説明

画像形成装置およびシート状部材の剥離機構

【課題】感光体ドラムや中間転写体等の像担持体に付着した記録媒体を容易に除去することのできる画像形成装置等を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、中間転写ベルト20を含むベルトユニット50と、中間転写ベルト20の下側の機構が移動可能に一体化された可動ユニット60とを備えている。可動ユニット60は、剥離シート71を有する記録用紙剥離機構70を備えており、その剥離シート71が、可動ユニット60が格納位置では中間転写ベルト20から離間し、可動ユニット60の移動によって中間転写ベルト20に当接して移動して付着した記録用紙PJを剥離させるように作用するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等の電子写真方式を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用する複写機やプリンタ等の画像形成装置は、感光体上に形成された静電潜像を、現像装置によって現像剤(トナー)で現像してトナー像とし、この感光体上に形成されたトナー像を、記録用紙等の記録媒体上に転写・定着するように構成されている。
感光体は、ドラム状のものや、無端ベルト状のもの等が知られている。また、感光体上に形成されたトナー像を、一旦、中間転写体(中間転写ベルト)に担持させ、この中間転写体から記録媒体に転写する構成もある。
【0003】
中間転写ベルトを用いる構成としては、たとえば、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色ごとに設けられた画像形成部が、中間転写ベルトに対向して並べて配置されてなるいわゆるタンデム型のカラー画像形成装置が知られている。
このようなタンデム型のカラー画像形成装置では、各々の画像形成部で形成される色の異なる画像を、走行する中間転写ベルトに順次転写(一次転写)して多重化し、カラー画像(トナー像)を形成する。そして、そのカラー像を中間転写ベルトと同期して搬送される記録用紙に二次転写部で転写し、さらに、定着装置で記録用紙にトナー像を定着することで、画像を形成する。
【0004】
感光体や中間転写ベルト等の感光体が担持したトナー像の記録媒体への転写は、転写ロールで記録媒体を感光体に圧接すると共に、転写バイアスを作用させることで行われる。
転写後の記録媒体は、感光体から剥離されて定着装置に搬送されるが、その際、記録媒体が静電力によって感光体に付着してしまい、紙詰まり(いわゆるジャム)等の不具合を生ずることがある。特に、薄い記録用紙や、吸湿等によってカールした記録用紙、さらには両面コピーの際に定着装置によって加熱された記録用紙等は、紙詰まりを生じ易い。
特許文献1には、ポップジャムを生じた記録シートを装置外に取り出して紙詰まりを除去する構造が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−80835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像形成装置は、通常、紙詰まり等、記録媒体(記録用紙)の搬送に不具合が生じた場合には、それを検知して画像形成を停止するように構成される。そして、使用者等が不具合の原因(詰まった記録用紙等)を取り除くことで、画像形成を再開可能となる。
ここで、中間転写ベルトを備え、特にその周回経路の下側に二次転写が配置された画像形成装置において、二次転写後に記録用紙が中間転写体に密着して剥離されないことによって装置が停止した場合、メンテナンスを行う装置のフロント側からは中間転写ベルトの下面側に密着した記録用紙を視認し難く、その排除が難しいという問題があった。
すなわち、画像形成装置の制御部による搬送異常の認知は、たとえば、記録用紙の搬送経路に備えられたセンサによって、定着装置に至る記録用紙を検知することで行われる。そして、正常に搬送された場合に検知されるべき記録用紙が検知されなかった時、搬送異常と判断して装置を停止させる。しかし、この段階では、記録用紙が中間転写ベルトにぴったりと付着していて紙詰まりとして視認し得ない状態にあることがある。このような場合には、装置をフロント側から開放して見ても中間転写ベルトに密着した記録用紙を見つけることが難しく、搬送異常状態を解消することができない。
【0007】
本発明は、かかる技術的課題を解決するためになされたものであって、感光体ドラムや中間転写体等の像担持体に付着した記録媒体を容易に除去することのできる画像形成装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、トナー像を担持する像担持体と、像担持体が担持するトナー像を記録媒体に転写する転写部と、像担持体の表面に沿って所定の格納位置から移動可能な移動操作部材と、移動操作部材に設けられ移動操作部材の格納位置からの移動によって像担持体に当接して移動して像担持体に付着した記録媒体を剥離する剥離部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、剥離部材は、像担持体と当接する先端部が円弧状に形成されていることを特徴とすることができる。また、剥離部材は、像担持体の表面に対する法線を挟んで略左右対称な略二等辺三角形に形成されていることを特徴とすることができる。
さらに、上記構成に加え、剥離部材を像担持体に当接させる当接付勢手段と、移動操作部材が格納位置では剥離部材を像担持体から離間させる退避機構と、を備えることを特徴とする。
その剥離部材は弾性変形可能であって、当接付勢手段は剥離部材の弾性力を利用することを特徴とすることができる。退避機構は、剥離部材に当接して剥離部材を像担持体から離間させる操作干渉部を備えることを特徴とすることができる。
【0010】
本発明の他の画像形成装置は、感光体と、感光体上に形成されたトナー像が転写される中間転写部材と、中間転写部材が担持するトナー像を記録媒体に転写する転写部と、中間転写部材の表面に沿って所定の格納位置から移動可能な移動操作部材と、移動操作部材に設けられて弾性復帰力で中間転写部材に当接する当接部材と、移動操作部材が格納位置で当接部材を中間転写部材から離間させる退避機構と、を備え、退避機構によって離間位置にある当接部材が、移動操作部材の格納位置からの移動によって、中間転写部材の表面に当接して摺動し、中間転写部材に付着した記録媒体を剥離するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、中間転写部材は、周回駆動される無端ベルト状であって、移動操作部材は、中間転写部材の外側に位置する記録用紙搬送機構を含む可動ユニットであることを特徴とすることができる。
その退避機構は、当接部材に当接して当接部材を中間転写部材から離間するように弾性変形させる操作干渉部材を備えることを特徴とすることができる。
また、当接部材は、中間転写部材と当接する先端部が円弧状に形成されていることを特徴とすることができる。さらに、当接部材は、像担持体の表面に対してその法線を挟んで略左右対称な略二等辺三角形に形成されていることを特徴とすることができる。
当接部材としては、樹脂シートおよび金属シートであることを特徴とすることができ、また、線材を屈曲して形成されていることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明のシート状部材の剥離機構は、ベルト部材に付着したシート状部材を剥離する剥離機構であって、ベルト部材の表面に沿って所定の格納位置から移動可能な移動操作部材と、移動操作部材に設けられ、ベルト部材に付着したシート状部材を剥離する剥離部材と、剥離部材をベルト部材に当接させる当接付勢手段と、移動操作部材が格納位置では剥離部材をベルト部材から離間させる退避機構と、を備え、退避機構によって離間位置にある剥離部材が、移動操作部材の格納位置からの移動により、当接付勢手段によってベルト部材の表面に当接して摺動し、ベルト部材に付着したシート状部材を剥離することを特徴とする。
【0013】
ここで、剥離部材は弾性変形可能であって、当接付勢手段は剥離部材の弾性力を利用することを特徴とすることができる。また、剥離部材は、ベルト部材と当接する先端部が円弧状に形成されていることを特徴とすることができる。さらに、剥離部材は、ベルト部材の表面に対してその法線を挟んで略左右対称な略二等辺三角形に形成されていることを特徴とすることができる。
剥離部材としては、樹脂シートおよび金属シートであることを特徴とすることができ、また、線材を屈曲して形成されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように構成された本発明の画像形成装置等によれば、感光体ドラムや中間転写体等の像担持体に付着した記録媒体を容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態)について詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態を適用した画像形成装置1の概略構成図である。
図1に示す画像形成装置1は、電子写真方式による複数の画像形成部10(10Y,10M,10C,10K)によってカラー画像を形成する、いわゆるタンデム型のデジタルカラー機である。
【0016】
この画像形成装置1は、各色の画像を形成する画像形成部10と、各画像形成部10(10Y,10M,10C,10K)の感光体ドラム11を露光して静電潜像を形成する露光装置12と、感光体ドラム11に担持されたトナー像を重畳して担持する像担持体であり中間転写部材としての中間転写ベルト20とを備えている。また、画像形成装置1は、各画像形成部10により形成された各色成分のトナー像を中間転写ベルト20に順次転写する一次転写部15と、中間転写ベルト20上に転写された重畳トナー画像を記録媒体としての記録用紙Pに一括転写する転写部としての二次転写部21とを備えている。さらに、画像形成装置1は、転写されたトナー像を記録用紙P上に定着させる定着装置30と、記録用紙搬送機構40とを備えている。また、画像形成装置1は、制御部80を備えており、この制御部80によってその全ての駆動制御が行われるようになっている。
【0017】
各画像形成部10は、図1中の画像形成部10Yに代表して示すように、矢印A方向に回転する感光体ドラム11を備えている。感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11を帯電する帯電器12と、感光体ドラム11上を光ビームBmで照射して静電潜像を書込む走査露光装置13と、各色成分トナーを収容して感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14とが、配設されている。さらに、感光体ドラム11上に形成されたトナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写部15を構成する一次転写ロール15Aと、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ16とが配設されている。これらの画像形成部10は、中間転写ベルト20の移動方向上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0018】
中間転写ベルト20は、例えば、可撓性を有するポリイミド等の合成樹脂フィルムによって無端ベルト状に形成されている。この中間転写ベルト20は、駆動ロール20Aとバックアップロール20B等とに、その上側の経路を略直線状として張架される。そして、図示しないモータ等によって駆動される駆動ロール20Aの回転によって、図1に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回動)されるようになっている。
この中間転写ベルト20の略直線的な上側の経路に臨んで、前述のごとく4色用の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが配設されている。
【0019】
各画像形成部10の感光体ドラム11と、中間転写ベルト20を挟んで対向する位置には、それぞれ前述の一次転写部15を構成する一次転写ロール15Aが配設されている。一次転写ロール15Aは感光体ドラム11に中間転写ベルト20を圧接させるようになっている。この一次転写ロール15Aには、トナーの帯電極性と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加される。これにより、各一次転写部15では、各々の感光体ドラム11上のトナー像を中間転写ベルト20に順次静電吸引し、中間転写ベルト20上にトナー像を重畳形成する。
【0020】
二次転写部21は、中間転写ベルト20のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール21Aと、この二次転写ロール21Aと中間転写ベルト20を挟んで対向配置されたバックアップロール21Bと、によって構成されている。
バックアップロール21Bには二次転写バイアスが印可され、二次転写ロール21Aは接地されている。そして、中間転写ベルト20が担持したトナー像を、記録用紙搬送機構40によって搬送供給される記録用紙P上に転写する。
また、中間転写ベルト20の、二次転写部21よりその移動方向下流側には、二次転写後も中間転写ベルト20上に残留する残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト20の表面をクリーニングするベルトクリーナ22が設けられている。
【0021】
定着装置30は、ヒートロール31と、このヒートロール31に対向して設けられたプレッシャロール32とで構成されている。そして、記録用紙Pをプレッシャロール32で加熱されたヒートロール31に押圧し、トナー像を加熱・加圧して記録用紙Pに定着する。
記録用紙搬送機構40は、搬送ロール群41と、記録用紙Pをその上面に吸引して搬送する搬送ベルトユニット42と、を備えている。搬送ロール群41は記録用紙Pを収容する記録用紙トレイ51から記録用紙Pを二次転写部21へと搬送し、搬送ベルトユニット42は記録用紙Pを二次転写部21から定着装置30に搬送する。
また、二次転写部21と搬送ベルトユニット42の間の記録用紙搬送経路に臨んで、記録用紙検知センサ81が設けられており、この記録用紙検知センサ81が記録用紙Pを検知した信号を制御情報として制御部80に出力するようになっている。
【0022】
上記のごとく構成された画像形成装置1は、制御部80によって制御され、下記のようにして画像形成を行う。
すなわち、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ等から出力される画像データに基づいて、各画像形成部10が、それぞれ感光体ドラム11上にそれぞれの色のトナー像を形成する。各画像形成部10におけるトナー像の形成は、帯電器12によって帯電された感光体ドラム11上を走査露光装置13で走査露光して静電潜像を形成し、その静電潜像を現像器14によって現像してトナー像を形成することによって行われる。
【0023】
各画像形成部10の感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、一次転写部15において、中間転写ベルト20上に重ね合わせて転写される。
中間転写ベルト20の表面に重ね合わせて形成されたトナー像は、中間転写ベルト20の回動によって二次転写部21に移動し、この二次転写部21において記録用紙搬送機構40の搬送ロール群41によって搬送される記録用紙P上に一括して静電転写される。
トナー像が転写された記録用紙Pは、記録用紙搬送機構40の搬送ベルトユニット42によって定着装置30に搬送され、定着装置30によって熱および圧力による定着処理を受けてトナー像が定着される。そして、トナー像が定着された(画像が形成された)記録用紙Pは、画像形成装置1の排出部に設けられた排紙載置部(不図示)に排出される。
【0024】
制御部80は、画像形成に際して、記録用紙検知センサ81が記録用紙Pを検知した信号によって、記録用紙Pが中間転写ベルト20から正常に剥離して定着装置30に向かって搬送されていることを認知する。正常搬送の際に得られるべきタイミングで記録用紙搬送センサ81からの検知信号が得られなかった場合には、全ての作動を停止させ、搬送異常として図示しない表示パネル等を介して使用者に知らせる。
搬送異常による作動の停止は、仮に中間転写ベルト20に記録用紙Pが付着していた場合に、その記録用紙Pがベルトクリーナ22に入る前のタイミングで行われる。これにより、停止した中間転写ベルト20の、搬送ベルトユニット42の上側の部位に記録用紙Pが付着していることになる。
【0025】
ここで、画像形成装置1は、中間転写ベルト20の下側の二次転写部21から定着装置30に至る記録用紙Pの搬送経路を開放して、紙詰まり等の搬送異常を解消することができるように構成されている。つぎに、その構成について説明する。
図2は中間転写ベルト20を含むベルトユニット50と、中間転写ベルト20の下側の機構が移動可能に一体化された移動動作部材としての可動ユニット60と、を概念的に示す図である。また、図3はベルトユニット50と可動ユニット60とを斜め後方から見た斜視図である。この図では、可動ユニット60は格納位置(画像形成時における作用位置)にある。さらに、図4は可動ユニット60の平面図である。
ベルトユニット50は、中間転写ベルト20とそれを張架する駆動ロール20Aおよびバックアップロール20B等のローラ群が、一つのシャーシ51(図3には奥側の側板51Bのみ表し、他は省略してある)に装着されて構成されている。
【0026】
可動ユニット60は、二次転写部21の二次転写ロール21Aと、記録用紙搬送機構40の搬送ベルトユニット42と、定着装置30とが、一つのユニットシャーシ61に装着されて一体に構成されている。
ユニットシャーシ61は、前後の側板61A,61Bが、連結板61Cによって所定の間隔で連結されて形成されており、その側板61A,61Bの間に、二次転写ロール21Aと、搬送ベルトユニット42と、定着装置30(図3および図4では二点鎖線で示す)とが配設されるようになっている。
【0027】
この可動ユニット60は、通常は、搬送ベルトユニット42が搬送する記録用紙Pに二次転写ロール21Aが転写作用を行う格納位置にある。そして、この格納位置から図示しないガイド機構に案内されて、図示しない本体シャーシに対して装置手前側(図3中矢印で示す)に移動可能となっている。従って、この可動ユニット60を移動させる(装置手前側に引き出す)ことで、中間転写ベルト20と、二次転写ロール21Aおよび搬送ベルトユニット42との間の記録用紙搬送経路が開放される。このため、この部分で紙詰まり等が発生した場合には、可動ユニット60を引き出して搬送経路に詰まった記録用紙Pを排除することができる。なお、二次転写ロール21Aは、可動ユニット60の引き出し動作に伴って、図示しない連動機構によって下方に退避動作するようになっているものである。
【0028】
ここで、可動ユニット60には、その格納位置からの引き出し操作によって中間転写ベルト20に付着した記録用紙PJを剥離させる記録用紙剥離機構70が設けられている。つぎに、この記録用紙剥離機構70について説明する。
図5はベルトユニット50と可動ユニット60のそれぞれ奥側の側板51B,61Bと記録用紙剥離機構70を示す説明図である。また、図6はその記録用紙剥離機構70部分の拡大図であり、図7は図6のA矢視図である。さらに、図8は剥離シート71の平面図、図9は記録用紙剥離機構70の作用説明図である。
【0029】
記録用紙剥離機構70は、剥離部材および当接部材としての剥離シート71を備えている。
剥離シート71は、所定の弾性を有する薄いシート状の部材、たとえば0.1〜0.2mm程度の厚さのPET等の樹脂シートによって、図8に平面図を示すごとき舌片状に形成されている。すなわち、所定幅の装着基端部71Aから、所定の角度で先細りの屈曲先端部71Bが所定の長さに延設され、最先端は所定の半径の円弧状部となっている。その屈曲先端部71Bの先細り形状は、後述する可動ユニット60のシャーシ側板61Bに支持されて所定位置に設置された状態において、対応する中間転写ベルト20の経路に対する法線(図8中一点鎖線で示す)を略中心とする左右対称の二等辺三角形状となっている。
そして、この剥離シート71は、可動ユニット60の装置奥側のシャーシ側板61Bに設けられた支持板61Cの装置手前側の面に、装着基端部71Aが両面テープによって接着されて、二次転写部21の記録用紙搬送方向下流側に隣接して設けられている。
【0030】
剥離シート71を支持する支持板61Cは、シャーシ側板61Bの上側に所定幅で突出形成されている。その上縁は、対応する中間転写ベルト20の経路と略平行に形成されている。なお、本実施の形態では、支持板61Cは、装置本体側に設けられた図示しないファンがバキューム方式の搬送ベルトユニット42から吸気するためのダクト61Dの枠を兼ねた(一体化した)構成となっている。しかし、剥離シート71の支持構造はこのような支持板61Cによる構成に限るものではなく、そのための専用の支持板を立設しても良く、また、支持板61Cを介することなく直接シャーシ側板61Bに装着する等、適宜変更可能なものである。
【0031】
このように可動ユニット60に設けられた剥離シート71は、可動ユニット60が収納位置(画像形成時における作用位置)では、ベルトユニット50の奥側の側板51Bと干渉して屈曲変形し、また、可動ユニット60を収納位置から引き出す際にはベルトユニット50の中間転写ベルト20と干渉して屈曲変形するようにその長さと設置位置が設定されている。
ここで、記録用紙剥離機構70の配設位置における、ベルトユニット50の奥側の側板51Bの下縁51Baは、図5および図6に示すように、中間転写ベルト20の経路より下側に、その経路と略平行に形成されている。
【0032】
そして、剥離シート71は、可動ユニット60が収納位置では、図7および図9に示すように、側板51Bの下縁51Baに当接して図中左側に屈曲変形する。なお、前述の図4ではこの状態の剥離シート71が示してある。この状態で、剥離シート71の先端は、中間転写ベルト20の下側に位置するが、中間転写ベルト20の下面(トナー像担持面)とは所定の間隔を有して接触しないように設定されている。これにより、可動ユニット60が格納位置にあると、剥離シート71はベルトユニット50の側板51Bの下縁51Baに操作されて屈曲変形し、中間転写ベルト20の表面から離間した状態となるようになっているものである。この剥離シート71の先端が中間転写ベルト20の表面から離間した状態が、退避状態である。この構成では、ベルトユニット50の側板51Bの下縁51Baが退避機構および操作干渉部材を構成している。
【0033】
そして、可動ユニット60を、収納位置から、剥離シート71と、側板51B(下縁51Ba)との干渉が解消されるまで引き出す(図7および図9中左側に移動させる)と、図中二点鎖線で示すように、剥離シート71は、弾性復帰してその先端が中間転写ベルト20に所定の浅い角度で当接し、自らの弾性復帰力で中間転写ベルト20に圧接するようになっている。なお、この剥離シート71が中間転写ベルト20に当接する位置は、中間転写ベルト20がトナー像を担持する領域(つまり画像形成域)より外側に設定されているものである。
【0034】
上記のごとく構成された記録用紙剥離機構70は、搬送異常で画像形成装置1(図1参照)の作動が停止した際に、その搬送異常の原因を究明して排除すべく可動ユニット60を格納位置から装置手前側に引き出すことで、中間転写ベルト20に付着している記録用紙PJを自動的に排除することができる。
すなわち、可動ユニット60を格納位置から装置手前側に引き出すことにより、図9(a)に示すように側板51B(下縁51Ba)との干渉によって中間転写ベルト20と離間していた剥離シート71の先端が、図9(a)中二点鎖線で示すように中間転写ベルト20に当接する。そして、以後の可動ユニット60の引き出し操作に伴って、剥離シート71の先端は中間転写ベルト20に当接して摺動移動する。これにより、図9(b)に示すように、中間転写ベルト20に付着している記録用紙PJがあれば、図9(b)に示すように、その記録用紙PJを剥離シート71がその先端で剥離して、外部に押し出すように作用する。
【0035】
従って、記録用紙PJが中間転写ベルト20に付着することで搬送異常と認知された場合には、可動ユニット60を収納位置から引き出すという操作のみで、中間転写ベルト20に付着した記録用紙PJを除去して搬送異常状態を解除することができるものである。
つまり、上記のごとき構成の記録用紙剥離機構70によれば、視認が難しい中間転写ベルト20に付着した記録用紙PJを、可動ユニット60を引き出し操作することで視認するまでもなく除去することができるものである。
【0036】
なお、上記実施の形態は、剥離部材として樹脂シートによって形成された剥離シート71を用いた例であるが、剥離部材はこれに限定されるものではない。たとえば、ステンレス合金やリン青銅等の金属薄板を用いても良く、また、素材、厚さ、大きさ等の異なる樹脂シートを複数枚重合させてその弾性力を調整して形成しても良い。
さらに、シート状でない剥離部材として、ピアノ線等の弾性を有する線材を屈曲して用いても良いものである。
図10は、線材を屈曲して形成した剥離部材72を示す図である。この剥離部材72は、適宜太さのピアノ線を略逆U字状に屈曲して、その両基端部に装着フック部72Aを形成したものである。
また、上記実施の形態の記録用紙剥離機構70は、一つの剥離部材(剥離シート71)を備えたものであるが、複数の剥離部材を中間転写ベルト20の移動方向に並列に配設しても良い。そうすれば、より広い範囲で記録用紙PJを除去することが可能となる。その際、並設された剥離部材を異なる構成のものとしても良いものである。
【0037】
さらに、上記実施の形態では、記録用紙剥離機構70は、剥離シート71のそれ自体の弾性変形によって退避状態となると共に、その弾性復帰力で中間転写ベルト20に当接付勢する構成となっているが、それぞれの機能を別の機構で分担する構成としても良い。図11はそのような構成例の概念図である。なお、図中前述の実施の形態と同様の構成部には同符号を付して説明を省略する。
図11に示す記録用紙剥離機構700は、支持板61Cに、剥離シート71を支持する揺動板73Aが枢軸73Cで揺動可能に装着されている。揺動板73Aは、枢軸73Cに巻回装着された渦巻きバネ73Dによって、図中時計回りに揺動付勢されている。その揺動板73Aの揺動は、図示しない可動ユニットが収納位置では当接する側板51Bによって規制され、これによって剥離シート71の先端が中間転写ベルト20の表面から離間する(退避状態となる)ように設定されている。そして、図示しない可動ユニットが収納位置から引き出し操作されると、側板51Bによる規制が解除されて揺動板72Aが渦巻きバネ73Dの付勢力で揺動し、剥離シート71の先端が中間転写ベルト20の表面に当接し、剥離シート71の弾性変形による復帰力と、渦巻きバネ73Dの揺動付勢力とによって先端が中間転写ベルト20に圧接するようになっているものである。
【0038】
このような構成の記録用紙剥離機構700では、渦巻きバネ73Dが退避機構と当接付勢手段とを兼ねるため、弾性変形量の少ない高剛性の剥離シート71を用いることも可能となる。また、剥離シート71として樹脂シートを用いた場合には、退避状態では剥離シート71は屈曲変形しないため、近傍に位置する定着装置の熱によって剥離シート71がへたる(弾性復帰力が低下する)ことを抑えることができ、作用時における中間転写ベルト20への圧接力を維持できる。
【0039】
なお、上記実施の形態は、本発明を感光体ドラム上に形成したトナー像を像担持体としての中間転写ベルトを介して記録媒体に転写する画像形成装置に適用したものであるが、本発明はこのような構成の画像形成装置に限らず、たとえば、感光体ドラムからの記録媒体にトナー像を転写する画像形成装置において、感光体ドラムに付着した記録媒体を剥離するために適用しても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態を適用した画像形成装置の概略構成図である。
【図2】ベルトユニットと可動ユニットとを概念的に示す図である。
【図3】ベルトユニットと可動ユニットとを斜め後方から見た斜視図である。
【図4】可動ユニットの平面図である。
【図5】ベルトユニットと可動ユニットのそれぞれ奥側の側板と記録用紙剥離機構を示す説明図である。
【図6】記録用紙剥離機構の拡大図である。
【図7】図6のA矢視図である。
【図8】剥離シートの平面図である。
【図9】記録用紙剥離機構の作用説明図である。
【図10】線材を屈曲して形成した剥離部材を示す図である。
【図11】異なる構成の記録用紙剥離機構の説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1…画像形成装置、11…感光体ドラム(感光体)、15…一次転写部(転写部)、20…中間転写ベルト(像担持体)、50…ベルトユニット、51B…側板(退避機構,操作干渉部材)、60…可動ユニット(移動動作部材)、70…記録用紙剥離機構、71…剥離シート(剥離部材,当接部材,当接付勢手段)、72…剥離部材(当接部材,当接付勢手段)、73D…渦巻きバネ(退避機構,当接付勢手段)、P…記録用紙(記録媒体)、PJ…記録用紙(中間転写ベルトに付着した記録用紙,記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体が担持する前記トナー像を記録媒体に転写する転写部と、
前記像担持体の表面に沿って所定の格納位置から移動可能な移動操作部材と、
前記移動操作部材に設けられ、当該移動操作部材の前記格納位置からの移動によって前記像担持体に当接して移動して当該像担持体に付着した前記記録媒体を剥離する剥離部材と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記剥離部材は、前記像担持体と当接する先端部が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記剥離部材は、前記像担持体の表面に対する法線を挟んで略左右対称な略二等辺三角形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記剥離部材を前記像担持体に当接させる当接付勢手段と、
前記移動操作部材が前記格納位置では前記剥離部材を前記像担持体から離間させる退避機構と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記剥離部材は弾性変形可能であって、前記当接付勢手段は当該剥離部材の弾性力を利用することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記退避機構は、前記剥離部材に当接して当該剥離部材を前記像担持体から離間させる操作干渉部を備えることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
感光体と、
前記感光体上に形成されたトナー像が転写される中間転写部材と、
前記中間転写部材が担持する前記トナー像を記録媒体に転写する転写部と、
前記中間転写部材の表面に沿って所定の格納位置から移動可能な移動操作部材と、
前記移動操作部材に設けられて弾性復帰力で前記中間転写部材に当接する当接部材と、
前記移動操作部材が前記格納位置で前記当接部材を前記中間転写部材から離間させる退避機構と、
を備え、
前記退避機構によって離間位置にある前記当接部材が、前記移動操作部材の前記格納位置からの移動によって、前記中間転写部材の表面に当接して摺動し、前記中間転写部材に付着した前記記録媒体を剥離するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記中間転写部材は、周回駆動される無端ベルト状であって、
前記移動操作部材は、前記中間転写部材の外側に位置する記録用紙搬送機構を含む可動ユニットであることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記退避機構は、前記当接部材に当接して当該当接部材を前記中間転写部材から離間するように弾性変形させる操作干渉部材を備えることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記当接部材は、前記中間転写部材と当接する先端部が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記当接部材は、前記像担持体の表面に対してその法線を挟んで略左右対称な略二等辺三角形に形成されていることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記当接部材は、樹脂シートであることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記当接部材は、金属シートであることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記当接部材は、線材を屈曲して形成されていることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項15】
ベルト部材に付着したシート状部材を剥離する剥離機構であって、
前記ベルト部材の表面に沿って所定の格納位置から移動可能な移動操作部材と、
前記移動操作部材に設けられ、前記ベルト部材に付着したシート状部材を剥離する剥離部材と、
前記剥離部材を前記ベルト部材に当接させる当接付勢手段と、
前記移動操作部材が格納位置では前記剥離部材を前記ベルト部材から離間させる退避機構と、
を備え、
前記退避機構によって離間位置にある前記剥離部材が、前記移動操作部材の前記格納位置からの移動により、前記当接付勢手段によって前記ベルト部材の表面に当接して摺動し、当該ベルト部材に付着したシート状部材を剥離することを特徴とするシート状部材の剥離機構。
【請求項16】
前記剥離部材は弾性変形可能であって、前記当接付勢手段は当該剥離部材の弾性力を利用することを特徴とする請求項15に記載のシート状部材の剥離機構。
【請求項17】
前記剥離部材は、前記ベルト部材と当接する先端部が円弧状に形成されていることを特徴とする請求項16に記載のシート状部材の剥離機構。
【請求項18】
前記剥離部材は、前記ベルト部材の表面に対してその法線を挟んで略左右対称な略二等辺三角形に形成されていることを特徴とする請求項17に記載のシート状部材の剥離機構。
【請求項19】
前記剥離部材は、樹脂シートであることを特徴とする請求項18に記載のシート状部材の剥離機構。
【請求項20】
前記剥離部材は、金属シートであることを特徴とする請求項18に記載のシート状部材の剥離機構。
【請求項21】
前記剥離部材は、線材を屈曲して形成されていることを特徴とする請求項18に記載のシート状部材の剥離機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−199115(P2007−199115A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14285(P2006−14285)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】