説明

画像形成装置、画像処理方法及び画像形成装置の制御プログラム

【課題】地紋印刷の実効性を損なうことなく、ユーザによる設定変更を可能とすること。
【解決手段】画像形成出力における出力対象の画像に地紋を重畳して出力する機能を有する画像形成装置であって、地紋の重畳に関するパラメータを設定する設定項目について、管理者によって設定された本体設定値を記憶媒体に記憶し、設定項目について、ユーザによって設定されたユーザ設定値を記憶媒体に記憶し、設定項目夫々について、本体設定値とユーザ設定値とのいずれを適用するかが指定された設定値取得先テーブルに基づき、設定項目夫々の設定値としていずれかを取得し、プリントエンジンが出力を実行するための画像であって設定値に従って出力対象の画像に地紋が重畳された画像である描画情報を生成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像処理方法及び画像形成装置の制御プログラムに関し、特に、出力された用紙のセキュリティを高めるための地紋印刷の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化が推進される傾向にあり、電子化された情報の出力に用いられるプリンタやファクシミリ及び書類の電子化に用いるスキャナ等の画像処理装置は欠かせない機器となっている。このような画像処理装置は、撮像機能、画像形成機能及び通信機能等を備えることにより、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ、複写機として利用可能な複合機として構成されることが多い。
【0003】
このような画像処理装置のうち、電子化された情報の出力に用いられるプリンタにおいては、偽造防止や情報漏洩の防止のため、印刷出力の画像に特定のドットパターンや画像パターンを重畳する地紋印刷という技術がある。このような地紋印刷によってパターンが重畳されて出力された用紙は、パターンの内容により、対応した機器でのコピーの際にパターンを検知してコピーを禁止する機能を実現することができる。
【0004】
また、特別な機能に対応していない一般的なコピー機でコピーした場合であっても、パターンの認識率の違いから、複製された用紙には特定の文字列が浮かび上がって表示され、コピーした文書であることを明確にする不正コピー抑止機能を実現することができる。
【0005】
このような地紋印刷技術の一態様として、ユーザの恣意によらず印刷の実行毎に適切な地紋印刷の設定を行うことを目的として、印刷ジョブを発行したユーザに基づいて重畳する地紋の内容を判断する方法が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような地紋印刷技術を確実に機能させるためには、画像形成装置に入力された印刷ジョブについては必ず地紋が重畳されるように画像形成装置を設定し、且つその設定については管理者等の強い権限を有するユーザのみが変更可能なように設定することとなる。その場合、一般権限のユーザは地紋印刷についての設定を変更することができないため、地紋として重畳される文字列を変更することも不可能となる。他方、ユーザによる自由な設定変更を可能とすると、地紋印刷そのものを無効とされる場合があり、地紋印刷の実効性が損なわれる。
【0007】
地紋印刷の利用態様として、例えば社内向けの文書と社外向けの文書とで、地紋として重畳される文字列を変更する場合がある。例えば、社内向けの場合は“コピー禁止”といった文字列を重畳し、社外向けの場合は出力日時及び出力者の名前を重畳するような場合である。しかしながら、上述したように、管理者等の強い権限を有するユーザのみが設定を変更可能である場合、このような配布先に応じた文字列の変更は一般権限のユーザには不可能であり、その都度管理者に設定変更を要請する必要があるため、ユーザの利便性が損なわれてしまう。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、地紋印刷の実効性を損なうことなく、ユーザによる設定変更を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、画像形成出力における出力対象の画像にパターンを重畳して出力する機能を有する画像形成装置であって、前記パターンの重畳に関するパラメータを設定する設定項目について、管理者によって設定された本体設定値を記憶する本体設定記憶部と、前記設定項目について、ユーザによって設定されたユーザ設定値を取得するユーザ設定記憶部と、前記設定項目夫々について、前記本体設定値と前記ユーザ設定値とのいずれを適用するかが指定された設定値取得先テーブルに基づき、前記設定項目夫々の設定値として前記本体設定値及び前記ユーザ設定値のいずれかを取得するパターン設定取得部と、画像形成出力を実行する画像形成部が画像形成出力を実行するための画像であって前記取得された設定値に従って出力対象の画像にパターンが重畳された画像である描画情報を生成する描画情報生成部とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の態様は、画像形成出力における出力対象の画像にパターンを重畳して出力する機能を有する画像形成装置における画像処理方法であって、前記パターンの重畳に関するパラメータを設定する設定項目について、管理者によって設定された本体設定値を記憶媒体に記憶し、前記設定項目について、ユーザによって設定されたユーザ設定値を記憶媒体に記憶し、前記設定項目夫々について、前記本体設定値と前記ユーザ設定値とのいずれを適用するかが指定された設定値取得先テーブルに基づき、前記設定項目夫々の設定値として前記本体設定値及び前記ユーザ設定値のいずれかを取得し、画像形成出力を実行する画像形成部が画像形成出力を実行するための画像であって前記取得された設定値に従って出力対象の画像にパターンが重畳された画像である描画情報を生成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の更に他の態様は、画像形成出力における出力対象の画像にパターンを重畳して出力する機能を有する画像形成装置の制御プログラムであって、前記パターンの重畳に関するパラメータを設定する設定項目について、管理者によって設定された本体設定値を記憶媒体に記憶ステップと、前記設定項目について、ユーザによって設定されたユーザ設定値を記憶媒体に記憶するステップと、前記設定項目夫々について、前記本体設定値と前記ユーザ設定値とのいずれを適用するかが指定された設定値取得先テーブルに基づき、前記設定項目夫々の設定値として前記本体設定値及び前記ユーザ設定値のいずれかを取得するステップと、画像形成出力を実行する画像形成部が画像形成出力を実行するための画像であって前記取得された設定値に従って出力対象の画像にパターンが重畳された画像である描画情報を生成するステップとを画像形成装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地紋印刷の実効性を損なうことなく、ユーザによる設定変更を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の運用形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る地紋印刷の設定項目を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る設定値取得先テーブルを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る設定テーブルを示す図である。
【図7】従来技術に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態においては、画像形成装置の例として、地紋印刷機能を有する画像形成装置について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置1の運用形態を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、ネットワークを介してホスト装置であるクライアント端末2に接続されて運用される。本実施形態に係る画像形成装置1は、撮像機能、画像形成機能及び通信機能等を備えることにより、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ、複写機として利用可能なMFP(MultiFunction Peripheral:複合機)である。本実施形態において、画像形成装置1は、クライアント端末2から受信した印刷ジョブに基づいて画像形成出力を実行する。クライアント端末2は、ユーザが操作する情報処理端末であり、PC(Personal Computer)等の情報処理装置によって実現される。
【0016】
次に、本実施形態に係る画像形成装置1及びクライアント端末2のハードウェア構成について図2を参照して説明する。尚、画像形成装置1は、図2に示すハードウェア構成に加えて、スキャナ、プリンタ等を実現するためのエンジンを備える。以下の説明においては、画像形成装置1のハードウェア構成を例として説明するが、クライアント端末2についても同様である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、一般的なサーバやPC等と同様の構成を含む。即ち、本実施形態に係る画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40及びI/F50がバス80を介して接続されている。また、I/F50にはLCD(Liquid Crystal Display)60及び操作部70が接続されている。
【0018】
CPU10は演算手段であり、画像形成装置1全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納される。
【0019】
I/F50は、バス80と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD60は、ユーザが画像形成装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部70は、キーボードやマウス等、ユーザが画像形成装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0020】
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD40若しくは図示しない光学ディスク等の記憶媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10がRAM20に読み出されたプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る画像形成装置1及びクライアント端末2の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0021】
次に、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、コントローラ100、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)101、スキャナユニット102、排紙トレイ103、ディスプレイパネル104、給紙テーブル105、プリントエンジン106、排紙トレイ107及びネットワークI/F108を有する。
【0022】
また、コントローラ100は、主制御部110、エンジン制御部120、画像処理部130、操作表示制御部140及び入出力制御部150を含む。図3に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、スキャナユニット102、プリントエンジン106を有する複合機として構成されている。尚、図3においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。
【0023】
ディスプレイパネル104は、画像形成装置1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが画像形成装置1を直接操作し、若しくは画像形成装置1に対して情報を入力する際の入力インタフェースでもある。即ち、ディスプレイパネル104は、ユーザによる操作を受けるための画像を表示する機能を含む。ディスプレイパネル104は、図2に示すLCD60及び操作部70によって実現される。本実施形態において、ユーザは、ディスプレイパネル104を操作してジョブ管理サーバ3に格納された印刷ジョブの選択及び取得を指示する。
【0024】
ネットワークI/F108は、画像形成装置1がネットワークを介してクライアント端末2等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。ネットワークI/F108は、図2に示すI/F50によって実現される。
【0025】
コントローラ100は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM30や不揮発性メモリ並びにHDD40や光学ディスク等の不揮発性記憶媒体に格納されたプログラムが、RAM20等の揮発性メモリ(以下、メモリ)にロードされ、CPU10がそのプログラムに従って演算を行うことにより構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ100が構成される。コントローラ100は、画像形成装置1全体を制御する制御部として機能する。
【0026】
主制御部110は、コントローラ100に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ100の各部に命令を与える。エンジン制御部120は、プリントエンジン106やスキャナユニット102等を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担う。画像処理部130は、主制御部110の制御に従い、印刷出力すべき画像情報に基づいて描画情報を生成する。この描画情報とは、画像形成部であるプリントエンジン106が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。
【0027】
また、画像処理部130は、スキャナユニット102から入力される撮像データを処理し、画像データを生成する。この画像データとは、スキャナ動作の結果物として画像形成装置1の記憶領域に格納され若しくはネットワークI/F108を介して他の情報処理端末や記憶装置に送信される情報である。
【0028】
操作表示制御部140は、ディスプレイパネル104に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル104を介して入力された情報を主制御部110に通知する。入出力制御部150は、ネットワークI/F108を介して入力される情報を主制御部110に入力する。また、主制御部110は、入出力制御部150を制御し、ネットワークI/F108及びネットワークを介してクライアント端末2等の他の機器にアクセスする。
【0029】
画像形成装置1がプリンタとして動作する場合は、まず、入出力制御部150がネットワークI/F108を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部150は、受信した印刷ジョブを主制御部110に転送する。主制御部110は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部130を制御して印刷ジョブに含まれる文書情報若しくは画像情報に基づいて描画情報を生成させる。
【0030】
印刷ジョブに含まれる文書情報や画像情報は、例えば、PDL(Page Description Language)という情報形式である。画像処理部130は、PDL形式の情報に基づき、エンジン制御部120がプリントエンジン106に出力を実行させるための描画情報であるビットマップ形式の情報を生成する。また、この際、画像処理部130は、PJL(Print Job Language)という情報形式で記述された印刷に関する設定に基づいて処理を行う。
【0031】
画像処理部130によって描画情報が生成されると、エンジン制御部120は、プリントエンジン106を制御し、上記生成された描画情報に基づき、給紙テーブル105から搬送される用紙に対して画像形成を実行させる。即ち、画像処理部130、エンジン制御部120及びプリントエンジン106が画像形成出力部として機能する。プリントエンジン106の具体的態様としては、インクジェット方式による画像形成機構や電子写真方式による画像形成機構等を用いることが可能である。プリントエンジン106によって画像形成が施された文書は排紙トレイ107に排紙される。
【0032】
このような画像形成装置1において、本実施形態に係る要旨は、クライアント端末2から印刷ジョブを受信して出力を実行する際の地紋印刷の設定、即ち、出力対象の画像に重畳されるパターンの設定に関する。以下、本実施形態に係る地紋印刷の設定の詳細について説明する。本実施形態に係る画像形成装置1においては、ユーザがクライアント端末2において印刷ジョブを送信する際、地紋印刷に関する各設定項目の値を選択して印刷ジョブに含めることが可能である。また、画像形成装置1の主制御部110には、管理者によって設定された地紋印刷に関する各設定項目が格納されている。図4は、本実施形態に係る画像形成装置1において設定可能な地紋印刷の設定項目を示す図である。
【0033】
図4に示す各設定項目は、画像形成装置1の管理者がディスプレイパネル104を操作することにより設定値が入力若しくは選択され、その設定値が主制御部110に格納されることにより設定される。このようにして画像形成装置1に設定された地紋印刷の設定項目の設定値と、印刷ジョブ毎にユーザによって設定された地紋印刷の設定項目の設定値とのいずれを適用するか、即ち、地紋印刷の設定値の取得先を指定するモード(以降、取得先指定モードとする)として、本実施形態に係る画像形成装置1は、“管理者設定強制モード”、“ホスト設定優先モード”、“ホスト設定一部優先モード”の3つのモードを有する。この地紋印刷の取得先指定モードは、画像形成装置1の管理者によってのみ選択され、その設定モードが主制御部110に格納されている。即ち、取得先指定モードは、クライアント端末2から設定することは不可能な値である。
【0034】
本実施形態に係る画像処理部130は、図4に示すような各設定項目に応じて、地紋の重畳処理を含む描画情報の生成処理を実行する。そして、画像処理部130は、図4に示すような各設定項目の夫々について、上述した3つの取得先指定モードに応じて印刷ジョブに含まれる設定値(以降、ホスト設定とする)と管理者による設定値(以降、本体設定とする)とのいずれを適用するか決定する。そのため、画像処理部130は、図5に示すように、3つの取得先指定モードそれぞれについて設定項目毎にホスト設定と本体設定とのいずれを適用するかを示す設定値取得先テーブルを記憶している。尚、上記ホスト設定とは、上述したようにユーザによって設定された値であり、ユーザ設定ということもできる。
【0035】
図5に示すように、“管理者設定強制モード”は、全ての設定項目について、画像形成装置1の主制御部110に記憶されている本体設定を強制的に適用するモードであり、印刷ジョブに含まれるホスト設定はすべて無視される。また、“ホスト設定優先モード”は、全ての設定項目について、印刷ジョブに含まれるホスト設定を優先的に適用するモードであり、地紋印刷の各項目についてホスト設定がある場合は、ホスト設定が優先的に適用され、ホスト設定が無い項目は本体設定が適用される。
【0036】
また、“ホスト設定一部優先モード”は、本実施形態の要旨に係るモードであり、地紋印刷に関する設定項目の一部は本体設定を強制的に適用し、残りの部分はホスト設定を優先するモードである。本実施形態に係る“ホスト設定一部優先モード”においては、図5に示すように、“地紋印刷要否”、“地紋印刷の種類”、“地紋パターンの色”、“地紋パターンの濃度”について本体設定が強制され、“地紋マスクパターンの種類”、“抑止文字列の内容”、“抑止文字列の大きさ”、“抑止文字列の回転角度”について、ホスト設定が優先される。
【0037】
尚、図5に示す設定値取得先テーブルは画像処理部130が項目毎の設定値の取得先を決定するために用いるものであるため、上述したように画像処理部130に格納されているが、主制御部110や他のブロックに格納され、画像処理部130がそのブロックに格納されているテーブルを参照する形式であっても良い。
【0038】
主制御部110は、図4に示すような各設定項目について、管理者によって設定された本体設定と印刷ジョブにおいて指定されたホスト設定とを保持する設定値テーブルを記憶している。図6に設定値テーブルの例を示す。図6に示すように、設定値テーブルにおいては、地紋印刷の設定項目毎に“本体設定値”と“ホスト設定値”とが関連付けられている。即ち、即ち、主制御部110が、本体設定記憶部及びユーザ設定記憶部として機能する。
【0039】
図6に示す“本体設定値”は、画像形成装置1の起動時やディスプレイパネル104を介した設定変更の発生時に、主制御部110が設定を更新して保存する。これらの値は、画像形成装置1の電源OFF時には、NVRAM(Non Volatile RAM)等の不揮発性記憶媒体に格納され、起動時にRAM20に読み出されることによって図6に示すようなテーブルが構成される。
【0040】
図6に示す“ホスト設値定”は、画像形成装置1が印刷ジョブを受ける前の状態では空欄、即ちNull値である。主制御部110は、入出力制御部150から印刷ジョブを取得すると、その印刷ジョブに含まれるホスト設定を取得して図6に示す“ホスト設定値”を更新する。尚、画像形成装置1の起動時に“本体設定値”の値を“ホスト設定値”の値にコピーしておいても良い。
【0041】
印刷ジョブに含まれる地紋印刷に係る設定値を設定値テーブルに反映する方法として、例えば、主制御部110が、PJLで記述された設定値を取得し、画像処理部130に描画情報の生成処理を実行させる前にPJLに含まれる設定値の値を設定値テーブルに反映する方法がある。また、設定内容に関してはクライアント端末2からの変更が不可能に設定されている項目も有り得る。このような項目について、主制御部110は、印刷ジョブに含まれる設定値を無視する。
【0042】
画像処理部130は、印刷ジョブに含まれるPDL形式の情報に基づき、主制御部110の制御に従って描画情報を生成する際、主制御部110から取得先指定モードを取得し、その取得先指定モードに従って図5の設定値取得先テーブルを参照し、地紋印刷の各設定値の取得先を確認する。即ち、画像処理部130が、モード判別部として機能する。そして、画像処理部130は、確認した設定値の取得先に従い、図6に示すように主制御部110に格納されている設定値テーブルから各設定項目の設定値を取得する。即ち、画像処理部130が、パターン設定取得部として機能する。
【0043】
例えば、取得先指定モードが“ホスト設定一部優先モード”であれば、画像処理部130は、図5に示す“ホスト設定一部優先モード”の値に従い、“地紋印刷要否”、“地紋印刷の種類”、“地紋パターンの色”、“地紋パターンの濃度”は、“本体設定”を取得し、“地紋マスクパターンの種類”、“抑止文字列の内容”、“抑止文字列の大きさ”、“抑止文字列の回転角度”は、“ホスト設定”を取得する。
【0044】
また、取得先指定モードが“管理者設定強制モード”であれば、画像処理部130は、全ての設定項目について“本体設定”を取得する。そして、“ホスト設定優先モード”であれば、画像処理部130は、全ての設定項目について、先ず“ホスト設定”の値があるか否か確認し、“ホスト設定”があればその値を、“ホスト設定”がなければ“本体設定”の値を取得する。
【0045】
図6の例の場合、画像処理部130は、“抑止文字列の内容”として、“管理者設定強制モード”であれば、“DO NOT COPY”を取得し、“ホスト設定優先モード”、“ホスト設定一部優先モード”であれば、“Document Created by ABC corp”を取得する。
【0046】
次に、本実施形態に係る画像形成装置1において印刷ジョブが入力された際の主制御部110及び画像処理部130の動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。上述したように、主制御部110は入出力制御部150を介して印刷ジョブを取得すると、描画情報を生成させるために画像処理部130を制御する。画像処理部130は、主制御部110の制御に従って動作を開始すると、先ず図5において説明した設定値取得先テーブルをロードし(S701)、続いて主制御部110から取得先指定モードを取得する(S702)。
【0047】
次に、画像処理部130は、地紋設定の各項目について、取得した取得先指定モードに従い、設定値取得先テーブルに基づいて設定値の取得先を確認する(S703)。S703の確認の結果、その設定項目についての設定値の取得先が“本体設定を強制”であれば(S704/YES)、画像処理部130は、主制御部110において図6に示す設定値テーブルによって保持されている値から、“本体設定値”を取得する(S706)。
【0048】
他方、S703の確認の結果、“ホスト設定を優先”であれば(S704/NO)、画像処理部130は、確認中の設定項目について、主制御部110の設定値テーブルの“ホスト設定値”に値が設定されているか否か確認する(S705)。S705の確認の結果、値が設定されていなければ(S705/NO)、画像処理部130は、“本体設定値”を取得し、値が設定されていれば(S705/YES)、“ホスト設定値”を取得する(S707)。
【0049】
画像処理部130は、S704からS706、S707いずれかまでの処理を、地紋設定の設定項目全てについて繰り返し(S708/NO)、全ての設定項目について完了すると(S708/YES)、取得した設定項目毎の設定値に従って地紋処理を実行する(S709)。即ち、画像処理部130が、描画情報生成部として機能する。このような処理により、画像形成出力に際しての地紋処理が完了する。
【0050】
S709における地紋処理は、既知の様々な方法を適用可能であり、詳細な説明を省略するが、取得した設定値に従ってPDL形式の情報を修正した上で、修正後のPDL形式の情報に従って通常と同様に描画情報の生成を実行する方法や、PDL形式の情報に基づいて描画情報を生成する際に、取得した設定値を参照して地紋の重畳された描画情報を生成する方法等が考えられる。
【0051】
このように、本実施形態に係る画像処理部130は、地紋印刷の設定項目それぞれについて、“本体設定値”を適用するか“ホスト設定値”を適用するかが、モード毎に設定された設定値取得先テーブルを記憶している。そして、主制御部110において設定されている画像形成装置1のモードに従い、それぞれの設定項目について“本体設定値”を適用するか“ホスト設定値”を適用するか判断する。
【0052】
このため、例えば、“地紋印刷要否”、“地紋印刷の種類”、“地紋パターンの色”、“地紋パターンの濃度”については“本体設定を強制”とすることにより、地紋印刷が実行されること及び地紋が重畳される濃度や範囲については画像形成装置1の管理者が指定した設定を強制的に適用することが可能である。
【0053】
他方、“地紋マスクパターンの種類”、“抑止文字列の内容”、“抑止文字列の大きさ”、“抑止文字列の回転角度”については、“ホスト設定を優先”とすることにより、地紋として重畳される文字列の内容やより詳細な地紋の重畳態様については各ユーザが自由に設定した内容を適用することが可能である。従って、本実施形態に係る画像形成装置1においては、地紋印刷の実効性を損なうことなく、ユーザによる設定変更を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 画像形成装置
2 クライアント端末
10 CPU
20 RAM
30 ROM
40 HDD
50 I/F
60 LCD
70 操作部
80 バス
100 コントローラ
101 ADF
102 スキャナユニット
103 排紙トレイ
104 ディスプレイパネル
105 給紙テーブル
106 プリントエンジン
107 排紙トレイ
108 ネットワークI/F
110 主制御部
120 エンジン制御部
130 画像処理部
140 操作表示制御部
150 入出力制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2007−179532号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成出力における出力対象の画像にパターンを重畳して出力する機能を有する画像形成装置であって、
前記パターンの重畳に関するパラメータを設定する設定項目について、管理者によって設定された本体設定値を記憶する本体設定記憶部と、
前記設定項目について、ユーザによって設定されたユーザ設定値を取得するユーザ設定記憶部と、
前記設定項目夫々について、前記本体設定値と前記ユーザ設定値とのいずれを適用するかが指定された設定値取得先テーブルに基づき、前記設定項目夫々の設定値として前記本体設定値及び前記ユーザ設定値のいずれかを取得するパターン設定取得部と、
画像形成出力を実行する画像形成部が画像形成出力を実行するための画像であって前記取得された設定値に従って出力対象の画像にパターンが重畳された画像である描画情報を生成する描画情報生成部とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記設定項目夫々の設定値の取得先を指定するモードを判別するモード判別部を含み、
前記設定値取得先テーブルは、前記設定項目夫々について前記本体設定値と前記ユーザ設定値とのいずれを適用するかが、複数のモード毎に指定されたテーブルであり、
前記設定取得部は、前記判別されたモードに応じて、前記設定値取得先テーブルにおいて設定項目毎に指定された取得先から前記設定項目夫々の設定値を取得することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記設定項目として、少なくとも前記パターンの重畳の要否及び前記パターンの内容を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定項目として、前記パターンとして重畳される文字列の内容を含むことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成出力における出力対象の画像にパターンを重畳して出力する機能を有する画像形成装置における画像処理方法であって、
前記パターンの重畳に関するパラメータを設定する設定項目について、管理者によって設定された本体設定値を記憶媒体に記憶し、
前記設定項目について、ユーザによって設定されたユーザ設定値を記憶媒体に記憶し、
前記設定項目夫々について、前記本体設定値と前記ユーザ設定値とのいずれを適用するかが指定された設定値取得先テーブルに基づき、前記設定項目夫々の設定値として前記本体設定値及び前記ユーザ設定値のいずれかを取得し、
画像形成出力を実行する画像形成部が画像形成出力を実行するための画像であって前記取得された設定値に従って出力対象の画像にパターンが重畳された画像である描画情報を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
画像形成出力における出力対象の画像にパターンを重畳して出力する機能を有する画像形成装置の制御プログラムであって、
前記パターンの重畳に関するパラメータを設定する設定項目について、管理者によって設定された本体設定値を記憶媒体に記憶ステップと、
前記設定項目について、ユーザによって設定されたユーザ設定値を記憶媒体に記憶するステップと、
前記設定項目夫々について、前記本体設定値と前記ユーザ設定値とのいずれを適用するかが指定された設定値取得先テーブルに基づき、前記設定項目夫々の設定値として前記本体設定値及び前記ユーザ設定値のいずれかを取得するステップと、
画像形成出力を実行する画像形成部が画像形成出力を実行するための画像であって前記取得された設定値に従って出力対象の画像にパターンが重畳された画像である描画情報を生成するステップとを画像形成装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−25384(P2013−25384A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156898(P2011−156898)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】