステップS209〜S212は、上記制御フローI(図3)のステップS101〜S111に対応し、各ステップの処理は同一である。よって、これらの制御フローは、上記制御フローI(図3)の説明を参照することとし、記載を省略し、以下には、ステップS208に関係する動作のみ説明する。
ステップS201〜S207によって、現在のエンコーダの検出状態を表すデータとして、パルス抜けを検知した時の限界光量を取得し(ステップS205)、並行して現在のインク積算使用量を取得し(ステップS206)、取得した限界光量とインク積算使用量を対にして記憶媒体に保存する(ステップS207)。
【0039】
その後、ステップS205で取得した限界光量が、余寿命算出等の処理を省略するために予め定めた所定値よりも大きいか否かを判断する(ステップS208)。
ここで、限界光量が所定値よりも大きい場合(ステップS208-YES)、インクミストの付着が進み、エンコーダ寿命チェックをする時期に達しているという判断のもとに、余寿命算出等の処理を行うステップS209に移行する。
他方、限界光量が所定値未満である場合(ステップS208-NO)、インクミストの付着は少なく、エンコーダ寿命チェックをする時期に達していないという判断のもとに、余寿命算出等の処理を省略して、初期状態で待機するために、パルス抜けを検知する動作のために制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS201に戻る。
上記のように、ステップS208を付加することで、エンコーダを使用し始めた当初においては、インク使用量が少ないので、処理負担を負ってまで余寿命を算出する必要が無く、またパルス抜け検知をした時のデータ数が少ないと予測寿命関数による予測精度も高くなく、誤差が発生するので、この時期の余寿命算出等の処理を省略することができ、エンコーダの状態に応じパフォーマンスを適正化できる。
【0040】
「制御フローIII」
エンコーダ寿命チェックの上記制御フローIでは、寿命チェック処理の基本形態を示したが、この実施形態では、上記制御フローIの処理手順の一部に変更を加えたものである。
本実施形態では、制御フローIと同様に寿命予測及び余寿命算出の処理を行い、ユーザに余寿命を報知するが、報知の仕方に変更を加えている。
制御フローIでは、算出した余寿命をユーザに報知している。この場合、ユーザは余寿命が分かるので、エンコーダの交換が必要になるニアエンドの時期を判断する目安とはなるが、明確なニアエンドを知ることができない。
【0041】
そこで、この実施形態では、ユーザへの報知をニアエンドに達した時期に行うことで、エンコーダの交換時期を見逃すことなく確実に知らせるようにする。
本実施形態では、ニアエンドに達したか否かを、算出した余寿命が所定値より大きいか否かを確認し、その結果、余寿命が所定値に満たない場合には、ニアエンドを報知できるようにする。なお、上記所定値は、画像形成動作を停止させるエンド条件として定めた状態になるまで、どれぐらいのインク使用量を残しておけばよいかを予め実験的に確認し、算出する余寿命と比較できる数値で定めておくことが必要になる。
この数値は、標準的なチャート(例えば、J1チャート)に使用するインク滴数から標準的なチャートを何枚通紙できるかを定め、インク使用量として算出してもよい。また、インク積算使用量から積算通紙枚数を除算することで、ユーザが一枚あたりに使用するインク使用量の平均を算出し、その平均値よりユーザが使用できる通紙枚数を定め、インク使用量として算出してもよい。また、この場合、ニアエンドの報知内容として、ニアエンドであり、後何枚通紙すると停止状態になり、エンコーダの交換が必要であることを示すとよい。
【0042】
図10は、この実施形態のエンコーダ寿命チェックの制御フローIIIを示す図である。
図10に示す制御フローにおいて、ステップS311及びS315が新たに付加したステップである。
なお、ステップS311及びS315以外のステップS301〜S310は、上記制御フローI(図3)のステップS101〜S110に対応し、各ステップの処理は同一であり、また、ステップS312はステップS111に代替する。よって、図10の制御フローにおけるステップS301〜S310は、上記制御フローI(図3)の説明を参照することとし、記載を省略し、以下には、ステップS311、S312及びS315に関係する動作のみ説明する。
【0043】
ステップS310で使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを算出した後、この予測結果をユーザ等に報知するが、ここでは、単に使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを知らせるのではなく、余寿命として、使用限界に達するまで、どれだけ使用できるかをインクの積算使用量で示す。この使用できるインク積算使用量は、使用限界の光量に対応するインクの積算使用量(Ie)と現在のインク積算使用量(Ia)の差分(Ie−Ia)で表す。さらに、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が、ニアエンドに達したか否かを判断するために予め定めた所定値よりも小さいか否かを判断する(ステップS311)。
ここで、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が所定値よりも小さい場合(ステップS311-YES)、インクミストの付着が進み、ニアエンドに達しているという判断のもとに、ニアエンド報知を行うステップS312に移行する。
ニアエンドの報知は、ニアエンドを知らせるとともに、余寿命として、例えば、後何枚通紙すると停止状態になるか、また、エンコーダの交換を促すメッセージを操作パネル(図示せず)を通じてユーザに知らせる(ステップS312)。
ニアエンドを報知した後、初期状態で待機するために、パルス抜けを検知する動作のために制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS301に戻る。
【0044】
他方、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が所定値以上である場合(ステップS311-NO)、ニアエンドに達していないので、ニアエンド報知のフラグが立っている場合には、このフラグを解除する(ステップS315)。なお、ニアエンド報知フラグは、ステップS311の判断に従い、ニアエンドに達しているという判断のもとに、ニアエンド報知を行う場合に立てられ、ニアエンド報知フラグが立っていれば、ステップS312でニアエンド報知を行う。ただ、ニアエンド報知フラグを立てた後、次の実施タイミングで行ったエンコーダ寿命チェックの判断が、例えば、パルス抜けの検知の誤り等により反転することがあり得、ニアエンドに達していない、という反対の判断がされた場合には、これまで立っていたフラグを解除する必要がある。
ニアエンド報知フラグを解除した後、初期状態で待機するために、パルス抜けを検知する動作のために制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS301に戻る。
上記のように、ステップS311及びS312を付加することで、エンコーダの交換時期の間近に、ユーザ等へその旨を報知することで、適切なエンコーダ交換時期に確実にエンコーダを交換することができる。
【0045】
「制御フローIV」
エンコーダ寿命チェックの上記制御フローIでは、寿命チェック処理の基本形態を示したが、この実施形態では、上記制御フローIの処理手順の一部に変更を加えたもので、変更した部分は、上記制御フローIIIと共通するニアエンド報知ステップと、さらにニアエンド報知に付随する処置として、使用限界を延長するためにエンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させる処理を行うステップである。
つまり、本実施形態の制御フローIVでは、制御フローIと同様に寿命予測及び余寿命算出の処理を行い、ユーザに余寿命を報知する。ただ、余寿命の報知の仕方は、上記制御フローIIIと同様に、ニアエンドに達したか否かを、算出した余寿命が所定値より大きいか否かを確認し、その結果、余寿命が所定値に満たない場合には、ニアエンドを報知できるようにする。さらに、制御フローIVに特有の手順として、ニアエンド報知に付随して、エンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させる処理を制御フローの終端で行う。
この終端の処理は、エンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させる。増大させる光量は、使用限界値(図7,8に示した寿命に達するときの光量値)に相当する量を目標に定めてもよい。この処理は、ニアエンド報知にも応えず、エンコーダ交換が行われなかった場合にも、エンコーダを寿命まで使い切ることを意図したものである。
【0046】
図11は、この実施形態のエンコーダ寿命チェックの制御フローIVを示す図である。
図11に示す制御フローIVは、基本的に図10に示した制御フローIIIと同じ処理を行うが、制御フローIVの終端で行うステップS412及びS413は、当該フローに特有の手順である。
なお、ステップS412及びS413以外のステップS401〜S411は、上記制御フローIII(図10)のステップS301〜S311に対応し、各ステップの処理は同一である。よって、図11の制御フローにおけるステップS401〜S411は、上記制御フローIII(図10)の説明を参照することとし、記載を省略し、以下には、ステップS412及びS413に関係する動作のみ説明する。
【0047】
ステップS410で使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを算出した後、この予測結果をユーザ等に報知するが、ここでは、単に使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを知らせるのではなく、余寿命として、使用限界に達するまで、どれだけ使用できるかをインクの積算使用量で示す。この使用できるインク積算使用量は、使用限界の光量に対応するインクの予測積使用量(Ie)と現在のインク積算使用量(Ia)の差分(Ie−Ia)で表す。さらに、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が、ニアエンドに達したか否かを判断するために予め定めた所定値よりも小さいか否かを判断する(ステップS411)。
ここで、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が所定値よりも小さい場合(ステップS411-YES)、インクミストの付着が進み、ニアエンドに達しているという判断のもとに、ニアエンド報知を行うステップS412に移行する。
【0048】
ニアエンドの報知は、ニアエンドを知らせるとともに、余寿命として、例えば、後何枚通紙すると停止状態になるか、また、エンコーダの交換を促すメッセージをユーザに操作パネル(図示せず)を通じて知らせる(ステップS412)。
ニアエンドを報知した後、エンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させる(ステップS413)。この処理を行うことで、センサの検出感度を上げ、現状におけるよりもパルス抜けが生じ難くなるので、現行の光源光量のままで動作させるよりも使用限界を延長することができる。使用限界値(図7,8に示した寿命に達するときの光量値)に相当する量を目標に光量を増せば、エンコーダを寿命まで使い切ることが可能になる。
【0049】
他方、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が所定値以上である場合(ステップS311-NO)、ニアエンドに達していないので、初期状態で待機するために、パルス抜けを検知する動作のために制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS401に戻る。
上記のように、ステップS412及びS413の付加により、ニアエンド報知に付随して、エンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させることで、ユーザ又はサービスマンが報知した適切なエンコーダ交換時期にエンコーダ交換を行わなかった場合に、増大させた分エンコーダの寿命を延長できる。
【符号の説明】
【0050】
60・・エンコーダ、61・・光量変更手段、70・・パルス抜け検知手段、81・・インク積算使用量算出手段、83・・記憶手段、85・・余寿命予測算出手段、128・・エンコーダスケール、129・・エンコーダセンサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開2005−349799号公報
【特許文献2】特開2004−138386号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙面に対して画像形成部を移動させ、走査形式で画像を形成するプリンタ等の画像形成装置に関し、より詳しくは、画像形成部の移動を制御するために位置信号を生成する光学式エンコーダの寿命を予測する機能を備えた画像形成装置、エンコーダ寿命予測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、画像形成部としての記録ヘッドをキャリッジに搭載し、記録ヘッドを画像データで駆動することによりインクの吐出動作を行わせながらキャリッジを記録用紙面に対して主走査方向に直線移動させ、画像形成動作を行う形式を採用した装置が広く普及している。
こうした画像形成部を走査させる形式の画像形成装置において、キャリッジの移動制御は、画像品質を左右する大きな要素であるから、移動時に変位するキャリッジの位置を精度良く検出することが求められる。
移動するキャリッジの位置を検出する手段は、移動方向に設置されたスケールの目盛を検知し(読取り)、位置信号を生成するエンコーダが用いられる。
【0003】
移動時にキャリッジの位置信号を生成するエンコーダは、キャリッジの可動範囲にわたってスケールを設置しておき、キャリッジ側に搭載されたセンサでこのスケールを読取ることで、キャリッジの位置情報を取得している。この種の画像形成装置では、このエンコーダとして、光学スケールを光源で照明し、移動時にスケールによる光の明暗変化を光センサで検知し、位置パルス信号として出力するものがよく用いられる(後記図1,2、参照)。なお、画像形成動作との関係は、キャリッジの移動時にエンコーダから出力される位置信号パルスを機器上に定めた基準位置からカウントすることによってキャリッジの位置情報を得ることができ、得た位置情報をもとに、画像データの転送やインクの吐出タイミングを決定して画像形成を行う。
【0004】
ところで、インクジェットプリンタで光学式エンコーダを用いる場合、インクミストや紙粉等がスケールに付着することで、スケールを読取るセンサが誤検知をしてしまい、キャリッジの正確な位置情報が把握できないことがある。
インクミストや紙粉等による光学式エンコーダの誤検知の問題に対し、インクミストを帯電させて集塵する方法によって正常な印字動作を保つようにする提案がなされている(下記特許文献1、参照)。
また、インクミスト等による汚れによってスケールを読取るセンサへの入力光量が減ることによる感度劣化をセンサの位置信号パルスから検出し、検出量に応じて光源光量を上げる制御を行うことで誤検出を防ぐ方法が提案なされている(下記特許文献2、参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の集塵電極を用いる方法では、飛散するインクミスト個々の条件は、例えば、色毎のインク物性、インクミストの質量、インクミストがもつ運動エネルギー等が違い、多様であるから、全てのインクミストを集塵することが難しい。このため、集塵しきれなかったインクミストのリニアスケールへの付着は避けられず、正常な印字動作の妨げになる。これが、位置検出エラーや印字画像ズレ等のサービスマンコールが必要な不具合の発生となって現れた場合、エンコーダを交換する等のマシン修理のためにダウンタイムが発生する。
また、特許文献2の感度劣化の検出量に応じて光源光量を上げる制御を行う方法による場合に、最大定格等の素子特性上、所定値以上に光源光量を上げることができず、その上マージンを考慮して実施するので、エンコーダが寿命になり、サービスマンコールが予期しないタイミングで生じることは避けることができない。このため、この方法による場合にも、エンコーダを交換する等のマシン修理のためにダウンタイムが発生する。
本発明の目的は、エンコーダ寿命によるエンコーダ信号エラーが予期しないタイミングで発生することにより、プリント出力を中断し、或いは待機させた状態で当該エラーの発生からエンコーダ交換までの間がダウンタイムとなる、という従来技術によって起きる不都合を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走査方向に記録面上を移動する画像形成部の位置を、光量が制御可能な光源により照明されるスケールからの光を受け位置信号を出力するエンコーダによって検出し、検出した位置信号をもとに該画像形成部の移動を制御し、記録面にインクを用いて画像を形成する画像形成装置であって、前記エンコーダの位置信号出力が異常であるか否かを検知する出力異常検知手段と、前記エンコーダの光源光量を低下させながら前記出力異常検知手段によってエンコーダの位置信号出力を検知し、位置信号出力に異常が検知された時の光源光量を取得する異常検知制御手段と、インクの積算使用量を算出するインク積算使用量算出手段と、エンコーダにおける信号出力の異常時に前記異常検知制御手段によって取得された光量とその時に前記インク積算使用量算出手段によって算出されたインク積算使用量とが対にして保存される記憶手段と、前記記憶手段に対にして保存された光源光量とインク積算使用量の履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する関係予測手段と、前記関係予測手段によって予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて、現在検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでのエンコーダの余寿命を算出する余寿命算出手段を有したことを特徴とする。
本発明は、走査方向に記録面上を移動する画像形成部の位置を、光量が制御可能な光源により照明されるスケールからの光を受け位置信号を出力するエンコーダによって検出し、検出した位置信号をもとに該画像形成部の移動を制御し、記録面にインクを用いて画像を形成する画像形成装置における該エンコーダの余寿命を予測するエンコーダ寿命予測方法であって、前記エンコーダの光源光量を低下させながらエンコーダの位置信号出力が異常であるか否かを検知する出力異常検知工程と、前記出力異常検知工程でエンコーダの信号出力に異常が検知された時の光源光量を取得する異常検知時光量取得工程と、インクの積算使用量を算出するインク積算使用量算出工程と、前記異常検知時光量取得工程で取得された光量とその時に前記インク積算使用量算出工程で算出されたインク積算使用量を対にして保存する記憶工程と、前記記憶工程で対にして保存された光量とインク積算使用量の履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する関係予測工程と、前記関係予測工程によって予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて、現在検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでの余寿命を算出する余寿命算出工程を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、エンコーダの余寿命を予測することで、エンコーダの寿命がくる前の適当な時期を選んで、エンコーダ交換を行うことができるので、プリント出力を中断し、或いは待機させた状態でエンコーダ信号エラーの発生からエンコーダ交換までの間がダウンタイムとなる、という従来技術によって起きる不都合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの作像エンジン(画像形成部)の概略構成を示す図である。
【図2】エンコーダの余寿命の予測処理系の構成を示すブロック図である。
【図3】エンコーダ寿命チェックの処理プロセスに係る制御フロー(基本形態)図である。
【図4】図3のパルス抜け検知ステップのサブルーチンを示すフロー図である。
【図5】図3のパルス抜け検知ステップの他のサブルーチンを示すフロー図である。
【図6】図3のインク積算使用量を算出するステップのサブルーチンを示すフロー図である。
【図7】予測寿命関数の求め方及び余寿命を算出する方法を説明する図である。
【図8】予測寿命関数の他の求め方を説明する図である。
【図9】エンコーダ寿命チェックに係る処理プロセスの制御フロー(第2の実施形態)図である。
【図10】エンコーダ寿命チェックに係る処理プロセスの制御フロー(第3の実施形態)図である。
【図11】エンコーダ寿命チェックに係る処理プロセスの制御フロー(第4の実施形態)図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
本発明に係る画像形成装置の以下に示す実施形態は、画像形成にインクジェットヘッドを用いた画像形成装置(以下「インクジェットプリンタ」ともいう)への適用例を示す。
インクジェットプリンタは、画像データによってインクジェットヘッドを駆動し、インク滴を吐出させながらキャリッジを記録用紙面に対して主走査方向に直線移動させ、画像形成動作を行う。
画像形成動作を行う際、記録紙面に対し形成する画像の位置は出力条件として設定されるので、機器上に定められた基準位置から主走査方向に移動するキャリッジの位置を検出し、検出値をもとに画像データの転送やインクの吐出タイミングを決定する。
【0010】
移動するキャリッジの位置検出には、リニアエンコーダ(以下単に「エンコーダ」ともいう)を用いる。エンコーダは、キャリッジの可動範囲にわたってスケールを設置しておき、キャリッジ側に搭載されたセンサでこのスケールを読取る。本実施形態のエンコーダは、光学的に作動するもので、光学スケール(通常、スケールの目盛として等間隔に透過型又は反射型の格子を有する)を光源で照明し、移動時にスケールによる光の明暗変化を光センサで検知し、位置パルス信号として出力するものである。
インクジェットプリンタに光学式のエンコーダを上記のような形で用いることは、従来から採用されているが、上述の[背景技術]の項で述べたように、インクミスト等の付着の影響により誤検出が発生する問題があり、経時的には、正常な検出ができない状態に徐々に近づき、最終的にはエンコーダの定格に基づいて定めた限界を超え、エンコーダの交換時期になる。
本実施形態のインクジェットプリンタは、このエンコーダの交換が必要になる時期が予期しないタイミングで生じることを避けるために、エンコーダが使用不能になる、即ち寿命になるまでの余寿命を予測し、予測結果をユーザに知らせる機能(以下「エンコーダ寿命チェック機能」ともいう)を持ち、この点を特徴とする。
【0011】
以下に、本実施形態の画像形成装置のエンコーダ寿命チェック機能について詳細に説明するが、その前に、実施の対象としたインクジェットプリンタについてその概要を説明する。
「インクジェットプリンタの概要」
図1は、インクジェットプリンタの作像エンジンの概略構成を示す図である。
なお、図1は、主走査方向に移動するキャリッジの動きとキャリッジの移動を検出するエンコーダの関連構成を主に示すものである。よって、エンコーダと直接関係のないインクジェットヘッドや記録用紙給紙機構の詳細、或いは排紙機構等の構成については、既存の構成を用いることができ、説明を要しないので、省略している。
【0012】
図1において、キャリッジ23は、前側板101Fと後側板101Rとの間に横架したキャリッジガイド21と後ステー101Bに設けた図示しないガイドステーで、主走査方向に移動可能に保持され、主走査モータ27で駆動プーリ28Aと従動プーリ28B間に架け渡したタイミングベルト29を介して駆動力が与えられると、主走査方向に移動する。
キャリッジ23上には、それぞれブラック(Bk)インクを吐出する2個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド24k1、24k2と、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクを吐出するそれぞれ1個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド24c、24m、24y(以下、色を区別しないとき及び総称するときは「記録ヘッド24」という)の計5個の液滴吐出ヘッドを搭載する。
キャリッジ23を主走査方向に移動させ、搬送ベルト31によって記録媒体5を用紙搬送方向(副走査方向)に送りながら記録ヘッド24から液滴を吐出させて画像形成を行うシャトル型としている。
記録ヘッド24としては、インク流路内(圧力発生室)のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、或いは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のもの、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの等を用いることができる。
【0013】
また、キャリッジ23の主走査方向(図中、上下の矢印にて示す)に沿って前側板101Fと後側板101Rとの間に張り渡したリニア型のエンコーダスケール(以下単に「スケール」ともいう)128と、キャリッジ23の背面(後ステー101B側)に設けたエンコーダセンサ(以下単に「センサ」ともいう)129とからなるエンコーダ(後記図2のエンコーダ60、参照)を備えている。このリニアエンコーダからキャリッジ23の移動に応じて出力される位置信号に基づいて主走査モータ27を駆動制御して所要の速度及び移動量でキャリッジ23の主走査制御が行なわれる。
【0014】
さらに、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド24のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構121を配置している。この維持回復機構121は、5個の記録ヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップ部材である、1個の保湿用を兼ねた吸引用キャップ122aと、4個の保湿用キャップ122b〜122eと、記録ヘッド24のノズル面をワイピングするためのワイピング部材であるワイパーブレード124と、空吐出を行うための第1の空吐出受け125とが配置されている。
さらに、キャリッジ23の走査方向の他方側の非印字領域には、空吐出を行うための第2の空吐出受け126を配置している。この第2の空吐出受け126には開口127a〜127eを形成している。
【0015】
副走査搬送部は、下方から給紙された記録媒体5を略90度搬送方向を転換させて画像形成部に対向させて搬送するための、駆動ローラである搬送ローラ32とテンションローラである従動ローラ33間に架け渡した無端状の搬送ベルト31とを備えている。
この副走査搬送部の搬送ベルト31は、副走査モータ131からタイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ32が回転されることで、用紙搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。
【0016】
次に、上記したインクジェットプリンタにおいて、キャリッジ23の移動に応じて位置信号を出力するリニアエンコーダの寿命をチェックするエンコーダ寿命チェック機能について説明する。
このチェック機能は、インクミスト等の付着の影響により、リニアスケールを読取るセンサの感度が徐々に低下し、誤検出が起き、エンコーダの出力に異常が生じるようになるが、現在の出力状態が異常出力状態に対してどれだけの余裕があるかをチェックする機能である。ここでは、異常出力状態をエンコーダが寿命に達した状態と定め、現在の状態を余寿命(寿命に達するまでの残余を表す)で把握し、余寿命によってエンコーダの交換時期を事前に知ることができるようにする。なお、余寿命は、現在までの履歴として取得できる、記録ヘッドから吐出されたインクの量即ちインク積算使用量と正常な出力状態を保つために制御されるエンコーダ内の光源(後記図2の発光部129c)光量の関係に基づいて予測する(余寿命の予測方法については、後記で図7,8を参照して詳述)。
【0017】
「余寿命の予測処理系」
本実施形態では、エンコーダ寿命チェック機能を実現する手段として予測処理系を構成する。この処理系は、現在のエンコーダの出力状態を検知する手段と、現在までに記録ヘッドから吐出されたインクの量即ちインク積算使用量を得る手段と、現在に至るまでに出力状態をチェックし得た履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する予測演算手段と、予測結果に従い現在のエンコーダの余寿命を算出する手段を構成要素として有する。
図2は、エンコーダの余寿命の予測処理系の構成を示すブロック図である。
移動するキャリッジの位置を検出するエンコーダ60は、等間隔に透過型又は反射型の格子(メモリ)を有するスケール128と、スケールを照明する光源としての発光部129e及び移動時にスケールから受光側の格子等を通して受光する光の明暗変化を光電変換する受光部129rを備えたセンサ129よりなる。本実施形態のセンサ129は、検出感度を調整するために発光部129eの光量を制御することができ、また、検出精度を高め、移動方向等を判別するために90度位相のずれた位置パルス信号(図2中にA相及びB相として示す)を出力する。なお、この90度位相のずれた位置パルス信号は、次に示すパルス抜けの検知にも用いる。
【0018】
パルス抜けの検知は、リニアスケールを読取るセンサの感度が経時に低下すると、誤検出が起きるようになるので、誤検出が起きる異常な状態であることを検知する方法の一つであり、この実施形態ではこの方法を採用する。ここで採用するパルス抜けの検知は、位相のずれたA相及びB相の位置のどちらかでスケールを正常に読取ることができない(パルス抜け)状態を異常が生じた状態と認識する。
パルス抜け検知手段70は、エンコーダ60のセンサ129から出力される位置パルス信号のA相を立ち上がりエッジ又は立下りエッジでカウントするA相カウンタ71a、同じくエンコーダのB相をカウントするB相カウンタ71b、A相とB相のカウンタ値を比較するカウンタ比較部73、及びカウンタ比較部73による比較結果が等しいか否かによって、パルス抜け有り、無しを判断するパルス抜け判定部75を有する。
【0019】
また、エンコーダの余寿命の算出は、経時的に低下するリニアスケールを読取るセンサの感度が現在どのような状態にあるかを先ず求める。ここでは、上記したパルス抜けが生じる限界まで光源の光量を下げ、その限界の光量を取得し、同時に現在のインク積算使用量も取得する。次いで、これまでに履歴として取得した限界光量とその時のインク積算使用量から、寿命に至るまでの両者の関係(以下、「予測寿命関数」という)を予測する。この後、予測寿命関数に基づいて現在の状態で検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでの余寿命を算出する。
上記余寿命の算出動作を行うための手段として、センサの129の発光部129eの光量を変更する光量変更手段61、インク積算使用量算出手段81、限界光量とその時のインク積算使用量の関係の履歴を記憶する記憶手段83、予測寿命関数を求め、余寿命を算出する余寿命予測算出手段85を有する。光量変更手段61は、例えば、LEDを発光部129eとする場合、任意のDUTYでPWM波形を出力するPWM生成モジュール、PWM生成モジュールによって発生したPWM波形を平滑化する積分回路、積分回路によって平滑化された電圧波形を発光部へ流れる電流へ変換する電流回路によって構成する。PWM生成モジュールにて、発光部へ流したい電流値となるようにDUTYを可変することで、発光部の光量が変更できる。
また、算出されたエンコーダの余寿命をユーザやサービスマンへ報知する報知手段101を有する。なお、余寿命の予測処理系の動作の詳細は、後記するエンコーダ寿命チェックの制御フローに記載する。
【0020】
次に、余寿命の予測処理系を動作させて行うエンコーダ寿命チェックの処理プロセスに係る実施形態を説明する。
この処理プロセスは、インクジェットプリンタのメイン制御部が、エンコーダ寿命チェックの開始条件として予め定められた条件を満たしたときに起動するプログラムに従って実行される。
インクジェットプリンタのメイン制御部は、図示しないが、ハードウェア構成として、ソフトウェア(プログラム)を動作させるCPU(Central Processing Unit)、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、プログラムを動作させるときのワークメモリとして使用するRAM(Random Access Memory)等を構成要素として有する。
このメイン制御部を構成するROMには、機器の動作状態を正常に保つためのプログラムの一部に後述する図3〜6,9,10,12の制御フロー図に示すエンコーダ寿命チェック機能等を実行するためのプログラムを記録しておくことで、メイン制御部のCPUが、この機能を実現する手段を構成する(本実施形態に即して言うと、図2の余寿命の予測処理系を構成する)。なお、上記プログラムを記録する媒体としては、上記のROMに限らず、HDD(ハードディスク)、CD−ROM,MO(Magnet Optical Disk)等のディスク型を含む各種記憶媒体を用いることができる。
【0021】
以下に、エンコーダ寿命チェックに係る処理プロセスの実施形態を図示の制御フローI〜IVに基づいて説明する。
「制御フローI」
図3は、この実施形態のエンコーダ寿命チェックの制御フローを示す図である。
制御フローIは、エンコーダ寿命チェックの実施条件が満たされたタイミングで制御フローを起動してから余寿命を算出し、ユーザ等に算出結果を報知するまでの処理の基本形態を示す。
図3の制御フローによると、先ず、エンコーダ60のセンサ129の発光部129eの光量を初期化する(ステップS101)。
次いで、エンコーダ寿命チェックの実施条件が満たされるか否かを確認し(ステップS102)、実施タイミングの発生が確認できれば(ステップS102-YES)、エンコーダ寿命チェックの実行手順に移行する。エンコーダ寿命チェックの実施条件は、本機(プリンタ)のステータスが電源ON、省エネ復帰(消費電力を低減した状態をとるいわゆる省エネルギーモードから使用状態への復帰)となった場合や通算通紙枚数、インク積算使用量等の情報をもとに、これらが予め定めた量に達した場合を定めることができる。ここでは、実施タイミングの発生が確認できなければ(ステップS102-NO)、所定の周期でこの確認を繰返す。
エンコーダ寿命チェックの実施タイミングである場合には、エンコーダ60のセンサ内の発光部129eの光量を所定量下げる制御を光量変更手段61によって行う(ステップS103)。このとき、発光部129eの光量は、初期状態或いは使用中の適正な状態にあるので、そこから所定量だけ光量を下げる。
【0022】
次に、光量を下げた状態でパルス抜け検知手段70を動作させ、パルス抜けの検知を行う(ステップS104)。
“パルス抜け検知I”
このときパルス抜け検知手段70が行うパルス抜けの検知動作を図4に示すサブルーチンに基づいて説明する。
図4のフローによると、エンコーダ60のスケール128又はセンサ129を移動する(ステップS104−1)。なお、図1に示すこの実施形態のプリンタでは、スケール128は不動であるからセンサ129を移動する。
この移動の間、エンコーダ60の出力信号パルスをA相、B相別々にそれぞれのカウンタ71で同時にスタートさせてパルス数をカウントし、所定のタイミングでA相のカウンタ値とB相のカウンタ値を取得する(ステップS104−2)。このとき、取得するタイミングは、任意に定める。
【0023】
次いで、取得したA相とB相のカウンタ値の差分をカウンタ値比較部73によって算出し(ステップS104−3)、算出した差分がパルス抜けの検知基準として予め定めた所定値以上であるか否かをパルス抜け判定部75によって判断する(ステップS104−4)。なお、エンコーダ60からのA相とB相の出力信号パルスは、90度位相がずれて出力されるので、パルス抜け検知基準の上記所定値は、少なくとも2以上とする。
ステップS104−4でA相とB相のカウンタ値の差の絶対値が所定値以上である場合には(ステップS104−4-YES)、パルス抜けがあると判断し、他方、A相とB相のカウンタ値の差の絶対値が所定値以上ではない場合には(ステップS104−4-NO)、パルス抜けが無いと判断し、このサブルーチンを抜け、図3のメインルーチンに戻る。
【0024】
“パルス抜け検知II”
ここで、上記した図4に示した検知動作に代えて適用できる他のパルス抜けの検知動作について図5に基づいて説明する。
図4のフローによると、先ずエンコーダ60の位置アドレス(AD1)を取得する(ステップS104−11)。なお、エンコーダ60の位置アドレスは、キャリッジ23の移動に用いる主走査モータ27の回転同期信号(パルス)のカウント値から得ることができ、この実施形態では、この主走査モータ27のカウント値がエンコーダ60の適正な位置アドレスを表すデータであることが前提となる。
次に、エンコーダ60のスケール128又はセンサ129をカウンタ71がエンコーダ60の出力信号パルスを所定数(n)分(なお、この数は任意に定める)カウントするまで移動する(ステップS104−12)。なお、図1に示すこの実施形態のプリンタでは、スケール128は不動であるからセンサ129を移動する。
この後、移動後のエンコーダ60の位置アドレス(AD2)を取得する。位置アドレスの取得は、上記ステップS104−11と同様に、主走査モータ27の回転同期パルスのカウント値から得る。この場合、エンコーダ60の出力信号パルス数は、A相、B相別々にそれぞれのカウンタ71でカウントするので、一方にパルス抜けがあると、出力信号パルスを所定数分カウントするまでの移動距離、即ち位置アドレスAD2が変わる。
【0025】
次いで、移動前後のエンコーダ60の位置アドレスの差(AD1−AD2)とエンコーダ60の出力信号パルスの所定カウント数(n)との差分を算出し、算出した差分がパルス抜けの検知基準として予め定めた所定値以上であるか否かを判断する(ステップS104−14)。
ステップS104−14で位置アドレスの差(AD1−AD2)とエンコーダ60の所定カウント数(n)との差の絶対値が所定値以上である場合には(ステップS104−14-YES)、パルス抜けがあると判断し、他方、当該差の絶対値が所定値以上ではない場合には(ステップS104−14-NO)、パルス抜けが無いと判断する。
なお、エンコーダ60の出力信号は、A相とB相があるので、図5の検知方法を適用し、ステップS104−14の判断をする際に、A相とB相の一方のみについて判断する、或いはA相とB相の両方について判断し、いずれか一方にパルス抜けが検知された場合又は両方パルス抜けが検知された場合のどちらかを最終的な判断とする,等のバリエーションで検知が可能になるが、どの方法を採用してもよい。
パルス抜けの有無を判断した後、このサブルーチンを抜け、図3のメインルーチンに戻る。
上記のように、図4及び図5を参照して説明したパルス抜けの検知動作は、いずれもキャリッジが加速又は減速の動作領域にある時でも、エンコーダのパルス抜け検知を行うことができるので、定速を条件とする検知方法にないメリットを有する。
【0026】
図3のメインルーチンに戻ると、ステップS104でパルス抜けの検知を行い、パルス抜けが無いと検知された場合(ステップS104-NO)、ステップS103に戻し、再びエンコーダ60のセンサ内の発光部129eの光量を所定量下げる制御を光量変更手段61によって行う。このステップS104⇔ステップS103のループは、パルス抜けが生じる、即ち、ステップS104-YESになるまで、発光部129eの光量を所定量ずつ下げてパルス抜け検知を行なう。
ステップS104でパルス抜けが検知されると(ステップS104-YES)、次に、このパルス抜けを検知した時の光量(限界光量)を取得する(ステップS105)。
また、限界光量の取得と同時に、このときのセンサ129の検出感度に影響するインク付着状態を表す量としてインク積算使用量(Ia)を算出する(ステップS106)。
【0027】
“インク積算使用量Iaの算出”
このときインク積算使用量算出手段81が行うインク積算使用量の算出動作を図6に示すサブルーチンに基づいて説明する。
図6のフローによると、先ず、画像形成に用いる画像データが入力されたか否かを確認し、画像データの入力が確認できれば(ステップS106−1-YES)、入力されたデータからインクの液滴サイズ及びインク滴数をカウントする(ステップS106−2)。なお、このインク液滴のカウントは、カラー対応のプリンタでは、インク色毎に行う。
また、インク液滴サイズ毎のインク量(例えば、大滴:20pl、中滴:10pl、小滴:2pl)を予め保存しておいた記憶媒体から取得する(ステップS106−3)。
次いで、入力画像データのインク使用量を算出する(ステップS106−4)。この処理は、ステップS106−2で得たインク色毎の液滴サイズ及びインク滴数のカウント値、並びにステップS106−3で得た液滴サイズ毎のインク量に基づいて算出する。
例えば、下記式(1)及び式(2)の計算式、即ち、
インク色(C,Bk,M,Y)毎のインク使用量(Vc,Vbk,Vm,Vy)=大滴(20pl)×a滴+中滴(10pl)×b滴+小滴(2pl)×c滴 ・・・式(1)
入力画像の全インク使用量=Vc+Vbk+Vm+Vy ・・・式(2)
に従い、今回入力された画像のインク積算使用量を算出する。
ここでは、インク積算使用量(Ia)を求めるので、算出した入力画像のインク積算使用量をこれまでの積算量に加算する(ステップS106−5)。
【0028】
この後、今回入力された画像データを用いて印字動作を行う(ステップS106−6)。
また、この印字動作を行う際に、動作中に行った空吐出回数をインク色毎に取得する(ステップS106−7)。空吐出は、入力された画像の印字以外にインクが吐出されるので、この回数をカウントし、インク積算使用量に反映させる必要がある。
また、インク色毎の空吐出量(例えば、C:1000pl、Bk:1000pl、M:1000pl、Y:1000pl)を予め保存しておいた記憶媒体から取得する(ステップS106−8)。
次いで、空吐出によるインク消費量を算出する(ステップS106−9)。この処理は、ステップS106−7で得たインク色毎の空吐出回数のカウント値、ステップS106−8で得たインク色毎の空吐出量及び補正係数に基づいて算出する。
【0029】
上記補正係数は、通常印字時のインク使用量から推定されるミスト量に空吐出時のミスト量を合わせるための係数である。通常印字では、ヘッドからあまり距離のない用紙上に殆どのインクが載るため、ミストが発生し難い条件となるが、空吐出はヘッドから距離が離れて配置されている廃液タンクへと一度に大量のインクを吐出するので、ミストが発生し易くなる。このため、通常印字時のインク滴数と空吐出時のインク滴数が同じ滴数であっても、空吐出時の方がミストが多く発生する。このために必要な補正である。この補正係数は、実験より求められ予め記憶媒体に保存されている。
補正を掛けた今回の印字動作の空吐出によるインク使用量の算出は、例えば、下記式(3)の計算式、即ち、
空吐出のインク使用量={C(1000pl)×空吐出回数+Bk(1000pl)×空吐出回数+M(1000pl)×空吐出回数+Y(1000pl)×空吐出回数}×補正係数 ・・・式(3)
に従い、算出する。
ここでは、インク積算使用量(Ia)を求めるので、算出した空吐出によるインク使用量をこれまでの積算量に加算する(ステップS106−10)。
インク積算使用量(Ia)の算出後、このサブルーチンを抜け、図3のメインルーチンに戻る。
【0030】
“余寿命の算出”
ステップS106で現在のインク積算使用量(Ia)を算出した後、ステップS105で取得したパルス抜けを検知した時の光量(限界光量)と、ステップS106で算出したインク積算使用量を対にして、記憶手段83によって記憶媒体に保存する(ステップS107)。この保存処理は、この制御フローが実行されるたびに行われるので、記憶媒体には、対にして保存された光量とインク積算使用量の履歴が蓄積されることになる。
次に、現在のエンコーダの検出状態、即ちステップS105で得た限界光量とインク積算使用量により表される状態から余寿命を算出する処理手順に移行する。
ここで算出される余寿命は、記憶手段83によって記憶媒体に対にして保存された限界光量とインク積算使用量の履歴から予測寿命関数を求め、得られた予測寿命関数に基づいて現在の状態で検知された限界光量が予め定められた寿命(使用限界)の光量に達するまで、どれだけ使用できるかをインクの積算量で表す。つまり、使用限界の光量に対応するインクの積算使用量(Ie)と現在のインク積算使用量(Ia)の差分(Ie−Ia)を余寿命として算出する。
【0031】
余寿命予測算出手段85が行う寿命予測及び余寿命算出の処理手順を図3の制御フローに基づいて説明する。
図3のフローによると、先ず、記憶媒体に保存された限界光量(ステップS104でパルス抜けを検知したときの光源光量)と対にしたインク積算使用量のこれまでの履歴を全て取得する(ステップS108)。
次に、前段で取得した限界光量と対にしたインク積算使用量の全履歴情報から限界光量とインク積算使用量の関係を表す近似曲線(予測寿命関数)を算出する(ステップS109)。
【0032】
上記近似曲線(予測寿命関数)の算出方法について、図7を参照して説明する。
図7に示すグラフは、Y軸に限界光量(ステップS104でパルス抜けを検知したときの光源光量)をとり、X軸にインク積算使用量(ml)をとっている。インク積算使用量が0の初期状態から図3に示す制御フローを実施するたびに、パルス抜け検知を行い(ステップS104)、検知結果として得られる限界光量とインク積算使用量の関係は、図7中の黒丸に示すようになる。
図7のグラフは、初期状態からのパルス抜けの検知結果の全履歴(全黒丸サンプル)から同図中に記される曲線によって近似した関数で表される例を示している。この近似曲線を算出することにより、Y(限界光量)とX(インク積算使用量)の関係が関数で表現されるので、使用を続けると、到達するであろう使用限界を予測することができる。ここでは、実験的に寿命に対応する使用限界値(光量)を予め定め、近似曲線と光量の使用限界値との交点のインク積算使用量を求めることにより、使用限界をインクの積算量Ieで表すことができる。
【0033】
ここで、上記で図7を参照して示した近似曲線の算出方法に代えて適用できる他の算出方法について図8に基づいて説明する。
図8に示すグラフは、図3に示す制御フローを実施するたびに、パルス抜け検知を行い、得られる限界光量とインク積算使用量の関係を、同図中の黒丸で示しており、この点では上記算出方法(図7、参照)と変わらない。
ただ、図8に示す方法では、予測に用いる履歴の範囲を図7に示した全履歴ではなく、履歴のうち現在に近い部分のみに限定している。つまり、図8に示すように、現在値で示す最新サンプルからX(インク積算使用量)が所定値少なかった状態にあったときまでの一部の範囲に限定し、この範囲のサンプルデータ(同図中、白抜き丸で示す)を用いて予測をする。図8の例に示すように、光量が使用限界に近づくと、インク積算使用量に対する限界光量の変化が徐々に小さくなる傾向にあり、範囲を限定した場合には、図7の全履歴によって予測する場合よりも寿命を長く予測する。
この近似曲線の算出方法によると、エンコーダのスケールやセンサがインクミスト等によって汚れ、経時的にエンコーダの検知感度が限界に近づいた場合にも、より正確な寿命予測ができる。
【0034】
図3のフローに戻ると、ステップS109で近似曲線(予測寿命関数)を算出した後、算出した予測寿命関数に基づいて予測寿命をインク積算使用量(Ie)として算出する(ステップS110)。つまり、図7,8を参照して説明したように、予測した近似曲線と光量の使用限界値との交点のインク積算使用量を求めることにより、予測寿命値をインクの積算量Ieで表す。
次に、予測結果をユーザ等に報知する(ステップS111)。ここでは、単に使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを知らせるのではなく、余寿命として、使用限界に達するまで、どれだけ使用できるかをインクの積算使用量で示す。この使用できるインク積算使用量は、使用限界の光量に対応するインクの積算使用量(Ie)と現在のインク積算使用量(Ia)の差分(Ie−Ia)を求める。求めた量を報知手段101としての操作パネル(図示せず)の表示画面を通して表示等を行う。なお、使用できるインク積算使用量を標準的なチャートの何枚分の出力に相当するかを表す方法で知らせる記録用紙にしてもよい。
この後、初期状態で待機するために、エンコーダ寿命チェック動作によって制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS101に戻る。
【0035】
上記のように、エンコーダのスケールやセンサがインクミスト等によって汚れ、経時的にエンコーダの検知感度が低下し、使用限界に達する寿命を予測し、余寿命をユーザに報知する機能を備えることにより、エンコーダの寿命がくる前の適当な時期を選んで、エンコーダ交換を行うことができるので、プリント出力を中断した状態或いは待機させた状態でエンコーダ信号エラー(パルス抜け)の発生からエンコーダ交換までの間がダウンタイムとなる、という従来技術によって起きる不都合を回避できる。
【0036】
「制御フローII」
エンコーダ寿命チェックの上記制御フローIでは、寿命チェック処理の基本形態を示したが、この実施形態では、上記制御フローIの処理手順に改良を加えたものである。
本実施形態では、制御フローIと同様に寿命予測及び余寿命算出の処理を行うが、これらの処理を行う意味がない場合には、処理を省略できるようにする手順を設ける改良を行っている。
ここでは、処理を省略する条件として、エンコーダを使用し始めた当初においては、インクミスト等による汚れがエンコーダ出力信号のエラーに影響することはほとんどなく、寿命予測及び余寿命算出の処理負担を負ってまで、エンコーダの余寿命をユーザ等に報知する意味がない。
【0037】
そこで、本実施形態では、現在のエンコーダの検出状態を表す限界光量、即ち、エンコーダセンサの光源光量を徐々に下げることで検出感度を低下させ、パルス抜けを検知した時の光量(図3のフローにおけるステップS103〜S105の処理、参照)を取得し、取得した限界光量が所定値より大きいか否かを確認し、その結果、限界光量が所定値に満たない場合には、寿命予測及び余寿命算出を省略できるようにする。なお、上記所定値は、エンコーダ寿命チェックをかける必要がない期間を予め実験的に確認し、光量に対応する数値で定めておくことが必要になる。
ただ、寿命予測及び余寿命算出を省略した場合にも、現在のエンコーダの検出状態、即ち限界光量とインク積算使用量により表される検出状態は、履歴として残しておく必要があるので、寿命予測及び余寿命算出を省略しても、履歴を残すまでの処理手順は、上記制御フローIと同様に行う。
【0038】
図9は、この実施形態のエンコーダ寿命チェックの制御フローIIを示す図である。
図9に示す制御フローにおいて、ステップS208が新たに付加したステップである。
なお、ステップS208以外のステップS201〜S207及びステップS209〜S212は、上記制御フローI(図3)のステップS101〜S111に対応し、各ステップの処理は同一である。よって、これらの制御フローは、上記制御フローI(図3)の説明を参照することとし、記載を省略し、以下には、ステップS208に関係する動作のみ説明する。
ステップS201〜S207によって、現在のエンコーダの検出状態を表すデータとして、パルス抜けを検知した時の限界光量を取得し(ステップS205)、並行して現在のインク積算使用量を取得し(ステップS206)、取得した限界光量とインク積算使用量を対にして記憶媒体に保存する(ステップS207)。
【0039】
その後、ステップS205で取得した限界光量が、余寿命算出等の処理を省略するために予め定めた所定値よりも大きいか否かを判断する(ステップS208)。
ここで、限界光量が所定値よりも大きい場合(ステップS208-YES)、インクミストの付着が進み、エンコーダ寿命チェックをする時期に達しているという判断のもとに、余寿命算出等の処理を行うステップS209に移行する。
他方、限界光量が所定値未満である場合(ステップS208-NO)、インクミストの付着は少なく、エンコーダ寿命チェックをする時期に達していないという判断のもとに、余寿命算出等の処理を省略して、初期状態で待機するために、パルス抜けを検知する動作のために制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS201に戻る。
上記のように、ステップS208を付加することで、エンコーダを使用し始めた当初においては、インク使用量が少ないので、処理負担を負ってまで余寿命を算出する必要が無く、またパルス抜け検知をした時のデータ数が少ないと予測寿命関数による予測精度も高くなく、誤差が発生するので、この時期の余寿命算出等の処理を省略することができ、エンコーダの状態に応じパフォーマンスを適正化できる。
【0040】
「制御フローIII」
エンコーダ寿命チェックの上記制御フローIでは、寿命チェック処理の基本形態を示したが、この実施形態では、上記制御フローIの処理手順の一部に変更を加えたものである。
本実施形態では、制御フローIと同様に寿命予測及び余寿命算出の処理を行い、ユーザに余寿命を報知するが、報知の仕方に変更を加えている。
制御フローIでは、算出した余寿命をユーザに報知している。この場合、ユーザは余寿命が分かるので、エンコーダの交換が必要になるニアエンドの時期を判断する目安とはなるが、明確なニアエンドを知ることができない。
【0041】
そこで、この実施形態では、ユーザへの報知をニアエンドに達した時期に行うことで、エンコーダの交換時期を見逃すことなく確実に知らせるようにする。
本実施形態では、ニアエンドに達したか否かを、算出した余寿命が所定値より大きいか否かを確認し、その結果、余寿命が所定値に満たない場合には、ニアエンドを報知できるようにする。なお、上記所定値は、画像形成動作を停止させるエンド条件として定めた状態になるまで、どれぐらいのインク使用量を残しておけばよいかを予め実験的に確認し、算出する余寿命と比較できる数値で定めておくことが必要になる。
この数値は、標準的なチャート(例えば、J1チャート)に使用するインク滴数から標準的なチャートを何枚通紙できるかを定め、インク使用量として算出してもよい。また、インク積算使用量から積算通紙枚数を除算することで、ユーザが一枚あたりに使用するインク使用量の平均を算出し、その平均値よりユーザが使用できる通紙枚数を定め、インク使用量として算出してもよい。また、この場合、ニアエンドの報知内容として、ニアエンドであり、後何枚通紙すると停止状態になり、エンコーダの交換が必要であることを示すとよい。
【0042】
図10は、この実施形態のエンコーダ寿命チェックの制御フローIIIを示す図である。
図10に示す制御フローにおいて、ステップS311及びS315が新たに付加したステップである。
なお、ステップS311及びS315以外のステップS301〜S310は、上記制御フローI(図3)のステップS101〜S110に対応し、各ステップの処理は同一であり、また、ステップS312はステップS111に代替する。よって、図10の制御フローにおけるステップS301〜S310は、上記制御フローI(図3)の説明を参照することとし、記載を省略し、以下には、ステップS311、S312及びS315に関係する動作のみ説明する。
【0043】
ステップS310で使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを算出した後、この予測結果をユーザ等に報知するが、ここでは、単に使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを知らせるのではなく、余寿命として、使用限界に達するまで、どれだけ使用できるかをインクの積算使用量で示す。この使用できるインク積算使用量は、使用限界の光量に対応するインクの積算使用量(Ie)と現在のインク積算使用量(Ia)の差分(Ie−Ia)で表す。さらに、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が、ニアエンドに達したか否かを判断するために予め定めた所定値よりも小さいか否かを判断する(ステップS311)。
ここで、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が所定値よりも小さい場合(ステップS311-YES)、インクミストの付着が進み、ニアエンドに達しているという判断のもとに、ニアエンド報知を行うステップS312に移行する。
ニアエンドの報知は、ニアエンドを知らせるとともに、余寿命として、例えば、後何枚通紙すると停止状態になるか、また、エンコーダの交換を促すメッセージを操作パネル(図示せず)を通じてユーザに知らせる(ステップS312)。
ニアエンドを報知した後、初期状態で待機するために、パルス抜けを検知する動作のために制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS301に戻る。
【0044】
他方、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が所定値以上である場合(ステップS311-NO)、ニアエンドに達していないので、ニアエンド報知のフラグが立っている場合には、このフラグを解除する(ステップS315)。なお、ニアエンド報知フラグは、ステップS311の判断に従い、ニアエンドに達しているという判断のもとに、ニアエンド報知を行う場合に立てられ、ニアエンド報知フラグが立っていれば、ステップS312でニアエンド報知を行う。ただ、ニアエンド報知フラグを立てた後、次の実施タイミングで行ったエンコーダ寿命チェックの判断が、例えば、パルス抜けの検知の誤り等により反転することがあり得、ニアエンドに達していない、という反対の判断がされた場合には、これまで立っていたフラグを解除する必要がある。
ニアエンド報知フラグを解除した後、初期状態で待機するために、パルス抜けを検知する動作のために制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS301に戻る。
上記のように、ステップS311及びS312を付加することで、エンコーダの交換時期の間近に、ユーザ等へその旨を報知することで、適切なエンコーダ交換時期に確実にエンコーダを交換することができる。
【0045】
「制御フローIV」
エンコーダ寿命チェックの上記制御フローIでは、寿命チェック処理の基本形態を示したが、この実施形態では、上記制御フローIの処理手順の一部に変更を加えたもので、変更した部分は、上記制御フローIIIと共通するニアエンド報知ステップと、さらにニアエンド報知に付随する処置として、使用限界を延長するためにエンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させる処理を行うステップである。
つまり、本実施形態の制御フローIVでは、制御フローIと同様に寿命予測及び余寿命算出の処理を行い、ユーザに余寿命を報知する。ただ、余寿命の報知の仕方は、上記制御フローIIIと同様に、ニアエンドに達したか否かを、算出した余寿命が所定値より大きいか否かを確認し、その結果、余寿命が所定値に満たない場合には、ニアエンドを報知できるようにする。さらに、制御フローIVに特有の手順として、ニアエンド報知に付随して、エンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させる処理を制御フローの終端で行う。
この終端の処理は、エンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させる。増大させる光量は、使用限界値(図7,8に示した寿命に達するときの光量値)に相当する量を目標に定めてもよい。この処理は、ニアエンド報知にも応えず、エンコーダ交換が行われなかった場合にも、エンコーダを寿命まで使い切ることを意図したものである。
【0046】
図11は、この実施形態のエンコーダ寿命チェックの制御フローIVを示す図である。
図11に示す制御フローIVは、基本的に図10に示した制御フローIIIと同じ処理を行うが、制御フローIVの終端で行うステップS412及びS413は、当該フローに特有の手順である。
なお、ステップS412及びS413以外のステップS401〜S411は、上記制御フローIII(図10)のステップS301〜S311に対応し、各ステップの処理は同一である。よって、図11の制御フローにおけるステップS401〜S411は、上記制御フローIII(図10)の説明を参照することとし、記載を省略し、以下には、ステップS412及びS413に関係する動作のみ説明する。
【0047】
ステップS410で使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを算出した後、この予測結果をユーザ等に報知するが、ここでは、単に使用限界時に予測されるインク積算使用量Ieを知らせるのではなく、余寿命として、使用限界に達するまで、どれだけ使用できるかをインクの積算使用量で示す。この使用できるインク積算使用量は、使用限界の光量に対応するインクの予測積使用量(Ie)と現在のインク積算使用量(Ia)の差分(Ie−Ia)で表す。さらに、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が、ニアエンドに達したか否かを判断するために予め定めた所定値よりも小さいか否かを判断する(ステップS411)。
ここで、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が所定値よりも小さい場合(ステップS411-YES)、インクミストの付着が進み、ニアエンドに達しているという判断のもとに、ニアエンド報知を行うステップS412に移行する。
【0048】
ニアエンドの報知は、ニアエンドを知らせるとともに、余寿命として、例えば、後何枚通紙すると停止状態になるか、また、エンコーダの交換を促すメッセージをユーザに操作パネル(図示せず)を通じて知らせる(ステップS412)。
ニアエンドを報知した後、エンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させる(ステップS413)。この処理を行うことで、センサの検出感度を上げ、現状におけるよりもパルス抜けが生じ難くなるので、現行の光源光量のままで動作させるよりも使用限界を延長することができる。使用限界値(図7,8に示した寿命に達するときの光量値)に相当する量を目標に光量を増せば、エンコーダを寿命まで使い切ることが可能になる。
【0049】
他方、使用できるインク積算使用量(Ie−Ia)が所定値以上である場合(ステップS311-NO)、ニアエンドに達していないので、初期状態で待機するために、パルス抜けを検知する動作のために制御されたセンサ129の発光部129eの光量を初期化するステップS401に戻る。
上記のように、ステップS412及びS413の付加により、ニアエンド報知に付随して、エンコーダセンサの光源光量を現行の状態よりも増大させることで、ユーザ又はサービスマンが報知した適切なエンコーダ交換時期にエンコーダ交換を行わなかった場合に、増大させた分エンコーダの寿命を延長できる。
【符号の説明】
【0050】
60・・エンコーダ、61・・光量変更手段、70・・パルス抜け検知手段、81・・インク積算使用量算出手段、83・・記憶手段、85・・余寿命予測算出手段、128・・エンコーダスケール、129・・エンコーダセンサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特開2005−349799号公報
【特許文献2】特開2004−138386号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査方向に記録面上を移動する画像形成部の位置を、光量が制御可能な光源により照明されるスケールからの光を受け位置信号を出力するエンコーダによって検出し、検出した位置信号をもとに該画像形成部の移動を制御し、記録面にインクを用いて画像を形成する画像形成装置であって、
前記エンコーダの位置信号出力が異常であるか否かを検知する出力異常検知手段と、
前記エンコーダの光源光量を低下させながら前記出力異常検知手段によってエンコーダの位置信号出力を検知し、位置信号出力に異常が検知された時の光源光量を取得する異常検知制御手段と、
インクの積算使用量を算出するインク積算使用量算出手段と、
エンコーダにおける信号出力の異常時に前記異常検知制御手段によって取得された光量とその時に前記インク積算使用量算出手段によって算出されたインク積算使用量とが対にして保存される記憶手段と、
前記記憶手段に対にして保存された光源光量とインク積算使用量の履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する関係予測手段と、
前記関係予測手段によって予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて、現在検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでのエンコーダの余寿命を算出する余寿命算出手段を有したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記関係予測手段は、前記異常検知制御手段が光源光量を取得する度に、予測をし直すことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記関係予測手段は、前記異常検知制御手段によって取得された光源光量が、予測誤差を所定範囲に抑制可能な履歴の記憶状態になる予め定められた光量以上である場合に、予測を実施することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記関係予測手段は、前記記憶手段に保存された履歴のうち現在に近い部分のみを予測に用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記余寿命算出手段によって算出された余寿命が予め定めたニアエンドに相当する値に達したか否かをチェックするニアエンドチェック手段と、
前記ニアエンドチェック手段によってニアエンドに達したことがチェックされたことを条件にニアエンドを報知する手段を有したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記余寿命算出手段によって算出された余寿命が予め定めたニアエンドに相当する値に達したか否かをチェックするニアエンドチェック手段と、
前記ニアエンドチェック手段によってニアエンドに達したことがチェックされたことを条件にエンコーダの光源光量を現行よりも増大させる制御手段を有したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記画像形成部がインク滴を吐出する記録ヘッドを有し、
前記インク積算使用量算出手段は、空吐出時でのインク使用量を算出する際に所定の補正係数を乗算することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記余寿命算出手段は、予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて使用限界の光源光量に対応するインクの予測積算使用量を求め、求めたインクの予測積算使用量と現在得られたインク積算使用量との差分を余寿命を表す量として算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
走査方向に記録面上を移動する画像形成部の位置を、光量が制御可能な光源により照明されるスケールからの光を受け位置信号を出力するエンコーダによって検出し、検出した位置信号をもとに該画像形成部の移動を制御し、記録面にインクを用いて画像を形成する画像形成装置における該エンコーダの余寿命を予測するエンコーダ寿命予測方法であって、
前記エンコーダの光源光量を低下させながらエンコーダの位置信号出力が異常であるか否かを検知する出力異常検知工程と、
前記出力異常検知工程でエンコーダの信号出力に異常が検知された時の光源光量を取得する異常検知時光量取得工程と、
インクの積算使用量を算出するインク積算使用量算出工程と、
前記異常検知時光量取得工程で取得された光量とその時に前記インク積算使用量算出工程で算出されたインク積算使用量を対にして保存する記憶工程と、
前記記憶工程で対にして保存された光量とインク積算使用量の履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する関係予測工程と、
前記関係予測工程によって予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて、現在検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでの余寿命を算出する余寿命算出工程を有したことを特徴とするエンコーダ寿命予測方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたエンコーダ寿命予測方法の各工程をコンピュータに行わせるためのプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項1】
走査方向に記録面上を移動する画像形成部の位置を、光量が制御可能な光源により照明されるスケールからの光を受け位置信号を出力するエンコーダによって検出し、検出した位置信号をもとに該画像形成部の移動を制御し、記録面にインクを用いて画像を形成する画像形成装置であって、
前記エンコーダの位置信号出力が異常であるか否かを検知する出力異常検知手段と、
前記エンコーダの光源光量を低下させながら前記出力異常検知手段によってエンコーダの位置信号出力を検知し、位置信号出力に異常が検知された時の光源光量を取得する異常検知制御手段と、
インクの積算使用量を算出するインク積算使用量算出手段と、
エンコーダにおける信号出力の異常時に前記異常検知制御手段によって取得された光量とその時に前記インク積算使用量算出手段によって算出されたインク積算使用量とが対にして保存される記憶手段と、
前記記憶手段に対にして保存された光源光量とインク積算使用量の履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する関係予測手段と、
前記関係予測手段によって予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて、現在検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでのエンコーダの余寿命を算出する余寿命算出手段を有したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記関係予測手段は、前記異常検知制御手段が光源光量を取得する度に、予測をし直すことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記関係予測手段は、前記異常検知制御手段によって取得された光源光量が、予測誤差を所定範囲に抑制可能な履歴の記憶状態になる予め定められた光量以上である場合に、予測を実施することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記関係予測手段は、前記記憶手段に保存された履歴のうち現在に近い部分のみを予測に用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記余寿命算出手段によって算出された余寿命が予め定めたニアエンドに相当する値に達したか否かをチェックするニアエンドチェック手段と、
前記ニアエンドチェック手段によってニアエンドに達したことがチェックされたことを条件にニアエンドを報知する手段を有したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記余寿命算出手段によって算出された余寿命が予め定めたニアエンドに相当する値に達したか否かをチェックするニアエンドチェック手段と、
前記ニアエンドチェック手段によってニアエンドに達したことがチェックされたことを条件にエンコーダの光源光量を現行よりも増大させる制御手段を有したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記画像形成部がインク滴を吐出する記録ヘッドを有し、
前記インク積算使用量算出手段は、空吐出時でのインク使用量を算出する際に所定の補正係数を乗算することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記余寿命算出手段は、予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて使用限界の光源光量に対応するインクの予測積算使用量を求め、求めたインクの予測積算使用量と現在得られたインク積算使用量との差分を余寿命を表す量として算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
走査方向に記録面上を移動する画像形成部の位置を、光量が制御可能な光源により照明されるスケールからの光を受け位置信号を出力するエンコーダによって検出し、検出した位置信号をもとに該画像形成部の移動を制御し、記録面にインクを用いて画像を形成する画像形成装置における該エンコーダの余寿命を予測するエンコーダ寿命予測方法であって、
前記エンコーダの光源光量を低下させながらエンコーダの位置信号出力が異常であるか否かを検知する出力異常検知工程と、
前記出力異常検知工程でエンコーダの信号出力に異常が検知された時の光源光量を取得する異常検知時光量取得工程と、
インクの積算使用量を算出するインク積算使用量算出工程と、
前記異常検知時光量取得工程で取得された光量とその時に前記インク積算使用量算出工程で算出されたインク積算使用量を対にして保存する記憶工程と、
前記記憶工程で対にして保存された光量とインク積算使用量の履歴に基づいてインク積算使用量と光源光量の関係を予測する関係予測工程と、
前記関係予測工程によって予測されたインク積算使用量と光源光量の関係に基づいて、現在検知された光源光量が予め定められた使用限界の光源光量に達するまでの余寿命を算出する余寿命算出工程を有したことを特徴とするエンコーダ寿命予測方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたエンコーダ寿命予測方法の各工程をコンピュータに行わせるためのプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−188532(P2010−188532A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32257(P2009−32257)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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