説明

画像形成装置、温度測定方法および温度測定装置

【課題】装置のコストアップを抑えて、像担持体の軸方向の温度分布を検知し、かつ、温度測定手段の汚れを抑制し、経時にわたり精度の高い温度測定を行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転多面鏡24および感光体1を駆動・回転させ、感光体1の一端から放射された赤外光が、放射温度センサ30に入射するタイミングとなったら、放射温度センサ30の温度計測を開始し、感光体1の一端の温度を検知する。感光体1の一端の箇所の温度が検知されたら、感光体1の軸方向異なる位置から放射された赤外光が、放射温度センサ30に入射し、感光体1の一端よりも軸方向中央部側の温度が検知される。このような処理が、繰り返され、放射温度センサ30によって感光体1の周方向ある位置における軸方向複数箇所の温度が検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関する。また、温度測定対象物の温度分布を測定する温度測定方法および温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式により画像を形成する複写機、レーザービームプリンタ、デジタル複合機などの画像形成装置では、像担持体である感光体の表面に、帯電の際に発生するオゾン生成物が付着する。特に湿度が高い環境下では、感光体表面に付着したオゾン生成物が水分を吸着し、画像流れが発生する課題が知られている。
【0003】
特許文献1には、感光体の表面に近接配置された温度センサが検知した感光体表面温度に基づいて、感光体の温度が一定の範囲になるように感光体内部に配置されたヒータを制御することで、画像流れを防止する画像形成装置が記載されている。また、特許文献2には、温度センサで検知した感光体表面温度に基づき外気を加熱し、この加熱された外気を感光体の内部に通すことで、感光体の温度を一定の範囲に制御し、画像流れを防止する画像形成装置が記載されている。
【0004】
また、感光体の帯電バイアス、露光量、転写バイアスなどの画像形成条件は、感光体の温度によって最適な画像形成条件が変化し、画像劣化の発生や、画像の安定性に影響を与えるという課題も知られている。特許文献3には、感光体の表面に近接配置された温度センサが検知した感光体表面温度に基づいて、画像形成条件である露光条件を制御する画像形成装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、感光体の表面温度は、均一でない場合があり、軸方向に温度差が生じる場合がある。感光体の表面温度が軸方向に温度差をもつ要因としては、駆動モータなどの熱源との距離が軸方向で異なることや、感光体表面に流れる気流が軸方向で異なることなどが挙げられる。
特許文献1、2に記載の画像形成装置おいては、感光体軸方向に1箇所しか温度センサが配置されていない。従って、感光体表面の温度センサと対向する部分の温度が、他の感光体の部分と異なる場合、画像流れを抑制できない場合がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の画像形成装置は、温度センサとして、サーモパイル素子を用い、感光体表面から放射された赤外光を検知して、温度を測定している。しかしながら、温度センサを感光体表面に近接配置しているため、感光体表面に付着したトナーなどが温度センサのレンズなどに付着し、感光体からの赤外光を阻害し、計測誤差が発生するおそれがある。
【0007】
特許文献3に記載の画像形成装置は、感光体の軸方向に複数個温度センサを配置し、これら複数の温度センサの検知結果に基づいて、感光体の軸方向の温度分布を算出している。しかしながら、特許文献3においては、感光体軸方向の温度分布を算出するには、複数個の温度センサが必要となり、装置のコストアップに繋がるという問題がある。
【0008】
また、複数個の温度センサが必要となり、装置のコストアップに繋がるという問題は、感光体の軸方向の温度分布を検知するときに限らず、温度測定対象物の温度分布を検知する場合にも同様に発生しうる。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その第1の目的は、装置のコストアップを抑えて、像担持体の軸方向の温度分布を検知し、かつ、温度測定手段の汚れを抑制し、経時にわたり精度の高い温度測定を行うことができる画像形成装置を提供することである。
また、本発明は、温度測定対象物の温度分布を検知するときの問題点に鑑みなされたものであり、その第2の目的は、装置のコストアップを抑えて、温度測定対象物の温度分布を検知することができる温度測定装置および温度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、像担持体と、光源と、回転多面鏡とを備え、上記光源からの光を上記回転多面鏡によって上記像担持体上に走査することによって像担持体上に潜像を書込む書込装置とを備えた画像形成装置において、上記書込装置内に、上記像担持体から放射された赤外光のうち上記回転多面鏡に反射した赤外光を検出して、像担持体表面の温度を測定する温度測定手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記温度測定手段の応答速度に基づいて、回転多面鏡を回転させ、像担持体上の軸方向複数箇所の温度を測定することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、上記像担持体の内部に軸方向に複数の熱源が設けられており、上記温度測定手段で測定した像担持体上の軸方向複数箇所の温度に基づいて、各熱源を制御する熱源制御手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2または3の画像形成装置において、上記温度測定手段で測定した像担持体上の軸方向複数箇所の温度に基づいて、画像形成条件を制御する画像形成条件制御手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項2乃至5いずれかの画像形成装置において、上記像担持体を回転させながら、像担持体周方向異なる位置の軸方向複数箇所の温度を測定することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかの画像形成装置において、上記回転多面鏡の鏡面の位置における上記温度測定手段の測定範囲が、上記回転多面鏡の鏡面よりも狭くなるよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6いずれかの画像形成装置において、上記温度測定手段は、少なくともサーモパイル素子を備えることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の画像形成装置において、上記温度測定手段は、該温度測定手段の周囲温度を検知するための内部温度検知手段を備え、該内部温度検知手段が検知した上記温度測定手段の周囲温度に基づいて、上記サーモパイル素子の冷接点の温度補償を行うものであり、上記書込装置内部を冷却する冷却手段と、上記冷却手段を、上記内部温度検知手段が検知した上記温度測定手段の周囲温度に基づき制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、温度検知対象物から放射された赤外光を反射する反射鏡と、該反射鏡から反射された赤外光を検出して、温度検知対象物の温度を検知する温度検知手段とを備えた温度測定装置において、上記反射鏡を回動させる回動手段を備え、該回動手段で上記反射鏡を回動させることで温度検知対象物の温度検知箇所を変更することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、温度検知対象物の幅方向の温度分布を測定する温度測定方法において、反射鏡で反射した温度検知対象物から放射された赤外光を検出して、温度を検知する第1ステップと、上記反射鏡を所定角度回動させる第2ステップとを、繰り返し実施して温度検知対象物の幅方向の温度分布を測定する温度測定方法。
また、請求項11の発明は、請求項10の温度測定方法において、上記温度検知対象物が、像担持体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、像担持体から放射された赤外光のうち回転多面鏡に反射した赤外光を検出して、像担持体表面の温度を測定するので、回転対面鏡を回転しながら、像担持体の表面温度を検知すれば、ひとつの温度測定手段で像担持体軸方向複数箇所の温度を検知することができる。これにより、複数の温度測定手段を像担持体の軸方向に配置して、各温度測定手段で、像担持体軸方向各位置の温度を測定するものに比べて、装置のコストアップを抑えることが可能となる。
また、温度測定手段を書込装置内に設けるので、像担持体表面に温度測定手段を近接配置するものに比べて、温度測定手段が、トナーなどにより汚れるのを抑制することができ、経時にわたり精度の高い温度測定をおこなうことができる。
【0012】
また、本発明の温度測定装置および温度測定方法によれば、反射鏡を回動させることで、温度検知対象物の反射鏡に反射して温度測定手段に入射する赤外光の放射位置が変更される。よって、反射鏡を回動させることで、温度検知対象物の一方向の温度分布を検知することができる。これにより、ひとつの温度測定手段で、温度検知対象物の一方向の温度分布を検知することができ、複数の温度測定手段を温度検知対象物の一方向に配置し、各温度測定手段で各位置の温度を測定して温度検知対象物の温度分布を検知するものに比べて、装置のコストアップを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】書込装置の概略構成図。
【図3】回転多面鏡周辺の拡大構成図。
【図4】放射温度センサの回転多面鏡との高さ方向の位置関係を説明する図。
【図5】放射温度センサによる感光体の温度検知の説明図。
【図6】(a)は、放射温度センサを回転多面鏡に近接配置した概略構成図。(b)は、放射温度センサを回転多面鏡から離して配置した概略構成図。
【図7】(a)は、放射温度センサを回転多面鏡に近接配置したときの放射温度センサの計測エリアを示す図。(b)は、放射温度センサを回転多面鏡から離して配置したときの放射温度センサの計測エリアを示す図。
【図8】放射温度センサと回転多面鏡との間に計測範囲制限部材を配置した構成を示す図。
【図9】計測範囲制限部材の内径について説明する図。
【図10】実施例1に係る画像形成装置の要部拡大構成図。
【図11】実施例1の制御フロー図。
【図12】実施例2の制御フロー図。
【図13】タンデム型画像形成装置の概略構成図。
【図14】対向走査型の書込装置の概略構成図。
【図15】温度測定装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタの一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタ100を示す概略構成図である。
プリンタ100は、潜像担持体としての感光体1、帯電装置2、現像手段としての現像装置4、感光体1をクリーニングするクリーニング装置6、感光体1上に静電潜像を書き込むための書込装置3などを有している。また、感光体1の下方において、無端状の紙搬送ベルト11を複数のローラによって張架しながら図中時計回り方向に無端移動せしめる転写搬送ユニット10や、トナー像を記録紙Pに定着せしめるための定着装置7なども有している。
【0015】
転写搬送ユニット10の下方には、記録部材としての記録紙Pが複数枚重ねられた紙束の状態で収容されている2個の給紙カセット8を備えている。不図示の給紙ローラを回転させることで、給紙カセット8の紙束から記録紙Pを一枚ずつ分離しながら給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対9が配設されており、給紙路内の記録紙Pはそのローラ間に挟み込まれた後に搬送が一時停止される。そして、後述するプロセスによって感光体1上に形成されたトナー像に重ね合わされるタイミングでレジストローラ対9の駆動が再開することで、後述する転写ニップに向けて送り出される。
【0016】
不図示のパーソナルコンピュータなどから画像情報を受信すると、感光体1を図中時計回り方向に回転駆動し、感光体1の周面を、帯電装置2によって一様に帯電する。次に、感光体1は、書込装置3により、画像情報に基づく光走査を受けて静電潜像を担持する。この静電潜像は、現像装置4から供給されるトナーによって現像されて、可視像としてのトナー像になる。
【0017】
感光体1の下方で無端移動せしめられる紙搬送ベルト11は、そのループ内側に配設された転写ローラ5によって感光体1の表面に押し付けられている。これにより、感光体1と、紙搬送ベルト11のおもて面(ループ外周面)とが当接する転写ニップが形成されている。この転写ニップには、転写ローラ5に転写バイアスが印加されることで転写電界が形成される。
【0018】
上述のようにしてレジストローラ対9から送り出された記録紙Pは、転写ニップに挟み込まれながら、感光体1上のトナー像に密着せしめられる。そして、ニップ圧や転写電界の作用によってトナー像が転写される。このようにしてトナー像が転写された記録紙Pは、紙搬送ベルト11のおもて面に吸着した状態でベルトの無端移動に伴って搬送された後、定着装置7に受け渡される。
【0019】
定着装置7は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包しながら回転する定着ローラと、これに当接せしめられながら回転する加圧ローラとによって定着ニップを形成している。紙搬送ベルト11から定着装置7に受け渡された記録紙Pは、この定着ニップに挟み込まれる。そして、ニップ圧や加熱の作用によって表面上にトナー像が定着される。このようにしてトナー像が定着された記録紙Pは、定着装置7から送り出された後、装置外へ排出される。
【0020】
転写ニップを通過した後の感光体1表面に残留している転写残トナーは、クリーニング装置6によって感光体1表面から除去される。この後、感光体1は、帯電装置2によって再び一様に帯電せしめられる。
【0021】
また、書込装置3は、外装ケース50に覆われており、外装ケース50には、吸気通路51に接続され、吸気通路51には、外装ケース50内に外気を送風する送風手段であるファン52が設けられている。ファン52により、外装ケース50に外気が送風されることにより、書込装置3が冷却される。すなわち、外装ケース50と吸気通路51とファン52とで、書込装置3を冷却する冷却手段が構成されている。
【0022】
図2は、書込装置3の内部構成を上側から示す構成図である。
書込装置3の筐体としてのハウジングの側面には、光源としての半導体レーザーダイオード(以下、LDという)を備えた光源ユニット20が保持されている。LDから出射された光ビーム21は、光源ユニット20の図示しないコリメートレンズを透過した後、光源ユニット20から出る。光源ユニット20から出た光ビーム21は、図示しないアパーチャーで一定の形状に整形された後、シリンドリカルレンズ23を透過することで、副走査方向(感光体1表面上における感光体1表面移動方向に相当する方向)に集光せしめられる。次いで、図示しないポリゴンモータによって高速回転される正六面体構造の回転多面鏡24における6つの側面にそれぞれ形成された鏡面のうち、何れかで反射しながら主走査方向(感光体1表面上における軸線方向に相当する方向)に偏向せしめられる。そして、回転多面鏡24によって一定の角速度で主走査方向に偏向せしめられる光ビーム21の偏向方向の移動速度を等速に変換するfθレンズ25、面倒れを補正するための面倒れ補正レンズ26、折返しミラー27、書込装置3を密閉する不図示の防塵ガラスを順次経由した後、装置外に放たれて、図示しない感光体1の表面に達する。
【0023】
また、回転多面鏡24で偏向走査された光ビーム21の一部は、ミラー28によって反射し、同期センサ29によって検知される。この同期センサ29が光ビーム21を検知したタイミングに基づいて、主走査方向における書込開始タイミングが決定される。
【0024】
次に、本実施形態の特徴点について、説明する。
図3は、書込装置3の回転多面鏡24周辺の拡大構成図である。
図に示すように、回転多面鏡24の近傍には、赤外光を検出し、検出した赤外光量に基づき温度を測定する温度測定手段たる放射温度センサ30が設けられている。放射温度センサ30は、回転多面鏡24の中心から感光体1の軸方向の中心へ向かう線a、および光ビーム21の照射面の中心から回転多面鏡24へ向かう線bを結んだ角度Aと、放射温度センサ30の計測面の中心から回転多面鏡24へ向かう線cおよび前記の線aを結んだ角度Bと、が同一角度となるように配置されている。また、放射温度センサ30と回転多面鏡24との距離は、回転多面鏡24の回転が阻害されない程度まで、できるだけ近接させて設置する。また、図4に示すように、放射温度センサ30を設置する高さ方向の位置は、回転多面鏡24の高さ方向の中心と放射温度センサ30高さ方向の中心が合うように設置する。
【0025】
本実施形態においては、放射温度センサ30として、サーモパイル式の温度センサを用いた。サーモパイル式の温度センサは、応答速度が、数ミリ〜数十ミリ秒という高速応答性を有している。なお、応答速度とは、測定に要する時間であり、具体的に言うと、計測を開始してから、温度検知対象物の温度に対応する出力値となるまでに要する時間である。
【0026】
サーモパイル式の温度センサは、2種類の異なる金属からなる熱電対を多数直列接続したサーモパイル素子を有している。サーモパイル素子には冷接点と温接点とを備え、サーモパイル素子は、冷接点と温接点との温度差に比例した電圧を出力する。サーモパイル素子の冷接点は、アルミナ基板などからなる熱容量の大きいヒートシンクに当接させ、温接点は、赤外光吸収部材に当接させる。回転多面鏡24の鏡面を反射した感光体1から放射された赤外光は、レンズを介して、赤外光吸収部材に入射する。赤外光が赤外光吸収部材に入射すると、赤外光吸収部材が、入射した赤外光量に応じて温度上昇し、温接点と冷接点との間に赤外光量に応じた温度差が生じる。そして、その温度差に応じた熱起電力が発生し、制御部に温度差に応じた電圧を出力する。
【0027】
冷接点の温度は、温度センサの周囲の温度により影響を受け、入射した赤外光量に応じた温接点と冷接点との間の温度差に影響が生じ、精度の高い温度測定が行えない。このため、冷接点側の温度を測定し、冷接点の温度補償を行う必要がある。そこで、冷接点の温度を補償するため、温度センサの周囲の温度を検知する内部温度検知手段として、サーミスタを設け、このサーミスタを用いて、サーモパイル素子の出力電圧を補正することで、冷接点の温度補償を行っている。
【0028】
次に、放射温度センサ30による感光体1の温度検知について説明する。
図5は放射温度センサ30による感光体1の温度検知の説明図である。
感光体1の表面温度を計測するにあたり、プリンタ100は、帯電した感光体1に静電潜像を書込む際の工程と同様に、回転多面鏡24および感光体1を駆動・回転させる。回転多面鏡24の回転速度は、放射温度センサ30の応答速度、軸方向の温度測定数などに応じて決定される。回転多面鏡24の回転速度を放射温度センサ30の応答速度に基づき決定する理由は、回転多面鏡24の回転速度が速すぎると、刻々と変化する赤外光量の変化に放射温度センサ30の出力変化が間に合わず、測定誤差が大きくなってしまう。回転多面鏡24の回転を遅くすれば、赤外光量の変化に放射温度センサ30の出力変化を対応させることができるが、回転多面鏡24の回転が遅すぎると、測定時間が長くなるという不具合が生じる。このため、回転多面鏡24の回転速度を、応答速度に基づき決定することによって、放射温度センサ30の出力変化が、入射する赤外光量の変化に対応でき、かつ、測定時間が長くなりすぎるのを抑制することができる。また、感光体1の駆動速度は、決定された回転多面鏡24の回転速度などに応じて決定される。
【0029】
回転多面鏡24、感光体1の回転速度が予め決められた規定速度に達したら、LDから光ビーム21を発射する。そして、光ビーム21が、同期センサ29により検知されてから、所定のタイミングで、放射温度センサ30の温度計測を開始する。具体的には、同期センサ29の検知結果に基づいて、感光体1の図中左端の箇所から放射された赤外光が、放射温度センサ30に入射するタイミングを計測し、そのタイミングとなったら、放射温度センサ30の温度計測が開始される。温度計測が開始されると、感光体1の図中左端の箇所から放射された赤外光が、折り返しミラー27、面倒れ補正レンズ26、fθレンズ25を経由し、回転多面鏡24の鏡面に反射して、放射温度センサ30に入射する。放射温度センサ30は、入射した感光体1の図中左端の箇所から放射された赤外光量に基づき、感光体1の図中左端の箇所の温度を検知する。感光体1の図中左端の箇所の温度が検知されたら、感光体1の軸方向異なる位置から放射された赤外光が、放射温度センサ30に入射し、感光体1の図中左端よりも軸方向中央部側の温度が検知される。このような処理が、繰り返され、放射温度センサ30によって感光体1の周方向ある位置における軸方向複数箇所の温度が検知される。これにより、感光体1軸方向の温度分布を測定することができる。また、感光体1周にわたり周方向異なる箇所の軸方向複数箇所の温度が検知される。これにより、感光体表面全体の温度分布を測定することができる。
【0030】
回転多面鏡24の周囲には、回転多面鏡24を回転可能に支持する軸受24aや、回転多面鏡24の駆動を制御するための制御部24bなどが配置されており、これらが発熱し、赤外光を放射する。
図6(b)に示すように、放射温度センサ30を回転多面鏡24から離れた位置に設置すると、放射温度センサ30の計測エリアが、回転多面鏡24の鏡面よりも広くなる。その結果、回転多面鏡24周囲の発熱源(軸受24a、制御部24b)から放射した赤外光が、放射温度センサ30に入射してしまう。このため、放射温度センサ30の測定結果は、回転多面鏡24で反射された感光体1の赤外光と、回転多面鏡24の鏡面から外れた部分の赤外光との平均的な値となってしまい、測定誤差が発生してしまう。
よって、図6(a)に示すように、放射温度センサ30を回転多面鏡24に近接配置して、放射温度センサ30の計測エリアを、回転多面鏡24の鏡面よりも狭くすることによって、回転多面鏡24周囲の発熱源(軸受24a、制御基板24b)から放射した赤外光が、放射温度センサ30に入射するのが抑制され、精度の高い感光体1表面の温度測定を行うことができる。
【0031】
図7(a)は、放射温度センサ30を回転多面鏡24に近接配置して、計測エリアを狭くした場合を示すものであり、図7(b)は、放射温度センサ30を回転多面鏡24から離して、計測エリアを広くした場合を示すものである。
図7(a)に示すように、計測エリアを狭くすると、感光体1の狭いエリアから放射された赤外光を計測することになり、感光体1の温度を精度よく検知できる。一方、図7(b)に示すように、計測エリアを広くすると、感光体1の広いエリアから放射された赤外光を計測することになる。この場合は、感光体1の広いエリアの平均温度となるので、検知精度が落ちてしまう。よって、放射温度センサ30を回転多面鏡24になるべく近接配置するのが好ましい。
【0032】
また、装置のレイアウトなどにより、放射温度センサ30を回転多面鏡24に近接して設置できない場合がある。この場合は、図8に示すように、回転多面鏡24と放射温度センサ30との間に、内周面が鏡面からなり、筒状の計測範囲制限部材31を、計測範囲を制限するために設ける。この計測範囲制限部材31の放射温度センサ30側の内径は、図9に示すように、放射温度センサ30の計測面30aに合わせ、回転多面鏡24側の内径は、回転多面鏡24の高さ寸法以下にする。但し、回転多面鏡24側の径は、放射温度センサ30側の径と同じか、それよりも大きくする。これは、放射温度センサ30から放射された赤外光が、計測範囲制限部材31の内周面に反射し、放射温度センサ30の計測面30aに入射して、検知されないようにするためである。
このように、計測範囲制限部材31を設けることにより、放射温度センサ30を回転多面鏡24に近接して設置できない場合でも、放射温度センサ30の計測エリアを、回転多面鏡24の鏡面よりも狭くすることができ、放射温度センサ30に感光体1から放射された赤外光以外の赤外光が入射するのを抑制することができる。これにより、感光体1の表面温度を高分解能で計測することができる。
【0033】
また、サーモパイル素子の出力電圧を補正すために、放射温度センサ30に設けられたサーミスタが検知した書込装置3内の雰囲気温度に基づいて、ファン52の回転数を制御してもよい。すなわち、感光体1表面温度検出時以外のときは、サーミスタからの書込装置3内の雰囲気温度に応じた出力信号を常時監視し、このサーミスタからの出力信号に基づいて、ファン52の回転数を制御する。これにより、書込装置3内が高温になるのを抑制することができる。
【0034】
次に、放射温度センサ30を用いて計測した感光体1の温度測定結果に基づく画像形成装置の制御について、実施例を用いて説明する。
【0035】
[実施例1]
実施例1は、放射温度センサ30により得られた、感光体1の表面温度を用い、感光体1の温度を一定の範囲に制御し、画像流れを防止するものである。
この実施例1においては、図10に示すように、感光体の内部に、4つのヒータ41a,41b,41c,41dが、軸方向に直列に配置されている。各ヒータ41a〜41dには、ヒータを制御するためのヒータドライバ42a,42b,42c,42dが接続されている。
熱源制御手段たる制御部40は、メモリやマイクロプロセッサなどを備えており、マイクロプロセッサは、メモリに記憶されたプログラムに基づいて、様々な処理をおこなうものである。制御部40は、各ヒータドライバ42a〜42dに所定のタイミングで、ON/OFF信号を送信し、各ヒータドライバ42a〜42dは、受信した制御信号に基づいて、それぞれ対応するヒータを所定のタイミングでONからOFF、OFFからONに切り替えることで、感光体1表面の温度が基準の温度となるように制御している。
【0036】
図11は、実施例1における制御フロー図である。
装置の電源投入時や、所定枚数印刷後などの所定のタイミングで、感光体表面温度検知モードが実行される。
感光体表面温度検知モードが実行されたら、感光体1および回転多面鏡24を規定の回転数で回転駆動させる(S101)。この実施例1では、図10に示すように、ヒータ41aと対向する箇所X1,ヒータ41bと対向する箇所X2,ヒータ41cと対向する箇所X3,ヒータ41dと対向する箇所X4の軸方向4箇所、放射温度センサ30で検知されるよう、回転多面鏡24の回転速度が調整されている。
【0037】
次に、回転多面鏡24、感光体1が規定の速度で回転駆動したら(S102のYES)、LDから光ビーム21を発射し、光ビーム21が、同期センサ29により検知されてから、所定のタイミングで、放射温度センサ30の温度計測を開始する(S103)。この実施例1では、同期センサ29の検知結果に基づいて、感光体1表面の軸方向X1の位置から放射された赤外光が、放射温度センサ30に入射するタイミングで計測が開始される。そして、X1の位置から放射した赤外光が放射温度センサ30のサーモパイル素子に入射し、サーモパイル素子から入射した赤外光量に応じた出力信号が、制御部40へ送信される。また、放射温度センサ30内に配置されたサーミスタからも、書込装置3内の雰囲気温度に応じた出力信号が、制御部40へ送信される。制御部40は、放射温度センサ30からの2つの出力信号(サーモパイル素子の出力信号と、サーミスタの出力信号)に基づいて、軸方向X1の位置の温度を検知する。制御部40は、軸方向X2の位置から放射された赤外光が放射温度センサ30に入射するタイミングとなったら、放射温度センサ30の出力信号を受信し、2回目の温度計測を行う。これにより、X2の位置の温度が検知される。同様にして、3回目の温度計測により、X3の位置の温度が検知され、4回目の温度計測によりX4の位置の温度が検知される。
【0038】
このような動作が、感光体1周にわたり複数回行われる。そして、制御部40のメモリに記憶されている複数の軸方向X1の位置の温度測定結果から、軸方向X1の位置における平均温度を演算する。同様に、軸方向X2の位置、軸方向X3の位置、軸方向X4の位置における平均温度を演算する。次に、制御部40は、メモリに予め記憶されている基準温度と、軸方向各の位置における平均温度とを比較し、軸方向各の位置における平均温度が、基準温度よりも低いか否かを判定する(S104)。制御部40は、判定結果に基づいて、各ヒータドライバ42a〜42dに制御信号を送信し、各ヒータドライバ42a〜42dは、受信した制御信号に基づき、各ヒータ41a〜41dを制御する(S105、106)。例えば、軸方向X1の平均温度が、基準温度より低かった場合(S104のYES)、ヒータ41aがOFFであれば、ヒータ41aをON(S105)にして、感光体軸方向X1の位置の温度を基準温度に上昇させる。また、温度測定前の制御では、感光体軸方向X1の位置の温度が、基準温度よりも低くなる可能性が高いので、ヒータ41aのON/OFF制御において、ヒータ41aのONの時間を長くしたり、ヒータ41aに印加する電圧を上げたりして、感光体軸方向X1の位置の温度が基準温度に維持されるよう制御条件を変更する。一方、軸方向X1の平均温度が、基準温度より高かった場合(S106のNO)、ヒータ41aがONであれば、ヒータ41aをOFF(S105)にして、感光体軸方向X1の位置の温度を基準温度にまで低下させる。また、温度測定前の制御では、感光体軸方向X1の位置の温度が、基準温度よりも高くなる可能性が高いので、ヒータ41aのON/OFF制御において、ヒータ41aのONの時間を短くしたり、ヒータ41aに印加する電圧を下げたりして、感光体軸方向X1の位置の温度が基準温度に維持されるよう制御条件を変更する。
【0039】
このように、実施例1においては、感光体1軸方向複数の位置で、感光体1の温度が基準温度となるように、制御されるので、感光体1全面にわたり、画像流れを抑制できる。
【0040】
また、紙間のときに感光体表面温度検知モードを実行し、感光体1の軸方向の温度分布を調べてもよい。この場合、感光体1周にわたり温度検知を実行すると、紙間が長くなり、生産性が落ちてしまう。このため、紙間のときは、感光体周方向1箇所の軸方向の温度分布を検知するのが好ましい。また、プリント動作終了後に、感光体1周にわたり温度検知を実行してもよい。紙間で検知した温度分布に基づく各ヒータ41a〜41dの制御は、基準温度より低かった場合、ヒータがOFFであれば、ヒータをONにし、基準温度より高かった場合、ヒータがONであれば、ヒータをOFFにする制御のみにし、プリント動作終了後の温度検知に基づく各ヒータ41a〜41dの制御は、ヒータに印加する電圧を変更したり、ヒータON時間の調整を行ったりする制御にするようにしてもよい。
【0041】
また、上記では、感光体1の内部にヒータ41a〜41dを設けているが、感光体1の外部にヒータを設けてもよい。また、ヒータの数が、4個に限られず、2個以上設けていればよい。
【0042】
[実施例2]
実施例2は、放射温度センサ30により得られた、感光体1の表面温度に基づいて、画像形成条件を制御するものである。
感光体表面温度を一定に制御していない画像形成装置においては、感光体の表面温度の変化によって、最適な画像形成条件が変動する。
よって、感光体表面温度を一定に制御していない画像形成装置においては、感光体表面温度を検知し、検知した感光体1の表面温度に基づいて、画像形成条件を変更するのが好ましい。
【0043】
図12は、実施例2における制御フロー図である。
プリントスタートが指示されると、実施例1と同様、画像形成条件制御手段たる制御部は、感光体1および回転多面鏡24を規定の回転数で回転駆動させ(S201)、感光体1および回転多面鏡24が規定の回転数で回転したら(S202のYES)、放射温度センサ30による温度測定を開始する(S203)。放射温度センサ30による感光体1軸方向の測定箇所は、実施例1と同様、4箇所でもよいし、それよりも多くても、少なくてもよい。また、感光体1周にわたり温度検知を実行してもよいし、感光体周方向1箇所の軸方向の温度分布を検知してもよい。感光体周方向1箇所の軸方向の温度分布を検知するほうが、プリント開始までのお待たせ時間が短くなり、好ましい。
【0044】
次に、放射温度センサ30によって、感光体1の温度を測定したら、測定した温度に基づいて、画像形成条件を決定する(S204)。具体的には、感光体1の各位置の温度測定値から、感光体1の平均温度を演算し、演算した感光体1の平均温度に基づいて、帯電バイアス、転写バイアスを決定する。また、露光量は、感光体軸方向に露光量を変更させることができるので、各位置における温度測定値に基づいて、感光体軸方向各位置の露光量を決定する。
次に、帯電バイアス、転写バイアス、露光量が決定されたら、プリント動作を開始する(S205)。
【0045】
このように、実施例2においては、感光体軸方向複数の位置で、感光体1の温度が測定されるので、精度よく感光体1の温度を得ることができ、適切な画像形成条件で、画像をプリントできる。
【0046】
また、先の図10に示すように、感光体1内部にヒータなどを設けて、感光体表面温度を一定に制御している画像形成装置においても、電源投入直後においては、感光体1の温度が、低いため、電源投入時から感光体の表面温度が基準温度になるまで、プリント開始前に、感光体表面温度を検知し、温度検知結果に基づいて、画像形成条件を変更してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、感光体1、帯電装置2、現像装置4、クリーニング装置6からなる画像形成ユニットがひとつのモノクロ画像形成装置に本発明を適応しているが、これに限られない。例えば、図13に示すような、マゼンタ・シアン・イエロー・ブラックの4つの画像形成ユニットY、C、M、Kを横に並べて配置してタンデム画像形成部を構成するカラー画像形成装置にも本発明を適応できる。このタンデム型画像形成装置には、対向走査型の書込装置3が搭載されており、図14に示すように、回転多面鏡24の近傍には、各色の画像形成ユニットに対応する4つの放射温度センサ30Y,30C,30M,30Kが設けられている。この図は、書込装置3を下から見た図であり、K色の放射温度センサ30Kと、Y色の放射温度センサ30Yとしか図示されてないが、K色の放射温度センサ30Kの上にM色の放射温度センサ30Mが設けられており、Y色の放射温度センサ30Yの上にC色の放射温度センサ30Cが設けられている。
【0048】
定着装置からの距離や、モータからの距離が、感光体毎に異なるため、感光体1の表面温度も、感光体毎に異なる。よって、各感光体1Y,1C,1M,1Kの表面温度をそれぞれの放射温度センサ30Y,30C,30M,30Kで計測し、各放射温度センサ30Y〜30Kで検知した感光体表面に基づき、上述した実施例1や実施例2の制御を行うことで、良好なカラー画像を得ることができる。
【0049】
また、本実施形態においては、感光体1から放射される赤外光検知する素子として、サーモパイル素子を用いたが、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの量子型赤外センサを用いてもよい。
【0050】
次に、本発明を適用した温度測定装置について説明する。
図15は、温度測定装置200の概略構成図である。図に示すように、温度測定装置200は、赤外光を検知する赤外センサ202と、反射鏡201とを備えている。反射鏡201は、装置の筐体に回転自在に支持されている。また、反射鏡201の鏡面と反対側の面には、反射鏡201を回動させるアクチュエータなどの不図示の回動手段が設けられている。
【0051】
この温度測定装置200を用いて、温度測定対象物203の幅方向の温度分布を測定するときは、反射鏡201を図中反時計回りに回転させる。すると、反射鏡201に反射して、赤外センサ202に入射する温度測定対象物203から放射される赤外光の位置が図中左端から図中右方向へ刻々と変化する。温度測定装置200内の不図示の演算部は、赤外センサ202の出力値に基づいて、温度測定対象物203の各位置の温度を演算する。これにより、温度測定対象物203の幅方向の温度分布を測定することができる。また、温度測定対象物203を、温度測定装置200の走査方向(図中左右方向)に対して直交し、かつ、温度測定装置200に対して平行な方向に移動せしめながら、温度測定を行うことで、温度測定対象物203全体の温度分布を検知することができる。
【0052】
以上、本実施形態の画像形成装置によれば、像担持体たる感光体1と、光源たるレーザーダイオード(LD)と回転多面鏡24とを備え、LDからの光を回転多面鏡24によって像担持体たる感光体1上に走査することによって感光体1上に潜像を書込む書込装置3を備えている。書込装置3内には、感光体1から放射された赤外光のうち回転多面鏡24に反射した赤外光を検出して、感光体表面の温度を測定する温度測定手段たる放射温度センサ30を備えている。回転多面鏡24を回転させることによって、回転多面鏡24に反射して、放射温度センサ30に入射する赤外光の感光体表面における放射位置が刻々と変化していく。従って、回転多面鏡24を回転させながら、放射温度センサ30で感光体1表面温度を検知することによって、感光体1軸方向の温度分布を検知することができる。このように、ひとつの温度センサで、感光体軸方向の温度分布を検知することができ、複数の温度センサを用いて感光体軸方向の温度分布を検知するものに比べて、装置のコストを安価にすることができる。また、書込装置3内に放射温度センサ30を設けるので、放射温度センサ30のレンズにトナーなどが付着するのを抑制することができ、経時にわたり良好な温度検知を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態の画像形成装置によれば、放射温度センサ30の応答速度に基づいて、回転多面鏡24を回転させるので、放射温度センサ30の出力変化を入射する赤外光量の変化に対応させることができ、測定誤差を少なくすることができる。また、測定時間が長くなりすぎるのを抑制することができる。
【0054】
また、実施例1によれば、図10に示すように、感光体1の内部に軸方向に複数の熱源たるヒータ41a〜41dが設けられており、放射温度センサ30で測定した感光体1上の軸方向複数箇所の温度に基づいて、各ヒータ41a〜41dを制御する熱源制御手段たる制御部40を備えている。これにより、感光体1の表面温度を軸方向で所定範囲に収めることができ、画像流れを抑制することができる。また、適切な温度制御が行うことができるので、消費電力を抑制することができる。
【0055】
また、実施例2によれば、放射温度センサ30で測定した感光体上の軸方向複数箇所の温度に基づいて、画像形成条件を制御する画像形成条件制御手段たる制御部を備えている。これにより、適切な画像形成条件で、画像をプリントできる。
【0056】
また、感光体1を回転させながら、感光体上の軸方向複数箇所の温度を複数回測定することによって、感光体表面全体の温度分布を検知することができる。
【0057】
また、回転多面鏡24の鏡面よりも、鏡面の位置での放射温度センサ30の測定範囲が狭くなるよう構成したので、放射温度センサ30に感光体表面から放射した赤外光以外の赤外光が入射するのを抑制することができ、精度よく感光体表面の温度を検知することができる。
【0058】
また、放射温度センサ30は、少なくともサーモパイル素子を備える。これにより、感光体1から放射された赤外光量から、感光体表面の温度を検知することができる。また、サーモパイル素子は、応答速度が数ミリ秒〜数十ミリ秒と高速なので、回転多面鏡24の回転速度を速くしても、放射温度センサ30の出力変化を入射する赤外光量の変化に対応させることができる。これにより、感光体1の温度測定時間を短くすることができる。
【0059】
また、放射温度センサ30が備えるサーモパイル素子の冷接点の温度補償を行うための放射温度センサ30の周囲温度を検知する内部温度検知手段たるサーミスタが検知した放射温度センサ30の周囲温度に基づいて、書込装置3を冷却する冷却手段(外装ケース50と吸気通路51とファン52とで構成)を制御する。これにより、冷却手段を制御するための温度センサを設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
【0060】
また、本実施形態の温度測定装置200は、温度検知対象物203から放射された赤外光を反射する反射鏡201と、反射鏡201から反射された赤外光を検出して、温度検知対象物203の温度を検知する温度検知手段(赤外センサ202と制御部)とを備えている。そして、本実施形態の温度測定装置200は、反射鏡201を回動させる回動手段を備え、回動手段により反射鏡201を回動させることで、温度検知対象物203の温度検知箇所を変更する。これにより、ひとつのセンサで温度検知対象物203の一方向の温度分布を検知することができ、複数の温度センサを温度検知対象物203の一方向に配置し、各温度センサで各位置の温度を測定して温度検知対象物203の温度分布を検知するものに比べて、装置のコストアップを抑えることが可能となる。
【0061】
また、反射鏡201で反射した温度検知対象物203から放射された赤外光を検出して、温度を検知する第1ステップと、上記反射鏡201を所定角度回動させる第2ステップとを、繰り返し実施して温度検知対象物203の幅方向の温度分布を測定することで、ひとつのセンサで温度検知対象物203の一方向の温度分布を検知することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:感光体
3:書込装置
20:光源ユニット
21:光ビーム
24:回転多面鏡
30:放射温度センサ
31:計測範囲制限部材
40:制御部
41a,41b,41c,41d:ヒータ
50:外装ケース
52:ファン
200:温度測定装置
201:反射鏡
202:赤外センサ
203:温度測定対象物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2007−156179号公報
【特許文献2】特開2006−106709号公報
【特許文献3】特開2008−287220号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
光源と、回転多面鏡とを備え、上記光源からの光を上記回転多面鏡によって上記像担持体上に走査することによって像担持体上に潜像を書込む書込装置とを備えた画像形成装置において、
上記書込装置内に、上記像担持体から放射された赤外光のうち上記回転多面鏡に反射した赤外光を検出して、像担持体表面の温度を測定する温度測定手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記温度測定手段の応答速度に基づいて、回転多面鏡を回転させ、像担持体上の軸方向複数箇所の温度を測定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
上記像担持体の内部に軸方向に複数の熱源が設けられており、
上記温度測定手段で測定した像担持体上の軸方向複数箇所の温度に基づいて、各熱源を制御する熱源制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2または3の画像形成装置において、
上記温度測定手段で測定した像担持体上の軸方向複数箇所の温度に基づいて、画像形成条件を制御する画像形成条件制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項2乃至5いずれかの画像形成装置において、
上記像担持体を回転させながら、像担持体周方向異なる位置の軸方向複数箇所の温度を測定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかの画像形成装置において、
上記回転多面鏡の鏡面の位置における上記温度測定手段の測定範囲が、上記回転多面鏡の鏡面よりも狭くなるよう構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかの画像形成装置において、
上記温度測定手段は、少なくともサーモパイル素子を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7の画像形成装置において、
上記温度測定手段は、該温度測定手段の周囲温度を検知するための内部温度検知手段を備え、該内部温度検知手段が検知した上記温度測定手段の周囲温度に基づいて、上記サーモパイル素子の冷接点の温度補償を行うものであり、
上記書込装置内部を冷却する冷却手段と、
上記冷却手段を、上記内部温度検知手段が検知した上記温度測定手段の周囲温度に基づき制御する制御手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
温度検知対象物から放射された赤外光を反射する反射鏡と、該反射鏡から反射された赤外光を検出して、温度検知対象物の温度を検知する温度検知手段とを備えた温度測定装置において、
上記反射鏡を回動させる回動手段を備え、該回動手段で上記反射鏡を回動させることで温度検知対象物の温度検知箇所を変更することを特徴とする温度測定装置。
【請求項10】
温度検知対象物の幅方向の温度分布を測定する温度測定方法において、
反射鏡で反射した温度検知対象物から放射された赤外光を検出して、温度を検知する第1ステップと、上記反射鏡を所定角度回動させる第2ステップとを、繰り返し実施して温度検知対象物の幅方向の温度分布を測定する温度測定方法。
【請求項11】
請求項10の温度測定方法において、
上記温度検知対象物が、像担持体であることを特徴とする温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−123332(P2011−123332A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281417(P2009−281417)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】