説明

画像形成装置、加熱装置および後処理装置

【課題】用紙上のトナー画像における光沢ムラ(光沢段差)の発生を防止することが可能な画像形成装置、加熱装置および後処理装置を提供する。
【解決手段】トナー像を担持した用紙S1を、加熱回転体と当該加熱回転体に圧着する加圧回転体とにより形成されるニップ部に進入させて加熱および加圧により定着する定着装置60により定着された用紙S1を加熱するサーマルヘッド70と、用紙S1において加熱対象の加熱対象領域を指定する操作表示部20と、操作表示部20により指定された加熱対象領域を加熱するようにサーマルヘッド70を制御する制御部80とを備えている。これにより、用紙S1上のトナー像に生じる光沢差を打ち消すように、加熱対象領域(例えば、トナー像の定着温度が所定温度未満の領域または、排紙ローラ100に挟持される領域以外の領域)を任意に指定して再加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスにより形成された画像の光沢度を調整する画像形成装置、加熱装置および後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセスにより画像を形成する画像形成装置では、像担持体(感光ドラム等)の表面が所定の電位に帯電され、これに画像露光が施されて静電潜像が形成される。そして、この感光ドラム表面の潜像が現像手段により現像剤(トナー)を用いて現像され、トナー画像として可視化される。得られたトナー画像が感光ドラムに搬送された用紙に転写され、トナー画像を担持した用紙が定着装置に搬送され、定着装置により用紙上の未定着トナー画像が加熱定着されて、用紙上に画像が形成される。
【0003】
画像形成装置に関する技術として、加熱定着後の記録紙に対しサーマルヘッドを用いて再加熱することによって光沢を付与する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の技術では、再加熱の際に感熱性透明シート(光沢シート)を使用するとともに、加熱定着後における記録紙の収縮率に応じて、サーマルヘッドの再加熱領域の補正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−99913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、定着ベルトの周長が用紙の搬送方向長さより短い場合、定着ベルトの同一ポイントが用紙の同一面上を2度以上通過する。この場合、用紙の進入によって奪われた定着ベルトの熱が2周目までに回復することができず、1周目と2周目との間において温度差(定着ベルトの表面温度の温度差)が生じる。この温度差が大きいと、用紙上のトナー画像において光沢ムラ(光沢段差)が発生するという問題(以下、第1の問題)があった。
【0006】
また、加熱定着後の用紙を挟持搬送する搬送手段(排紙ローラ)は連続通紙により蓄熱する。そして、用紙上において排紙ローラが接する領域と接しない領域との間では、当該排紙ローラの蓄熱に起因する温度差が生じる。この温度差が大きいと、用紙上のトナー画像においてスジ状の光沢ムラ(光沢段差)が発生するという問題(以下、第2の問題)があった。
【0007】
上記第1の問題を解決するための対策として、用紙の搬送方向長さより定着ベルトの周長を長くすることが考えられる。しかし、設備コストの向上、定着ベルトの消費電力増大および定着装置の大型化といった別の問題が生じてしまい、上記第1の問題を解決するための有効な対策とは言えない。また、別の対策として、用紙の同一面上を定着ベルトが2周以上しても温度低下が生じないようなヒート設計を行うことが考えられる。しかし、定着装置におけるヒートサイクル設計が複雑化して設計コストが向上するといった別の問題が生じてしまい、有効な対策とは言えない。
【0008】
また、上記第2の問題を改善する対策として、排紙ローラの蓄熱を防ぐことが可能な冷却機構を新たに設置することが考えられる。しかし、設備コスト向上、冷却機構分の消費電力増大および装置の大型化といった別の問題が生じてしまい、有効な対策とは言えない。
【0009】
本発明は、用紙上のトナー画像における光沢ムラ(光沢段差)の発生を防止することが可能な画像形成装置、加熱装置および後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、用紙上に定着されたトナー像を加熱する加熱部と、
前記用紙において加熱対象の加熱対象領域を指定する指定入力部により指定された前記加熱対象領域を加熱するように前記加熱部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る加熱装置は、用紙上に定着されたトナー像を加熱する加熱部と、
前記用紙において加熱対象の加熱対象領域を指定する指定入力部により指定された前記加熱対象領域を加熱するように前記加熱部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る後処理装置は、用紙上にトナー像を形成する画像形成装置に接続可能であり、当該用紙に対して所定の後処理を行う後処理装置であって、
前記用紙上に定着されたトナー像を加熱する加熱部であって、前記用紙において加熱対象の加熱対象領域を指定する指定入力部により指定された前記加熱対象領域を加熱するように制御部により制御される加熱部が、前記画像形成装置から供給された用紙を加熱するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、用紙上のトナー画像における光沢ムラ(光沢段差)の発生を防止することが可能な画像形成装置、加熱装置および後処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る実施の形態を示す画像形成装置の縦断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態を示す画像形成装置の制御ブロック図である。
【図3】本発明に係る実施の形態を示す操作表示部の加熱対象領域設定画面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態を示す画像形成装置の動作例を説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態を示す画像形成装置の動作例を説明する図である。
【図6】本発明に係る実施の形態を示す画像形成装置の動作例を説明する図である。
【図7】本発明に係る実施の形態を示す後処理装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体上に形成されたC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写体に転写(一次転写)し、中間転写体上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
【0016】
また、画像形成装置1には、CMYKの4色に対応する感光体を中間転写体の走行方向に直列配置し、中間転写体に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0017】
図1に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、指示入力部として機能する操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、定着装置60、加熱部として機能するサーマルヘッド70、および制御部(図示せず)を備えている。なお、サーマルヘッド70および制御部は、加熱装置として機能する。
【0018】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置を有しており、CPUで所定の制御プログラムを実行することにより、画像形成装置1の制御を行う。制御部は、操作表示部20により入力されたジョブ情報に従って画像形成装置1の画像形成動作を制御する。
【0019】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置(スキャナー)12等を備えて構成される。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0020】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0021】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22に対して、各種の指示および設定のための入力操作を行うことができる。これら指示・設定の情報は、ジョブ情報として制御部により扱われる。ジョブ情報としては、用紙サイズ、プリント枚数等がある。
【0022】
本実施の形態では、操作表示部20は、トナー像が定着された用紙においてサーマルヘッド70による加熱を所望する領域(以下「加熱対象領域」と称する)を設定するための加熱対象領域設定画面を表示する。そして、操作表示部20は、加熱対象領域設定画面を介して設定された加熱対象領域を示す加熱対象領域情報を制御部に出力する。
【0023】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備えている。例えば、画像処理部30は、制御部の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0024】
また、画像処理部30は、公知の画像認識技術を用いて、入力画像データに基づく入力画像の中から写真画像の領域を判別し、判別した領域の(入力画像における)位置を示す位置情報を制御部に出力する。本実施の形態では、画像処理部30は、所定面積の領域内に含まれる色数が予め定めた値以上の場合に写真画像の領域であると判断する。
【0025】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、および中間転写ユニット42等を備えている。
【0026】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0027】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414およびドラムクリーニング装置415等を備えている。
【0028】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。
【0029】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成されることとなる。
【0030】
現像装置412は、各色成分の現像剤(例えば、小粒径のトナーと磁性体とからなる二成分現像剤)を収容しており、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有する。一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーは、ドラムクリーニングブレードによって掻き取られ、除去される。
【0031】
中間転写ユニット42は、中間転写体となる中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、二次転写ローラー423、駆動ローラー424、従動ローラー425およびベルトクリーニング装置426等を備えている。
【0032】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、駆動ローラー424および従動ローラー425に張架される。中間転写ベルト421は、駆動ローラー424の回転により矢印A方向に一定速度で走行する。一次転写ローラー422によって、中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接されると、中間転写ベルト421に各色トナー像が順次重ねて一次転写される。そして、中間転写ベルト421が二次転写ローラー423によって用紙Sに圧接されると、中間転写ベルト421に一次転写されたトナー像が用紙Sに二次転写される。
【0033】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレードを有する。二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、ベルトクリーニングブレードによって掻き取られ、除去される。
【0034】
定着装置60は、搬送されてきた用紙Sをニップ部で加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着装置60は、定着ユニット61とエア分離ユニット62を備えて構成されるエア分離式の定着装置である。
【0035】
搬送部50は、給紙部51、搬送機構52および排紙部53等を備えている。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、用紙の坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙(規格用紙、特殊用紙)Sが予め設定された種類ごとに収容される。
【0036】
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、レジストローラー52a等の複数の搬送ローラーを備えた搬送機構52により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー52aが配設されたレジスト部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着装置60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー53aを備えた排紙部53により機外に排紙される。
【0037】
サーマルヘッド70は、用紙Sの搬送方向において定着装置60の下流側に配置され、用紙Sの幅方向(用紙Sの搬送方向と直交する方向)に直線上に配置された複数の発熱体を有する。複数の発熱体は、例えば300[dpi(dot per inch)]の密度で配置される。サーマルヘッド70は、制御部の制御を受けて、定着装置60によりトナー像が定着された用紙Sを加熱する。
【0038】
なお、サーマルヘッド70は、用紙Sの種類に応じてトナー像の定着性が異なるため、用紙Sを加熱する際の供給熱量を変えるようにするのが好ましい。例えば、用紙Sが熱容量の大きい厚紙である場合、サーマルヘッド70は、高い供給熱量で用紙Sを加熱する。一方、用紙Sが熱容量の小さい薄紙である場合、サーマルヘッド70は、低い供給熱量で用紙Sを加熱する。
【0039】
制御部は、操作表示部20から出力された加熱対象領域情報に基づいて、定着された用紙Sにおいて加熱対象領域を加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。
【0040】
次に、図2を参照して、画像形成装置1の制御ブロック図について説明する。図2に示すように、画像形成装置1は、定着装置60、操作表示部20、制御部80およびサーマルヘッド70を備えて構成されている。
【0041】
ここで、操作表示部20により表示される加熱対象領域設定画面の例を図3に示す。図3に示すように、加熱対象領域設定画面には、用紙Sの搬送方向における加熱対象領域を設定するためのボタン23a〜23cおよび入力ボックス23d〜23fが範囲23内に表示されるとともに、用紙Sの幅方向における加熱対象領域を設定するためのボタン24a〜24jおよび入力ボックス25a〜25jが範囲24内に表示される。
【0042】
用紙Sの搬送方向における加熱対象領域を設定する場面としては、例えば、次のような場面である。すなわち、定着装置60が備える無端状の定着ベルトの周長が用紙Sの搬送方向長さより短い場合である。この場合、定着ベルトの同一ポイントが用紙Sの同一面上を2度通過する。そのため、用紙Sの進入によって奪われた定着ベルトの熱が2周目までに回復することができず、1周目と2周目との間において温度差(定着ベルトの表面温度の温度差)が生じる。この温度差が大きいと、用紙S上のトナー画像において光沢ムラ(光沢段差)が発生する。この光沢ムラの発生を防止するため、ユーザは、用紙Sの搬送方向における加熱対象領域(すなわち、定着ベルトの2周目に係る領域)を設定する。
【0043】
ボタン23aは、用紙Sの搬送方向における先端位置から第1の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)までの距離を設定するためのボタンである。ボタン23aを選択する入力操作が行われ、かつ、入力ボックス23dに値が入力されていない場合、ボタン23aの表示状態は「OFF(デフォルト)」から「ON」に切り替わり、用紙Sの搬送方向における第1の所定位置から後端位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0044】
ボタン23bは、用紙Sの搬送方向における先端位置から第2の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)までの距離を設定するためのボタンである。ボタン23bを選択する入力操作が行われ、かつ、入力ボックス23eに値が入力されていない場合、ボタン23bの表示状態は「OFF(デフォルト)」から「ON」に切り替わり、用紙Sの搬送方向における第2の所定位置から後端位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0045】
ボタン23cは、用紙Sの搬送方向における先端位置から第3の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)までの距離を設定するためのボタンである。ボタン23cを選択する入力操作が行われ、かつ、入力ボックス23fに値が入力されていない場合、ボタン23cの表示状態は「OFF(デフォルト)」から「ON」に切り替わり、用紙Sの搬送方向における第3の所定位置から後端位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0046】
入力ボックス23dは、用紙Sの搬送方向における先端位置から第1の任意位置までの距離を、ユーザが任意に設定するための入力ボックスである。入力ボックス23dに当該距離を入力するとともに、入力ボックス23dの左側に位置するボタン23aを選択する入力操作が行われた場合、用紙Sの搬送方向における第1の任意位置(入力された距離から特定される)から後端位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0047】
入力ボックス23eは、用紙Sの搬送方向における先端位置から第2の任意位置までの距離を、ユーザが任意に設定するための入力ボックスである。入力ボックス23eに当該距離を入力するとともに、入力ボックス23eの左側に位置するボタン23bを選択する入力操作が行われた場合、用紙Sの搬送方向における第2の任意位置(入力された距離から特定される)から後端位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0048】
入力ボックス23fは、用紙Sの搬送方向における先端位置から第3の任意位置までの距離を、ユーザが任意に設定するための入力ボックスである。入力ボックス23fに当該距離を入力するとともに、入力ボックス23fの左側に位置するボタン23cを選択する入力操作が行われた場合、用紙Sの搬送方向における第3の任意位置(入力された距離から特定される)から後端位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0049】
図3に示す加熱対象領域設定画面では、用紙Sの搬送方向における先端位置から第1の任意位置までの距離として180[mm]を入力ボックス23dに入力するとともに、ボタン23aを選択する入力操作が行われたため、用紙Sの搬送方向における第1の任意位置から後端位置までの領域を加熱するための設定が行われる。
【0050】
一方、用紙Sの幅方向における加熱対象領域を設定する場面としては、例えば、次のような場面である。すなわち、加熱定着後の用紙Sを挟持搬送する排紙ローラ100は連続通紙により蓄熱する場合がある。この場合、用紙S上において排紙ローラ100が接する領域と接しない領域との間では、排紙ローラ100の蓄熱に起因する温度差が生じる。この温度差が大きいと、用紙S上のトナー画像においてスジ状の光沢ムラ(光沢段差)が発生する。この光沢ムラの発生を防止するため、ユーザは、用紙Sの幅方向における加熱対象領域(すなわち、排紙ローラ100が接しない領域)を設定する。
【0051】
ボタン24aは、用紙Sの幅方向における第4の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)から第5の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)までの領域を加熱対象領域として設定するためのボタンである。ボタン24aを選択する入力操作が行われ、かつ、入力ボックス25a,25bに値が入力されていない場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第4の所定位置から第5の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0052】
ボタン24bは、用紙Sの幅方向における第4の所定位置から第5の所定位置までの領域を加熱対象領域として設定しないためのボタンである。ボタン24bを選択する入力操作が行われた場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第4の所定位置から第5の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録しない。なお、ユーザは、ボタン24a,24bの何れか一方のみを選択することができる。
【0053】
ボタン24cは、用紙Sの幅方向における第6の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)から第7の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)までの領域を加熱対象領域として設定するためのボタンである。ボタン24cを選択する入力操作が行われ、かつ、入力ボックス25c,25dに値が入力されていない場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第6の所定位置から第7の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0054】
ボタン24dは、用紙Sの幅方向における第6の所定位置から第7の所定位置までの領域を加熱対象領域として設定しないためのボタンである。ボタン24dを選択する入力操作が行われた場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第6の所定位置から第7の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録しない。なお、ユーザは、ボタン24c,24dの何れか一方のみを選択することができる。
【0055】
ボタン24eは、用紙Sの幅方向における第8の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)から第9の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)までの領域を加熱対象領域として設定するためのボタンである。ボタン24eを選択する入力操作が行われ、かつ、入力ボックス25e,25fに値が入力されていない場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第8の所定位置から第9の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0056】
ボタン24fは、用紙Sの幅方向における第8の所定位置から第9の所定位置までの領域を加熱対象領域として設定しないためのボタンである。ボタン24fを選択する入力操作が行われた場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第8の所定位置から第9の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録しない。なお、ユーザは、ボタン24e,24fの何れか一方のみを選択することができる。
【0057】
ボタン24gは、用紙Sの幅方向における第10の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)から第11の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)までの領域を加熱対象領域として設定するためのボタンである。ボタン24gを選択する入力操作が行われ、かつ、入力ボックス25g,25hに値が入力されていない場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第10の所定位置から第11の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0058】
ボタン24hは、用紙Sの幅方向における第10の所定位置から第11の所定位置までの領域を加熱対象領域として設定しないためのボタンである。ボタン24hを選択する入力操作が行われた場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第10の所定位置から第11の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録しない。なお、ユーザは、ボタン24g,24hの何れか一方のみを選択することができる。
【0059】
ボタン24iは、用紙Sの幅方向における第12の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)から第13の所定位置(あらかじめ画像形成装置1に設定されている位置)までの領域を加熱対象領域として設定するためのボタンである。ボタン24iを選択する入力操作が行われ、かつ、入力ボックス25i,25jに値が入力されていない場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第12の所定位置から第13の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0060】
ボタン24jは、用紙Sの幅方向における第12の所定位置から第13の所定位置までの領域を加熱対象領域として設定しないためのボタンである。ボタン24jを選択する入力操作が行われた場合、操作表示部20は、用紙Sの幅方向における第12の所定位置から第13の所定位置までの領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録しない。なお、ユーザは、ボタン24i,24jの何れか一方のみを選択することができる。
【0061】
入力ボックス25a,25bは、用紙Sの幅方向における第4の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)から第5の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)までの領域を、ユーザが任意に設定するための入力ボックスである。入力ボックス25a,25bに第4の任意位置および第5の任意位置をそれぞれ特定するための距離を入力するとともに、ボタン24aを選択する入力操作が行われた場合、用紙Sの幅方向における第4の任意位置から第5の任意位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0062】
入力ボックス25c,25dは、用紙Sの幅方向における第6の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)から第7の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)までの領域を、ユーザが任意に設定するための入力ボックスである。入力ボックス25c,25dに第6の任意位置および第7の任意位置をそれぞれ特定するための距離を入力するとともに、ボタン24cを選択する入力操作が行われた場合、用紙Sの幅方向における第6の任意位置から第7の任意位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0063】
入力ボックス25e,25fは、用紙Sの幅方向における第8の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)から第9の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)までの領域を、ユーザが任意に設定するための入力ボックスである。入力ボックス25e,25fに第8の任意位置および第9の任意位置をそれぞれ特定するための距離を入力するとともに、ボタン24eを選択する入力操作が行われた場合、用紙Sの幅方向における第8の任意位置から第9の任意位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0064】
入力ボックス25g,25hは、用紙Sの幅方向における第10の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)から第11の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)までの領域を、ユーザが任意に設定するための入力ボックスである。入力ボックス25g,25hに第10の任意位置および第11の任意位置をそれぞれ特定するための距離を入力するとともに、ボタン24gを選択する入力操作が行われた場合、用紙Sの幅方向における第10の任意位置から第11の任意位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0065】
入力ボックス25i,25jは、用紙Sの幅方向における第12の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)から第13の任意位置(用紙Sの右端位置からの距離で特定される)までの領域を、ユーザが任意に設定するための入力ボックスである。入力ボックス25i,25jに第12の任意位置および第13の任意位置をそれぞれ特定するための距離を入力するとともに、ボタン24iを選択する入力操作が行われた場合、用紙Sの幅方向における第12の任意位置から第13の任意位置までの領域を加熱するための設定が行われる。つまり、操作表示部20は、当該領域を加熱対象領域として示す加熱対象領域情報をRAM92に記録する。
【0066】
図3に示す加熱対象領域設定画面では、用紙Sの幅方向における第6の任意位置および第7の任意位置をそれぞれ特定するための距離(100[mm]、130[mm])を入力ボックス25a,25bに入力するとともに、ボタン24aを選択する入力操作が行われたため、用紙Sの幅方向における第6の任意位置から第7の任意位置までの領域(すなわち、排紙ローラ100が接しない領域)を加熱するための設定が行われる。また、用紙Sの幅方向における第10の任意位置および第11の任意位置をそれぞれ特定するための距離(167[mm]、197[mm])を入力ボックス25g,25hに入力するとともに、ボタン24gを選択する入力操作が行われたため、用紙Sの幅方向における第10の任意位置から第11の任意位置までの領域(すなわち、排紙ローラ100が接しない領域)を加熱するための設定が行われる。
【0067】
制御部80は、CPU90、ROM(Read Only Memory)91、RAM(Random Access Memory)92およびサーマル駆動部93を備えて構成されている。
【0068】
CPU90は、ROM91に格納されているシステムプログラムおよび各種アプリケーションプログラムの中から指定されたプログラムを読み出してRAM92に展開し、RAM92に展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行し、画像形成装置1の各部を制御する。
【0069】
ROM91は、CPU90により実行される各種プログラムを記憶する。RAM92は、揮発性のメモリであって、CPU90により実行される各種プログラムやこれら各種プログラムに係るデータ等を格納するワークエリアを有し、その情報を一時的に記憶する。本実施の形態では、RAM92は、操作表示部20から出力された加熱対象領域情報を一時的に記憶する。
【0070】
サーマル駆動部93は、CPU90から出力される制御信号を受けて、サーマルヘッド70の駆動を制御する。具体的には、サーマル駆動部93は、RAM92に記憶されている加熱対象領域情報に基づいて、定着装置60によりトナー像が定着された用紙S(図2では、矢印方向に搬送中の用紙)における加熱対象領域を選択的かつ部分的に加熱するように制御する。
【0071】
まず、用紙Sの搬送方向における加熱対象領域が設定されている場合の加熱動作について説明する。この場合、制御部80のサーマル駆動部93は、図4(a)に示すように、用紙Sがサーマルヘッド70を矢印方向(搬送方向)に通過する際、RAM92に記憶されている加熱対象領域情報に基づいて、用紙S上において定着ベルトの2周目に係る領域Bを加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。領域Bは、用紙Sの領域Aの進入によって奪われた定着ベルトの熱が2周目までに回復することができず、定着装置60によりトナー像が定着される際の定着温度が所定温度未満の領域である。
【0072】
具体的には、サーマル駆動部93は、用紙サイズから、加熱対象領域設定画面を介して設定された(用紙Sの搬送方向における先端位置からの)距離を減算した値(用紙S上において定着ベルトの1周目に係る領域Aと2周目に係る領域Bとの境の位置)から用紙Sの搬送方向における後端位置までの領域を領域Bとして特定する。そして、サーマル駆動部93は、用紙Sの搬送速度を考慮しながら、用紙Sの領域Bがサーマルヘッド70を通過するタイミングで用紙S上に定着されたトナー像を加熱させる。
【0073】
図4(b)は、サーマルヘッド70が用紙S上に定着されたトナー像を加熱する場合、用紙Sの搬送方向における先端からの距離と、加熱の際における供給熱量との関係を示す図である。図4(b)に示すように、サーマル駆動部93は、用紙S上において定着ベルトの1周目に係る領域Aから2周目に係る領域Bに切り替わるタイミング(切替タイミング)で供給熱量が大きくなるようにサーマルヘッド70を制御する。なお、用紙S上において定着ベルトの1周目に係る領域A(定着温度が所定温度以上の領域)に対しても熱量を供給しているのは、定着ベルトの2周目に係る領域Bで大きな熱量を供給するための加熱準備(ウォームアップ処理)が必要だからである。
【0074】
次に、用紙Sの幅方向における加熱対象領域が設定されている場合の加熱動作について説明する。この場合、制御部80のサーマル駆動部93は、図5(a)に示すように、用紙Sがサーマルヘッド70を矢印方向(搬送方向)に通過する際、RAM92に記憶されている加熱対象領域情報に基づいて、用紙S上において排紙ローラ100が用紙Sと接する(つまり、排紙ローラ100により挟持される)領域B以外の領域Aを加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。
【0075】
図5(b)は、サーマルヘッド70が用紙S上に定着されたトナー像を加熱する場合、用紙Sの幅方向における一端からの距離と、加熱の際における供給熱量との関係を示す図である。図5(b)に示すように、サーマル駆動部93は、排紙ローラ100が用紙Sと接する領域B以外の領域Aに対して大きい供給熱量で加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。
【0076】
次に、用紙Sの搬送方向および幅方向における加熱対象領域が設定されている場合の加熱動作について説明する。この場合、制御部80のサーマル駆動部93は、図6(a)に示すように、用紙Sがサーマルヘッド70を矢印方向(搬送方向)に通過する際、RAM92に記憶されている加熱対象領域情報に基づいて、用紙S上において定着ベルトの2周目に係る領域C,Dを加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。領域C,Dは、用紙Sの領域A,Bの進入によって奪われた定着ベルトの熱が2周目までに回復することができず、定着装置60によりトナー像が定着される際の定着温度が所定温度未満の領域である。
【0077】
具体的には、サーマル駆動部93は、用紙サイズから、加熱対象領域設定画面を介して設定された(用紙Sの搬送方向における先端位置からの)距離を減算した値(用紙S上において定着ベルトの1周目に係る領域A,Bと2周目に係る領域C,Dとの境の位置)から用紙Sの搬送方向における後端位置までの領域を領域C,Dとして特定する。そして、サーマル駆動部93は、用紙Sの搬送速度を考慮しながら、用紙Sの領域C,Dがサーマルヘッド70を通過するタイミングで用紙S上に定着されたトナー像を加熱させる。
【0078】
また、制御部80のサーマル駆動部93は、図6(a)に示すように、用紙Sがサーマルヘッド70を矢印方向(搬送方向)に通過する際、RAM92に記憶されている加熱対象領域情報に基づいて、用紙S上において排紙ローラ100が用紙Sと接する(つまり、排紙ローラ100により挟持される)領域B,D以外の領域A,Cを加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。
【0079】
図6(b)は、サーマルヘッド70が用紙Sの領域A,B上に定着されたトナー像を加熱する場合、用紙Sの幅方向における一端からの距離と、加熱の際における供給熱量との関係を示す図である。図6(b)に示すように、サーマル駆動部93は、排紙ローラ100が用紙Sと接する領域B以外の領域Aに対して大きい供給熱量で加熱するようにサーマルヘッド20を制御する。
【0080】
図6(c)は、サーマルヘッド70が用紙Sの領域C,D上に定着されたトナー像を加熱する場合、用紙Sの幅方向における一端からの距離と、加熱の際における供給熱量との関係を示す図である。図6(c)に示すように、サーマル駆動部93は、排紙ローラ100が用紙Sと接する領域D以外の領域Cに対して大きい供給熱量で加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。領域C,Dは、定着ベルトの2周目に係る領域でもあるため、定着ベルトの1周目に係る領域A,Bとの間において温度差が生じてしまい、光沢ムラ(光沢段差)が発生する可能性がある。そこで、サーマル駆動部93は、定着ベルトの1周目に係る領域A,Bよりも所定熱量だけ大きい供給熱量で、定着ベルトの2周目に係る領域C,Dを加熱するようにサーマルヘッド70を制御する。
【0081】
以上詳しく説明したように、本実施の形態では、操作表示部20により指定された加熱対象領域として、用紙S上においてトナー像の定着温度が所定温度未満の領域を加熱するようにサーマルヘッド70を制御している。このように構成した本実施の形態によれば、用紙S上のトナー像に生じる光沢差を打ち消すように、トナー像の定着温度が所定温度未満の領域である加熱対象領域を入力ボックス等を用いて細かく指定して再加熱することができるため、定着ベルトの1周目に係る領域Aと2周目に係る領域Bとの間における光沢差が小さくなり、用紙S上のトナー画像において光沢ムラ(光沢段差)が発生することを防止することができる。
【0082】
また、本実施の形態では、操作表示部20により指定された加熱対象領域として、用紙S上において、サーマルヘッド70の上流に位置してトナー像が定着された用紙Sを挟持搬送する排紙ローラ100に挟持される領域以外の領域を加熱するようにサーマルヘッド70を制御している。このように構成した本実施の形態によれば、用紙S上のトナー像に生じる光沢差を打ち消すように、排紙ローラ100に挟持される領域以外の領域である加熱対象領域を入力ボックス等を用いて細かく指定して再加熱することができるため、排紙ローラ100が用紙Sと接する領域と接しない領域との間における光沢差が小さくなり、用紙S上のトナー画像においてスジ状の光沢ムラ(光沢段差)が発生することを防止することができる。
【0083】
また、本実施の形態では、加熱対象領域が、用紙S上において、トナー像の定着温度が所定温度未満であり、かつ、排紙ローラ100に挟持される領域以外という2つの条件を満たす領域である場合、トナー像の定着温度が所定温度未満の領域、および、排紙ローラ25に挟持される領域以外の領域の何れか一方の条件を満たす場合よりも供給熱量を高くして加熱するようにサーマルヘッド70を制御している。このように構成した本実施の形態によれば、上記2つの条件を満たす領域と、何れか1つの条件のみを満たす領域との間における温度差が小さくなり、用紙S上のトナー画像において光沢ムラ(光沢段差)が発生することを防止することができる。
【0084】
また、本実施の形態では、用紙Sを再加熱する手段として、短い時間で加熱温度に達し、供給熱量の制御が高精度で行えるサーマルヘッド70を採用している。これにより、所望の領域に必要な分だけ選択的に光沢を付与する処理を高精度で行うことができる。
【0085】
なお、上記実施の形態では、用紙S上に定着されたトナー像を加熱する手段としてサーマルヘッド70を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。要は、用紙Sの任意の領域を加熱するように制御可能な複数の発熱体を有するものであれば何でも良い。
【0086】
また、上記実施の形態では、サーマルヘッド70は用紙Sの搬送方向において定着装置60の下流側、すなわち画像形成装置1内に配置する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、サーマルヘッド70を、画像形成装置1に接続可能であり、用紙Sに対して所定の後処理(例えば、ステープルを用いた綴じ処理、折り処理等)を行う後処理装置110内の用紙搬送路H0上における出口部の前に配置するようにしても良い。つまり、後処理装置110は、画像形成装置1から供給された用紙Sを加熱するように設けられているサーマルヘッド70を有する。この場合、サーマルヘッド70は、制御部80の制御を受けて、定着装置60によりトナー像が定着された用紙Sを加熱する。
【0087】
図7に示すように、後処理装置110は、用紙搬送路H0、H1、H2、固定排紙皿120a、昇降排紙台120b、後処理部130および制御部140を備えて構成されている。なお、制御部140の一部または全部の機能を画像形成装置1の制御部80に組み込むように構成しても良い。
【0088】
制御部140は、CPU等の演算装置を有しており、CPUで所定の制御プログラムを実行することにより、後処理装置110の制御を行う。制御部140は、画像形成装置1の画像形成動作に連動する後処理装置110の後処理動作を、画像形成装置1から転送されたジョブ情報に従って制御する。
【0089】
用紙搬送路H0は、画像形成装置1から排出された用紙Sを後処理装置110の内部に導入するために、画像形成装置1の排紙部53に対向配置された入口部を有する用紙搬送路である。用紙搬送路H0は、その出口部にて用紙搬送路H1、H2に分岐する。
【0090】
用紙搬送路H1は、後処理の対象とならない用紙Sを搬送して固定排紙皿120aに排出する排紙路である。用紙搬送路H2は、後処理の対象となる用紙Sを搬送して後処理部130に供給する用紙搬送路である。
【0091】
後処理部130は、用紙Sに対して平綴じ処理を行うよう構成されている。より具体的には、後処理部130は、用紙Sを積載して用紙束を形成し、この用紙束に対し平綴じ処理を行って冊子を形成し、この冊子を昇降排紙台120bに排出する。図7に示すように、昇降排紙台120bは用紙搬送方向における下流側が上向きに傾斜しており、冊子は傾斜して積載される。また昇降排紙台120bは、冊子が排出される毎に下降して大量の冊子を積載することができる。
【0092】
また、上記実施の形態において、操作表示部20が指示入力部として機能する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図示しない通信部を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークを介して画像形成装置1に接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピュータ)が指示入力部として機能するようにしても良い。
【0093】
また、上記実施の形態では、用紙S上のトナー画像において光沢ムラが発生する領域をサーマルヘッド70で再加熱する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、用紙S上に形成されたトナー画像のうち光沢を付与したい領域(例えば、写真画像の領域)を指定し、部分的かつ選択的にサーマルヘッド70で再加熱するようにしても良い。これは、ユーザの希望により、写真画像の光沢を文字画像より高くすることが好まれる場合があるからである。特に、出力画像そのものが商品であり、オフセット印刷並みの画像品質が求められるプロダクションプリント市場において、光沢を付与したい領域を指定し、その指定した領域を部分的かつ選択的に再加熱することが可能な画像形成装置1を用いることは好ましい。
【0094】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 画像形成装置
20 操作表示部
70 サーマルヘッド
80 制御部
110 後処理装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に定着されたトナー像を加熱する加熱部と、
前記用紙において加熱対象の加熱対象領域を指定する指定入力部により指定された前記加熱対象領域を加熱するように前記加熱部を制御する制御部とを備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記用紙の幅方向に配列された複数の発熱体を有するサーマルヘッドである請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱対象領域は、前記用紙上において前記トナー像の定着温度が所定温度未満の領域である請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱対象領域は、前記用紙上において、前記加熱部の上流に位置して前記トナー像が定着された前記用紙を挟持搬送する搬送部に挟持される領域以外の領域である請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記加熱対象領域は、前記用紙上において、前記トナー像の定着温度が所定温度未満であり、かつ、前記加熱部の上流に位置して前記トナー像が定着された前記用紙を挟持搬送する搬送部に挟持される領域以外の領域であり、
前記制御部は、前記加熱対象領域が、前記用紙上において、前記トナー像の定着温度が所定温度未満の領域、および、前記搬送部に挟持される領域以外の領域の何れか一方である場合よりも供給熱量を高くして当該加熱対象領域を加熱するように前記加熱部を制御する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
用紙上に定着されたトナー像を加熱する加熱部と、
前記用紙において加熱対象の加熱対象領域を指定する指定入力部により指定された前記加熱対象領域を加熱するように前記加熱部を制御する制御部とを備えた加熱装置。
【請求項7】
前記加熱部は、前記用紙の幅方向に配列された複数の発熱体を有するサーマルヘッドである請求項6に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記加熱対象領域は、前記用紙上において前記トナー像の定着温度が所定温度未満の領域である請求項6または7に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記加熱対象領域は、前記用紙上において、前記加熱部の上流に位置して前記トナー像が定着された前記用紙を挟持搬送する搬送部に挟持される領域以外の領域である請求項6または7に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記加熱対象領域は、前記用紙上において、前記トナー像の定着温度が所定温度未満であり、かつ、前記加熱部の上流に位置して前記トナー像が定着された前記用紙を挟持搬送する搬送部に挟持される領域以外の領域であり、
前記制御部は、前記加熱対象領域が、前記用紙上において、前記トナー像の定着温度が所定温度未満の領域、および、前記搬送部に挟持される領域以外の領域の何れか一方である場合よりも供給熱量を高くして当該加熱対象領域を加熱するように前記加熱部を制御する請求項6または7に記載の加熱装置。
【請求項11】
用紙上にトナー像を形成する画像形成装置に接続可能であり、当該用紙に対して所定の後処理を行う後処理装置であって、
前記画像形成装置から供給された用紙を加熱するように設けられている請求項6〜10の何れか1項に記載の前記加熱部を有する後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88666(P2013−88666A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229905(P2011−229905)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】