説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して画像形成を行う画像形成装置であって、ヘッドからの記録液の吐出性能を担保しつつ、記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも記録液の電気分解を担保して滲みを抑制する画像形成装置、画像形成方法の提供。
【解決手段】駆動信号に応じてヘッド61Y、M、C、BK(以下、ヘッド61)のノズル61bから吐出された導電性の記録液を付与される、表面が導電性の中間転写体37と、ヘッド61から吐出されヘッド61と中間転写体37との間をブリッジした状態の記録液を電気分解するための中間転写体37とヘッド61との間の電圧印加を行う電圧印加手段33と、かかる状態においてメニスカスの位置がノズル61bの外側に位置するように記録液を吐出させる駆動信号を生成する制御手段40とを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドによりインク等の記録液を中間転写体に付与して画像形成を行うインクジェット方式の画像形成装置、これを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピエゾ方式に代表される可動アクチュエータ方式、サーマル方式に代表される加熱膜沸騰方式等により、複数の微小ノズルからインク等の記録液を液滴化して吐出するヘッド(たとえば、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕参照)を備え、インクジェット記録を行うインクジェットプリンタ等のインクジェット方式の画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献3〕〜〔特許文献5〕参照)。
【0003】
インクジェット方式において、ヘッドから記録紙等の被記録材に記録液を直接吐出する構成では、ヘッドと被記録材とが近接するため、被記録材に付着している紙粉、埃等がノズルに付着しやすい。紙粉等がノズルに付着すると、ノズルから吐出される液滴の飛翔方向が乱れたり、ノズルが閉塞したりして、画像品質や信頼性が低下する。このような問題を回避するための方策としては、ノズルからの吐出安定性を優先し、粘度が小さい記録液を使用するのが一般的であるが、粘度が小さい記録液は、被記録材に着弾する際に滲みが発生しやすい。
【0004】
そこで、ヘッドから吐出された記録液を担持する中間転写体を備え、中間転写体に画像を形成した後、被記録材に転写する画像形成装置が提案されている(たとえば、〔特許文献3〕〜〔特許文献5〕参照)。
【0005】
また、このように中間転写体を備えた画像形成装置において、滲みをさらに減じるために、記録液をpH変化させるための処理液を中間転写体に付与する処理液付与部を備えた画像形成装置が提案されている(たとえば、〔特許文献3〕参照)。この画像形成装置では、記録液は、少なくとも顔料及びポリマー微粒子が水及び水溶性溶媒からなる媒体に分散されており、顔料及びポリマー微粒子は、pHを変化させることにより凝集する。
【0006】
また、中間転写体を備えた画像形成装置において、滲みを減じるために、記録液を吸収する粉末を予め中間転写体上に付着させておく画像形成装置が提案されている(たとえば、〔特許文献4〕参照)。
【0007】
さらに、中間転写体を備えた画像形成装置において、滲み対策として、ノズルと中間転写体との間に導電性の記録液の液柱のブリッジを一時的に形成させ、液柱のブリッジに含まれる水が電気分解されるように電位を印加する画像形成装置が提案されている(たとえば、〔特許文献5〕参照)。
【0008】
しかしながら、処理液あるいは粉末を中間転写体に付与する画像形成装置(たとえば、〔特許文献3〕、〔特許文献4〕参照)は、処理液あるいは粉末の付与により、印刷速度が低下するという問題や、装置が大型化してしまうという問題がある。また、粉末を付与する構成ではとくに、ノズルに粉末が付着しやすくヘッドからの記録液の吐出性能が低下しやすいが、かかる印刷速度の低下、装置の大型化という問題は、ヘッドからの記録液の吐出性能を担保しつつ、解決する必要がある。
【0009】
これに対し、ノズルと中間転写体との間に導電性の記録液の液柱のブリッジを一時的に形成して電圧を印加し電気分解を行うタイプの画像形成装置(たとえば、〔特許文献5〕参照)では、記録液以外の処理液や粉末等が不要となるという利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、このタイプの画像形成装置において滲みを抑制するには、液柱状の記録液を十分に電気分解することが好ましいが、電気分解を促進するために、たとえば、ノズルと中間転写体の間に非常に高い電位をかける方策や、記録液の導電率を上げる方策を採ると、前者の方策では高電圧による必要電力の増大と放電の発生による記録液の飛び散りが問題となり、後者の方策では多量の電解質により顔料の分散安定性を損ねてしまうことが問題となる可能性がある。
【0011】
本発明は、ヘッドにより記録液を中間転写体に付与して画像形成を行う画像形成装置であって、ヘッドからの記録液の吐出性能を担保しつつ、記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも記録液の電気分解を担保して滲みを抑制する画像形成装置、画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、駆動信号に応じて導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、前記ヘッドから吐出され同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態の導電性記録液を電気分解するための前記中間転写体と前記ヘッドとの間の電圧印加を行うための電圧印加手段と、導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段と、前記ノズルから導電性記録液を吐出させるために前記駆動信号を生成する吐出制御手段とを有し、この吐出制御手段は、前記駆動信号を、前記状態が形成されている間におけるメニスカスの位置が前記ノズルの外側に位置するように生成する画像形成装置にある。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記吐出制御手段は、前記駆動信号として、前記状態を形成するための第1の駆動信号と、この第1の駆動信号によって形成された前記状態において前記ノズルから導電性記録液を追加吐出させるための第2の駆動信号とを生成することを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置において、前記吐出制御手段は、前記ノズルから追加吐出された導電性記録液が同ノズルに戻るように第2の駆動信号を生成することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の画像形成装置において、前記吐出制御手段は、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔を、前記ノズルにおけるメニスカスの振動周期の整数倍となるように設定することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の画像形成装置において、前記吐出制御手段は、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔を、前記ノズルにおけるメニスカスの振動周期と一致するように設定することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の画像形成装置において、前記ヘッドあるいはその近傍の温度を測定する温度測定手段を有し、前記吐出制御手段は、前記温度測定手段によって測定された温度に基づいて前記駆動信号を生成することを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6記載の画像形成装置において、前記状態の導電性記録液に流れる電流を測定する電流測定手段を有し、前記吐出制御手段は、前記電流測定手段によって測定された電流に基づいて前記駆動信号を生成することを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか1つに記載の画像形成装置において、導電性記録液は、溶媒として水を含み、顔料がアニオン性分散剤により分散されており、前記中間転写体は、前記電圧印加手段によって電圧を印加されたときにアノードとして機能することを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の発明は、駆動信号に応じて導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、前記ヘッドから吐出され同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態の導電性記録液を電気分解するための前記中間転写体と前記ヘッドとの間の電圧印加を行うための電圧印加手段と、導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段と、前記ノズルから導電性記録液を吐出させるために前記駆動信号を生成する吐出制御手段とを用い、この吐出制御手段により、前記駆動信号を、前記状態が形成されている間におけるメニスカスの位置が前記ノズルの外側に位置するように生成させて画像形成を行う画像形成方法にある。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、駆動信号に応じて導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、前記ヘッドから吐出され同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態の導電性記録液を電気分解するための前記中間転写体と前記ヘッドとの間の電圧印加を行うための電圧印加手段と、導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段と、前記ノズルから導電性記録液を吐出させるために前記駆動信号を生成する吐出制御手段とを有し、この吐出制御手段は、前記駆動信号を、前記状態が形成されている間におけるメニスカスの位置が前記ノズルの外側に位置するように生成する画像形成装置にあるので、ヘッドからの導電性記録液の吐出性能を担保しつつ、導電性記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも、導電性記録液によるブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズルの外側になる状態で導電性記録液の電気分解を行うことによって高度に滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも導電性記録液の電気分解を担保して滲みを抑制することが可能であり、消費エネルギー、ランニングコストの低減や省資源化が可能であるとともに高画質の画像形成を可能とした画像形成装置を提供することができる。
【0022】
前記吐出制御手段は、前記駆動信号として、前記状態を形成するための第1の駆動信号と、この第1の駆動信号によって形成された前記状態において前記ノズルから導電性記録液を追加吐出させるための第2の駆動信号とを生成することとすれば、ヘッドからの導電性記録液の吐出性能を担保しつつ、導電性記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも、第2の駆動信号で導電性記録液の追加吐出を行った状態で導電性記録液の電気分解を行うことによって高度に滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも導電性記録液の電気分解を担保して滲みを抑制することが可能であり、消費エネルギー、ランニングコストの低減や省資源化が可能であるとともに高画質の画像形成を可能とした画像形成装置を提供することができる。
【0023】
前記吐出制御手段は、前記ノズルから追加吐出された導電性記録液が同ノズルに戻るように第2の駆動信号を生成することとすれば、ヘッドからの導電性記録液の吐出性能を担保しつつ、導電性記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも、第2の駆動信号で導電性記録液の追加吐出を行った状態で導電性記録液の電気分解を高効率で行うことによってより高度に滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも導電性記録液の電気分解を担保して滲みを抑制することが可能であり、消費エネルギー、ランニングコストの低減や省資源化が可能であるとともに高画質の画像形成を可能とした画像形成装置を提供することができる。
【0024】
前記吐出制御手段は、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔を、前記ノズルにおけるメニスカスの振動周期の整数倍となるように設定することとすれば、ヘッドからの導電性記録液の吐出性能を担保しつつ、導電性記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも、第2の駆動信号で導電性記録液の追加吐出を適切なタイミングで行った状態で導電性記録液の電気分解を行うことによってより高度に滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも導電性記録液の電気分解を担保して滲みを抑制することが可能であり、消費エネルギー、ランニングコストの低減や省資源化が可能であるとともに高画質の画像形成を可能とした画像形成装置を提供することができる。
【0025】
前記吐出制御手段は、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔を、前記ノズルにおけるメニスカスの振動周期と一致するように設定することとすれば、ヘッドからの導電性記録液の吐出性能を担保しつつ、導電性記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも、第2の駆動信号で導電性記録液の追加吐出を最も適切なタイミングで行った状態で導電性記録液の電気分解を行うことによってさらに高度に滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも導電性記録液の電気分解を担保して滲みを抑制することが可能であり、消費エネルギー、ランニングコストの低減や省資源化が可能であるとともに高画質の画像形成を可能とした画像形成装置を提供することができる。
【0026】
前記ヘッドあるいはその近傍の温度を測定する温度測定手段を有し、前記吐出制御手段は、前記温度測定手段によって測定された温度に基づいて前記駆動信号を生成することとすれば、ヘッドからの導電性記録液の吐出性能を担保しつつ、導電性記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも、導電性記録液によるブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズルの外側になる状態で、環境変化に伴う導電性記録液の物性変化に適応した駆動信号を用いて導電性記録液の電気分解を行うことによって滲みの程度のばらつきを小さくして高度に滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも導電性記録液の電気分解を担保して滲みを抑制することが可能であり、消費エネルギー、ランニングコストの低減や省資源化が可能であるとともに高画質の画像形成を可能とした画像形成装置を提供することができる。
【0027】
前記状態の導電性記録液に流れる電流を測定する電流測定手段を有し、前記吐出制御手段は、前記電流測定手段によって測定された電流に基づいて前記駆動信号を生成することとすれば、ヘッドからの導電性記録液の吐出性能を担保しつつ、導電性記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも、導電性記録液によるブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズルの外側になる状態で、ブリッジ形成時に測定した電流に基づいて生成される駆動信号を用いて導電性記録液の電気分解を行うことで、ブリッジ形成時のリアルタイムの吐出状態に対応したフィードバックで駆動信号を生成することも可能となること等により、滲みの程度のばらつきを小さくして高度に滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも導電性記録液の電気分解を担保して滲みを抑制することが可能であり、消費エネルギー、ランニングコストの低減や省資源化が可能であるとともに高画質の画像形成を可能とした画像形成装置を提供することができる。
【0028】
導電性記録液は、溶媒として水を含み、顔料がアニオン性分散剤により分散されており、前記中間転写体は、前記電圧印加手段によって電圧を印加されたときにアノードとして機能することとすれば、ヘッドからの導電性記録液の吐出性能を担保しつつ、導電性記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも、導電性記録液によるブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズルの外側になる状態で導電性記録液の電気分解を行うことによって高度に滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも導電性記録液の電気分解を担保して滲みを抑制することが可能であり、消費エネルギー、ランニングコストの低減や省資源化が可能であるとともに高画質の画像形成を可能とした画像形成装置を提供することができる。
【0029】
本発明は、駆動信号に応じて導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、前記ヘッドから吐出され同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態の導電性記録液を電気分解するための前記中間転写体と前記ヘッドとの間の電圧印加を行うための電圧印加手段と、導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段と、前記ノズルから導電性記録液を吐出させるために前記駆動信号を生成する吐出制御手段とを用い、この吐出制御手段により、前記駆動信号を、前記状態が形成されている間におけるメニスカスの位置が前記ノズルの外側に位置するように生成させて画像形成を行う画像形成方法にあるので、ヘッドからの導電性記録液の吐出性能を担保しつつ、導電性記録液以外の、処理液や粉末等を付与せずとも、導電性記録液によるブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズルの外側になる状態で導電性記録液の電気分解を行うことによって高度に滲みを抑制し、また高電圧や多量の電解質を用いずとも導電性記録液の電気分解を担保して滲みを抑制することが可能であり、消費エネルギー、ランニングコストの低減や省資源化が可能であるとともに高画質の画像形成を可能とした画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置においてヘッドから中間転写体に導電性記録液が付与される様子を示す概略図である。
【図3】図1に示した画像形成装置においてヘッドから吐出された導電性記録液中の顔料がプロトンを介して凝集した状態を示す概念図である。
【図4】図1に示した画像形成装置においてカソードとアノードとの間に形成される導電性記録液による液柱の状態を示す概念図である。
【図5】記録液がヘッドと中間転写体との間を一時的にブリッジした状態が形成されている間において、メニスカスの位置がノズルの外側に位置するように、吐出制御手段により駆動信号が形成されることを説明するための概念図である。
【図6】吐出制御手段による第1の駆動信号および第2の駆動信号の生成態様を示す概念図である。
【図7】本発明の適用により画像形成が行われるか否かを確かめるための実験に用いた評価パターンの概念図である。
【図8】中間転写体表面が金属の画像形成装置においてヘッドから吐出された導電性記録液中の顔料がプロトン及び金属カチオンを介して凝集した状態を示す概念図である。
【図9】中間転写体表面が金属の画像形成装置において表面が弾性体の転写画像担持体を有する画像形成装置の構成例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
【0032】
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である被記録材たる用紙としての記録体である転写紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であるが、転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であってもよい。
【0033】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクとしての導電性記録液である記録液を吐出する記録液吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしてのヘッド61Y、61M、61C、61BKを有している。
【0034】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、画像形成装置100の本体99の略中央部に配設された中間転写ドラムである中間転写体37の外周面に対向する位置に配設されている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、中間転写体37の移動方向であって図1において時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0035】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための記録液吐出装置であるインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。なお、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1の紙面に垂直な方向に複数が並設された態様で、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0036】
中間転写体37は、A1方向に回転している状態で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向する領域で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからイエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が順次重ね合わされる態様で吐出されて付与され、その表面上に画像が形成されるようになっている。このように、画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを中間転写体37に対向させA1方向に並設したタンデム構造となっている。
【0037】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる中間転写体37に対する記録液の吐出すなわち付与は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37上の同じ位置に重なるよう、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0038】
画像形成装置100は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKと、中間転写体37を備え中間転写体37のA1方向への回転に伴って転写紙Sを搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット10と、転写紙Sを多数枚積載可能であり積載した転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ユニット20と、搬送ユニット10によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの転写紙Sを多数積載可能な排紙台25とを有している。
【0039】
画像形成装置100はまた、図2(b)に示すようにヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出された直後の記録液による液柱がヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態で、中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に電位差が形成されるように、かかる液柱の状態の記録液の内部に電極酸化反応もしくは電極還元反応に起因する電流成分を含んだ通電を行いかかる状態の記録液に後述のように含まれている顔料の凝集または記録液の増粘を促進する電圧印加手段としての通電手段33を有している。
【0040】
画像形成装置100はまた、図2に示すように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKの温度を測定する温度測定手段としての温度測定装置である温度センサ62を有している。
【0041】
画像形成装置100はまた、図1に示すように、記録液等が転写紙Sに転写された後の中間転写体37から、中間転写体37上に残留している記録液等を除去してクリーニングするためのクリーニング手段としての清掃手段34と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ50と、画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段としての制御部40とを有している。
【0042】
搬送ユニット10は、中間転写体37の他に、中間転写体37に対向して配置され中間転写体37との間の領域である転写部31を転写紙Sが通過するときに中間転写体37上に担持された記録液による画像をその転写紙Sに転写する転写手段64と、給紙ユニット20から給送されてきた転写紙Sを転写部31に案内するとともに、転写部31を通過した転写紙Sを排紙台25に案内するガイド板39と、中間転写体37をA1方向に回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。このように、画像形成装置100は、転写紙Sへの画像形成を中間転写体37を用いて間接的に行う間接方式の画像形成装置となっている。
【0043】
転写手段64は、中間転写体37に従動回転する転写ローラ38を備えている。なお、転写ローラ38は転写紙Sに転写される画像を転写紙Sに定着させるためのヒータを内蔵していても良い。また、搬送ユニット10は、転写ローラ38によって中間転写体37から転写紙Sに転写された画像を転写紙Sに定着させるための定着手段としての定着ローラを備えていてもよい。
【0044】
図2に示すように、中間転写体37は、導電性基体であるアルミニウム製の支持体37aと、支持体37a上に形成されたシリコーンゴム製の表面層37bとを有している。支持体37aの材質はアルミニウムに限られるものではなく、機械的強度があれば、たとえばアルミ合金、銅、ステンレス等の金属によって形成しても良い。表面層37bの材質はシリコーンゴムに限られるものではなく、記録液の剥離性が高いという利点のためには表面エネルギーが低く転写紙Sへの追随性が高い弾性材料であればよく、たとえばウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴムなどによって形成しても良い。
【0045】
表面層37bは、中間転写体37に導電性を付与するために、かかるゴム材料に導電剤としてのカーボン、白金、金などの金属微粒子を分散して混入させた導電性ゴムとされ、導電層となっている。ただし、導電性微粒子を増やすと導電性は向上するが、離型性が低下するトレードオフの関係にあるので、適宜、調整が必要である。後述するように、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とが一時的にブリッジした記録液による液柱に所望の電位差を形成するには、導電性ゴムの体積抵抗率は10Ω・cm未満であることが好ましく、また、記録液の体積抵抗率よりも小さいことが望ましい。
【0046】
表面層37bの厚みは0.1〜1mm程度がよく、0.2〜0.6mmが好適である。ただし、表面層37bは必須の構成でなく、支持体37aのみを中間転写体37としても良い。また、中間転写体37は、ドラム状でなく、無端ベルト状、その他可能であればシート状であっても良い。
【0047】
図1に示すように、給紙ユニット20は、転写紙Sを多数枚積載可能な給紙トレイ21と、給紙トレイ21に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sのみを搬送ユニット10に向けて給送する給紙ローラ22と、給紙トレイ21及び給紙ローラ22を支持した筐体23と、給紙ローラ22を、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける記録液の吐出タイミングに合わせるように回転駆動し転写紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
【0048】
キャリッジ50は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと一体で、本体99に対して着脱可能となっている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立して本体99に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
【0049】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ複数、主走査方向に並設され、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BK、画像形成装置100はヘッド固定式のフルライン型となっている。
【0050】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、複数のヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプと、ポンプによってインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK側から供給されてきた記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに分配して供給する記録液供給部であるインク供給部としてのディストリビュータである図示しないディストリビュータタンクとを有している。
【0051】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKはまた、ディストリビュータタンク内の記録液量の不足を検出するために同記録液量を検知する記録液量検知手段であるインク量検知手段としての図示しないインク量検知センサと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKとディストリビュータタンクとの間の記録液の給送路をポンプとともに形成している図示しないパイプと、ディストリビュータタンクと各ヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の記録液の給送路を形成している図示しないパイプとを有している。
【0052】
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体99に対して着脱可能となっている。
【0053】
ポンプは、制御部40によって作動を制御される。具体的には、インク量検知センサによってディストリビュータタンク内の記録液量の不足が検出されたことを条件として、この不足が検出されなくなるまで駆動され、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内の記録液をディストリビュータタンクに供給する。この点、制御部40は記録液供給制御手段であるインク供給制御手段として機能する。制御部40は、画像形成装置100において駆動される構成については、特に説明しない場合であっても、その駆動を制御するようになっている。
【0054】
記録液は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応した色剤と、この色剤の分散剤であるアニオン性分散剤と、溶媒とを少なくとも含んでいる。かかる色剤とかかる分散剤とにより、記録液のインク成分はアニオン性基を有している。溶媒は安全性の観点及び後述する電気分解を生じせしめるための導電性の観点から水を含んでおり、記録液は導電性インクであり水溶性インクである水溶性記録液となっている。なお、記録液は、保存安定性の観点から、アルカリ性であることが望ましい。
【0055】
記録液に用いられる色剤である顔料としては、特に限定されないが、オレンジ又はイエロー用の顔料として、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
また、レッド又はマゼンタ用の顔料として、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、グリーン又はシアン用の顔料として、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料として、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
記録液中の顔料の含有量は、通常、0.1〜40質量%であり、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。
【0056】
記録液中の水を後述のように電気分解させるには、記録液のイオン伝導性を上げるための電解質成分を添加する必要がある。記録液に添加する電解質成分として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化ルビジウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、などの無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸水素カリウムなどの有機アルカリ金属塩、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、塩化コリンなどの有機アンモニウム塩などが挙げられる。
【0057】
2価以上の多価金属塩は着色剤やABA型両親媒性高分子等の溶解または分散性を損ねるので、1価の金属塩であることが好ましい。特に電解質成分として第四級アンモニウム塩を添加するのが好ましい。第四級アンモニウムイオンは中心元素に結合したアルキル基によって電荷分散しており、着色剤やABA型両親媒性高分子等との相互作用が小さく安定に存在するためである。また、第四級アンモニウムイオンは水とのクラスターを形成しにくく、着色剤やABA型両親媒性高分子等の溶解または分散に必要な水和水を奪うことも少ない。単位分子量あたりの導電率(モルイオン伝導率)は分子量の小さい化合物が高く、四級アンモニウム塩のなかで特にテトラメチルアンモニウム塩が好ましい。また、カウンターイオンとして塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等があるが、塩化物イオンはアノードで電極反応を起こして塩素を発生するおそれがある。そのため、不活性な硝酸イオンや硫酸イオンが好ましい。
【0058】
アニオン性分散剤としては、高分子分散剤のような高分子タイプあるいは界面活性剤のような低分子タイプの分散剤を含むことが好ましい。
アニオン性基を有する高分子タイプの分散剤の例として、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体およびその塩、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびその塩、スチレン−アクリル酸共重合体およびその塩、スチレン−メタクリル酸共重合体およびその塩、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびその塩、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびその塩、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体およびその塩、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびその塩、スチレン−マレイン酸共重合体およびその塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体およびその塩、酢酸ビニル−エチレン共重合体およびその塩、酢酸ビニル−クロトン酸共重合およびその塩、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体およびその塩、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、等が挙げられる。
【0059】
これらのアニオン性高分子は、水の電気分解で発生する水素イオンと反応して凝集するため自己分散顔料単体よりも凝集性において好ましい。また、これらのアニオン性高分子は着色剤の接着機能を有するため、転写工程における中間転写体37から転写紙Sへの転写率を向上させる利点がある。
【0060】
アニオン性基を有する低分子タイプの分散剤としては、具体的には、オレイン酸およびその塩、ラウリン酸およびその塩、ベヘン酸およびその塩、ステアリン酸およびその塩、またそのような脂肪酸およびその塩、ドデシルスルホン酸およびその塩、デシルスルホン酸およびその塩、またそのようなアルキルスルホン酸およびその塩、ラウリル硫酸塩、オレイル硫酸塩などのアルキル硫酸エルテル類、ドデシルベンゼンスルホン酸およびその塩、ラウリルベンゼンスルホン酸およびその塩、またそのようなアルキルベンゼンスルホン酸とその塩、ジオクチルスルホ琥珀酸およびその塩、ジヘキシルスルホ琥珀酸およびその塩、またそのようなジアルキルスルホ琥珀酸およびその塩、ナフチルスルホン酸およびその塩、ナフチルカルボン酸およびその塩、またそのような芳香族アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、フッ素化アルキルカルボン酸およびその塩、フッ素化アルキルスルホン酸およびその塩等のフッ素系アニオン性界面活性剤などを用いた分散剤が挙げられる。
【0061】
記録液は水を主な液媒体として使用するが、記録液を所望の物性にするため、あるいは記録液の乾燥によるノズル61cの詰まりを防止するため、次に述べる水溶性有機溶媒を保湿剤成分として使用することが好ましい。
【0062】
水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0063】
また、その他の保湿成分として、ソルビトール等の糖アルコール、ヒアルロン酸等の多糖類、ポリエチレングリコール等の高分子、また、尿素、乳酸、クエン酸塩、アミノ酸系といった天然保湿成分も用いることが可能である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。これらの水溶性有機溶媒の含有量は特に制限はないが、好ましくはインク全体の1〜60重量%、更に好ましくは10〜40重量%の範囲で用いる。
【0064】
記録液は、疎水性Aセグメントと親水性BセグメントとからなるABA型両親媒性高分子と、このABA型両親媒性高分子を前記水性溶媒に溶解または分散せしめるカルボン酸系界面活性剤とを含んでいることが望ましい。
【0065】
ABA型両親媒性高分子の疎水性Aセグメントすなわち疎水性Aブロックは、以下のいずれのものでも適用可能である。たとえば炭素数12以上の直鎖アルキル基であるドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシルなどである。また、分岐アルキル基として、2−デシルドデシル、2−ドデシルドデシル、2−デシルヘキサデシルなどの組み合わせが上げられる。また、芳香族含有アルキル基として、フェニルアルキル、ジフェニルアルキル、トリフェニルアルキル、ナフチルアルキル、ジナフチルアルキル、トリナフチルアルキル、アントラセニルアルキル、ベンゼン環が分岐点の分岐アルキル基であるフェニル基を含んだジアルキルフェニルアルキル、トリアルキルフェニルアルキル、また、環状アルキル基含有として、シクロヘキシルアルキル、ジアルキルシクロヘキシルアルキル、トリアルキルシクロヘキシルアルキル、シクロペンチルアルキル、ジアルキルシクロペンチルアルキル、トリアルキルシクロペンチルアルキルなどがある。このように、疎水性Aブロックは、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、フェニル基の何れかを少なくとも含むことが望ましい。
【0066】
また、疎水性モノマーによるブロック重合体であっても構わない。たとえば、スチレン重合体、アクリル酸アルキル重合体、メタクリル酸アルキル重合体、アクリルアミドアルキル重合体、メタクリルアミドアルキル重合体などが挙げられる。
【0067】
ABA型両親媒性高分子の親水性Bセグメントすなわち親水性Bブロックは水性溶媒に対して親和性があるものであればいずれのものでも適用可能である。水性溶媒中で疎水会合による物理架橋でインク組成物の粘度を増加させるためには、親水性Bブロックは疎水性Aブロックに対して十分鎖長が長い(大きい)必要があり、そのようなものとして直鎖ポリエチレンオキサイドを含むエチレンオキサイド重合体やプロピレンオキサイド重合体などの100量体以上のものが挙げられる。親水性Bブロックは、親水部分が分岐した多分岐ポリエチレンオキサイドを含む4−Arms構造や6−Arms構造であっても構わない。Armsは、疎水性Aブロックを意味している。このように、親水性Bブロックは、直鎖ポリエチレンオキサイド、多分岐ポリエチレンオキサイドの何れかを少なくとも含むことが望ましい。
【0068】
またこのように、ABA型両親媒性高分子は、疎水性Aブロックを3つ以上備えたAB型両親媒性高分子であることが望ましい。これは、疎水性Aセグメント同士の疎水会合が起こりやすくなり、pH変化に対する粘度応答性が向上するためである。なお、ABA型両親媒性高分子における「ABA型」とは、親水性Bブロックを中心として親水性Bブロックと複数の疎水性Aブロックとが結合した構造であることを意味している。
【0069】
親水性Bブロックとしては、そのほかにはビニルアルコール重合体、ビニルエーテル重合体、ビニルピロリドン重合体、アクリルアミド重合体、メタクリルアミド重合体、及びそれらの誘導体など挙げられる。また、イオン性の場合でもよく、アクリル酸塩重合体、メタクリル酸塩重合体、アクリル酸アルキル四級アンモニウム塩重合体、メタクリル酸アルキル四級アンモニウム塩重合体、アクリルアミドアルキル四級アンモニウム塩重合体、スチレンスルホン酸塩重合体などが挙げられる。また、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、メチルデンプン、エチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルデンプンなどのデンプン誘導体、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギン酸誘導体、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲンなどの動物系ポリマーの誘導体、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシードガム、カラギーナンなどの植物系ポリマーの誘導体、キサンタンガム、デキストラン、ヒアルロン酸、プルラン、カードランなどの微生物系ポリマーの誘導体等も挙げられる。
疎水性Aブロックと親水性Bブロックの化学結合は安定であればいずれでもよく、たとえばエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、エステル結合などが挙げられる。
【0070】
ABA型両親媒性高分子を水性溶媒に溶解または分散せしめるカルボン酸系界面活性剤は、疎水性アルキル部分とカルボン酸塩で構成されるものであれば何れでもよい。そのようなものとして、カプロン酸ナトリウム、カプロン酸カリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリル酸カリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどの脂肪酸塩が挙げられる。また、上述のようなモノカルボン酸以外に、ジカルボン酸塩、トリカルボン酸塩であっても構わない。
【0071】
後述するように、記録液を構成している水性インク組成物は、pHによって粘度変化するものとなっているが、本形態における記録液のpH変化は、プロトンをインク組成物に供給することを意味する。弱酸塩であるカルボキシルイオンのプロトン化するpHの目安としてpKaがある。脂肪酸塩のpKaは概ねpKa:7〜9くらいでより高いもののほうが好ましい。
【0072】
ABA型両親媒性高分子の平均重量分子量としては特に制限がないが、カルボン酸系界面活性剤等で完全に溶解または分散した状態でのインクジェット吐出性を考慮すると分子量は小さいほうが好ましく、着弾後の増粘状態の強度を考慮するとポリマーの分子量は大きいほうが好ましい。そのため、1万以上10万以下の範囲のものが好ましい。また、2万以上5万以下のものがより好ましい。重合体部分の繰り返し数としては、100量体以上1000量体以下が好ましい。インク組成物中のポリマーの濃度としては、0.1重量%以上10重量%以下の範囲が好ましく、0.5重量%以上5重量%以下がより好ましい。
【0073】
吐出時の記録液の粘度は、1〜20mPa・s、好ましく2〜8mPa・sである。記録液は、後述する着弾後のpH変化による増粘により、吐出時の少なくとも10倍、好ましくは100倍、より好ましくは1000倍以上の粘度増加を生じ、ゲル状態になる。その他、記録液の物性の好適な範囲は、表面張力が10〜60mN/m、好ましくは20〜50mN/m、導電率が0.01〜3S/m、好ましくは0.02〜1S/mである。
【0074】
図2に示すように、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、同図において下方を向く記録液吐出側に配設された導電性のノズル板61aと、ノズル板61aに形成されたノズル61bと、ディストリビュータタンクから記録液を供給され記録液を充填されたインク室61cと、インク室61c内の記録液をノズル61bから吐出させる図示しないインク吐出手段とを有している。ノズル板61a、ノズル61b、インク室61c、インク吐出手段はこれらが1組となって、それぞれ各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数備えられているが、同図においてはそのうちの1組のみを図示している。ノズル板61aは、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれに備えられているが、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKのそれぞれにおいては、すべてのノズル61b等に共通である。
【0075】
ノズル板61aは、詳細な図示を省略するが、導電性の基板と、この基板の、中間転写体37に対向する側の面に形成された撥水膜とを有している。撥水膜は、フッ素系撥水剤やシリコン系撥水剤などを塗布して形成しても良いし、フッ素系高分子やフッ素―金属化合物共析などをメッキして形成しても良く、撥水性がある膜なら特に限定されない。ノズル板61aは、インク室61c側の面をインク室61c内の記録液との界面を形成する界面形成部として備えており、後述するようにカソードとして機能する。
【0076】
ノズル板61aは、全体が導電性であっても良いし、インク室61c側の面のみを導電処理された部材であっても良いし、インク室61c側に配設された導電性部材と中間転写体37側に配設された絶縁性部材とによって構成しても良い。
【0077】
ノズル板61aの導電性の部分は、後述するようにカソードとして備えられるため、金属溶出に対して耐性を有する材質によって構成する必要はなく、金属、カーボンなど導電性の高い材料によって構成されればよい。
【0078】
ノズル板61aは、中間転写体37とのギャップが50〜200μmの間で設定される。かかるギャップが50μm未満であると、回転体である中間転写体37とノズル板61aとのギャップを維持することが困難になることがあり、またかかるギャップが200μmを超えると、後述する液注のブリッジが形成されにくくなることがあるためである。ただし、ギャップの維持さえ可能なら50μm未満でも特に問題はなく、200μm以上であっても、安定した液柱のブリッジが形成されれば問題ない。
【0079】
インク吐出手段は、各ノズル61bから記録液を液滴化して吐出させ転写紙Sに着弾させるためのアクチュエータとして圧電素子を有し、制御部40による制御によって圧電素子に印加される電圧パルスである駆動信号に応じてノズル61bから記録液を吐出するようになっている。この点、制御部40は、吐出制御手段としてのインク吐出制御手段として機能する。インク吐出制御手段として機能する制御部40は、かかる圧電素子を駆動して各ノズル61bから記録液を吐出させるための駆動信号を所定の信号波形すなわち所定の駆動波形で生成してかかる圧電素子のそれぞれに入力する。
【0080】
これにより、各ヘッド61Y、61M、61C、61BK、具体的には各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに備えられた各ノズル61bは、インク吐出制御手段として機能する制御部40によって生成された駆動信号に応じて記録液を吐出するようになっている。
【0081】
インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式によってノズル61bから記録液を吐出させるものであっても良い。
【0082】
通電手段33は、電源33aと、電源33aを支持体37aとノズル板61aとに接続した特に図示しない電気回路と、この電気回路に接続され、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態の記録液に流れる電流を測定する電流測定手段としての電流測定装置である電流センサ35と、制御部40の機能の一部として実現され電源33aによる電圧の印加タイミング、印加時間を制御する電圧印加制御手段とを有している。電圧印加制御手段としての制御部40は、電源33aの電圧を変更する電圧変更手段としても機能する。
【0083】
電源33aは、陽極を支持体37aに接続され、陰極をノズル板61aに接続されている。よって、通電手段33は、中間転写体37をアノードとして備え、ノズル板61aをカソードとして備えている。
【0084】
本形態において、電流センサ35が電流を測定するのは、後述するように、画像形成前の空吐出の際であるが、画像形成のための記録液の吐出の際に電流を測定するようにしても良い。電流センサ35は、測定した電流を制御部40に入力する。
【0085】
温度センサ62は、記録液の使用環境の温度変化に伴う記録液の物性変化を捉える目的で、ヘッド61Y、61M、61C、61BK、具体的にはヘッド61Y、61M、61C、61BK内部の温度を測定し、これによって記録液の温度を実質的に測定するようになっている。よって、温度センサ62は、記録液の温度を直接測定するものであっても良いし、かかる目的が果たせるのであれば、記録液の温度を実質的に検知する範囲でヘッド61Y、61M、61C、61BKの近傍に設けてヘッド61Y、61M、61C、61BKの温度を測定するようになっていても良い。温度センサ62は、測定した温度を制御部40に入力する。
【0086】
図1に示すように、清掃手段34は、中間転写体37に対していわゆるカウンター当接の態様で当接した、弾性体としてのゴムによって形成された清掃部材としてのクリーニングブレードによって構成されている。清掃手段34はクリーニングブレードとともに、清掃部材としてのクリーニングローラを備えていてもよい。
【0087】
このような構成の画像形成装置100においては、画像形成開始の旨の所定の信号の入力により、中間転写体37が各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向しながらA1方向に回転し、この過程で、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が中間転写体37の同じ位置に重なるよう、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の記録液が、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして順次重ね合わされる態様で吐出され、中間転写体37上に一時的に画像が担持される。
【0088】
このとき、電圧印加制御手段としての制御部40により、通電手段33が駆動され、電源33aから支持体37aとノズル板61aとの間に電圧が印加されている。
この状態で、記録液が、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから中間転写体37上に付与されるが、そのときには、まず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから、図2(a)に示すように、ノズル61bにおいてメニスカスを形成している記録液が、図2(b)に示すように、中間転写体37に向けて移動し、ノズル61bと中間転写体37との間に、記録液からなる液柱のブリッジが一時的に形成され、次いで、図2(c)に示すように、記録液からなる液柱のブリッジが分断されることによって中間転写体37に担持され、中間転写体37上に記録液による画像が形成される。
【0089】
そして、図2(b)に示した、記録液からなる液注のブリッジが形成された状態では、通電手段33により、記録液中の色剤成分が凝集作用を受ける。具体的には、通電手段33の電圧印加により、カソードであるノズル板61aとアノードである中間転写体37とにはそれぞれ次の電極反応が生じ、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が電気分解される。
カソード:4HO+4e→2H+4OH・・・反応式(1)
アノード:2HO→4H+O+4e・・・反応式(2)
【0090】
これにより、アノードとして機能する中間転写体37の表面で、記録液の液柱のブリッジに含まれる水が酸化してプロトン(H+)が生成するため、図3に示すように、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが、プロトンを介して凝集する。あるいはABA型両親媒性高分子とカルボン酸系界面活性剤とを含んでいる場合、カルボン酸系界面活性剤がプロトン化することによってABA型両親媒性高分子の疎水基同士が結合し、記録液の増粘が起こる。これにより、隣接するドット間の滲みの発生が抑制され、高精細な画像が形成される。また、かかる電圧印加によりノズル61bの目詰まりが予防されるという利点もある。なお、かかるブリッジを形成する時間は、圧電素子に印加される電磁パルスのピーク電圧とパルス幅等により制御可能である。
【0091】
ここで、図4を用いて、カソード及びアノードの間に形成される液柱のブリッジについて説明する。液柱のブリッジBの内部では、カチオン及びアニオンは、それぞれカソードC及びアノードAの近傍に移動する。その結果、カソードC及びアノードAの表面に、それぞれ電気二重層E及びEが形成されるが、電気二重層E及びEの充電速度は、液柱のブリッジBの導電率、記録液に含まれるイオンの濃度でほぼ決定される。このとき、電気二重層Eの電圧が数Vに達すると、水が電気分解してファラデー電流が流れる。その結果、アノードAの表面では、水が酸化してプロトンが生成し、アニオン性分散剤により分散されている顔料の凝集または記録液の増粘が起こる。すなわち、かかるブリッジが形成された瞬間に、ブリッジに、顔料の凝集作用をもたらすイオンが効率よく生成することで、記録液の中間転写体37への着液と同時に顔料の凝集が行われる。その結果、隣接する記録液ドット間における顔料の滲みが発生せず、非常に高精細な溶質画像が形成される。
【0092】
このように、通電手段33は、液柱のブリッジBを形成している記録液を電気分解するための、中間転写体37と、ヘッド61Y、61M、61C、61BK、具体的にはノズル板61aとの間の電圧印加を行なうための構成となっている。
この電圧印加は、この電圧印加によって記録液に印加される電圧に起因する放電を制御するために、電圧印加制御手段、電圧変更手段として機能する制御部40により制御される。かかる放電及び制御の態様については後に詳しく述べる。
【0093】
液柱のブリッジBが形成されてから分断されるまでの時間は、通常、数マイクロ秒〜数十マイクロ秒であり、記録液の導電率は、通常、数十mS/m〜数百mS/mである。このため、中間転写体37に記録液による画像を形成するためには、通電手段33による印加電圧は、水の理論分解電圧である1.23Vや一般的な水の電気分解の条件である数V〜十数Vでは不十分であり、数十V〜数百Vであることが好ましい。
【0094】
中間転写体37上に担持された画像の先端が転写部31に到達するタイミングに合わせて、給紙ユニット20から給送された一枚の転写紙Sが転写部31に供給され、転写ローラ38が連れ回りしながら、転写部31を通過する転写紙Sに、中間転写体37上に担持されている画像が転写され、転写紙Sの表面に画像が形成される。画像が形成された転写紙Sは、排紙台25に案内され排紙台25上に積載される。
【0095】
このようにして画像が転写紙Sに転写されるときには、凝集・増粘した記録液が転写紙Sに転写される。したがって、上述の凝集・増粘作用により凝集・増粘した記録液によって画像が形成されることにより、転写紙Sが普通紙である場合であっても、フェザリングやブリーディングを防止ないし抑制しつつ、高速で高画像濃度、高画質の画像形成が可能である。
【0096】
また、高速の画像形成を行うには、記録液を速乾性とすることを要するため、記録液は転写紙Sへの吸収性が一般に高いが、この場合には記録液が転写紙Sの奥深くまで浸透し、いわゆる裏移りを生じ、両面画像形成に不向きとなる。しかし、かかる凝集・増粘作用により記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されるためかかる裏移りが防止ないし抑制され、両面画像形成にも適している。さらにまた、記録液の転写紙Sへの吸収性が低減されることにより、転写紙Sのコックリングやカールなどの変形も抑制ないし防止されるとともに、これによって画像を担持した転写紙Sの搬送性が向上し、ジャムが防止ないし抑制されるなど、転写紙Sの取り扱いが容易化する。
【0097】
転写部31における転写により、転写部31を通過した中間転写体37上には、記録液に起因する成分はほとんど残っていないが、中間転写体37は清掃手段34によるクリーニングを受けることで、記録液のオフセットが高度に防止ないし抑制され、繰り返し画像形成を行っても、オフセットによる地肌汚れが防止ないし抑制され、画像劣化、中間転写体37の劣化が抑制ないし防止されて、経時的に良好な画像形成を行うことが可能である。
【0098】
以上のような画像形成装置100において、上述した凝集・増粘作用によって滲みを抑制ないし防止した良好な画像形成を行うには、反応式(2)によって中間転写体37の表面に生じる、記録液の単位体積あたりのプロトンの量が、かかる良好な画像形成を行うのに十分に確保されることを要する。かかるプロトンの量は、反応式(2)で表される電気分解を促進することで増加する。
【0099】
ここで、かかるプロトンの発生量は、単位時間当たりに、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態の記録液に流れる電流Iの積分値によって決定され、電流Iは次の(a)、(b)によって決定される。
【0100】
(a)記録液が中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BK具体的にはノズル板61aとの間をブリッジした液柱を形成した状態において、通電手段33によってこれらの間に印加される電圧
・ここで、ある時刻における電流Iはこの電圧に比例する。
【0101】
(b)記録液の電気抵抗
ある時刻における電流Iは記録液の電気抵抗に反比例する。この電気抵抗の値Rは記録液の電気伝導率σとかかる記録液の液柱の形状によって決定され、次の式(A)によって表される。式(A)において、r(x)は、図5に示すように、記録液の吐出方向をx軸にとった時の位置xにおける液柱の半径を表している。
【0102】
【数1】

【0103】
すでに述べたように、(a)に関しては、かかる電圧を高くすると必要電力の増大と放電の発生による記録液の飛び散りが問題となり、(b)のうちの記録液の電気伝導率に関しては、多量の電解質により顔料の分散安定性を損ねてしまうことが問題となる可能性がある。
【0104】
よって、これらの問題を回避しつつかかるプロトンの発生量を確保するには、かかる記録液の液柱の形状を工夫することが望ましい。
この記録液の液柱の形状について検討すると、一般的に、ノズルから吐出された記録液は、先端部分が太く残りは円柱状になっており、時間が経過するとノズル付近からだんだん細くなり、やがて途切れる。
そのため、かかる電圧を一定としたとき、液柱を形成している記録液に流れる電流は、着弾した瞬間が最も大きく、時間の経過に伴って液柱が細るに従い減少する。
【0105】
そこで、画像形成装置100において、インク吐出制御手段として機能する制御部40は、ノズル61bから記録液を吐出させるための駆動信号として、記録液がヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態を形成している間において、ブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズル61bの外側に位置する、言い換えるとメニスカスの位置がノズル板61aないしヘッド61Y、61M、61C、61BKの外部に位置することとなる駆動信号を生成する。
【0106】
ここでメニスカスの位置とは、図5に示す状態から円柱状の液柱の部分を除いて考えた場合に、ノズル61bに記録液によって半球状に形成されているメニスカスの中心部分、言い換えるとメニスカスを形成している記録液のx方向における先端部分となるであろう位置を指す。この位置は、図5に示されているメニスカスの半球部分と円柱状の液柱の部分との境界付近のx方向における位置である。よって、記録液がブリッジした状態におけるメニスカスの位置がノズル61bの外側に位置するという状態は、ノズル61bの全体から記録液が飛び出ている状態のことを示す。
【0107】
ただし、液柱のブリッジが形成されている間、常にメニスカスの位置がノズル61bの外側にある必要はなく、一部の時間だけメニスカスの位置がノズル61bの外側に位置していれば良い。
【0108】
メニスカスの位置をこのようにすることで、記録液の液柱すなわちたとえば図2(b)、図5に示されているような記録液の液柱の電気抵抗率を、経時的な比較において小さくし、記録液単位体積あたりの電気分解の量を全体として多くすることで、記録液単位体積あたりのプロトンの量が増加する。この経時的に電気抵抗率が小さくされる記録液の液柱には、図5に示されている記録液については、メニスカスを形成している部分の記録液も含まれ得る。
【0109】
なお、ブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズル61bの外側になるような駆動信号を用いずとも、かかるプロトンの量が十分である場合には、ブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズル61bの外側になるような駆動信号を用いることによって、通電手段33によって印加すべき電圧を下げてもよく、この電圧を下げれば、通電手段33によって印加する電圧による必要電力が抑制されるとともに記録液の放電に起因する記録液の飛び散りが抑制ないし防止されてさらに良好な画像形成が行われ得る。また、かかる場合は、通電手段33によって印加すべき電圧を下げることに代えて、またこれと併せて、記録液に含まれる電解質の量を低減してもよく、低減した場合には記録液のコスト低減及び省資源化が可能となる。
【0110】
ブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズル61bの外側になる液柱の形状を実現する具体的な駆動信号を図5に示す。インク吐出制御手段として機能する制御部40によって生成される、かかる駆動信号は、同図に示されているように、所定の時間間隔をおいて形成される、第1の信号波形による第1の駆動パルスとしての第1の駆動信号と第2の信号波形による第2の駆動パルスとしての第2の駆動信号とを有している。
【0111】
同図(a)に示されている例においては、ノズル61bから吐出された記録液によりヘッド61Y、61M、61C、61BK具体的にはノズル板61aと中間転写体37との間をブリッジした状態を形成するための第1の駆動信号と、この第1の駆動信号によって形成されたかかる状態においてノズル61bから記録液を追加吐出させるための第2の駆動信号とが生成されるようになっている。
【0112】
同図(a)に示されている例において、第2の駆動信号は、ノズル61b付近の、液柱が細っている部分に記録液を供給して、液柱の径の減少を緩和し、通電手段33によって印加される電圧によって記録液の液柱に流れる電流の減少を緩和すること、言い換えると反応式(2)で表される電気分解が維持されるように生成され、圧電素子に入力される。
【0113】
同図(a)に示されている例において、第1の駆動波形と第2の駆動波形との間隔すなわち第1の駆動信号の入力から第2の駆動信号の入力までの時間の間隔は、記録液の追加吐出によってかかる電気分解が効率よく維持されるように、すなわち、記録液の液柱の形状が、電気分解の効率が維持される形状に保たれるように、設定される。
【0114】
ただし、第2の駆動信号によってノズル61bから吐出された記録液が中間転写体37に着弾するとすれば、中間転写体37に担持され画像を構成する記録液の体積すなわち電気分解によって凝集・増粘作用を与えるべき記録液の体積が増加することとなるため、結局は凝集・増粘作用増加分だけ多くの電力を供給することなどが必要となって、記録液単位体積あたりのプロトン量の大きな増加が見込めなくなる。
【0115】
そこで、インク吐出制御手段として機能する制御部40は、同図(a)に示されている例において、第2の駆動信号を、ノズル61bから追加吐出された量の記録液がノズル61bに戻るように、言い換えると、ノズル61bから追加吐出された量の記録液が中間転写体37に着弾することのないように、生成する。
【0116】
ただし、同図(a)に示されている例における第2の駆動信号は、ノズル61bから追加吐出された記録液の全量が、厳密にノズル61b側に戻るように生成されることが要求されるものではなく、記録液単位体積あたりのプロトンの発生量が確保されるように生成されれば良い。
【0117】
なお、第1の駆動信号のみを使用した場合と比較して、第1の駆動信号及び第2の駆動信号を使用した場合には、第2の駆動波形により追加吐出された記録液が中間転写体37へ着弾しない限りにおいて、第2の駆動信号が強いほど中間転写体37に着弾する記録液の量が減少する傾向にある。これは、追加吐出された記録液が、ノズル61bに戻る際に、第1の駆動波形により吐出した記録液の一部をノズル61b側に引きずり込むためであると考えられる。
【0118】
そのため、第1の駆動信号の入力から第2の駆動信号の入力までの時間の間隔は、上述した、記録液の液柱の形状を電気分解の効率が維持される形状に保たれるようにするという観点に加えて、ノズル61bにおけるメニスカスの振動周期にも対応させることよって、設定される。
【0119】
この点について説明すると、第1の駆動信号によって吐出された記録液におけるメニスカスの残留振動の位相と、第2の駆動信号の位相すなわち第2の駆動信号によって追加吐出された記録液の位相とが一致すれば、ノズル61b付近の、液柱が細っている部分に記録液が効率的に供給されることとなる。
【0120】
したがって、インク吐出制御手段として機能する制御部40は、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔を、かかる振動周期の整数倍とするように設定するようになっている。そして、この振動周期に関する条件を満たすことでかかる観点に関する条件すなわち液柱形状維持に関する条件も満たされることとなる。
【0121】
かかる振動周期に関する条件についてはさらに、かかる液柱形状維持に関する条件を良好に満たすべく、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔を、かかる振動周期と一致するように設定することが好ましい。これは、液柱が細くなりすぎないうちに第2の駆動信号による記録液の供給言い換えると補給を行うことが、かかる液柱の形状を良好に維持するために好ましいためである。
【0122】
この振動周期に関する条件は、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔が、メニスカスの振動周期自体、あるいはその整数倍と完全に一致している必要はなく、振動周期の±20%程度ずれていても記録液単位体積あたりのプロトンの発生量が十分に確保される場合もある。よって、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔を、かかる振動周期あるいはその整数倍と一致するように設定することには、記録液単位体積あたりのプロトンの発生量が十分に確保される範囲でのずれを含むものとする。このようなずれがあっても記録液単位体積あたりのプロトンの発生量が十分に確保されることは、次に述べる実験から明らかとなる。
【0123】
駆動信号は、図5(a)に示した態様で生成されるのみならず、同図(b)ないし同図(d)に示す態様で生成するようにしても良い。
同図(b)、同図(c)に示した例では、第1の駆動信号の直後にノズル61b内の圧力を下げる働きをしないように第2の駆動信号を生成しており、同図(d)に示した例では、第1の駆動信号の直後にノズル61b内の圧力を下げるのみの働きをするとともに、その反動を利用して液柱が細っている部分に記録液を供給するように第2の駆動信号を生成している。
【0124】
なお、同図(a)ないし同図(d)においてはそれぞれ、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔は、第1の駆動信号と第2の駆動信号との、互いに対応している箇所の時間間隔とされている。
【0125】
また、ブリッジ形成時のメニスカスの位置がノズル61bの外側になるような駆動信号は、同図(a)ないし同図(d)においてそれぞれ示した第1の駆動信号と第2の駆動信号との組み合わせに限定されない。すなわち、ブリッジ形成時のメニスカスの位置をノズル61bの外側として、記録液の液柱の電気抵抗率を、経時的な比較において小さくし、記録液単位体積あたりの電気分解の量を全体として多くすることで、記録液単位体積あたりのプロトンの量が増加するのであれば、駆動信号は、どのような波形で生成されても良い。
なお、以上の条件を満たす範囲において、第2の駆動信号は、複数回に分けて生成され用いられるようにしてもよい。
【0126】
以上の条件を考慮した次の実験により画像形成が良好に行われるか否かを確かめた。
実験の条件は次のとおりである。
【0127】
実験に用いた画像形成装置は、次の条件を満たす、画像形成装置100と同様の構成の、インクジェットプリンタGX5000(リコー社製)を改造した画像形成装置である。
中間転写体37は、支持体37aとしてのアルミニウム素管の外周に、表面層37bとして、体積抵抗率が1.6Ω・cm、厚さが0.5mmの、カーボンが分散されているシリコーンゴム層を有しており、外周の線速が100mm/秒でA1方向に回転駆動される。
【0128】
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37とのギャップは100μmとした。
通電手段33により中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に印加される電圧は200Vとした(ただし後述のとおり異なる場合もある)。
転写ローラ38は、金属製の芯金に厚さが5mmのゴム層を形成したものである。
清掃手段34としては、フッ素ゴムからなるブレードを用いた。
なお、電流センサ35、温度センサ62はすでに述べたようにして設置されている。
【0129】
なお、本実験においては、中間転写体37の長手方向すなわちA1方向に垂直な方向すなわち、図1の紙面に垂直な方向には、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを移動させず、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを固定して用いた。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図1に示したようにA1方向にずれた位置に設置した。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、ノズル61bを多数備えているが、後述する滲みの評価が可能なように、本実験は、選択されたノズル61bから記録液を吐出して行った。図7に、本実験によって形成した画像パターンすなわち評価パターンである吐出パターンの概念図を示す。本実験によって形成した吐出パターンは、同図に示した、隣り合う色が互いに異なる8ラインの繰り返しによって作像したものであり、この吐出パターンによる作像結果に基づいて、後述する評価を行った。
【0130】
記録液としては以下のようなものを用いた。
【0131】
<イエロー記録液>
・スルホン酸基結合型イエロー顔料分散液(CAB−O−JET−270Y、固形分10質量%、キャボット製):40.0質量%
・トリエチレングリコール:15.0質量%
・グリセリン:25.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:0.9質量%
・疎水変性ポリエーテルウレタン(ABA型両親媒性高分子に相当:アデカ製):0.75質量%
・ラウリン酸カリウム(カルボン酸系界面活性剤に相当):0.5質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.1に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
【0132】
<マゼンタ記録液>
・スルホン酸基結合型マゼンタ顔料分散液(CAB−O−JET−260M、固形分10質量%、キャボット製):40.0質量%
・ジエチレングリコール:20.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:0.9質量%
・疎水変性ポリエーテルウレタン(ABA型両親媒性高分子に相当:アデカ製):0.75質量%
・ラウリン酸カリウム(カルボン酸系界面活性剤に相当):0.5質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.1に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
【0133】
<シアン記録液>
・スルホン酸基結合型シアン顔料分散液(CAB−O−JET−250C、固形分10質量%、キャボット製):40.0質量%
・エチレングリコール:4.0質量%
・トリエチレングリコール:14.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:0.9質量%
・疎水変性ポリエーテルウレタン(ABA型両親媒性高分子に相当:アデカ製):0.75質量%
・ラウリン酸カリウム(カルボン酸系界面活性剤に相当):0.5質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.1に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
【0134】
<ブラック記録液>
・スルホン酸基結合型カーボンブラック顔料分散液(CAB−O−JET−200、固形分20質量%、キャボット製):35.0質量%
・2−ピロリドン:10.0質量%
・グリセリン:14.0質量%
・プロピレングリコールモノブチルエーテル:0.9質量%
・疎水変性ポリエーテルウレタン(ABA型両親媒性高分子に相当:アデカ製):0.75質量%
・ラウリン酸カリウム(カルボン酸系界面活性剤に相当):0.5質量%
・デヒドロ酢酸ソーダ:0.1質量%
・蒸留水:残量
その後、水酸化リチウムの5質量%水溶液によりpH9.1に調整し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過。
【0135】
本実験の以上の条件を満たす画像形成装置100を実施例1とする。
本実験における評価の手順は次のとおりである。
(1)各ヘッド61Y、61M、61C、61BKから1ドットのライン画像をA1方向に沿って1本、出力した。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKにおける吐出周波数は1000Hzとし、吐出時間は1秒とした。
(2)中間転写体37と転写ローラ38との間にリコービジネスコートグロス100を搬送し、中間転写体上の(1)で作像した導電性記録液像を転写し、滲みを評価した。
【0136】
実施例1において第1の駆動波形と第2の駆動波形との間隔及び第2の駆動波形の大きさを様々な態様で異ならせ、これによって形成した各条件と、各条件の評価結果である滲み、記録液単位体積あたりの電荷とを以下表1にまとめる。なお、条件2と条件22とは同じ条件、結果となっている。
【0137】
同表に示した条件に関して、第1の駆動波形の大きさは14Vで一定とした。
また、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKのノズル61bのメニスカスの振動周期は、測定により約8μsであることが確認されている。なお、かかる振動周期は、ヘッド、ノズルの構造から算出したものであってもよい。
その他、通電手段33により中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に印加される電圧は条件27についてのみ0Vであり、その他の各条件については上述のとおり200Vである。
【0138】
同表に示した評価結果において、「滲み」は、マイクロスコープにより観察し、各色の記録液の境界部の滲みを評価したものであり、評価の基準は以下の通りである。
・境界部が非常に鮮明に分かる・・・◎
・境界部が鮮明に分かる・・・○
・多少の滲みはあるが、問題ないレベル・・・△
・ライン同士が混色してしまい、元の色がはっきりしない・・・×
【0139】
また同表に示した評価結果において、「記録液単位体積あたりの電荷」は、次の手順によって求めた数値となっている。
(1)ヘッド61BKから1ドットのライン画像をA1方向に沿って192本、1000Hzで1秒間出力し、電流センサ35で電流の計測を行って、記録液の1ドットあたりに流れた電荷に換算するとともにこれを積算することで電荷量を得た。
(2)この場合、ヘッド61BKから図示しない受け皿に対して1ドットのライン画像をA1方向に沿って192本、1000Hzで1分間出力し、受け皿に受けた記録液の重量を測定して記録液の1ドットあたりの体積に換算した。
(3)各条件について、(1)の「1ドットあたりの流れた電荷」および(2)の「1ドットあたりの体積」に基づいて[1ドットあたりの流れた電荷/1ドットあたりの体積]を算出した。
【0140】
【表1】

【0141】
同表から、滲みに対する第2の駆動信号の入力の効果が確認される。また、記録液単位体積あたりの電荷の比較により、この効果が、第2の駆動信号を用いることで記録液単位体積あたりの電荷が増加していることに基づくものであることが確認される。
【0142】
また、滲みが「◎」である条件と、「○」である条件との比較から、第1の駆動波形と第2の駆動波形との間隔が、メニスカスの振動周期の整数倍と一致している場合あるいはその周辺である場合に、記録液単位体積あたりの電荷が増加し、滲み防止性が向上していることが確認される。
【0143】
とくに、第1の駆動波形と第2の駆動波形との間隔がメニスカスの振動周期と一致している条件2、22において、記録液単位体積あたりの電荷が最も増加していることから、第1の駆動波形と第2の駆動波形との間隔をメニスカスの振動周期と一致させることが、滲みに対して最も効果的であることが分かる。
【0144】
よって、かかる間隔は、上述のように測定あるいは計算によって定まるメニスカスの振動周期に応じて、かかる振動周期の整数倍となるようにあるいはかかる振動周期に一致するように設定することが好ましい。
【0145】
その他、条件26とその他の条件との比較から、通電手段33により中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間に電圧を印加すること自体の滲みに対する効果も確認された。
【0146】
また、条件23ないし条件25は、第2の駆動信号が大きいため、第2の駆動信号によって追加吐出された記録液が中間転写体37に着弾し、記録液単位体積あたりの電荷量が比較的小さい値となっていると考えられる。
【0147】
・実施例2
本実施例では、実施例1において説明した条件に加えて、温度センサ62によって測定した温度に基づき、制御部40が、予め用意され、メモリに記憶している、温度と駆動信号との対応表に従って駆動信号を決定し、生成する。
【0148】
本実施例においては、測定温度によって、第1の駆動信号のパルス幅及び第2の駆動信号のパルス幅を変化させる。表2に、メモリに記憶されている、測定温度と第1の駆動信号の大きさ及び第2の駆動信号の大きさとの対応表を示す。
【0149】
なお、同表に示されている第1の駆動信号の大きさ及び第2の駆動信号の大きさは、吐出体積及び、記録液単位体積あたり電荷量がおおよそ一定になるように設定されている。測定温度が表中の値でない場合には最も近い温度に対応する温度値を選択して第1の駆動信号の大きさ及び第2の駆動信号の大きさを決定する。
【0150】
【表2】

【0151】
本実施例では、上述のように、駆動信号を決定するための制御パラメータとして、第1の駆動信号のパルス幅及び第2の駆動信号のパルス幅を用いているが、かかる制御パラメータとしては、第1の駆動信号のパルス幅、電圧、第2の駆動信号のパルス幅、電圧、第1の駆動信号と第2の駆動信号の間隔などのうち少なくとも1つ以上を用いることが可能である。
【0152】
このように、実質的に記録液の温度を測定し、これを用いて駆動波形を決定することで、温度環境によって変化する記録液の物性に応じて駆動波形を決定し、温度環境によらず、ブリッジ形成時のメニスカスの位置をノズル61bの外側として、記録液の液柱の電気抵抗率を、経時的な比較において小さくし、記録液単位体積あたりの電気分解の量を全体として多くすることで、記録液単位体積あたりのプロトンの量が増加し、これによって高画質の画像形成が可能となる。
【0153】
・実施例3
本実施例では、実施例1において説明した条件に加えて、電流センサ35によって測定した電流に基づき、制御部40が、最大電流量を用いて、駆動信号を決定し、生成する。制御部40は、画像形成前の空吐出の際に電流センサ35によって測定された電流のうちの最大電流量を抽出し、駆動信号の決定に用いる。なお、空吐出を行う駆動信号は第1の駆動信号を16Vとしたものであり、第2の駆動信号は用いない。最大電流量は、制御部40において1ドットあたりの値に換算している。
【0154】
制御部40は、予め用意され、メモリに記憶している、最大電流量と駆動信号との対応表に従って駆動信号を決定し、生成する。表3に、メモリに記憶されている、最大電流量と第1の駆動信号の大きさ及び第2の駆動信号の大きさとの対応表を示す。
【0155】
なお、同表に示されている第1の駆動信号の大きさ及び第2の駆動信号の大きさは、吐出体積及び、記録液単位体積あたり電荷量がおおよそ一定になるように設定されている。最大電流量が表中の値でない場合には最も近い電流量に対応する電流値を選択して第1の駆動信号の大きさ及び第2の駆動信号の大きさを決定する。
【0156】
【表3】

【0157】
本実施例では、上述のように、駆動信号を決定するための情報として、最大通電量を用いている。制御部40は、かかる情報を得るために、電流センサ35による測定結果に対して必要があれば演算をし、かかる情報を抽出することで、かかる情報値と駆動信号とを対応させた表に従って駆動信号を決定するようにし得る。抽出する値としては、本実施例で用いている最大通電量のほかに、電流量を積算した電荷量、電流が流れている時間、ピエゾを駆動し始めてから電流が流れ始めるまでの時間などのうち少なくとも1つ以上を用いることが可能である。
【0158】
このように、液柱のブリッジに流れる電流を測定し、これを用いて駆動波形を決定することで、液柱の形状を示す電流の波形に応じて駆動波形を決定し、ブリッジ形成時のメニスカスの位置をノズル61bの外側として、記録液の液柱の電気抵抗率を、経時的な比較において小さくし、記録液単位体積あたりの電気分解の量を全体として多くすることで、記録液単位体積あたりのプロトンの量が増加し、これによって高画質の画像形成が可能となる。
【0159】
ここで、中間転写体37が表面層37bを備えておらず支持体37aからなる構成においては、すでに述べたように、支持体37aがアノードとして機能することとなる。この場合、支持体37aの表面で、水とともに、金属である支持体37aを酸化するようにすることが可能である。金属である支持体37aを酸化するようにすると、色剤を凝集するのに優れた金属カチオンが生成するため、図8に示すように、プロトン及び金属カチオン(Mn+)を介して、アニオン性分散剤Dにより分散されている顔料Pが凝集することとなり、凝集性が高くなる。
【0160】
このような構成においては、図9に示すように、転写手段64が、転写ローラ38のみならず、中間転写体37上に形成された画像を転写され一旦担持する、表面に弾性体層としてのゴム層63aを備えた転写画像担持体としての中間転写ドラム63を備えていることが望ましい。中間転写ドラム63は中間転写体37に連れ回りし、転写ローラ38は中間転写ドラム63に連れ回りする。中間転写ドラム63の表面が弾性体であることにより、金属製で表面硬度の高い中間転写体37からの画像の転写が良好に行われ、転写性が向上する。
【0161】
中間転写ドラム63は、ゴム層63aと、ゴム層63aに覆われた基体63bとを有している。基体63bを構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム、アルミ合金、銅、ステンレス等の金属が挙げられる。ゴム層63aを構成する材料としては、特に限定されないが、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0162】
ここで、制御部40は、メモリに、駆動信号に応じて記録液を吐出するノズル61bを備えたヘッド61Y、61M、61C、61BKと、ヘッド61Y、61M、61C、61BKにより吐出された記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体37と、ヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出されヘッド61Y、61M、61C、61BKと中間転写体37との間を一時的にブリッジした状態の記録液を電気分解するための中間転写体37とヘッド61Y、61M、61C、61BKとの間の電圧印加を行うための通電手段33と、記録液によって中間転写体37上に担持された画像を転写紙Sに転写する転写手段64と、ノズル61Y、61M、61C、61BKから記録液を吐出させるためにかかる駆動信号を生成する吐出制御手段として機能する制御部40とを用い、吐出制御手段として機能する制御部40により、かかる駆動信号を、かかる状態が形成されている間におけるメニスカスの位置がノズル61bの外側に位置するように生成させて画像形成を行う画像形成方法を実行するための画像形成プログラムを記憶している。この点、制御部40ないしメモリは、画像形成プログラム記憶手段として機能している。かかる画像形成プログラムは、制御部40に備えられたメモリのみならず、半導体媒体(たとえば、ROM、不揮発性メモリ等)、光媒体(たとえば、DVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(たとえば、ハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)その他の記憶媒体に記憶可能であり、かかるメモリ、他の記憶媒体は、かかる画像形成プログラムを記憶した場合に、かかる画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体を構成する。
【0163】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0164】
たとえば、導電性記録液中の顔料は、カチオン性分散剤により分散し、カソードとして機能する中間転写体の表面で生成した水酸化物イオンを介して、凝集させてもよい。
中間転写体は、全体が導電性である必要はなく、少なくとも表面が導電性であればよい。
【0165】
本発明を適用する画像形成装置は、上述のタイプの画像形成装置に限らず、他のタイプの画像形成装置、すなわち、ヘッドに関してシャトル型であってもよいし、また、複写機、ファクシミリの単体、あるいはこれらの複合機、これらに関するモノクロ機等の複合機、その他、電気回路形成に用いられる画像形成装置、バイオテクノロジー分野において所定の画像を形成するのに用いられる画像形成装置であっても良い。ヘッドの数は画像形成装置の用途に応じて増減されるものであり、1つであっても、複数であってもよい。
【0166】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0167】
33 電圧印加手段
35 電流測定手段
37 中間転写体
40 吐出制御手段
61b ノズル
61Y、61M、61C、61BK ヘッド
62 温度測定手段
64 転写手段
100 画像形成装置
S 被記録材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0168】
【特許文献1】特開平01−130949号公報
【特許文献2】特許第2724141号公報
【特許文献3】特開2008−62397号公報
【特許文献4】特開平11−188858号公報
【特許文献5】特開2010−188665号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号に応じて導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、
このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、
前記ヘッドから吐出され同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態の導電性記録液を電気分解するための前記中間転写体と前記ヘッドとの間の電圧印加を行うための電圧印加手段と、
導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段と、
前記ノズルから導電性記録液を吐出させるために前記駆動信号を生成する吐出制御手段とを有し、
この吐出制御手段は、前記駆動信号を、前記状態が形成されている間におけるメニスカスの位置が前記ノズルの外側に位置するように生成する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記吐出制御手段は、前記駆動信号として、前記状態を形成するための第1の駆動信号と、この第1の駆動信号によって形成された前記状態において前記ノズルから導電性記録液を追加吐出させるための第2の駆動信号とを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記吐出制御手段は、前記ノズルから追加吐出された導電性記録液が同ノズルに戻るように第2の駆動信号を生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の画像形成装置において、
前記吐出制御手段は、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔を、前記ノズルにおけるメニスカスの振動周期の整数倍となるように設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記吐出制御手段は、第1の駆動信号と第2の駆動信号との間隔を、前記ノズルにおけるメニスカスの振動周期と一致するように設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記ヘッドあるいはその近傍の温度を測定する温度測定手段を有し、
前記吐出制御手段は、前記温度測定手段によって測定された温度に基づいて前記駆動信号を生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6記載の画像形成装置において、
前記状態の導電性記録液に流れる電流を測定する電流測定手段を有し、
前記吐出制御手段は、前記電流測定手段によって測定された電流に基づいて前記駆動信号を生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つに記載の画像形成装置において、
導電性記録液は、溶媒として水を含み、顔料がアニオン性分散剤により分散されており、
前記中間転写体は、前記電圧印加手段によって電圧を印加されたときにアノードとして機能することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
駆動信号に応じて導電性記録液を吐出するノズルを備えたヘッドと、
このヘッドにより吐出された導電性記録液を付与される、少なくとも表面が導電性の中間転写体と、
前記ヘッドから吐出され同ヘッドと前記中間転写体との間を一時的にブリッジした状態の導電性記録液を電気分解するための前記中間転写体と前記ヘッドとの間の電圧印加を行うための電圧印加手段と、
導電性記録液によって前記中間転写体上に担持された画像を被記録材に転写する転写手段と、
前記ノズルから導電性記録液を吐出させるために前記駆動信号を生成する吐出制御手段とを用い、
この吐出制御手段により、前記駆動信号を、前記状態が形成されている間におけるメニスカスの位置が前記ノズルの外側に位置するように生成させて画像形成を行う画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228867(P2012−228867A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289354(P2011−289354)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】