説明

画像形成装置、印刷システム及びジョブ実行方法

【課題】 ログアウト後であっても一定時間内であれば、設定されたジョブを実行可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】 画像形成装置1の制御部10は、正規ユーザを認証して、ジョブの実行を許可する許可条件を含むジョブ実行チケットを生成する。また制御部10は、認証を行ってログインした正規ユーザの選択したデータの取得要求と、ジョブ実行チケットとをネットワークに接続されたサーバ装置2に出力する。さらに制御部10は、正規ユーザのログアウト後であって、ログアウトから所定時間内にサーバ装置2からジョブ実行チケット付きのデータを受信すると、データの処理を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部サーバ上に格納された文書データや画像データを画像形成装置に転送して、印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置の操作パネル上からネットワーク上のサーバ装置に格納された画像データを指定し、指定した画像データを画像形成装置に転送して印刷するという技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−134125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシステムにおいて、例えばサイズが大きい画像データを転送しようとした場合や、大量の画像データをまとめてプリント指示したような場合、画像データが画像形成装置に送られてくるまでに大変長い時間を要してしまう。画像データの転送に時間がかかり、そのあいだ何の操作もなされないとログインしていたユーザがログアウトされてしまうこともあり、取得した画像データを印刷できないという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ログアウト後であっても一定時間内であれば、設定されたジョブを実行可能な画像形成装置、印刷システム及びジョブ実行方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の画像形成装置は、正規ユーザを認証する認証手段と、ジョブの実行を許可する許可条件を含むジョブ実行チケットを生成するチケット生成手段と、認証を行ってログインした正規ユーザによって選択されたデータの取得要求と、前記ジョブ実行チケットとをネットワークに接続されたサーバ装置に出力するデータ取得手段と、前記正規ユーザのログアウト後であっても、該ログアウトから所定時間内にジョブ実行チケット付きのデータを受信すると、前記許可条件に従って該データの処理を許可する制御手段とを有する構成としている。
このように本発明は、データの取得要求にジョブ実行チケットを付加し、特別なデータであることを示すことで、取得者がログアウト後にデータを受信しても一定時間内であればジョブを実行することができる。
【0007】
本発明の画像形成装置は、正規ユーザを認証する認証手段と、ジョブの実行を許可する許可条件を含むジョブ実行チケットを生成するチケット生成手段と、認証を行ってログインした正規ユーザによって選択されたデータの取得要求と、前記ジョブ実行チケットとをネットワークに接続されたサーバ装置に出力するデータ取得手段と、前記取得要求から所定時間内に前記サーバ装置からジョブ実行チケット付きのデータを受信すると、前記許可条件に従って該データの処理を許可する制御手段とを有する構成としている。
本発明は、データの取得要求にジョブ実行チケットを付加し、特別なデータであることを示すことで、取得者がログアウト後にデータを受信しても一定時間内であればジョブを実行することができる。
【0008】
上記画像形成装置において、前記制御手段は、前記サーバ装置から転送された前記ジョブ実行チケットの正当性を認証後に、データの処理を許可するとよい。
従って、正当なジョブ実行チケットが付加されたデータに対してだけ、ログアウト後の処理を行うことができる。
【0009】
上記画像形成装置において、前記チケット生成手段は、前記ジョブ実行チケットを発行した機器の識別情報と、ログインしている正規ユーザのユーザIDと、前記ジョブ実行チケットの発行日時とを少なくとも含む前記ジョブ実行チケットを生成するとよい。
【0010】
本発明の印刷システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置と、前記画像形成装置から前記データ取得要求と前記ジョブ実行チケットとを受信すると、要求のあったデータに前記ジョブ実行チケットを添付して前記画像形成装置に転送するサーバ装置とを有する構成を備えている。
【0011】
本発明のジョブ実行方法は、正規ユーザを認証するステップと、ジョブの実行を許可する許可条件を含むジョブ実行チケットを生成するステップと、認証を行ってログインした正規ユーザによって選択されたデータの取得要求と、前記ジョブ実行チケットとをネットワークに接続されたサーバ装置に出力するステップと、前記正規ユーザのログアウト後であっても、該ログアウトから所定時間内にジョブ実行チケット付きのデータを受信すると、前記許可条件に従って該データの処理を許可するステップとを有している。また、本発明は、正規ユーザを認証するステップと、ジョブの実行を許可する許可条件を含むジョブ実行チケットを生成するステップと、認証を行ってログインした正規ユーザによって選択されたデータの取得要求と、前記ジョブ実行チケットとをネットワークに接続されたサーバ装置に出力するステップと、 前記取得要求から所定時間内に前記サーバ装置からジョブ実行チケット付きのデータを受信すると、前記許可条件に従って該データの処理を許可するステップとを有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ログアウト後であっても一定時間内であれば、設定されたジョブを実行可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例】
【0014】
図1に本発明を適用したシステムの構成を示す。本実施例は、複数の画像形成装置1(a),1(b),・・・1(n)と、画像データや文書データを格納した複数のサーバ装置2(a),2(b),・・・2(m)とを有している(n、mは任意の自然数とする)。画像形成装置1とサーバ装置2とは、LAN等の同一のネットワーク上に配置してもよいし、画像形成装置1をLANに配置し、サーバ装置2をインターネット等の外部ネットワーク上に配置してもよい。
【0015】
図2に、画像形成装置1の構成を示す。画像形成装置1は、制御部10、画像処理部20、表示部24、操作部25、LAN回線26、シリアル回線27、USB回線28、モデム29、画像読取部30、画像出力部31がシステムバス32上に接続されている。表示部24と操作部25はUI(ユーザインタフェース)I/F21によってシステムバス32に接続され、LAN26、シリアル回線27、USB回線28、モデム29は通信I/F22を介してシステムバス32に接続され、画像読取部30と画像出力部31はデバイスI/F23を介してシステムバス32に接続されている。
【0016】
制御部10は、CPU11,ROM12、RAM13,NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)14、HDD15を備えている。CPU11はROM12からプログラムを読み出して、このプログラムに従った制御を行うことで画像形成装置1が動作する。RAM13は、CPU11が演算を行う際のシステムメモリとして機能すると共に、画像処理部20による画像処理時のページメモリとしても機能する。NVRAM14は、不揮発性のメモリであって、画質調整、各種設定パラメータ、各種履歴情報等が格納される。HDD15には、画像データや各種履歴が格納される。制御部10の処理の詳細については後述する。
【0017】
画像処理部20は、データの伸張圧縮、各種画像処理を行う。画像読取部30は、原稿台上に置かれた原稿の画像を読み取る。画像出力部31は、画像処理部20で処理後の画像データを印刷出力する。表示部24はLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置であって、操作者に必要な情報を表示する。操作部25は、画像形成装置1の動作を設定する。
【0018】
LAN回線26は、10/100Base−Tなどのネットワークとの接続部である。シリアル回線27は、RS232C等によって外部の周辺装置と接続する。USB28は、USBに対応した機器との接続部である。モデム29は、FAXなどの公衆回線への接続を行う。
【0019】
本実施例は、画像形成装置1からネットワーク上のサーバ装置2に格納された画像データや文書データを取得して印刷するときに、データの取得要求と共にジョブ実行チケットを付加してサーバ装置2に送信する。サーバ装置2は、取得要求のあったデータを画像形成装置1に返送するときに、ジョブ実行チケットをデータに付加してそのまま返送する。画像形成装置1はジョブ実行チケットを含むデータを受信すると、そのジョブ実行チケットが正当なチケットであるかをまず判断する。正当なチケットであると判定すると、データの取得を要求したユーザがログアウトしていても、ログアウトから一定時間内であればジョブを実行しデータを出力する。なお、この一定時間は、ユーザが操作部25から任意に設定することが可能である。
【0020】
ジョブ実行チケットには、図3に示すように情報識別子、バージョン情報、ジョブ要求識別子、ジョブ要求(チケット生成)日時、有効期限情報、発行元情報、被発行者情報が含まれる。情報識別子は、ジョブ実行チケットで許可される情報を表すものであり、本実施例では、ログアウト後の一定時間内であれば、プリントジョブの実行を許可するという情報が埋め込まれている。バージョン情報は、ジョブ実行チケットのバージョンを示すものである。ジョブ要求識別子は、1回のデータ取得要求で複数のデータを要求する場合に、各データが所属する取得要求を特定するための情報である。ジョブ要求(チケット生成)日時は、ジョブ実行チケットを生成した日時を示し、サーバ装置2から画像形成装置1に送り返されたときに、現在時刻と比較する。有効期限情報は、ジョブ実行チケットを発行した日時又は失効させる日時を記したものである。発行元情報は、ジョブ実行チケットを発行した機器を識別する情報であり、例えば、機種コードとシリアル番号が使用される。被発行者情報は、ログイン時に操作者(ユーザ)から取得したユーザIDを示す。
【0021】
図4には、画像形成装置1でのユーザ認証手順と、画像形成装置1とサーバ装置2との通信シーケンスが示されている。
まず、画像形成装置1でユーザを認証する認証手順が実行される。
操作部25からAuthenticationとしてユーザIDとパスワードが入力されると、画像形成装置1の制御部10は、入力された情報から認証を行う。認証に成功すると、Webアプリケーションの選択信号が入力され(select web application)、さらにWebページの取得要求が入力される(request a web page)。
【0022】
画像形成装置1の制御部10は、操作部25から入力されたWebページの情報をサーバ装置2に送信する(request a web page)。サーバ装置2が、アクセスを受けた時に認証を要する設定になっているときは、認証失敗が画像形成装置1に送られる(respond Unauthorized)。画像形成装置1は、ユーザから入力されたユーザIDとパスワードを認証情報としてサーバ装置2に送信する(request a web page with userID/password)。
【0023】
サーバ装置2側で認証に成功すると、画像形成装置1から要求のあったWebページが画像形成装置1に送信される。画像形成装置1は、ユーザによって選択されたWebページの印刷要求をサーバ装置2に出力する。この要求にはきジョブ実行チケットも添付される(request to print with job-ticket)。サーバ装置2は、画像形成装置1のリクエストに応答して、プリントデータを転送する。このプリントデータにはジョブ実行チケットも添付される。
【0024】
図5に示すフローチャートを参照しながら画像形成装置1の処理手順を説明する。
操作部25の操作によりユーザからのログイン要求があると(ステップS1/YES)、制御部10は、表示部24にユーザID、パスワードの入力を要求するメッセージを表示させる(ステップS2)。制御部10は、操作部25より入力されるユーザID、パスワードの認証を行い、認証に成功すると(ステップS3/YES)、ユーザからWebページの取得要求を待つ(ステップS4)。認証に成功しなかった場合には(ステップS3/NO)、この処理を終了する。
【0025】
ユーザからWebページの取得要求があると(ステップS4/YES)、制御部10は、Webページを提供するサーバ装置2にアクセスする(ステップS6)。サーバ装置2にアクセスすると、サーバ装置2から認証要求が送られる(ステップS7/YES)。制御部10は、サーバ装置2からの要求に従って、ステップS2で入力したユーザID,パスワードをサーバ装置2に送信する(ステップS8)。サーバ装置2側で認証に成功すると、制御部10で指定したWebページが表示部24に表示される(ステップS9)。
【0026】
ユーザの操作によって取得するデータが選択されると、制御部10は、選択されたデータの識別情報に、ジョブ実行チケットを付加してサーバ装置2にデータ取得要求を行う(ステップS10)。サーバ装置2は要求のあったデータを画像形成装置1に送信する。このとき、ジョブ実行チケットも転送するデータに付加する(ステップS11)。
ジョブ実行チケットは、サーバ装置2に対するすべてのWebページ要求に付加してもよい。Webページ要求の内容がデータ取得要求であるか否かが、制御部10にわからない場合があり、このときは必要となる。この場合、サーバ装置2はデータ取得要求以外のときはジョブ実行チケットを読み捨てる。
【0027】
データのダウンロードが完了すると(ステップS12/YES)、制御部10は、データにジョブ実行チケットが付加されているか否かを判定する(ステップS13)。ジョブ実行チケットが付加されていなかった場合には、他の処理ルーチンへ移行する(ステップS14)。ジョブ実行チケットが付加されていた場合、制御部10は、チケットが正当なチケットであるか否かを判定する。ジョブ実行チケットには、有効期限情報、発行元情報、被発行者情報等が含まれているので、これらの情報から正規のチケットであるか否かを判定する。正当なジョブ実行チケットではないと判定すると(ステップS15/NO)、この処理を終了する。また制御部10は、正当なチケットであると判定すると(ステップS15/YES)、データの転送を要求したユーザはログアウトしているか否かを判定する(ステップS16)。ユーザがログアウトしていた場合には(ステップS16/YES)、ログアウトから一定時間内であるか否かを判定する(ステップS17)。ログアウトから一定時間内であった場合(ステップS17/YES)、またログアウトしていなかった場合(ステップS16/NO)、制御部10はサーバ装置2から取得したデータを印刷し、ジョブを実行する(ステップS18)。また、ログアウトから一定時間以上経過していた場合には(ステップS17/NO)、ジョブをキャンセルする(ステップS19)。
【0028】
上述した実施例は本発明の好適な実施例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施例ではデータの取得要求者のログアウトから所定時間内にデータを受信した場合に、印刷ジョブを実行する場合を説明したが、データの取得要求をサーバ装置3に出力してから所定時間内にデータをサーバ装置2から受信した場合には、印刷ジョブを実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】システム構成を示す図である。
【図2】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ジョブ実行チケットの構成を示す図である。
【図4】画像形成装置での認証手順と、画像形成装置とサーバ装置との間の通信シーケンスを示す図である。
【図5】画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1 画像形成装置
2 サーバ装置
10 制御部
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 NVRAM
15 HDD
20 画像処理部
21 UI I/F
22 通信I/F
23 デバイスI/F
24 表示部
25 操作部
26 LAN回線
27 シリアル回線
28 USB回線
29 モデム
30 画像読取部
31 画像出力部
32 システムバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正規ユーザを認証する認証手段と、
ジョブの実行を許可する許可条件を含むジョブ実行チケットを生成するチケット生成手段と、
認証を行ってログインした正規ユーザによって選択されたデータの取得要求と、前記ジョブ実行チケットとをネットワークに接続されたサーバ装置に出力するデータ取得手段と、
前記正規ユーザのログアウト後であっても、該ログアウトから所定時間内にジョブ実行チケット付きのデータを受信すると、前記許可条件に従って該データの処理を許可する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
正規ユーザを認証する認証手段と、
ジョブの実行を許可する許可条件を含むジョブ実行チケットを生成するチケット生成手段と、
認証を行ってログインした正規ユーザによって選択されたデータの取得要求と、前記ジョブ実行チケットとをネットワークに接続されたサーバ装置に出力するデータ取得手段と、
前記取得要求から所定時間内に前記サーバ装置からジョブ実行チケット付きのデータを受信すると、前記許可条件に従って該データの処理を許可する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記サーバ装置から転送された前記ジョブ実行チケットの正当性を認証後に、データの処理を許可することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記チケット生成手段は、前記ジョブ実行チケットを発行した機器の識別情報と、ログインしている正規ユーザのユーザIDと、前記ジョブ実行チケットの発行日時とを少なくとも含む前記ジョブ実行チケットを生成することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置と、
前記画像形成装置から前記データ取得要求と前記ジョブ実行チケットとを受信すると、要求のあったデータに前記ジョブ実行チケットを添付して前記画像形成装置に転送するサーバ装置と、を有することを特徴とするジョブ実行システム。
【請求項6】
正規ユーザを認証するステップと、
ジョブの実行を許可する許可条件を含むジョブ実行チケットを生成するステップと、
認証を行ってログインした正規ユーザによって選択されたデータの取得要求と、前記ジョブ実行チケットとをネットワークに接続されたサーバ装置に出力するステップと、
前記正規ユーザのログアウト後であっても、該ログアウトから所定時間内にジョブ実行チケット付きのデータを受信すると、前記許可条件に従って該データの処理を許可するステップと、
を有することを特徴とするジョブ実行方法。
【請求項7】
正規ユーザを認証するステップと、
ジョブの実行を許可する許可条件を含むジョブ実行チケットを生成するステップと、
認証を行ってログインした正規ユーザによって選択されたデータの取得要求と、前記ジョブ実行チケットとをネットワークに接続されたサーバ装置に出力するステップと、
前記取得要求から所定時間内に前記サーバ装置からジョブ実行チケット付きのデータを受信すると、前記許可条件に従って該データの処理を許可するステップと、
を有することを特徴とするジョブ実行方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−245627(P2007−245627A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74516(P2006−74516)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】